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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1359457 |
審判番号 | 不服2019-6579 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-21 |
確定日 | 2020-02-06 |
事件の表示 | 特願2015-73619号「調湿容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日出願公開、特開2016-193731号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年6月29日付け :拒絶理由通知 平成30年9月5日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年2月27日付け :拒絶査定 令和1年5月21日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年5月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を補正する補正事項(以下、「補正事項」という。)を含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「内容物が収容される収容室を有する調湿容器であって、 その壁部には、 前記収容室を画成する最内層と、 前記最内層を前記収容室の反対側から囲繞する第1樹脂組成物層と、 前記第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、 前記第2樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する最外層と、が備えられ、 前記第1樹脂組成物層は、前記第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、前記第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きく、 前記最内層、および前記最外層はオレフィン系樹脂により形成され、 前記第1樹脂組成物層、および前記第2樹脂組成物層は、吸湿剤の配合されたオレフィン系樹脂により形成され、 前記第1樹脂組成物層と前記第2樹脂組成物層との間に、オレフィン系樹脂により形成された中間層が介在され、 前記最内層の厚さが最も薄くなっていることを特徴とする調湿容器。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「内容物が収容される収容室を有する調湿容器であって、 その壁部には、 前記収容室を画成する最内層と、 前記最内層を前記収容室の反対側から囲繞する第1樹脂組成物層と、 前記第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、 前記第2樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する最外層と、が備えられ、 前記第1樹脂組成物層は、前記第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、前記第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きく、 前記最内層、および前記最外層はオレフィン系樹脂により形成され、 前記第1樹脂組成物層、および前記第2樹脂組成物層は、吸湿剤の配合されたオレフィン系樹脂により形成され、 前記第1樹脂組成物層と前記第2樹脂組成物層との間に、オレフィン系樹脂により形成された中間層が介在され、 前記最内層の厚さが最も薄く、前記第1樹脂組成物層の厚さが最も厚くなっていることを特徴とする調湿容器。」(下線部は補正箇所に当審が付した。) 2 本件補正の適否について 本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1樹脂組成物層」について、「厚さが最も厚くなっている」との技術的事項を付加し限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-246181号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「内容物が収容される収容室を有する容器であって、 その壁部には、 前記収容室を囲繞若しくは画成する第1樹脂組成物層と、 該第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、 が備えられ、 前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きいことを特徴とする容器。」(特許請求の範囲 請求項1) 「本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、容器の収容室の湿度を確実に低く保つことができる容器を提供することを目的とする。」(段落0005) 「以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。 本実施形態に係る容器1は、図1に示されるように、内容物が収容される収容室Aを有するとともに、壁部11は、収容室Aを囲繞する第1樹脂組成物層12と、第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞する第2樹脂組成物層13と、を備えている。さらに図示の例では、壁部11は、第2樹脂組成部層13を収容室Aの反対側から囲繞する最外層15、および収容室Aを画成する最内層14を備えている。 ここで、容器1の壁部11は有底筒状に形成されていて、第1樹脂組成物層12、第2樹脂組成物層13、最外層15および最内層14も有底筒状に形成されている。 最外層15および最内層14はそれぞれ、吸湿剤を含有しない例えばポリエチレン、若しくはポリプロピレン等で形成される。」(段落0014) 「第1樹脂組成物層12は、第1吸湿剤が配合された第1基材樹脂により形成され、第2樹脂組成物層13は、第2吸湿剤が配合された第2基材樹脂により形成されている。 第1基材樹脂および第2基材樹脂としては、例えばポリエチレン、若しくはポリプロピレン等が挙げられる。・・・」(段落0015) 「・・・ また、第1樹脂組成物層12と第2樹脂組成物層13との間に、例えば吸湿剤を含有しない中間層等を介在させてもよい。 さらに、壁部11に、水分バリア性に優れた樹脂材料で形成されたバリア層を備えさせ、このバリア層により第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞させてもよい。 この場合、外気の湿気が第1樹脂組成層12に到達することをより確実に防止する。 さらにまた、前記バリア層により第1樹脂組成物層12のみならず第2樹脂組成物層13をも収容室Aの反対側から囲繞させてもよい。 また、このバリア層を形成する樹脂材料は、例えばオレフィン系樹脂等、第1基材樹脂および第2基材樹脂よりも水分バリア性に優れた材質であってもよい。」(段落0022) したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「内容物が収容される収容室を有し、収容室の湿度を確実に低く保つことができる容器であって、その壁部には、前記収容室を囲繞若しくは画成する第1樹脂組成物層と、該第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、第2樹脂組成部層を収容室の反対側から囲繞する最外層、および収容室を画成する最内層と、が備えられ、前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きく、第1樹脂組成物層は、第1吸湿剤が配合された第1基材樹脂により形成され、第2樹脂組成物層は、第2吸湿剤が配合された第2基材樹脂により形成され、第1基材樹脂および第2基材樹脂は、ポリエチレン、若しくはポリプロピレンであり、最外層および最内層はそれぞれ、吸湿剤を含有しないポリエチレン、若しくはポリプロピレンで形成され、第1樹脂組成物層と第2樹脂組成物層との間に、吸湿剤を含有しない中間層を介在させた、収容室の湿度を確実に低く保つことができる容器。」 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった登録実用新案第3064497号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「吸湿性を有する被収納物をその中に収納する収納容器であって、 非通気性を有する第1の層、 前記第1の層の一方主面側に形成され、前記第1の層の一方主面側からの湿気を吸湿する第2の層、および前記第1の層の他方主面側に形成され、前記第1の層の他方主面側からの湿気を吸湿する第3の層を含み、 前記第2の層は前記収納容器の外面側に配置され、前記第3の層は前記収納容器の内面側に配置される、収納容器。」(実用新案登録請求の範囲 請求項1) 「それゆえに、本願考案の主たる目的は、収納容器内および被収納物の湿気を吸湿することができ、且つ、外部環境からの湿気の吸湿を防止できる、収納容器を提供することである。・・・」(段落0005) 「第1の層22は、非通気性の透明なたとえばポリエチレンからなる合成樹脂層で形成される。第1の層22の厚さは、たとえば20μm(ミクロン)に形成される。第2の層24は、たとえばポリプロピレン(PP)を層状化した不織布からなる繊維層で形成される。第3の層26は、たとえばポリエステル(PE)とポリアクリレートとを7:3の割合で複合した不織布からなる繊維層で形成される。・・・」(段落0011) 「本実施例の収納容器10では、特に、たとえば図3に示すように、第3の層26が容器本体12内の湿気および容器本体12内に収納された被収納物(図示せず)から発散する湿気等を吸湿する。第3の層26は、放湿環境になるまで、容器本体12内の湿気を吸湿する。また、第2の層24は、容器本体12の外部からの湿気を吸湿する。第1の層22は、非通気性の機能を有するので、主に、容器本体10の外部環境からの湿気の進入を遮断する。」(段落0015) したがって、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「吸湿性を有する被収納物をその中に収納する収納容器であって、 容器本体の外部環境からの湿気の進入を遮断する、非通気性の、たとえばポリエチレンからなる合成樹脂層で形成される第1の層、 前記第1の層の一方主面側に形成され、前記第1の層の一方主面側からの湿気を吸湿する第2の層、および前記第1の層の他方主面側に形成され、前記第1の層の他方主面側からの湿気を吸湿する第3の層を含み、 前記第2の層は前記収納容器の外面側に配置され、前記第3の層は前記収納容器の内面側に配置される、収納容器。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「内容物が収容される収容室」は、その構成や機能からみて、本願補正発明の「内容物が収容される収容室」に相当し、以下同様に、「壁部」、「第1樹脂組成物層」、「第2樹脂組成物層」、「最外層」及び「最内層」は、それぞれ「壁部」、「第1樹脂組成物層」、「第2樹脂組成物層」、「最外層」及び「最内層」に相当する。 引用発明の「容器」の「収容室の湿度を確実に低く保つことができる」とは、「容器」が「調湿」できるということであるから、引用発明の「収容室の湿度を確実に低く保つことができる容器」は、本願補正発明の「調湿容器」に相当する。 引用発明の「前記第1樹脂組成物層は、第2樹脂成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きく、」という態様は、本願補正発明の「前記第1樹脂組成物層は、前記第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、前記第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きく、」という態様に相当し、引用発明の「第1樹脂組成物層は、第1吸湿剤が配合された第1基材樹脂により形成され、第2樹脂組成物層は、第2吸湿剤が配合された第2基材樹脂により形成され、第1基材樹脂および第2基材樹脂は、ポリエチレン、若しくはポリプロピレンであり、」という態様及び「最外層および最内層はそれぞれ、吸湿剤を含有しないポリエチレン、若しくはポリプロピレンで形成され、」という態様は、それぞれ、本願補正発明の「前記第1樹脂組成物層、および前記第2樹脂組成物層は、吸湿剤の配合されたオレフィン系樹脂により形成され、」という態様及び「前記最内層、および前記最外層はオレフィン系樹脂により形成され、」という態様に相当する。 また、引用発明の「第1樹脂組成物層と第2樹脂組成物層との間に、吸湿剤を含有しない中間層」は、「前記第1樹脂組成物層と前記第2樹脂組成物層との間に、オレフィン系樹脂により形成された中間層」という限りで、「前記第1樹脂組成物層と前記第2樹脂組成物層との間に、オレフィン系樹脂により形成された中間層」に一致する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 ア 一致点 「内容物が収容される収容室を有する調湿容器であって、 その壁部には、 前記収容室を画成する最内層と、 前記最内層を前記収容室の反対側から囲繞する第1樹脂組成物層と、 前記第1樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する第2樹脂組成物層と、 前記第2樹脂組成物層を前記収容室の反対側から囲繞する最外層と、が備えられ、 前記第1樹脂組成物層は、前記第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、前記第2樹脂組成物層は、前記第1樹脂組成物層より吸水可能量が大きく、 前記最内層、および前記最外層はオレフィン系樹脂により形成され、 前記第1樹脂組成物層、および前記第2樹脂組成物層は、吸湿剤の配合されたオレフィン系樹脂により形成され、 前記第1樹脂組成物層と前記第2樹脂組成物層との間に、中間層が介在される調湿容器。」 イ 相違点1 「中間層」について、本願補正発明は、「オレフィン系樹脂により形成された」ものであるのに対し、引用発明は、その点不明である点。 ウ 相違点2 本願補正発明は「前記最内層の厚さが最も薄く、前記第1樹脂組成物層の厚さが最も厚くなっている」のに対し、引用発明は、その点不明である点。 (4)判断 ア 相違点1について 引用発明は、「前記除湿能力が第2樹脂組成物層より高い第1樹脂組成物層に、外気の湿気を吸収させ難くして、容器の収容室内の湿気を集中して吸収させることが可能になり、収容室の湿度を確実に低く保つことができる。」(引用文献1の段落0007)という効果を予定しているものであるから、引用発明には、「第1樹脂組成物層に、外気の湿気を吸収させ難く」することの動機付けがあるといえる。また、引用文献1には、「さらに、壁部11に、水分バリア性に優れた樹脂材料で形成されたバリア層を備えさせ、このバリア層により第1樹脂組成物層12を収容室Aの反対側から囲繞させてもよい。 この場合、外気の湿気が第1樹脂組成層12に到達することをより確実に防止する。・・・ また、このバリア層を形成する樹脂材料は、例えばオレフィン系樹脂等、第1基材樹脂および第2基材樹脂よりも水分バリア性に優れた材質であってもよい。」(引用文献1の段落0022)という記載があり、オレフィン系樹脂からなる層が水分バリア性を備えた層のための材料として適したものであることが少なくとも示唆されており、また、引用文献2に記載された「容器本体の外部環境からの湿気の進入を遮断する、非通気性の、たとえばポリエチレンからなる合成樹脂層で形成される第1の層」も同様な事項を少なくとも示唆しているといえるから、前記引用文献1に記載された示唆や引用文献2記載事項をふまえ、引用発明の「中間層」を、吸湿剤を含有しないオレフィン系樹脂により形成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用発明は、「前記除湿能力が第2樹脂組成物層より高い第1樹脂組成物層に、外気の湿気を吸収させ難くして、容器の収容室内の湿気を集中して吸収させることが可能になり、収容室の湿度を確実に低く保つことができる。」(引用文献1の段落0007)という効果を予定しているものであるから、引用発明には、「第1樹脂組成物層」を「容器の収容室内の湿気を集中して吸収させる」ようにすることの動機付けがあるといえる。 そして、「第1樹脂組成物層」を「容器の収容室内の湿気を集中して吸収させる」ようにするのであれば、湿気が「第1樹脂組成物層」に到達するように構成するはずであるから、「最内層」の厚さを、「収容室を画定する」という「最内層」の機能・作用が維持できる厚さを超えて厚くして、湿気の透過を妨げることは不自然である。また、「第1樹脂組成物層」の吸水可能量を大きくしようとすれば、「第1樹脂組成物層」を形成する樹脂の物性を変えない限り、「第1樹脂組成物層」の容量を増す、すなわち厚さを増すこととなるはずである。 したがって、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、上記動機付けにしたがって、引用発明の「最内層」や「第1樹脂組成物層」を形成する樹脂の物性、収納室の容量、内容物、想定される内容物の収納時間等の諸条件を考慮し、当業者が設計上適宜になし得たことである。 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果の総和内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)審判請求書に記載された主張について 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。 「しかしながら、引用文献1、2には、本願発明のような、「前記最内層の厚さが最も薄く、前記第1樹脂組成物層の厚さが最も厚くなっている」構成については、記載も示唆もされておりません。 したがいまして、引用文献1、2に記載の発明をいかに組み合わせたとしても、本願発明のように、第2樹脂組成物層より同一容積の空間に対する除湿能力が高く、かつ収容室の湿気を集中的に吸収する第1樹脂組成物層の、吸水可能量を大きく確保することが可能になり、最内層の厚さが最も薄くなっていることと相俟って、収容室の湿度を確実に低く保つことができるといった作用効果を有する発明が得られることはありません。」 しかし、「第1樹脂組成物層」の吸水可能量は、「第1樹脂組成物層」を形成する樹脂に配合される吸湿剤の種類や量によっても変化するところ、本願発明は、「最内層」や「第1樹脂組成物層」を形成する樹脂の物性、吸湿差剤の種類や量、収納室の容量、内容物、想定される内容物の収納時間等の諸条件が特定されているわけでもなく、引用発明が奏する効果とは異質もしくは顕著な効果を奏するに足る構成が特定されているわけでもなく、かつ、発明の詳細な説明にその根拠となり得る記載も示唆もないから、前記主張は採用できない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和1年5月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年9月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 1.特開2011-246181号公報 2.登録実用新案第3064497号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1樹脂組成物層」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-11-21 |
結審通知日 | 2019-11-26 |
審決日 | 2019-12-16 |
出願番号 | 特願2015-73619(P2015-73619) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 佑果 |
特許庁審判長 |
高山 芳之 |
特許庁審判官 |
久保 克彦 石井 孝明 |
発明の名称 | 調湿容器 |
代理人 | 仁内 宏紀 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 鈴木 三義 |