• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1359474
審判番号 不服2018-3732  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-15 
確定日 2020-02-04 
事件の表示 特願2016-534928「ボイスコール中の電流消費を削減するための、専用チャネル上での不連続送信を用いる制御チャネルシグナリングおよび電力制御」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日国際公開、WO2015/084889、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502569〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月2日 米国、2014年12月1日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 9月12日 手続補正書の提出
平成29年 9月26日付け 拒絶理由通知書
平成29年11月16日 意見書の提出
平成30年 2月 2日付け 拒絶査定
平成30年 3月15日 拒絶査定不服審判の請求、
手続補正書の提出
平成31年 4月24日付け 拒絶理由通知書
令和 1年 6月19日 意見書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1?15に係る発明は、平成30月3月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「ユーザ機器(UE)におけるアップリンクモバイル通信の方法であって、
第1のボイスパケット送信時間間隔(TTI)を有する2つの連続ボイスパケットを、第2のボイスパケットTTIを有する2つの圧縮ボイスパケットに圧縮するステップと、
第1の専用制御チャネル(DCCH)TTIに対応するシグナリングデータを、第2のDCCH TTIを有する圧縮シグナリングデータに圧縮するステップと、
前記2つの圧縮ボイスパケットおよび前記圧縮シグナリングデータを多重化して、前記第2のDCCH TTIに相当するとともに前記第2のボイスパケットTTIの2倍に相当する関連TTIを有する1つの多重化パケットを形成するステップと、
前記多重化パケットを、第1のサブパケットと第2のサブパケットに分裂させるステップと、
サブパケットTTIを有する第1のサブパケット間隔中に前記第1のサブパケットを送信するステップと、
前記第1のサブパケット間隔の後に続く第2のサブパケット間隔中に、前記第2のサブパケットを送信するステップであって、前記第2のサブパケット間隔が前記サブパケットTTIを有する、ステップとを含む方法。」

第3 拒絶の理由
平成31年4月24日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、請求項1に対して下記の1、2が引用されている。

1:3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #74-BIS R1-134746,NSN,Compression and dynamic repetition of enhanced R99 voice services(掲載日2013年9月28日)<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_74b/Docs/R1-134746.zip>

2:3GPP TR 25.702 V1.0.1 (2013-08) (掲載日2013年9月5日)<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_61/Docs/RP-131344.zip>,p.22,33?35

第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等

1.引用発明
当審拒絶理由で引用された3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #74-BIS R1-134746,NSN,Compression and dynamic repetition of enhanced R99 voice services([当審仮訳]:拡張されたR99音声サービスの圧縮及び動的繰り返し)(掲載日2013年9月28日)<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_74b/Docs/R1-134746.zip>(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「In this contribution, we propose a simple and standalone alternative to WCDMA+, which does not require FET (and thus the transmission and decoding of ACK bits), but still benefits from DTX/DRX. The impact to standardization is also light and the technique is applicable to both DL and UL, even though it is mainly targeted for uplink.」(1葉16?18行)

([当審仮訳]:
この寄稿において、我々はWCDMA +のシンプルで独立した代替案を提案する。それはFET(したがってACKビットの送信と復号)を必要としないが、それでもDTX / DRXから利益を得る。 標準化への影響も小さく、主にアップリンクを対象とするが、この手法はDLとULの両方に適用できる。)

(2)「2.1 Compression and repetition of a voice frame
The technical report on DCH Enhancements for UMTS [8] describes in section 4.1.1.1.2 UL DTCH an DCCH compression and repetition, where “At the MAC layer, the packets received every 20ms (for DTCH) and 40ms (for DCCH) are repeated twice. The duplicate packets are passed to the physical layer, configured with a TTI value half of the original, i.e., DTCH packets are configured with 10ms TTI and DCCH packets are configured with 20ms TTI;…”」(1葉20?24行)

([当審仮訳]:
2.1 ボイスフレームの圧縮と繰り返し
UMTSのDCH拡張に関する技術報告[8]は、セクション4.1.1.1.2 UL DTCHとDCCHの圧縮と繰り返しにおいて、“MACレイヤでは、20ms毎(DTCHの場合)、40ms毎(DCCHの場合)に受信したパケットは二回繰り返される。複製パケットは、元の半分のTTI値で構成されて物理層に渡される。つまり、DTCHパケットは10ms TTIで構成され、DCCHパケットは20ms TTIで構成される。”と記述している。)

なお、上記(2)の「section 4.1.1.1.2 UL DTCH an DCCH compression and repetition」が、「section 4.1.1.1.2 UL DTCH and DCCH compression and repetition」の誤記であることは、引用例の記載内容や技術内容からみて明らかであり、「section 4.1.1.1.2 UL DTCH an DCCH compression and repetition」を「セクション4.1.1.1.2 UL DTCHとDCCHの圧縮と繰り返し」と仮訳した。

(3)「The compression and repetition technique could be for instance modified to simply configure the link with the target of 1% BLER after 10 ms, and not repeating the frame in the second 10 ms. This approach corresponds to the “Shortened TTI” solution of section 4.2.1.1.1 of [8] for downlink, without FET.
(中略)
The shortened TTI of downlink as described in the TR directly lends itself to uplink, and allows for 50% power saving gain from gating the uplink transmitter.
(中略)
If both uplink and downlink operate with base TTI length of 10 ms, typically the UE can DTX/DRX 50% of the time and get significant improvements in talk times.
(中略)

Figure 2: Enhanced R99 voice transmission with 10ms TTI in good link budget situations (noFET)」(1葉39?2葉20行)

([当審仮訳]:
圧縮及び繰り返し技術を、例えば、単純に10ms後のリンクの目標を1%BLERに変更し、次の10ms内にフレームを繰り返ししないように修正することができる。このアプローチは、[8]のセクション4.2.1.1.1のFETなしのダウンリンクのための「短縮TTI」ソリューションに対応する。
(中略)
TRに記載されたダウンリンクの短縮されたTTIは、それ自体がアップリンクに向いており、アップリンク送信機のゲーティングによる50%の節電利得を見込んでいる。
(中略)
アップリンクとダウンリンクの両方が10msの基本TTI長で動作する場合、通常、UEは時間の50%をDTX/DRXし、通話時間を大幅に改善することができる。
(中略)
(図省略)
図2:リンクバジェットが良好な状況下(FETなし)における10ms TTIの拡張されたR99の音声送信)

なお、上記記載のうち「[8]」は、「TR 25.702 DCH Enhancements for UMTS」を意味している。

(4)

Figure 3: UL DPDCH construction for 12.2kbps speech [(adapted from Fig. A.2, [25.101])(4葉)

([当審仮訳]:
(図省略)
図3:12.2kbpsのスピーチのためのUL DPDCHの構成[(出典[25.101]の図A.2)))

上記(1)?(4)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮し、以下のことがいえる。

ア 上記(1)には、引用例がアップリンクを対象とした提案であることが記載されているから、引用例にはアップリンク通信の方法が記載されているといえる。
また、上記(2)には、UMTSのDCH拡張に関する技術報告[8]を参照することが記載されている。UMTSが第3世代移動通信技術の1つであることは技術常識であるから、引用例にはアップリンクモバイル通信の方法が記載されているといえる。

イ 上記(2)には、「2.1 ボイスフレームの圧縮と繰り返し」において、UL DTCHとDCCHの圧縮と繰り返しについて記載されており、DTCHパケットはボイスフレームに含まれるといえる。
また、20ms毎に受信したDTCHパケットが、元の半分のTTI値で構成されて物理層に渡され、10ms TTIで構成されたDTCHパケットとなることが記載されている。元の半分のTTI値が10ms TTIであることから、引用例には、20ms TTIのDTCHパケットを、10ms TTIのDTCHパケットに圧縮することが記載されているといえる。

ウ 上記(2)には、UL DTCHとDCCHの圧縮と繰り返しにおいて、40ms毎に受信したDCCHパケットが、元の半分のTTI値で構成されて物理層に渡され、20ms TTIで構成されたDCCHパケットとなることが記載されている。元の半分のTTI値が20ms TTIであることから、引用例には、40ms TTIのDCCHパケットを、20ms TTIのDCCHパケットに圧縮することが記載されているといえる。

エ 上記図3より、DTCHパケットとDCCHパケットとでDPDCHを形成することが見てとれる。

オ 上記(3)には、圧縮及び繰り返し技術を、繰り返ししないように修正すること、10msの基本TTI長で動作することが記載されている。また、図2から、10ms radio frameでDPDCHを送信し、次の10ms radio frameでDTXし、更に次の10ms radio frameでDPDCHを送信することが見てとれる。
よって、引用例には、10msのTTIを有するradio frameにおいてDPDCHを送信し、当該radio frameの後に続くradio frameにおいてDPDCHを送信すること、及び、radio frameが10msのTTIを有することが記載されているといえる。

してみれば、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「アップリンクモバイル通信の方法であって、
ボイスフレームに含まれる20ms TTIのDTCHパケットを、10ms TTIのDTCHパケットに圧縮するステップと、
40ms TTIのDCCHパケットを、20ms TTIのDCCHパケットに圧縮するステップと、
DTCHパケットとDCCHパケットとでDPDCHを形成するステップと、
10msのTTIを有するradio frameにおいてDPDCHを送信するステップと、
前記radio frameの後に続くradio frameにおいてDPDCHを送信するステップであって、radio frameが10msのTTIを有するステップと、を含む方法。」

さらに、上記(3)には、ダウンリンクにおける短縮TTIの技術を、アップリンクに適用することが示唆されている。

2.公知技術
当審拒絶理由に引用された3GPP TR 25.702 V1.0.1 (2013-08) (掲載日2013年9月5日)<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_61/Docs/RP-131344.zip>,p.22,33?35(以下、「公知例」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「On the downlink, each DCCH packet is multiplexed with two DTCH packets as shown in Figure 4.2.4.1-2.」(22ページ19行)

([当審仮訳]:
ダウンリンクでは、図4.2.4.1-2に示すように、各DCCHパケットは2つのDTCHパケットと多重化される。)

(2)「The reduction of TTI for voice packets from 20ms to 10ms is achieved by halving of the Spreading Factor (SF) used in R99, thus preventing excessive puncturing that would result if the same spreading factor was used.(中略)The halving of the SF also halves the DCCH TTI from 40ms to 20ms. Each DCCH packet is multiplexed with two consecutive DTCH packets which are transmitted in two 10ms frames separated by a 10ms DPDCH transmission gap, as explained in Figure 4.2.4.1-2.」(33ページ11?19行)

([当審仮訳]:
ボイスパケットのTTIを20msから10msに短縮するには、R99で使用されていた拡散率(SF)を半分にして、同じ拡散率を使用した場合に生じる過度のパンクチャリングを防止する。(中略)SFを半分にすると、DCCH TTIも40msから20msに半減される。各DCCHパケットは、図4.2.4.1-2で説明されているように、10msのDPDCH送信ギャップによって分離された2つの10msフレームで送信される、2つの連続したDTCHパケットと多重化される。)

(3)

Figure 4.2.4.1-2: Multiplexing of DTCH and DCCH for two UEs sharing a single channelization code(35ページ)

([当審仮訳]:
(図省略)
図4.2.4.1-2:1つのチャネライゼーションコードを共有する2つのUEのための、DTCHとDCCHの多重化)

上記(1)?(3)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮し、以下のことがいえる。

ア 上記(2)には、R99で使用されていた拡散率(SF)を半分にすることでパケットのTTIを20msから10msに半減させることが記載されているところ、R99で使用されていた拡散率(SF)を半分にしてTTIを半減させる技術はいわゆる圧縮モードにおいてパケットの圧縮に用いられる技術として知られているから、公知例には、拡散率(SF)を半分にすることでパケットを圧縮することが記載されているといえる。
そして、上記(2)には、ボイスパケットのTTIを20msから10msに短縮することが記載されているから、図4.2.4.1-2に記載された「10ms TTI DTCH」は、10msのTTIを有する圧縮されたボイスパケットであるといえる。

イ 上記(2)には、SFを半分にすることでDCCH TTIを40msから20msに半減させることが記載されており、上記アで述べたように、SF(拡散率)を半分にしてTTIを半減させる技術はパケットの圧縮に用いられる技術として知られているから、公知例には、40msのTTIを有するDCCHパケットを20msのTTIを有するDCCHパケットに圧縮することが記載されているといえる。
そして、図4.2.4.1-2から、40msのSRB packetを20msのTTIを有するDCCHパケットとして伝送することが見てとれる。SRB packetがシグナリングデータであることは技術常識であるから、図4.2.4.1-2に記載された「20ms TTI DCCH」は、20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータであるといえる。

ウ 図4.2.4.1-2から、「20ms TTI DCCH」を、1st radio frameで送信するパケットと2nd radio frameで送信するパケットに分裂させること、「Transport channel multiplexing and 2nd interleaver」において、2つの「10ms TTI DTCH」と、2つに分裂させた「20ms TTI DCCH」とをそれぞれ多重化し、2つのDPDCHを形成することが見てとれる。また、上記(2)には、DPDCHが10msのDPDCH送信ギャップによって分離された2つの10msフレームで送信されることが記載されている。
そして、上記ア及びイで述べたとおり、図4.2.4.1-2に記載された「10ms TTI DTCH」は、10msのTTIを有する圧縮されたボイスパケットであるといえ、「20ms TTI DCCH」は、20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータであるといえるから、公知例には、20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータを2つの10msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータに分裂させ、10msのTTIを有する2つの圧縮されたボイスパケットと、10msのTTIを有する圧縮されて2つに分裂されたシグナリングデータとをそれぞれ多重化して、2つの10msのTTIを有するDPDCHを形成することが記載されているといえる。

してみれば、公知例には以下の発明(以下「公知技術」という。)が記載されているといえる。

「20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータを2つの10msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータに分裂させ、
10msのTTIを有する2つの圧縮されたボイスパケットと、10msのTTIを有する圧縮されて分裂されたシグナリングデータとをそれぞれ多重化して、2つの10msのTTIを有するDPDCHを形成すること。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを比較する。

ア アップリンクモバイル通信を行うのはユーザ機器(UE)であることは当然であるから、引用発明の「アップリンクモバイル通信の方法」は、本願発明の「ユーザ機器(UE)におけるアップリンクモバイル通信の方法」に相当する。

イ DTCHがユーザデータの伝送に用いられる個別通信チャネルであることは技術常識であるところ、引用発明の「DTCHパケット」はボイスフレームに含まれるパケット、すなわち、「ボイスパケット」といえる。そして、引用発明の「20ms TTI」を「第1のボイスパケット送信時間間隔(TTI)」と称することは任意であり、「20ms TTIのDTCHパケット」は「第1のボイスパケット送信時間間隔(TTI)を有するボイスパケット」といえる。
また、引用発明の「10ms TTIのDTCHパケット」は、「20ms TTIの DTCHパケット」を圧縮したものであるから、引用発明の「10ms TTI」を「第2のボイスパケットTTI」と称することは任意であり、「10ms TTIのDTCHパケット」は「第2のボイスパケットTTIを有する圧縮ボイスパケット」といえる。
よって、本願発明の「第1のボイスパケット送信時間間隔(TTI)を有する2つの連続ボイスパケットを、第2のボイスパケットTTIを有する2つの圧縮ボイスパケットに圧縮するステップ」と、引用発明の「20ms TTIの DTCHパケットを、10ms TTIのDTCHパケットに圧縮するステップ」とでは、「第1のボイスパケット送信時間間隔(TTI)を有する」「ボイスパケット」を、「第2のボイスパケットTTIを有する」「圧縮ボイスパケットに圧縮する」点で共通する。

ウ DCCHが、制御情報の伝達に用いられる個別制御チャネルであることは技術常識であるから、引用発明の「DCCH」は、制御情報である「シグナリングデータ」を伝送するチャネルであるといえ、「DCCHパケット」はシグナリングデータを構成するパケットといえる。そして、引用発明の「40ms TTI」を、「第1の専用制御チャネル(DCCH)TTI」と称することは任意である。
また、引用発明の「20ms TTIのDCCHパケット」は、「40ms TTIの DCCHパケット」を圧縮したものであるから、引用発明の「20ms TTI」を「第2のDCCH TTI」と称することは任意である。
ここで、シグナリングデータを構成するパケットを圧縮することは、シグナリングデータを圧縮することに他ならないから、引用発明の「40ms TTIのDCCHパケットを、20ms TTIのDCCHパケットに圧縮するステップ」は、本願発明の「第1の専用制御チャネル(DCCH)TTIに対応するシグナリングデータを、第2のDCCH TTIを有する圧縮シグナリングデータに圧縮するステップ」に含まれる。

エ 引用発明の「10msのTTIを有するradio frameにおいて」送信される「DPDCH」を「第1のサブパケット」と称し、「前記radio frameの後に続くradio frameにおいて」送信される「DPDCH」を「第2のサブパケット」と称するのは任意である。
よって、本願発明の「前記2つの圧縮ボイスパケットおよび前記圧縮シグナリングデータを多重化して、前記第2のDCCH TTIに相当するとともに前記第2のボイスパケットTTIの2倍に相当する関連TTIを有する1つの多重化パケットを形成するステップ」と「前記多重化パケットを、第1のサブパケットと第2のサブパケットに分裂させるステップ」と、引用発明の「DTCHパケットとDCCHパケットとでDPDCHを形成するステップ」とは、「ボイスパケット」と「シグナリングデータ」とで「第1のサブパケット」、「第2のサブパケット」を形成する点で共通する。

オ 引用発明の「10msのTTIを有するradio frame」を「サブパケットTTIを有する第1のサブパケット間隔」と称し、「前記radio frameの後に続くradio frame」を「前記第1のサブパケット間隔の後に続く第2のサブパケット間隔」と称することは任意である。
よって、引用発明の「10msのTTIを有するradio frameにおいてDPDCHを送信するステップ」は、本願発明の「サブパケットTTIを有する第1のサブパケット間隔中に前記第1のサブパケットを送信するステップ」に相当する。さらに、引用発明の「前記radio frameの後に続くradio frameにおいてDPDCHを送信するステップであって、radio frameが10msのTTIを有するステップ」は、本願発明の「前記第1のサブパケット間隔の後に続く第2のサブパケット間隔中に、前記第2のサブパケットを送信するステップであって、前記第2のサブパケット間隔が前記サブパケットTTIを有する、ステップ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「ユーザ機器(UE)におけるアップリンクモバイル通信の方法であって、
第1のボイスパケット送信時間間隔(TTI)を有するボイスパケットを、第2のボイスパケットTTIを有するボイスパケットに圧縮するステップと、
第1の専用制御チャネル(DCCH)TTIに対応するシグナリングデータを、第2のDCCH TTIを有する圧縮シグナリングデータに圧縮するステップと、
ボイスパケットとシグナリングデータとで第1のサブパケット、第2のサブパケットを形成するステップと、
サブパケットTTIを有する第1のサブパケット間隔中に前記第1のサブパケットを送信するステップと、
前記第1のサブパケット間隔の後に続く第2のサブパケット間隔中に、前記第2のサブパケットを送信するステップであって、前記第2のサブパケット間隔が前記サブパケットTTIを有する、ステップとを含む方法。」

(相違点1)
本願発明は「2つの連続ボイスパケット」を、「2つの圧縮ボイスパケット」に圧縮するのに対して、引用発明には2つの連続するパケットを圧縮することは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記2つの圧縮ボイスパケットおよび前記圧縮シグナリングデータを多重化して、前記第2のDCCH TTIに相当するとともに前記第2のボイスパケットTTIの2倍に相当する関連TTIを有する1つの多重化パケットを形成するステップと、前記多重化パケットを、第1のサブパケットと第2のサブパケットに分裂させるステップ」を備えるのに対して、引用発明では「ボイスパケットとシグナリングデータとで第1のサブパケット、第2のサブパケットを形成する」ものの、第1のサブパケット、第2のサブパケットを形成するための構成が特定されていない点。

以下、相違点について検討する。

(相違点1について)
ボイスフレームの送信において、ボイスフレームを構成するボイスパケットが連続していることは当然であるから、引用発明において、「2つの連続するボイスパケット」を、それぞれ「2つの圧縮ボイスパケット」に圧縮することは、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

(相違点2について)
上記「第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等」「2.公知技術」で認定したとおり、「20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータを2つの10msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータに分裂させ、
10msのTTIを有する2つの圧縮されたボイスパケットと、10msのTTIを有する圧縮されて分裂されたシグナリングデータとをそれぞれ多重化して、2つの10msのTTIを有するDPDCHを形成すること。」は、公知技術である。また、上記「第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等」「1.引用例」で述べたように、引用例の(3)にはダウンリンクにおける短縮TTIの技術をアップリンクに適用することが示唆されており、前記公知技術を引用発明に適用することは、当業者が容易に想到することができた事項である。
ここで、公知技術は、2つの10msのTTIを有するDPDCHを形成するにあたり、あらかじめ20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータの分裂を行って10msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータを形成し、当該シグナリングデータを10msのTTIを有する2つの圧縮されたボイスパケットと多重化して、2つの10msのTTIを有するDPDCHを形成するものであるが、パケットの分裂と多重化のいずれを先に行うかは、当業者にとって適宜選択できる設計的事項であるから、パケットの多重化を先に行うこと、つまり、10msのTTIを有する2つの圧縮されたボイスパケットと20msのTTIを有する圧縮されたシグナリングデータとを多重化して20msのTTIを有する多重化パケットを形成し、その後に多重化パケットを2つに分裂させて2つの10msのTTIを有するDPDCHを形成することは、当業者が設計的になし得る事項である。そして、パケットの多重化を先に行ってから多重化パケットを2つに分裂させる場合、多重化パケットのTTIは20msとなり、これは圧縮されたシグナリングデータのTTI(20ms)に相当し、圧縮されたボイスパケットTTI(10ms)の2倍となることは明らかである。
よって、引用発明のDPDCHを形成するための具体的な構成として、公知技術のDPDCHを形成するための構成を採用し、10msのTTIを有する連続する2つの圧縮ボイスパケットと、20msのTTIを有する1つの圧縮シグナリングデータとを多重化して20msのTTIを有する1つの多重化パケットを形成し、多重化パケットを分裂させて10msのTTIを有する2つのサブパケットを形成すること、及び、多重化パケットが、圧縮されたシグナリングデータのTTIに相当するとともに圧縮されたボイスパケットTTIの2倍に相当するTTIを有することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(請求人の主張について)
請求人は、令和1年6月19日に提出された意見書において、以下のように主張している。
「引例2では、DTCHとの多重化に関わらず、10msTTIを有するDPCCHを使用とすると思量します。
従いまして、仮に「公知例に記載された技術は,10msのTTIを有するDPDCHを生成するにあたり,パケットの分裂を行ってから多重化させるもの」であったとしても、公知例に記載された技術をパケットの多重化を行ってから分裂させるものとすることは実装上の問題ではなく,当業者が設計的になし得る事項でもないと思量します。また、仮に公知例に記載された技術を「パケットの多重化を行ってから分裂させる」場合、引例2の図4.2.4.1-1のDPCCHのみの部分および図4.2.4.1-2のDTX+DPCCHの部分のための10msのTTIを有するDPCCHが作成されませんので、引例2に基づいてパケットの多重化を行ってから分裂させる構成を当業者が設計的になし得るとことはないと思量します。
従いまして、「パケットの多重化を行ってから分裂させるものとすること」は、引用例2に記載された技術に基づいて当業者が設計的になし得る事項でもありません。」

しかしながら、公知例に記載された技術は、DTCHとDCCHとを圧縮して多重化することにより、短縮TTIを有するDPDCHを形成するものであり、DPCCHの作成に関係するものではないから、DPDCHの形成過程において、パケットの分裂と多重化の順序は、当業者が設計的になし得る事項であるといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-29 
結審通知日 2019-09-02 
審決日 2019-09-19 
出願番号 特願2016-534928(P2016-534928)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大濱 宏之  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 山本 章裕
原田 聖子
発明の名称 ボイスコール中の電流消費を削減するための、専用チャネル上での不連続送信を用いる制御チャネルシグナリングおよび電力制御  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ