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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C |
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管理番号 | 1359506 |
審判番号 | 不服2018-14243 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-26 |
確定日 | 2020-02-05 |
事件の表示 | 特願2016-575962「タイヤ及び車輪組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月 7日国際公開、WO2016/003723、平成29年 8月 3日国内公表、特表2017-521308〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)6月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年7月3日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年12月28日 :手続補正書の提出 平成29年10月24日付:拒絶理由通知 平成30年 1月30日 :意見書・手続補正書の提出 平成30年 6月18日付:拒絶査定 平成30年10月26日 :審判請求書・手続補正書の提出 2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成30年10月26日に提出された手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項より特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「半径方向内側部分を有するサイドウォールと、 前記半径方向内側部分に配置され、半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジを含むリムガードと、 前記リムガードの半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジの少なくとも一方に配置された装飾デカールと、 を備えるタイヤ。」 3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用文献1.特開平8-282218号公報 引用文献3.特開昭62-43306号公報 引用文献4.特表2007-532403号公報 引用文献5.米国特許出願公開第2013/0206305号明細書 4 引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 タイヤ最大幅の位置近傍とリム・ライン近傍との間に、タイヤ軸方向外側にゴムが隆起した環状リブよりなるリム・ガードを備えた、アスペクト・レシオが60以下の空気入りタイヤにおいて、(1)正規リムにリム組みし、正規内圧を充填したときに、該環状リブがリム・フランジよりタイヤ軸方向外側へ隆起していて、(2)該環状リブの子午線断面形状がほぼ三角形であり、ラジアル方向外側の辺の長さがラジアル方向内側の辺の長さより大きく、(3)該環状リブの少なくとも該ラジアル方向外側の辺の一部に多数のリッジを設けたことを特徴とする空気入りタイヤ」 イ 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】・・・。さらに、超偏平空気入りタイヤでは、サイドウオールの高さが小さくなり、ブランド名などの文字を刻印する範囲が極めて狭くなり、小さな文字しか刻印できないという不具合が生じていた。」 ウ 「【0013】 【作用】・・・。本発明による空気入りタイヤは、上記のように、リム・ガードを形成する環状リブの子午線断面形状がほぼ三角形であるので、従来の子午線断面形状がほぼ台形のリム・ガードと比べるとリム・ガードの放熱性に優れ、タイヤ重量増加を抑制することができるとともに、文字の刻印可能範囲が広くなる。」 エ 「【0020】図1は本発明による実施例1のタイヤの側面図の一部であり、図2は実施例1のタイヤの環状リブ(R)よりなるリム・ガードの子午線断面図であり、図3は図1のA?A断面の一部拡大断面図である。図1乃至3に示す実施例1のタイヤは、タイヤ最大幅の位置(M)近傍とリム・ライン(L)近傍との間に、タイヤ軸方向外側にゴムが隆起した環状リブ(R)よりなるリム・ガードを備えている。環状リブ(R)の子午線断面形状は、図示のように、ほぼ三角形であり、最大厚さ(W)が8.4mmで、ラジアル方向外側の辺(1)の長さが23.5mmで、ラジアル方向内側の辺(2)の長さが14.5mmであり、したがってラジアル方向外側の辺(1)の長さがラジアル方向内側の辺(2)の長さの1.61倍である。・・・」 オ 「 ![]() 」 (2)引用発明 したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。) 「サイドウォールのタイヤ最大幅の位置近傍とリム・ライン近傍との間に、タイヤ軸方向外側にゴムが隆起した環状リブよりなるリム・ガードを備え、該環状リブの子午線断面形状がほぼ三角形で、ラジアル方向外側の辺(1)とラジアル方向内側の辺(2)を含み、ラジアル方向外側の辺の長さがラジアル方向内側の辺の長さより大きく、該環状リブの少なくとも該ラジアル方向外側の辺の一部に多数のリッジを設けた空気入りタイヤ。」 (3)引用文献3の記載 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア 「車両タイヤのための装飾的な側壁は一般消費者によってよく受け入れられてきた。典型的に、これ等の装飾的な側壁は側壁の周りに周辺に位置づけされた白又は明るく彩色されたアップリケを含んでいる。」(第2頁左下欄第11-15行) イ 「本出願の譲受人であるファイアストンタイヤアンドラバーカンパニイ(Firestone Tire & Rubber Company)に譲渡された係属中の米国特許出願第 号(代理人ドケットW-4227)は薄い転写印刷(decal)の形の装飾的なアップリケを含むタイヤを提供している。」(第2頁右下欄第13-18行) (4)引用文献4の記載 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0014】 一実施形態において、色付きの標識410を、2つの離間した、円弧状の線分またはストライプ410a、410bとすることができる。図4に示すように、円弧状の線分410a、410bは、外側サイドウォール領域420の円周部の少なくとも一部の周りに延びている。この色付きの標識410は、タイヤ400の円周部の周りに延びる1つの又は離間した3つ以上の円弧状の線分を含むことができる。随意に、色付きの標識410を、タイヤ400の円周部全体にわたって延ばし、隙間のない環状リングとすることもできる。図4には、離間した円弧状の線分410a、410bが示されているが、色付きの標識410を、文字、数字、記号、形状、美的な装飾、装飾パターン、商標、またはこれらの組み合わせたものなどとすることができる。」 イ 「【0020】 上述した標識とマークは、多様な既存の技術に使用されるタイヤに適用することができる。加硫工程後のタイヤのサイドウォール領域に、標識またはマークを適用するのに適当な技術としては、限定するものではないが、 1)全体を参照して本願に援用する米国特許第5047110号明細書に記載されているような、熱転写処理または積層処理、 2)全体を参照して本願に援用する米国特許第5300164号明細書に記載されているような、接着剤を用いてタイヤのサイドウォール領域にデカールを貼る接着処理、 3)インクジェットプリント技術、及び 4)他のプリント技術および/または塗装処理が含まれる。 ・・・」 (5)引用文献5の記載 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 ア 「[0007] In addition, the term “color line” as used herein refers to a line having a color including white and black which is different from the base color of the surface of the side portion of the tire. Such a “color line” can be formed by printing, painting, or applying a decal, sticker or the like, or alternatively by embedding so-called color rubber beneath the cover rubber and subsequently exposing it. Meanwhile, it is often advantageous in enhancing the decorative effect without being affected by a body color of a vehicle on which the tire is mounted that the color of the “color line” is different from the body color of the vehicle since the color line has a distinctive color. 」 (合議体仮訳:またここで、「カラーライン」とは、タイヤのサイド部表面の地色とは相違する、白色および黒色をも含む色彩からなるラインをいうものとし、このような「カラーライン」は、印刷、塗装、デカールもしくはステッカー等の貼付けその他によって形成することができる他、カバーゴムの下層例に埋め込んだ、いわゆる色ゴムを事後的に露出させることによっても形成することができる。ところで、かかる「カラーライン」の色彩は、タイヤが装着される車両の車体色とは異なるものとすることが、多くの場合は、固有の彩の下で、車体色に影響されることなく装飾性を高める上で有利である。) 5 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「タイヤ最大幅の位置近傍とリム・ライン近傍との間」、「リム・ガード」、「ラジアル方向外側の辺」、「ラジアル方向内側の辺」はそれぞれ、本願発明の「半径方向内側部分」、「リムガード」、「半径方向外側エッジ」、「半径方向内側エッジ」に相当する。 (2)してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・一致点 「半径方向内側部分を有するサイドウォールと、前記半径方向内側部分に配置され、半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジを含むリムガードと、を備えるタイヤ。」 ・相違点 本願発明のタイヤは、「リムガードの半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジの少なくとも一方に配置された装飾デカール」を備えるのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。 (3)上記相違点について検討する。 引用文献1には、超偏平空気入りタイヤでは、サイドウオールの高さが小さくなり、ブランド名などの文字を刻印する範囲が極めて狭くなり、小さな文字しか刻印できないという不具合が生じていたこと(段落【0003】)、リム・ガードを形成する環状リブの子午線断面形状をほぼ三角形とすることで、従来の子午線断面形状がほぼ台形のリム・ガードと比べると、文字の刻印可能範囲が広くなること(段落【0013】)について記載されている。 また、タイヤの装飾手法としてデカールを用いることは、引用文献3-5に例示されるように、本願の優先日前において周知技術である。 してみると、引用発明において、段落【0003】等の記載に基づいて、リム・ガードの半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジの少なくとも一方にブランド名などの文字を配置しようとした当業者が、上記周知技術であるデカールを利用すること、すなわち、リムガードの半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジの少なくとも一方に装飾デカールを配置することは、当業者が容易にできたことである。 そして、本願発明において、リムガードの半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジの少なくとも一方に装飾デカールを配置することによる効果が、当業者が予測し得ない格別のものであるともいえない。 (4)したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「(3)本願発明と引用発明との対比」において、概略、引用文献3-5のいずれにも、「リムガード」に関して記載されていない旨主張している。 しかしながら、上記(3)のとおり、タイヤにデカールによる装飾を施すことが、引用文献3-5にあるように本願優先日前において周知であったといえるところ、引用発明において、当該周知技術に基づいてデカールによる装飾を施そうと考えた当業者が、その設ける位置について、リムガードの半径方向外側エッジ及び半径方向内側エッジの少なくとも一方とすることは、容易になし得たことであるといえる。 したがって、当該主張を採用することはできない。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-09-03 |
結審通知日 | 2019-09-10 |
審決日 | 2019-09-24 |
出願番号 | 特願2016-575962(P2016-575962) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松岡 美和 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
植前 充司 大島 祥吾 |
発明の名称 | タイヤ及び車輪組立体 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |