• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
管理番号 1359520
異議申立番号 異議2019-700300  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-16 
確定日 2019-12-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6405020号発明「アルミニウム材のフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6405020号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8-13〕について訂正することを認める。 特許第6405020号の請求項1ないし3、5ないし12に係る特許を維持する。 特許第6405020号の請求項4及び13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6405020号の請求項1-13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年10月6日に出願され、平成30年9月21日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成31年4月16日に特許異議申立人葛西文枝(以下、「申立人」という。)により本件特許の全請求項に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和1年6月11日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和1年8月13日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和1年10月15日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)?(19)のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする」と記載されているのを、
「前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする」に訂正する。請求項1を直接または間接的に引用する請求項2、3、5?7も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法」と記載されているのを、
「請求項1?3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?4のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。」と記載されているのを、
「請求項1?3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。」と記載されているのを、
「請求項1?3、5、6のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有する」と記載されているのを、
「前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有する」に訂正する。請求項8を直接または間接的に引用する請求項9?12も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0009】に記載された「前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする。」を「前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする。」に訂正する。

(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0012】の記載を削除する。

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0013】に記載された「前記第1?第4の本発明のいずれかにおいて」を「前記第1?第3の本発明のいずれかにおいて」に訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0014】に記載された「前記第1?第4の本発明のいずれかにおいて」を「前記第1?第3の本発明のいずれかにおいて」に訂正する。

(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0017】に記載された「前記第1?第6の本発明のいずれかにおいて」を「前記第1?第3、第5、第6の本発明のいずれかにおいて」に訂正する。

(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0018】に記載された「前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする。」を「前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする。」に訂正する。

(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0023】の記載を削除する。

(15)訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0044】の記載(表1)を削除する。

(16)訂正事項16
願書に添付した明細書の段落【0045】に記載の表2について、アルミニウム合金ベア材にMgを含有しない試験材の行を削除した表に訂正する。

(17)訂正事項17
願書に添付した明細書の段落【0046】に記載の表3について、アルミニウム合金ベア材にMgを含有しない試験材の行を削除した表に訂正する。

(18)訂正事項18
願書に添付した明細書の段落【0047】に記載の表4について、アルミニウム合金ベア材にMgを含有しない試験材の行を削除した表に訂正する。

(19)一群の請求項について
本件訂正請求のうち訂正事項1ないし5は、一群の請求項〔1-7〕に対して、訂正事項6及び7は、一群の請求項〔8-13〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正のうち訂正事項8ないし12は、一群の請求項〔1-7〕に対して、訂正事項13及び14は、一群の請求項〔8-13〕について請求されたものである。
さらに、明細書に係る訂正のうち、訂正事項15ないし18は、一群の請求項〔1-7〕及び〔8-13〕について請求されたものである。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1のうち「Mg:0.1?0.7mass%および、」という特定事項を付加する訂正は、訂正前の請求項1のアルミニウム合金部材に含有されているMgの量を限定した訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、訂正事項1のうち、下付の文字を正しく表示する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
アルミニウム合金部材に含有されているMgの量を「Mg:0.1?0.7mass%」とすることは、訂正前の請求項4や明細書段落【0026】に記載されている。また、標準生成自由エネルギーの単位を(kg cal/gr mol O_(2))とすることは、明細書段落【0025】にも記載されているように技術常識である。よって、訂正事項1は、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれかの記載を引用する記載であるところ、削除された請求項4を引用しないものとして、引用請求項を「請求項1?3のいずれか」に訂正したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項3は、引用請求項の数を減らしただけで何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項6が請求項1?4のいずれかの記載を引用する記載であるところ、削除された請求項4を引用しないものとして、引用請求項を「請求項1?3のいずれか」に訂正したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項4は、引用請求項の数を減らしただけで何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項7が請求項1?6のいずれかの記載を引用する記載であるところ、削除された請求項4を引用しないものとして、引用請求項を「請求項1?3、5、6のいずれか」に訂正したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項5は、引用請求項の数を減らしただけで何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6のうち「Mg:0.1?0.7mass%および、」という特定事項を付加する訂正は、訂正前の請求項8のアルミニウム合金部材に含有されているMgの量を限定した訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、訂正事項6のうち、下付の文字を正しく表示する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
アルミニウム合金部材に含有されているMgの量を「Mg:0.1?0.7mass%」とすることは、訂正前の請求項13や明細書段落【0026】に記載されている。また、標準生成自由エネルギーの単位を(kg cal/gr mol O_(2))とすることは、明細書段落【0025】にも記載されているように技術常識である。よって、訂正事項6は、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項13を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項7は、訂正前の請求項13を削除するものであるから、本件明細書等に記載された範囲内での訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項8
訂正事項8は、上記訂正事項1による請求項1の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)訂正事項9
訂正事項9は、上記訂正事項2による請求項4を削除する訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(10)訂正事項10
訂正事項10は、上記訂正事項3による請求項5の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項10は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(11)訂正事項11
訂正事項11は、上記訂正事項4による請求項6の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項11は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(12)訂正事項12
訂正事項12は、上記訂正事項5による請求項7の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項12は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(13)訂正事項13
訂正事項13は、上記訂正事項6による請求項8の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項13は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(14)訂正事項14
訂正事項14は、上記訂正事項7による請求項13を削除する訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項14は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(15)訂正事項15-18
訂正事項15-18は、上記訂正事項1及び6による請求項1、8の訂正に伴い、発明の範囲外となった実施例を削除する明細書の訂正であるから、訂正事項15-18は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8-13〕について訂正することを認める。

なお、願書に添付した明細書の段落【0026】及び【0030】には「Mg2Si」、「Al2O3」と記載されているのに対し、訂正請求書に添付した訂正明細書の段落【0026】及び【0030】では「Mg_(2)Si」、「Al_(2)O_(3)」と変更されている。しかし、当該変更については、訂正請求書には、訂正事項として含まれていないことから、段落【0026】及び【0030】の記載は変更せずに、「Mg2Si」、「Al2O3」のままとする。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ請求項に付された番号に従い、「本件発明1」等という。)は、令和1年8月13日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-3、5-12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
Siを3?13mass%、Mgを0.1?5.0mass%含有するAl合金ろう材がAl製芯材の片面または両面にクラッドされたブレージングシートと、被接合部材であるベア材のアルミニウム合金部材とを組み付け、非酸化性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、
前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とするアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項2】
前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項3】
前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項6】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項7】
前記非酸化性ガス雰囲気は、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気であることを特徴とする請求項1?3、5、6のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項8】
非酸化性ガス雰囲気でMgを含有するAl合金ろう材によるフラックスフリーでのろう付にベア材の被接合部材として供されるフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材であって、
前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とするフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項9】
前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項10】
前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項11】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8?10のいずれかに記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項12】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8?10のいずれかに記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項13】(削除)」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1-13に係る特許に対して、当審が令和1年6月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1-13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1-13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.甲各号証の記載
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開昭54-61355号公報)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審で付与した。以下同様。)

「2. 特許請求の範囲
1. ・・・
2. アルミニウムあるいは耐食アルミニウム合金を心材とし、Si6?14%あるいはSi6?14%、Mg0.3?3%を含むアルミニウム合金を皮材とするブレージングシートを液体通路構成材として用い、Sn0.02?0.09%さらにMg0.1?2%、Mn0.1?2%、Zn0.1?5%、Cu0.01?2%、Si0.01?2%、Cr0.01?5%、Zr0.01?0.5%のうち1種あるいは2種以上を同時に含むアルミニウム合金をフィン材として用い、これらをろう付けしてのち、550℃より200℃までの間を8℃/Min以上の冷却速度で処理することを特徴とするアルミニウム合金製熱交換器の製造法。」(特許請求の範囲)

「また、フィン材はSn0.02?0.09%あるいはさらにMg0.1?2%、Mn0.1?2%、Zn0.1?5%、Cu0.01?2%、Si0.01?2%、Cr0.01?0.5%、Zr0.01?0.5%のうち1種あるいは2種以上を同時に含むアルミニウム合金を用いる。」(公報第2ページ右上欄第18行-左下欄第2行)

「因に交互浸漬試験とは、3%NaCl(pH=3)に40℃、30分間の浸漬と、50℃、30分間の乾燥を1ケ月間繰り返すもので、最大腐食深さが0.2mmより小さければ良好で0.2mmより大きければ不良と判定する。」(公報第3ページ右上欄下から第7-3行)

「第1表 フィン材の化学成分



「第2表 ブレージングシートの化学成分



「第4表 交互浸漬試験侵食深さ(mm)



(2)引用発明
第4表において、「No.10」、つまり、フィンが「D」でブレージングシートが「d」で「真空ろう付け」の場合、「冷却速度」が「7℃/min」以外では良好な結果をもたらすことが開示されている。そして、第1表によると、フィン「D」は、Snを0.08%含むことが示され、第2表によると、ブレージングシート「d」は、皮材においてSiを12%、Mgを1.0%含むことが示されている。また、「真空ろう付け」がフラックスを用いないろう付けであることは技術常識である。

よって、甲第1号証の特許請求の範囲第2項や公報第1ページ右下欄第16行-第4ページ右上欄第7行、第1-5表の記載からみて、甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「Siを12%、Mgを1.0%含有するアルミニウム合金の皮材がアルミニウムあるいは耐食アルミニウム合金の心材にクラッドされたブレージングシートと、被接合部材であるフィン材のアルミニウム合金部材とを組み付け、真空中でフラックスを用いずにろう付するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、前記フィン材のアルミニウム合金部材中に、Snを0.08%含有するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。」

(3)甲第2号証の記載事項
甲第2号証(アルミニウムブレージングハンドブック、社団法人軽金属溶接構造協会発行、平成4年1月10日)には、次の事項が記載されている。

「現行のアルミニウムろう付法をフラックスの有無によって分類したものを図2.2に示す。」(第20頁第5-6行)



」(第20頁)

「一般のフラックスろう付用にはAl-Si系ろうが使用されるが、真空ろう付用のブレージングシートには少量のMg(0.2?2.0%)の添加を必要とするが、これは米国GE社の開発によるもので、不可欠な重要添加元素である。」(第21頁第1-3行)

「そこで1970年頃出現したのがGE社の開発によるMg入りAl-Siろう材による高真空のろう付法で、すなわちフラックスレスろう付の出現である。その後VAW法のような雰囲気ガス等による各種のフラックスレスろう付が行われた。」(第22頁第2-5行)

「フラックスを用いない不活性ガス雰囲気ろう付法では、雰囲気制御が最大のポイントで、酸素濃度が5ppm以下、露点が-65℃以下という条件が不可欠である。」(第119頁第3-5行)

(4)甲第3号証の記載事項
甲第3号証(国際公開第2012/143233号)には、次の事項が記載されている。

「In accordance with the present invention it has been found that this invention allows for the manufacture of brazed assemblies incorporating aluminium workpieces including the aluminium alloy extruded tube and whereby there is no demand to provide a brazing flux material, like a fluoride flux, in a controlled atmosphere brazing process. During the brazing cycle the subject wetting agent at or near the extruded product surface region and that diffuses from the extruded product to the surface region into the molten aluminium-silicon filler alloy used to braze the extruded tube stock to the other components, such as fins and headers, and whereby the wetting agent facilitates a good flowability of the molten filler alloy such that in a controlled atmosphere brazing process a good fillet formation is being obtained, even without the use of a flux material.
(当審訳)
本発明によれば、上記アルミニウム合金押出チューブを含んだアルミニウムワークピースを組み込んでろう付けアッセンブリを製造することにより、雰囲気制御ろう付け工程において、フッ化物からなるフラックスなどのろう付けフラックス材料を用いる必要がなくなる。ろう付けサイクルの際に、フィンやヘッダーのような他の部材に押出チューブ材をろう付けする際に用いる溶融したアルミニウム-シリコンろう材合金の中に、上記押出材の表面あるいはその近傍にある上記濡れ材(wetting agent)が拡散していき、これにより、雰囲気制御ろう付け工程において、たとえフラックス材を用いなくても優れたフィレットが形成できるように、上記濡れ材が、溶融ろう材合金の流動性向上を促進する。」(第3ページ第17-27行)

「In another aspect of the invention there is provided a method of manufacturing an article, a heat exchanger, joined by brazing or an assembly of brazed components, comprising the steps of:
(a) providing or forming the components to be brazed together of which at least one is made from an extruded aluminium alloy tube product, in particular a multi-porthole tube, according to this invention;
(b) assembling the components, the multi-porthole tube and other components such as fins, into an assembly;
(c) brazing the assembly without applying a brazing flux on the assembly of components, and brazing the whole assembly in a controlled inert gas atmosphere at a brazing temperature, typically at a temperature in a range of about 540°C to 615°C, e.g. about 600°C or about 590°C, for a period long enough for melting and spreading of a brazing material, preferably an Al-Si alloy brazing material, joining the various components including the extruded tube product and fins, e.g. a dwell time of 2 to 5 minutes, typically at around 2 or 3 minutes; and whereby typically the oxygen content in the brazing atmosphere should be as low as reasonable possible, and is preferably below about 200 ppm, and more preferably below about 100 ppm, for example at 15 ppm or less;
(d) cooling of the brazed assembly, typically to below about 100°C, e.g. to ambient temperature.
(当審訳)
本発明の他の側面においては、ろう付け、あるいはろう付け部材のアッセンブリにより接合された、熱交換器のような物品を製造する方法を提供することができ、その方法は、次の工程を含む。
(a)少なくともアルミニウム合金押出チューブ製品、この発明によれば、特に多穴管、からなる部品を少なくとも1つ含むろう付けすべき部品を準備又は形成すること、
(b)これらの部品、例えば多穴管とフィンのような他の部品を組み付けて一つのアッセンブリとすること、
(c)これらの部品アッセンブリにろう付けフラックスを適用することなくろう付けし、そのろう付けは、制御された不活性ガス雰囲気において、ろう付け温度は、通常は、540℃?615℃の範囲、例えば約600℃あるいは590℃とし、時間は、ろう材、好ましくは、Al-Siろう材合金が溶融し、流動し、押出チューブ製品及びフィンを含む種々の部品を接合するのに十分な時間、例えば、2?5分、通常は約2分又は3分の保持時間とし、そして、通常は、ろう付け雰囲気の酸素濃度は、できる限り低くし、好ましくは約200ppmより低く、より好ましくは、約100ppmより低く、例えば15ppm以下とするのがよいこと、
(d)ろう付けされたアッセンブリを、通常は100℃以下に周囲温度を冷やすこと。」(第7ページ第18行-第8ページ第4行)

「For the purposes of this invention, and as used herein, the term "controlled atmosphere brazing" or "CAB" refers to a brazing process which utilizes an inert atmosphere, for example, nitrogen, argon or helium in the brazing of aluminium alloy articles, and is distinct from vacuum brazing in particular in that with CAB the brazing atmosphere in the furnace during the brazing operation is at about regular atmospheric pressure, although a slight under-pressure (for example working at a pressure of about 0.1 bar or more) or having a slight over-pressure can be used to facilitate the control of the inert gas atmosphere and to prevent an influx of oxygen containing gas into the brazing furnace.
(当審訳)
この発明の目的においては、そして、ここで用いられているように、「雰囲気制御ろう付け」あるいは「CAB」の用語は、アルミニウム合金部材のろう付けにおいて、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴンあるいはヘリウムを用いるろう付け工程を意味し、真空ろう付けとは区別され、特に、CABにおいては、ろう付け処理中のろう付け雰囲気は、若干の減圧(例えば約0.1barの圧力での実施)あるいは若干の増圧が不活性ガス雰囲気の制御を促進し酸素含有ガスがろう付け炉内に侵入することを防止するために適用されうるものの、おおよそ通常の圧力となる。」(第8ページ6-14行)

「CLAIMS
1. An aluminium alloy extruded tube product for a heat exchanger assembly and made from an aluminium alloy selected from the group consisting of AA5xxx, AA6xxx and AA8xxx-series aluminium alloys and comprising furthermore a purposive addition of one or more wetting elements selected from the group consisting of: Bi 0.03% to 0.5%, Pb 0.03% to 0.5%, Sb 0.03% to 0.5%, Li 0.03% to 0.5%, Se 0.03% to 0.5%, Y 0.03% to 0.05%, Th 0.03% to 0.05%, and the sum of these elements being 0.5% or less.
2. An aluminium alloy extruded tube product according to claim 1 , and wherein the tube comprises solely a purposive addition of Bi in a range of 0.03 to 0.5%, and preferably 0.03 to 0.35%.
(当審訳)
特許請求の範囲
1.AA5xxx、AA6xxx、AA8xxx系の群から選択され、目的に応じて、Bi 0.03%?0.5%,Pb 0.03%?0.5%,Sb 0.03%?0.5%,Li 0.03%?0.5%,Se 0.03%?0.5%,Y 0.03%?0.05%,Th 0.03%?0.05%からなる群から選択される1又はそれ以上の濡れ元素(wetting element)を総量が0.5%以下の範囲で含有するアルミニウム合金から製造された、熱交換器アッセンブリ用のアルミニウム合金押出チューブ。
2.Biのみを0.03%?0.5%の範囲で目的的に添加し、好ましくは、0.03%?0.35%添加している、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金押出チューブ。」(特許請求の範囲)

(5)甲第4号証の記載事項
甲第4号証(アルミニウムハンドブック(第8版)、一般社団法人日本アルミニウム協会発行、2017年2月15日)には、次の事項が記載されている。

第272ページには、例えば、8000系のアルミニウム合金のうち8010合金は、Mg含有量が0.10?0.50%であることが記載されている。

3.当審の判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「皮材」は本件発明1の「ろう材」に相当し、以下同様に「心材」は「芯材」に、「フィン材のアルミニウム合金部材」は「ベア材のアルミニウム合金部材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「Sn」は、本件発明1の「融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種」である。
以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「Siを12mass%、Mgを1.0mass%含有するAl合金ろう材がAl製芯材の片面または両面にクラッドされたブレージングシートと、被接合部材であるベア材のアルミニウム合金部材とを組み付け、フラックスを用いずにろう付するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種を0.08mass%含有するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。」
(相違点1)
本件発明1は、非酸化性ガス雰囲気中でろう付けするのに対し、引用発明は、真空中でろう付けする点。
(相違点2)
本件発明1は、アルミニウム合金部材中に、Mgを0.1?0.7mass%含有するのに対し、引用発明は、フィン材のアルミニウム合金部材中に、Mgを含有しない点。

イ 判断
a 甲第1号証のみの場合
上記(相違点2)について検討する。
本件発明1は、本件特許公報の段落【0026】に「Mg:0.1?0.7mass% アルミニウム合金部材中に添加されたMgは、ベア材に添加されたSiやろう材から拡散してきたSiと化合物を形成することでMg2Siを形成し、材料強度を高める。また、ベア材表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解する。含有量が0.1mass%未満であれば、その効果が不十分であり、0.7mass%を超えると、開放部を有する継手ではベア材表面でMgO皮膜が成長しやすくなり、接合が阻害される。したがって、所望によりMgを含有する場合は、その含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.2mass%、上限を0.6mass%とすることがなお望ましい。」と記載されているように、Mgの含有量が0.7mass%を超えると、開放部を有する継手ではベア材表面でMgO皮膜が成長しやすくなり、接合が阻害されるため、Mgの含有量の上限を0.7mass%に定めているものである。
一方、甲第1号証の特許請求の範囲第2項や公報第2ページ右上欄第18行-左下欄第2行には、フィン材のMg含有量として0.1?2%が示されているものの、甲第1号証の実施例においては、第1表においてMgの含有量が1.0%と1.5%のものが記載されるのみであり、Mgの含有量を0.7%以下に抑えることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第1号証に接した当業者が、開放部を有する継手のベア材表面でMgO皮膜が成長し、接合が阻害されるのを避けるため、Mgの含有量の上限を2%から0.7%に変更する動機はなく、引用発明のフィン材のアルミニウム合金部材中に0.1?0.7mass%のMgを含有させることが当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

b 甲第2号証から甲第4号証も考慮に入れた場合
上記「2.(4)」の甲第3号証の記載事項より、甲第3号証には、ろう材として、好ましくは、Al-Siろう材合金を用いること、不活性ガス雰囲気においてフラックスを適用することなくろう付けすること、アルミニウム合金をAA5xxx、AA6xxx、AA8xxx系の群から選択すること、及び、アルミニウム合金にBiを0.03%?0.5%の範囲で添加することが記載されていることがわかる。
また、「Bi」は、本件発明1の「融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種」である。
さらに、上記「2.(5)」の甲第4号証の記載事項より、8000系のアルミニウム合金のうち8010合金は、Mg含有量が0.10?0.50%であることがわかる。
以上のことから、甲第3号証において、アルミニウム合金として例えば8010合金を選択すると、甲第3号証には、Al-Siろう材合金を用いて、不活性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付けするアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、アルミニウム合金部材中に、Mg:0.10?0.50mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種を0.03?0.5mass%含有させることが記載されていると認められる。
しかし、引用発明と甲第3号証に記載された発明とは、アルミニウム材のフラックスフリーろう付方法という点で技術分野は関連するものの、引用発明においては、Mgを1.0%含有するアルミニウム合金の皮材を用いて真空中でろう付けするのに対し、甲第3号証に記載された発明においては、ろう材にMgを含有せず、不活性ガス雰囲気中でろう付けしており、そのろう付けの条件は大きく異なるものである。
そうすると、引用発明に甲第3号証に記載された発明を適用する動機はないというべきであり、引用発明のフィン材のアルミニウム合金部材中にMgを0.10?0.50mass%含有させて、相違点2に係る構成とする動機はない。
また、甲第2号証及び甲第4号証には、Al-Si-Mg系合金のろう材を使用した非酸化性ガス雰囲気中でのフラックスフリーろう付方法において、被接合部材であるアルミニウム合金部材中のMgの含有量を0.1?0.7mass%とする相違点2に係る構成については記載されていない。
よって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

c したがって、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 本件発明2、3、5-7について
本件発明2、3、5-7はいずれも、本件発明1の全ての発明特定事項を含むものであり、上記(1)で説示したとおり、本件発明1が、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、3、5-7も、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3) 本件発明8について
ア 対比
本件発明8と引用発明とを対比すると、引用発明の「アルミニウム合金の皮材」、「被接合部材であるフィン材のアルミニウム合金部材」は、本件発明8の「Al合金ろう材」、「ベア材の被接合部材として供される(フラックスフリーろう付用)アルミニウム合金部材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「Sn」は、本件発明8の「融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種」である。
以上のことから、本件発明8と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「Mgを含有するAl合金ろう材によるフラックスフリーでのろう付にベア材の被接合部材として供されるフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材であって、
前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種を0.08mass%含有するフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。」
(相違点3)
本件発明8は、非酸化性ガス雰囲気中でろう付けするのに対し、引用発明は、真空中でろう付けする点。
(相違点4)
本件発明8は、アルミニウム合金部材中に、Mgを0.1?0.7mass%含有するのに対し、引用発明は、フィン材のアルミニウム合金部材中に、Mgを含有しない点。

イ 判断
上記(相違点4)は、上記「(1)ア」に記載された(相違点2)と同じであるから、上記「(1)イ」の判断で示したとおり、上記相違点4に係る本件発明8の構成は、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

したがって、相違点3を検討するまでもなく、本件発明8は、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 本件発明9-12について
本件発明9-12はいずれも、本件発明8の全ての発明特定事項を含むものであり、上記(3)で説示したとおり、本件発明8が、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明9-12も、引用発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5) 特許異議申立人の意見について
ア 申立人は、「甲第1号証には、・・・Mg含有量の範囲を0.1?2%の範囲で許容する記載がされていると共に、0.1?0.7mass%の範囲での添加を否定する記載は一切ありません。」と主張する。
しかし、上記「(1)イ a」で述べたとおり、甲第1号証に記載されているのは、フィン材の化学成分としてのMg含有量を、本件発明1よりも広い0.1?2%の範囲で特定することだけであって、その実施例についても、1.0%としたもの(第1表のG)及び1.5%としたもの(第1表のC)しか示されていないことから、「Mg:0.1?0.7mass%」の範囲にまで限定することが記載及び示唆されているものとは認められない。そうすると、甲第1号証に、0.1?0.7mass%の範囲での添加を否定する記載がないからといって、Mgの含有量の上限を0.7%に制限する動機があるとまではいえないから、申立人の主張を採用することはできない。

イ 申立人は、「甲第3号証には、・・・ろう付接合における被接合部材としてのアルミニウム合金押出チューブを不活性ガス雰囲気においてろう付けすることが記載されています。・・・そして、・・・6101又は6101A合金が好ましいこと、そして、この基本成分に、・・・Biを0.03%?0.5%の範囲で含有させることが記載されています。
ここで、6101合金及び6101A合金は、・・・前者のMgの含有量が0.35-0.8%、後者のMg含有量が0.40-0.9%であり、このMg含有量は、本件特許発明1のA41要件の「Mgを0.1?0.7mass%」含有する要件と重複しています。
また、上述したBiは、明らかに上記A42要件において定義された金属元素に相当し、かつ、その含有量もA42要件と重複しています。
・・・ そうすると、「非酸化性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付けするアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法」が技術常識であり、「フラックスフリーろう付方法において、Al-Si-Mg系合金のろう材を使用すること」も技術常識である状況において、「非接合部材」として甲第3号証に記載の6000系合金を基本成分とするアルミニウム合金押出チューブを採用することについて、何ら困難性はありません。」と主張する。
しかし、甲第3号証においては、本件発明1の「ろう材」に相当する「ろう材合金」は、翻訳文の段落[13]や[28]に記載されるように「Al-Siろう材合金」を前提としており、本件発明1のような「Al-Si-Mg系合金のろう材」を使用することを前提としていない。
そして、「フラックスフリーろう付方法において、Al-Si-Mg系合金のろう材を使用すること」が技術常識であったとしても、非酸化性ガス雰囲気中のフラックスフリーろう付方法において、「Al-Siろう材」の代わりに「Al-Si-Mg系合金のろう材」を使用することを示す文献は一切ないことから、甲第3号証に記載された発明において、「Al-Siろう材合金」の代わりに「Al-Si-Mg系合金のろう材」を使用することは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。また、仮に、容易に想到し得たとしても、甲第3号証には、ろう材合金中のSi及びMgの含有量について一切記載されていないことから、Siを3?13mass%、Mgを0.1?5.0mass%含有させることは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲第3号証が開示する発明から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許法第29条第1項第3号について
申立人は特許異議申立書で、訂正前の請求項1、2、8及び9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であると主張している。
しかし、訂正後の本件発明1、2、8及び9は、上記第4で示したとおり、引用発明と相違しており、同一ではない。よって、申立人の主張は採用できない。

2.特許法第36条第6項第1号について
ア 訂正明細書の段落【0007】には、「本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、開放部を有する継手においても安定した接合状態が得られるフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材を提供することを目的とする。」と記載され、安定した接合状態が得られることを課題としている。
また、訂正明細書の段落【0045】-【0048】には、以下の表2-5が記載されている。

「【表2】



「【表3】



「【表4】



「【表5】



イ 上記表2?4には、Siを3?13mass%、Mgを0.1?5.0mass%含有するAl合金ろう材を用いて非酸化性ガス雰囲気中でアルミニウム材のフラックスフリーろう付をする際、アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有すると、良好なろう付性を示す(安定した接合状態が得られる)ことが開示されている。
一方、表5の比較例では、No.1及び2において、アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有しない例が示され、No.1、3及び4において、アルミニウム合金部材中に、Mgを0.1?0.7mass%含有しない例が示されているが、当該比較例では、接合率50%以下で十分な接合(安定した接合状態)が得られないことが開示されている。

ウ 上記イから、非酸化性ガス雰囲気中でアルミニウム材のフラックスフリーろう付をする際、アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することが特定された本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者が、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるというべきである。

エ したがって、本件発明1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とはいえない。同様に、本件発明2、3及び5-12の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とはいえない。

3.特許法第36条第6項第2号について
ア 本件発明1は、「アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有する」ものであるから、本件発明1に係るアルミニウム合金部材は、Mg:0.1?0.7mass%、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%、含有するアルミニウム合金であることが、明確に把握される。また、本件発明1のアルミニウム合金部材が、不純物等のその他の元素等を含有し得るとしても、発明が不明確ということにはならない。

イ したがって、本件発明1は明確であり、本件発明1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。同様に、本件発明2、3及び5-12の記載も、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3、5ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3、5ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4及び13に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4及び13に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルミニウム材のフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材のフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用等の熱交換器では、部材を組み付けた後にろう付接合することによって製造されている。良好なろう付を行うためには、合金部材の表面における酸化皮膜を破壊する必要があり、材料表面の酸化皮膜を破壊するために、フラックスを用いてろう付を行う方法が広く知られている。フラックスを用いてろう付接合を行う方法としては、ノコロックフラックスを用いた工法が主流となっている。しかし、高強度化のためにMgを含有させたアルミニウム合金を使用した場合には、Mgがフラックスと反応し、フラックスの不活性化反応(フッ化Mgなどの生成)が起きてしまうという問題がある。そこで、フラックスを用いずにろう付接合を行う方法が提案されている。
【0003】
フラックスを用いずに良好なろう付を行うための方法として、ろう材にAl-Si-Mg系合金を用いることが提案されている。ろう材にAl-Si-Mg系合金を用いることで、ろう付時において、ろう材の融点付近でろう材中のMgが接合部表面のAl酸化皮膜(Al_(2)O_(3))を還元分解して合金表面の酸化皮膜を破壊するため、良好なろう付を行うことが可能となる。
例えば、特許文献1では、フィン材およびブレージングシートのろう材にMgを添加し、かつ、添加するMgの量を調整して、真空ろう付時における炉内へのスケール付着の問題を解決しながら、高強度で軽量な熱交換器の製造を可能にしている。
また、特許文献2では、不活性ガス雰囲気下におけるフラックスフリーのろう付方法として、Mg、Si等を含有する芯材用のAl合金に、Ag、Be、Bi等の元素やミッシュメタルを添加したろう材用のAl合金をクラッドしたものを用い、ろう付時の濡れ拡がり性を改善させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-145439号公報
【特許文献2】特許第4996255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、Al-Si-Mg系ろう材を用いるフラックスフリーろう付では、溶融して活性となったろう材中のMgが接合部表面のAl酸化皮膜(Al_(2)O_(3))を還元分解することで接合が可能となる。また、雰囲気の影響を受けにくい閉塞的な面接合継ぎ手などでは、Mgによる酸化皮膜の分解作用により、ろう材を有するブレージングシート同士を組み合わせた継手や、ブレージングシートとろう材を有さない被接合部材(ベア材)とを組み合わせた継手で、良好な接合状態が得られる。
【0006】
しかしながら、雰囲気の影響を受けやすい開放部を有する継手形状の場合は、十分な接合状態が得られ難い。特に、ブレージングシートとベア材とを組み合わせて接合する場合は、ベア材の表面のAl酸化皮膜の分解が進み難く、十分な接合を得ることが難しい。さらに、軽量化・高強度化等のためにMgが添加されたベア材を用いる場合は、分解され難く安定した酸化皮膜であるMgO皮膜がろう付時に成長しやすく、接合が著しく阻害されてしまう。このことから、開放部を有する継手においても安定した接合状態が得られるようなフラックスフリーろう付方法が強く望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、開放部を有する継手においても安定した接合状態が得られるフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、低融点、かつ、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い金属元素をベア材の合金に添加することで、ベア材の緻密なAl酸化皮膜が変質してろう付時に分解されやすくなり、その結果、ブレージングシートとベア材とのろう付による接合状態が改善されることを発見した。
低融点元素が添加されたベア材表面では、ろう付昇温過程でベア材表面に低融点元素が濃縮し、緻密な酸化皮膜の成長を抑制するため、Mgを含有する活性な溶融ろう材と接触した際に、酸化皮膜が分解されやすくなったと考えられる。また、Mgが添加されたベア材表面においても同様に、ろう付昇温過程で低融点元素がベア材表面に濃縮し、MgO皮膜の成長が抑制されるため、安定した接合状態が得られると考えられる。なお、酸化物の標準生成自由エネルギーが低い低融点元素をベア材に添加すると、表面で濃縮した低融点元素が酸化物層を形成して接合を阻害するため、ベア材に添加する元素としては、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い低融点元素を選択することが重要である。
【0009】
すなわち、本発明のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法のうち、第1の本発明は、Siを3?13mass%、Mgを0.1?5.0mass%含有するAl合金ろう材がAl製芯材の片面または両面にクラッドされたブレージングシートと、被接合部材であるベア材のアルミニウム合金部材とを組み付け、非酸化性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、
前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法は、前記第1の本発明において、前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法は、前記第1の本発明において、前記アルミニウム合金部材が、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0012】(削除)
【0013】
第5の本発明のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法は、前記第1?第3の本発明のいずれかにおいて、前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0014】
第6の本発明のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法は、前記第1?第3の本発明のいずれかにおいて、前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0017】
第7の本発明のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法は、前記第1?第3、第5、第6の本発明のいずれかにおいて、前記非酸化性ガス雰囲気は、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気であることを特徴とする。
【0018】
第8の本発明のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材は、非酸化性ガス雰囲気でMgを含有するAl合金ろう材によるフラックスフリーでのろう付にベア材の被接合部材として供されるフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材であって、
前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とする。
【0019】
第9の本発明のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材は、前記第8の本発明において、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0020】
第10の本発明のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材は、前記第8の本発明において、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0021】
第11の本発明のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材は、前記第8?第10の本発明のいずれかにおいて、前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0022】
第12の本発明のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材は、前記第8?第10の本発明のいずれかにおいて、前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0023】(削除)
【0024】
以下、成分等の限定理由について説明する。
【0025】
1.アルミニウム合金部材
融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上:0.01?0.5mass%
上記した金属元素は、ろう付時にベア材表面に濃縮するため、緻密なAl酸化皮膜やMgO皮膜の成長を抑制する。含有量が0.01mass%未満では、この効果が不十分であり、含有量が0.5mass%以上では、その効果が飽和する。したがって、上記金属元素の含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.05mass%、上限を0.3mass%とすることがより好ましい。また、上記金属元素としては、好適には、Bi、In、Sn、K、Se、Na、Pbが挙げられる。
【0026】
Mg:0.1?0.7mass%
アルミニウム合金部材中に添加されたMgは、ベア材に添加されたSiやろう材から拡散してきたSiと化合物を形成することでMg2Siを形成し、材料強度を高める。また、ベア材表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解する。含有量が0.1mass%未満であれば、その効果が不十分であり、0.7mass%を超えると、開放部を有する継手ではベア材表面でMgO皮膜が成長しやすくなり、接合が阻害される。したがって、所望によりMgを含有する場合は、その含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.2mass%、上限を0.6mass%とすることがなお望ましい。
【0027】
さらに、アルミニウム合金部材に添加するBi、In、Snなどの低融点元素は、アルミニウムへの固溶度が低いため、素材製造工程の熱処理条件によってはアルミニウム材料中で低融点元素単体の融点で溶融し、アルミニウム材料表面に濃縮する。低融点元素が濃縮した材料表面では、酸化皮膜が脆弱になることで腐食し易くなるため、ろう付前に腐食が進むと材料表面に水和酸化物などが堆積し、ろう付時に接合を阻害する場合がある。この際には、Mgと低融点元素を一緒に添加すると化合物などを形成し融点を上昇させることができるため、素材製造工程中での表面濃縮が抑制できる。ただし、この場合も約600℃までのろう付昇温過程では、ろう溶融前までに低融点元素が材料表面に濃縮するため、前記のMgO皮膜の成長抑制効果などは維持される。
【0028】
また、本発明のアルミニウム合金では、Alおよび上記した微量元素の他に、質量%で、Mn:0.2?2.5%、Cu:0.05?1.0%、Si:0.1?1.2%、Fe:0.1?1.0%などを含有することができる。
【0029】
2.ブレージングシート
(1)ろう材
Si:3?13mass%
Al合金ろう材に添加されたSiは、ろう材の融点を低下させ、ろう付昇温時の共晶温度以上で、接合に必要な溶融ろう材を生成する。Siの含有量が3%未満では生成する液相量が不足するため十分な流動性が得られず、13%を超えると初晶Siが急激に増加して加工性が悪化するとともに、ろう付時に接合部のろう侵食が著しく促進される。したがって、ろう材中のSiの含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由により、下限を5%、上限を12%とすることがより好ましい。
【0030】
Mg:0.1?5.0mass%
Mgは、ろう付昇温過程において、材料表面に生成する緻密な酸化皮膜(Al2O3膜)に作用して酸化皮膜を分解することで、ろうの濡れ性や流動性を向上させる。ただし、Mgの含有量が0.1mass%未満では、酸化皮膜の分解作用が十分に得られず、5.0mass%を超えると、ろう材強度が高くなり過ぎて加工性が低下する。このため、ろう材中のMgの含有量は、上記範囲とすることが好ましい。なお、同様の理由により、Mgの含有量は、下限を0.2%、上限を3.0%とすることがより好ましい。
【0031】
融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上:0.01?0.5mass%
上記した金属元素は、ろう付時にろう材表面に濃縮するため、緻密なAl酸化皮膜やMgO皮膜の成長を抑制する。含有量が0.01mass%未満では、この効果が不十分であり、含有量が0.5mass%以上では、その効果が飽和する。したがって、上記金属元素の含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.05mass%、上限を0.3mass%とすることがより好ましい。また、上記金属元素としては、好適には、Bi、In、Sn、K、Se、Na、Pbが挙げられる。
さらに、これらの元素の中でBi、In、Sn、Pbは溶融ろうの表面張力を低下させ、ろう材の濡れ拡がり性を向上する効果があり、特にBiはその効果が高いため好適に用いることができる。
【0032】
(2)芯材
Al製芯材の組成は特に限定されず、一般的に用いられているアルミニウム材料であれば何れも問題なく使用可能である。ただし、Al-Si系合金ろう材によるろう付では、製品温度を600℃付近まで加熱するため、これより固相線温度が低い合金部材を用いるとろう付後の構造寸法精度の確保が難しくなる。本発明では、この問題を生じない何れのアルミニウム合金も使用できるが、熱伝導性や強度に優れるJIS A1000系、A3000系、A6000系合金を用いることが好適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明よれば、低融点、かつ、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い金属元素をベア材合金に添加することで、ベア材の表面の緻密なAl酸化皮膜が変質してろう付時に分解されやすくなり、ろう付後の接合状態を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例におけるろう付評価モデルを示す図である。
【図2】同じく、接合部幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
本発明のアルミニウム合金部材は、例えば常法により製造することができる。
まず、本発明組成に調製してアルミニウム合金を溶製する。該溶製は半連続鋳造法によって行う。得られたアルミニウム合金鋳塊に対しては、所定条件で均質化処理を行う。すなわち、均質化処理条件は、処理温度350?600℃、処理時間1?10時間とする。その後、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延などを経て、本発明のアルミニウム合金部材が得られる。アルミニウム合金部材は、例えば熱交換機用のフィン材として製造することができる。均熱処理は均質化処理の温度および処理時間以下とし、温度350?500℃、保持時間1?10時間とするのが望ましい。冷間圧延では、75%以上の総圧下率で冷間圧延を行い、温度300?400℃にて中間焼鈍を行い、その後圧延率40%の最終圧延を行うことができる。中間焼鈍は行わないものとしてもよい。
【0036】
上記冷間圧延などによって熱交換機用のフィン材を得た場合には、その後、必要に応じてコルゲート加工などを施す。コルゲート加工は、回転する2つの金型の間を通すことによって行うことができ、良好に加工を行うことを可能とし、優れた成形性を示す。
【0037】
上記工程で得られたフィン材は、熱交換器の構成部材として、他の構成部材(チューブやヘッダーなど)と組み合わされて、ろう付に供される。他の構成部材としては、Siを3?13mass%、Mgを0.1?5.0mass%含有するAl合金ろう材が、Al製芯材の片面または両面にクラッドされたブレージングシートからなるものを用いる。ろう付は、非酸化性ガス雰囲気下でフラックスを用いずに行う。非酸化性ガス雰囲気としては、酸素濃度が100ppm以下であることが望ましい。
なお、ろう付は、接合部の表面における酸化皮膜の厚さが、前記ろう付の昇温過程中で前記接合部の実体温度が550℃であるときに20nm以下となるように行い、アルミニウム合金部材がMgを含有している場合には、MgO皮膜の厚さが、前記ろう付の昇温過程中で前記接合部の実体温度が550℃であるときに2nm以下となるように行うのが望ましい。ろう付昇温過程の酸化皮膜やMgO皮膜の厚さは、雰囲気中の酸素濃度、雰囲気に曝される合金中のMg量、ろう付昇温速度、ろう付炉の気密性、ろう付炉内の雰囲気流速、導入する非酸化性ガス中の不純物酸素や水分量などの影響を受けるが、これらを総合的に勘案して調整するため、何れかの条件が特に限定されるものではない。
【0038】
上記したろう付によれば、低融点、かつ、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い金属元素をベア材合金に添加することで、ベア材の表面の緻密なAl酸化皮膜が変質し、ろう付時に分解されやすくなるため、開放部を有する継手においても安定した接合状態を得ることが可能となる。
【実施例】
【0039】
表1?5に示す組成(残部Alと不可避不純物)のろう材と、芯材として用意したJIS A1100合金(Al-0.15mass%Si-0.4mass%Fe-0.1mass%Cu)、JIS A3003合金(Al-1.2mass%Mn-0.3mass%Si-0.4mass%Fe-0.1mass%Cu)、JIS A3005合金(Al-1.2mass%Mn-0.3mass%Si-0.4mass%Mg-0.4mass%Fe-0.1mass%Cu-0.05Zn)、JIS A6063合金(Al-0.6mass%Mg-0.4mass%Si-0.25mass%Fe)と組合せてクラッドしたアルミニウム材を用意した。アルミニウムクラッド材は、各種組成ろう材をクラッド率5%とし、H14相当調質の0.3mm厚に仕上げた。
【0040】
また、ろう付対象部材として表1?5に示す合金組成のアルミニウムベア材(0.1mm厚)のコルゲートフィンを用意した。アルミニウムベア材は、ベース合金として、JIS A1100合金(Al-0.15mass%Si-0.4mass%Fe-0.1mass%Cu)、JIS A3003合金(Al-1.2mass%Mn-0.3mass%Si-0.4mass%Fe-0.1mass%Cu)、JIS A7072合金(Al-1.0mass%Zn-0.1mass%Si-0.25mass%Fe)を準備し、再溶解した各種ベース合金にBi、In、Sn、K、Se、Na、Pb、Mgを添加し、表1?5に示す各種アルミニウム合金ベア材を溶製した。この実施形態では、アルミニウムベア材は、本発明の被接合部材のアルミニウム合金部材に相当する。
【0041】
前記アルミニウムクラッド材を用いて幅25mmのチューブを製作し、図1に示すように、該チューブ12とコルゲートフィン11とを組み合わせ、ろう付評価モデルとしてチューブ15段、長さ300mmのコア10とした。前記コアを、各種酸素含有量に調整した窒素ガス雰囲気中のろう付炉にて600℃まで加熱し、そのろう付状態を評価した。なお、各種接合試験は、窒素ガスで置換された加熱室と冷却室の2室からなるバッチ式炉で行ったが、各種試験の550℃における酸化皮膜やMgO皮膜厚さを調べるため、事前に到達温度550℃で冷却したコアを用いて、X線光電子分光装置によるデプスプロファイルで接合部表面の酸化皮膜厚さやMgO皮膜厚さを調べた。
【0042】
○ろう付性
・接合率
以下式にて接合率を求め、各試料間の優劣を評価した。
フィン接合率=(フィンとチューブのろう付後総接合長さ/フィンとチューブのろう付前総接触長さ)×100
【0043】
・接合部幅評価
ろう付接合状態は上記接合率のみではなく、本発明の目的であるフィレット形成能の向上を確認するため、図2に示すように接合部13の幅Wを各試料で20点計測し、その平均値をもって優劣を評価した。
実施例の何れも良好なろう付性を示したのに対し、比較例では接合率50%以下で十分な接合が得られなかった。
【0044】(削除)
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【符号の説明】
【0049】
10 コア
11 コルゲートフィン
12 チューブ
13 接合部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを3?13mass%、Mgを0.1?5.0mass%含有するAl合金ろう材がAl製芯材の片面または両面にクラッドされたブレージングシートと、被接合部材であるベア材のアルミニウム合金部材とを組み付け、非酸化性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、
前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とするアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項2】
前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項3】
前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項6】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項7】
前記非酸化性ガス雰囲気は、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気であることを特徴とする請求項1?3、5、6のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
【請求項8】
非酸化性ガス雰囲気でMgを含有するAl合金ろう材によるフラックスフリーでのろう付にベア材の被接合部材として供されるフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材であって、
前記アルミニウム合金部材中に、Mg:0.1?0.7mass%および、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が-150(kg cal/gr mol O_(2))よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01?0.5mass%含有することを特徴とするフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項9】
前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項10】
前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項11】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8?10のいずれかに記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項12】
前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01?0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01?0.5mass%、Sn:0.01?0.5mass%、K:0.01?0.5mass%、Se:0.01?0.5mass%、Na:0.01?0.5mass%、Pb:0.01?0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8?10のいずれかに記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
【請求項13】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-25 
出願番号 特願2017-195779(P2017-195779)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B23K)
P 1 651・ 537- YAA (B23K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹下 和志  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 大山 健
青木 良憲
登録日 2018-09-21 
登録番号 特許第6405020号(P6405020)
権利者 三菱アルミニウム株式会社
発明の名称 アルミニウム材のフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材  
代理人 横井 幸喜  
代理人 横井 幸喜  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ