• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1359572
異議申立番号 異議2019-700391  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-14 
確定日 2020-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6422370号発明「中空型電子デバイス封止用シート、及び、中空型電子デバイスパッケージの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6422370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、3について訂正することを認める。 特許第6422370号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6422370号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成27年3月3日に出願され、平成30年10月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月14日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和1年5月14日 :特許異議申立人 栗原 喜子(以下、「申立人」という。)による請求項1?3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和1年7月17日付け:取消理由通知書
令和1年9月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年10月30日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の請求について
1.訂正請求の趣旨
令和1年9月17日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6422370号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求める。」ものである。

2.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)ないし(2)のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「 無機充填剤を含み、
前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、
前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあり、」
を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」とあるのを、「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」に訂正する。

3.訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1?2について、請求項2は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?2に対応する訂正後の請求項1?2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項1について
ア.訂正の目的について
訂正事項1は、「 無機充填剤を含み、
前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、
前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあり、」との記載により、「中空型電子デバイス封止用シート」が無機充填剤を含むことを限定するとともに、当該無機充填剤の平均粒径と当該無機充填剤の粒度分布におけるピークの数及び位置とを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記ア.に示したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
明細書には、「封止用シート11は、無機充填剤を含有することが好ましい。」(段落【0048】)、「無機充填剤の平均粒径は20μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1?15μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5?10μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。」(段落【0053】)、「封止用シート11に含有される前記無機充填剤は、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、2つのピークを有していることが好ましい。」(段落【0055】)、「前記2つのピークは、特に限定されないが、粒径の大きい側のピークが、3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあることが好ましい。」(段落【0055】)と記載されており(下線は当審で付与した。)、上記「封止用シート11」は、「中空型電子デバイス封止用シート11」の略語である(段落【0016】)ことを勘案すると、中空型電子デバイス封止用シートが無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあることが開示されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

エ.小括
上記ア.ないしウ.のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項2について
ア.訂正の目的について
訂正事項2は、「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シート」との記載により、「中空型電子デバイス封止用シート」が無機充填剤を含むことを限定するとともに、当該無機充填剤の平均粒径と当該無機充填剤の粒度分布におけるピークの数及び位置とを限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記ア.に示したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
明細書には、「封止用シート11は、無機充填剤を含有することが好ましい。」(段落【0048】)、「無機充填剤の平均粒径は20μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1?15μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5?10μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。」(段落【0053】)、「封止用シート11に含有される前記無機充填剤は、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、2つのピークを有していることが好ましい。」(段落【0055】)、「前記2つのピークは、特に限定されないが、粒径の大きい側のピークが、3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあることが好ましい。」(段落【0055】)と記載されており(下線は当審で付与した。)、上記「封止用シート11」は、「中空型電子デバイス封止用シート11」の略語である(段落【0016】)ことを勘案すると、無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートが開示されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

エ.小括
上記ア.ないしウ.のとおり、本件訂正請求による訂正のうち訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、3について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を示す。

「【請求項1】
無機充填剤を含み、
前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、
前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあり、
下記ステップA?ステップGの手順により測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下であることを特徴とする中空型電子デバイス封止用シート。
下記仕様の1つのダミーチップが樹脂バンプを介してガラス基板に実装されたダミーチップ実装基板を準備するステップA、
縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズの中空型電子デバイス封止用シートのサンプルを準備するステップB、
前記サンプルを、前記ダミーチップ実装基板の前記ダミーチップ上に配置するステップC、
下記埋め込み条件下で、前記ダミーチップを前記サンプルに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE、
前記ステップEの後、150℃の熱風乾燥機中に1時間放置し、前記サンプルを熱硬化させて封止体サンプルを得るステップF、及び、
前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG。
<ダミーチップの仕様>
チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている。
<埋め込み条件>
プレス方法:平板プレス
温度:75℃
加圧力:3000kPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
【請求項2】
90℃での粘度が300kPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の中空型電子デバイス封止用シート。
【請求項3】
電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を含み、
前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下であることを特徴とする中空型電子デバイスパッケージの製造方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して、当審が令和1年7月17日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
請求項3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(特許法第29条第2項)
請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、請求項2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



甲第1号証:特開2014-225635号公報
甲第2号証:特開2014-209565号公報
甲第3号証:特開2014-209567号公報
甲第4号証:特開2014-209568号公報
甲第5号証:特開2006-19714号公報

2.各甲号証の記載
(1)甲第1号証(特開2014-225635号公報)
甲第1号証には、「中空封止シート及び中空パッケージの製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同じ。)。

ア.「【請求項1】
電子部品を中空封止するための中空封止シートであって、
樹脂を含み、
40℃以上100℃以下において中空部への樹脂進入性が制御された中空封止シート。」

イ.「【請求項5】
一又は複数の電子部品を覆うように請求項1?4のいずれか1項に記載の中空封止シートを該電子部品上に中空部を維持しながら積層する積層工程、及び
前記中空封止シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む中空パッケージの製造方法。」

ウ.「【0021】
中空封止シートを形成する樹脂組成物は、上述のような特性を好適に付与することができ、半導体チップ等の電子部品の樹脂封止に利用可能なものである限り特に限定されない。中でも、中空部付近での樹脂流動を規制し得る規制材料を含むことが好ましい。このような規制材料としては、エラストマーや高粘度エポキシ樹脂、高粘度フェノール樹脂等の高粘度物質や、無機充填剤等のダイラタンシー付与性の微小粒子を好適に用いることができる。
【0022】
高粘度物質の粘度としては、樹脂流動の規制の度合いや作業性等を考慮して適宜設定すればよいが、80℃において2000Pa・s以上30000Pa・s以下が好ましく、5000Pa・s以上25000以下がより好ましい。なお、粘度は、TAインスツルメント社製粘弾性測定装置ARESを用いて、パラレルプレート法により測定することができる。より詳細には、ギャップ100μm、回転プレート直径20mm、回転速度10s-1の条件にて、50℃から200℃の範囲で粘度を測定し、その際に得られる80℃での粘度を読み取ることで得られる。」

エ.「【0039】
(D成分)
無機質充填剤(D成分)は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種充填剤を用いることができ、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。無機充填剤を含むことにより、中空封止シートに中空部付近におけるダイラタンシー様作用をより効率良く付与することができる。
【0040】
中でも、エポキシ樹脂組成物の硬化体の熱線膨張係数が低減することにより内部応力を低減し、その結果、電子部品の封止後の中空封止シート11の反りを抑制できるという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることがより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が54μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1?30μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5?20μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。」

オ.「【0061】
中空封止シート11の厚さは特に限定されないが、100?2000μmであることが好ましい。上記範囲内であると、良好に電子部品を封止することができる。また、樹脂シートを薄型にすることで、発熱量を低減でき、硬化収縮が起こりにくくなる。この結果、パッケージ反り量を低減でき、より信頼性の高い中空パッケージが得られる。」

カ.「【0063】
[中空パッケージの製造方法]
次に、上記中空封止シートを用いる本実施形態に係る中空パッケージの製造方法について図2A?2Cを参照しつつ説明する。図2A?2Cはそれぞれ、本発明の一実施形態に係る中空パッケージの製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。本実施形態では、基板上に搭載された電子部品を中空封止シートにより中空封止して中空パッケージを作製する。なお、本実施形態では、電子部品としてSAWフィルタを用い、被着体としてプリント配線基板を用いているが、これら以外の要素を用いてもよい。例えば、電子部品としてコンデンサやセンサデバイス、発光素子、振動素子等の可動部を有し中空部を要する素子、被着体としてリードフレーム、テープキャリア等を用いることができる。いずれの要素を用いても、電子部品の樹脂封止による高度な保護を達成することができる。
【0064】
(SAWチップ搭載基板準備工程)
SAWチップ搭載基板準備工程では、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備する(図2A参照)。SAWチップ13は、所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することにより形成することができる。SAWチップ13のプリント配線基板12への搭載には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。SAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプ等の突起電極13aを介して電気的に接続されている。また、SAWチップ13とプリント配線基板12との間は、SAWチップ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部14を維持するようになっている。SAWチップ13とプリント配線基板12との間の距離は各要素の仕様によって決定され、一般的には15?50μm程度である。
【0065】
(封止工程)
封止工程では、SAWチップ13を覆うようにプリント配線基板12へ中空封止シート11を積層し、SAWチップ13を上記中空封止シートで樹脂封止する(図2B参照)。この中空封止シート11は、SAWチップ13及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0066】
本実施形態では、上記中空封止シート11を採用することにより、SAWチップ13の被覆にプリント配線基板12上に貼り付けるだけでSAWチップ13を埋め込むことができ、中空パッケージの生産効率を向上させることができる。この場合、熱プレスやラミネータなど公知の方法により中空封止シート11をプリント配線基板12上に積層することができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40?100℃、好ましくは、50?90℃であり、圧力が、例えば、0.1?10MPa、好ましくは、0.5?8MPaであり、時間が、例えば、0.3?10分間、好ましくは、0.5?5分間である。また、中空封止シート11のSAWチップ13及びプリント配線基板12への密着性および追従性の向上を考慮すると、好ましくは、減圧条件下(例えば0.1?5kPa)において、プレスすることが好ましい。
【0067】
中空封止シート11ではエラストマーの微小ドメインが分散しているので、中空部14への樹脂成分の進入が抑制されており、SAWチップ13の作動信頼性や接続信頼性を向上させることができる。
【0068】
(封止体形成工程)
封止体形成工程では、上記中空封止シートを熱硬化処理して封止体15を形成する(図2B参照)。中空封止シートの熱硬化処理の条件は、加熱温度として好ましくは100℃から200℃、より好ましくは120℃から180℃、加熱時間として好ましくは10分から180分、より好ましくは30分から120分の間、必要に応じて加圧しても良い。加圧の際は、好ましくは0.1MPaから10MPa、より好ましくは0.5MPaから5MPaを採用することができる。」

キ.「【0076】
[実施例1]
(中空封止シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により、混練回転数を300rpm、混練処理量を5kg/hrとし、110℃で10分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの中空封止シートを作製した。
【0077】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV-80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 3.4部
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH-7851-SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃)) 3.6部
エラストマー:(三菱レーヨン社製、メタブレンC-132E) 2.3部
無機充填剤:球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)87.9部
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM-803) 0.5部
カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA600) 0.1部
難燃剤:((株)伏見製薬所製、FP-100) 1.8部
硬化促進剤:イミダゾール系触媒(四国化成工業社製、2PHZ-PW) 0.4部
【0078】
[実施例2]
混練処理量を3.5kg/hrとしたこと以外は、実施例1と同様に中空封止シートを作製した。
【0079】
[実施例3]
混練回転数を500rpmとしたこと以外は、実施例1と同様に中空封止シートを作製した。
【0080】
[実施例4]
混練回転数を1000rpmとしたこと以外は、実施例1と同様に中空封止シートを作製した。
【0081】
[実施例5]
実施例1と同じ成分を同じ配合量にてメチルエチルケトンとトルエンとの1:1混合溶剤に溶解ないし分散し、固形分40重量%のワニスを作製した。
【0082】
離型処理を施したPETフィルム上に、溶剤乾燥後の塗膜の厚さが50μmになるようにワニスを塗工し、次いで乾燥条件を120℃、3分として塗膜を乾燥させて、厚さ50μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを、ラミネータを用いて厚み200μmになるまで積層し、厚さ200μmの中空封止シートを作製した。」

ク.「【0090】
(パッケージ中空部への樹脂進入性の評価)
アルミニウム櫛形電極が形成された以下の仕様のSAWチップを下記ボンディング条件にてガラス基板に実装したSAWチップ実装基板を作製した。
【0091】
<SAWチップ>
チップサイズ:1.4×1.1mm□(厚さ150μm)
バンプ材質:Au 高さ30μm
バンプ数:6バンプ
チップ数:100個(10個×10個)
【0092】
<ボンディング条件>
装置:パナソニック電工(株)製
ボンディング条件:200℃、3N、1sec(超音波出力2W)
【0093】
得られたSAWチップ実装基板上に、以下に示す加熱加圧条件下、各中空封止シートを真空プレスにより貼付けた。
【0094】
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
【0095】
大気圧に開放した後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で中空封止シートを熱硬化させ、封止体を得た。ガラス基板側から電子顕微鏡(KEYENCE社製、商品名「デジタルマイクロスコープ」、200倍)により、SAWチップとガラス基板との間の中空部への樹脂の進入量を測定した。樹脂進入量は、中空封止シートによる封止前にガラス基板側から電子顕微鏡でSAWチップの端部の位置を確認及び記憶しておき、封止後に再度ガラス基板側から電子顕微鏡で観察し、封止前後での観察像を比較して、封止前に確認しておいたSAWチップの端部から中空部へ進入した樹脂の最大到達距離を測定し、これを樹脂進入量とした。樹脂進入量が20μm以下であった場合を「○」、20μmを超えていた場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【表1】

【0096】
表1から分かるように、実施例1?5の中空封止シートは可撓性が良好であった。一方、比較例1?2ではヒビが生じ可撓性が劣っていた。また、実施例1?5では、比較例1?2と比較して金型のスリットへの樹脂進入量が抑制されていた。さらに、実施例1?5のSAWチップパッケージでは、中空封止シートの樹脂成分の中空部への進入が抑制されており、高品質の中空パッケージを作製可能であることが分かる。比較例1?2では中空部への樹脂進入量がいずれも20μmを超えていた。」

・上記カ.によれば、SAWチップ搭載基板準備工程は、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備してSAWチップ搭載基板を準備する工程であり、またSAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプを介して接続されているものである。
・上記カ.、キ.によれば、中空封止シート11は球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含むものである。
・上記カ.によれば、封止工程は、中空封止シート11で、SAWチップ13を覆い、熱プレスにより、SAWチップ13を中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程である。
・上記カ.によれば、封止工程の後の封止体形成工程は、中空封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程である。
・上記ク.によれば、実施例1?5において封止体を形成した後に測定したSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、8μmから20μmの範囲である。
・上記ク.によれば、実施例1?5のSAWチップパッケージを製造する方法は、中空型SAWチップパッケージの製造方法である。

したがって、上記ア.ないしク.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第1号証には、「中空型SAWチップパッケージの製造方法」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲1A発明」という。)が記載されている。

(甲1A発明)
「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程と、
球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含む中空封止シート11を準備する工程と、
前記中空封止シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程と、
熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程と、
前記積層し樹脂封止する工程の後、前記中空封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程と
を含み、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、8μmから20μmの範囲である
中空型SAWチップパッケージの製造方法。」

また、上記ア.ないしク.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第1号証には、「中空封止シート11」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲1B発明」という。)が記載されている。

(甲1B発明)
「球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含み、下記工程1?6の手順により測定されるSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量が8μmから20μmの範囲である中空封止シート11。
下記仕様の複数のSAWチップ13がバンプを介してガラス基板であるプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程1、
厚さ200μmの中空封止シート11を準備する工程2、
前記中空封止シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程3、
下記貼り付け条件下で、熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程4、
前記積層し樹脂封止する工程の後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で前記中空封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程5、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量を測定する工程6。
<SAWチップの仕様>
チップサイズ:1.4×1.1mm□(厚さ150μm)
バンプ材質:Au 高さ30μm
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

(2)甲第2号証(特開2014-209565号公報)
甲第2号証には、「封止シート、封止シートの製造方法及び電子部品パッケージの製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】
エラストマーのドメインが分散しており、該ドメインの最大径が20μm以下である封止シート。」

イ.【請求項9】
一又は複数の電子部品を覆うように請求項1?6のいずれか1項に記載の封止シートを該電子部品上に積層する積層工程、及び
前記封止シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む電子部品パッケージの製造方法。」

ウ.「【0035】
中でも、エポキシ樹脂組成物の硬化体の熱線膨張係数が低減することにより内部応力を低減し、その結果、電子部品の封止後の封止シート11の反りを抑制できるという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることがより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が54μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1?30μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5?20μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。」

エ.「【0056】
封止シート11の厚さは特に限定されないが、100?2000μmであることが好ましい。上記範囲内であると、良好に電子部品を封止することができる。また、樹脂シートを薄型にすることで、発熱量を低減でき、硬化収縮が起こりにくくなる。この結果、パッケージ反り量を低減でき、より信頼性の高い電子部品パッケージが得られる。」

オ.「【0058】
[電子部品パッケージの製造方法]
次に、上記封止シートを用いる本実施形態に係る電子部品パッケージの製造方法について図2A?2Cを参照しつつ説明する。図2A?2Cはそれぞれ、本発明の一実施形態に係る電子部品パッケージの製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。本実施形態では、基板上に搭載された電子部品を封止シートにより中空封止して電子部品パッケージを作製する。なお、本実施形態では、電子部品としてSAWフィルタを用い、被着体としてプリント配線基板を用いているが、これら以外の要素を用いてもよい。例えば、電子部品としてコンデンサやセンサデバイス、発光素子、振動素子等、被着体としてリードフレーム、テープキャリア等を用いることができる。また、被着体を用いずに、仮固定材上に電子部品を仮固定しておき、これらを樹脂封止することもできる。いずれの要素を用いても、電子部品の樹脂封止による高度な保護を達成することができる。また、中空封止しているが、封止対象によってはアンダーフィル材等を用いて中空部分を含まないよう中実封止してもよい。
【0059】
(SAWチップ搭載基板準備工程)
SAWチップ搭載基板準備工程では、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備する(図2A参照)。SAWチップ13は、所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することにより形成することができる。SAWチップ13のプリント配線基板12への搭載には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。SAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプ等の突起電極13aを介して電気的に接続されている。また、SAWチップ13とプリント配線基板12との間は、SAWチップ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部分14を維持するようになっている。SAWチップ13とプリント配線基板12との間の距離は各要素の仕様によって決定され、一般的には15?50μm程度である。
【0060】
(封止工程)
封止工程では、SAWチップ13を覆うようにプリント配線基板12へ封止シート11を積層し、SAWチップ13を上記封止シートで樹脂封止する(図2B参照)。この封止シート11は、SAWチップ13及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0061】
本実施形態では、上記封止シート11を採用することにより、SAWチップ13の被覆にプリント配線基板12上に貼り付けるだけでSAWチップ13を埋め込むことができ、電子部品パッケージの生産効率を向上させることができる。この場合、熱プレスやラミネータなど公知の方法により封止シート11をプリント配線基板12上に積層することができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40?100℃、好ましくは、50?90℃であり、圧力が、例えば、0.1?10MPa、好ましくは、0.5?8MPaであり、時間が、例えば、0.3?10分間、好ましくは、0.5?5分間である。また、封止シート11のSAWチップ13及びプリント配線基板12への密着性および追従性の向上を考慮すると、好ましくは、減圧条件下(例えば0.1?5kPa)において、プレスすることが好ましい。
【0062】
封止シート11ではエラストマーの微小ドメインが分散しているので、中空部分14への樹脂成分の進入が抑制されており、SAWチップ14の作動信頼性や接続信頼性を向上させることができる。
【0063】
(封止体形成工程)
封止体形成工程では、上記封止シートを熱硬化処理して封止体15を形成する(図2B参照)。封止シートの熱硬化処理の条件は、加熱温度として好ましくは100℃から200℃、より好ましくは120℃から180℃、加熱時間として好ましくは10分から180分、より好ましくは30分から120分の間、必要に応じて加圧しても良い。加圧の際は、好ましくは0.1MPaから10MPa、より好ましくは0.5MPaから5MPaを採用することができる。」

カ.「【0071】
[実施例1]
(封止シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により、混練回転数を300rpm、混練処理量を5kg/hrとし、110℃で10分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの封止シートを作製した。
【0072】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV-80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 3.4部
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH-7851-SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃)) 3.6部
エラストマー:(三菱レーヨン社製、メタブレンC-132E) 2.3部
無機充填剤:球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)87.9部
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM-803) 0.5部
カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA600) 0.1部
難燃剤:((株)伏見製薬所製、FP-100) 1.8部
硬化促進剤:イミダゾール系触媒(四国化成工業社製、2PHZ-PW) 0.4部
【0073】
[実施例2]
混練処理量を3.5kg/hrとしたこと以外は、実施例1と同様に封止シートを作製した。
【0074】
[実施例3]
混練回転数を500rpmとしたこと以外は、実施例1と同様に封止シートを作製した。
【0075】
[実施例4]
混練回転数を1000rpmとしたこと以外は、実施例1と同様に封止シートを作製した。
【0076】
[実施例5]
以下の成分をメチルエチルケトンとトルエンとの1:1混合溶剤に溶解ないし分散し、固形分40重量%のワニスを作製した。
【0077】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV-80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 3.4部
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH-7851-SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃)) 3.6部
エラストマー:((株)カネカ製、SIBSTAR 102T) 4.0部
無機充填剤:球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)87.0部
カーボンブラック(三菱化学(株)製、♯20) 0.1部
難燃剤:((株)伏見製薬所製、FP-100) 1.8部
硬化促進剤:イミダゾール系触媒(四国化成工業社製、2PHZ-PW) 0.1部
【0078】
離型処理を施したPETフィルム上に、溶剤乾燥後の塗膜の厚さが50μmになるようにワニスを塗工し、次いで乾燥条件を120℃、3分として塗膜を乾燥させて、厚さ50μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを、ラミネータを用いて厚み200μmになるまで積層し、厚さ200μmの封止シートを作製した。」

キ.「【0083】
(パッケージ中空部分への樹脂進入性の評価)
アルミニウム櫛形電極が形成された以下の仕様のSAWチップを下記ボンディング条件にてガラス基板に実装したSAWチップ実装基板を作製した。
【0084】
<SAWチップ>
チップサイズ:1.4×1.1mm□(厚さ150μm)
バンプ材質:Au 高さ30μm
バンプ数:6バンプ
チップ数:100個(10個×10個)
【0085】
<ボンディング条件>
装置:パナソニック電工(株)製
ボンディング条件:200℃、3N、1sec(超音波出力2W)
【0086】
得られたSAWチップ実装基板上に、以下に示す加熱加圧条件下、各封止シートを真空プレスにより貼付けた。
【0087】
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
【0088】
大気圧に開放した後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で封止シートを熱硬化させ、封止体を得た。ガラス基板側から電子顕微鏡(KEYENCE社製、商品名「デジタルマイクロスコープ」、200倍)により、SAWチップとガラス基板との間の中空部分への樹脂の進入量を測定した。樹脂進入量は、封止シートによる封止前にガラス基板側から電子顕微鏡でSAWチップの端部の位置を確認及び記憶しておき、封止後に再度ガラス基板側から電子顕微鏡で観察し、封止前後での観察像を比較して、封止前に確認しておいたSAWチップの端部から中空部分へ進入した樹脂の最大到達距離を測定し、これを樹脂進入量とした。樹脂進入量が20μm以下であった場合を「○」、20μmを超えていた場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【表1】

【0089】
表1から分かるように、実施例1?5の封止シートは可撓性が良好であった。一方、比較例1?2ではヒビが生じ可撓性が劣っていた。また、実施例1?5では、エラストマーの微小ドメインを有する封止シートにより作製したSAWチップパッケージでは、封止シートの樹脂成分の中空部分への進入が抑制されており、高品質の電子部品パッケージを作製可能であることが分かる。比較例1?2では中空部分への樹脂進入量がいずれも20μmを超えていた。これは、エラストマーのドメインの最大径が20μmを超えており、樹脂流動規制作用が充分でなかったことに起因すると考えられる。」

・上記オ.によれば、SAWチップ搭載基板準備工程は、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備してSAWチップ搭載基板を準備する工程であり、またSAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプを介して接続されているものである。
・上記オ.によれば、「封止シート11」はSWAフィルタである電子部品を中空封止するものであるから、「中空封止シート11」といい得るものである。
・上記オ.、カ.によれば、封止シート11は球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含むものである。
・上記オ.によれば、封止工程は、封止シート11で、SAWチップ13を覆い、熱プレスにより、SAWチップ13を封止シート11に積層し樹脂封止する工程である。
・上記オ.によれば、封止工程の後の封止体形成工程は、封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程である。
・上記キ.によれば、実施例1?5において封止体を形成した後に測定したSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、8μmから20μmの範囲である。
・上記キ.によれば、実施例1?5のSAWチップパッケージを製造する方法は、中空型SAWチップパッケージの製造方法である。

したがって、上記ア.ないしキ.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第2号証には、「中空型SAWチップパッケージの製造方法」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲2A発明」という。)が記載されている。

(甲2A発明)
「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程と、
球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含む中空封止シート11を準備する工程と、
前記中空封止シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程と、
熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程と、
前記積層し樹脂封止する工程の後、前記中空封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程と
を含み、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、8μmから20μmの範囲である
中空型SAWチップパッケージの製造方法。」

なお、甲2A発明は甲1A発明と同一である。
また、上記ア.ないしキ.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第2号証には、「中空封止シート11」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲2B発明」という。)が記載されている。

(甲2B発明)
「球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含み、下記工程1?6の手順により測定されるSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量が8μmから20μmの範囲である中空封止シート11。
下記仕様の複数のSAWチップ13がバンプを介してガラス基板であるプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程1、
厚さ200μmの中空封止シート11を準備する工程2、
前記中空封止シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程3、
下記貼り付け条件下で、熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程4、
前記積層し樹脂封止する工程の後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で前記中空封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程5、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量を測定する工程6。
<SAWチップの仕様>
チップサイズ:1.4×1.1mm□(厚さ150μm)
バンプ材質:Au 高さ30μm
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

なお、甲2B発明は甲1B発明と同一である。

(3)甲第3号証(特開2014-209567号公報)
甲第3号証には、「中空封止用樹脂シート及び中空パッケージの製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】
無機充填剤を70体積%以上90体積%以下の含有量で含み、
レーザー回折散乱法により測定した前記無機充填剤の粒度分布において、1μm以上10μm以下の粒径範囲に頻度分布のピークが少なくとも1つ存在し、かつ10μmを超えて100μm以下の粒径範囲に頻度分布のピークが少なくとも1つ存在し、
前記無機充填剤のBET比表面積が2m^(2)/g以上5m^(2)/g以下である中空封止用樹脂シート。
【請求項2】
硬化前の80℃における動的粘度が5000Pa・s以上30000Pa・s以下である請求項1に記載の中空封止用樹脂シート。」

イ.「【請求項5】
被着体上に配置された1又は複数の電子デバイスを覆うように請求項1?4のいずれかに記載の中空封止用樹脂シートを前記電子デバイス上に前記被着体と前記電子デバイスとの間の中空部を維持しながら積層する積層工程、及び
前記中空封止用樹脂シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む中空パッケージの製造方法。」

ウ.「【0036】
無機充填剤の平均粒径は50μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1?30μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5?20μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。なお、平均粒径は、実施例における粒度分布測定の手順に従いD50として求められる。」

エ.「【0067】
樹脂シート11の厚さは特に限定されないが、100?2000μmであることが好ましい。上記範囲内であると、良好に電子デバイスを封止することができる。また、樹脂シートを薄型にすることで、発熱量を低減でき、硬化収縮が起こりにくくなる。この結果、パッケージ反り量を低減でき、より信頼性の高い中空パッケージが得られる。」

オ.「【0070】
[中空パッケージの製造方法]
図2A?2Cはそれぞれ、本発明の一実施形態に係る中空パッケージの製造方法の一工程を模式的に示す図である。中空封止方法としては特に限定されず、従来公知の方法で封止できる。例えば、被着体上の電子デバイスを覆うように未硬化の樹脂シート11を基板上に中空構造を維持しながら積層(載置)し、次いで樹脂シート11を硬化させて封止する方法などが挙げられる。被着体としては特に限定されず、例えば、プリント配線基板、セラミック基板、シリコン基板、金属基板等が挙げられる。本実施形態では、プリント配線基板12上に搭載されたSAWチップ13を樹脂シート11により中空封止して中空パッケージを作製する。
【0071】
(SAWチップ搭載基板準備工程)
SAWチップ搭載基板準備工程では、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備する(図2A参照)。SAWチップ13は、所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することにより形成できる。SAWチップ13のプリント配線基板12への搭載には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。SAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプなどの突起電極13aを介して電気的に接続されている。また、SAWチップ13とプリント配線基板12との間は、SAWフィルタ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部分14を維持するようになっている。SAWチップ13とプリント配線基板12との間の距離は適宜設定でき、一般的には10?100μm程度である。
【0072】
(封止工程)
封止工程では、SAWチップ13を覆うようにプリント配線基板12へ樹脂シート11を積層し、SAWチップ13を樹脂シート11で樹脂封止する(図2B参照)。樹脂シート11は、SAWチップ13及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0073】
樹脂シート11をプリント配線基板12上に積層する方法は特に限定されず、熱プレスやラミネータなど公知の方法により行うことができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40?100℃、好ましくは50?90℃であり、圧力が、例えば、0.1?10MPa、好ましくは0.5?8MPaであり、時間が、例えば0.3?10分間、好ましくは0.5?5分間である。また、樹脂シート11のSAWチップ13及びプリント配線基板12への密着性および追従性の向上を考慮すると、減圧条件下(例えば0.1?5kPa)においてプレスすることが好ましい。
【0074】
(封止体形成工程)
封止体形成工程では、樹脂シート11を熱硬化処理して封止体15を形成する(図2B参照)。熱硬化処理の条件として、加熱温度が好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。一方、加熱温度の上限が、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。加熱時間が、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。一方、加熱時間の上限が、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下である。また、必要に応じて加圧してもよく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。一方、上限は好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。」

カ.「【0082】
実施例で使用した成分について説明する。
エポキシ樹脂:新日鐵化学(株)製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキン当量200g/eq.、軟化点80℃)
フェノール樹脂:明和化成社製のMEH-7851-SS(ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂、水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃)
熱可塑性樹脂:カネカ社製のSIBSTER 072T(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体)
無機充填剤1:電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)、
無機充填剤2:龍森社製のEMIX300(微紛シリカ、比表面積30m^(2)/g)
無機充填剤3:龍森社製のEMIX100(微紛シリカ、比表面積50m^(2)/g)
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20(以下、省略。)」

キ.「【0083】
[実施例1?4及び比較例1?2]
表1に記載の配合比に従い、各成分を配合し、ロール混練機により60?120℃、10分間、減圧条件下(0.01kg/cm^(2))で溶融混練し、混練物を調製した。次いで、得られた混練物を平板プレス法によりシート状に成形して、表1に示す厚さの中空封止用樹脂シートを作製した。
【0084】
[実施例5]
表1に記載の配合比に従い、各成分をメチルエチルケトンとトルエンとの1:1混合溶剤に溶解ないし分散し、固形分40重量%のワニスを作製した。次に、離型処理を施したPETフィルム上に、溶剤乾燥後の塗膜の厚さが50μmになるようにワニスを塗工し、その後、乾燥条件を120℃、3分として塗膜を乾燥させて、厚さ50μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを、ラミネータを用いて厚み200μmになるまで積層し、厚さ200μmの中空封止用樹脂シートを作製した。」

ク.「【0089】
(パッケージ中空部への樹脂進入性及び無機充填剤の凝集の評価)
アルミニウム櫛形電極が形成された以下の仕様のSAWチップを下記ボンディング条件にてガラス基板に実装したSAWチップ実装基板を作製した。SAWチップとガラス基板との間のギャップ幅は、実施例1?3、5及び比較例1?2では30μm、実施例4では90μmであった。
【0090】
<SAWチップ>
チップサイズ:1.2mm□(厚さ150μm)
バンプ材質(実施例1?3、5及び比較例1?2):Au(高さ30μm)
バンプ材質(実施例4):半田(鉛フリータイプ)(高さ90μm)
バンプ数:6バンプ
チップ数:100個(10個×10個)
【0091】
<ボンディング条件>
装置:パナソニック電工(株)製
ボンディング条件:200℃、3N、1sec、超音波出力2W
【0092】
得られたSAWチップ実装基板上に、以下に示す加熱加圧条件下、各中空封止シートを真空プレスにより貼付けた。
【0093】
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
【0094】
大気圧に開放した後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で中空封止用樹脂シートを熱硬化させ、封止体を得た。ガラス基板側から電子顕微鏡(KEYENCE社製、商品名「デジタルマイクロスコープ」、200倍)により、SAWチップとガラス基板との間の中空部への樹脂の進入量を測定した。樹脂進入量は、中空封止シートによる封止前にガラス基板側から電子顕微鏡でSAWチップの端部の位置を確認及び記憶しておき、封止後に再度ガラス基板側から電子顕微鏡で観察し、封止前後での観察像を比較して、封止前に確認しておいたSAWチップの端部から中空部へ進入した樹脂の最大到達距離を測定し、これを樹脂進入量とした。樹脂進入量が20μm以下であった場合を「○」、20μmを超えていた場合を「×」として評価した。
【0095】
また、無機充填剤の凝集に関しては、中空封止シートに凝集物が目視で確認されず、50倍の顕微鏡観察にて封止時の良好な凹凸追従性が得られた場合を「○」、中空封止用樹脂シートに凝集物が目視で確認され、50倍の顕微鏡観察にて封止時の良好な凹凸追従性が得られなかった場合を「×」として評価した。なお、凹凸追従性の評価は、作製した封止シートをカッターにて切断し、切断面をビューラー製自動研磨装置にて研磨し、研磨後の切断面を顕微鏡にて観察して、中空封止用樹脂シートと基板ないしチップとの間での空隙の有無を良否の判断の基準とした。樹脂進入性及び凝集の各評価の結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から分かるように、実施例1?5のSAWチップパッケージでは、中空封止シートの樹脂成分の中空部への進入が抑制されており、中空部が拡大しても高品質の中空パッケージを作製可能であることが分かる。比較例1では中空部への樹脂進入量が20μmを超えていた。一方、比較例2では、無機充填剤の凝集が生じており、封止時の凹凸追従性が劣っていることから、中空部への樹脂進入の評価を行うことができなかった。」

・上記オ.によれば、SAWチップ搭載基板準備工程は、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備してSAWチップ搭載基板を準備する工程であり、またSAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプを介して接続されているものである。
・上記キ.によれば、「樹脂シート」は「中空封止用」であるから、「樹脂シート11」は「中空封止用樹脂シート11」といい得るものである。
・上記カ.、キ.によれば、樹脂シート11は、電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、龍森社製のEMIX300(微紛シリカ)である無機充填剤2と、龍森社製のEMIX100(微紛シリカ)である無機充填剤3とを、88.0:0:0(実施例1、5)又は87.0:1.0:0(実施例2)又は86.0:0:1.0(実施例3)又は85.0:3.0:0(実施例4)の配合比で配合したものを含むものである。
・上記オ.によれば、封止工程は、樹脂シート11で、SAWチップ13を覆い、熱プレスにより、SAWチップ13を樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程である。
・上記オ.によれば、封止工程の後の封止体形成工程は、樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程である。
・上記ク.によれば、実施例1?5において封止体を形成した後に測定したSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、5μmから19μmの範囲である。
・上記ク.によれば、実施例1?5のSAWチップパッケージを製造する方法は、中空型SAWチップパッケージの製造方法である。

したがって、上記ア.ないしク.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第3号証には、「中空型SAWチップパッケージの製造方法」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲3A発明」という。)が記載されている。

(甲3A発明)
「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程と、
電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、龍森社製のEMIX300(微紛シリカ)である無機充填剤2と、龍森社製のEMIX100(微紛シリカ)である無機充填剤3とを、88.0:0:0又は87.0:1.0:0又は86.0:0:1.0又は85.0:3.0:0の配合比で配合したものを含む中空封止用樹脂シート11を準備する工程と、
前記中空封止用樹脂シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程と、
熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止用樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程と、
前記積層し樹脂封止する工程の後、前記中空封止用樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程と
を含み、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、5μmから19μmの範囲である
中空型SAWチップパッケージの製造方法。」

また、上記ア.ないしク.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第3号証には、「中空封止用樹脂シート11」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲3B発明」という。)が記載されている。

(甲3B発明)
「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、龍森社製のEMIX300(微紛シリカ)である無機充填剤2と、龍森社製のEMIX100(微紛シリカ)である無機充填剤3とを、88.0:0:0又は87.0:1.0:0又は86.0:0:1.0又は85.0:3.0:0の配合比で配合したものを含み、下記工程1?6の手順により測定されるSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量が5μmから19μmの範囲である中空封止用樹脂シート11。
下記仕様の複数のSAWチップ13がバンプを介してガラス基板であるプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程1、
厚さ200μmの中空封止用樹脂シート11を準備する工程2、
前記中空封止用樹脂シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程3、
下記貼り付け条件下で、熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止用樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程4、
前記積層し樹脂封止する工程の後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で前記中空封止用樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程5、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量を測定する工程6。
<SAWチップの仕様>
チップサイズ:1.2mm□(厚さ150μm)
バンプ材質:Au(高さ30μm)又は半田(鉛フリータイプ)(高さ90μm)
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

(4)甲第4号証(特開2014-209568号公報)
甲第4号証には、「中空封止用樹脂シート及び中空パッケージの製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】
無機充填剤を70体積%以上90体積%以下の含有量で含み、
動的粘弾性測定による60?130℃での最低溶融粘度が2000Pa・s以上20000Pa・s以下であり、
150℃で1時間熱硬化させた後の20℃における貯蔵弾性率が1GPa以上20GPa以下であり、
150℃で1時間熱硬化させた後のガラス転移温度以下における線膨張係数が5ppm/K以上15ppm/K以下である中空封止用樹脂シート。
【請求項2】
被着体上に配置された1又は複数の電子デバイスを覆うように請求項1に記載の中空封止用樹脂シートを前記電子デバイス上に前記被着体と前記電子デバイスとの間の中空部を維持しながら積層する積層工程、及び
前記中空封止用樹脂シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む中空パッケージの製造方法。」

イ.「【0036】
無機充填剤の平均粒径は50μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1?30μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5?25μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。なお、平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。」

ウ.「【0066】
樹脂シート11の厚さは特に限定されないが、100?2000μmであることが好ましい。上記範囲内であると、良好に電子デバイスを封止することができる。また、樹脂シートを薄型にすることで、発熱量を低減でき、硬化収縮が起こりにくくなる。この結果、パッケージ反り量を低減でき、より信頼性の高い中空パッケージが得られる。」

エ.「【0069】
[中空パッケージの製造方法]
図2A?2Cはそれぞれ、本発明の一実施形態に係る中空パッケージの製造方法の一工程を模式的に示す図である。中空封止方法としては特に限定されず、従来公知の方法で封止できる。例えば、被着体上の電子デバイスを覆うように未硬化の樹脂シート11を基板上に中空構造を維持しながら積層(載置)し、次いで樹脂シート11を硬化させて封止する方法などが挙げられる。被着体としては特に限定されず、例えば、プリント配線基板、セラミック基板、シリコン基板、金属基板等が挙げられる。本実施形態では、プリント配線基板12上に搭載されたSAWチップ13を樹脂シート11により中空封止して中空パッケージを作製する。
【0070】
(SAWチップ搭載基板準備工程)
SAWチップ搭載基板準備工程では、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備する(図2A参照)。SAWチップ13は、所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することにより形成できる。SAWチップ13のプリント配線基板12への搭載には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。SAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプなどの突起電極13aを介して電気的に接続されている。また、SAWチップ13とプリント配線基板12との間は、SAWフィルタ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部分14を維持するようになっている。SAWチップ13とプリント配線基板12との間の距離は適宜設定でき、一般的には10?100μm程度である。
【0071】
(封止工程)
封止工程では、SAWチップ13を覆うようにプリント配線基板12へ樹脂シート11を積層し、SAWチップ13を樹脂シート11で樹脂封止する(図2B参照)。樹脂シート11は、SAWチップ13及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0072】
樹脂シート11をプリント配線基板12上に積層する方法は特に限定されず、熱プレスやラミネータなど公知の方法により行うことができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40?100℃、好ましくは50?90℃であり、圧力が、例えば、0.1?10MPa、好ましくは0.5?8MPaであり、時間が、例えば0.3?10分間、好ましくは0.5?5分間である。また、樹脂シート11のSAWチップ13及びプリント配線基板12への密着性および追従性の向上を考慮すると、減圧条件下(例えば0.1?5kPa)においてプレスすることが好ましい。
【0073】
(封止体形成工程)
封止体形成工程では、樹脂シート11を熱硬化処理して封止体15を形成する(図2B参照)。熱硬化処理の条件として、加熱温度が好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。一方、加熱温度の上限が、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。加熱時間が、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。一方、加熱時間の上限が、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下である。また、必要に応じて加圧してもよく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。一方、上限は好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。」

オ.「【0081】
実施例で使用した成分について説明する。
エポキシ樹脂1:新日鐵化学(株)製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキン当量200g/eq.、軟化点80℃)
エポキシ樹脂2:日本化薬社製のEPPN-501HY(エポキシ当量169g/eq.、軟化点60℃)
フェノール樹脂1:明和化成社製のMEH-7851-SS(ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂、水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃)
フェノール樹脂2:明和化成社製のMEH-7500(フェノール当量97g/eq.、軟化点111℃)
熱可塑性樹脂:(株)カネカ製のSIBSTER 072T(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体)
無機充填剤1:電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)
無機充填剤2:(株)トクヤマ製のSE-40(溶融球状シリカ、平均粒子径38μm)
無機充填剤3:電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)
無機充填剤4:(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20(以下、省略)」

カ.「【0082】
[実施例1?4及び比較例1?4]
表1に記載の配合比に従い、各成分を配合し、ロール混練機により60?120℃、10分間、減圧条件下(0.01kg/cm^(2))で溶融混練し、混練物を調製した。次いで、得られた混練物を平板プレス法によりシート状(50mm×50mm)に成形して、表1に示す厚さの中空封止用樹脂シートを作製した。
【0083】
[実施例5]
表1に記載の配合比に従い、各成分をメチルエチルケトンとトルエンとの1:1混合溶剤に溶解ないし分散し、固形分40重量%のワニスを作製した。次に、離型処理を施したPETフィルム上に、溶剤乾燥後の塗膜の厚さが50μmになるようにワニスを塗工し、その後、乾燥条件を120℃、3分として塗膜を乾燥させて、厚さ50μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを、ラミネータを用いて厚み200μmになるまで積層し、厚さ200μmの中空封止用樹脂シートを作製した。」

キ.「【0087】
(パッケージ中空部への樹脂進入性及びパッケージの反りの評価)
アルミニウム櫛形電極が形成された以下の仕様のSAWチップを下記ボンディング条件にて長さ50mm×幅50mm×厚さ0.5mmのガラス基板に実装したSAWチップ実装基板を作製した。実施例1?3、5及び比較例1?4ではSAWチップとガラス基板との間のギャップ幅は30μm、実施例4では90μmであった。
【0088】
<SAWチップ>
チップサイズ:1.2mm□(厚さ150μm)
バンプ材質(実施例1?3、5及び比較例1?4):Auバンプ、高さ30μm
バンプ材質(実施例4):半田(鉛フリータイプ)バンプ、高さ90μm
バンプ数:6バンプ
チップ数:100個(10個×10個)
【0089】
<ボンディング条件>
装置:パナソニック電工(株)製
ボンディング条件:200℃、3N、1sec、超音波出力2W
【0090】
得られたSAWチップ実装基板上に、以下に示す加熱加圧条件下、各中空封止用樹脂シートを真空プレスにより貼付けた。
【0091】
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
【0092】
大気圧に開放した後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で中空封止用樹脂シートを熱硬化させ、封止体を得た。封止体を常温まで冷却した後、ガラス基板側から電子顕微鏡(KEYENCE社製、商品名「デジタルマイクロスコープ」、200倍)により、SAWチップとガラス基板との間の中空部への樹脂の進入量を測定した。樹脂進入量は、中空封止用樹脂シートによる封止前にガラス基板側から電子顕微鏡でSAWチップの端部の位置を確認及び記憶しておき、封止後に再度ガラス基板側から電子顕微鏡で観察し、封止前後での観察像を比較して、封止前に確認しておいたSAWチップの端部から中空部へ進入した樹脂の最大到達距離を測定し、これを樹脂進入量とした。樹脂進入量が20μm以下であった場合を「○」、20μmを超えていた場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0093】
また、常温まで冷却した封止体の最大反り量をレーザー3次元測定装置(ティーテック社製、「LS-220-MT50」)を用い、樹脂シート側の表面を走査して計測し、反り量が1mm以下の場合を「○」、1mmを超えた場合を「×」として評価した。
【0094】
【表1】

【0095】
表1から分かるように、実施例1?5のSAWチップパッケージでは、中空封止用樹脂シートの樹脂成分の中空部への進入及び反りが抑制されており、中空部が拡大しても高品質かつ高信頼性の中空パッケージを作製可能であることが分かる。比較例1?4では中空部への樹脂進入量がいずれも20μmを超えており、また比較例1、3及び4では封止体の反りも発生していた。」

・上記エ.によれば、SAWチップ搭載基板準備工程は、複数のSAWチップ13が搭載されたプリント配線基板12を準備してSAWチップ搭載基板を準備する工程であり、またSAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプを介して接続されているものである。
・上記カ.によれば、「樹脂シート」は「中空封止用」であるから、「樹脂シート11」は「中空封止用樹脂シート11」といい得るものである。
・上記オ.、カ.によれば、実施例3、4の樹脂シート11は、電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4とを58.0:25.0:5.0の配合比で配合されたものを含むものである。
・上記エ.によれば、封止工程は、樹脂シート11で、SAWチップ13を覆い、熱プレスにより、SAWチップ13を樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程である。
・上記エ.によれば、封止工程の後の封止体形成工程は、樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程である。
・上記キ.によれば、実施例3、4において封止体を形成した後に測定したSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、それぞれ10μm及び18μmである。
・上記キ.によれば、実施例3、4のSAWチップパッケージを製造する方法は、中空型SAWチップパッケージの製造方法である。

したがって、上記ア.ないしキ.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第4号証には、「中空型SAWチップパッケージの製造方法」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲4A発明」という。)が記載されている。

(甲4A発明)
「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程と、
電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4とを、58.0:25.0:5.0の配合比で配合したものを含む中空封止用樹脂シート11を準備する工程と、
前記中空封止用樹脂シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程と、
熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止用樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程と、
前記積層し樹脂封止する工程の後、前記中空封止用樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程と
を含み、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量は、10μm又は18μmである
中空型SAWチップパッケージの製造方法。」

なお、甲4A発明は、中空封止用樹脂シート11が「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4とを、58.0:25.0:5.0の配合比で配合したものを含む」点、及び樹脂進入量が「10μm又は18μmである」点を除き、甲3A発明と共通している。
また、上記ア.ないしキ.の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、甲第4号証には、「中空封止用樹脂シート11」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲4B発明」という。)が記載されている。

(甲4B発明)
「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4とを、58.0:25.0:5.0の配合比で配合したものを含み、下記工程1?6の手順により測定されるSAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量が10μm又は18μmである中空封止用樹脂シート11。
下記仕様の複数のSAWチップ13がバンプを介してガラス基板であるプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程1、
厚さ200μmの中空封止用樹脂シート11を準備する工程2、
前記中空封止用樹脂シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程3、
下記貼り付け条件下で、熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止用樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程4、
前記積層し樹脂封止する工程の後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で前記中空封止用樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程5、
封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量を測定する工程6。
<SAWチップの仕様>
チップサイズ:1.2mm□(厚さ150μm)
バンプ材質:Auバンプ、高さ30μm又は半田(鉛フリータイプ)バンプ、高さ90μm
<貼り付け条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

(5)甲第5号証(特開2006-19714号公報)
甲第5号証には、「電子部品の製造方法」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】
配線基板上に、前記配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を、前記複数の配列された機能素子を覆うように前記配線基板上に配置されたゲル状硬化性樹脂シートを加熱硬化させて、前記配線基板と前記機能素子との間を中空に保ちつつ、一括樹脂封止する電子部品の製造方法であって、少なくとも、以下の工程(a)、(b)、(c)及び(d)を有することを特徴とする電子部品の製造方法:
(a)配線基板上に前記配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を覆うように、前記配線基板上にゲル状硬化性樹脂シートを配置する工程、
(b)前記複数の配列された機能素子がその内部に含まれている前記ゲル状硬化性樹脂シートと前記配線基板とで囲まれた閉空間領域を、真空にする工程、
(c)前記閉空間領域を真空に維持しつつ、熱ロールで前記ゲル状硬化性樹脂シートを硬化温度未満に加熱し流動させながら封止樹脂表面を平坦に成形する工程、及び、
(d)前記ゲル状硬化性樹脂シートを硬化温度に加熱して硬化させる工程。」

イ.「【請求項4】
前記工程(a)を真空プレスにより行い、真空中でゲル状硬化性樹脂シートを前記配線基板上に配置することにより前記工程(b)を達成する請求項2又は3記載の方法。」

ウ.「【請求項14】
前記機能素子は、弾性表面波デバイスである請求項1?13のいずれか記載の製造方法。
【請求項15】
前記弾性表面波デバイスは、弾性表面波チップの弾性表面波電極が形成された電極面と、前記配線基板とが対面して配置され、前記電極と前記配線基板上の配線パターンとがバンプで接続されており、かつ、前記チップと前記配線基板とが前記バンプの高さの分だけ隔てられたものであり、前記電極面と前記配線基板との間が中空に樹脂封止される請求項14記載の製造方法。」

エ.「【0008】
本発明の製造方法においては、配線基板上に機能素子チップの活性面を配線パターンと対面させて載置したものを、配線パターンと活性面とを接触しないようにするために、空隙を設けて、保護樹脂で封止されてなる電子部品が製造される。このような機能素子としては、例えば、弾性表面波チップ、圧電振動子チップ、水晶振動子チップ、センサーチップ等が挙げられる。活性面とは、上記機能素子において、例えば、それぞれ、弾性表面波電極、圧電振動子、水晶振動子、センサーが形成されている面である。このような面は、樹脂等で密封されたり、基板面と接触したりすると、電極や振動子の物理的振動が妨げられ、機能を果たさなくなる。センサーでは検知物質との接触が妨げられ、やはり機能を果たさなくなる。従って、保護樹脂で封止する場合に、このような活性面の上部を中空に明けておく必要がある。一方、これら電子部品の小型化に伴い、例えば、弾性表面波デバイスでは、2ミリ角やそれ以下のサイズのチップが用いられており、製造方法としては、表面に微細な配線パターンを形成した基板上に、多数のチップをフリップチップ接合で配列し、多数のチップを一度に一括して樹脂封止し、その後に個別デバイスにダイシングする方法が用いられている。
本発明の製造方法は、上記製造方法における一括樹脂封止工程に好適に適用されるものであって、上述の(a)?(d)の4工程を必須の工程とする。以下、これらの各工程を説明する。」

オ.「【0030】
形成された本発明に使用する上記ゲル状硬化性樹脂シートの厚さは、配線基板上にバンプで接続された機能素子、例えば、弾性表面波チップを覆い、熱ロールすることにより封止樹脂層を形成することができ、好ましくは該封止樹脂表面を平坦になるようにできる点から、上記配線基板と上記機能素子との間の間隔と上記機能素子の厚みとの和の1倍以上2倍以下の厚さ、さらには1.5倍以下であるのが、好ましい。実際の上記ゲル状硬化性樹脂シートの厚さとしては、弾性表面波チップの厚さが一般に200?400μm、バンプの高さが一般に20?80μmであるから、220?960μm、さらには220?720μmであるのが好ましい。」

カ.「【0037】
上記ゲル状硬化性樹脂シートは、低ガラス転移温度、低線膨張率であることが、硬化物を低応力化(低ソリ化)することができるので好ましく、さらに、原料を高純度化したものであることが、不純物イオンが少なく、弾性表面波チップ表面の汚染を防ぐことができるので好ましく、さらに、ゲル状硬化性樹脂シートの弾性率(25℃)が103?109Pa、さらには104?108Paで、硬化時の溶融粘度が10?105Pa・s、さらには103?104Pa・sであることが、熱ロールすることにより、封止樹脂層形成前のデバイスに弾性表面波電極面と配線パターンが形成された面とがバンプの高さのぶん隔てられた部分が中空構造を保つように封止樹脂層を形成するうえで好ましい。また、軟化温度は、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0038】
上述のように、上記ゲル状硬化性樹脂シートにおいては、低ガラス転移温度であるか、及び/又は、低線膨張率であることが、硬化物を低応力化(低ソリ化)するうえで好ましい。低ガラス転移温度としては、ゲル状硬化性樹脂シートの硬化物のTgが100℃以下が好ましく、さらには60℃以下であることがより好ましい。また低ソリ化・流動性調整・電子部品の高信頼化等のために低熱膨張率を得るためには、ゲル状硬化性樹脂シートは無機フィラー(例えば溶融シリカなど)を好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含有している。フィラーを高充填したシートの場合は、熱膨張率が低くなり低ソリ化できるので、信頼性を考慮するとTgは高い方が好ましく、例えば100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上であるが、これに限定されるものではなく、用途に応じて調整可能である。」

キ.「【0051】
実施例1?5及び比較例1?2
表1の配合でワニスを作成し、このワニスを、離型処理された75μm厚さのPETフィルムの離型処理された面に塗布して乾燥後、樹脂層が300μm厚になるように調整し、PETフィルム上にゲル状エポキシ樹脂シート(軟化点50℃)を形成した。
【0052】
得られたシートの軟化温度(℃)、軟化時の弾性率(Pa)、軟化時の動的複素粘度(Pa・s)を測定した。また、硬化物(150℃、3時間、オーブン硬化)のTg(℃)、線膨張係数(ppm)、曲げ弾性率(25℃、150℃;GPa)を測定した。
測定方法:
軟化温度、弾性率、粘度:ARES粘弾性測定装置(TA)、動的粘弾性測定(Temp Ramp、周波数1HZ、Ramp Rate2.5℃/min)
曲げ弾性率:DMA6100(SEIKO)、動的粘弾性測定(Temp Ramp、周波数1Hz、Ramp Rate2℃/min)
線膨張係数:TMA120C(SEIKO)、(Ramp Rate2.5℃/min)
【0053】
得られたシートを適当な大きさに切断したものを、200μm×30mm×50mmのガラエポ基板上に、高さ50μmのバンプで接続された400μm×2mm×2mmのダミーチップを7行7列に2mm間隔で49個形成した保護層形成前のデバイスの上に、一番外側配列のチップから2mm外側までをカバーするようにのせた。このものを、実施例及び比較例に供した。
【0054】
実施例1では、配合1で得られたシートをデバイスに真空ラミネーター(25℃、5秒間、シートタックを利用してシート外周部を基板に貼付け)で真空ラミネートした。実施例2では、配合1で得られたシートをのたせデバイスを、50℃、10秒間、0.1MPaで真空プレスしてプリフォームした。比較例では、いずれも、配合1で得られたシートをデバイスにのせたものをそのまま熱プレス又は熱ロールにかけた。実施例、比較例とも、熱ロールは、上ロール(100℃、ゴムロール)、下ロール(25℃、金属ロール)の間を0.77mmに設定し、0.3m/分の速度で行った。この後、それぞれのサンプルを、150℃、3時間、オーブン硬化した。また、比較例の熱プレスは、150℃で5分間、0.1MPaで行い、硬化させた。
【0055】
実施例3?5では、配合2及び配合3(実施例3)、配合2及び配合4(実施例4)又は配合3及び配合4(実施例5)を、それぞれ、1枚ずつ2枚をラミネートした。上記実施例3?5でシートを2枚積層する方法としては、加熱することが可能な2本のローラーを備えたラミネーター(自社製)を用いて行った。ラミネートする温度は100℃で行った。
【0056】
なお、表1中の略号は以下のとおりである。
LSAC6006:旭化成エポキシ(株)製、変性(プロピレンオキサイド付加)エポキシ樹脂、エポキシ当量250g/eq
DAL-BPFD:本州化学工業(株)製、ジアリルビスフェノールF
HX3088:旭化成エポキシ(株)製、変性イミダゾール、活性温度約80℃
F301:日本ゼオン(株)製、アクリルパウダー、粒径2μm、軟化温度80?100℃のポリメチルメタクリレート
FB201S:電気化学工業(株)製、充填用シリカ
A187:日本ユニカー(株)製、エポキシシラン
IXE600:東亞合成(株)製、ビスマスアンチモン、イオンキャッチャー
RY200:日本アエロジル(株)製、微粉シリカ、揺変性発現剤
RE304S:日本化薬(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq
ELM100:住友化学(株)製、アミノエポキシ樹脂、エポキシ当量105g/eq
EPPN-502H:日本化薬(株)、多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq
MEH7500:明和化成(株)、多官能フェノール、フェノール当量105g/eq
2P4MHZ:四国化成工業(株)、変性イミダゾール
【0057】
【表1】

【0058】
評価方法
チップ下樹脂侵入:熱ロール工程後の(製造した)樹脂封止デバイス(ダミーデバイス)の基板とチップとを強制的に剥離させ、チップ下部への樹脂侵入の有無を顕微鏡で観察し、下記基準で評価した。
◎:チップ端部からの樹脂侵入が10μm以下
○:チップ端部からの樹脂侵入が20μm以下
×:チップ端部からの樹脂侵入が20μmをこえる。
ボイド:熱ロール工程後の(製造した)樹脂封止デバイス(ダミーデバイス)の基板とチップとを強制的に剥離させ、チップ端部のボイドの有無を顕微鏡で観察し、下記基準で評価した。
ボイド少ない:チップ端部からのボイドが50μm以下
外周部にボイド:チップ端部からのボイドが50μmをこえる。
硬化後の状態:熱ロール工程後の樹脂封止デバイスをオーブン中で硬化し、基板とチップとを強制的に剥離させ、チップ下部への樹脂侵入の有無とボイドを顕微鏡で観察し、下記基準で評価した。
良好:熱ロール後と比較し侵入及びボイドの変化が小さかった
ボイド:チップ下のエアーが膨張しボイドが発生した。
結果を表2に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
上記実施例1?2から、本発明の製造方法によると、チップ下樹脂侵入がなく、ボイドも少ない封止が達成されており、実施例3?5から、複数枚のラミネートにより、チップ下樹脂侵入が一層良好であり、従来方法に相当する比較例1及び2の欠点を克服できたことが示された。なお、比較例2の硬化後の状態は、熱プレス(比較例1)の場合に比べるとエアー膨張は大きかった。
【0061】
本発明は、従来の中空モールド電子部品製造方法の欠点を克服し、より高い歩留りで製造が可能となり、ゲル状硬化性樹脂シートを利用した電子部品の製造方法として極めて有用である。」

・上記キ.によれば、保護層形成前のデバイスは、基板上にバンプで接続された複数のダミーチップを形成したものである。
・上記キ.によれば、基板上にバンプで接続された複数のダミーチップを形成したデバイスを準備して、樹脂シートにより樹脂封止を行うものである。そして、上記エ.によれば、樹脂封止される機能素子として、活性面を有する弾性表面波チップが挙げられるのであるから、実際に「活性面を有する弾性表面波チップ」を樹脂封止して「弾性表面波チップパッケージ」を製造する際に、「ダミーチップ」に代えて「活性面を有する弾性表面波チップ」を用いることは当然のことである。
・上記キ.によれば、ゲル状硬化性樹脂シートは、電気化学工業(株)製、充填用シリカであるFB201Sを含むものである。
・上記キ.によれば、準備した樹脂シートを、準備した保護層形成前のデバイスの上に、チップをカバーするようにのせている。
・上記キ.によれば、実施例2は、シートをデバイスにのせたものを真空プレス+熱ロールすることにより、樹脂封止デバイスが得られる。
・上記カ.によれば、熱ロールすることにより、中空構造を保つように封止樹脂層が形成される。
・上記キ.によれば、熱ロール工程後の樹脂封止デバイスをオーブン中で硬化している。
・上記キ.によれば、チップ下樹脂進入が「○」である実施例2は、熱ロール工程後のチップ端部からの樹脂侵入が10μmをこえて20μm以下であるものである。また、硬化後の状態が「良好」である実施例2は、硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化が熱ロール後と比較して小さいものである。

したがって、上記ア.ないしキ.の記載事項を総合勘案すると、甲第5号証には、「弾性表面波チップパッケージの製造方法」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲5A発明」という。)が記載されている。

(甲5A発明)
「基板上にバンプで接続された活性面を有する複数の弾性表面波チップを形成したデバイスを準備する工程と、
電気化学工業(株)製、充填用シリカであるFB201Sを含むゲル状硬化性樹脂シートを準備する工程と、
前記樹脂シートを、前記デバイスの上に、チップをカバーするようにのせる工程と、
前記樹脂シートをデバイスにのせたものを真空プレス+熱ロールすることにより、中空構造を保つように封止樹脂層が形成された樹脂封止デバイスを得る工程と、
熱ロール工程後の樹脂封止デバイスをオーブン中で硬化する工程と
を含み、
熱ロール工程後のチップ端部からの樹脂侵入が10μmをこえて20μm以下で、かつ、硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化が熱ロール後と比較して小さい
弾性表面波チップパッケージの製造方法。」

また、上記ア.ないしキ.の記載事項を総合勘案すると、甲第5号証には、「ゲル状硬化性樹脂シート」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲5B発明」という。)が記載されている。

(甲5B発明)
「電気化学工業(株)製、充填用シリカであるFB201Sを含み、下記の工程1?7の手順により評価される熱ロール工程後にチップ下に侵入する樹脂が10μmをこえて20μm以下であり、且つ、硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化が熱ロール後と比較して小さいゲル状硬化性樹脂シート。
基板上に高さ50μmのバンプで接続された400μm×2mm×2mmの複数のダミーチップを形成したデバイスを準備する工程1、
ゲル状硬化性樹脂シートを適当な大きさに切断したものを準備する工程2、
適当な大きさに切断したゲル状硬化性樹脂シートを、前記デバイスの上に、チップをカバーするようにのせる工程3、
前記樹脂シートをデバイスにのせたものを真空プレス+熱ロールすることにより、中空構造を保つように封止樹脂層が形成された樹脂封止デバイスを得る工程4、
熱ロール工程後のチップ端部からの樹脂侵入を評価する工程5、
熱ロール工程後の樹脂封止デバイスをオーブン中で硬化する工程6、及び、
前記熱硬化処理後のチップ下部への樹脂侵入の変化を評価する工程7。」

3.当審の判断
(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)について
ア.本件発明3と甲1A発明との対比
本件発明3と甲1A発明とを対比する。

(ア)甲1A発明の「SAWチップ13」は、本件発明3の「電子デバイス」に相当する。また、甲1A発明の「プリント配線基板12」は、その上に「複数のSAWチップ13がバンプを介して」「接続搭載され」るものであるから、本件発明3の「被着体」に相当する。さらに、甲1A発明の「SAWチップ搭載基板」は、「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載された」ものであるから、本件発明3の「積層体」に相当する。
したがって、甲1A発明の「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程」は、本件発明3の「電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程」に相当する。

(イ)甲1A発明の「中空封止シート11」は、「SAWチップ13を」「樹脂封止する」ものであるから、本件発明3の「中空型電子デバイス封止用シート」に相当する。
したがって、甲1A発明の「球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)である無機充填剤を含む中空封止シート11を準備する工程」と、本件発明3の「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」とは、「無機充填剤を含む中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」である点において共通する。
ただし、甲1A発明において、無機充填剤として含まれるのは、「球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)」のみであるから、「レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有している」ものではなく、したがって、「粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものでもない。
また、甲第3号証の段落【0082】や甲第4号証の段落【0081】に「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)」と記載されていることを考慮すると、甲1A発明の「FB-9454FC」の平均粒径は20μm程度であると認められるから、「無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲である」ともいえない。
よって、中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲1A発明ではその旨の特定がなされていない点で相違する。

(ウ)甲1A発明の「前記中空封止シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程」は、本件発明3の「前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程」に相当する。

(エ)甲1A発明の「熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程」により、SAWチップ13が中空封止シート11に「埋め込」まれることは明らかである。
したがって、甲1A発明の「熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止シート11に積層し樹脂封止する工程」は、本件発明3の「熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程」に相当する。

(オ)甲1A発明の「前記積層し樹脂封止する工程の後、前記中空封止シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程」は、本件発明3の「前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程」に相当する。

(カ)甲1A発明の「封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量」は、本件発明3の「前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量」である「Y2」に相当する。

(キ)甲1A発明の「中空型SAWチップパッケージの製造方法」は、本件発明3の「中空型電子デバイスパッケージの製造方法」に相当する。

してみれば、本件発明3と甲1A発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
無機充填剤を含む中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を含む中空型電子デバイスパッケージの製造方法。」

<相違点1>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲1A発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点2>
樹脂の「進入量」について、本件発明3は「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲1A発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明3は上記相違点1及び2において甲1A発明と相違するから、本件発明3が甲1A発明であるということはできない。

イ.本件発明3と甲2A発明との対比
上記「2.(2)」で説示したとおり、甲2A発明は甲1A発明と同一である。したがって、本件発明3と甲1A発明との対比において上記ア.で説示した内容を踏まえて、本件発明3と甲2A発明とを対比すると、本件発明3と甲2A発明とは、上記ア.に記載した<一致点>で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲2A発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点4>
樹脂の「進入量」について、本件発明3は「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲2A発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明3は上記相違点3及び4において甲2A発明と相違するから、本件発明3が甲2A発明であるということはできない。

ウ.本件発明3と甲3A発明との対比
本件発明3と甲3A発明とを対比する。

(ア)甲3A発明の「SAWチップ13」は、本件発明3の「電子デバイス」に相当する。また、甲3A発明の「プリント配線基板12」は、その上に「複数のSAWチップ13がバンプを介して」「接続搭載され」るものであるから、本件発明3Aの「被着体」に相当する。さらに、甲3A発明の「SAWチップ搭載基板」は、「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載された」ものであるから、本件発明3の「積層体」に相当する。
したがって、甲3A発明の「複数のSAWチップ13がバンプを介してプリント配線基板12上に接続搭載されたSAWチップ搭載基板を準備する工程」は、本件発明3の「電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程」に相当する。

(イ)甲3A発明の「中空封止用樹脂シート11」は、SAWチップ13を樹脂封止するものであるから、本件発明3の「中空型電子デバイス封止用シート」に相当する。
したがって、甲3A発明の「 電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、龍森社製のEMIX300(微紛シリカ)である無機充填剤2と、龍森社製のEMIX100(微紛シリカ)である無機充填剤3とを、88.0:0:0又は87.0:1.0:0又は86.0:0:1.0又は85.0:3.0:0の配合比で配合したものを含む中空封止用樹脂シート11を準備する工程」と、本件発明3の「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」とは、「無機充填剤を含む中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」である点において共通する。
ただし、甲3A発明において、無機充填剤として含まれるのは、「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、龍森社製のEMIX300(微紛シリカ)である無機充填剤2と、龍森社製のEMIX100(微紛シリカ)である無機充填剤3とを、88.0:0:0又は87.0:1.0:0又は86.0:0:1.0又は85.0:3.0:0の配合比で配合されたもの」である。
まず、配合比が「88.0:0:0」である場合、無機充填剤の平均粒径は20μmとなるから、「無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲である」ものではなく、「レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有している」ものでもなく、したがって、「粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものでもない。また、配合比が「87.0:1.0:0」、「86.0:0:1.0」、又は「85.0:3.0:0」である場合、無機充填剤2及び無機充填剤3の平均粒径が不明であるため無機充填剤全体としての平均粒径が明らかでない上に、いずれの配合比においても、無機充填剤2又は無機充填剤3が配合される割合は、平均粒径が20μmである無機充填剤1と比べて非常に小さいものである。そして、無機充填剤1に対して微量の無機充填剤2又は無機充填剤3を含むことが、無機充填剤全体としての平均粒径を20μmから大きく変えるものとは認められないから、「無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲である」とはいえない。
よって、中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲3A発明ではその旨の特定がなされていない点で相違する。

(ウ)甲3A発明の「前記中空封止用樹脂シート11で、前記SAWチップ搭載基板のSAWチップ13を覆う工程」は、本件発明3の「前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程」に相当する。

(エ)甲3A発明の「熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止用樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程」により、SAWチップ13が中空封止用樹脂シート11に「埋め込」まれることは明らかである。
したがって、甲3A発明の「熱プレスにより、前記SAWチップ13を前記中空封止用樹脂シート11に積層し樹脂封止する工程」は、本件発明3の「熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程」に相当する。

(オ)甲3A発明の「前記積層し樹脂封止する工程の後、前記中空封止用樹脂シート11を熱硬化処理して封止体を形成する工程」は、本件発明3の「前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程」に相当する。

(カ)甲3A発明の「封止体を形成した後に測定した前記SAWチップ13の端部から中空部に進入した樹脂進入量」は、本件発明3の「前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量」である「Y2」に相当する。

(キ)甲3A発明の「中空型SAWチップパッケージの製造方法」は、本件発明3の「中空型電子デバイスパッケージの製造方法」に相当する。

してみれば、本件発明3と甲3A発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
無機充填剤を含む中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を含む中空型電子デバイスパッケージの製造方法。」

<相違点5>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲3A発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点6>
樹脂の「進入量」について、本件発明3は「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲3A発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明3は上記相違点5及び6において甲3A発明と相違するから、本件発明3が甲3A発明であるということはできない。

エ.本件発明3と甲4A発明との対比
本件発明3と甲4A発明とを対比する。
甲4A発明の無機充填剤は、「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4」という、平均粒径の異なる3種類の無機充填剤が配合されたものであるから、粒度分布において「3つのピーク」を有するものと認められる。そうすると、甲4A発明の無機充填剤は、「レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有している」ものではない。
よって、中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲4A発明ではその旨の特定がなされていない点で相違する。
さらに、本件発明3と甲3A発明との対比において上記ウ.で説示した内容も踏まえると、本件発明3と甲4A発明とは、上記ウ.に記載した<一致点>で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲4A発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点8>
本件発明3は「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲4A発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明3は上記相違点7及び8において甲4A発明と相違するから、本件発明3が甲4A発明であるということはできない。

オ.本件発明3と甲5A発明との対比
本件発明3と甲5A発明とを対比する。

(ア)甲5A発明の「弾性表面波チップ」は、本件発明3の「電子デバイス」に相当する。また、甲5A発明の「基板」は、その上に「バンプで接続された活性面を有する複数の弾性表面波チップを形成」するものであるから、本件発明3の「被着体」に相当する。さらに、甲5A発明の「デバイス」は、「基板上にバンプで接続された活性面を有する複数の弾性表面波チップを形成した」ものであり、「基板」と「弾性表面波チップ」が積層されたものであるから、本件発明3の「積層体」に相当する。
したがって、甲5A発明の「基板上にバンプで接続された活性面を有する複数の弾性表面波チップを形成したデバイスを準備する工程」は、本件発明3の「電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程」に相当する。

(イ)甲5A発明の「ゲル状硬化性樹脂シート」は、中空構造を保つように封止樹脂層を形成するものであるから、本件発明3の「中空型電子デバイス封止用シート」に相当する。
したがって、甲5A発明の「電気化学工業(株)製、充填用シリカであるFB201Sを含むゲル状硬化性樹脂シートを準備する工程」と、本件発明3の「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」とは、「無機充填剤を含む中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」である点において共通する。
ただし、甲5A発明の無機充填剤は、「電気化学工業(株)製、充填用シリカであるFB201S」であるから、「レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有している」ものではなく、したがって、「粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものでもない。
また、特許権者が令和1年9月17日提出の意見書において証拠として提示した乙第2号証(特開2004-011734号公報)の段落【0055】に「シリカFB201S…溶融シリカ(平均粒径14μm)、電気化学工業社製」と記載されていることを考慮すると、甲5A発明の「FB201S」の平均粒径は14μm程度であると認められるから、「無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲である」ともいえない。
よって、中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲5A発明ではその旨の特定がなされていない点で相違する。

(ウ)甲5A発明の「前記樹脂シートを、前記デバイスの上に、チップをカバーするようにのせる工程」は、本件発明3の「前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程」に相当する。

(エ)甲5A発明の「真空プレス+熱ロール」は、本件発明3の「熱プレス」に相当する。また、甲5A発明の「前記樹脂シートをデバイスにのせたものを真空プレス+熱ロールすることにより、中空構造を保つように封止樹脂層が形成された樹脂封止デバイスを得る工程」により、弾性表面波チップが樹脂シートに「埋め込」まれることは明らかである。
したがって、甲5A発明の「前記樹脂シートをデバイスにのせたものを真空プレス+熱ロールすることにより、中空構造を保つように封止樹脂層が形成された樹脂封止デバイスを得る工程」は、本件発明3の「熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程」に相当する。

(オ)甲5A発明の「熱ロール工程後の樹脂封止デバイスをオーブン中で硬化する工程」により、樹脂シートが熱硬化して封止体が得られることは明らかである。
したがって、甲5A発明の「熱ロール工程後の樹脂封止デバイスをオーブン中で硬化する工程」は、本件発明3の「前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程」に相当する。

(カ)甲5A発明の「熱ロール工程後のチップ端部からの樹脂侵入が10μmをこえて20μm以下」であることは、本件発明3の「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2」「としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下」であることに相当する。

(キ)甲5A発明の「硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化」は、本件発明3の「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき」「前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値」に相当する。
そして、甲5A発明は、「硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化が熱ロール後と比較して小さい」ものであり、「熱ロール後」の樹脂進入量は「10μmをこえて20μm以下」であるから、「硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化」は、「20μm」よりも小さいことは明らかである。
したがって、甲5A発明の「硬化後のチップ下部への樹脂侵入の変化が熱ロール後と比較して小さい」ことは、本件発明3の「前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」ことに相当する。

(ク)甲5A発明の「弾性表面波チップパッケージ」は「中空構造」であるから、甲5A発明の「弾性表面波チップパッケージの製造方法」は、本件発明3の「中空型電子デバイスパッケージの製造方法」に相当する。

してみれば、本件発明3と甲5A発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
無機充填剤を含む中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を含み、
前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である中空型電子デバイスパッケージの製造方法。」

<相違点9>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明3は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲5A発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明3は上記相違点9において甲5A発明と相違するから、本件発明3が甲5A発明であるということはできない。

カ.まとめ
以上のとおり、請求項3に係る発明が甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明であるということはできないから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。

(2)取消理由2(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明1について
(ア)甲第1号証を主引例とした場合
本件発明3と甲1A発明との対比において上記「(1)ア.」で説示した内容を踏まえて、本件発明1と甲1B発明とを対比すると、本件発明1と甲1B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 無機充填剤を含み、
下記ステップA、B、C、D、F、Gの手順により測定される進入量が所定の条件を満たす中空型電子デバイス封止用シート。
ダミーチップがバンプを介してガラス基板に実装されたダミーチップ実装基板を準備するステップA、
中空型電子デバイス封止用シートのサンプルを準備するステップB、
前記サンプルを、前記ダミーチップ実装基板の前記ダミーチップ上に配置するステップC、
下記埋め込み条件下で、前記ダミーチップを前記サンプルに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、150℃の熱風乾燥機中に1時間放置し、前記サンプルを熱硬化させて封止体サンプルを得るステップF、及び、
前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG。
<埋め込み条件>
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

<相違点10>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明1は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあ」るのに対し、甲1B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点11>
本件発明1は、ステップFの前でステップDの後に、「前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE」を備え、「測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲1B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点12>
本件発明1は、「1つの」ダミーチップがガラス基板に実装されているのに対し、甲1B発明では「複数の」チップをガラス基板に実装している点。

<相違点13>
本件発明1は、ダミーチップが「樹脂」バンプを介してガラス基板に実装されているのに対し、甲1B発明ではバンプが「樹脂」である旨の特定がなされていない点。

<相違点14>
本件発明1は、中空型電子デバイス封止用シートのサイズが「縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズ」であるのに対し、甲1B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点15>
本件発明1は、「ダミーチップの仕様」が「チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている」ものであるのに対し、甲1B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点16>
ステップDにおける「埋め込み条件」について、本件発明1は「プレス方法:平板プレス」「温度:75℃」「加圧力:3000kPa」であるのに対し、甲1B発明ではその旨の特定がなされていない点。

事案に鑑みて、まず相違点10について検討する。
甲第1号証?甲第5号証のいずれにも、中空型電子デバイス封止用シートに含まれる無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いるという技術事項は記載されていない。また、「第5 1.(2)」及び「第5 2.(4)」で後述するとおり、申立人が令和1年10月30日提出の意見書において証拠として提出した参考資料1?10や、特許異議申立書において証拠として提出した甲第6号証及び甲第7号証にも、上記技術事項は記載されておらず、上記技術事項が周知技術であるとも認められない。
したがって、甲1B発明において、無機充填剤として、「球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB-9454FC)」に代えて、相違点10に係る本件発明1の「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、相違点11ないし16について検討するまでもなく、本件発明1が、甲1B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(イ)甲第2号証を主引例とした場合
上記「2.(2)」で説示したとおり、甲2B発明は甲1B発明と同一である。したがって、本件発明1と甲1B発明との対比において上記(ア)で説示した内容を踏まえて、本件発明1と甲2B発明とを対比すると、本件発明1と甲2B発明とは、上記(ア)に記載した<一致点>で一致し、以下の点で相違する。

<相違点17>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明1は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあ」るのに対し、甲2B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点18>
本件発明1は、ステップFの前でステップDの後に、「前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE」を備え、「測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲2B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点19>
本件発明1は、「1つの」ダミーチップがガラス基板に実装されているのに対し、甲2B発明では「複数の」チップをガラス基板に実装している点。

<相違点20>
本件発明1は、ダミーチップが「樹脂」バンプを介してガラス基板に実装されているのに対し、甲2B発明ではバンプが「樹脂」である旨の特定がなされていない点。

<相違点21>
本件発明1は、中空型電子デバイス封止用シートのサイズが「縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズ」であるのに対し、甲2B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点22>
本件発明1は、「ダミーチップの仕様」が「チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている」ものであるのに対し、甲2B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点23>
ステップDにおける「埋め込み条件」について、本件発明1は「プレス方法:平板プレス」「温度:75℃」「加圧力:3000kPa」であるのに対し、甲2B発明ではその旨の特定がなされていない点。

そして、相違点17に係る事項は、上記(ア)の相違点10の検討と同様の理由で、甲2B発明に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではない。
よって、相違点18ないし23について検討するまでもなく、本件発明1が、甲2B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ウ)甲第3号証を主引例とした場合
本件発明3と甲3A発明との対比において上記「(1)ウ.」で説示した内容を踏まえて、本件発明1と甲3B発明とを対比すると、本件発明1と甲3B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 無機充填剤を含み、
下記ステップA、B、C、D、F、Gの手順により測定される進入量が所定の条件を満たす中空型電子デバイス封止用シート。
ダミーチップがバンプを介してガラス基板に実装されたダミーチップ実装基板を準備するステップA、
中空型電子デバイス封止用シートのサンプルを準備するステップB、
前記サンプルを、前記ダミーチップ実装基板の前記ダミーチップ上に配置するステップC、
下記埋め込み条件下で、前記ダミーチップを前記サンプルに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、150℃の熱風乾燥機中に1時間放置し、前記サンプルを熱硬化させて封止体サンプルを得るステップF、及び、
前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG。
<埋め込み条件>
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

<相違点24>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明1は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあ」るのに対し、甲3B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点25>
本件発明1は、ステップFの前でステップDの後に、「前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE」を備え、「測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下であ」るのに対し、甲3B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点26>
本件発明1は、「1つの」ダミーチップがガラス基板に実装されているのに対し、甲3B発明では「複数の」チップをガラス基板に実装している点。

<相違点27>
本件発明1は、ダミーチップが「樹脂」バンプを介してガラス基板に実装されているのに対し、甲3B発明ではバンプが「樹脂」である旨の特定がなされていない点。

<相違点28>
本件発明1は、中空型電子デバイス封止用シートのサイズが「縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズ」であるのに対し、甲3B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点29>
本件発明1は、「ダミーチップの仕様」が「チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている」ものであるのに対し、甲3B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点30>
ステップDにおける「埋め込み条件」について、本件発明1は「プレス方法:平板プレス」「温度:75℃」「加圧力:3000kPa」であるのに対し、甲3B発明ではその旨の特定がなされていない点。

事案に鑑みて、まず相違点24について検討する。
上記(ア)の相違点10の検討で説示したように、甲第1号証?甲第7号証、参考資料1?10のいずれにも、中空型電子デバイス封止用シートに含まれる無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いるという技術事項は記載されておらず、上記技術事項が周知技術であるとも認められない。
したがって、甲3B発明において、無機充填剤として、「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、龍森社製のEMIX300(微紛シリカ)である無機充填剤2と、龍森社製のEMIX100(微紛シリカ)である無機充填剤3とを、88.0:0:0又は87.0:1.0:0又は86.0:0:1.0又は85.0:3.0:0の配合比で配合したもの」に代えて、相違点24に係る本件発明1の「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、相違点25ないし30について検討するまでもなく、本件発明1が、甲3B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(エ)甲第4号証を主引例とした場合
本件発明3と甲4A発明との対比において上記「(1)エ.」で説示した内容を踏まえて、本件発明1と甲4B発明とを対比すると、本件発明1と甲4B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 無機充填剤を含み、
下記ステップA、B、C、D、F、Gの手順により測定される進入量が所定の条件を満たす中空型電子デバイス封止用シート。
ダミーチップがバンプを介してガラス基板に実装されたダミーチップ実装基板を準備するステップA、
中空型電子デバイス封止用シートのサンプルを準備するステップB、
前記サンプルを、前記ダミーチップ実装基板の前記ダミーチップ上に配置するステップC、
下記埋め込み条件下で、前記ダミーチップを前記サンプルに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、150℃の熱風乾燥機中に1時間放置し、前記サンプルを熱硬化させて封止体サンプルを得るステップF、及び、
前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG。
<埋め込み条件>
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分」

<相違点31>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明1は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあ」るのに対し、甲4B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点32>
本件発明1は、ステップFの前でステップDの後に、「前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE」を備え、「測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲4B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点33>
本件発明1は、「1つの」ダミーチップがガラス基板に実装されているのに対し、甲4B発明では「複数の」チップをガラス基板に実装している点。

<相違点34>
本件発明1は、ダミーチップが「樹脂」バンプを介してガラス基板に実装されているのに対し、甲4B発明ではバンプが「樹脂」である旨の特定がなされていない点。

<相違点35>
本件発明1は、中空型電子デバイス封止用シートのサイズが「縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズ」であるのに対し、甲4B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点36>
本件発明1は、「ダミーチップの仕様」が「チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている」ものであるのに対し、甲4B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点37>
ステップDにおける「埋め込み条件」について、本件発明1は「プレス方法:平板プレス」「温度:75℃」「加圧力:3000kPa」であるのに対し、甲4B発明ではその旨の特定がなされていない点。

事案に鑑みて、まず相違点31について検討する。
上記(ア)の相違点10の検討で説示したように、甲第1号証?甲第7号証、参考資料1?10のいずれにも、中空型電子デバイス封止用シートに含まれる無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いるという技術事項は記載されておらず、上記技術事項が周知技術であるとも認められない。
したがって、甲4B発明において、無機充填剤として、「電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4とを、58.0:25.0:5.0の配合比で配合したもの」に代えて、相違点31に係る本件発明1の「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、相違点32ないし37について検討するまでもなく、本件発明1が、甲4B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(オ)甲第5号証を主引例とした場合
本件発明3と甲5A発明との対比において上記「(1)オ.」で説示した内容を踏まえて、本件発明1と甲5B発明とを対比すると、本件発明1と甲5B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 無機充填剤を含み、
下記ステップA?ステップGの手順により測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である中空型電子デバイス封止用シート。
ダミーチップがバンプを介して基板に実装されたダミーチップ実装基板を準備するステップA、
中空型電子デバイス封止用シートのサンプルを準備するステップB、
前記サンプルを、前記ダミーチップ実装基板の前記ダミーチップ上に配置するステップC、
前記ダミーチップを前記サンプルに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、前記ダミーチップと前記基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE、
前記ステップEの後、前記サンプルを熱硬化させて封止体サンプルを得るステップF、及び、
前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG。」

<相違点38>
中空型電子デバイス封止用シートが含む「無機充填剤」について、本件発明1は「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあ」るのに対し、甲5B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点39>
本件発明1は、「1つの」ダミーチップが基板に実装されているのに対し、甲5B発明では「複数の」チップをガラス基板に実装している点。

<相違点40>
本件発明1は、ダミーチップが「樹脂」バンプを介して基板に実装されているのに対し、甲5B発明ではバンプが「樹脂」である旨の特定がなされていない点。

<相違点41>
本件発明1は、ダミーチップが実装される基板が「ガラス基板」であるのに対し、甲5B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点42>
本件発明1は、ダミーチップの仕様の「チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている」ものであるのに対し、甲5B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点43>
本件発明1は、中空型電子デバイス封止用シートのサイズが「縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズ」であるのに対し、甲5B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点44>
ステップDにおける「埋め込み条件」について、本件発明1は「プレス方法:平板プレス」「温度:75℃」「加圧力:3000kPa」「真空度:1.6kPa」「プレス時間:1分」であるのに対し、甲5B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点45>
ステップFにおける「熱硬化」について、本件発明1は「150℃の熱風乾燥機中に1時間放置」するのに対し、甲5B発明ではその旨の特定がなされていない点。

事案に鑑みて、まず相違点38について検討する。
上記(ア)の相違点10の検討で説示したように、甲第1号証?甲第7号証、参考資料1?10のいずれにも、中空型電子デバイス封止用シートに含まれる無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いるという技術事項は記載されておらず、上記技術事項が周知技術であるとも認められない。
したがって、甲5B発明において、無機充填剤として、「電気化学工業(株)製、充填用シリカであるFB201S」に代えて、相違点38に係る本件発明1の「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、相違点39ないし45について検討するまでもなく、本件発明1が、甲5B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(カ)まとめ
以上のとおり、請求項1に係る発明が、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

イ.本件発明2について
本件発明2は本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記「ア.(オ)」で述べたのと同様の理由で、本件発明2が、甲5B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、請求項2に係る発明が、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

第5 申立人の意見及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許権者による訂正請求書の提出に対する申立人の意見について
(1)特許法第36条第6項第2号について
申立人は、令和1年10月30日提出の意見書において、本件明細書の段落【0055】には、平均粒径及び粒度分布の測定法について、封止用シートを大気雰囲気下、700℃で2時間強熱し灰化させたものを測定することが記載されており、無機充填剤といえども、大気雰囲気下、700℃で2時間強熱させると、凝集等を起こすことが知られており(下記参考資料1?3)、無機充填剤が凝集等を起こすと、その粒子径分布は変化するものであると認められるから、無機充填剤の平均粒径等について、封止用シートに含有されている状態の値であるのか、それとも、大気雰囲気下、700℃で2時間強熱させたものであるのか、測定条件を特定していない本件発明1ないし3は不明確である旨主張している。



参考資料1:特開2012-140289号公報
参考資料2:特開2014-009140号公報
参考資料3:特開2008-168354号公報

上記主張について検討する。
本件発明1の「中空型電子デバイス封止用シート」は、無機充填剤やそれ以外の有機成分を含む「シート」として形成されたものである。そして、技術常識を勘案すると、「中空型電子デバイス封止用シート」自体に対してレーザー回折散乱法を行っても、粒度分布を測定できないことは明らかであるから、無機充填剤の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定するためには、強熱や灰化といった処理を行ってから測定する必要があることは自明のことである。
したがって、請求項1の「レーザー回折散乱法により測定した粒度分布」との記載が、「中空型電子デバイス封止用シート」自体に対してレーザー回折散乱法により測定した粒度分布を意味するものではなく(すなわち、必ずしも封止用シートに含有されている状態の粒度分布を意味するものではなく)、「中空型電子デバイス封止用シート」に対して強熱や灰化といった処理を行ってレーザー回折散乱法により粒度分布が測定できる状態にした後における粒度分布を意味することは明らかである。
また、本件発明2、3についても、同様のことがいえる。
よって、本件発明1ないし3において、無機充填剤の平均粒径等について、封止用シートに含有されている状態の値であるのか否かが不明確であるとの申立人の主張を採用することはできない。

(2)特許法第29条第2項について
申立人は、令和1年10月30日提出の意見書において、証拠として上記参考資料1?3とともに下記参考資料4?10を提出し、本件発明1ないし3は、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された事項から依然として当業者が容易に想到することができたものである旨主張している。



参考資料4:特開2008-195752号公報
参考資料5:国際公開第98/015597号
参考資料6:佐々木英男、「フィラー活用辞典」、初版、株式会社大成社、平成6年(1994年)5月31日、p200-206
参考資料7:特開2014-209566号公報
参考資料8:特開2004-331728号公報
参考資料9:特開2009-091389号公報
参考資料10:特開2008-285593号公報

上記主張について検討する。
参考資料4の【請求項2】、段落【0046】、【0065】、【0066】、【0078】、【表1】には、電子素子封止用樹脂被覆無機粉末組成物において、比較的大径粒子と小径粒子とを組み合わせて併用すると、無機材料の優れた耐湿性、高弾性率等の特性をパッケージに与えることができることが記載されている。しかしながら、参考資料4におけるいずれの実施例においても、3種類以上の無機粉末を組み合わせており、かつ平均粒子径が30μmである「球状溶融シリカ粉末A」を主成分としているから、無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」もの(以下、「本件無機充填剤」という。)を用いることは記載されていない。
また、参考資料5の第41頁第14行目-第21行目には、電子部品を封止するための封止用材料において、無機充填剤の配合量は、吸湿性の低減、線膨張係数の低減等の観点から、50体積%以上、80体積%以下とすることが好ましいことが記載されているものの、無機充填剤として本件無機充填剤を用いることは記載されていない。
また、参考資料6の2.1.1や2.1.2には、半導体素子等の電子部品を封止するための封止材において、低吸湿化が大きな課題となっていること、及び封止材と半導体素子との熱膨張係数の差を少なくすることが重要であることが記載されているものの、無機充填剤として本件無機充填剤を用いることは記載されていない。
また、参考資料7の段落【0009】、【0079】、【0080】、【0089】、【表1】には、実施例3、4の中空封止用樹脂シートとして、電気化学工業社製のFB-9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)である無機充填剤1と、電気化学工業社製のFB-5SDC(溶融球状シリカ、平均粒子径5μm)である無機充填剤3と、(株)アドマテックス社製のSO-25R(溶融球状シリカ、平均粒子径0.5μm)である無機充填剤4とを、58.0:25.0:5.0の配合比で配合した無機充填剤を用いることが記載されている。しかしながら、参考資料7の上記実施例3、4は3種類の無機充填剤を配合したものであり、かつ平均粒子径が20μmである「無機充填剤1」を主成分としたものであるから、参考資料7には、無機充填剤として本件無機充填剤を用いることは記載されていない。
また、参考資料8の段落【0024】には、実施例1において、樹脂ワニスに、FB-48(球状シリカ、平均粒径16μm、電気化学社製)240gとSO-C2(微粒子球状シリカ、平均粒計0.5μm、アドマテックス社製)40g、HS‐100(カーボンブラック、電気化学社製)3gを加えて混合したものから電子部品被覆用接着性フィルムを得ることが記載されているものの、無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であることは記載されていないから、無機充填剤として本件無機充填剤を用いることは記載されていない。
また、参考資料9の段落【0041】には、バンプ高さ50μmの表面弾性波素子を中空封止すること、参考資料10の段落【0043】には、バンプ高さ30μmのSAWフィルターチップを中空封止することが記載されているものの、いずれにも無機充填剤として本件無機充填剤を用いることは記載されていない。
さらに、参考資料1の段落【0025】、参考資料2の段落【0013】、参考資料3の段落【0029】には、無機フィラーの凝集に関する記載があるものの、無機充填剤として本件無機充填剤を用いることは記載されていない。
以上のとおりであるから、参考資料1?10のいずれにも、中空型電子デバイス封止用シートに含まれる無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いるという技術事項は記載されておらず、上記技術事項が周知技術であるとも認められない。
したがって、甲第1号証?第5号証のいずれを主引例としても、上記「第4 3.(2)ア.(ア)ないし(オ)」での説示と同様の理由で、無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することができない。

2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
ア.申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
申立人は、請求項1ないし3に係る発明は、下記の甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである旨主張している。
イ.申立理由2(特許法第29条第2項)
申立人は、請求項1ないし3に係る発明は、下記の甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。
ウ.申立理由3(特許法第36条第4項第1号)
申立人は、本件特許明細書等には、中空型電子デバイス封止用シートに用いることができる原料等の記載はなされているが、何をどの程度配合すればX1、又はY2(当審注:Y1の誤記と認められる)に効くのか等、何ら記載も示唆もなされておらず、そのような状況において、上記X1とY1からX1を引いた値を特定した中空型電子デバイス封止用シートを製造するには、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤を必要とするものであるから、請求項1ないし2に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張している。
また申立人は、封止用シートの材料構成と粘度をどのように調整すれば、X2及びY2が大きくなるのか、又は小さくなるのか不明な状況において、材料構成等を調整しつつ、熱プレス条件等の製造条件を調整することは、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤を必要とするものであるから、請求項3に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張している。



甲第1号証:特開2014-225635号公報
甲第2号証:特開2014-209565号公報
甲第3号証:特開2014-209567号公報
甲第4号証:特開2014-209568号公報
甲第5号証:特開2006-19714号公報
甲第6号証:特開2004-129092号公報
甲第7号証:特開2007-073554号公報

(2)甲第6号証について
取消理由通知において採用しなかった甲第6号証の【請求項1】、段落【0015】、【0016】、【0018】、【0020】、図5、6の記載事項を総合勘案すると、甲第6号証には、「表面実装型SAWデバイスの製造方法」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲6A発明」という。)が記載されている。

(甲6A発明)
「絶縁基板、該絶縁基板の底部に配置した表面実装用の外部電極、及び該絶縁基板の上部に配置され且つ前記外部電極と導通した配線パターン、を備えた実装基板と、圧電基板、該圧電基板の一面に形成したIDT電極、及び前記配線パターンと導体バンプを介して接続される接続パッド、を備えたSAWチップと、前記SAWチップをフェイスダウン状態で実装基板上にフリップチップ実装した状態でSAWチップ外面から実装基板上面にかけて被覆形成されることにより前記IDT電極と前記実装基板との間に気密空間を形成する封止樹脂と、を備えた表面実装型SAWデバイスの製造方法において、
前記配線パターンと前記接続パッドとを前記導体バンプを介して接続することにより前記実装基板上にSAWチップをフリップチップ実装するフリップチップ実装工程と、
前記SAWチップ上面にSAWチップ上面よりも面積が大きい樹脂シートを載置して該実装基板の一端から他端へ向けて樹脂シートを軟化又は溶融させながら樹脂シートを加圧することにより前記気密空間を確保しながらSAWチップ外面を樹脂にて覆うラミネート工程と、
前記樹脂にて外面をラミネートしたSAWチップを加圧しながら加熱することにより、前記気密空間内の気体の膨張を抑制しながら該樹脂を硬化させるプレス成形工程と、
プレス成形工程を経たSAWデバイスを、樹脂が完全に硬化する温度・時間にて加熱する後硬化工程と、を備え、
ラミネート工程、プレス成形工程、後硬化工程から成る樹脂封止工程を実施する際に、使用する樹脂シートの肉厚を適切な値に設定したことにより、SAWチップ間の谷間に充填された軟化樹脂をSAWチップ裾部にまで確実に行き渡らせて気密空間を確実に形成すると共に、加熱による気密空間の拡大による封止樹脂の変形を防止することができる、表面実装型SAWデバイスの製造方法。」

また甲第6号証には、「樹脂シート」の発明として捉えることができる以下の発明(以下、「甲6B発明」という。)が記載されている。

(甲6B発明)
「絶縁基板、該絶縁基板の底部に配置した表面実装用の外部電極、及び該絶縁基板の上部に配置され且つ前記外部電極と導通した配線パターン、を備えた実装基板と、圧電基板、該圧電基板の一面に形成したIDT電極、及び前記配線パターンと導体バンプを介して接続される接続パッド、を備えたSAWチップと、前記SAWチップをフェイスダウン状態で実装基板上にフリップチップ実装した状態でSAWチップ外面から実装基板上面にかけて被覆形成されることにより前記IDT電極と前記実装基板との間に気密空間を形成する封止樹脂と、を備え、以下の工程1?4により製造され、ラミネート工程2、プレス成形工程3、後硬化工程4から成る樹脂封止工程を実施する際に、使用する樹脂シートの肉厚を適切な値に設定したことにより、SAWチップ間の谷間に充填された軟化樹脂をSAWチップ裾部にまで確実に行き渡らせて気密空間を確実に形成すると共に、加熱による気密空間の拡大による封止樹脂の変形を防止することができる、表面実装型SAWデバイスを製造するために用いられる樹脂シート。
前記配線パターンと前記接続パッドとを前記導体バンプを介して接続することにより前記実装基板上にSAWチップをフリップチップ実装するフリップチップ実装工程1、
前記SAWチップ上面にSAWチップ上面よりも面積が大きい樹脂シートを載置して該実装基板の一端から他端へ向けて樹脂シートを軟化又は溶融させながら樹脂シートを加圧することにより前記気密空間を確保しながらSAWチップ外面を樹脂にて覆うラミネート工程2、
前記樹脂にて外面をラミネートしたSAWチップを加圧しながら加熱することにより、前記気密空間内の気体の膨張を抑制しながら該樹脂を硬化させるプレス成形工程3、
プレス成形工程を経たSAWデバイスを、樹脂が完全に硬化する温度・時間にて加熱する後硬化工程4。」

(3)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
ア.本件発明3について
本件発明3と甲6A発明とを対比する。

(ア)甲6A発明の「SAWチップ」、「実装基板」、「樹脂シート」、「表面実装型SAWデバイス」は、それぞれ本件発明3の「電子デバイス」、「被着体」、「中空型電子デバイス封止用シート」、「中空型電子デバイスパッケージ」に相当する。また、甲6A発明の「前記SAWチップをフェイスダウン状態で実装基板上にフリップチップ実装した状態」における「SAWチップ」と「実装基板」とからなる構成は、本件発明3の「積層体」に相当する。

(イ)甲6A発明の「前記配線パターンと前記接続パッドとを前記導体バンプを介して接続することにより前記実装基板上にSAWチップをフリップチップ実装するフリップチップ実装工程」は、本件発明3の「電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程」に相当する。

(ウ)「中空型電子デバイス封止用シート」について、本件発明3は「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲6A発明では「無機充填剤を含」むとの特定はなされておらず、したがって、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」との特定もなされていない。

(エ)甲6A発明の「前記SAWチップ上面にSAWチップ上面よりも面積が大きい樹脂シートを載置」することは、本件発明3の「中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程」と「前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程」に相当する。

(オ)甲6A発明の「該実装基板の一端から他端へ向けて樹脂シートを軟化又は溶融させながら樹脂シートを加圧することにより前記気密空間を確保しながらSAWチップ外面を樹脂にて覆うラミネート工程」は、本件発明3の「熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程」に相当する。

(カ)甲6A発明の「前記樹脂にて外面をラミネートしたSAWチップを加圧しながら加熱することにより、前記気密空間内の気体の膨張を抑制しながら該樹脂を硬化させるプレス成形工程と、プレス成形工程を経たSAWデバイスを、樹脂が完全に硬化する温度・時間にて加熱する後硬化工程」は、「前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程」に相当する。

してみれば、本件発明3と甲6A発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を含む中空型電子デバイスパッケージの製造方法。」

<相違点46>
「中空型電子デバイス封止用シート」について、本件発明3は「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」のに対し、甲6A発明では「無機充填剤を含」むとの特定はなされておらず、したがって、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」との特定もなされていない点。

<相違点47>
本件発明3は、「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲6A発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明3は上記相違点46及び47において甲6A発明と相違するから、本件発明3が甲6A発明であるということはできない。
よって、請求項3に係る発明が甲第6号証に記載された発明であるということはできないから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。

イ.本件発明1について
本件発明3と甲6A発明との対比において上記ア.で説示した内容を踏まえて、本件発明1と甲6B発明とを対比すると、本件発明1と甲6B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「 下記ステップA、B、C、D、Fの手順がなされる中空型電子デバイス封止用シート。
チップがバンプを介してガラス基板に実装されたチップ実装基板を準備するステップA、
中空型電子デバイス封止用シートを準備するステップB、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記チップ実装基板の前記チップ上に配置するステップC、
前記チップを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得るステップF。」

<相違点48>
「中空型電子デバイス封止用シート」について、本件発明1は「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあ」るのに対し、甲6B発明では「無機充填剤を含」むとの特定はなされておらず、したがって、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」との特定もなされていない点。

<相違点49>
本件発明1は、「前記ステップDの後、前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE」及び「前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG」を備え、それにより「測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である」のに対し、甲6B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点50>
基板に実装される「チップ」について、本件発明1は、「チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている」「1つの」「ダミー」チップであるのに対し、甲6B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点51>
本件発明1は、チップが「樹脂」バンプを介して基板に実装されているのに対し、甲6B発明ではバンプが「樹脂」である旨の特定がなされていない点。

<相違点52>
本件発明1は、チップが実装される基板が「ガラス基板」であるのに対し、甲6B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点53>
本件発明1は、チップ上に配置されるのが「縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズの」中空型電子デバイス封止用シートの「サンプル」であるのに対し、甲6B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点54>
ステップDにおける「埋め込み条件」について、本件発明1は「プレス方法:平板プレス」「温度:75℃」「加圧力:3000kPa」「真空度:1.6kPa」「プレス時間:1分」であるのに対し、甲6B発明ではその旨の特定がなされていない点。

<相違点55>
ステップFにおける「熱硬化」について、本件発明1は「150℃の熱風乾燥機中に1時間放置」するのに対し、甲6B発明ではその旨の特定がなされていない点。

したがって、本件発明1は上記相違点48ないし55において甲6B発明と相違するから、本件発明1が甲6B発明であるということはできない。
また、上記「第4 3.(2)ア.(ア)ないし(オ)」で説示したとおり、本件発明1は、相違点10ないし16において甲1B発明と相違し、相違点17ないし23において甲2B発明と相違し、相違点24ないし30において甲3B発明と相違し、相違点31ないし37において甲4B発明と相違し、相違点38ないし45において甲5B発明と相違するから、本件発明1が甲1B発明ないし甲5B発明であるということはできない。

よって、請求項1に係る発明が甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明であるということはできないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。

ウ.本件発明2について
本件発明2は本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記イ.で述べたのと同様の理由で、本件発明2が甲1B発明ないし甲6B発明であるということはできない。
よって、請求項2に係る発明が甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明であるということはできないから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。

(4)申立理由2(特許法第29条第2項)について
ア.本件発明3について
(ア)甲第6号証を主引例とした場合
本件発明3と甲6A発明とを対比すると、本件発明3と甲6A発明とは、上記「(3)ア.」に記載した<一致点>で相違し、<相違点46>及び<相違点47>で相違する。

事案に鑑みて、まず上記相違点46について検討する。
甲第1号証?甲第5号証のいずれにも、中空型電子デバイス封止用シートに含まれる無機充填剤として、「前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものを用いるという技術事項は記載されていない。また、甲第7号証の【請求項1】、段落【0015】、【0022】には、熱硬化樹脂によって中空封止された樹脂封止デバイスにおいて、前記熱硬化樹脂は、過熱してから熱硬化反応が起こる100℃になるまでの間に低粘度になり流動化し易くなることが記載されているものの、上記技術事項は記載されていない。
したがって、甲6A発明において、相違点46に係る本件発明3の「無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある」ものとすることが、当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、相違点47について検討するまでもなく、本件発明3が、甲6A発明、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(イ)甲第1号証ないし甲第5号証を主引例とした場合
上記「第4 3.(1)ア.ないしオ.」で説示したとおり、本件発明3は、「相違点1及び2」において甲1A発明と相違し、「相違点3及び4」において甲2A発明と相違し、「相違点5及び6」において甲3A発明と相違し、「相違点7及び8」において甲4A発明と相違し、「相違点9」において甲5A発明と相違するものである。そして、「相違点1」、「相違点3」、「相違点5」、「相違点7」、「相違点9」に係る事項については、上記「第4 3.(2)ア.(ア)ないし(オ)」のそれぞれ「相違点10」、「相違点17」、「相違点24」、「相違点31」、「相違点38」の検討と同様の理由で、当業者が容易に想到し得る事項ではない。
したがって、甲第1号証ないし甲第5号証のいずれを主引例とした場合にも、本件発明3が甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ.本件発明1について
本件発明1と甲6B発明とを対比すると、本件発明1と甲6B発明とは、上記「(3)イ.」に記載した<一致点>で相違し、<相違点48>ないし<相違点55>で相違する。
そして、相違点48に係る事項は、上記ア.の相違点46の検討と同様の理由で、甲6B発明に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項ではない。
よって、相違点49ないし55について検討するまでもなく、本件発明1が、甲6B発明、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ.本件発明2について
本件発明2は本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、上記イ.で述べたのと同様の理由で、本件発明2が、甲6B発明、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、上記「第4 3.(2)ア.(ア)ないし(オ)」で述べたのと同様の理由で、甲第1号証ないし甲第4号証のいずれを主引例とした場合にも、本件発明2が甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

エ.まとめ
以上のとおり、請求項1ないし3に係る発明が甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

(5)申立理由3(特許法第36条第4項第1号)について
本件発明1、2の「ステップA?ステップGの手順により測定される測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である」「中空型電子デバイス封止用シート」、及び本件発明3の「前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である」「中空型電子デバイスパッケージ」について、発明の詳細な説明の段落【0089】?【0100】、【表1】には、実施例1?3で用いられる電子デバイス封止用シートの成分、樹脂及び無機充填剤の配合比、シート厚み等が具体的に記載されている。
よって、当業者は、発明の詳細な説明の上記実施例1?3に関する記載にしたがって、本件発明1、2の「中空型電子デバイス封止用シート」及び本件発明3の「中空型電子デバイスパッケージ」を作ることができる。
また、【表1】に記載されているように、シートの粘度に応じて樹脂進入量が変わることは当然のことであり、また無機充填剤の粒径やその配合比によって粘度が変わることは明らかであるから、【表1】に開示された条件から、粘度が大きく変わらないようにしつつ無機充填剤の粒径や配合比等を適宜変更し、「ステップA?ステップGの手順により測定される測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下である中空型電子デバイス封止用シート」及び「進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下である中空型電子デバイスパッケージ」を作ること(すなわち、実施例1?3「以外」の中空型電子デバイス封止用シート及び中空型電子デバイスパッケージを作ること)が、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤を必要とするものであるとはいえない。
以上のとおりであるから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機充填剤を含み、
前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、
前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にあり、
下記ステップA?ステップGの手順により測定される進入量X1が0μm以上50μm以下であり、且つ、進入量Y1から前記進入量X1を引いた値が60μm以下であることを特徴とする中空型電子デバイス封止用シート。
下記仕様の1つのダミーチップが樹脂バンプを介してガラス基板に実装されたダミーチップ実装基板を準備するステップA、
縦1cm、横1cm、厚さ220μmのサイズの中空型電子デバイス封止用シートのサンプルを準備するステップB、
前記サンプルを、前記ダミーチップ実装基板の前記ダミーチップ上に配置するステップC、
下記埋め込み条件下で、前記ダミーチップを前記サンプルに埋め込むステップD、
前記ステップDの後、前記ダミーチップと前記ガラス基板との間の中空部への、前記サンプルを構成する樹脂の進入量X1を測定するステップE、
前記ステップEの後、150℃の熱風乾燥機中に1時間放置し、前記サンプルを熱硬化させて封止体サンプルを得るステップF、及び、
前記封止体サンプルにおける前記中空部への前記樹脂の進入量Y1を測定するステップG。
<ダミーチップの仕様>
チップサイズが縦3mm、横3mm、厚さ200μmであり、高さ50μmの樹脂バンプが形成されている。
<埋め込み条件>
プレス方法:平板プレス
温度:75℃
加圧力:3000kPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
【請求項2】
90℃での粘度が300kPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の中空型電子デバイス封止用シート。
【請求項3】
電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
無機充填剤を含み、前記無機充填剤の平均粒径が0.5?10μmの範囲であり、前記無機充填剤が、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において2つのピークを有しており、粒径の大きい側のピークが3?30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1?1μmの範囲内にある中空型電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記中空型電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記中空型電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記中空型電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を含み、
前記埋め込む工程の後、且つ、前記封止体を得る工程の前の状態における、前記中空型電子デバイス封止用シートを構成する樹脂の、前記電子デバイスと前記被着体との間の中空部への進入量をX2、前記封止体を得る工程の後の状態における、前記中空部への前記樹脂の進入量をY2としたとき、前記進入量X2が0μm以上50μm以下であり、且つ、前記進入量Y2から前記進入量X2を引いた値が60μm以下であることを特徴とする中空型電子デバイスパッケージの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-41066(P2015-41066)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 536- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 芳健  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
宮本 秀一
登録日 2018-10-26 
登録番号 特許第6422370号(P6422370)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 中空型電子デバイス封止用シート、及び、中空型電子デバイスパッケージの製造方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ