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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1359900
審判番号 不服2019-864  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-23 
確定日 2020-02-10 
事件の表示 特願2014-246311「ウエハ加工用テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-111160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年12月 4日の特許出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成30年 6月 4日:拒絶理由通知(起案日)
平成30年 6月22日:意見書,手続補正書
平成30年10月29日:拒絶査定 (以下「原査定」という。)
平成31年 1月23日:審判請求

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。
「【請求項1】
長尺の離型フィルムと,
前記離型フィルムの第1の面上に設けられた所定の平面形状を有する接着剤層と,
前記接着剤層を覆い,且つ,前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部と,前記ラベル部の外側を囲むような周辺部とを有する粘着フィルムと,
前記離型フィルムの短手方向両端部に設けられた支持部材とを有するウエハ加工用テープであって,
前記支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から1?5mm内側に粘着されており,
前記支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から1mm以上内側に粘着されることで,センサで前記支持部材を検出可能に構成されており,
前記支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側に粘着されることで,ロール状にして端部を下にして置かれた際に,前記離型フィルムと前記周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がるのを防止可能に構成されていることを特徴とするウエハ加工用テープ。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし3に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1,2に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。
1.特開2013-213128号公報
2.特開2013-165168号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)原査定に引用され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-213128号公報(以下「引用文献1」という。)には,次の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同じ。)
「【請求項1】
長尺の離型フィルムと,
前記離型フィルム上にラベル状に設けられた接着剤層と,
前記接着剤層を覆い,且つ,前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられたラベル部と,前記ラベル部の外側を囲むような周辺部とを有する粘着フィルムと,
を有した,ロール状に巻かれた接着シートであって,
前記粘着フィルムを貫く貫通孔が,前記接着剤層の被着体貼合予定部分に対応する部分より外側で前記ラベル部の内側であって,且つ,前記粘着フィルムの被着体貼合予定部分を含む位置に設けられていることを特徴とする接着シート。」

「【請求項7】
前記粘着フィルムのラベル部の外側に長手方向に沿って設けられた支持部材を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に接着シート。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は,接着シートに関し,特に,ダイシングテープとダイボンディングフィルムの2つの機能を有する接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近時,半導体ウエハを個々のチップに切断分離(ダイシング)する際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと,切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するため,又は,スタックドパッケージにおいては,半導体チップ同士を積層,接着するためのダイボンディングフィルム(ダイアタッチフィルムともいう)との2つの機能を併せ持つ接着シートが開発されている。」

「【0013】
そこで,本発明の目的は,接着剤層と粘着フィルムとの間にボイドが発生するのを抑制して,半導体ウエハに対する貼合不良を低減することができ,かつエキスパンド量及び/又はエキスパンド速度を大きくした場合であっても,粘着フィルムが裂けることなく良好にエキスパンドすることができる接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため,本発明による接着シートは,長尺の離型フィルムと,前記離型フィルム上にラベル状に設けられた接着剤層と,前記接着剤層を覆い,且つ,前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられたラベル部と,前記ラベル部の外側を囲むような周辺部とを有する粘着フィルムと,を有した,ロール状に巻かれた接着シートであって,前記粘着フィルムを貫く貫通孔が,前記接着剤層の被着体貼合予定部分に対応する部分より外側で前記ラベル部の内側であって,且つ,前記粘着フィルムの被着体貼合予定部分を含む位置に設けられていることを特徴とする。」

「【0020】
また,上記接着シートは,前記粘着フィルムのラベル部の外側に長手方向に沿って設けられた支持部材を有することが好ましい。」

「【0023】
[第1の実施形態]
以下に,本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は,本発明の実施形態に係る接着シートの粘着フィルム側から見た平面図,図1(b)は,図1(a)の線A-Aによる断面図である。
【0024】
図1(a)及び図1(b)に示すように,接着シート10は,長尺の離型フィルム11と,接着剤層12と,粘着フィルム13とを有し,ダイシングテープとダイボンディングフィルムの2つの機能を有するウエハ加工用テープである。
【0025】
接着剤層12は,離型フィルム11の第1の面上に設けられ,ウエハの形状に対応した円形ラベル形状を有している。粘着フィルム13は,接着剤層12を覆い,かつ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13aと,この円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13bとを有する。周辺部13bは,円形ラベル部13aの外側を完全に囲む形態と,図示のような完全には囲まない形態とを含む。円形ラベル部13aは,ダイシング用のリングフレームに対応する形状を有する。」

「【0059】
[第2の実施形態]
次に,第2の実施形態について説明する。本実施の形態にかかる接着シート10’は,支持部材16を有している点が異なる他は,第1の実施形態において説明したのと同様の構成,製造方法を適用することができる。
【0060】
以下,第1の実施形態と異なる点について,説明する。図7(a)に示すように,支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部に設けられている。
【0061】
支持部材16の厚さとしては,離型フィルム11上における,接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aとの積層部分と,粘着フィルム13の周辺部13bとの段差に相当する厚さ以上,すなわち接着剤層12の厚さ以上であればよい。支持部材がこのような厚さを有することで,接着シート10を巻き取ったときに,粘着フィルム13とその表面に重なる離型フィルム11の第2の面との間に空間が形成されるので,接着剤層と粘着フィルムとの間に発生したボイドが抜けやすくなる。
【0062】
なお,支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部に限定されることなく,粘着フィルム13のラベル部13aの外側に対応する位置であればどこに設けられてもかまわないが,ロール状に巻かれて製品となった際に,接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aや支持部材16の積層部分と,粘着フィルム13の周辺部13bとの段差が重なりあい,柔軟な接着剤層12表面に段差が転写されるのを防止する観点からは,離型フィルム11の短手方向両端部から接着剤層12までの領域R”内に設けることが好ましい。
【0063】
また,離型フィルム11の接着剤層12及び粘着フィルム13が設けられた第1の面とは反対の第2の面に支持部材16を設けることが好ましい。
【0064】
支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部に設ける場合,離型フィルム11の長手方向に沿って,断続的又は連続的に設けることができるが,転写痕の発生をより効果的に抑制する観点からは,基材フィルム11の長手方向に沿って連続的に設けることが好ましい。
【0065】
支持部材16としては,例えば,樹脂フィルム基材に粘接着剤を塗布した粘接着テープを好適に使用することができる。このような粘接着テープを,離型フィルム11の第2の面の両端部分の所定位置に貼り付けることで,本実施形態の接着シート10’を形成することができる。粘接着テープは,一層のみを貼り付けてもよいし,薄いテープを積層させてもよい。」

「【図1】


図1(a)は,引用文献1に記載された発明の実施形態に係る接着シート10の構造を模式的に示す平面図であり,図1(b)は,図1(a)のA-A断面図であって,これらの図と上記摘記から,接着シート10は,長尺の離型フィルム11と,接着剤層12と,粘着フィルム13と,粘着フィルムを貫く貫通孔14とを有し,接着剤層12は,離型フィルム11の第1の面上に設けられ,ウエハの形状に対応した円形ラベル形状を有し,粘着フィルム13は,接着剤層12を覆い,かつ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13aと,この円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13bとを有し,周辺部13bは,円形ラベル部13aの外側を完全には囲むことなく,円形ラベル部13aは,ダイシング用のリングフレームに対応する形状を有する構造を見て取ることができる。

「【図7】


図7(a)は,引用文献1に記載された発明の他の実施形態に係る接着シート10’の構造を模式的に示す平面図であり,図7(b)は,図7(a)のA-A断面図であって,これらの図と上記摘記から,接着シート10’は,支持部材16を有している点が異なる他は,第1の実施形態において説明した接着シート10と同様の構成を有し,支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部に設けられている構造を見て取ることができる。

(2)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は,ダイシングテープとダイボンディングフィルムの2つの機能を有する接着シートに関するものであり,半導体ウエハを個々のチップにダイシングする際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと,切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するためのダイボンディングフィルムとの2つの機能を併せ持つ接着シートの,接着剤層と接着フィルムとの間にボイドが発生するのを抑制して,半導体ウエハに対する貼合不良を低減することができ,かつエキスパンド量及び/又はエキスパンド速度を大きくした場合であっても,粘着フィルムが裂けることなく良好にエキスパンドすることができる接着シートを提供することを課題としたものであること(【0001】,【0002】,【0013】)。

イ 上記アの課題を解決するため,接着シートは,長尺の離型フィルムと,前記離型フィルム上にラベル状に設けられた接着剤層と,前記接着剤層を覆い,且つ,前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられたラベル部と,前記ラベル部の外側を囲むような周辺部とを有する粘着フィルムと,を有した,ロール状に巻かれた接着シートであって,前記粘着フィルムを貫く貫通孔が,前記接着剤層の被着体貼合予定部分に対応する部分より外側で前記ラベル部の内側であって,且つ,前記粘着フィルムの被着体貼合予定部分を含む位置に設けられていること(【0014】)。

ウ 接着シートは,前記粘着フィルムのラベル部の外側に長手方向に沿って設けられた支持部材を有することが好ましいこと(【0020】)。

エ 引用文献1に記載された技術の,第1の実施形態に係る接着シート10は,長尺の離型フィルム11と,接着剤層12と,粘着フィルム13とを有し,接着剤層12は,離型フィルム11の第1の面上に設けられ,ウエハの形状に対応した円形ラベル形状を有しており,粘着フィルム13は,接着剤層12を覆い,かつ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13aと,この円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13bとを有し,ダイシング用のリングフレームに対応する形状を有していること(図1,【0023】-【0025】)。

オ 引用文献1に記載された技術の,第2の実施形態に係る接着シート10’は,支持部材16を有している点以外は,第1の実施形態と同様の構成を備えていること(図1,図7,【0059】)。

カ 支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部から接着剤層12までの領域R”内であって,かつ,離型フィルム11の長手方向に沿って連続的に設けること(【0062】,【0064】)。また,そのような位置に設けることで,接着シート10’がロール状に巻かれて製品となった際に,接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aや支持部材16の積層部分と,粘着フィルム13の周辺部13bとの段差が重なりあい,柔軟な接着剤層12表面に段差が転写されることを防止できること,及び,支持部材16として,樹脂フィルム基材に粘接着剤を塗布した粘接着テープを使用できること(図7,【0060】-【0065】)。

キ 支持部材16は,離型フィルム11の接着剤層12及び粘着フィルム13が設けられた第1の面とは反対の第2の面に設けること(図7,【0063】)。

ク 図7(a)は,引用文献1に記載された技術の,第2の実施形態に係る接着シート10’の粘着フィルム13側から見た平面図,図7(b)は,図7(a)の線A-Aによる断面図であって,図7(b)からは,支持部材16の位置が,離型フィルム11の短手方向端部よりも内側であることを見て取ることができること。

(3)上記(1),(2)から,引用文献1には,上記図7に示される次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「半導体ウエハを個々のチップにダイシングする際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと,切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するためのダイボンディングフィルムとの2つの機能を併せ持つようにした接着シート10’であって,
接着シート10’は長尺の離型フィルム11と,接着剤層12と,粘着フィルム13と,支持部材16とを有し,
接着剤層12は,離型フィルム11の第1の面上に設けられ,ウエハの形状に対応した円形ラベル形状を有しており,
粘着フィルム13は,接着剤層12を覆い,かつ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13aと,この円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13bとを有し,ダイシング用のリングフレームに対応する形状を有した,ロール状に巻かれた接着シート10’であり,前記粘着フィルム13を貫く貫通孔が,前記接着剤層12の被着体貼合予定部分に対応する部分より外側で前記円形ラベル部13aの内側であって,且つ,前記粘着フィルム13の被着体貼合予定部分を含む位置に設けられており,
支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部から接着剤層12までの領域R”内であって,かつ,離型フィルム11の長手方向に沿って連続的に貼り付けられ,かつ,離型フィルム11の接着剤層12及び粘着フィルム13が設けられた前記第1の面とは反対の第2の面に設けられ,かつ,離型フィルム11の短手方向端部よりも内側に設けられた粘接着テープである,
接着シート10’。」

2 引用文献2
(1)同じく原査定に引用され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-165168号公報(以下「引用文献2」という。)には,次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,ウエハ加工用テープに関し,特に,ダイシングテープとダイボンディングフィルムの2つの機能を有するウエハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近時,半導体ウエハを個々のチップに切断分離(ダイシング)する際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと,切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するため,又は,スタックドパッケージにおいては,半導体チップ同士を積層,接着するためのダイボンディングフィルム(ダイアタッチフィルムともいう)との2つの機能を併せ持つダイシング・ダイボンディングテープが開発されている。」

「【0025】
[第1の実施形態]
以下に,本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は,本発明の実施形態に係るウエハ加工用テープ(ダイシング・ダイボンディングテープ)の平面図,図1(b)は,図1(a)の線A-Aによる断面図である。
【0026】
図1(a)及び図1(b)に示すように,ウエハ加工用テープ10は,長尺の離型フィルム11と,接着剤層12と,粘着フィルム13と,支持部材14とを有する。
【0027】
接着剤層12は,離型フィルム11の第1の面11a上に設けられ,ウエハの形状に対応した円形ラベル形状を有している。粘着フィルム13は,接着剤層12を覆い,且つ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13aと,この円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13bとを有する。周辺部13bは,円形ラベル部13aの外側を完全に囲む形態と,図示のような完全には囲まない形態とを含む。円形ラベル部13aは,ダイシング用のリングフレームに対応する形状を有する。そして,支持部材14は,離型フィルム11の,接着剤12及び粘着フィルム13が設けられた第1の面11aとは反対の第2の面11bであって,且つ,離型フィルム11の短手方向両端部に設けられている。」

「【0041】
(支持部材)
ウエハ加工用テープ10の短手方向両端部に支持部材14を設けることで、接着剤層12及び円形ラベル部13aに転写跡が付くことを防止することができる。図1(b)に示すように、接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aとが積層した部分は、粘着フィルム13の周辺部13bよりも厚い。このため、支持部材14が設けられていない場合は、製品としてロール状に巻かれた際に、接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aの積層部分と、粘着フィルム13の周辺部13aとの段差が重なりあい、柔軟な接着剤層12表面に段差が転写される現象、すなわち図11に示すような転写痕(ラベル痕、シワ、又は、巻き跡ともいう)が発生する。このような転写痕の発生は、特に、接着剤層12が柔らかい樹脂で形成される場合や厚みがある場合、及びウエハ加工用テープ10の巻き数が多い場合などに顕著である。そして、転写痕が発生すると、接着剤層と半導体ウエハとの接着不良により、ウエハの加工時に不具合が生じるおそれがある。このような問題も、支持部材14を設けることで、ウエハ加工用テープ10をロールに巻き取った際にテープに加わる巻き取り圧を分散する、或いは、支持部材14に集めることができるので、接着剤層12への転写痕の形成を抑制することが可能となる。」

「【0064】
なお、支持部材14”の変形例(図7参照)として、支持部材14”を形成する際に、幅広部16の離型フィルム11及び粘着フィルム13を厚み方向に全て切断して、ウエハ加工用テープの規定の幅に対応する部分17と支持部材14を形成する部分(幅広部16に相当する部分)とを分離し、分離された支持部材14を形成する部分のうち離型フィルム11を巻き取るなどの方法で除去した後に、粘着フィルム13を離型フィルム11の第2の面11b側に貼り付けて、支持部材14”を形成してもよい。この場合、規定の製品幅よりも略形成したい支持部材14”の幅と略同じ分だけ幅広の離型フィルム11と粘着フィルム13とを使用して積層体18を形成する際(図3参照)、離型フィルム11の支持部材14”を形成する部分について、厚み方向に全て切断しおき、粘着フィルム13を離型フィルム11の第2の面11b側に貼り付ける直前に、離型フィルム11の支持部材を形成する部分のみ巻き取るなどの方法で除去するという方法であると、支持部材14”を形成する部分が製造過程で分離して変形などの不具合が発生することがなく、かつ粘着フィルム13の粘着面が製造装置に貼り付くなどの不具合が発生することがないという効果がある。」

「【図1】



「【図7】



(2)上記記載から,引用文献2には,次の技術が記載されていると認められる。
ア 半導体ウエハを個々のチップにダイシングする際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと,切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するためダイボンディングフィルムとの2つの機能を併せ持つウエハ加工用テープ10において,当該ウエハ加工用テープ10は,長尺の離型フィルム11と,接着剤層12と,粘着フィルム13と,支持部材14とを有していること(【0002】,【0026】)。そして当該支持部材14は,離型フィルム11の短手方向両端部に隙間無く設けられていること(図1,図7,【0027】)。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
1 引用発明の「長尺の離型フィルム11」,「離型フィルム11の第1の面上」は,それぞれ本願発明の「長尺の離型フィルム」,「離型フィルムの第1の面上」に相当する。

2 引用発明の「接着剤層12」は,「離型フィルム11の第1の面上に設けられ」,「ウエハの形状に対応した円形ラベル形状」であることから,第1の面上に所定の平面形状を有しているといえる。したがって,引用発明の「離型フィルム11の第1の面上に設けられ,ウエハの形状に対応した円形ラベル形状を有」する「接着剤層12」は,本願発明の「離型フィルムの第1の面上に設けられた所定の平面形状を有する接着剤層」に相当する。

3 引用発明の「接着剤層12を覆い,かつ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13a」は,接着剤層12および離型フィルム11の面上に所定の平面形状を有しているといえる。したがって,「接着剤層12を覆い,かつ,接着剤層12の周囲で離型フィルム11に接触するように設けられた円形ラベル部13a」は,本願発明の「前記接着剤層を覆い,且つ,前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部」に相当する。

4 引用発明の「円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13b」は,本願発明の「前記ラベル部の外側を囲むような周辺部」に相当する。

5 引用発明の「円形ラベル部13a」と「周辺部13b」とを有する「粘着フィルム13」は,本願発明の「ラベル部」と「周辺部」とを有する「粘着フィルム」に相当する。

6 引用発明の「支持部材」は,「離型フィルム11の短手方向端部よりも内側に設けられた粘接着テープである」点で,「離型フィルムの短手方向両端部」の「内側に粘着され」た「支持部材」に相当する。

7 引用発明の「接着シート10’」は,「離型フィルム11」と,「接着剤層12」と,「粘着フィルム13」と,「支持部材16」とを有し,「半導体ウエハを個々のチップにダイシング」し,「半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着する」ために用いられるものであること,すなわち,半導体ウエハを加工するために用いられるものであることから,この点で,本願発明の「離型フィルム」と,「接着剤層」と,「粘着フィルム」と,「支持部材」とを有する「ウエハ加工用テープ」に相当する。

以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「長尺の離型フィルムと(上記1参照),
前記離型フィルムの第1の面上に設けられた所定の平面形状を有する接着剤層と(上記2参照),
前記接着剤層を覆い,且つ,前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部と(上記3参照),前記ラベル部の外側を囲むような周辺部(上記4参照)とを有する粘着フィルムと(上記5参照),
前記離型フィルムの短手方向両端部の内側に設けられた支持部材(上記6参照)とを有するウエハ加工用テープ(上記7参照)。」

(相違点)
相違点は上記一致点以外の特定事項,すなわち,本願発明の支持部材の粘着位置について,「前記離型フィルムの短手方向端部から1?5mm内側に粘着されており,前記支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から1mm以上内側に粘着されることで,センサで前記支持部材を検出可能に構成されており,前記支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側に粘着されることで,ロール状にして端部を下にして置かれた際に,前記離型フィルムと前記周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がるのを防止可能に構成されている」と特定されているのに対して,引用発明の支持部材16は,「離型フィルム11の短手方向両端部から接着剤層12までの領域R”内であって」,「離型フィルム11の短手方向端部よりも内側に設けられた」ものである点。

第6 判断
以下,相違点について検討する。
1 相違点について
(1)引用文献2の「(支持部材)ウエハ加工用テープ10の短手方向両端部に支持部材14を設けることで,接着剤層12及び円形ラベル部13aに転写跡が付くことを防止することができる。図1(b)に示すように,接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aとが積層した部分は,粘着フィルム13の周辺部13bよりも厚い。このため,支持部材14が設けられていない場合は,製品としてロール状に巻かれた際に,接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aの積層部分と,粘着フィルム13の周辺部13aとの段差が重なりあい,柔軟な接着剤層12表面に段差が転写される現象,すなわち図11に示すような転写痕(ラベル痕,シワ,又は,巻き跡ともいう)が発生する。このような転写痕の発生は,特に,接着剤層12が柔らかい樹脂で形成される場合や厚みがある場合,及びウエハ加工用テープ10の巻き数が多い場合などに顕著である。そして,転写痕が発生すると,接着剤層と半導体ウエハとの接着不良により,ウエハの加工時に不具合が生じるおそれがある。このような問題も,支持部材14を設けることで,ウエハ加工用テープ10をロールに巻き取った際にテープに加わる巻き取り圧を分散する,或いは,支持部材14に集めることができるので,接着剤層12への転写痕の形成を抑制することが可能となる。」(【0041】)との記載から,引用発明の「支持部材16」は,ウエハ加工用テープをロールに巻き取った際にテープに加わる巻き取り圧を分散する,或いは,支持部材に集めることで,転写痕の発生を抑制するために設けられていることが理解できる。
そして,巻き取り圧の分散,或いは,巻き取り圧を支持部材に集めるためには,支持部材の面積が十分に広いことが望ましいことは明らかである。
一方,引用発明では,支持部材16は,離型フィルム11の短手方向両端部から接着剤層12までの領域R”に設けることが限定されている。
そして,上記のように,限定された領域において十分な面積を確保するためには,その領域の幅方向の端部近傍まで支持部材を配すればよいことは,当業者が直ちに理解することである。
このことは,引用文献2の図7において,支持部材14”の端部が,離型フィルム11の短手方向の端部の近傍に設けられていることにも整合する。

(2)他方,引用発明の支持部材16は,粘接着テープであって,離型フィルム11の両端部分の所定位置に貼り付けられるものであるところ,支持部材16の端部が,離型フィルム11の両端から外側にはみ出して貼り付けられることが望ましくないことは自明である。
そして,部材の貼り付けにおいて,位置決め誤差が生じることは周知である。
したがって,支持部材16を,離型フィルム11の両端部分の所定位置に貼り付けるにあたって,支持部材16の端部が,離型フィルム11の両端から外側にはみ出して貼り付けられることがないように,位置決め誤差が生じることを見込んで,離型フィルム11の端部から,所定の幅だけ内側に,支持部材16の端部が位置するように,支持部材16の貼り付け位置を設定することは当業者が直ちに理解することである。
このことは,引用文献1の図7において,支持部材16の端部が,離型フィルム11の短手方向の端部から所定幅だけ内側に設けられていることにも整合する。

(3)すなわち,上記(1)及び(2)のとおり,引用発明において,支持部材16を,離型フィルム11の短手方向端部の近傍であって,かつ,所定の幅だけ内側に貼り付けることが望ましいことが理解されることから,例えば,当業者が,支持部材16を,離型フィルム11の短手方向端部から,1?5mm内側に貼り付けることは,適宜なし得たことと認められる。
そして,支持部材16を,離型フィルム11の短手方向端部から,5mm以下内側に貼り付けることで,離型フィルムと周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がらないことは,本願明細書,及び,審判請求書に「5mm以下以内に配置されていれば折れ曲がることはなく」と記載されているとおり,支持部材を,離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側に貼り付けたことによって直ちに生じる効果であるから,引用発明において,支持部材16を,離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側に貼り付けた接着シート10’は,「ロール状にして端部を下にして置かれた際に,前記離型フィルムと前記周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がるのを防止可能に構成されている」という条件を満たすといえる。
また,引用発明において,支持部材16を,離型フィルムの短手方向端部から1mm以上内側に貼り付けた接着シート10’が,「センサで前記支持部材を検出可能」であることは明らかである。
したがって,引用発明において,上記相違点について,本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

2 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は,審判請求の理由において,次のように主張する。
「離型フィルムと周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がらないようにするためには,支持部材の厚さと,ウエハ加工用テープを巻き取った時に粘着フィルムとその表面に重なる離型フィルムとの間に生じる空間の大きさ,離型フィルムの強度(厚さ)が関係していると思われる。これらの要素が関係しているとしても,これらの要素の複雑な関係を調査しなくても,支持部材を離型フィルムの短手方向端部から5mm以下となるように設けることにより,離型フィルムと周辺部のみで構成された箇所が折れ曲がることはないことを,本願発明者らは鋭意検討の結果つきとめたものである。
本発明は,支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から1mm以上内側に粘着されることで,センサで支持部材を検出することが可能であり,支持部材が離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側に粘着されることで,ロール状にして端部を下にして置かれた際に,離型フィルムと周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がるのを防止することができるのであり,1?5mm内側とすることに数値限定の理由がある。引用文献1の段落[0062]では,離型フィルムの短手方向両端部から接着剤層までの領域R''内のどこに設けてもよいと記載されており,この記載から1?5mmという非常に狭い範囲を規定することに容易に到達することはできない。 」

しかしながら,以下で検討するとおり,ウエハ加工用テープが折れ曲がるか否かは,支持部材の粘着位置だけでなく,ウエハ加工用テープの重量や材料などが影響を与えるところ,それらについて特定されておらず,様々な範囲の重量と材料が含まれる本願発明においては,支持部材の粘着位置に関する「1?5mm」という値に臨界的な意義を認めることはできない。
すなわち,相違点のうちの,「支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側に粘着されることで,ロール状にして端部を下にして置かれた際に,前記離型フィルムと前記周辺部のみで構成された箇所が自重で折れ曲がるのを防止可能に構成されている」点について検討すると,本願明細書には,以下の記載がある。
「【0020】
(離型フィルム)
本発明のウエハ加工用テープ10に用いられる離型フィルム11としては,ポリエチレンテレフタレート(PET)系,ポリエチレン系,その他,離型処理がされたフィルム等周知のものを使用することができる。
離型フィルムの厚さは,特に限定されるものではなく,適宜に設定してよいが,25?50μmが好ましい。
【0021】
(接着剤層)
本発明の接着剤層12は,上述のように,離型フィルム11の第1の面11a上に形成され,ウエハの形状に対応する円形ラベル形状を有する。
【0022】
接着剤層12は,半導体ウエハ等が貼合されダイシングされた後,チップをピックアップする際に,チップ裏面に付着しており,チップを基板やリードフレームに固定する際の接着剤として使用されるものである。接着剤層12としては,エポキシ系樹脂,アクリル系樹脂,フェノール系樹脂から選択される少なくとも1種を含む粘接着剤等を好ましく使用することができる。この他,ポリイミド系樹脂やシリコーン系樹脂を使用することもできる。その厚さは適宜設定してよいが,5?100μm程度が好ましい。
【0023】
(粘着フィルム)
本発明の粘着フィルム13は,上述のように,ダイシング用のリングフレームの形状に対応する円形ラベル部13aと,その外側を囲むような周辺部13bとを有する。このような粘着フィルムは,プリカット加工により,フィルム状粘着剤から円形ラベル部13aの周辺領域を除去することで形成することができる。
【0024】
粘着フィルム13としては,特に制限はなく,ウエハをダイシングする際にはウエハが剥離しないように十分な粘着力を有し,ダイシング後にチップをピックアップする際には容易に接着剤層から剥離できるよう低い粘着力を示すものであればよい。例えば,基材フィルムに粘着剤層を設けたものを好適に使用できる。
【0025】
粘着フィルム13の基材フィルムとしては,従来公知のものであれば特に制限することなく使用することができるが,後述の粘着剤層として放射線硬化性の材料を使用する場合には,放射線透過性を有するものを使用することが好ましい。
【0026】
例えば,その材料として,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-プロピレン共重合体,ポリブテン-1,ポリ-4-メチルペンテン-1,エチレン-酢酸ビニル共重合体,エチレン-アクリル酸エチル共重合体,エチレン-アクリル酸メチル共重合体,エチレン-アクリル酸共重合体,アイオノマーなどのα-オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物,ポリウレタン,スチレン-エチレン-ブテンもしくはペンテン系共重合体,ポリアミド-ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー,およびこれらの混合物を列挙することができる。また,基材フィルムはこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく,これらが単層又は複層化されたものでもよい。
基材フィルムの厚さは,特に限定されるものではなく,適宜に設定してよいが,50?200μmが好ましい。
【0027】
粘着フィルム13の粘着剤層に使用される樹脂としては,特に限定されるものではなく,粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂,アクリル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,エポキシ樹脂等を使用することができる。
粘着剤層13の樹脂には,アクリル系粘着剤,放射線重合性化合物,光重合開始剤,硬化剤等を適宜配合して粘着剤を調製することが好ましい。粘着剤層13の厚さは特に限定されるものではなく適宜に設定してよいが,5?30μmが好ましい。」

以上の記載から,本願の明細書には,ウエハ加工用テープ10の好適な厚さとして,85μm(25μm+5μm+50μm+5μm)から380μm(50μm+100μm+200μm+30μm)までが開示されていると理解される。そして,ウエハ加工用テープ10の厚さは,ウエハ加工用テープ10の重量に影響を与え,ウエハ加工用テープ10をロール状にして,その端部を下にして置いたときに,端部が折れ曲がるか否かは,ウエハ加工用テープ10の幅,離型フィルムと周辺部を構成する粘着フィルムそれぞれの厚さによって変化する強度,及び,ウエハ加工用テープ10の重量が影響を与えるところ,85μmの厚さで形成したウエハ加工用テープ10と,380μmの厚さで形成したウエハ加工用テープ10とでは,両者を構成する各部材の厚さが大きく異なるため,それが端部が折れ曲がるか否かについて大きな影響を与えることは明らかである。
しかしながら,本願の明細書には,ウエハ加工用テープ10の厚さ等の条件と,ウエハ加工用テープ10の端部が折れ曲がることとの関連については記載されておらず,ウエハ加工用テープ10をどの程度の厚さとすれば,その端部が折れ曲がらないかを実験した具体的な実験データ等の記載も存在しない。
また,本願の明細書には,ウエハ加工用テープ10の離型フィルム11の材料として,ポリエチレンテレフタレート(PET)系,ポリエチレン系,その他,離型処理がされたフィルム等周知のものを使用することができることが記載されており,下記の周知例1に記載されているように,離型フィルムの周知の材料として,アルミニウム,ステンレス等の金属箔,グラシン紙,上質紙,コート紙,含浸紙,合成紙などの紙,不織布のように様々な材料が知られている。そして,それらの材料ごとにウエハ加工用テープ10の強度は大きく異なることが明らかであるから,材料の選択がウエハ加工用テープ10の端部の状態に大きな影響を与えるといえる。
しかしながら,本願の明細書には,ウエハ加工用テープ10の材料と,ウエハ加工用テープ10の端部が折れ曲がることとの関係についても記載されておらず,ウエハ加工用テープ10をどのような材料とすれば,その端部が折れ曲がらないかを実験した具体的な実験データ等の記載も存在しない。

・周知例1:特開2004-162048号公報
「【技術分野】
【0001】
本発明は離型剤および離型シートに関する。なお,本発明において,離型シートに使用される「シート」の語はフィルムをも含む概念として使用されている。」

「【0049】
基材としては,離型層を支持する機能を有する材料であれば制限はなく,例えば,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル,ポリプロピレン,ポリメチルペンテン等のポリオレフィン,ポリカーボネート等のプラスチックフィルム,アルミニウム,ステンレス等の金属箔,グラシン紙,上質紙,コート紙,含浸紙,合成紙などの紙,不織布などが挙げられる。」

以上のことから,ウエハ加工用テープ10の端部が折れ曲がるか否かは,支持部材の粘着位置だけでなく,ウエハ加工用テープ10の厚さと材料も影響を与えるところ,本願の明細書には,ウエハ加工用テープ10の厚さと材料に関する具体的な実験データ等の記載も存在しない。
そうすると,相違点のうちの「支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から5mm以下内側粘着される」における「5mm以下」という値には,本願の明細書の記載からは臨界的な意義を見いだすことができない。

次に,相違点のうちの,「支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から1mm以上内側に粘着されることで,センサで前記支持部材を検出可能に構成」される点について検討すると,本願明細書には,以下の記載がある。
「【0034】
<途中省略>支持部材14の貼り付け位置をカメラ等で自動検出して正常な位置に粘着されているか確認するような場合,1mm未満を位置検出するようにすると解像度の高いカメラ及びそれを処理するソフトウェアが必要となり,コスト高になる。」

そうすると,本願の明細書からは,1mm以上の精度であれば,解像度の低いカメラおよびソフトウェアで位置検出が可能であることが理解できる。
しかしながら,位置検出の精度,及びコストは,カメラの解像度だけでなく,カメラ,照明,撮影台などの撮影機材全体の構成や,撮影した画像を解析するソフトウェアの処理の方式などが影響を与えるところ,本願の明細書には,それらの条件については記載されておらず,「1mm以上」の精度を確保するための具体的な実験データ等の記載も存在しない。
そうすると,相違点のうちの「支持部材が前記離型フィルムの短手方向端部から1mm以上内側に粘着される」における「1mm以上」という値には,本願の明細書の記載からは臨界的な意義を見いだすことができない。

以上のとおりであるから,引用発明において,支持部材の接着位置を,離型フィルムの短手方向端部から1?5mm内側とすることに臨界的な意義を認めることはできないから,当業者が適宜設定すべき設計事項と理解される。

したがって,審判請求人の前記主張は採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明と,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-09 
結審通知日 2019-12-13 
審決日 2019-12-24 
出願番号 特願2014-246311(P2014-246311)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 小田 浩
西出 隆二
発明の名称 ウエハ加工用テープ  
代理人 松下 亮  

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