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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F03H
管理番号 1359936
審判番号 不服2018-17311  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-08 
確定日 2020-02-26 
事件の表示 特願2015- 65193号「UFOの飛行原理に基づくUFO飛行装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日出願公開,特開2015-145675号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年3月10日の出願であって,平成30年1月15日付けで手続補正書が提出され,平成30年4月2日付けで拒絶理由が通知され(発送日:同年4月10日),同年5月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,同年7月25日付けで最後の拒絶理由が通知され(発送日:同年8月7日),同年9月12日付けで意見書が提出されたが,同年11月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月20日),これに対して,同年12月8日付けで拒絶査定不服審判が請求された。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成30年5月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
磁石及び対をなす電極が取り付けられた物体であって,それらの電極間で放電が可能で,放電時に於いて運動する電子が作る磁界から磁石が受ける力を物体の推力として利用する
もの。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶に理由の概要は,次のとおりである。
「(実施可能要件)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

上記拒絶理由通知書で示したとおり,放電時に於いて運動する電子が作る磁界から磁石が受ける力を,どのようにして,物体の推力として利用することが可能であるのかが,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとは認められない。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

第4 判断
(1)本願発明の課題及び作用効果について
本願明細書には以下の事項が記載されている。
【0005】「課題を解決するための手段は,発明者が見出したUFOの飛行原理に基づくものである。」
【0011】「このUFOは,引用論文にあるように,適当な大きさの電流を供給すれば,地球の重力に打ち勝ってg以上の加速度で上昇する事が出来る。加減速の加速度を身体的に負担がないと考えられるgとしても,日帰りの月旅行が可能となる。」
【0014】「自動車用の車体にUFO飛行装置を取り付ければ,空飛ぶ自動車が実現する・・・又,超高速移動(gで加減速すれば1000km離れた地点に約5分で行く事が出来る。)が可能となる・・・」
以上によれば,本願発明の「放電時に於いて運動する電子が作る磁界から磁石が受ける力を物体の推力として利用するもの」の「物体の推力」は,「空飛ぶ自動車が実現」でき「日帰りの月旅行が可能」で「超高速移動が可能」な,「飛行」可能な非常に大きなものとして説明されている。
(2)本願発明における「物体の推力」を得るための構造について
その構造は,本願の特許請求の範囲に請求項1に記載されたとおりの「磁石及び対をなす電極が取り付けられた物体であって,それらの電極間で放電が可能で,放電時に於いて運動する電子が作る磁界から磁石が受ける力を物体の推力として利用するもの。」であり,本願明細書の[発明を実施するための形態]に記載された,磁石と電極との相対的な位置関係を固定したものである。
(3)技術常識
運動量保存の法則とは,ある系に外部からの力が加わらないかぎり,その系の運動量の総和は不変であるという物理法則をいう。
(4)検討
以上を踏まえて検討する。
ア 上記(2)の構造(実施例における図1?図4の構造)では,当該構造の周囲の媒介物等との間に,連続的な反作用や他の外力が作用しないだけでなく,連続的でない反作用や他の外力も作用しない。
かかる構造は,全体として一つの運動系を構成しており,この運動系の中で構造自体の質量変化も生じない。
上記(1)のように物体の推力に関連して「飛行」に関する記載があるところ,静止状態と飛行している状態との運動量について考えると,「静止」している状態と「飛行」している状態とで運動量は変化していることになり,上記(3)で述べた運動量保存の法則に反している。
イ 動作原理が明らかでない場合において,実際に本願発明が動作したこと実証実験が重要であるが,そのように実際に動作した実施結果については本願明細書には何ら開示がない。
ウ 例えば,導線を設置せずに,電極U,V間で放電を起こした場合には,以下のようになるものと認められる。
(ア)構造体ABCD-EFGHの作用する上下方向の力に注目する。
電気を電極Uから電極Vに放電させた場合,電子は電極Vから電極Uに向かって空中を飛ぶ。電子は,磁石Jの影響を受けて磁石に近づく向きに曲げられて飛び,電子が磁石J方向に近づいて落ちて行かないように支えようとする力(引っ張り上げる力)を構造体ABCD-EFGHの電極U及び電極Vを支えている部分が受け持つことになり,電極U及び電極Vにはあわせて下向きの力Fが作用する。
磁石Jには上向きの力(磁石Jを電子に近づけようとする力の向き-F)が作用する。
磁石J及び電極U,Vは,構造体ABCD-EFGHに固定されているので,磁石J及び電極U,Vに作用する力は,それぞれを固定している点を介して構造体に伝達される。
したがって,構造体ABCD-EFGHに伝達される上下方向の力は釣り合っている。
(イ)次に,構造体ABCD-EFGHの作用する左右方向の力に注目する。
電極Vから電子を放出されると,反力が構造体の側面DCGHに作用するが,その反力は,電極Uが電子によって受ける力が構造体の側面ABFEに作用する力と釣り合っている。
したがって,構造体ABCD-EFGHに伝達される左右方向の力は釣り合っている。
(ウ)そして,当該構造は,当該構造の周囲の媒介物等との間に,連続的な反作用や外力を発生するものではない。


エ 本発明の「物体の推力」を得る構造について,本願明細書を参照してもその動作原理が理解できず,また,動作原理が理解できないまま実施しようとしても,本願明細書には,それを動作させるのに十分な情報が開示されていない。
(5)小括
したがって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから,特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない。

第5 むすび
この出願は,発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-16 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-05 
出願番号 特願2015-65193(P2015-65193)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (F03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 諸星 圭祐  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 藤井 昇
氏原 康宏
発明の名称 UFOの飛行原理に基づくUFO飛行装置  

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