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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1359991 |
審判番号 | 不服2018-6979 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-22 |
確定日 | 2020-02-12 |
事件の表示 | 特願2016- 22156「カテーテル組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-116887〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年8月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年8月21日、英国(GB)、2013年8月29日 英国(GB)、2013年10月31日 中国(CN)、2013年10月31日 中国(CN))を国際出願日とする特願2015-563128号の一部を平成28年2月8日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年10月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年1月17日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年5月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 遠位端及び近位端を有し針を受け入れる針保護ハウジングであって、前記針は該針保護ハウジングを通り、該針保護ハウジングの遠位端はカテーテルハブの近位端に接続可能である針保護ハウジングと、 前記針保護ハウジング内に配置された針保護具とを備えている、カテーテル組立体用の針保護組立体であって、 前記針保護具は、準備完了状態と保護状態との間を移行することができる針捕捉具であって、準備完了状態では、前記針保護ハウジングを通って伸びる前記針の針軸の1つの側部に対して保持され、保護状態では、前記針保護ハウジング内で前記針の先鋭な針先端部を遮蔽する針捕捉具を備えており、 前記針保護具はまた、前記針捕捉具を保護状態となる方向に付勢する弾性アームであって、前記針保護ハウジングの内壁に当接して前記針捕捉具を保護状態に移行させる弾性アームを備えており、 前記針保護具はさらに、準備完了状態において前記ハウジングを前記カテーテルハブの近位端に結合させる結合アームであって、準備完了状態から保護状態への前記針捕捉具の移行により、前記針保護ハウジングを前記カテーテルハブから解放する結合アームを備えており、 当該針保護組立体は、当該針保護組立体に対する相対的な近位方向における針の移動を制限する規制手段をさらに備え、 当該針保護組立体が針の遠位端から離れるのを防止するために、前記規制手段は係留具あるいは膨出部を備えている、 ことを特徴とする針保護組立体。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。 本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された周知の事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.国際公開第2013/016373号 引用文献2.特表2001-514943号公報(周知の事項を示す文献) 引用文献3.特表2009-538188号公報(周知の事項を示す文献) 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献1の記載事項 (1-1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(『』内は当審による和訳。)。 ア.「The present disclosure relates to vascular access assemblies, and more particularly to vascular access assemblies including a safety device for protecting a clinician from accidental needle stick injuries.」[0002] (『本開示は、アクセスアセンブリ、特に、偶発的な針刺し事故から臨床医を保護する安全装置を含む血管アクセスアセンブリに関するものである。』) イ.「FIGS. 1-3 illustrate one embodiment of the presently disclosed vascular access assembly and safety device, hereinafter access assembly, shown generally as 10. Access assembly 10 comprises a catheter assembly including a catheter hub 12 (FIG. 1) and a catheter tube 12a, a safety device 13 having a housing 14 and a safety clip 15 supported within the housing 14, and a needle assembly including a needle 18 and a needle hub (not shown). In a ready to use position, shown in FIG. 1, the needle 18 extends from the needle hub, through distal and proximal openings 14a and 14b (FIG. 2), respectively, in the safety device housing 14, and through catheter hub 12 and catheter tube 12a of the catheter assembly.」[0048] (『図1-3は、ここで開示される血管アクセスアセンブリおよび安全装置の一実施形態、以下10として一般的に示されるアクセスアセンブリを示している。アクセスアセンブリ10は、カテーテルチューブ12aとカテーテルハブ12(図1)とを含むカテーテル組立体と、ハウジング14とハウジング14内に支持される安全クリップ15とを有する安全保護装置13と、針18と針ハブとを含む針アセンブリ(図示せず)とを含む。使用準備の整った位置では、図1に示すように、針18は、針ハブから延び、ハウジング14のそれぞれ遠位と近位の開口部14a、14b(図2)を介して、カテーテル組立体のカテーテルハブ12とカテーテルチューブ12aを通って延在する。』) ウ.「As shown in FIGS. 1-3, the safety clip 15 is formed from a substantially flat, resilient member which includes a distal opening 20, a central opening 21 , and a proximal opening 22. In one embodiment, the safety clip 15 is formed from spring steel. Alternately, other resilient materials can be used to form the safety clip 15. In the ready- to-use position or assembled state, the needle 18 is positioned to extend through the distal, central, and proximal openings 20-22, respectively, of the safety clip 15, to retain the safety clip 15 in a curved, deformed configuration within the housing 14. In this configuration, holes 20-22 of safety clip 15 are aligned with distal and proximal openings 14a and 14b of safety device housing 14 and oriented to allow the needle to be withdrawn from the catheter assembly through the safety clip 15.」[0049] (『図1-3に示すように、安全クリップ15は、遠位開口部20と、中央開口部21と、近位開口部22を含む実質的に平坦な弾性部材から形成されている。一実施形態において、安全クリップ15は、ばね鋼から形成されている。代替例として、他の弾性材料が、安全クリップ15を形成するために使用することができる。使用準備完了位置または組み立てられた状態では、針18は、安全クリップ15の、それぞれ、遠位、中央及び近位開口部20-22を通って延びるように配置され、ハウジング14内において安全クリップ15を湾曲、変形構成に保持する。この構成において、安全クリップ15の孔20-22は、安全装置のハウジング14の遠位および近位開口部14a、14bと位置合わせされ、針を安全クリップ15を通してカテーテル組立体から引き抜くことを可能にするように配向されている。』) エ.「A distal end of the safety clip 15 includes a hook portion 24 which extends through an opening 26 in the housing 14. In the ready-to-use position of the access assembly 10, the proximal, central, and distal openings 20-22 of the safety clip 15 are aligned with the openings 14a and 14b of the housing 14 and the hook portion 24 of safety clip 15 is engaged with a luer connector 12a of the catheter hub 12 to releasably secure the housing 14 to the proximal end of the catheter hub 12. In addition, a proximal end 15b of safety clip 15 abuts endwall 50 of housing 14. See FIG. 5.」[0050] (『安全クリップ15の遠位端は、ハウジング14の開口26を通って延びるフック部24を備えている。アクセスアセンブリ10の使用準備完了位置では、安全クリップ15の近位、中央、および遠位開口部20-22はハウジング14の開口部14aおよび14bと位置合わせされ、安全クリップ15のフック部24は、カテーテルハブ12のルアーコネクタ12aと係合して、ハウジング14をカテーテルハブ12の近位端側へ解放可能に固定する。また、安全クリップ15の近位端15bは、ハウジング14の端壁50に当接する。図5を参照されたい。』) オ.「Referring to FIGS. 3-5, when the needle 18 is retracted such that the needle tip 18a passes through distal opening 20 of safety clip 15, the distal end of the safety clip 15, which is no longer constrained by the needle 18, expands outwardly and upwardly within housing 14. When this occurs, the portion 15a of safety clip 15 defined between distal and central openings 20 and 21 rides up ramp 30 of housing 14 to lift hook portion 24 from engagement with catheter hub 12 and to partially cover or obstruct distal opening 14a of housing 14. See FIG. 3. This prevents distal advancement of needle 18 from housing 14 of safety clip 15. Concurrently, safety clip 15 tends to flatten. As the tip 18a of the needle 18 is withdrawn through central opening 21, safety clip 15 flattens to change the orientation of opening 22 with respect to needle 18. This change in orientation causes proximal opening 22 of safety clip 15 to tilt with respect to the longitudinal axis of needle 18 such that the edge of clip 15 defining opening 22 engages needle 18 to prevent further retraction of needle 18 through housing 14. Thus, tip 18a of needle 18 is safely retained within housing 14 of the safety device 15. See FIG. 5. As shown in FIGS. 4 and 5, when needle tip 18a passes through central opening 21 of safety clip 15, safety clip 15 expands outwardly and upwardly within housing 14 to block distal opening 14a.」[0052] (『図3-5を参照すると、針先端18aが安全クリップ15の遠位開口部20を通過するように針18が後退したとき、安全クリップ15の遠位端は、針18によって拘束されなくなり、ハウジング14内において外方かつ上方に展開する。これが起こると、遠位開口部20と中央開口部21との間に画定された安全クリップ15の部分15aは、ハウジング14の傾斜面30に乗り上げ、フック部24をカテーテルハブ12との係合から持ち上げて、ハウジング14の遠位開口部14aを部分的に覆うか又は塞ぐ。図3を参照されたい。これは、針18の、安全クリップ15のハウジング14から遠位方向への進行を防ぐ。同時に、安全クリップ15は平坦な形状に近づく。針18の先端部18aが中央開口部21を通って引き抜かれると、安全クリップ15は、針18に合わせて開口部22の向きを変えるように平坦化する。このような向きの変化により、安全クリップ15の近位開口部22は、針18の長手方向の軸に対して傾き、開口部22を画定するクリップ15の縁が針18に係合して、針18がハウジング14を通ってさらに後退することを防止する。このようにして、針18の先端18aは、安全に安全装置15のハウジング14内に保持される。図5を参照されたい。図4及び図5に示すように、針先端部18aが安全クリップ15の中央開口部21を通過するとき、安全クリップ15は、ハウジング14内において外向きかつ上向きに展開し、遠位開口部14aを遮断する。』) カ.FIG.1より、ハウジングが、遠位端及び近位端を有して構成され、針を受け入れており、針がハウジングを通る点、ハウジングの遠位端がカテーテルハブの近位端に接続可能とされている点が看取される。 (1-2)上記(1-1)ア.?カ.の記載事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は、偶発的な針刺し事故から臨床医を保護する安全装置を含む血管アクセスアセンブリに関するものである([0002])。 b アクセスアセンブリ10は、カテーテルチューブ12aとカテーテルハブ12とを含むカテーテル組立体と、ハウジング14とハウジング14内に支持される安全クリップ15とを有する安全保護装置13と、針18と針ハブとを含む針アセンブリとを含む。使用準備完了位置では、針18は、針ハブから延び、ハウジング14のそれぞれ遠位と近位の開口部14a,14bを介して、カテーテル組立体のカテーテルハブ12とカテーテルチューブ12aを通過する([0048])。 c 安全クリップ15は、遠位開口部20と、中央開口部21と、近位開口部22を含む実質的に平坦な弾性部材から形成されている([0049])。 d 使用準備完了位置では、針18は、安全クリップ15の、それぞれ、遠位、中央及び近位開口部20-22を通って延びるように配置され、ハウジング14内において安全クリップ15を湾曲、変形構成に保持する([0049])。 e 安全クリップ15の遠位端は、ハウジング14の開口26を通って延びるフック部24を備えている。アクセスアセンブリ10の使用準備完了位置では、安全クリップ15の近位、中央、および遠位開口部20-22はハウジング14の開口部14aおよび14bと位置合わせされ、安全クリップ15のフック部24は、カテーテルハブ12のルアーコネクタ12aと係合して、ハウジング14をカテーテルハブ12の近位端側へ解放可能に固定する。安全クリップ15の近位端15bは、ハウジング14の端壁50に当接する([0050])。 f 針先端18aが安全クリップ15の遠位開口部20を通過するように針18が後退したとき、安全クリップ15の遠位端は、針18によって拘束されなくなり、ハウジング14内において外方かつ上方に展開する。遠位開口部20と中央開口部21との間に画定された安全クリップ15の部分15aは、ハウジング14の傾斜面30に乗り上げ、フック部24をカテーテルハブ12との係合から持ち上げて、ハウジング14の遠位開口部14aを部分的に覆うか又は塞ぐ。これは、針18の、安全クリップ15のハウジング14から遠位方向への進行を防ぐ。([0052])。 g 針18の先端部18aが中央開口部21を通って引き抜かれると、安全クリップ15は、針18に合わせて近位開口部22の向きを変えるように平坦化する。このような向きの変化により、安全クリップ15の近位開口部22は、針18の長手方向の軸に対して傾き、近位開口部22を画定する安全クリップ15の縁が針18に係合して、針18がハウジング14を通ってさらに後退することを防止する。このようにして、針18の先端18aは、安全に安全装置15のハウジング14内に保持される([0052])。 h ハウジングは、遠位端及び近位端を有して構成され、針を受け入れており、針がハウジングを通っている。また、ハウジングの遠位端は、カテーテルハブの近位端に接続可能とされている(FIG.1)。 (1-3)上記(1-1)、(1-2)を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「偶発的な針刺し事故から臨床医を保護する安全装置を含む血管アクセスアセンブリであって、 アクセスアセンブリは、カテーテルチューブとカテーテルハブとを含むカテーテル組立体と、ハウジングと該ハウジング内に支持される安全クリップとを有する安全保護装置と、針と針ハブとを含む針アセンブリとを含んでなり、 ハウジングは、遠位端及び近位端を有して構成され、針を受け入れており、針がハウジングを通っており、ハウジングの遠位端は、カテーテルハブの近位端に接続可能とされ、 安全クリップは、遠位開口部と、中央開口部と、近位開口部を含む実質的に平坦な弾性部材から形成され、その近位端はハウジングの端壁に当接するとともに、その遠位端はハウジングの開口を通って延びるフック部を備え、 使用準備完了位置では、針は、針ハブから、安全クリップのそれぞれ遠位、中央及び近位開口部を通って延びるように配置され、ハウジング内において安全クリップを湾曲、変形構成に保持しながら、ハウジングのそれぞれ遠位と近位の開口部を介して、カテーテル組立体のカテーテルハブとカテーテルチューブを通って延在しており、 安全クリップのフック部は、カテーテルハブのルアーコネクタと係合して、ハウジングをカテーテルハブの近位端側へ解放可能に固定しており、 針先端が安全クリップの遠位開口部を通過するように針が後退したとき、安全クリップの遠位端は、針によって拘束されなくなり、ハウジング内において外方かつ上方に展開し、 遠位開口部と中央開口部との間に画定された安全クリップの部分15aは、ハウジングの傾斜面に乗り上げ、フック部をカテーテルハブとの係合から持ち上げて、ハウジングの遠位開口部を部分的に覆うか又は塞ぎ、それにより、針は、安全クリップのハウジングから遠位方向への進行が防がれ、 針の先端部が中央開口部を通って引き抜かれると、安全クリップは、針に合わせて近位開口部の向きを変えるように平坦化し、このような向きの変化により、安全クリップの近位開口部は、針の長手方向の軸に対して傾き、近位開口部を画定する安全クリップの縁が針に係合して、針がハウジングを通ってさらに後退することを防止する、 血管アクセスアセンブリ。」 第5 対比 1 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「カテーテル組立体」は、その構造又は機能からみて、本願発明の「カテーテル組立体」に相当することは明らかである。そして、同様に、引用発明の「カテーテルハブ」は本願発明の「カテーテルハブ」に、引用発明の「安全保護装置」は本願発明の「針保護組立体」に、引用発明の「ハウジング」は本願発明の「針保護ハウジング」に、引用発明の「ハウジング内に支持される安全クリップ」は本願発明の「針保護ハウジング内に配置された針保護具」に、引用発明の「安全クリップの遠位端」に備えられた「フック部」は本願発明の「結合アーム」に、引用発明の「使用準備完了位置」にある状態は本願発明の「準備完了状態」に、相当するといえる。 引用発明の「遠位端及び近位端を有して構成され、針を受け入れており、針がハウジングを通って」いる「ハウジング」は、その遠位端において、「カテーテルハブの近位端に接続可能とされ」ているから、本願発明の「遠位端及び近位端を有し針を受け入れる針保護ハウジングであって、前記針は該針保護ハウジングを通り、該針保護ハウジングの遠位端はカテーテルハブの近位端に接続可能である針保護ハウジング」に相当する。 また、引用発明の「カテーテル組立体」に接続されて用いられるものである「安全保護装置」は、「ハウジングと該ハウジング内に支持される安全クリップとを有」しているから、本願発明の「針保護ハウジングと、前記針保護ハウジング内に配置された針保護具とを備えている、カテーテル組立体用の針保護組立体」に相当する。 引用発明の「安全クリップ」は、「針先端が安全クリップの遠位開口部を通過するように針が後退したとき、」その遠位端が「ハウジング内において外方かつ上方に展開」することにより、「遠位開口部と中央開口部との間に画定された安全クリップの部分15a」が「ハウジングの遠位開口部を部分的に覆うか又は塞ぎ、それにより、針は、安全クリップのハウジングから遠位方向への進行が防がれ」る状態となることから、当該「部分15a」は、本願発明の「針捕捉具」に相当するといえる。そして、針の遠位方向への進行が防がれる上記状態は、本願発明における「保護状態」に相当する。そして、このとき、「針は、安全クリップのハウジングから遠位方向への進行が防がれ」るのであるから、引用発明の上記「部分15a」は、本願発明における「保護状態では、前記針保護ハウジング内で前記針の先鋭な針先端部を遮蔽する針捕捉具」に相当する。 また、引用発明の「遠位開口部と中央開口部との間に画定された安全クリップの部分15a」は、「針先端が安全クリップの遠位開口部を通過するように針が後退したとき、」当該部分15aを含む「安全クリップの遠位端」が「針によって拘束されなくな」るものであることからみて、針が後退する前の「準備完了状態」において、針に対して保持されている状態にあるといえるから、引用発明の当該部分15aは、本願発明の「準備完了状態では、前記針保護ハウジングを通って伸びる前記針の針軸の1つの側部に対して保持され」る構成であることに相当する。 そして、引用発明の「遠位開口部と中央開口部との間に画定された安全クリップの部分15a」は、「使用準備完了状態」と保護状態との間を移行するものであることから、本願発明の「準備完了状態と保護状態との間を移行することができる針捕捉具」に相当するといえる。 引用発明の「安全クリップ」は、「実質的に平坦な弾性部材から形成され、その近位端は、ハウジングの端壁に当接」している。そして、「針先端が安全クリップの遠位開口部を通過するように針が後退したとき」、「安全クリップ」の遠位端は、「ハウジング内において外方かつ上方に展開し」、このとき、「遠位開口部と中央開口部との間に画定された安全クリップの部分15a」が「ハウジングの遠位開口部を部分的に覆うか又は塞」ぐのであるから、当該部分15aは、「安全クリップ」が備える弾性により、保護状態となる方向に付勢され、保護状態に移行させられるものといえ、そして、このような付勢を行う部分は、安全クリップにおける近位開口部から中央開口部までの部分であるということができるから、引用発明の当該部分は、本願発明の「針捕捉具を保護状態となる方向に付勢する弾性アームであって、前記針保護ハウジングの内壁に当接して前記針捕捉具を保護状態に移行させる弾性アーム」に相当するといえる。 引用発明の「安全クリップのフック部」は、「カテーテルハブのルアーコネクタと係合して、ハウジングをカテーテルハブの近位端側へ解放可能に固定」するものであり、また、「針先端が安全クリップの遠位開口部を通過するように針が後退したとき、」「ハウジング内において外方かつ上方に展開し、」「カテーテルハブとの係合から持ち上げ」られるものであるから、当該フック部は、本願発明の「準備完了状態において前記ハウジングを前記カテーテルハブの近位端に結合させる結合アームであって、準備完了状態から保護状態への前記針捕捉具の移行により、前記針保護ハウジングを前記カテーテルハブから解放する結合アーム」に相当するといえる。 そして、上述のとおり、引用発明の「安全クリップ」の「部分15a」、「近位開口部から中央開口部までの部分」及び「フック部」が、本願発明の「針捕捉具」、「弾性アーム」及び「結合アーム」に相当する構成であるから、引用発明の「安全クリップ」が上記各部分及びフック部を有する点は、本願発明の「前記針保護具は、」「針捕捉具を備えており、前記針保護具はまた、」「弾性アームを備えており、前記針保護具はさらに、」「結合アームを備えて」いることに相当する。 引用発明の「針の先端部が中央開口部を通って引き抜かれると、安全クリップは、針に合わせて近位開口部の向きを変えるように平坦化し、このような向きの変化により、安全クリップの近位開口部は、針の長手方向の軸に対して傾き、近位開口部を画定する安全クリップの縁が針に係合して、針がハウジングを通ってさらに後退することを防止する」との構成における、「近位開口部を画定する安全クリップの縁が針に係合」する構造は、規制手段であるといえる。したがって、引用発明の上記構成は、その機能からみて、本願発明の「針保護組立体は、当該針保護組立体に対する相対的な近位方向における針の移動を制限する規制手段を」「備え」ているとの構成に相当する。 2 一致点 そうすると、両者は、 「遠位端及び近位端を有し針を受け入れる針保護ハウジングであって、前記針は該針保護ハウジングを通り、該針保護ハウジングの遠位端はカテーテルハブの近位端に接続可能である針保護ハウジングと、 前記針保護ハウジング内に配置された針保護具とを備えている、カテーテル組立体用の針保護組立体であって、 前記針保護具は、準備完了状態と保護状態との間を移行することができる針捕捉具であって、準備完了状態では、前記針保護ハウジングを通って伸びる前記針の針軸の1つの側部に対して保持され、保護状態では、前記針保護ハウジング内で前記針の先鋭な針先端部を遮蔽する針捕捉具を備えており、 前記針保護具はまた、前記針捕捉具を保護状態となる方向に付勢する弾性アームであって、前記針保護ハウジングの内壁に当接して前記針捕捉具を保護状態に移行させる弾性アームを備えており、 前記針保護具はさらに、準備完了状態において前記ハウジングを前記カテーテルハブの近位端に結合させる結合アームであって、準備完了状態から保護状態への前記針捕捉具の移行により、前記針保護ハウジングを前記カテーテルハブから解放する結合アームを備えており、 当該針保護組立体は、当該針保護組立体に対する相対的な近位方向における針の移動を制限する規制手段をさらに備える、 針保護組立体。」の点で一致し、以下の点で相違する。 3 相違点 (1)相違点1 「規制手段」について、本願発明は、「針保護組立体が針の遠位端から離れるのを防止するために、前記規制手段は係留具あるいは膨出部を備えている」のに対して、引用発明は、針保護組立体が針の遠位端から離れるのを防止するために、「近位開口部を画定する安全クリップの縁が針に係合」する構造を備えている点。 第6 判断 上記相違点について判断する。 1 相違点1の検討 本願の優先日前に頒布され、原審の平成29年4月13日付け拒絶理由通知において周知の事項を示す文献として提示した引用文献2の段落[0012]には、「本発明のばねクリップ安全カテーテルの更に別の実施形態において、溝が針に形成される。ばねクリップが後退位置に揺動して、針がばねクリップによって固定された後、針の近位方向の更なる移動により、ばねクリップの後方の即ち近位のアームが溝に着座させられて、針軸がばねクリップにより強固に固定される。本発明のばねクリップカテーテル防護物の別の実施形態において、過度のクランプ力を必要とせずにばねクリップが針から離脱するのを防止するように、糸が針ハブとばねクリップに接続される。」と記載され、段落[0031]には、「図6Aと図6Bに示す本発明の実施形態は、一端を針ハブ12に他端を針防護物40aの近位壁に止着した糸92を設けた点を除いて、図4Aと図4Bに示すものと同じである。図6Aに示す準備完了位置において、糸92は針ハブ12の遠位端に巻回される。図6Bに示すように、針16と針防護物40aが後退位置にある時、糸92は、全長まで延長されて、針防護物40aの針ハブ12への係止に寄与する。もし望ましければ、図6Aと図6Bに示す本発明の実施形態は、図5Aと図5Bに示す本発明の実施形態のように針の溝90を含んでもよい。」と記載されている。 また、同じく周知の事項を示す文献として提示した引用文献3の段落[0012]には、「ニードルハブ16をカテーテルアダプタ14から近位方向に引くことによってカテーテル24から針12が抜去され、カテーテル24が患者の静脈内に残る。」と記載され、段落[0013]には、「針12がカテーテル24から抜去される際、ニードルハブ16はチップシールド20から近位方向に引かれる。すると、テザー22がチップシールド20とニードルハブ16の間で展開して延びる。針先12aがチップシールド20の中に引き込まれると、チップシールド20はカテーテルアダプタ14から外れる。この地点で、チップシールド20が針先12aを覆い、針刺し事故が予防される。テザー22の長さは、最大限に延びたときに、チップシールド20が針先12aを取り囲む長さとする。テザー22は、チップシールド20が針先12aから落下するのを防止する。」と記載されている。 したがって、針を伴う針保護組立体という技術分野において、針保護組立体が針の遠位端から離れるのを防止するための規制手段として、「糸やテザーのような係留具」を採用することは、本願の優先日前周知の事項であるといえる。 そして、針保護組立体の技術分野に属する引用発明において上記周知の技術を適用し、「規制手段」として、安全クリップ15の近位開口部22と針18とを係合させる構造を、当該構造と同等の機能を備える上記周知の「係留具」に置き換えることには、当業者において動機付けが存在するといえるし、引用発明について周知の係留具を備えることを阻害する要因も見当たらない。 してみると、引用発明について、上記相違点1における本願発明に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項であるといえる。 2 効果について そして、この相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の事項の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献3に記載された周知の事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-09-13 |
結審通知日 | 2019-09-17 |
審決日 | 2019-09-30 |
出願番号 | 特願2016-22156(P2016-22156) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小原 一郎、鶴江 陽介、鈴木 崇文 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
栗山 卓也 寺川 ゆりか |
発明の名称 | カテーテル組立体 |
代理人 | 山田 卓二 |