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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1360014
審判番号 不服2018-10630  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-03 
確定日 2020-02-20 
事件の表示 特願2015-532563「磁気的に支持されるクッションを持つ呼吸マスク」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日国際公開、WO2014/045245、平成27年10月15日国内公表、特表2015-530159〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)9月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 9月 7日 :手続補正書の提出
平成29年 6月 8日付け:拒絶理由通知
平成29年12月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月28日付け:拒絶査定
平成30年 8月 3日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成30年8月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定されるとおりの以下のものである。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
患者の鼻又は鼻及び口にガスを伝える患者インタフェースにおいて、前記患者インタフェースは、
前記患者の顔に接触する表面、
接続面、及び
前記接続面に関連付けられた第1の磁気結合構成
を含む顔接触要素、並びに
結合面、及び
前記結合面に関連付けられた第2の磁気結合構成
を含むサポート
を有し、前記顔接触要素の前記接続面は、前記第1の磁気結合構成と前記第2の磁気結合構成との間における磁力により前記サポートの前記結合面に結合される、患者インタフェース。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知の技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2005-537906号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2012/0167892号明細書
引用文献3:特表2008-532659号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
(1)上記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。
「【0039】
図1?図5Bは、呼吸用マスクアセンブリ(10)を示している。このアセンブリ(10)は、フレーム(12)と、クッション(14)と、を備えている。クッション(14)は、フレーム(12)に対して、恒久的に連結することも、また、着脱可能に連結することも、できる。額支持部材(16)は、フレーム(12)の上部に対して、着脱可能に取り付けられている。ヘッドギアアセンブリ(図示せず)は、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けることができ、フレーム(12)とクッション(14)とを、患者の顔面上において、所望に調節された位置に維持することができる。例えば、ヘッドギアアセンブリは、一対をなす上ストラップおよび下ストラップを備えることができる。この場合、上ストラップは、額支持部材(16)上に設けられたクリップ構造(18)に対して着脱可能に連結され、一方、下ストラップは、フレーム(12)上に設けられたクリップ構造(20)に対して着脱可能に連結される。しかしながら、ヘッドギアアセンブリおよびフレーム(12)は、任意の適切な方法で互いに着脱可能に連結することができる。
【0040】
図示の実施形態においては、マスクアセンブリ(10)は、患者の鼻に対して、呼吸可能なガスを供給するための鼻用のマスク構造である。しかしながら、マスクアセンブリ(10)は、鼻と口とに対するマスクすることができる、すなわち、フルフェイス型のマスクとすることができる。」

「【0042】
図1?図9Bに示すように、クッション(14)は、フレーム(12)に対して連結され得るよう構成された顔面非接触部分(24)(図6および6C)と、患者の顔面に対して係合し得るよう構成された顔面接触部分(26)と、顔面非接触部分(24)および顔面接触部分(26)を相互連結させる中間部分(28)と、を備えている。クッション(14)のシール形成部分(68)(図10B参照)は、患者の顔面上においてシールを形成し得るよう構成されている。クッション(14)は、詳細に後述するように、シール形成部分(68)に沿って接触力を印加することにより、シールを達成する。1つの態様においては、シール形成部分(68)は、面積を有したストリップである。例えば、患者の顔面に対して接触するストリップ(68)は、図10Bにおいて2本の破線で囲まれた面積を有することができる。患者の顔面上の敏感な領域に対して印加された接触力を、最小化することができる。患者の顔面のいくつかの部分は、快適性とシールとのバランスを達成するためには、特別の注意が必要である。
【0043】
図示の実施形態においては、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けられる。例えば、図3、3B、6、6C、15に示すように、顔面非接触部分(24)は、ショルダ(30)とフランジ(32)と、を備えている。クッションクリップ(34)(図2、2B、3、3B参照)は、フレーム(12)に対して着脱可能に係合する。これにより、ショルダ(30)が、クリップ(34)とフレーム(12)の間に配置され、これにより、フレーム(12)に対してクッション(14)を取り付けることができる。これに関しては、例えば、本出願人による出願であるとともに現在係属中の、2002年9月6日付けで出願された米国特許予備出願シリアル番号第10/235,846号明細書を参照されたい。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。さらに、フランジ(32)は、シールを提供し得るようにして、配置される。代替的には、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、当該技術分野においては公知であるように、ストラップや、摩擦係合や、タングとグルーブとを備えた構成や、これらの組合せを使用することにより、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けることができる。しかしながら、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、例えば接着剤や機械的固定手段を使用して、フレーム(12)に対して恒久的に取り付けることもできる。」

「図1



「図3



「図6



(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)「マスクアセンブリ(10)は、患者の鼻に対して、呼吸可能なガスを供給するための鼻用のマスク構造である。」(段落【0040】)という記載、及び図1から、患者の鼻に対してガスを供給するマスクアセンブリ10、が記載されているといえる。
(イ)「クッション(14)は、フレーム(12)に対して連結され得るよう構成された顔面非接触部分(24)(図6および6C)と、患者の顔面に対して係合し得るよう構成された顔面接触部分(26)と、顔面非接触部分(24)および顔面接触部分(26)を相互連結させる中間部分(28)と、を備えている。」(段落【0042】)という記載、「顔面非接触部分(24)は、ショルダ(30)とフランジ(32)と、を備えている。クッションクリップ(34)(図2、2B、3、3B参照)は、フレーム(12)に対して着脱可能に係合する。これにより、ショルダ(30)が、クリップ(34)とフレーム(12)の間に配置され、これにより、フレーム(12)に対してクッション(14)を取り付けることができる。」(段落【0043】)という記載から、患者の顔面に係合する顔面接触部分26、顔面非接触部分24、及び顔面非接触部分24にショルダ30及びフランジ32を備えたクッション14、が記載されているといえる。
(ウ)「図示の実施形態においては、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けられる。例えば、図3、3B、6、6C、15に示すように、顔面非接触部分(24)は、ショルダ(30)とフランジ(32)と、を備えている。クッションクリップ(34)(図2、2B、3、3B参照)は、フレーム(12)に対して着脱可能に係合する。これにより、ショルダ(30)が、クリップ(34)とフレーム(12)の間に配置され、これにより、フレーム(12)に対してクッション(14)を取り付けることができる。」(段落【0043】)という記載及び図3、図6から、クッション14の顔面非接触部分24に着脱可能に取り付けられる、クッションクリップ34を有するフレーム12を有し、クッション14の顔面非接触部分24は、ショルダ30及びフランジ32とクッションクリップ34との係合により、ショルダ30及びフランジ32とクッションクリップ34とが接触する面において結合される、といえる。

2 引用発明
上記1からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「患者の鼻に対してガスを供給するマスクアセンブリ10において、マスクアセンブリ10は、
患者の顔面に係合する顔面接触部分26、
顔面非接触部分24、及び
顔面非接触部分24にショルダ30及びフランジ32を備えたクッション14、
クッション14の顔面非接触部分24に着脱可能に取り付けられる、クッションクリップ34
を有するフレーム12
を有し、クッション14の顔面非接触部分24は、ショルダ30及びフランジ32とクッションクリップ34との係合により、ショルダ30及びフランジ32とクッションクリップ34とが接触する面において結合される、マスクアセンブリ10。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「マスクアセンブリ10」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「患者インターフェース」に相当する。以下同様に、「ガスを供給する」は「ガスを伝える」に、「患者の顔面」は「患者の顔」に、「係合する」は「接触する」に、「顔面接触部分26」は「表面」に、「顔面非接触部分24」は「接続面」に、「を備えた」は「に関連付けられた」に、「クッション14」は「顔接触要素」に、「フレーム12」は「サポート」にそれぞれ相当する。
(2)引用発明の「ショルダ30及びフランジ32」は、フレーム12に設けられたクッションクリップ34と係合することで、クッション14とフレーム12とを結合することから、本願発明の「第1の磁気結合構成」と、第1の結合構成である点において共通する。
(3)引用発明の「クッションクリップ34」は、クッション14に設けられたショルダ30及びフランジ32と係合することで、クッション14とフレーム12とを結合することから、本願発明の「第2の磁気結合構成」と、第2の結合構成である点において共通する。
(4)引用発明の「ショルダ30及びフランジ32とクッションクリップ34とが接触する面」は、クッション14に備えられたショルダ30及びフランジ32とフレーム12に備えられたクッションクリップ34とが係合により結合することから、本願発明の「結合面」に相当する。また、当該「結合面」は、「ショルダ30及びフランジ32とクッションクリップ34とが接触する面」であることから、クッションクリップ34を有するフレーム12に備えられるといえるとともに、クッションクリップ34に関連付けられるともいえる。

したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「患者の鼻にガスを伝える患者インタフェースにおいて、前記患者インタフェースは、
前記患者の顔に接触する表面、
接続面、及び
前記接続面に関連付けられた第1の結合構成
を含む顔接触要素、並びに
結合面、及び
前記結合面に関連付けられた第2の結合構成
を含むサポート
を有し、前記顔接触要素の前記接続面は、前記第1の結合構成と前記第2の結合構成とにより前記サポートの前記結合面に結合される、患者インタフェース。」

【相違点】
引用発明の「クッション14」と「フレーム12」との結合が、「ショルダ30及びフランジ32」と「クッションクリップ34」との係合であるのに対して、本願発明の「顔接触要素」と「サポート」との結合が、「第1の磁気結合構成」と「第2の磁気結合構成」との磁力である点。

第6 判断
上記相違点について、検討する。
2つの部材の結合に際して、磁力を用いた着脱可能な結合は本願の優先日前において周知の技術(必要あらば、原査定で提示した引用文献2(段落[0035]に記載されたdisk shaped magnets 36a, 36b, 40a, 40b)及び引用文献3(段落[0146]?[0149]に記載された二部分磁気結合器システムの第1の部分508及び第2の部分514)参照。)である。
ここで、引用文献1には、「代替的には、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、当該技術分野においては公知であるように、ストラップや、摩擦係合や、タングとグルーブとを備えた構成や、これらの組合せを使用することにより、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けることができる。」(段落[0043])と記載されているように、様々な着脱可能な結合手段が示唆されていることを踏まえると、引用発明における「クッション14」と「フレーム12」との結合に際して、種々の周知の着脱可能な結合手段を採用してみる程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、その中から上記引用文献2、3にみられるような周知の技術を適用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
請求人は審判請求書において「フレームとクッションとの間の係合に磁気結合を用いようとする動機付けは無い」旨主張するが、引用文献1にはフレームとクッションとの結合手段に関して、上述のとおり、「ショルダ30及びフランジ32」と「クッションクリップ34」との係合の他、様々な着脱可能な結合手段が示唆されているところ、当業者であれば、これら周知の着脱可能な結合手段の中から、周知の磁力による着脱可能な結合手段を適用しようとする動機は十分に認められる。よって、請求人の主張を採用することはできない。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-19 
結審通知日 2019-09-24 
審決日 2019-10-07 
出願番号 特願2015-532563(P2015-532563)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 573- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 徹  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 沖田 孝裕
莊司 英史
発明の名称 磁気的に支持されるクッションを持つ呼吸マスク  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 矢ヶ部 喜行  

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