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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L |
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管理番号 | 1360029 |
審判番号 | 不服2019-3215 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-07 |
確定日 | 2020-02-20 |
事件の表示 | 特願2017-215517「剥皮トマトの製造方法及びそのためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日出願公開、特開2018- 27098〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年8月11日の出願である特願2014-163845号の一部を、平成29年11月8日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は以下のとおりである。 平成29年11月 8日 :上申書の提出 平成30年 9月28日付け:拒絶理由通知 同年11月14日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 1月 7日付け:拒絶査定 同年 3月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 1年10月25日付け:拒絶理由通知 同年12月 3日 :意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、平成31年3月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」ともいう。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 剥皮トマトであって、それを構成するのは、以下であり、 中果皮、かつ、 外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも尻部及び周部の全領域であり、かつ、 切込線:前記切込線が形成されているのは、トマトの尻部又は周部であり、ゼリーは、漏れていない。」 第3 当審が通知した拒絶の理由の概要 令和1年10月25日付けで、請求項1に対して当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。 理由1(新規性)本出願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献等Aに示された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性)本出願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献等Aに示された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等A:How To Peel Tomatoes - Quickly and Easily,[online],2013年 4月12日, [retrieved on 2019-04-04], Retrieved from the Internet,URL,https://www.eatwell101.com/learn-to-blanch-skin-peel-tomatoes 第4 当審の判断 1 引用文献等に示された事項 引用文献等A(以下、「電子的技術情報A」ともいう。)には、次のとおり、トマトを湯剥きする手順が示されている(原文は英語で記されているので、当審による翻訳文で示す)。 「トマトを湯剥きする手順 1.必要なトマトの量に応じて、適切な容器に水を沸騰させる。 2.別の容器に氷水を準備する。 3.皮剥きナイフで蔕を取り除く。 4.トマトの底部に切込を入れる。 5.皮が剥がれ始めるまで、約20秒間沸騰したお湯に浸す。 6.すぐに氷水に入れて調理を止める。 7.皮を取り除く。 8.トマトは使用する準備が整った!」 また、電子的技術情報Aには、上記手順3.におけるトマトの例、上記手順3.により得られたトマトの例、及び上記手順1.?8.により得られた「湯剥きトマト」の例が、次の写真により示されている(以下、それぞれ順に「写真1A」、「写真1B」、「写真2」という。)。 写真1A 写真1B 写真2 2 引用文献等に示された発明 電子的技術情報Aには、以下の手順1.?8.により得られる「湯剥きトマト」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているといえる。 「1.必要なトマトの量に応じて、適切な容器に水を沸騰させる。 2.別の容器に氷水を準備する。 3.皮剥きナイフで蔕を取り除く。 4.トマトの底部に切込を入れる。 5.皮が剥がれ始めるまで、約20秒間沸騰したお湯に浸す。 6.すぐに氷水に入れて調理を止める。 7.皮を取り除く。 8.トマトは使用する準備が整った!」 3 対比・判断 (1)本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「湯剥きトマト」は本願発明1の「剥皮トマト」に相当し、引用発明の手順4.にいう「トマトの底部」は本願発明1の「トマトの尻部」に相当する。 また、電子的技術情報Aに「写真2」により示された例を参照すると、取り除かれた皮は表皮のみと認められ、トマトの底部及び周部の全領域において維管束は露出しておらず、ゼリーも漏れていない。ここで、本願の発明の詳細な説明には、外果皮は表皮の次層であり、中果皮は外果皮の次層であり、内果皮は中果皮の次層であって、維管束が存在するのは、中果皮及び中果皮より下層である旨(【0020】)、維管束が露出しないのは、中果皮が覆われているからであり、中果皮を覆っているのは外果皮である旨(【0041】)記載されており、当該記載によれば、取り除かれた皮が表皮のみでありトマトの底部及び周部の全領域において維管束が露出していないトマトは、「中果皮、かつ、外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも尻部及び周部の全領域であり、」に覆われたトマトに相当するといえる。 したがって、引用発明の「湯剥きトマト」を構成するのは、 「中果皮、かつ、 外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも尻部及び周部の全領域であり、かつ、 切込線:前記切込線が形成されているのは、トマトの尻部であり、ゼリーは、漏れていない。」ものであると認められる。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、 「剥皮トマトであって、それを構成するのは、以下であり、 中果皮、かつ、 外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも尻部及び周部の全領域であり、かつ、 切込線:前記切込線が形成されているのは、トマトの尻部であり、ゼリーは、漏れていない。」ものである点で一致し、相違点はない。 よって、本願発明1は引用発明である。 (2)また、仮に本願発明1と引用発明に相違する点があるとしても、当業者がトマトの湯剥き工程において通常採用する手順の変更等により、引用発明から容易になし得たものであって、格別顕著な効果が得られるものともいえない。 よって、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)審判請求人の主張について ア 審判請求人の主張 (ア)拒絶理由1に対して 審判請求人は、令和1年12月3日提出の意見書において、「電子的技術情報Aの「写真2」から「取り除かれた皮は表皮のみと認められ、トマトの底部及び周部の全領域において維管束は露出しておらず、ゼリーも漏れていない」を認定することはできません。」と主張し、以下の根拠を挙げている。 根拠1「第1に、写真2について、トマトの果皮が背後に写っていますが、前方の2つのトマトが剥皮されたものであるとは断定できません。なぜなら、電子的技術情報Aの中では、当該写真2の説明が一切されていないからです。」 根拠2「第2に、写真2のトマトが剥皮されたものだとしても、剥皮トマトの表面の状況が不鮮明です。写真2と他の写真とを比較すると、光の加減が明らかに異なっており、写真2では、赤色が相対的に際立っています。実際には、維管束が見えているにもかかわらず、その周囲の赤色が際立ってしまい、写っていない可能性を否定できません。」 根拠3「第3に、電子的技術情報Aの「7.皮を取り除く。」及び「8.トマトは使用する準備が整った!」のステップに表示されている写真(以下、それぞれ順に「写真3」、「写真4」という。)では、剥皮後のトマトでは、維管束が見て取れます。とりわけ、写真3の拡大図からは、黒で囲んだ部分(へた抜きされた部分の周囲(当審注:「底部」の誤記と認められる。))に、クレータ(果肉の欠損)が見て取れます。」 根拠4「第4に、電子的技術情報Aに記載の方法では、維管束が見えてしまいます。すなわち、電子的技術情報Aのように、「7.皮を取り除く過程」を手で行う場合、本件特許出願時の技術常識を踏まえると、簡単に外果皮及び中果皮が表皮に付着して除去され、その外観は悪くなります(本願の段落【0006】及び【0011】を参照)。」 (イ)拒絶理由2に対して 審判請求人は、同意見書において、「本願の請求項1に係る発明と、電子的技術情報Aに記載された発明との相違点は、以下のとおりです。 相違点1: 本願の請求項1に係る発明では、「中果皮、かつ、外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも、尻部及び周部の全領域」であることが特定されているのに対し、電子的技術情報Aでは、そのような特定がされていない点 上記相違点1について、・・・(略)・・・と認定されているものの、その具体的な根拠は全く指摘されておりません。理由1で述べたとおり、電子的技術情報Aの剥皮トマトでは、剥皮した際に外果皮及び中果皮が表皮に付着して除去されている蓋然性が高いことに加えて、引用文献等A、B、Cには、水流で剥皮することについて記載も示唆も一切されていないことから、本願の請求項1に係る発明に当業者が容易に想到することはできません。」と主張する。 イ 審判請求人の主張についての検討 (ア)主張(ア)の根拠1について 「写真2」は、手順1.?8.に沿って示された写真の最後の写真であるから、手順1.?8.により得られた「湯剥きトマト」の写真であると理解するのが妥当である。 よって、上記根拠1に基く主張(ア)は採用できない。 (イ)主張(ア)の根拠2、3について 審判請求人が提示した「写真3」、「写真4」は次の写真と認められる。 写真3 写真4 「写真3」により示された「湯剥きトマト」の底部、及び「写真4」により示された「湯剥きトマト」の「へた抜きされた部分の周囲」には、審判請求人が指摘するとおり、維管束及び「クレータ」を視認できると認められる。 対して、「写真2」により示された「湯剥きトマト」は、「写真3」及び「写真4」に示された「湯剥きトマト」とは表面状態が異なり、具体的には、底部に切込線が鮮明に残り、表面に「クレータ」のような凹凸も確認できない。 ここで、「湯剥きトマト」において、熱湯に浸す(湯通しする)時間等により表皮の剥け方が異なることは当業者にはよく知られたことであり(例えば、「加藤 丈 他6名,湯むきの科学-トマトの皮はなぜ湯むきできるのか?-,第49回自然科学観察コンクール,[online],2008年,[令和1年12月11日検索],インターネット<URL:http://www.shizecon.net/award/detail/html?id=152>」の「観察V」参照。)、上記「写真2」?「写真4」により示された「湯剥きトマト」のように個体差が生じることは当業者の認識と何ら矛盾しない。 そうすると、「写真3」及び「写真4」により示された「湯剥きトマト」の存在により、「写真2」により示された「湯剥きトマト」の認定が左右されることはなく、「写真2」により示された「湯剥きトマト」は、表面状態が上記のとおりであるから、「中果皮、かつ、外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも尻部及び周部の全領域であり、」に覆われたトマトに相当するといえる。 よって、上記根拠2、3に基く主張(ア)は採用できない。 (ウ)主張(ア)の根拠4について 審判請求人が参照箇所として示した「本願の段落【0006】及び【0011】」には、家庭での剥皮の手順は、切込み、加熱、そして、手剥きであること(段落【0006】)、及び、剥皮トマトの課題は外観の悪さであること(【0011】)が記載されているものの、手剥きの剥皮トマトの外観が悪いことが記載されているとまではいえない。 そして、本願明細書の段落【0038】及び【0040】【表3】を参酌すると、むしろ手剥きの剥皮トマトの外観は良好であり、手剥きの欠点は、外観を重視すれば処理量が減ることであると理解することができる。 よって、上記根拠4に基く主張(ア)は採用できない。 (エ)主張(イ)について 引用発明の例として「写真2」により示された「湯剥きトマト」は、(2)で述べたとおり、「中果皮、かつ、外果皮:前記外果皮が覆うのは、前記中果皮であり、その覆う範囲は、少なくとも尻部及び周部の全領域であり、」に覆われたトマトに相当するといえるから、本願発明1と引用発明との相違点はない。 また、「水流で剥皮すること」は、本願の請求項1において特定されている事項ではないから参酌できない。 よって、上記主張(イ)は採用できない。 第7 結び 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、上記発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-16 |
結審通知日 | 2019-12-18 |
審決日 | 2020-01-09 |
出願番号 | 特願2017-215517(P2017-215517) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A23L)
P 1 8・ 113- WZ (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金田 康平 |
特許庁審判長 |
村上 騎見高 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 櫛引 智子 |
発明の名称 | 剥皮トマトの製造方法及びそのためのシステム |