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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1360139
審判番号 不服2018-8838  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-27 
確定日 2020-02-26 
事件の表示 特願2017-516643号「可剥性の熱収縮チュービング」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月10日国際公開、WO2015/188133、平成29年8月31日国内公表、特表2017-524491号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年(平成26年)6月6日米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概ね以下のとおりである。
平成29年 2月 6日 :翻訳文提出
平成29年 4月25日 :手続補正書の提出
平成29年 5月31日付け:拒絶理由通知
平成29年12月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月21日付け:拒絶査定
平成30年 6月27日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年6月27日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年6月27日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すため、当審で付与したものである。)
「少なくとも1つの熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂を含む、少なくとも2つの樹脂からなる複数の樹脂のチュービングであって、
x線回折によって測定した場合、前記チュービングの結晶質が40%未満であり、
前記チュービングが物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合、熱収縮能、長手方向の可剥性、及び前記チュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示す、チュービング。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年12月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「少なくとも1つの熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂を含む、少なくとも2つの樹脂からなる複数の樹脂のチュービングであって、
x線回折によって測定した場合、前記チュービングの結晶質が40%未満であり、
前記チュービングが、熱収縮能、長手方向の可剥性、及び前記チュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示す、チュービング。」

2.補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明において、チュービングが、「熱収縮能、長手方向の可剥性、及びチュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示す」としていた構成を、「物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合」のみに限定するものであるが、当該限定を付すことにより、物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含む場合においては、熱収縮能、長手方向の可剥性、及びチュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示さない発明も請求項1に含まれてしまうことになるから、本件補正は特許請求の範囲を実質的に拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明に該当しないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とする補正ではない。

なお、仮に本件補正が「チュービング」が「物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない」もののみを特定しようとするものであるとして、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合に、本件補正の後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、念のため以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2008/007680号(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。

(ア)「引き裂きチューブは、 各種物品の使用時までの保護部材として利用されている。なかでもフッ素樹脂製の引き裂きチューブは、フッ素樹脂が有する耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、非粘着性、自己潤滑性等の炭化水素系合成樹脂製の引き裂きチューブでは得られない特性を有している。そこで、これらの特性を利用して、精密機器、電子部品等の保護用チユーブ、あるいはカテーテル、ガイドワイヤー等を体内に導入するための医療機器導入用チューブ等として使用されている。」(明細書1頁11?17行)

(イ)「発明の開示
本発明は、フッ素樹脂製の引き裂きチューブとして、容易に引き裂きが可能であるとともに、熱収縮性を有し、装着する際には熱収縮によって密着した装着が可能なフッ素樹脂製の引き裂きチューブを提供することを課題とするものである。
本発明は、フッ素樹脂製の引き裂きチューブにおいて、フッ素樹脂が種類の異なる複数の熱可塑性フッ素樹脂の混合物からなり、熱収縮性を有するフッ素樹脂製の引き裂きチューブである。
また、熱可塑性フッ素樹脂の混合物が、テトラフルオロエチレン-へキサフルオロプロピレン共重合体またはテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のいずれかと、テトラフノレオロエチレン-エチレン共重合体とを混合したものである前記のフッ素樹脂製の引き裂きチューブである。
また、熱可塑性フッ素樹脂の混合物が、テトラフルオロエチレン-へキサフルオロプロピレン共重合体またはテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体のいずれかと、ポリフッ化ビニリデンとを混合したものである前記のフッ素樹脂製の引き裂きチューブである。
また、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体とテトラフルオロエチレン-へキサフルオロプロピレン共重合体との配合比が質量比で、3:97?10:90である前記のフッ素樹脂製の引き裂きチューブである。
また、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体とテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビュルエーテル共重合体との配合比が質量比で、5:95?10:90である前記のフッ素樹脂製の引き裂きチューブである。
また、ポリフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体との配合比が質量比で、2:98?9:91の範囲としたフッ素樹脂製の引き裂きチューブである。
また、ポリフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレン-へキサフルオロプロピレン共重合体との配合比が質量比で、3:97?9:91の範囲とした引き裂きチューブである。
本発明のフッ素樹脂製の引き裂きチューブは、引き裂き性とともに、熱収縮性を有しているので、装着の際には、被装着体に対して密に装着が可能であるので装着には取り扱い上も優れたものが得られる。また、異種の熱可塑性フッ素樹脂を配合した原料を溶融押出成形することによって製造することができるので、製造が容易であると共に、引き裂き特性が安定したフッ素樹脂製の引き裂きチューブを得ることができる。」(明細書2頁7行?3頁17行)

(ウ)「実施例 1
(試料の作製)
テトラフルオロエチレン-へキサフルオロプロピレン共重合体(三井フロロデュポン製 FEP-100J) とテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE:旭硝子製 C-88AX)との配合割合を変化させた混合物を準備し、各混合物を用いてシリンダー径20mmの単軸 押出機によって、スクリュー回転数10rpm、ダイ温度390℃でサ イジングプレート法によるチューブ成形をして、内径1.0mm、外形1.4mm、肉厚0.2mmの試料を作製した。
(引き裂き強度の試験)
指先のみで引き裂きが可能であるか、あるいはカミソリによって切り込みを入れて切り込み部からの引き裂きが可能であるか否かを試験した後に、引き裂きが可能であったものについて、長さ100mmの試料の一方の端部に40mmの切り込みを設けて、引っ張り試験機によって、200mm/minの速度で引き裂き、そのときの最大の力を測定して、 引き裂き強度とした。 また、測定は同一組成の試料について3回行い、その加重平均値を求めて、表1に示す。
(表 1)

(拡張と熱収縮性試験)
成形したチューブ内に拡張手段によって加圧窒素を注入し、破壊が生じることなく拡張することが可能か否かを測定したところ、試験で使用 したテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE:旭硝子製C-88AX)とテトラフルオロエチレン-へキサフルオロプロピレン共重合体(三井フロロデュポン製FEP-100J)との混合物にあっては、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体が全体の3質量%?10質量%のものであれば、引き裂き性と熱収縮性が得られることが確認できた。
そこで、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)が全体の3質量%、5質量%、および10質量%の試料を各5個を作製して、各試料に加圧窒素を供給して破壊しない程度にできるだけ大きく拡 張を行った後にその大きさを測定し、次いでそれぞれの試料を、200℃20minの条件で加熱して熱収縮させ、熱収縮後の大きさも同様に 測定し、ETFEの濃度が、3質量%の試料2-1?2-5については、 表2にその結果を示す。5質量%の試料3-1?3-5については、表3にその結果を示す。 また、10質量%の試料4-1?4-5については、表4にその結果を示す。
(表2)

(表3)

(表4)

」(明細書6頁16行?8頁最終行)

上記(ア)?(ウ)の記載からすれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「フッ素樹脂が種類の異なる複数の熱可塑性フッ素樹脂の混合物からなり、熱収縮性を有するフッ素樹脂製の引き裂きチューブであって、容易に引き裂きが可能であるとともに、熱収縮性を有し、装着する際には熱収縮によって密着した装着が可能なフッ素樹脂製の引き裂きチューブ。」

イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許第5317061号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

(ア)「The invention is illustrated by the compositions of the following examples in which Examples 1 to 4, 6, 9, 13, 16, 19, 22, 25, 28, and 29 are comparative examples. Unless otherwise indicated, all compositions were prepared and tested using the following procedures. The results are shown in Table I.」(7欄39?44行)
(訳:本発明は、以下の実施例の組成物によって説明され、例1?4,6,9,13,16,19,22,25,28,29は比較例を示す。他に示されない限り、すべての組成物は、以下の手順により調整した。結果をTABLE1に示す。)

(イ)「

」(9欄?12欄)

(ウ)「1. A polymer composition comprising a polymer component which contains three different polymers which comprises
(A) an amount x which is 35 to 85% by weight of the total polymer component of a first polymer which is a copolymer of tetrafluoroethylene and hexafluoropropylene (FEP) as primary monomers optionally with one or more other monomers,
(B) an amount y which is 10 to 60% by weight of the total polymer component of a second polymer which is a copolymer of tetrafluoroethylene and perfluoropropylvinyl ether (PFA) as primary monomers optionally with one or more other monomers, and
(C) an amount z which is 5 to 60% by weight of the total polymer component of a third polymer which is (i) a fluoropolymer which is polytetrafluoroethylene (PTFE) and (ii) melt-processable,
wherein the quantity (y+z)/x is 0.3 to 2 and the composition
(1) has creep at 150℃and 300 psi for 10 hours of less than 15%,
(2) has a modulus at 275℃of at least 5×10^(7) dynes/cm^(2),
(3) has secondary crystallization of less than 20%, and
(4) has a tensile strength at ambient temperature of at least 3000 psi.」(11欄35行?12欄34行)
(訳:1.3種の異なるポリマーを含有するポリマー組成物であって、(A)テトラフルオロエチレンとヘクサフルオロプロピレン(FEP)を基本ポリマーとして任意の1以上の他のポリマーを含む第1のポリマーXの含有量が全ポリマーの35?85%であり、(B)テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)を基本ポリマーとして任意の1以上の他のポリマーを含む第2のポリマーYの含有量が全ポリマーの10?60%であり、(C)フルオロポリマーが(i)ポリテトラフルオロエチレンであり、(ii)溶融加工可能である第3のポリマーZの含有量が全ポリマーの5?60%であり、(Y+Z)/Xの量が0.3?2であり、組成物が、(1)150℃、300psiでのクリープが10時間で15%未満、(2)275℃での弾性率が少なくとも5×107dynes/cm^(2)、(3)二次結晶化が20%未満、(4)周囲温度での引張強度が少なくとも3000psiである。

(3)引用発明との対比
以下、本件補正発明と引用発明を対比する。
ア.引用発明の「熱塑性フッ素樹脂」及び「引き裂きチューブ」は、その構成及び機能から、それぞれ本件補正発明の「熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂」及び「チュービング」に相当する。
そして、本願明細書の段落【0025】の記載からすれば、本件補正発明の「複数の樹脂のチュービング」とは、2つ以上のポリマー樹脂から製造されたチュービングを指すものと認められる。
してみれば、引用発明の「フッ素樹脂が種類の異なる複数の熱可塑性フッ素樹脂の混合物からなり、熱収縮性を有するフッ素樹脂製の引き裂きチューブ」は、本件補正発明の「少なくとも1つの熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂を含む、少なくとも2つの樹脂からなる複数の樹脂のチュービング」に相当する。

イ.引用発明の「引き裂きチューブ」は、「指先のみで容易に引き裂きが可能であるとともに、熱収縮性を有」するのであるから、「物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合、熱収縮能、長手方向の可剥性」を示すものと認められる。
よって、引用発明の「指先のみで容易に引き裂きが可能であるとともに、熱収縮性を有」する「引き裂きチューブ」は、本件補正発明の「物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合、熱収縮能、長手方向の可剥性」を示す「チュービング」に相当する。

以上のことからすると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
少なくとも1つの熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂を含む、少なくとも2つの樹脂からなる複数の樹脂のチュービングであって、
前記チュービングが物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合、熱収縮能、及び長手方向の可剥性を示す、チュービング。

【相違点】
本願補正発明は、x線回折によって測定した場合、チュービングの結晶質が40%未満であり、チュービングがチュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示すのに対して、引用発明はそのような限定がない点。

(4)判断
上記相違点について検討すると、「半透明」の用語は、不透明でない状態であればすべて含まれるという範囲の透明度を示すものと認められ、一般にフッ素樹脂は不透明ではないから透明又は半透明であるものと認められる。
また、上記(2)ア.(ア)の記載からすれば、引用発明は精密機器、電子部品等の保護用チユーブ、あるいはカテーテル、ガイドワイヤー等を体内に導入するための医療機器導入用チューブ等、通常内部を外部から観察できる用途で利用されるものであるから、あえて不透明のものを用いるとは考えにくい。
これらのことからすれば、引用発明は明記はなくとも「透明性又は半透明性を示す」ものであるものと認められる。
そして、結晶化度を下げれば透明性が高くなることは特開2014-12185号公報(段落【0016】?【0020】参照。)や国際公開第2005/054934号(段落【0024】?【0034】参照。)や特開平9-54201号(段落【0023】?【0025】参照。)に記載されているように技術常識であり、引用文献2のTABLE1に記載されているようにフッ素樹脂のCrystalization(結晶化度)として40%未満のものは慣用されるものであるから、チュービングの結晶質の上限値を40%に限定したことに格別の意味を見出すことはできない。
なお、本願明細書の段落【0057】には、チュービングの結晶質が約40%未満であることにより予期せぬ効果があるとの記載がされているが、具体的に結晶質の上限値を40%に限定する臨界的意義が認められるような記載は見当たらず、上述のとおり、結晶化度を下げれば透明性が高くなることを示した程度のものと解するほかはなく、上記【0057】の記載からも当該結晶質についての数値の限定に格別の意味を見出すことはできない。

してみれば、本件補正発明は、引用発明と実質的に同じであるか、又は、引用発明、引用文献2の記載事項並びに上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、同条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができたものとは認められない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項又は同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成29年12月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認められる。

「少なくとも1つの熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂を含む、少なくとも2つの樹脂からなる複数の樹脂のチュービングであって、
x線回折によって測定した場合、前記チュービングの結晶質が40%未満であり、
前記チュービングが、熱収縮能、長手方向の可剥性、及び前記チュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示す、チュービング。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定は、拒絶の理由として概ね次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2008/007680号
引用文献2:米国特許第5317061号明細書

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2並びにその記載事項は、前記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から、チュービングが、熱収縮能、長手方向の可剥性、及び前記チュービングの壁を通して半透明性又は透明性を示す場合について「物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合、」との特定を削除したものである。
そして、「物理的な切込み線、切れ目又は刻み目を含まない場合、」との特定事項が省かれた場合においても、上記第2の[理由]2.に示した本件補正発明と引用発明との相違点及びその判断に変わりはない。
よって、本件補正発明同様、本願発明は、引用発明と実質的に同じであるか、又は、引用発明、引用文献2の記載事項並びに上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、同条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-26 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-10-16 
出願番号 特願2017-516643(P2017-516643)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 徹  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 寺川 ゆりか
井上 哲男
発明の名称 可剥性の熱収縮チュービング  
代理人 岡部 讓  
代理人 臼井 伸一  
代理人 齋藤 正巳  

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