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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1360213 |
審判番号 | 不服2018-10144 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-25 |
確定日 | 2020-02-25 |
事件の表示 | 特願2016-528236「ドキュメント管理及びコラボレーション・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日国際公開、WO2015/070174、平成29年 2月 9日国内公表、特表2017-504857〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2014年11月10日(パリ条約による優先権主張2013年11月11日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって, 平成28年6月22日付けで審査請求がなされ,平成29年6月29日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成29年10月5日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成30年3月15日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成30年7月25日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成31年3月18日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和元年7月17日に意見書が提出されると共に手続補正(以下,「本件補正」という。)がされたものである。 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。(当審注:下線は,参考のため当審で付した。) 「2つ以上のコンピューティング・デバイスとアプリケーション・サービスを含むコンピューディング・リソース・サービス・プロバイダとを有するシステムであって、 前記アプリケーション・サービスは、 ネットワーク経由で、2つ以上の前記コンピューティング・デバイスの1つからドキュメントを受信し、 前記ドキュメントの受信結果として、前記ドキュメント用に、前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイ、異なる表示特性を備える前記コンピューティング・デバイスにおいて安定した表示を可能にする座標マップ及び前記ドキュメントへ1つ以上の注釈を格納するために使用を可能にするオーバーレイを非同期で生成し、 前記アンダーレイ、前記座標マップ及び前記オーバーレイを同期して、コンピューディング・リソース・サービス・プロバイダ内のドキュメント管理・コラボレーション・システムに送信し、 ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの要求を受信し、 前記ドキュメントへのアクセスの前記要求に応じて、前記ドキュメント管理・コラボレーション・システムから前記アンダーレイ、前記座標マップ及びオーバーレイをユーザのコンピューティング・デバイスへ提供させる、システム。」 (当審注:上記請求項の記載中,「コンピューディング」との記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると,「コンピューティング」の誤記と解されるので,以下では「コンピューティング」と読み替えて検討を行う。) 第3 拒絶の理由 平成31年3月18日に当審が通知した拒絶理由のうちの理由4は,次のとおりのものである。 本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2009-86742号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 当審拒絶理由通知に引用された,本願の優先日前に既に公知である,引用文献1(特開2009-86742号公報)には,以下の事項が記載されている(下線は,当審で付した。以下同じ。)。 A 「【0001】 本発明は文書管理サーバ、携帯端末、及び文書管理システムに係り、特に携帯端末で文書を閲覧する際、簡易にコメントを残し、残したコメントを閲覧することのできる文書管理サーバ、携帯端末、及び文書管理システムに関する。 【背景技術】 【0002】 企業内に溢れる様々な情報は、文書のみならず画像、Webコンテンツなど多様化しており、日々増加している。これら企業内コンテンツを一元管理し、企業活動の活性化、効率化を図るためのECM(Enterprise Content Management)ソリューションが普及しつつある。しかし、このECMソリューションの効果を最も発揮するのは、対外的なプレゼン、営業活動を実施する場面であるにもかかわらず、出先で利用する機会の多いモバイル環境に適したソリューションがほとんどないのが実情である。 【0003】 特許文献1には、情報処理装置を用いて選択された携帯端末用データを、携帯端末装置に向けて通信ネットワークを介して配信する技術が記載されている。この技術によれば、携帯端末装置で使用するデータを複数のデータの中から選択する場合に、煩雑な処理を行うことなく容易に閲覧して簡単に選択することができる。 【特許文献1】特開2003-316677号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載の技術のように、携帯電話を活用した出先での営業活動を考慮した製品なども整いつつあるが、出先で参照することは可能であっても、更新することが困難であり利用者の要求を満たしていない。一方、「携帯電話での操作は紙に付箋を貼るような感覚で文書に対するメモを残す程度で十分である。」という要求も多い。本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、一元管理されている多種多様な文書(各種フォーマット文書、画像)を携帯電話で閲覧する際、紙に付箋を貼るような感覚で簡易にコメントを残し、残したコメントを閲覧することのできる文書管理サーバ、携帯端末、及び文書管理システムを提供することを目的とする。」 B 「【0020】 図1は、本発明が適用される文書管理システムの全体構成を示したシステム図である。同図の文書管理システムは、例えばECM(Enterprise Content Management)ソリューションとして企業内の様々な情報を一元管理するためのシステムであり、企業内に敷設された企業内ネットワーク(イントラネット)10と、企業外に敷設されたインターネット等の通信ネットワーク12と、通信ネットワーク12に基地局13を介して接続可能な携帯電話14等から構成されている。尚、本発明は携帯電話14の代わりにPDAやノート型パソコンなどの他の種類の携帯端末やパソコンなどにも適用可能であるが、本実施の形態では携帯電話を使用することを前提に説明する。 【0021】 企業内ネットワーク10は、文書管理サーバ22、データベースサーバ24、ルータ26、企業内に配置された各社員のパソコン(PC)28、28、…等から構築されている。これらの企業内ネットワーク10内の機器はルータ26を介して企業外の通信ネットワーク12に接続されるようになっている。 【0022】 また、携帯電話14は、社員等が所有する任意の携帯電話を示し、基地局13を介して通信ネットワーク12に接続できるようになっている。そして、通信ネットワーク12に接続することで企業内ネットワーク10の文書管理サーバ22にアクセスすることができ、文書管理サーバ22から配信される情報を、htmlファイルや画像ファイル(JPEGファイル等)のような携帯電話14で閲覧可能なファイルで取得し、閲覧することができるようになっている。 【0023】 企業内ネットワーク10では、文書管理サーバ22及びデータベースサーバ24により企業内の様々なフォーマット(ファイル形式)で作成された文書や画像等の情報(文書)が一元管理されており、各種文書がデータベースサーバ24に蓄積、保存されている。 【0024】 文書管理サーバ22は、通信ネットワーク12を通じて企業内ネットワーク10の外部からアクセスしてきた携帯電話14に対して、携帯電話14により要求された文書をデータベースサーバ24から取得し、その文書を携帯電話14で閲覧可能なフォーマットに変換して送信する機能を備えている。これによって、様々なフォーマットでデータベースサーバ24に保管されている企業内の文書や画像等の文書を外出先の携帯電話14で閲覧することができるようになっている。 【0025】 また、文書管理サーバ22に携帯電話14からアクセスすることによって単にデータベースサーバ24に保管されている文書を閲覧するだけでなく、携帯電話14においてその文書の必要な箇所に付箋情報としてマーキングやコメントを付することが可能となっている。これによってECMソリューションの営業活動等での活用場面が大幅に増加し、より有益なものとなっている。」 C 「【0027】 図2は、企業内ネットワーク10におけるPC28での文書の登録、及び、登録された文書の携帯電話14での閲覧とマーキング作成に関連する処理手段を示したシステム図である。 【0028】 まず、図2において、企業内ネットワーク10におけるPC28での文書の登録に関連する処理手段の処理内容について説明する。同図においてPC28は、文書を登録しようとする文書閲覧者が使用するパソコンを示し、文書閲覧者は、PC28において文書作成用の所望のアプリケーションを起動して文書を作成し、任意のフォーマット(ファイル形式)で保存する。そして、その文書をデータベースサーバ24に登録するため、そのPC28から文書管理サーバ22にアクセス(接続)し、一連の登録作業を行う。 【0029】 一方、文書管理サーバ22は、文書の登録に関連して情報入出力手段40、文書管理テーブルデータ作成手段42等を備えている。 【0030】 情報入出力手段40は、文書管理サーバ22にアクセスしてきたPC28に対して、文書の登録を案内するための各種案内画面を提供し、登録する文書(登録文書)のデータ(ファイル)や文書を管理する上で必要な情報として、案内画面に対して文書閲覧者が入力した情報を取得する。尚、情報入出力手段40は、文書管理サーバ22にアクセスしてきたユーザに対して最初にパスワード等の入力を促し、そのユーザがアクセス権限を有するか否かのユーザ認証も行っている。そして、アクセス権限があると認証されたユーザのみが文書を登録することができるようになっている。 【0031】 文書管理テーブルデータ作成手段42は、PC28により入力され情報入出力手段40により取得された情報に基づいて、後述の文書管理テーブル82用のデータを作成する。文書管理テーブル82用のデータは、登録文書のファイルと共に、文書管理サーバ22からデータベースサーバ24に送られ、各々、データベースサーバ24で、文書管理テーブル82として格納される。登録文書のファイルは、データベースサーバ24の文書データベース80に格納される。」 D 「【0039】 図5は、文書閲覧者が操作する携帯電話14において閲覧文書の任意の位置にマーキングを行う処理を時系列で示したシーケンス図である。 【0040】 まず、文書閲覧者は携帯電話14により文書管理サーバ22にアクセスする(ステップS10)。文書管理サーバ22へのアクセスには、携帯電話14は、文書管理サーバ22に携帯端末情報を送信する。図6(a)は、このときの携帯電話14のディスプレイの表示を示す図である。 【0041】 文書管理サーバ22では、情報入出力手段40により取得された携帯端末情報と、データベースサーバ24に記憶されている図4の作成者管理テーブルとを照合し、アクセスしてきた文書閲覧者が正式なアクセス権限を有するか否かのユーザ認証を行う(ステップS12)。そして、そのユーザ認証が適切に行えたか否かを判定し(ステップS14)、NOと判定した場合には、そのユーザのアクセスを禁止し、YESと判定した場合には、アクセスを許可して、表示させる文書を選択するための文書一覧画面をPC28に送信する(ステップS16)。 【0042】 文書閲覧者は、携帯電話14のディスプレイ表示された文書一覧に基づいて、閲覧したい文書の指定を行う(ステップS18)。図6(b)は、携帯電話14のディスプレイに表示された文書一覧を示す図である。文書管理サーバ22は、指定された文書を携帯電話14に開示し(ステップS20)、携帯電話14のディスプレイには図6(c)に示すように指定した文書が表示される(ステップS22)。なお、ここで表示された文書にはマーキングが作成されていないものとする。 【0043】 続いて、文書閲覧者は、携帯電話14により閲覧文書にマーキングを行うか否かを指定する(ステップS24)。マーキングの実行の指定は、図6(c)に示すように、「マーキング」に該当する操作ボタンを押すことにより行う。 【0044】 文書閲覧者が「マーキング」に該当する操作ボタンを押すと、図6(d)に示すように、閲覧文書の上に重ねて本実施の形態におけるマーキング用オブジェクトである長方形が表示される。文書閲覧者は、携帯電話14の十字キー等を用いて、マーキングしたい位置へマーキング用長方形を移動させる(ステップS26)。ここでは、長方形の大きさは固定であるが、任意の大きさに変更できるように構成してもよい。 【0045】 図6(d)に示す「決定」に該当する操作ボタンを押し、マーキング用長方形の位置を確定すると、次に図6(e)に示すようにマーキング種類の指定を行う画面が表示される(ステップS28)。 【0046】 ここで、マーキング種類について説明する。マーキング種類はマーキングの重要度を示すもので、重要な順に、重要(大)、重要(小)、要更新、削除の4つに分けられる。図7は、マーキング種類管理テーブル84のデータ構造を示した図である。「マーキングID」及び「重要度」のデータのまとまりが1件分のレコードを構成している。 【0047】 図6(e)の画面において、十字キーを用いてカーソルをプルダウンメニュー100に合わせて所定のボタンを押すことで、マーキング種類、即ちマーキングの重要度を選択することができる。また、空欄102にテキストデータを入力することにより、コメントを記入することも可能となっている(ステップS30)。 【0048】 マーキング種類の指定、及びコメント入力が終了したら、図6(e)に示す「決定」に該当する操作ボタンを押すことにより、マーキングが確定し、携帯電話14は、マーキング位置情報、マーキング種類情報、及びテキスト情報を文書管理サーバ22に送信する(ステップS34)。文書管理サーバ22においては、これらの情報を基にマーキング履歴管理テーブルデータ作成手段58によりマーキング履歴が自動的に作成され、マーキング履歴管理テーブル86のレコードとして追加される(ステップS36)。 【0049】 ここで、マーキング履歴管理テーブル86のデータ構造について説明する。図8は、マーキング履歴管理テーブル86のデータ構造を例示した図である。同図に示すように、1つのマーキングに対して「文書ID」、「マーキング位置X」、「マーキング位置Y」、「マーキングID」、「テキスト」、「作成日時」、「ユーザID」という各フィールドのデータのまとまりが1件分のレコードを構成している。 【0050】 ここで、「文書ID」は閲覧文書のIDのデータであり、「マーキング位置X」及び「マーキング位置Y」は、閲覧文書におけるマーキングの座標位置のデータであり、「マーキングID」はステップS28において指定したマーキングの重要度に対応したIDのデータであり、「テキスト」はステップS30において入力したコメントのテキストデータであり、「作成日時」はマーキングを作成した日時データであり、「ユーザID」はステップS12において使用した認証情報に基づくユーザIDのデータである。このように、マーキング履歴はマーキングの施された閲覧文書と関連付けられて記録される。 【0051】 次に、閲覧文書のマーキング閲覧について説明する。図9は、文書閲覧者が操作する携帯電話14において閲覧中の文書においてマーキングの閲覧を行う処理を時系列で示したシーケンス図である。なお、図5のシーケンス図と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。 【0052】 まず、文書閲覧者は携帯電話14により文書管理サーバ22にアクセスする(ステップS10)。文書管理サーバ22へのアクセスには、携帯電話14は、文書管理サーバ22に携帯端末情報を送信する。図10(a)は、このときの携帯電話14のディスプレイの表示を示す図である。 【0053】 文書管理サーバ22では、ユーザ認証を行い(ステップS12)、そのユーザ認証が適切に行えたか否かを判定し(ステップS14)、NOと判定した場合には、そのユーザのアクセスを禁止し、YESと判定した場合には、アクセスを許可して、表示させる文書を選択するための文書一覧画面をPC28に送信する(ステップS16)。 【0054】 文書閲覧者は、図10(b)に示すように携帯電話14のディスプレイ表示された文書一覧に基づいて、閲覧したい文書の指定を行う(ステップS18)。文書管理サーバ22は、指定された文書を携帯電話14に開示すると共に、この文書に作成されているマーキングの位置情報をマーキング履歴管理テーブル86から取得し、携帯電話14に開示する(ステップS20)。この情報に基づき、携帯電話14のディスプレイには図10(c)に示すように指定した文書が表示される(ステップS22)。 【0055】 続いて、文書閲覧者は、携帯電話14により閲覧文書のマーキングの閲覧を行うか否かを指定する(ステップS40)。マーキング閲覧の実行の指定は、図10(c)に示すように、「マーキング閲覧」に該当する操作ボタンを押すことにより行う。 【0056】 文書閲覧者が「マーキング閲覧」に該当する操作ボタンを押すと、図10(d)に示すように、閲覧文書の上に重ねてマーキング箇所にマーキング用オブジェクトである長方形が表示される。文書閲覧者は、携帯電話14の十字キー等を用いて、閲覧したいマーキング用長方形を指定する(ステップS42)。選択されたマーキング用長方形は、線の太さや色が変化することにより選択されたことが認識され、所望のマーキングを選択した状態で図10(d)に示す「決定」に該当する操作ボタンを押すと閲覧マーキングが指定される。 【0057】 閲覧マーキングが指定されると、携帯電話14は指定されたマーキングについて、マーキングの位置情報を用いて文書管理サーバ22に問い合わせを行う(ステップS44)。文書管理サーバ22は情報入出力手段50により取得された文書情報及びマーキング位置情報に基づいて、データベースサーバ24のマーキング履歴管理テーブル86から、該当するマーキングについての情報を取得する(ステップS46)。このマーキング情報を情報入出力手段50により携帯電話14に開示する(ステップS48)。 【0058】 携帯電話14は、図10(e)に示すように、この開示された情報をディスプレイに表示する(ステップS50)。本実施の形態では、閲覧文書内の同じ箇所に複数の人がマーキングを行っている場合に、同時に複数のマーキング情報の表示を行っているが、閲覧している本人が作成したマーキングだけを表示してもよい。 【0059】 なお、ステップS40においてマーキング閲覧の実行の指定をした後に、表示を行うマーキングを選択してもよい。例えば、携帯電話14のディスプレイに図11(a)に示すように表示を行い、作成者を指定してもよい。この場合は、図10(d)のマーキング表示において、指定された作成者が作成したマーキングだけが表示される。同様に、図11(b)に示すようにマーキングされた日付を指定してもよいし、図11(c)に示すようにマーキングの重要度を指定してもよい。いずれの場合も、指定されたマーキングだけが表示される。 【0060】 また、全てのマーキングを同時に表示する場合には、マーキングを日付別や作成者別に色分けをして表示してもよい。」 2 引用発明 以上,上記1の記載から,引用文献1には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。 携帯端末で文書を閲覧する際,簡易にコメントを残し,残したコメントを閲覧することのできる文書管理システムであって, 文書管理サーバ,データベースサーバ,ルータ,企業内に配置された各社員のパソコン(PC)から構築されている企業内ネットワークと, 社員等が所有する任意の携帯電話であって,基地局を介して通信ネットワークに接続できるようになっており,当該通信ネットワークに接続することで前記企業内ネットワークの前記文書管理サーバにアクセスすることができ,前記文書管理サーバから配信される情報を,htmlファイルや画像ファイル(JPEGファイル等)のような携帯電話で閲覧可能なファイルで取得し,閲覧することができる携帯電話とからなり, 前記企業内ネットワークでは,前記文書管理サーバ及び前記データベースサーバにより企業内の様々なフォーマット(ファイル形式)で作成された文書や画像等の情報(文書)が一元管理されており,各種文書が前記データベースサーバに蓄積,保存されており, 前記文書管理サーバは,前記通信ネットワークを通じて前記企業内ネットワークの外部からアクセスしてきた前記携帯電話に対して,前記携帯電話により要求された文書を前記データベースサーバから取得し,その文書を前記携帯電話で閲覧可能なフォーマットに変換して送信する機能を備えており,これによって,様々なフォーマットで前記データベースサーバに保管されている企業内の文書や画像等の文書を外出先の前記携帯電話で閲覧することができるようになっており, 前記文書管理サーバに前記携帯電話からアクセスすることによって単に前記データベースサーバに保管されている文書を閲覧するだけでなく,前記携帯電話においてその文書の必要な箇所に付箋情報としてマーキングやコメントを付することが可能となっており, 文書を登録しようとする文書閲覧者は,前記PCにおいて文書作成用の所望のアプリケーションを起動して文書を作成し,任意のフォーマット(ファイル形式)で保存し,その文書を前記データベースサーバに登録するため,前記PCから前記文書管理サーバにアクセス(接続)して一連の登録作業を行い, 前記文書管理サーバは,文書の登録に関連して情報入出力手段を備えており, 前記情報入出力手段は,前記文書管理サーバにアクセスしてきたユーザに対して最初にパスワード等の入力を促し,そのユーザがアクセス権限を有するか否かのユーザ認証を行い,アクセス権限があると認証されたユーザのみが文書を登録することができるようになっており, 前記PCにより入力され前記情報入出力手段により取得された情報に基づいて,文書管理テーブル用のデータを作成し,当該文書管理テーブル用のデータは,登録文書のファイルと共に,前記文書管理サーバから前記データベースサーバに送られ,登録文書のファイルは,前記データベースサーバの文書データベースに格納され, 文書閲覧者が操作する前記携帯電話において閲覧文書の任意の位置にマーキングを行う処理では, 文書閲覧者が前記携帯電話により前記文書管理サーバにアクセスすると, 前記文書管理サーバは,アクセスしてきた文書閲覧者が正式なアクセス権限を有するか否かのユーザ認証を行い,ユーザ認証が適切に行えた場合には,アクセスを許可し,指定された文書を前記携帯電話のディスプレイに表示し, 文書閲覧者が,前記携帯電話により閲覧文書にマーキングを行うために「マーキング」ボタンを押すと,閲覧文書の上に重ねてマーキング用オブジェクトである長方形が表示され, 文書閲覧者は,前記携帯電話の十字キー等を用いて,マーキングしたい位置へマーキング用長方形を移動させてマーキング用長方形の位置を確定し, 空欄にテキストデータを入力することにより,コメントを記入することが可能であり, コメント入力が終了したら「決定」ボタンを押すことにより,マーキングが確定し,前記携帯電話は,マーキング位置情報及びテキスト情報を前記文書管理サーバに送信し, 前記文書管理サーバは,これらの情報を基にマーキング履歴を自動的に作成し,マーキング履歴管理テーブルのレコードとして追加し, ここで,マーキング履歴管理テーブルには,1つのマーキングに対して「文書ID」,「マーキング位置X」,「マーキング位置Y」,「マーキングID」,「テキスト」,「作成日時」,「ユーザID」という各フィールドのデータのまとまりが1件分のレコードを構成しており, ここで,「マーキング位置X」及び「マーキング位置Y」は,閲覧文書におけるマーキングの座標位置のデータであり, 前記マーキング履歴はマーキングの施された閲覧文書と関連付けて記録され, 文書閲覧者が操作する前記携帯電話において閲覧中の文書においてマーキングの閲覧を行う処理では, 文書閲覧者が前記携帯電話により前記文書管理サーバにアクセスすると,前記文書管理サーバでは,ユーザ認証を行い,ユーザ認証が適切に行えた場合には,アクセスを許可して,表示させる文書を選択するための文書一覧画面を送信し, 文書閲覧者は,前記携帯電話のディスプレイ表示された文書一覧に基づいて,閲覧したい文書の指定を行い, 前記文書管理サーバは,指定された文書を前記携帯電話に開示すると共に,この文書に作成されているマーキングの位置情報を前記マーキング履歴管理テーブルから取得し,前記携帯電話に開示し,この情報に基づき,前記携帯電話のディスプレイには指定した文書が表示され, 続いて,文書閲覧者が,「マーキング閲覧」ボタンを押すと,閲覧文書の上に重ねてマーキング箇所にマーキング用オブジェクトである長方形が表示され, 文書閲覧者は,前記携帯電話の十字キー等を用いて,閲覧したいマーキング用長方形を指定し,所望のマーキングを選択した状態で「決定」ボタンを押すと閲覧マーキングが指定され, 閲覧マーキングが指定されると,前記携帯電話は指定されたマーキングについて,マーキングの位置情報を用いて前記文書管理サーバに問い合わせを行い, 前記文書管理サーバは前記情報入出力手段により取得された文書情報及びマーキング位置情報に基づいて,前記データベースサーバの前記マーキング履歴管理テーブルから,該当するマーキングについての情報を取得して,マーキング情報を前記情報入出力手段により前記携帯電話に開示し, 前記携帯電話は,開示された情報をディスプレイに表示し, 閲覧文書内の同じ箇所に複数の人がマーキングを行っている場合に,同時に複数のマーキング情報の表示を行っているが,閲覧している本人が作成したマーキングだけを表示してもよく, 全てのマーキングを同時に表示する場合には,マーキングを作成者別に色分けをして表示してもよい,文書管理システム。 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 1 引用発明である「文書管理システム」は,「文書管理サーバ」,「データベースサーバ」及び「パソコン(PC)」を含む「企業内ネットワーク」と,「携帯電話」を備えるシステムであり,引用発明の「パソコン(PC)」及び「携帯電話」は本願発明の「コンピューティング・デバイス」に相当する。 2 ここで,本願発明の「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」が備える「アプリケーション・サービス」及び「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」は,「2つ以上のコンピューティング・デバイス」とデータや要求等の送受信を行うものであるところ,本願発明の上記「アプリケーション・サービス」に関し本願明細書の発明の詳細な説明には,段落【0030】に「図3は、少なくとも1つの実施形態に従うフロントエンド・システムならびにドキュメント管理及びコラボレーション・システムの機能エンティティを説明する。フロントエンド・システム304は、ウェブ・サーバ332、アプリケーション・サービス334、管理コンソール336及びコントロール・プレーン・サービス338を含む。・・・」との記載,段落【0019】に「・・・さらに、フロントエンド・システム204は、顧客がコンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ210でアプリケーションまたはタスクを実行することを可能にし、顧客がアプリケーションまたはタスクの実行を追跡・管理することを可能にし、顧客が実行の結果を受信し結果をユーザ・デバイスへ送信することが可能である。・・・」との記載,及び,段落【0031】に「アプリケーション・サービス334は、ユーザからの要求を受信し、この要求にサービスを提供する、ユーザに公開されたサービスとして機能するように集合的に構成されたコンピューティング・デバイス及び他のリソースの集合物であってもよい。・・・」との記載があることを踏まえると,本願発明の「アプリケーション・サービス」とは,ユーザからの要求に対しサービスを提供することで,ユーザによるアプリケーション実行を可能にする構成,であると解することができ, また,本願発明の「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」に関しても,本願明細書の発明の詳細な説明に,段落【0009】の「本明細書に記載され提案された技術は、ドキュメント管理及びコラボレーション・システムを利用してユーザがドキュメントを共有しドキュメントで連携することを可能にすることを有する。ユーザは、ドキュメント管理及びコラボレーション・システムにより管理されたドキュメント・ディレクトリを維持する、ユーザの一群の部分または組織の部分であってもよい。1人のユーザは、ディレクトリまたはディレクトリのいずれかに関連したフォルダまたはサブフォルダへ権限特権を有することができる。この権限特権は、ユーザがドキュメントを閲覧する、これを変更するか、またはこれに注釈を付けることを可能にすることができる。権限特権は、ユーザがドキュメントについてコメントするか、またはこれに関するフィードバックを与え、ドキュメントまたはフォルダを作成するか、またはこれらを削除することをさらに可能にすることができる。さまざまなレベルまたは権限または共有特権があることができ、ユーザの特権が変わる可能性がある。」との記載,及び,段落【0020】の「ドキュメント管理及びコラボレーション・システム206は、分散システム中の1人以上のユーザ間のコラボレーション用のドキュメントの実行及び処理を可能にし管理する。・・・」との記載があることを踏まえると,本願発明の「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」における「ドキュメント管理」とは,ユーザが権限を有するドキュメントを管理することを指し,また,「コラボレーション」とは,ドキュメントに関しユーザが共有し連携することを指していると解することができ,そうすると,本願発明の「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」とは,ユーザが権限を有するドキュメントを管理し,ユーザ間でドキュメントを共有しドキュメントで連携することを可能にするシステム,を指すものということができる。 3 これに対し,引用発明である「文書管理システム」が備える「文書管理サーバ」は,「通信ネットワークを通じて前記企業内ネットワークの外部からアクセスしてきた前記携帯電話に対して,前記携帯電話により要求された文書を前記データベースサーバから取得し,その文書を前記携帯電話で閲覧可能なフォーマットに変換して送信する機能を備えており,これによって,様々なフォーマットで前記データベースサーバに保管されている企業内の文書や画像等の文書を外出先の前記携帯電話で閲覧することができるようにな」るとともに,「前記携帯電話においてその文書の必要な箇所に付箋情報としてマーキングやコメントを付することが可能と」なり,また,「PCにおいて文書作成用の所望のアプリケーションを起動して文書を作成し,任意のフォーマット(ファイル形式)で保存し,その文書を前記データベースサーバに登録するため,前記PCから前記文書管理サーバにアクセス(接続)して一連の登録作業を行」うことを可能とするものであり,これら「文書管理サーバ」の処理(文書の取得,変換,付箋情報の付加,登録)が当該「文書管理サーバ」におけるアプリケーションの実行により実現されていることは明らかであり,また,「文書管理サーバ」の上記処理(文書の取得,変換,付箋情報の付加,登録)の内容は,「携帯電話」または「PC」のユーザからのアクセス(要求)に対し提供されたサービスといいうることから,上記「文書管理サーバ」は,ユーザからの要求に対しサービスを提供することで,ユーザによるアプリケーション実行を可能にする構成を備えるといえ,そうすると,引用発明の「文書管理サーバ」が備える上記構成は,上記2で検討した本願発明の「アプリケーション・サービス」に対応するといえる。 また,引用発明の「文書管理システム」が備える「データベースサーバ」は,「様々なフォーマットで前記データベースサーバに保管されている企業内の文書や画像等の文書を外出先の前記携帯電話で閲覧することができるようになって」いるものであり,「文書を登録しようとする文書閲覧者は,前記PCにおいて文書作成用の所望のアプリケーションを起動して文書を作成し,任意のフォーマット(ファイル形式)で保存し,その文書を前記データベースサーバに登録するため,前記PCから前記文書管理サーバにアクセス(接続)して一連の登録作業を行い」,「アクセス権限があると認証されたユーザのみが文書を登録することができるようになっており」,また,「文書閲覧者が操作する前記携帯電話において閲覧文書の任意の位置にマーキングを行う」際には,「文書管理サーバは,これらの情報を基にマーキング履歴を自動的に作成し,マーキング履歴管理テーブルのレコードとして追加し」て「マーキング履歴はマーキングの施された閲覧文書と関連付けて記録され」るものであり,また,「文書閲覧者が操作する前記携帯電話において閲覧中の文書においてマーキングの閲覧を行う」際には,「文書閲覧者が前記携帯電話により前記文書管理サーバにアクセスすると,前記文書管理サーバでは,ユーザ認証を行い,ユーザ認証が適切に行えた場合には,アクセスを許可して」,「マーキングの位置情報を用いて前記文書管理サーバに問い合わせを行い,前記文書管理サーバは前記情報入出力手段により取得された文書情報及びマーキング位置情報に基づいて,前記データベースサーバの前記マーキング履歴管理テーブルから,該当するマーキングについての情報を取得して,マーキング情報を前記情報入出力手段により前記携帯電話に開示」するものであって,「文書」は上記「データベースサーバ」に「様々なフォーマットで」「保管されて」おり,アクセスを許可されたユーザのみが「閲覧」可能な「文書」として管理されているといえ,さらに,「PC」のユーザにより登録された「文書」が,「携帯電話」のユーザによりマーキング追加や閲覧が行えることからして,ユーザ間で「文書」を共有し「文書」を介してマーキング処理の連携がなされているといえるから,ユーザが権限を有するドキュメントを管理し,ユーザ間でドキュメントを共有しドキュメントで連携することを可能にするシステムであるといえ,そうすると,引用発明の上記「データベースサーバ」は,上記2で検討した本願発明の「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」に相当するといえる。 そして,引用発明の「文書管理システム」における上記「文書管理サーバ」及び上記「データベースサーバ」は,それにより,「携帯端末で文書を閲覧する際,簡易にコメントを残し,残したコメントを閲覧することのできる」ものであり,この場合の「文書」に残される「コメント」は,「テキストデータ」として入力され「マーキング履歴管理テーブル」に「マーキングに対して」追加されることで「レコード」を構成するものであって,当該「マーキング履歴管理テーブル」が,上記「データベースサーバ」における格納手段であることからすると,上記「文書管理サーバ」及び上記「データベースサーバ」は,コンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成であるといえ,一方,本願発明の「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」も,コンピューティング・リソースに係るサービスを提供していることから,後記する点で相違するものの,本願発明の「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」と,引用発明の上記「文書管理サーバ」及び上記「データベースサーバ」からなる構成とは,“コンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成”である点で共通するといえる。 4 上記3によれば,引用発明の「文書管理サーバ」は,本願発明の「アプリケーション・サービス」に対応する構成を含むことから,後記する点で相違するものの,本願発明の「アプリケーション・サービスを含むコンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」と,引用発明の「文書管理サーバ」及び「データベースサーバ」からなる構成とは,“アプリケーション・サービスを含むコンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成”である点で共通し, そうすると,上記1ないし3から,本願発明である「2つ以上のコンピューティング・デバイスとアプリケーション・サービスを含むコンピューティング・リソース・サービス・プロバイダとを有するシステム」と,引用発明である「文書管理サーバ,データベースサーバ,ルータ,企業内に配置された各社員のパソコン(PC)から構築されている企業内ネットワークと,社員等が所有する任意の携帯電話」とからなる「文書管理システム」とは,“2つ以上のコンピューティング・デバイスと,アプリケーション・サービスを含むコンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成とを有するシステム”である点で共通するといえる。 5 上記3で対応するとした,引用発明の「文書管理サーバ」が備える構成と,本願発明の「アプリケーション・サービス」の,処理について以下で対比する。 引用発明は,「文書を登録しようとする文書閲覧者は,前記PCにおいて文書作成用の所望のアプリケーションを起動して文書を作成し,任意のフォーマット(ファイル形式)で保存し,その文書を前記データベースサーバに登録するため,前記PCから前記文書管理サーバにアクセス(接続)して一連の登録作業を行」うものであるところ,当該登録作業において,「文書管理サーバ」は,「企業内ネットワーク」における「PC」と「文書管理サーバ」を接続する「ネットワーク」経由で,前記「PC」から文書を受信していることは明らかであるから,引用発明と本願発明とは,「アプリケーション・サービス」が,「ネットワーク経由で,2つ以上の前記コンピューティング・デバイスの1つからドキュメントを受信し」ている点で一致する。 6 引用発明の「文書管理サーバ」は,「通信ネットワークを通じて前記企業内ネットワークの外部からアクセスしてきた前記携帯電話に対して,前記携帯電話により要求された文書を前記データベースサーバから取得し,その文書を前記携帯電話で閲覧可能なフォーマットに変換して送信する機能を備えて」おり,ここでの「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」は,「企業内の様々なフォーマット(ファイル形式)」とは違って,携帯電話で閲覧可能なフォーマットである点で,本願発明における「共通フォーマットであるアンダーレイ」に相当するものであるから,引用発明と本願発明とは,「ドキュメント用に,前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイ」を「生成」させている点で共通する。 7 引用発明では,「文書閲覧者が,前記携帯電話により閲覧文書にマーキングを行う」と,「閲覧文書におけるマーキングの座標位置」のデータである「マーキング位置X」及び「マーキング位置Y」が「マーキングの施された閲覧文書と関連付けて記録され」るところ,「閲覧文書におけるマーキングの座標位置」は,閲覧文書が異なる表示特性を備えるコンピューティング・デバイスで表示された場合であっても,閲覧文書の当該「座標位置」にマーキングを表示させるように機能するものであって,異なる表示特性を備えるコンピューティング・デバイスにおいて安定した表示を可能にするものといえるから,本願発明の「異なる表示特性を備えるコンピューティング・デバイスにおいて安定した表示を可能にする座標マップ」に相当する。 したがって,引用発明と本願発明とは,「異なる表示特性を備えるコンピューティング・デバイスにおいて安定した表示を可能にする座標マップ」を「生成」させている点で共通する。 8 引用発明の「マーキング」は,「携帯電話においてその文書の必要な箇所に付箋情報として」「付することが可能」なものであるから,「文書」に重ねて表示されるものである点で本願発明の「オーバーレイ」に対応するところ,引用発明の「コメント」は本願発明の「注釈」に相当し,引用発明では,「マーキング」に「コメント」を「記入すること」で,「マーキング履歴管理テーブルのレコードとして追加」することから,引用発明の「マーキング」は,本願発明の「オーバーレイ」と,「ドキュメントへ1つ以上の注釈を格納するために使用を可能にする」ものである点で共通する。 してみると,引用発明と本願発明とは,「ドキュメントへ1つ以上の注釈を格納するために使用を可能にするオーバーレイ」を「生成」させている点で共通する。 9 上記6ないし8で検討した,「アンダーレイ」,「座標マップ」及び「オーバーレイ」の生成処理は,「文書管理サーバ」の機能によって行われており,いずれも「文書」を登録した後の処理として,すなわち,ドキュメントの受信結果として実行される処理であり,また,文献の受信や登録処理とは別に,すなわち,「非同期」で実行される処理であるといえるから,引用発明と本願発明とは,「アプリケーション・サービス」が,「ドキュメントの受信結果として,前記ドキュメント用に,前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイ,異なる表示特性を備える前記コンピューティング・デバイスにおいて安定した表示を可能にする座標マップ及び前記ドキュメントへ1つ以上の注釈を格納するために使用を可能にするオーバーレイを非同期で生成」している点で共通する。 10 引用発明では,上記7及び8で生成した,「マーキング」及び「閲覧文書におけるマーキングの座標位置」は,「データベースサーバ」の「マーキング履歴管理テーブル」に「マーキングの施された閲覧文書と関連付けて記録され」ることから,「文書管理サーバ」の機能によって生成された後,「データベースサーバ」に送信されるのは明らかである。 してみると,後記する点で相違するものの,上記3の検討も踏まえると,引用発明と本願発明とは,“アプリケーション・サービス”が,“座標マップ及びオーバーレイを,コンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成内のドキュメント管理・コラボレーション・システムに送信し”ている点で一致する。 11 引用発明の「文書閲覧者が操作する前記携帯電話において閲覧中の文書においてマーキングの閲覧を行う処理」において,「文書閲覧者が前記携帯電話により前記文書管理サーバにアクセスする」ことは,本願発明の「アプリケーション・サービス」が,「ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの要求を受信」することに相当する。 12 引用発明では,「文書管理サーバは,指定された文書を前記携帯電話に開示すると共に,この文書に作成されているマーキングの位置情報を前記マーキング履歴管理テーブルから取得し,前記携帯電話に開示し,この情報に基づき,前記携帯電話のディスプレイには指定した文書が表示され」,「続いて,文書閲覧者が,「マーキング閲覧」ボタンを押すと,閲覧文書の上に重ねてマーキング箇所にマーキング用オブジェクトである長方形が表示され」るところ,この動作は,上記11の「文書閲覧者が前記携帯電話により前記文書管理サーバにアクセスする」ことに応じてなされるものであり,当該アクセスに応じて,「文書管理サーバ」が,「指定された文書を前記携帯電話に開示」し,当該「文書」は,「携帯電話で閲覧可能なフォーマットに変換」したものであって,上記6における本願発明の「共通フォーマットであるアンダーレイ」に相当するから,引用発明と本願発明とは,「アンダーレイ」を「ユーザのコンピューティング・デバイス」へ「提供」させている点で共通しているといえる。 また,引用発明では,「文書に作成されているマーキングの位置情報を前記マーキング履歴管理テーブルから取得し,前記携帯電話に開示」しているから,上記8の検討もあわせると,引用発明と本願発明とは,「座標マップ」を「ユーザのコンピューティング・デバイス」へ「提供」させている点で共通しているといえる。 また,引用発明では,「文書閲覧者が,「マーキング閲覧」ボタンを押すと,閲覧文書の上に重ねてマーキング箇所にマーキング用オブジェクトである長方形が表示され」るから,上記7の検討もあわせると,引用発明と本願発明とは,「オーバーレイ」を「ユーザのコンピューティング・デバイス」へ「提供」させている点で共通しているといえる。 してみると,後記する点で相違するものの,引用発明と本願発明とは,“アプリケーション・サービス”が,“ドキュメントへのアクセスの要求に応じて”,“アンダーレイ,座標マップ及びオーバーレイをユーザのコンピューティング・デバイスへ提供させる”点で共通する。 以上の検討から,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 2つ以上のコンピューティング・デバイスとアプリケーション・サービスを含むコンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成とを有するシステムであって, 前記アプリケーション・サービスは, ネットワーク経由で,2つ以上の前記コンピューティング・デバイスの1つからドキュメントを受信し, 前記ドキュメントの受信結果として,前記ドキュメント用に,前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイ,異なる表示特性を備える前記コンピューティング・デバイスにおいて安定した表示を可能にする座標マップ及び前記ドキュメントへ1つ以上の注釈を格納するために使用を可能にするオーバーレイを非同期で生成し, 前記座標マップ及び前記オーバーレイをコンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成内のドキュメント管理・コラボレーション・システムに送信し, ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの要求を受信し, 前記ドキュメントへのアクセスの前記要求に応じて,前記アンダーレイ,前記座標マップ及びオーバーレイをユーザのコンピューティング・デバイスへ提供させる,システム。 (相違点1) コンピューティング・リソースに係るサービスを提供する構成に関し, 本願発明では,「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」であるのに対して, 引用発明では,「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」に相当する構成であるとの特定はなされていない点。 (相違点2) アプリケーション・サービスからドキュメント管理・コラボレーション・システムに送信する点に関し, 本願発明では,送信を「同期して」行うとともに,生成した「アンダーレイ」を送信対象に含むのに対して, 引用発明では,送信を「同期して」行うことや,生成した「アンダーレイ」に相当するデータをデータベースサーバに送信することまでは言及されていない点。 (相違点3) ドキュメントへのアクセスの要求に応じて,ユーザのコンピューティング・デバイスへ提供させる点に関し, 本願発明では,「ドキュメント管理・コラボレーション・システムから」提供させるのに対して, 引用発明では,データベースサーバから提供することまでは言及されてない点。 第6 判断 上記相違点について,判断する。 1 相違点1について ネットワークにより接続されたユーザからの要求に応じて,コンピュータリソースに係るサービスを提供する「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」と呼び得る構成は,例えば当審拒絶理由通知の中でも引用した,特開2012-209809号公報(例えば,段落【0019】?【0032】,【図1】に示された,電子ファイル格納サービス事業者によって提供されるデータ提供装置300に関する記載を参照)や,特開2011-191862号公報(段落【0027】?【0030】,【0045】?【0063】,【図1】に示された,ファイル管理システム管理者によって運営されるファイル管理のためのサーバ2に関する記載を参照)にも記載されているとおり,当該技術分野における周知の構成である。 引用発明における企業内ネットワークの構成である「文書管理サーバ」及び「データベースサーバ」は,通信ネットワークを介して外部からアクセスしてきた携帯電話に文書の閲覧やコメントに係るサービスを提供するものであるから,外部からのアクセスを受け入れてコンピュータリソースに係るサービスを提供するものであるといえ,当該「文書管理サーバ」及び「データベースサーバ」からなる構成に対し,同様の技術分野に属する上記周知の構成を適用することで,「コンピューティング・リソース・サービス・プロバイダ」として構成すること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 2 相違点2及び3について 事案に鑑み,相違点2及び3についてまとめて検討する。 引用発明は,PCからの登録要求対象である文書を,任意のフォーマット(ファイル形式)で保存して「データベースサーバ」に送って登録しており,そして,携帯電話から閲覧要求があった際には,「データベースサーバ」から取得して「文書管理サーバ」において「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換して携帯電話に提供しているが,これは,「様々なフォーマットで前記データベースサーバに保管されている企業内の文書や画像等の文書を外出先の前記携帯電話で閲覧することができるように」するための構成であって,文書の登録先である上記「データベースサーバ」が「共通フォーマット」による文書の格納を排除するものではなく,また,文書等を含むデータの格納フォーマットをどこまで共通なものとするかは,携帯電話で閲覧可能に提供できる範囲で,データにアクセスするユーザの種類や利便性を考慮して適宜決め得る程度の事項といえるから,引用発明の上記「データベースサーバ」に登録する文書のフォーマットを,携帯電話で閲覧可能となるよう共通なものに変更することに格別困難性は認められない。 してみると,引用発明において,携帯電話の閲覧用の文書データの「データベースサーバ」への登録を,「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」へ変換した上で行うよう変更することは,当業者であれば適宜なし得る程度の事項であって,そして,その上で携帯電話からの閲覧要求があれば,登録先の上記「データベースサーバ」から格納済みの上記「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換した文書データを取得し,「文書管理サーバ」をとおして携帯電話に提供することとなる。 そして,この場合の引用発明における,文書データを「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換して「データベースサーバ」に登録のため送ることが,本願発明における生成後の「ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイ」に係る文書データを「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」に送信することに相当することとなり,また,同様にこの場合の引用発明における,「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換した文書データを上記「データベースサーバ」から取得して携帯電話に提供させることが,本願発明における「アンダーレイ」に係る文書データを「ドキュメント管理・コラボレーション・システム」からユーザのコンピューティング・デバイスへ提供させることに相当することとなる。また,引用発明は,携帯電話での文書の閲覧や文書におけるマーキングの閲覧のために,上記「文書管理サーバ」から携帯電話に対し,文書データと,それに関連付けて「データベースサーバ」に記録されたマーキング及び閲覧文書におけるマーキングの座標位置のデータとを,まとまりとして提供しており,上記のとおり「データベースサーバ」に登録されることとなる「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換した文書データと,「データベースサーバ」に記録されたマーキング及びマーキングの座標位置のデータについてもまとめて処理の対象とすることは自然な発想であって,これらのデータの「データベースサーバ」への送信をまとめて文献登録時に行うことは,上記「PC」及び「文書管理サーバ」における処理に併せて,すなわち,「同期して」行われたものといいうるものである。 したがって,引用発明において,「文書管理サーバ」から「データベースサーバ」に,「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換した文書データを含むデータを「同期して」送信するとともに,「データベースサーバ」から携帯電話に「携帯電話で閲覧可能なフォーマット」に変換した文書データを含むデータを提供するよう構成すること,すなわち,相違点2及び3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 よって,相違点2及び3は,格別のものではない。 そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び周知技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-09-17 |
結審通知日 | 2019-09-18 |
審決日 | 2019-10-10 |
出願番号 | 特願2016-528236(P2016-528236) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 桜井 茂行 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
仲間 晃 山崎 慎一 |
発明の名称 | ドキュメント管理及びコラボレーション・システム |
代理人 | 伊藤 信和 |