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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1360324
審判番号 不服2019-7939  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-14 
確定日 2020-03-05 
事件の表示 特願2016-223075号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月24日出願公開、特開2018-79055号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月16日の出願であって、平成31年1月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年2月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年3月19日付け(送達日:平成31年3月26日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:平成31年2月27日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立に基づき、識別情報が変動するゲームを実行可能な遊技機において、
前記ゲームに対応する演出表示を表示可能な表示装置と、
遊技者が操作可能な操作手段と、
所定の音を出力可能な複数の音出力手段と、
発光可能な複数の発光手段と、を備え、
前記複数の音出力手段のうちの一の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第1直線又は第1平面と、前記複数の音出力手段のうちの他の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第2直線又は第2平面とにより仮想的に規制された第1仮想規制領域が形成され、
前記複数の発光手段のうちの一の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第3直線又は第3平面と、前記複数の発光手段のうちの他の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第4直線又は第4平面とにより仮想的に規制された第2仮想規制領域が形成され、
前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を表示可能であることを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:本件補正である令和1年6月14日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立に基づき、識別情報が変動するゲームを実行可能な遊技機において、
前記ゲームに対応する演出表示を表示可能な表示装置と、
遊技者が操作可能な操作手段と、
所定の音を出力可能な複数の音出力手段と、
発光可能な複数の発光手段と、を備え、
前記複数の音出力手段と前記複数の発光手段は、ともに本体枠に配設され、
前記複数の音出力手段のうちの一の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第1直線又は第1平面と、前記複数の音出力手段のうちの他の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第2直線又は第2平面とにより仮想的に規制された第1仮想規制領域が形成され、
前記複数の発光手段のうちの一の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第3直線又は第3平面と、前記複数の発光手段のうちの他の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第4直線又は第4平面とにより仮想的に規制された第2仮想規制領域が形成され、
前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を同時に表示可能であることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した)。

2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の音出力手段」及び「複数の発光手段」が、「ともに本体枠に配設され」と限定されるとともに、本件補正前に「前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を」「表示可能である」とあったのを、「同時に」表示可能であると限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該限定した事項について、前者の限定は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0009】、【0010】及び【図1】に、後者の限定は同じく【0812】、【図181】及び【図185】に、それぞれ記載された事項であるから、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

3 本願補正発明の独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明について
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要に示した次のとおりのものである(A?Jは、本願補正発明を分説するため当審にて付与した。)

「【請求項1】
A 始動条件の成立に基づき、識別情報が変動するゲームを実行可能な遊技機において、
B 前記ゲームに対応する演出表示を表示可能な表示装置と、
C 遊技者が操作可能な操作手段と、
D 所定の音を出力可能な複数の音出力手段と、
E 発光可能な複数の発光手段と、を備え、
F 前記複数の音出力手段と前記複数の発光手段は、ともに本体枠に配設され、
G 前記複数の音出力手段のうちの一の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第1直線又は第1平面と、前記複数の音出力手段のうちの他の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第2直線又は第2平面とにより仮想的に規制された第1仮想規制領域が形成され、
H 前記複数の発光手段のうちの一の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第3直線又は第3平面と、前記複数の発光手段のうちの他の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第4直線又は第4平面とにより仮想的に規制された第2仮想規制領域が形成され、
I 前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を同時に表示可能であることを特徴とする
J 遊技機。」

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である特開2016-172177号公報(平成28年9月29日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は説明の便宜のために当審にて付した。以下同様)。

(ア)「【0007】
上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、出力設定値に応じて演出用デバイスの出力制御がなされるとともに、遊技者の変更操作によって該出力設定値を変更可能な遊技機であって、予め設定された始動条件の成立により、遊技者に遊技利益を付与するか否かを少なくとも決定するための判定処理を行う判定手段と、前記判定手段によって前記遊技利益を付与するか否かが決定されると、設定中の前記出力設定値に応じて前記演出用デバイスの出力制御を行い、該決定結果を報知するための変動演出を実行する変動演出実行手段と、前記判定手段によって前記遊技利益の付与が決定されるとともに、該決定結果を報知する変動演出が実行されると、該遊技利益を付与する遊技利益付与手段と、前記変更操作を受け付ける操作部と、前記操作部を介して入力された前記変更操作を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記変更操作に応じて、前記出力設定値を変更する設定変更手段と、前記設定変更手段によって前記出力設定値が変更された場合に、該出力設定値の変更を報知する設定変更画像を表示するとともに、該設定変更画像の表示開始後、所定の表示終了条件が成立すると該設定変更画像を非表示とする設定変更画像表示手段と、を備え、前記設定変更手段は、前記変動演出が実行されていない所定の期間中、および、該変動演出の開始から終了までの全期間中もしくは所定の期間中に前記変更操作が検出された場合に、前記出力設定値を変更し、前記設定変更画像を非表示とするための前記表示終了条件は、前記変動演出の実行中と、該変動演出が実行されていない場合とで異なることを特徴とする。」

(イ)「【0013】
図1は、本実施形態の遊技機100の斜視図であり、扉が開放された状態を示している。図示のように、遊技機100は、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成される外枠102と、この外枠102にヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた中枠104と、この中枠104に、ヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた前枠106と、を備えている。
【0014】
中枠104は、外枠102と同様に、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に遊技盤108が保持されている。また、前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されている。そして、これら中枠104および前枠106を外枠102に対して閉じると、遊技盤108と透過板110とが所定の間隔を維持して略平行に対面するとともに、遊技機100の正面側から、透過板110を介して遊技盤108が視認可能となる。」

(ウ)「【0024】
演出表示装置200は、画像を表示する画像表示部からなる演出表示部200aを備えており、この演出表示部200aを、遊技盤108の略中央部分において、遊技機100の正面側から視認可能に配置している。この演出表示部200aには、図示のように演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行されることとなる。
・・・
【0026】
演出照明装置204は、演出役物装置202や遊技盤108等に設けられており、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される。
【0027】
音声出力装置206は、前枠106の上部位置や外枠102の最下部位置に設けられ、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、遊技機100の正面側に向けてさまざまな音声を出力する。」
・・・
【0029】
設定操作装置209は、遊技者の押下操作を受け付ける、上ボタン、下ボタン、左ボタン、右ボタンを備えた十字キーボタンで構成され、上下左右の4方向それぞれに対して押下操作が可能に構成されている。この設定操作装置209は、主に、音声出力装置206から出力される出力音声の音量や、演出表示部200aの輝度等を設定するために設けられている。ただし、設定操作装置209も、演出操作装置208と同様に、所定の演出中に有効化され、操作有効時間内に遊技者の操作を受け付けると、当該操作に応じて、さまざまな演出が実行される場合もある。」

(エ)「【0388】
ここで、上記のように、変動演出では、演出表示部200aに変動演出画像が表示されるとともに、音声出力装置206からは、変動演出画像に合わせた音声が出力される。このとき、サブRAM330cには、出力設定値として、音声出力装置206の音量を示す音量設定値、および、演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値が設定、記憶されている。そして、現在設定されている音量設定値に対応する音量で、音声出力装置206の音声出力制御がなされ、現在設定されている輝度設定値に対応する輝度で演出表示部200aの表示制御がなされる。本実施形態では、上記の音量設定値および輝度設定値を遊技者が任意に設定変更できるように構成されている。
・・・
【0406】
また、本実施形態では、図47(f)に示すように、客待ち状態に移行してからの経過時間が0?5秒であるときに変更操作が入力されると、図47(g)に示すように、変動演出の実行中に変更操作が入力されたときと同一の処理が実行され、演出表示部200aに第3設定変更画像216が表示される。具体的には、変動演出の実行中に、設定操作装置209の左ボタンまたは右ボタンが押下されると、図49(a)に示すように、演出表示部200aの中央に、第3設定変更画像216として第3音量設定変更画像216aが表示される。また、変動演出の実行中に、設定操作装置209の上ボタンまたは下ボタンが押下されると、図49(b)に示すように、演出表示部200aの中央に、第3設定変更画像216として第3輝度設定変更画像216bが表示される。
【0407】
第3音量設定変更画像216aは、第2音量設定変更画像214aと同様、音量設定値の変更を報知する画像であり、第3輝度設定変更画像216bは、第2輝度設定変更画像214bと同様、輝度設定値の変更を報知する画像である。ただし、第3音量設定変更画像216aおよび第3輝度設定変更画像216bは、変動演出の実行中に、演出表示部200aのうち、変動演出画像が表示される表示領域内に表示されることから、変動演出画像の視認性を妨げてしまう。そこで、変動演出の実行中に表示される第3設定変更画像216を、変動演出が実行されていない客待ち状態で表示される第2設定変更画像214よりも、表示面積の小さい画像で構成している。このように、変動演出の実行中には、変動演出が実行されていない場合よりも、表示面積の小さい画像を表示することにより、変動演出画像の視認性の低下を抑制し、演出効果の低下を抑制する。」

(オ)【図2】


以上の記載事項(ア)?(オ)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる(a?jは、本願補正発明の分説A?Jに対応させている)。

(a)記載事項(ア)から、予め設定された始動条件の成立により、遊技者に遊技利益を付与するか否かを少なくとも決定するための判定処理を行い、前記遊技利益を付与するか否かが決定されると該決定結果を報知するための変動演出を実行する遊技機が記載されていると認められる。

(b)記載事項(ウ)(【0024】)から、画像を表示する画像表示部からなる演出表示部200aを備え、演出表示部200aには、演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、その停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される演出表示装置200が記載されていると認められる。

(c)記載事項(ウ)(【0029】)から、遊技者の押下操作を受け付ける、上ボタン、下ボタン、左ボタン、右ボタンを備えた十字キーボタンで構成された設定操作装置209が記載されていると認められる。

(d)記載事項(ウ)(【0027】)から、さまざまな音声を出力する、前枠106の上部位置に設けられた音声出力装置206が記載されていると認められる。
また、記載事項(オ)から、音声出力装置206が前枠106の上部の左右位置に設けられることが記載されていると認められる。

(e)記載事項(ウ)(【0026】)から、演出役物装置202や遊技盤108等に設けられており、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される演出照明装置204が記載されていると認められる。

(f、j)記載事項(イ)から、遊技機100は、外枠102と、この外枠102にヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた中枠104と、この中枠104に、ヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた前枠106と、を備え、中枠104は、囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に遊技盤108が保持され、前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されていることが記載されていると認められる。

(i)記載事項(エ)から、設定操作装置209の左ボタンまたは右ボタンが押下されると、演出表示部200aの中央に、音声出力装置206の音量を示す音量設定値の変更を報知する画像である第3音量設定変更画像216aが表示され、設定操作装置209の上ボタンまたは下ボタンが押下されると、演出表示部200aの中央に、演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更を報知する画像である第3輝度設定変更画像216bが表示されることが記載されていると認められる。

以上の記載事項(ア)?(オ)及び認定事項(a)?(j)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(分説a?jは、本願補正発明の分説A?Jに対応させて付与した)。

「a 予め設定された始動条件の成立により、遊技者に遊技利益を付与するか否かを少なくとも決定するための判定処理を行い、前記遊技利益を付与するか否かが決定されると該決定結果を報知するための変動演出を実行する遊技機であって、
b 画像を表示する画像表示部からなる演出表示部200aを備え、演出表示部200aには、演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、その停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される演出表示装置200と、
c 遊技者の押下操作を受け付ける、上ボタン、下ボタン、左ボタン、右ボタンを備えた十字キーボタンで構成された設定操作装置209と、
d さまざまな音声を出力する、前枠106の上部の左右位置に設けられた音声出力装置206と、
e 演出役物装置202や遊技盤108等に設けられており、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される演出照明装置204と、
f 外枠102と、この外枠102にヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた中枠104と、この中枠104に、ヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた前枠106と、を備え、中枠104は、囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に遊技盤108が保持され、前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されており、
i 設定操作装置209の左ボタンまたは右ボタンが押下されると、演出表示部200aの中央に、音声出力装置206の音量を示す音量設定値の変更を報知する画像である第3音量設定変更画像216aが表示され、設定操作装置209の上ボタンまたは下ボタンが押下されると、演出表示部200aの中央に、演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更を報知する画像である第3輝度設定変更画像216bが表示される
j 遊技機100。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で周知技術の例として引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開2013-165784号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0027】
遊技領域31に配設された第1入賞口61の左右方向には、一対の下部装飾部材69;69が配設される。下部装飾部材69;69は、遊技領域31の外周部より内側方向にせり出して延出する光透過性の収容体であって、内部にそれぞれ発光部40Aが収容される。発光部40Aは、ドライバ回路と複数のLEDが実装された基板からなり、サブ制御装置200によって制御される。また、複数のLEDの発光は下部装飾部材69;69の前面から視認可能である。」

ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で周知技術の例として引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開2014-171736号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図5は本発明をパチンコ機に採用した第1の実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の前側に左右一側、例えば左側のヒンジ3により開閉自在に枢着された前枠4とを備えている。
【0024】
前枠4には、その上部側に遊技盤5等が、下部側に発射手段6等が夫々配置されており、その前枠4の前側には、遊技盤5の前側を覆うガラス扉7と、そのガラス扉7の下側で発射手段6等の前側を覆う下部開閉扉8とがヒンジ3と同じ側のヒンジ9により開閉及び着脱自在に枢着されている。
【0025】
ガラス扉7には、遊技盤5の前面側に設けられた遊技領域10に対応するガラス窓11が設けられており、遊技者は遊技機本体1の前側からこのガラス窓11を介して遊技領域10内の様子を視認可能となっている。また、ガラス扉7の前面側は、ガラス窓11を除く略全面が合成樹脂製の前面パネル12により覆われている。
・・・
【0027】
また、前枠4の前側には、例えば上部側に2個、下部側に1個の計3個のスピーカ19が配置されると共に、図2に示すようにガラス窓11を除く略全面(周辺領域の一例)にわたって多数の枠側LED(周辺発光体)20が配置されている。この枠側LED20は、ガラス扉7上の前面パネル12内に配置される枠上部LED20aと、下部開閉扉8上のカバーパネル18内に配置される枠下部LED20bとで構成されている。」

(イ)【図2】


エ 引用文献4
周知技術の例として引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開2015-97553号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0023】
パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠100と、外枠100に開閉可能に取り付けられた前面枠101と、で主に構成されている。前面枠101の前面には、ガラス扉枠102及び下扉枠103がそれぞれ一側を中心に開閉可能に設けられている。
・・・
【0028】
ガラス扉枠102の背面には、前面枠101に対して着脱可能に取り付けられた遊技盤6が配置されている。尚、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が形成されている。
・・・
【0046】
遊技領域7の外側の左右上部には、効果音を発する2つのスピーカ27L,27Rが設けられ、左右下部には、効果音を発する2つのスピーカ27a,27bが設けられている。尚、以下の説明では、スピーカ27L,27R,27a,27bと総称してスピーカ27と表記する場合がある。遊技領域7の外周には、回転体用LED等の各種LEDが内蔵される天ランプモジュール530と、左枠LED28b(図3参照)が内蔵される左発光部28Lおよび右枠LED28c(図3参照)が内蔵される右発光部28Rが設けられている。さらに、遊技領域7における各構造物(大入賞口等)の周囲には装飾LEDが設置されている。これら回転体用LED、左枠LED28bおよび右枠LED28cおよび装飾用LEDは、パチンコ遊技機1に設けられている装飾発光体の一例である。」

(イ)「【0265】
図27及び図28は、図20に示されたサブCPUタイマ割込処理における演出設定調整処理を示すフローチャートである。演出設定調整処理では、CPU86は、先ず、演出図柄プロセスフラグが0であるか否かを判定する(ステップSh1)。演出図柄プロセスフラグが0でない場合は(ステップSh1;No)、ステップSh20に進み、演出図柄プロセスフラグが0である場合は(ステップSh1;Yes)、保留記憶があるか否かを判定する(ステップSh2)。保留記憶数の有無は、主基板31から受信した演出制御コマンドに含まれる第1保留記憶数通知及び第2保留記憶数通知のコマンドを参照すれば良い。保留記憶がある場合は(ステップSh2;Yes)、ステップSh20に進み、保留記憶数が無い場合は(ステップSh2;No)、コマンド受信バッファに未解析コマンドが有るか否かを判定する(ステップSh3)。コマンド受信バッファに未解析コマンドがある場合は(ステップSh3;Yes)、ステップSh20に進み、コマンド受信バッファに未解析コマンドが無い場合は(ステップSh3;No)、遊技者によって操作ボタン516の長押し操作有りか否かを判定する(ステップSh4)。つまり、本実施例では、大当り遊技中または小当り遊技中でなく、且つ保留記憶が存在せず演出図柄が変動していない場合に限り遊技者によって操作ボタン516の長押し操作有りか否かを判定している。
【0266】
操作ボタン516の長押し操作が無い場合は(ステップSh4;No)、ステップSh20に進み、操作ボタン516の長押し操作が有る場合は(ステップSh4;Yes)、節電モードであるか否か、つまり、設定切替スイッチ300のチャンネルが遊技者により音量及び光量の設定を調整しないチャンネル3またはチャンネル4に設定されているか否かを判定する(ステップSh5)。節電モードである場合は(ステップSh5;Yes)、音量・光量を調整しない旨を、演出表示装置9の表示画面に遊技者による表示や、スピーカ27L,27R,27a,27bによるエラー音の出力等により報知する音量・光量調整制限報知の実行中であるか否かを判定する(ステップSh11)。音量・光量調整制限報知の実行中でない場合には、音量・光量調整制限報知を開始するとともに、音量・光量調整制限報知の実行期間に対応する値を報知タイマにセットした後(ステップSh12)、演出設定調整処理を終了する。
【0267】
一方、音量・光量調整制限報知の実行中である場合(ステップSh11;Yes)には、ステップSh13に進んで、報知タイマをマイナス1した後、該マイナス後の報知タイマがタイマアップしたか否かを判定し(ステップSh14)、タイマアップしていない場合(ステップSh14;No)には演出設定調整処理を終了し、タイマアップしている場合(ステップSh14;Yes)には音量・光量調整制限報知を終了して演出設定調整処理を終了する。
【0268】
また、節電モードでない場合は(ステップSh5;No)、設定切替スイッチ300により設定されているチャンネルがチャンネルB?チャンネルFのいずれかであるか否かを判定する(ステップSh6)。設定切替スイッチ300により設定されているチャンネルがチャンネルB?チャンネルFのいずれかである場合は(ステップSh6;Yes)、演出表示装置9の画面に、音量を『2?14』の範囲で調整可能且つ、光量を『100%』、『75%』、『50%』のから調整可能な設定調整画面を表示し(図24参照)(ステップSh7)、ステップSh11に進む。
【0269】
設定切替スイッチ300により設定されているチャンネルがチャンネルB?チャンネルFのいずれでもない場合は(ステップSh6;No)、設定切替スイッチ300により設定されているチャンネルがチャンネル5?チャンネルAのいずれかであるか否かを判定する(ステップSh8)。設定切替スイッチ300により設定されているチャンネルがチャンネル5?チャンネルAのいずれかである場合は(ステップSh8;Yes)演出表示装置9の画面に、音量を『2?9』の範囲で調整可能且つ、光量を『100%』、『65%』、『30%』のから調整可能な設定調整画面を表示し(ステップSh9)、ステップSh11に進む。
【0270】
設定切替スイッチ300により設定されているチャンネルがチャンネル5?チャンネルAのいずれでもない場合は(ステップSh8;No)演出表示装置9の画面に、音量を『0?1』の範囲で調整可能且つ、光量を『100%』、『65%』、『30%』のから調整可能な設定調整画面を表示し(ステップSh10)、ステップSh11に進む。
【0271】
尚、これらステップSh7、ステップSh9及びステップSh10における設定調整画面では、具体的には、図31に示すように、スピーカ27L,27R,27a,27bの音量を各ステップにおいて定められた範囲で操作レバー600によって選択可能なダイアログと、装飾LED25a、ステージ装飾LED25b、天ランプモジュール530、左枠LED28b、右枠LED28c、バックライト9dの光量を各ステップにおいて定められた範囲で操作レバー600によって選択可能なダイアログとが表示されている。遊技者は、操作レバー600を前後に傾動させることで両ダイアログの内から1のダイアログを選択可能となっているとともに、操作レバー600を左右に傾動させることで、選択したダイアログにおける音量または光量を変更可能となっている。そして、遊技者は、最後に操作ボタン516を操作することで、スピーカ27L,27R,27a,27bの音量及び装飾LED25a、ステージ装飾LED25b、天ランプモジュール530、左枠LED28b、右枠LED28c、バックライト9dの光量の設定操作を実行することで、該設定操作における音量及び光量を遊技者設定値として設定可能となっている。つまり、遊技者は、操作レバー600を上下に傾動させることで、音量と光量とから変更を所望する設定を選択し、該選択の後に操作レバー600の左右への傾動と操作ボタン516の操作により、音量と光量とを独立して設定することが可能となっている。」

(ウ)図1


(エ)図31


オ 引用文献5
周知技術の例として引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開2012-85858号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0061】
図5は、客待ちモードにおいて画像表示部21に表示される客待ち画面の一例を示している。客待ち画面には、遊技機1の演出動作に関する各種調整項目の調整を遊技者が行うことが可能な遊技者用の調整モード(以下、ユーザ調整モードと称す)へと移行するためのコマンド(本実施形態では、演出キー58の中央キー58Eの押下)を示す案内画像70が含まれている。客待ちモードにおいて遊技者が当該コマンドを入力する(すなわち、演出キー58の中央キー58Eを押下する)と、遊技機1の動作モードが客待ちモードからユーザ調整モードへと移行する。
・・・
【0066】
図8は、ユーザ調整モードにおいて画像表示部21に表示されるユーザ調整画面の一例を示している。ユーザ調整画面には、「画面輝度」、「ランプ輝度」等の各種調整項目と、それぞれの調整項目の設定値(「暗い?明るい」等)が表示されている。また、ユーザ調整画面の下部には、ホール調整画面と同様に、調整項目の選択や、設定値の変更や、ユーザ調整モードを終了させるための演出キー58の操作方法を示す案内画像が表示されている。演出キー58の中央キー58Eが押下されると、ユーザ調整モードから客待ちモードへと復帰する。
・・・
【0086】
次に、図12のフローチャートを参照して、図10のステップS18のユーザ調整処理について詳細に説明する。
【0087】
図12のステップS30において、CPU401は、例えば図8に示すようなユーザ調整画面を画像表示部21に表示する(より正確には、ユーザ調整画面を表示するように指示するコマンドを、画像音響制御部500に送信する)。
【0088】
ステップS31において、CPU401は、演出キー58から出力される操作データに基づいて、カーソル71の移動(すなわち、調整項目の選択)およびユーザ設定値の変更(すなわち、RAM403に格納されている各調整項目のユーザ設定値の更新)を行う。」

(イ)図8


(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(見出しa?jは、本願補正発明の分説A?Jに対応させて付与した)。

a 引用発明の「a 予め設定された始動条件の成立により、遊技者に遊技利益を付与するか否かを少なくとも決定するための判定処理を行い、前記遊技利益を付与するか否かが決定されると該決定結果を報知するための変動演出を実行する遊技機」は、本願補正発明の「A 始動条件の成立に基づき、識別情報が変動するゲームを実行可能な遊技機」に相当する。

b 引用発明の「b 画像を表示する画像表示部からなる演出表示部200aを備え、演出表示部200aには、演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、その停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される演出表示装置200」は、本願補正発明の「B 前記ゲームに対応する演出表示を表示可能な表示装置」に相当する。

c 引用発明の「c 遊技者の押下操作を受け付ける、上ボタン、下ボタン、左ボタン、右ボタンを備えた十字キーボタンで構成された設定操作装置209」は、本願補正発明の「C 遊技者が操作可能な操作手段」に相当する。

d 引用発明の「音声出力装置206」は、「左右位置に設けられ」ているから、複数あることは明らかであり、引用発明の「d さまざまな音声を出力する、前枠106の上部の左右位置に設けられた音声出力装置206」は、本願補正発明の「D 所定の音を出力可能な複数の音出力手段」に相当する。

e 引用発明の「演出照明装置204」は、「演出役物装置202や遊技盤108等に設けられ」ているから、複数あることは明らかであり、引用発明の「e 演出役物装置202や遊技盤108等に設けられており、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される演出照明装置204」は、本願補正発明の「E 発光可能な複数の発光手段」に相当する。

f 本願補正発明の音出力手段と発光手段が配設される「本体枠」について、発明の詳細な説明に「【0009】 本実施形態の遊技機10は前面枠12を備え、該前面枠12は外枠(支持枠)11に開閉回動可能に組み付けられている。遊技盤30(図2参照)は前面枠12の表側に形成された収納部(図示省略)に収納されている。また、前面枠(本体枠)12には、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス(透明部材)14を備えたガラス枠15(透明板保持枠)が取り付けられている。
【0010】 また、ガラス枠15の左右には内部にランプやLED等を内蔵し装飾や演出、および異常発生時の報知(例えば、払出異常が発生した場合はランプやLED等を異常報知色(例えば、赤色)で点灯(点滅)させる)のための発光をする枠装飾装置18や、音響(例えば、効果音)を発するスピーカ(上スピーカ)19aが設けられている。・・・」と記載されていることからすると、本願補正発明の「本体枠」は、実施形態における、カバーガラス(透明部材)14を備えた「ガラス枠15」が対応するものであり、引用発明においては「前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されて」いることからして、引用発明の「前枠106」が本願補正発明の「本体枠」に相当する。
そして、引用発明においては「音声出力装置206」は「前枠106」「に設けられ」ている(構成d)一方、「演出照明装置204」は「演出役物装置202や遊技盤108等に設けられ」ている(構成e)。
そうすると、引用発明の構成d、e、fと、本願補正発明の「F 前記複数の音出力手段と前記複数の発光手段は、ともに本体枠に配設され」とは、「F’ 前記複数の音出力手段は、本体枠に配設され」る点で共通する。

i 引用発明の「音声出力装置206の音量を示す音量設定値の変更を報知する画像である第3音量設定変更画像216a」は、本願補正発明の「前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像」に相当する。また、引用発明の「演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更を報知する画像である第3輝度設定変更画像216b」は、本願補正発明の「前記発光手段の光量調整に関連する画像」と、「明るさの調整に関連する画像」で共通するといえる。
そうすると、引用発明の「i 設定操作装置209の左ボタンまたは右ボタンが押下されると、演出表示部200aの中央に、音声出力装置206の音量を示す音量設定値の変更を報知する画像である第3音量設定変更画像216aが表示され、設定操作装置209の上ボタンまたは下ボタンが押下されると、演出表示部200aの中央に、演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更を報知する画像である第3輝度設定変更画像216bが表示される」ことと、本願補正発明の「I 前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を同時に表示可能である」こととは、「I’ 前記表示装置は、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、明るさの調整に関連する画像と、を表示可能である」ことで、共通する。

j 引用発明の「j 遊技機100」は、本願補正発明の「J 遊技機」に相当する。

上記a?jによれば、本願補正発明と引用発明とは、
「A 始動条件の成立に基づき、識別情報が変動するゲームを実行可能な遊技機において、
B 前記ゲームに対応する演出表示を表示可能な表示装置と、
C 遊技者が操作可能な操作手段と、
D 所定の音を出力可能な複数の音出力手段と、
E 発光可能な複数の発光手段と、を備え、
F’ 前記複数の音出力手段は、本体枠に配設され
I’ 前記表示装置は、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、明るさの調整に関連する画像と、を表示可能である
J 遊技機。」
である点で一致し、次の3点で相違する。

相違点1 本願補正発明は「複数の発光手段は」「本体枠に配設され」る(構成F)のに対し、引用発明では、「演出照明装置204」は「演出役物装置202や遊技盤108等に設けられ」ている(構成e)点。

相違点2 本願補正発明では、明るさの調整に関連する画像は「発光手段の光量調整に関連する画像」であり、音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、発光手段の光量調整に関連する画像と、を「同時に」表示可能である(構成I)のに対し、引用発明では、明るさの調整に関連する画像は「演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更を報知する画像」であり、また、音量設定値の変更を報知する画像と輝度設定値の変更を報知する画像との表示が「同時」であることは特定されていない(構成i)点。

相違点3 本願補正発明は「G 前記複数の音出力手段のうちの一の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第1直線又は第1平面と、前記複数の音出力手段のうちの他の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第2直線又は第2平面とにより仮想的に規制された第1仮想規制領域が形成され、
H 前記複数の発光手段のうちの一の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第3直線又は第3平面と、前記複数の発光手段のうちの他の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第4直線又は第4平面とにより仮想的に規制された第2仮想規制領域が形成され」、「前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に」「前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を」表示可能である(構成I)のに対し、引用発明では、変更を報知する画像が表示される場所は「演出表示部200aの中央」である(構成i)点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について
上記(2)ウで示したように、引用文献3には、前枠4の前側に、ガラス窓11を除く略全面のガラス扉7上の前面パネル12内に、枠上部LED20aを配置することが記載されている。この引用文献3に記載された前枠4は、スピーカ19が配置されることからして、本願補正発明の「本体枠」に相当するものである。
また、上記(2)エ(ア)及び(ウ)で示したように、引用文献4には、遊技領域7の外周には、左枠LED28bが内蔵される左発光部28Lおよび右枠LED28cが内蔵される右発光部28Rが設けられていることが記載されている。この遊技領域7は遊技盤6の前面に形成されているものであり、遊技盤6は、ガラス扉枠102の背面に、前面枠101に対して着脱可能に取り付けられるものであること、また、遊技領域7の外側の左右上部には、スピーカ27L,27Rが設けられていることからして、左発光部28L及び右発光部28Rが設けられることとなるガラス扉枠102は、本願補正発明の「本体枠」に相当するものである。
これら引用文献3及び引用文献4の記載によれば、複数の発光手段を本体枠に設けることは、周知の技術であるといえる(以下「周知技術1」という)。
そして、引用発明の「演出照明装置204」は、「演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される」ものであり、演出のために配置される場所としては「演出役物装置202や遊技盤108」に限られるものではないから、引用発明に周知技術1を適用し、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2について
上記(2)エ(イ)及び(エ)で示したように、引用文献4には、演出設定調整処理として、演出表示装置9の画面に、設定切替スイッチ300の設定に応じた範囲で、音量及び光量を調整可能な設定調整画面を表示し、遊技者は、操作レバー600の上下及び左右の傾動により、音量と光量とを独立して設定できることが記載されている。また、調整する光量としては、「装飾LED25a、ステージ装飾LED25b、天ランプモジュール530、左枠LED28b、右枠LED28c」と「バックライト9d」の光量があること(【0271】)が、記載されている。
また、上記(2)オで示したように、引用文献5には、ユーザ調整モードにおいて画像表示部21に表示されるユーザ調整画面として、「画面輝度」、「ランプ輝度」及び「音量」等の各種調整項目と、それぞれの調整項目の設定値(「暗い?明るい」、「小さい?大きい」等)が表示され、演出キー58から出力される操作データに基づいて、調整項目の選択及びユーザ設定値の変更が行われることが記載されている。
これら引用文献4及び引用文献5の記載によれば、音量の調整画面と、画面の輝度やランプの輝度の調整画面とを、同時に表示することは、周知の技術であるといえる(以下「周知技術2」という)。
引用発明は、「演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更」をしようとするものであるが、輝度の調整として画面の輝度のみならずランプの輝度を調整しようとすることは、上記周知技術2に示すとおりである。また、音量の調整画面と輝度の調整画面とを同時に表示することも上記周知技術2に示すとおりであるところ、引用発明は、「左ボタンまたは右ボタン」が押下されると音量設定値の変更を報知する画像が、「上ボタンまたは下ボタン」が押下されると輝度設定値の変更を報知する画像が表示されるものであり、音量の変更及び輝度の変更は、それぞれ異なるボタンに割り当てられているものであるから、音量設定値と輝度設定値それぞれの変更を報知する画像が同時に表示されたとしても、引用文献4及び引用文献5それぞれに記載されたものと同様、異なるボタンの操作によりそれぞれの変更ができるものである。そうすると、引用発明に、周知技術2を適用し、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
上記ア及びイで示したように、引用発明に、周知技術1及び周知技術2を適用した遊技機(以下、「遊技機A」という。)について、検討する。
遊技機Aは、前枠106の上部の左右位置に音声出力装置206が設けられており(構成e)、これらのうちの一の音声出力装置206と設定操作装置209とを通る第1直線又は第1平面と、他の音声出力装置206と設定操作装置209とを通る第2直線又は第2平面とを想定することができ、これら第1直線又は第1平面と、第2直線又は第2平面とにより形成された第1領域を想定することができる。
また、遊技機Aの、複数の発光手段が設けられる位置については、引用文献3に示される、前枠4の前側で、ガラス窓11を除く略全面のガラス扉7上の前面パネル12内や、引用文献4に示される、遊技領域7の外周の左発光部28L及び右発光部28Rに共通するような、遊技機Aの前枠106の左右の位置とすることが考えられる。そのような構成において、遊技機Aの前枠106の左に設けられた発光手段と設定操作装置209とを通る第3直線又は第3平面と、前枠106の右に設けられた発光手段と設定操作装置209とを通る第4直線又は第4平面とを想定することができ、これら第3直線又は第3平面と、第4直線又は第4平面とにより形成された第2領域を想定することができる。
そして、遊技機Aにおいて、音声出力装置206が設けられる位置は、前枠106の上部の左右位置であって、複数の発光手段が設けられることとなる位置である前枠106の左右の位置より上の位置であるから、上記第1領域と第2領域とは、第1領域で重複することとなる。また、引用文献1の【図2】(上記(2)ア(オ))を参照すると、上記第1領域は、演出表示部200aの中央を含めて多くの領域を覆うこととなる。
そうすると、遊技機Aは、上述のとおり第1領域及び第2領域を想定することができ、音量設定値と輝度設定値それぞれの変更を報知する画像が同時に表示されることとなる演出表示部200aの中央は、第1領域と第2領域とが重複する領域内のものであるから、遊技機Aは本願補正発明の相違点3に係る構成を有するものである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、
「つまり、引用文献1には、本願のように輝度の調整画像を第2仮想規制領域内に表示するという技術的思想は開示されておらず、したがって第1仮想規制領域と第2仮想規制領域が重複する領域内に音量の調整画像と輝度の調整画像を同時に表示するという技術的思想も当然ながら開示されておりません。なお、引用文献2、3には音量や輝度を示す画像の表示位置についての記載や示唆はありません。
このように、引用文献1から3には本願発明の特徴部分の一つである第2仮想規制領域という概念が一切開示されておらず、このような引用文献1から3に接した当業者がこれらの記載に基づいて「第1仮想規制領域と第2仮想規制領域が重複する領域内に音量の調整画像と輝度の調整画像を同時に表示する」という構成を想到することは到底考えられません。
本願発明は、第1仮想規制領域や第2仮想規制領域という仮想的な領域を考慮するという従来にない観点からの画像配置を特徴とするものであり、上述したようにこのような特徴は本願の出願以前に存在していたものではなく、このような構成を想到したこと自体が従来技術に対する大きな進歩となります。
そしてこのような特徴により、音量の調整に関する仮想規制領域に音量の調整画像を配置するとともに、輝度の調整に関する仮想規制領域に輝度の調整画像を配置するので分かり易い調整を行うことができます。更に音量の調整に関する仮想規制領域と輝度の調整に関する仮想規制領域の重複する領域に音量の調整画像と輝度の調整画像を配置したので、調整に対する遊技者の視線の移動量が小さくなり、操作手段、発光手段や音出力手段に対してより自然な流れで視線を移動させることができます。さらに、音量の調整画像と光量の調整画像を同時に表示するようにしているので、音量と光量の両方を調整する際にも画像の切り替わりがなく、視線を移動させることなく両方の状態を確認することができます。
したがって、音量の調整画像や光量の調整画像といった遊技に関する重要度の高い情報が視認し易く遊技の興趣が向上します。また、遊技者が音量の調整画像及び光量の調整画像を視認し易いことから、遊技中等に音量調整及び光量調整を行い易くすることができます。」
と主張している。
しかし、請求人が主張するように、引用文献1には、第1仮想規制領域と第2仮想規制領域が重複する領域内に音量の調整画像と輝度の調整画像を表示するという技術的思想が開示されていないとしても、上記(4)ア及びウで示したとおりである。
また、請求人が主張する「したがって、音量の調整画像や光量の調整画像といった遊技に関する重要度の高い情報が視認し易く遊技の興趣が向上します。また、遊技者が音量の調整画像及び光量の調整画像を視認し易いことから、遊技中等に音量調整及び光量調整を行い易くすることができます」との点についても、上記(4)ウ及びエで示したとおりであり、引用発明に上記周知技術1及び周知技術2を適用した構成(「遊技機A」)において、音量設定値と輝度設定値それぞれの変更を報知する画像が同時に第1領域と第2領域とが重複する領域に表示されることで、請求人が主張するような効果を奏することができること、及び、本願においても、【図181】、【図185】の記載からみて、第1仮想規制領域と第2仮想規制領域が重複する領域は、表示装置の中央を含む相当程度の面積を有することを考慮すれば、本願補正発明は、従前の遊技機が有し得ていた事項について、それを示す記述を新たに作出したにすぎないものである。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正の却下の決定についてのむすび
上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正(令和1年6月14日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年2月27日付け手続補正書により補正された、上記第2[理由]1で示した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
始動条件の成立に基づき、識別情報が変動するゲームを実行可能な遊技機において、
前記ゲームに対応する演出表示を表示可能な表示装置と、
遊技者が操作可能な操作手段と、
所定の音を出力可能な複数の音出力手段と、
発光可能な複数の発光手段と、を備え、
前記複数の音出力手段のうちの一の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第1直線又は第1平面と、前記複数の音出力手段のうちの他の音出力手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第2直線又は第2平面とにより仮想的に規制された第1仮想規制領域が形成され、
前記複数の発光手段のうちの一の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第3直線又は第3平面と、前記複数の発光手段のうちの他の発光手段と操作手段の所定位置とを通る仮想的な第4直線又は第4平面とにより仮想的に規制された第2仮想規制領域が形成され、
前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を表示可能であることを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概略


理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由2.(特許法第29条第2項)
・請求項1
引用文献1?3

<引用文献等一覧>
1.特開2016-172177号公報
2.特開2013-165784号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2014-171736号公報(周知技術を示す文献)


3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1の記載事項は、上記第2[理由]3(2)アに記載したとおりである。

4 対比
本願補正発明は、上記第2[理由]2で示したとおり、本願発明に対して、「複数の音出力手段」及び「複数の発光手段」が、「ともに本体枠に配設され」と限定するとともに、「前記表示装置は、前記第1仮想規制領域と前記第2仮想規制領域が重複する仮想規制領域内に、前記音出力手段から出力される所定の音の音量調整に関連する画像と、前記発光手段の光量調整に関連する画像と、を」「表示可能である」を、「同時に」表示可能であると限定したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2[理由]3(3)で示した相違点3で相違するとともに、次の相違点4で相違する。

相違点4 本願発明では、「前記発光手段の光量調整に関連する画像」を表示可能であるのに対し、引用発明では、表示される画像は、「演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値の変更を報知する画像」である点。

5 判断
(1) 相違点4について
上記第2[理由]3(2)イで示したように、引用文献2には、遊技領域31の左右方向には、遊技領域31の外周部より内側方向にせり出して延出する光透過性の収容体であって、内部にそれぞれ発光部40Aが収容される、一対の下部装飾部材69;69が配設されることが記載されている。
また、上記第2[理由]3(2)ウで示したように、引用文献3には、前枠4の前側に、ガラス窓11を除く略全面のガラス扉7上の前面パネル12内に、枠上部LED20aを配置することが記載されている。
これら引用文献2及び引用文献3の記載によれば、遊技領域31の左右の外周部に複数の発光手段を設けることは、周知の技術であるといえる(以下「周知技術3」という)。
そして、引用発明の「演出照明装置204」は、「演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される」ものであり、演出のために配置される場所としては「演出役物装置202や遊技盤108」に限られるものではないから、引用発明に周知技術3を適用することは、当業者であれば容易になし得たことである。その際に、引用発明において、演出表示部200aの輝度を示す輝度設定値を変更するのみならず、周知技術3の発光手段の輝度も変更できるようにすることは、周知技術3の適用にあたり、当業者であれば容易になし得た範囲内のことである。

(2) 相違点3について
上記(1)で示したように、引用発明に周知技術3を適用した遊技機において、上記第2[理由]3(4)ウで示したことと同様に、第1直線又は第1平面と、第2直線又は第2平面とにより形成された第1領域、及び、第3直線又は第3平面と、第4直線又は第4平面とにより形成された第2領域を想定することができ、第1領域と第2領域とは、第1領域で重複することとなり、音量設定値と輝度設定値それぞれの変更を報知する画像が表示される演出表示部200aの中央は、第1領域と第2領域とが重複する領域内のものである。
そうすると、引用発明に、上記周知技術3を適用した遊技機は、本願発明の相違点3に係る構成を有するものである。

(3)以上の相違点を総合的に勘案しても、本件発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術3の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-06 
結審通知日 2020-01-07 
審決日 2020-01-20 
出願番号 特願2016-223075(P2016-223075)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 田邉 英治
赤坂 祐樹
発明の名称 遊技機  
代理人 荒船 良男  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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