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審決分類 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G03B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03B
管理番号 1360458
異議申立番号 異議2019-700320  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-23 
確定日 2020-01-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6409925号発明「撮像装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6409925号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 特許第6409925号の請求項1,2及び7に係る特許を維持する。 特許第6409925号の請求項3ないし6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6409925号(請求項の数7。以下,「本件特許」という。)に係る出願(特願2017-156346号。以下,「本件特許出願」という。)は,平成19年10月27日(優先権主張 平成19年9月19日)に出願した特願2007-279727号の一部を平成24年7月17日に新たな特許出願(特願2012-158646号)とし,当該特願2012-158646号の一部を平成24年11月16日に新たな特許出願(特願2012-252749号)とし,当該特願2012-252749号の一部を平成25年11月20日に新たな特許出願(特願2013-239614号)とし,当該特願2013-239614号の一部を平成28年1月4日に新たな特許出願(特願2016-295号)とし,当該特願2016-295号の一部を平成29年8月14日に新たな特許出願としたものであって,平成30年10月5日に特許権の設定登録がされたものである。
同年10月24日に本件特許について特許掲載公報の発行がなされたところ,平成31年4月23日に特許異議申立人(以下,「申立人」という。)より請求項1ないし7に係る特許に対して特許異議の申立てがされ,令和1年7月22日付けで特許権者に取消理由が通知され,同年9月24日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ,同年11月27日に申立人より意見書が提出された。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)訂正前後の記載
本件訂正の請求の趣旨は,本件特許の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし7について訂正することを求める,というものである。なお,訂正前の請求項1ないし7は,請求項2ないし7が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから,一群の請求項である。
本件訂正による訂正前後の明細書のうち訂正箇所を含む段落,及び特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 本件訂正前
「【0005】
請求項1に記載した本発明に係る撮像装置は,上述した目的を達成するために,撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すロール方向傾き情報を表示し,
撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替えないことを特徴としている。
請求項2に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項1の撮像装置であって,
前記表示制御手段は,前記傾き情報の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴としている。
【0006】
請求項3に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項1または請求項2の撮像装置であって,
前記傾き情報は,ロール方向の傾き量に応じた傾きを示すロール角傾き情報であり,
前記表示制御手段は,前記ロール角傾き情報に対応する表示である傾きガイドを表示することを特徴としている。
請求項4に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項3に記載の撮像装置であって,
前記傾きガイドは,前記撮像装置のロール方向の傾き量が小さい状態から大きくなった際には,表示スケールの色を変える構成としたことを特徴としている。
請求項5に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項3または請求項4の撮像装置であって,
前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲内であるときにのみ前記ロール角傾き情報を表示することを特徴としている。
【0007】
請求項6に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項3?請求項5のいずれか1項の撮像装置であって,
前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲を超えたとき前記傾きガイドの表示形態を変更することを特徴としている。
請求項7に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項1に記載のロール方向の傾きが60度であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,撮像装置のロール方向の傾きに応じて傾き情報の表示位置を見易い位置に変化させ,操作性を向上させ得る撮像装置を提供することができる。
即ち,本発明の請求項1の撮像装置によれば,撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すロール方向傾き情報を表示し,
撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替えないことにより,
撮像装置を構えたときのロール方向の傾きに応じて画像表示部における傾き情報が見易くなって,正確に把握することができ,延いては操作性を向上させることができる。
【0009】
本発明の請求項2の撮像装置によれば,前記表示制御手段は,前記傾き情報の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることにより,傾きガイド情報を容易に把握することができる。
本発明の請求項3の撮像装置によれば,前記傾き情報は,ロール方向の傾き量に応じた傾きを示すロール角傾き情報であり,
前記表示制御手段は,前記ロール角傾き情報に対応する表示である傾きガイドを表示することにより,ロール方向の傾きを直感的に容易に把握することができる。
【0010】
本発明の請求項4の撮像装置によれば,前記傾きガイドは,前記撮像装置のロール方向の傾き量が小さい状態から大きくなった際には,表示スケールの色を変える構成としたことにより,表示スケールの色の変化をもってロール方向の傾き量を直感的に把握することができる。
【0011】
本発明の請求項5の撮像装置によれば,前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲内であるときにのみ前記ロール角傾き情報を表示することにより,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲を越えることによるロール角の検出精度の低下を来さないようにユーザに容易且つ正確に把握させることができる。
本発明の請求項6の撮像装置によれば,前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲を超えたとき前記傾きガイドの表示形態を変更することにより,傾き検出の精度を維持できるピッチ角の範囲を外れた場合に,それを傾きガイド表示によって,確実に把握することができ,容易に傾き検出の精度を維持できるピッチ角の範囲内で使用することが可能となる。
【0012】
本発明の請求項7の撮像装置によれば,請求項1に記載のロール方向の傾きが60であることにより,
撮像装置を横位置または縦位置に備えた状態からロール方向に60度を越えるまで傾けた場合に,傾き情報の表示位置が切り替わるため,ロール方向の傾きを的確に把握することが可能となる。」
「【請求項1】
撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すロール方向傾き情報を表示し,
撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替えないことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は,前記傾き情報の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記傾き情報は,ロール方向の傾き量に応じた傾きを示すロール角傾き情報であり,
前記表示制御手段は,前記ロール角傾き情報に対応する表示である傾きガイドを表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記傾きガイドは,前記撮像装置のロール方向の傾き量が小さい状態から大きくなった際には,表示スケールの色を変える構成としたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲内であるときにのみ前記ロール角傾き情報を表示することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲を超えたとき前記傾きガイドの表示形態を変更することを特徴とする請求項3?請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載のロール方向の傾きは60度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。」

イ 本件訂正後
「【0005】
請求項1に記載した本発明に係る撮像装置は,上述した目的を達成するために,撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し,
撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴としている。
請求項2に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項1の撮像装置であって,
前記表示制御手段は,前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴としている。
【0006】(削除)
【0007】
請求項7に記載した本発明に係る撮像装置は,前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,撮像装置のロール方向の傾きに応じて傾き情報の表示位置を見易い位置に変化させ,操作性を向上させ得る撮像装置を提供することができる。
即ち,本発明の請求項1の撮像装置によれば,撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことにより,
撮像装置を構えたときのロール方向の傾きに応じて画像表示部における傾き情報が見易くなって,正確に把握することができ,延いては操作性を向上させることができる。
【0009】
本発明の請求項2の撮像装置によれば,前記表示制御手段は,前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることにより,傾きガイド情報を容易に把握することができる。
【0010】(削除)
【0011】(削除)
【0012】
本発明の請求項7の撮像装置によれば,前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることにより,
撮像装置を横位置または縦位置に備えた状態からロール方向に60度を越えるまで傾けた場合に,傾き情報の表示位置が切り替わるため,ロール方向の傾きを的確に把握することが可能となる。」
「【請求項1】
撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は,前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。」

(2)訂正事項
本件訂正は,次の訂正事項からなる。(なお,訂正請求書において特許権者が訂正事項2及び訂正事項3としている訂正事項,ならびに訂正事項5ないし8としている訂正事項を,それぞれ1つの訂正事項として整理した。)
ア 訂正事項1
請求項1に「ロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すロール方向傾き情報を表示し」と記載されているのを「ロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し」と訂正し,「前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替える表示制御手段」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段」と訂正し,「前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替え,」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,」と訂正し,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置」と記載されているのを「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置」と訂正する。

イ 訂正事項2
請求項1に「切り替えないことを特徴とする撮像装置。」と記載されているのを「切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴とする撮像装置。」と訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項2に「前記傾き情報の表示位置」と記載されているのを「前記傾きガイド表示の表示位置」と訂正する。

エ 訂正事項4
請求項3ないし6を削除する。

オ 訂正事項5
請求項7に「請求項1に記載のロール方向」と記載されているのを「前記ロール方向」と訂正する。

カ 訂正事項6
請求項7に「傾きは60度である」と記載されているのを「傾きの所定の範囲は±60度である」と訂正する。

キ 訂正事項7
明細書の【0005】に「ロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すロール方向傾き情報を表示し」と記載されているのを「ロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し」と訂正し,「前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替える表示制御手段」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段」と訂正し,「前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替え,」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,」と訂正し,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置」と記載されているのを「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置」と訂正し,「切り替えないことを特徴としている。」と記載されているのを「切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴としている。」と訂正し,「前記傾き情報の表示位置を」と記載されているのを「前記傾きガイド表示の表示位置を」と訂正する。

ク 訂正事項8
明細書の【0006】を削除する。

ケ 訂正事項9
明細書の【0007】の「請求項6に記載した本発明に係る撮像装置は,請求項3?請求項5のいずれか1項の撮像装置であって,
前記表示制御手段は,ピッチ方向の傾き量が所定の範囲を超えたとき前記傾きガイドの表示形態を変更することを特徴としている。」という記載を削除し,「請求項1に記載のロール方向の傾きが60度である」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度である」と訂正する。

コ 訂正事項10
明細書の【0008】に「ロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すロール方向傾き情報を表示し」と記載されているのを「ロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し」と訂正し,「前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替える表示制御手段」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段」と訂正し,「前記ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替え,」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,」と訂正し,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置」と記載されているのを「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置」と訂正し,「切り替えないことにより,」と記載されているのを「切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことにより,」と訂正する。

サ 訂正事項11
明細書の【0009】に「前記傾き情報の表示位置を」と記載されているのを「前記傾きガイド表示の表示位置を」と訂正し,「本発明の請求項3の撮像装置によれば,前記傾き情報は,ロール方向の傾き量に応じた傾きを示すロール角傾き情報であり,
前記表示制御手段は,前記ロール角傾き情報に対応する表示である傾きガイドを表示することにより,ロール方向の傾きを直感的に容易に把握することができる。」という記載を削除する。

シ 訂正事項12
明細書の【0010】及び【0011】を削除する。

ス 訂正事項13
明細書の【0012】に「請求項1に記載のロール方向の傾きが60であることにより,」と記載されているのを「前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることにより,」と訂正する。

2 訂正の目的の適否について
訂正事項1及び3による訂正は,本件訂正前には,ロール方向の傾きを示すこと以外はどのような表示であるのかが特定されていなかった請求項1,2及び7に係る発明の「ロール方向傾き情報」について,マーカを含むガイド表示であることを特定するものであるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項2による訂正は,請求項1,2及び7に係る発明に,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消す」という発明特定事項を付加するものであるから,同項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項4による訂正は,本件特許の特許請求の範囲から請求項3ないし6を削除するものであるから,同項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項5による訂正は,請求項7の「請求項1に記載の」という記載を,引用する請求項に記載されていた発明特定事項であることを示す表現として他の請求項において用いられている「前記」という記載に変更して,特許請求の範囲における表現を統一するものであるから,同項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
訂正事項6による訂正は,請求項1に記載された「ピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが『所定の範囲』を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,」という発明特定事項における『所定の範囲』が±60度の範囲であることを指すのか否かが明瞭でなかった請求項7の「ロール方向の傾きは60度である」という記載を,「ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度である」という明瞭な記載に訂正するものであるから,同項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
訂正事項7ないし13による訂正は,いずれも,明細書の記載を,訂正事項1ないし6により訂正される特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから,同項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

3 新規事項の追加の有無について
(1)訂正事項1及び3について
本件訂正前の願書に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面(特許された時点での明細書である。以下,特許された時点の明細書を「特許明細書」といい,特許された時点の明細書,特許請求の範囲及び図面を総称して「特許明細書等」という。)に記載された各実施の形態のうち,本件訂正前の請求項1に係る発明に対応する実施の形態は,特許明細書の【0045】及び【0046】に記載された「第13の実施の形態」である。そして,特許明細書等の【0045】及び【0046】の記載,並びに図21(a),図21(b)及び図22に示される事項からみて,当該「第13の実施の形態」においては,ロール角を示すマーカMを有する傾きガイド表示Gを,LCDモニタ5に表示していると認められる。
したがって,特許明細書等には,訂正事項1及び3による訂正後の請求項1,2及び7に係る発明に対応する実施の形態が記載されているから,訂正事項1及び3による訂正は,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消す」ことは,特許明細書の【0043】に記載されている。
当該【0043】の記載は,「第11の実施の形態」についての説明ではあるものの,本件訂正前の請求項1に係る発明に対応する実施の形態である「第13の実施の形態」においても,「第11の実施の形態」と同様に,ロール角の表示精度が低下したことを警告するために,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消す」よう構成できることは,特許明細書等の記載から自明であり,かつ,そのように構成することで,新たな技術上の意義や効果が生じるものでもない。
そうすると,訂正事項2による訂正は,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
イ なお,申立人は,令和元年11月27日に提出された意見書(以下,「申立人意見書」という。)において,訂正事項2は新規事項を追加する訂正であるから,本件訂正は拒絶されるべきであると主張する。当該主張の具体的理由は,要するに次のようなものである。
本件訂正後の請求項1に記載された「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾き情報の表示位置を切り替えない」という発明特定事項(以下,「構成A」という。)が,特許明細書等に記載された各実施の形態のうち「第13の実施の形態」のみが具備する構成であるのに対して,訂正事項2により付加される「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消す」という発明特定事項(以下,「構成B」という。)は,「第11の実施の形態」のみが具備する構成である。そして,「第13の実施の形態」は,最初から撮像装置が平伏せ状態となっている場合に限って,「第11の実施の形態」と同様に警告表示を行うものにすぎず,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合にマーカを消すという構成Bを有していないことは,特許明細書等の図22のフローチャートを参照しても明らかである。以上のとおり,特許明細書等に,構成Aと構成Bとを具体的に組み合わせた形態の開示はないので,訂正事項2は新規事項を追加する訂正である。
ウ しかしながら,「第13の実施の形態」が構成Bを有するものでないとしても,「第13の実施の形態」においても,「第11の実施の形態」と同様に,ロール角の表示精度が低下したことを警告するために,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消す」よう構成できること(構成Bを有するものにできること)は,特許明細書等の記載から自明であり,かつ,そのように構成することで,新たな技術上の意義や効果が生じるものでないから,訂正事項2による訂正が,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは,前記アで述べたとおりである。
したがって,申立人の主張は採用できない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は,本件特許の特許請求の範囲から請求項3ないし6を削除するという訂正事項であるから,訂正事項4による訂正が,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。

(4)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6による訂正後の請求項7に記載された「前記ロール方向の傾きの所定の範囲」とは,当該請求項7が直接又は間接的に引用する請求項1に記載された「ピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが『所定の範囲』を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,」という発明特定特定事項における「ロール方向の傾き」が超える『所定の範囲』のことであるから,訂正事項5及び6による訂正後の請求項7に係る発明は,ピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが60度を超えるか-60度より小さくなった場合は,ロール方向の傾きガイド表示の位置を切り替え,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合には,ロール方向の傾きが60度を超えるか-60度より小さくなっても,ロール方向の傾きガイド表示の位置を切り替えないよう構成されたものである。
これに対して,特許明細書の【0024】には,「撮像装置が図3(a)に示すような状態,即ち,撮像装置が水平に対し,0度±5度から±60度の範囲である場合は,ロール角を示す表示スケールB1を,LCDモニタ5の表示画面に対して横向き(撮像装置の表示画面の長手方向に沿う方向)状態で前記画面に表示するように構成することができる。・・・(中略)・・・さらに,ロール角が図4(b)に示すように,±60度を越えると画面表示を縦向き状態(縦位置)に切り替えるように構成することができる。」と記載されているところ,当該【0024】の記載は,各実施の形態に共通する説明である。
また,特許明細書の【0046】の記載によると,「第13の実施の形態」は,Xt=n及びYt=nの出力値が共に0.1G以下のとき,すなわちピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えたときには,どちらかの出力値が0.1G以上になるまで傾きガイド表示のバーの位置を固定するよう構成されたものである。
したがって,特許明細書等の記載から,ピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが±60度を超えた場合は,ロール方向の傾きガイド表示の位置を切り替え,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合には,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えても,ロール方向の傾きガイド表示の位置を切り替えないよう構成された「第13の実施の形態」,すなわち訂正事項5及び6による訂正後の請求項7に対応する実施の形態を把握することができるから,訂正事項5及び6による訂正は,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでない。

(5)訂正事項7ないし13について
訂正事項7ないし13は,明細書の記載を,訂正事項1ないし6により訂正される特許請求の範囲の記載に整合させる訂正事項であるところ,前記(1)ないし(4)で述べたとおり,訂正事項1ないし6による訂正が,いずれも,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないから,訂正事項7ないし13による訂正も,同様に,当業者によって,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでない。

(6)新規事項の追加の有無についてのまとめ
前記(1)ないし(5)のとおりであるから,本件訂正は,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1及び3による訂正後の「マーカを含むロール方向の傾きガイド表示」は,「ロール方向傾き情報」を限定したものであって,当該限定によって,訂正後の請求項1,2及び7の範囲に,訂正前の請求項1,2及び7の範囲にないものが包含されることはないから,訂正事項1及び3による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
訂正事項2による訂正は,請求項1,2及び7に係る発明に,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消す」という発明特定事項をさらに付加するものであって,当該発明特定事項の付加によって,訂正後の請求項1,2及び7の範囲に,訂正前の請求項1,2及び7の範囲にないものが包含されることはないから,訂正事項2による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
訂正事項4による訂正は,本件特許の特許請求の範囲から請求項3ないし6を削除するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。
訂正事項5による訂正は,請求項7の「請求項1に記載の」という記載を,他の請求項において用いられている「前記」という記載に統一したものであって,当該訂正の前後で請求項7に実質的な違いはないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
訂正事項6による訂正について,前記3(4)で言及した特許明細書の【0024】の記載等を参酌すると,訂正前の請求項7の「ロール方向の傾きは60度である」という記載が,請求項1に記載された『所定の範囲』が±60度の範囲であることを指していることは明らかであるから,当該訂正の前後で請求項7に実質的な違いはない。したがって,訂正事項6による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
訂正事項7ないし13による訂正は,いずれも,明細書の記載を,訂正事項1ないし6により訂正される特許請求の範囲の記載に整合させるものであるところ,前述したとおり,訂正事項1ないし6による訂正が,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないから,訂正事項7ないし13による訂正も,同様に,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

5 小括
前記2ないし4のとおり,本件訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。

第3 本件特許の請求項1,2及び7に係る発明
前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1,2及び7に係る発明(以下,それぞれを「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明7」といい,これらを総称して「本件訂正発明」という。)は,それぞれ前記第2 1(1)イに示したとおりの本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1,2及び7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,当該請求項1,2及び7の記載を再掲すると,次のとおりである。

【請求項1】
撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず,
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は,前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。

第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
1 通知された取消理由
本件訂正前の請求項1ないし7に係る特許に関して,令和1年7月22日付けの取消理由通知により通知された取消理由は,概略次のとおりである。

取消理由1(明確性要件違反・サポート要件違反):
本件特許の請求項5に記載された『所定の範囲』と,当該請求項5が間接的に引用する請求項1に記載されたロール方向の傾きに係る『所定の範囲』が同じ範囲を指しているのか,それとも異なる範囲を指しているのかが明確でない。仮に,両『所定の範囲』が同じ範囲を指している場合,請求項5及び6に係る発明は,「ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた」場合に,どのような動作をするものであるのかが特定できない点で,明確でなく,異なる範囲を指している場合,請求項5及び6に係る発明は,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない。したがって,請求項5及び6に係る特許は,特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。(以下,「取消理由1-1」という。)
また,請求項7に記載された「請求項1に記載のロール方向の傾きは60度である」という発明特定事項が,どのようなことを指しているのか明確でないから,請求項7に係る特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。(以下,「取消理由1-2」という。)

取消理由2(新規性欠如・進歩性欠如):
本件特許の請求項1及び3に係る発明は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された甲1に記載された発明であって,特許法29条1項3号に該当するから,その特許は同項の規定に違反してされたものである。
また,本件特許の請求項1ないし4,6及び7に係る発明は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された甲1に記載された発明又は甲2記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は同条2項の規定に違反してされたものである。

2 引用例及び周知例
取消理由2において引用された引用例及び周知例は,次のとおりである。
甲1:特開2007-74077号公報
甲2:特開2004-343476号公報
甲3:特開2006-324948号公報
甲4:特開2001-74450号公報

第5 取消理由1(明確性要件違反・サポート要件違反)についての判断
本件訂正によって,取消理由1-1の対象であった請求項5及び6は削除された。
また,本件訂正によって,請求項7の「請求項1に記載のロール方向の傾きは60度である」という記載が,「前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度である」と訂正されたことによって,取消理由1-2は解消した。
したがって,取消理由1によって,本件訂正発明1,2及び7に係る特許を取り消すことはできない。

第6 取消理由2(新規性欠如・進歩性欠如)についての判断
1 引用例
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1(特開2007-74077号公報)は,本件特許出願の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲1には,次の記載がある。(下線は,後述する「甲1発明」の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,画像撮像装置,プログラムおよび記録媒体に関し,特に,撮像した画像をデジタルデータとして処理する画像撮像装置,プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0005】
従来のフィルムカメラと同様に,デジタルカメラ,あるいは,カメラ付き携帯電話等の電子的画像撮像装置も,多くの場合,撮像画像は,縦横比1:1ではなく,縦長,あるいは,横長の長方形である。そのため,利用者は,撮像対象を縦長画像に撮像したいか,横長画像に撮像したいかによって,画像撮像装置を正対,あるいは,左または右に90°回転させて撮像している。
・・・(中略)・・・
【0008】
・・・(中略)・・・撮像時に天地方向を自動判定する方法として,たとえば,特開2004-229260号公報(特許文献1)では,デジタルカメラ(画像撮像装置)の撮像時の傾きに応じて,内蔵された傾斜計により,記録する画像の天地方向を決定し,決定した天地方向に対応させた画像ファイル生成して記録する技術(以下,従来技術Aともいう)が開示されている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら,特開2004-229260号公報(特許文献1)に開示されている技術では,図17のように,水平に設置されている撮像対象物701を撮像する場合,画像撮像装置10000の撮像部が,撮像対象物701の真正面にあると,軸方向DI401,DI402にかかる重力加速度の大きさは,ほぼ0となり,内蔵された傾斜計では,撮像対象物701の天地方向を判定することができない。・・・(中略)・・・
【0021】
本発明は,上述の問題点を解決するためになされたものであって,その目的は,水平に置かれた撮像対象の天地方向を正確に算出可能な画像撮像装置を提供することである。
・・・(中略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述の課題を解決するために,この発明のある局面に従う画像撮像装置は,撮像対象を撮像する画像撮像手段と,画像撮像装置の傾斜の角度を示す傾斜度を測定する傾斜度測定手段と,傾斜度測定手段により測定された傾斜度に基づいて,画像撮像装置の天地方向を算出する天地方向算出手段と,傾斜度測定手段により測定された傾斜度および天地方向算出手段により算出された天地方向の少なくとも一方の情報を記憶する傾斜情報記憶手段と,撮像対象に対する画像撮像装置の正対方向を決定する正対方向決定手段とを備え,傾斜度測定手段による画像撮像装置の傾斜度の測定処理と,測定された傾斜度が所定値以上の場合に傾斜度および天地方向算出手段により算出された天地方向の少なくとも一方の情報が傾斜情報記憶手段に記憶される処理とが,正対方向決定手段により正対方向が決定されるまでの期間,繰返し行なわれる。
【0025】
好ましくは,天地方向算出手段は,測定された傾斜度が所定値より小さい場合,傾斜情報記憶手段に記憶されている最新の傾斜度または天地方向の情報に基づいて,画像撮像装置の天地方向を算出する。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る画像撮像装置は,画像撮像装置の傾斜度の測定処理と,測定された傾斜度が所定値以上の場合に傾斜度および天地方向の少なくとも一方の情報が記憶される処理とが,撮像対象に対する画像撮像装置の正対方向が決定されるまで,繰返し行なわれる。
【0038】
したがって,水平に置かれた撮像対象の天地方向を正確に算出することができるという効果を奏する。」

(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0043】・・・(中略)・・・
【0044】
<第1の実施の形態>
図1は,本実施の形態における画像撮像装置1000の外観図を示す図である。図1(A)は,画像撮像装置1000の正面を示す図である。・・・(中略)・・・
【0045】
図1(B)は,画像撮像装置1000の背面を示す図である。図1(B)を参照して,画像撮像装置1000は,表示部150を備える。・・・(中略)・・・表示部150には,撮像時に,撮像対象の画像が逐次表示される。
・・・(中略)・・・
【0048】
図3は,本実施の形態における画像撮像部210の構成を示すブロック図である。図3を参照して,画像撮像部210は,レンズ群110と,撮像素子212と,A/D変換部214と,撮像制御部216と,一時記憶部217と,入出力インターフェース部218とを含む。
・・・(中略)・・・
【0056】
再び,図2を参照して,画像撮像装置1000は,さらに,制御部220と,入力部230と,一時記憶部240と,記憶部245と,傾斜測定部250とを備える。
・・・(中略)・・・
【0061】
制御部220は,天地方向算出手段222,正対方向決定手段224および認識手段226として動作する。天地方向算出手段222は,後述する傾斜測定部250が算出した重力加速度の方向および大きさに基づいて,画像撮像装置1000の天地方向を算出する。
・・・(中略)・・・
【0065】
傾斜測定手段としての傾斜測定部250は,2方向の重力加速度を検出することにより,画像撮像装置1000の傾斜を測定する機能を有する。傾斜測定部250は,重力加速度センサーである。
【0066】
重力加速度センサーは,重力加速度を検出する1以上の方向を有する。この検出方向を軸と呼ぶ。1個の軸を有する重力加速度センサーを,1軸の重力加速度センサーと呼ぶ。2個および3個の軸を有する重力加速度センサーを,それぞれ,2軸の重力加速度センサーおよび3軸の重力加速度センサーと呼ぶ。重力加速度センサーが有する2個以上の軸は,互いに直交する。本実施の形態における傾斜測定部250は,2軸の重力加速度センサーである。」

(ウ) 「【0067】
次に,傾斜測定部250による傾斜測定方法について説明する。
図4は,平面P301の傾斜度の測定方法を説明するための図である。傾斜度とは,傾斜の角度を示す。図4を参照して,方向D301,D302は,平面P301の傾斜度を測定するために用いる重力加速度センサーの軸方向を表す。方向D303は方向D301の正反対の方向を表す。また,方向D304は,方向D302の正反対の方向を表す。なお,重力加速度センサーの軸としては,方向D301と,方向D303とは同じ軸上にある。また,方向D302と,方向D304とは同じ軸上にある。
【0068】
ベクトルV301は,方向と大きさを持つ重力加速度ベクトルである。重力加速度の大きさ(の標準値)は,9.8m/s^(2)である。以下においては,重力加速度を,一般的な記号g(g=9.8m/s^(2))で表すことにする。
【0069】
P302は,水平面を表す。方向D303と水平面P302とが成す角度をθ(シータ)とする。
【0070】
方向D303と,重力加速度ベクトルV301とが成す角度をλ(ラムダ)とする。また,重力加速度ベクトルV301の先端から,平面P301上の方向D303への垂線を,L301とする。また,重力加速度ベクトルV301の平面P301上の方向D303への射影ベクトルをV302とする。また,重力加速度ベクトルV301と,垂線L301とが成す角度をA303とする。
【0071】
射影ベクトルV302は,方向D301,D303の軸方向にかかる重力加速度ベクトルを表す。したがって,以下の式(1)が成立する。
sin(角度A303の大きさ)=|V302|/|V301|・・・(1)
なお,式(1)の|x|は,ベクトルxの大きさを表す。
【0072】
角度A303は,180?90?λよりθとなる。また,|V301|は定数gであるので,式(1)は,以下の式(2)となる。
sinθ=|V302|/g ・・・(2)
式(2)を変形すると,以下の式(3)となる。
θ=sin-1(|V302|/g) ・・・(3)
重力加速度センサー(傾斜測定部250)は,軸方向にかかる重力加速度の大きさを測定することが可能である。すなわち,図4では,重力加速度センサーは,重力加速度ベクトルV302の大きさを測定することができる。
【0073】
したがって,式(3)より,θの値を算出することができる。すなわち,重力加速度センサーは,平面P301の傾斜度を測定することができる。そのため,θの値が90未満の場合,方向D301が天地方向の天であり,方向D303が天地方向の地であると判定できる。また,この場合の水平面P302と,平面P301との傾斜度も算出可能となる。
【0074】
また,図4の例とは,逆に,方向D301が天地方向の地であり,方向D303が天地方向の天となる場合でも,上記の方法により,天地判定および傾斜度の算出が可能となる。
【0075】
次に,画像撮像装置1000に内蔵された傾斜測定部250による,画像撮像装置1000の天地方向の判定方法について説明する。
【0076】
図5は,画像撮像装置1000に内蔵された2軸の重力加速度センサーである傾斜測定部250の2軸の方向を示す図である。図5を参照して,傾斜測定部250の2軸の各々の方向は,方向D401および方向D402であるとする。
【0077】
天地方向を判定する場合,方向D401にかかる重力加速度が重力加速度定数gに近く,方向D402にかかる重力加速度がほぼ0であれば,天地方向算出手段222は,画像撮像装置1000の上部が天地方向の天で,下部が天地方向の地であることを判定する。以下においては,図5の方向D401の軸を第1軸という。また,方向D402の軸を第2軸という。
【0078】
また,方向D401にかかる重力加速度がほぼ0であり,方向D402にかかる重力加速度が重力加速度定数gに近い値であれば,画像撮像装置1000の状態は図6のようになっていると判定できる。
【0079】
すなわち,天地方向算出手段222は,傾斜測定部250が算出した重力加速度の方向および大きさに基づいて,画像撮像装置1000の天地方向を判定する。」

(エ) 「【0080】
再び,図2を参照して,画像撮像装置1000は,さらに,傾斜情報記憶部260を備える。
【0081】
・・・(中略)・・・傾斜情報記憶部260は,傾斜測定部250が算出した重力加速度の方向および大きさ,天地方向算出手段222が判定した天地方向の情報を一時的に記憶する。
【0082】
図7は,傾斜情報記憶部260に記憶されるデータを示す図である。図7を参照して,傾斜情報記憶部260には,重力加速度方向データDT10と,重力加速度大きさデータDT20と,傾斜度データDT30と,天地方向データDT40とが記憶される。
・・・(中略)・・・
【0085】
傾斜度データDT30は,第1軸と水平面とが成す角度および第2軸と水平面とが成す角度のデータである。以下においては,第1軸と水平面とが成す角度を第1傾斜度ともいう。また,第2軸と水平面とが成す角度を第2傾斜度ともいう。・・・(中略)・・・
【0087】
天地方向データDT40は,画像撮像装置1000の天地方向を示すデータである。天地方向算出手段222は,第1軸と水平面とが成す第1傾斜度が所定の閾値(たとえば,10度)以上であれば,第1軸の方向が天地方向と判断する。また,天地方向算出手段222は,第2軸と水平面とが成す第2傾斜度が所定の閾値以上であれば,第2軸の方向が天地方向と判断する。
【0088】
また,天地方向算出手段222は,軸のどの方向が天地方向の天または地であるかを,軸に沿った重力加速度の方向により判定する。
【0089】
したがって,天地方向データDT40は,第1軸の方向が天地方向,第2軸の方向が天地方向および第1および第2軸の方向は天地方向でないといった3つの状態のいずれかを示す。
【0090】
なお,天地方向データDT40は,必要に応じて,重力加速度の方向および大きさから算出すれば,傾斜情報記憶部260に記憶しなくてもよい。」

(オ) 「【0098】
表示部150には,詳細は後述するが,傾斜測定部250により算出された第1傾斜度,第2傾斜度または天地方向についての情報が表示される。
【0099】
図8は,画像撮像装置1000を右に90度回転させた場合の表示部150に表示される画像500の一例を示す。図8を参照して,画像500には,天地方向算出手段222による画像撮像装置1000の天地方向の算出結果が,「上,下,左,右」の文字で表示されている。また,画像500の「上,下,左,右」の文字は,画像撮像装置1000の天地方向の算出結果に応じて,回転して表示されている。画像500の「上」が,天地方向の天に対応し,画像500の「下」が,天地方向の地に対応する。したがって,ユーザは,画像500を参照することで,画像撮像装置1000の天地方向を容易に知ることができる。画像500には,撮像対象となる画像と,「上,下,左,右」の文字とが同時に表示される。
【0100】
なお,水平面に対し,画像撮像装置1000を斜めに傾けた場合,天地方向の判定結果を,文字ではなく,記号等で表した方が,ユーザが直感的に天地方向を判別できる。
【0101】
図9は,水平面P302に対し,画像撮像装置1000を斜めに傾けた場合の表示部150に表示される画像510の一例を示す。図9を参照して,画像510には,記号として矢印512が表示される。矢印512が示すのは,画像撮像装置1000の天地方向の「天」となる。画像510には,撮像対象となる画像と,矢印512とが同時に表示される。」

(カ) 「【0103】
次に,画像撮像装置1000で行なわれる処理について説明する。なお,以下に説明する処理は,画像撮像装置1000の電源オン時に開始される。
【0104】
図10は,画像撮像装置1000で行なわれる処理のフローチャートである。図10を参照して,ステップS110では,傾斜測定部250が,前述したように,画像撮像装置1000の傾斜度を示す第1傾斜度および第2傾斜度を測定する。その後,ステップS120に進む。
【0105】
ステップS120では,天地方向算出手段222が,第1傾斜度および第2傾斜度のいずれかが,所定値A以上であるか否かを判定する。ここで,所定値Aは,傾斜測定部250(重力加速度センサー)の性能,ユーザにとっての適切な傾斜度等を考慮して決定される値である。所定値Aは,たとえば,30?60の範囲の値である。
【0106】
ステップS120において,YESならば,ステップS122に進む。一方,ステップS120において,NOならば,ステップS132に進む。
【0107】
ステップS122では,天地方向算出手段222が,傾斜測定部250が測定した第1傾斜度および第2傾斜度に基づいて,画像撮像装置1000の天地方向の算出を行なう。すなわち,撮像対象の天地方向が算出される。その後,ステップS124に進む。
【0108】
ステップS124では,制御部220が,画像撮像装置1000の天地方向の算出結果に基づく情報を表示した画像(以下,報知画像ともいう)を生成し,報知画像を,表示部150に表示させる。報知画像は,たとえば,図9の画像500である。報知画像には,撮像対象となる画像と,傾斜度としての第1傾斜度または第2傾斜度の情報および天地方向の情報の少なくとも一方とが表示される。
・・・(中略)・・・
【0113】
再び,図10を参照して,ステップS124の処理が終了すると,ステップS126に進む。
【0114】
ステップS126では,天地方向算出手段222が,ステップS110により測定された第1傾斜度および第2傾斜度に基づいて,前述した傾斜度データDT30を,傾斜情報記憶部260に記憶させる。なお,既に,傾斜情報記憶部260に傾斜度データDT30が記憶されている場合,天地方向算出手段222は,最新の傾斜度データDT30を傾斜情報記憶部260に上書き記憶させる。
・・・(中略)・・・
【0118】
前述のステップS120において,NOならば,ステップS132に進む。・・・(中略)・・・
【0119】
なお,画像撮像装置1000が,水平面に対し平行である場合,天地方向算出手段222は,傾斜測定部250が測定した第1傾斜度および第2傾斜度に基づいて,画像撮像装置1000の天地方向の判定はできない。
・・・(中略)・・・
【0121】
なお,画像撮像装置1000が図14の状態になる前に,必ず1度は,ステップS120において,YESと判定される。すなわち,画像撮像装置1000の電源オン時に,画像撮像装置1000が図14の状態となっていることは,ユーザが意図的にしない限り発生しない。なぜなら,ユーザは撮像処理の前に,画像撮像装置1000の調整(フォーカス等)などの操作を行なうのが一般的であるからである。このとき,画像撮像装置1000は,天地方向が判定できる状態であり,画像撮像装置1000が全くの水平状態でユーザが操作を開始することは,あまりないと考えられる。この後,ユーザは,水平に置かれた撮像対象物701を撮像するために,画像撮像装置1000を水平状態に持っていく。
【0122】
そのため,画像撮像装置1000が図14の状態になる前に,必ず1度は,ステップS126の処理が行われる。したがって,傾斜情報記憶部260には,傾斜度データDT30および天地方向データDT40が記憶されている。
【0123】
この場合,天地方向算出手段222は,傾斜情報記憶部260に記憶されている傾斜度データDT30および天地方向データDT40の少なくとも一方に基づいて,画像撮像装置1000の天地方向の判定を行なう。その後,ステップS134に進む。
【0124】
ステップS134では,制御部220が,画像撮像装置1000の天地方向の算出結果に基づく情報を表示した報知画像を生成し,報知画像を,表示部150に表示させる。」

(キ) 「【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本実施の形態における画像撮像装置の外観図を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図4】平面P301の傾斜度の測定方法を説明するための図である。
【図5】画像撮像装置に内蔵された2軸の重力加速度センサーである傾斜測定部の2軸の方向を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図8】画像撮像装置を右に90度回転させた場合の表示部に表示される画像の一例を示す。
【図9】水平面に対し,画像撮像装置を斜めに傾けた場合の表示部に表示される画像の一例を示す。
【図10】画像撮像装置で行なわれる処理のフローチャートである。
・・・(中略)・・・
【図1】

【図4】

【図5】

【図8】

【図9】

【図10】



イ 甲1の記載から把握される発明
(ア) 前記ア(ア)ないし(キ)で摘記した甲1の記載から,画像撮像装置1000を右に90度回転させた場合には,図8に示される画像500を表示し,水平面に対し画像撮影装置1000を斜めに傾けた場合には,図9に示される画像510を表示するように構成された画像撮影装置1000に関する発明を把握することができるところ,甲1の図5から,「傾斜測定部250」の2軸の方向である「方向D401」(以下,「第1軸方向」という。)及び「方向D402」(以下,「第2軸方向」という。)が,それぞれ,横長の画像撮影装置1000における短手方向(以下,「画像撮影装置1000の上下方向」という。)及び長手方向(以下,「画像撮影装置1000の左右方向」という。)に設定されていることが看取されるから,当該画像撮影装置1000に関する発明は,次のとおりのものと認められる。

「撮像素子212を含む画像撮像部210と,
撮像時に,撮像対象の画像が逐次表示される表示部150と,
第1軸方向及び第2軸方向の重力加速度を検出することにより,第1軸と水平面とがなす第1傾斜度及び第2軸と水平面とがなす第2傾斜度を測定する機能を有する2軸の重力加速度センサーであり,第1軸方向及び第2軸方向がそれぞれ画像撮影装置1000の上下方向及び左右方向に設定されている傾斜測定部250と,
前記傾斜測定部250が測定した第1傾斜度及び第2傾斜度に基づいて天地方向を算出する天地方向算出手段222として動作する制御部220と,
傾斜情報記憶部260と,
を有し,
電源がオンされると,
前記傾斜測定部250が,第1傾斜度および第2傾斜度を測定し,
前記天地方向算出手段222が,測定された第1傾斜度および第2傾斜度のいずれかが,所定値A以上であるか否かを判定し,
判定結果がYESならば,前記天地方向算出手段222が,測定された第1傾斜度および第2傾斜度に基づいて,天地方向の算出を行い,前記制御部220が,天地方向の算出結果に基づく情報を表示した報知画像を生成して,前記表示部150に表示させるとともに,前記天地方向算出手段222が,測定された第1傾斜度及び第2傾斜度を前記傾斜情報記憶部260に上書き記憶させ,
判定結果がNOならば,前記天地方向算出手段222が,前記傾斜情報記憶部260に記憶されている第1傾斜度及び第2傾斜度に基づいて,天地方向を算出し,天地方向の算出結果に基づく情報を表示した報知画像を生成し,表示部150に表示させる,
という処理が行われ,
画像撮像装置1000を右に90度回転させた場合には,前記報知画像として,撮影対象となる画像と,『上』の文字が天地方向の『天』に対応するように回転された『上,下,左,右』の文字とが同時に表示される画像500が表示され,水平面に対し画像撮影装置1000を斜めに傾けた場合には,前記報知画像として,撮像対象となる画像と,天地方向の『天』を示す矢印512とが同時に表示される画像510が表示されるよう構成された,
画像撮影装置1000。」(以下,「甲1発明」という。)

(イ) なお,特許権者は,令和1年9月24日に提出した意見書において,「甲1において,【図8】に記載された『上,下,左,右』の文字を表示する実施例と【図9】の天地方向の『天』を示す矢印512を表示する実施例とは異なる実施例であり,これらを恣意的に組み合わせて,画像撮像装置1000の回転前後で『表示する位置』が異なるものと認定することは適切ではない」などと主張する。
しかしながら,甲1の【0098】ないし【0101】(前記ア(オ))の「『上,下,左,右』の文字」及び「天地方向の『天』を示す矢印512」に関する記載は,ともに「<第1の実施の形態>」についての説明である。そして,当該記載は,文脈上,水平面に対して画像撮像装置が斜めに傾いていない場合には,『上,下,左,右』の文字を表示し,斜めに傾いた場合には,ユーザが直感的に天地方向を判別できるようにするために,天地方向の『天』を示す矢印512を表示することを説明したものと解するのが自然である。また,【0089】(前記ア(エ))の天地方向データDT404についての記載は,第1軸の方向が天地方向である場合(横長画像が撮影されるような姿勢の場合)と,第2軸の方向が天地方向である場合(右又は左に90°回転させて縦長画像が撮影されるような姿勢である場合)と,第1及び第2軸の方向は天地方向でない場合(水平面に対して斜めに傾いた姿勢の場合)とで,異なる表示がされることを示唆している。
したがって,甲1の記載からは,画像撮像装置1000を右に90度回転させた場合には,図8に示される画像500を表示し,水平面に対し画像撮影装置1000を斜めに傾けた場合には,図9に示される画像510を表示するように構成された画像撮影装置1000に関する発明を把握することができるというべきであって,特許権者の主張は採用できない。

(2)甲2
ア 甲2の記載
甲2(特開2004-343476号公報)は,本件特許出願の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲2には,次の記載がある。(下線は,後述する「甲2発明」の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「静止画像を取得して記録媒体に記録する撮像装置において,
傾きを検出する傾き検出手段を有し,
前記静止画像の取得時に前記傾き検出手段で検出される傾きの情報を,該静止画像と共に前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記傾き検出手段で検出される傾きを,表示手段で表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。」

(イ) 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,撮像装置,撮像結果の処理装置及び撮像結果の処理方法に関し,例えば電子スチルカメラに適用することができる。・・・(中略)・・・
【0002】
【従来の技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
これに対して同種の撮像装置であるビデオカメラにおいては,小型化,軽量化によって必ずしも安定した姿勢で撮像するとは限られないことにより,例えば特開2002-64738号公報,特開平7-95466号公報等においては,装置の傾きを検出して撮像結果の傾きを自動的に補正することにより,ユーザーの使い勝手を向上する方法が提案されるようになされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
・・・(中略)・・・
【0006】
しかしながら電子スチルカメラにおいては,テレビジョン受像機による撮像結果の表示を前提としたビデオカメラとは異なり,意図的に傾いた構図により撮像する場合もある。また縦長の構図により撮像する場合もある。
【0007】
これにより電子スチルカメラにおいて,単に撮像結果の傾きを自動的に補正したのでは,却ってユーザーの使い勝手が悪くなる問題がある。しかして電子スチルカメラにおけるこのような傾きの補正については,ユーザーの意図を正しく反映することが必要と考えられる。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので,ユーザーの意図を正しく反映して撮像結果の傾きを補正することができる撮像装置,撮像結果の処理装置及び撮像結果の処理方法を提案しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては,静止画像を取得して記録媒体に記録する撮像装置に適用して,傾きを検出する傾き検出手段を有し,静止画像の取得時に傾き検出手段で検出される傾きの情報を,該静止画像と共に記録媒体に記録する。
・・・(中略)・・・
【0012】
請求項1の構成により,静止画像を取得して記録媒体に記録する撮像装置に適用して,傾きを検出する傾き検出手段を有し,静止画像の取得時に傾き検出手段で検出される傾きの情報を,該静止画像と共に記録媒体に記録すれば,後処理において,この記録媒体に記録された傾きの情報により,必要に応じて傾きを補正し得,これによりユーザーの意図を正しく反映して撮像結果の傾きを補正することができる。」

(ウ) 「【0016】
(1)第1の実施の形態
(1-1)第1の実施の形態の構成
図1は,本発明の実施の形態に係る電子スチルカメラを示すブロック図である。この電子スチルカメラ1において,撮像素子2は,CCD(Charge Coupled Device )固体撮像素子により形成され,図示しない光学系によって撮像面に形成された画像による撮像結果を光電変換して出力する。・・・(中略)・・・
【0019】
表示部6は,例えば液晶表示パネルとこの液晶表示パネルを駆動する駆動回路等により構成され,システム制御回路3の制御によりバスBUSに出力される画像データによる画像を表示する。
・・・(中略)・・・
【0024】
傾き検出センサ14は,この電子スチルカメラ1の傾きを検出して検出結果をシステム制御回路3に出力する。この電子スチルカメラ1において,この傾き検出センサ14は,撮像素子2の水平方向及び垂直方向にそれぞれ傾き検出の基準軸を有する1組のセンサにより構成される。より具体的には,それぞれ水平方向及び垂直方向への加速度を検出する1対の加速度センサの組み合わせによる2軸の加速度センサにより構成される。
【0025】
すなわち図2(A)に示すように,この電子スチルカメラ1は,正面より見て全体が横長に形成され,この横長の状態で撮像素子2により横長の撮像結果を取得できるようになされている。これによりこの電子スチルカメラ1は,この図2(A)に示すように,横長に保持した状態で,この横長の方向がX方向に設定され,このX方向に直交する方向がY方向に設定されるようになされている。なおこの図2において,符号15Aは,シャッターの操作子である。
【0026】
傾き検出センサ14は,これらX方向及びY方向にそれぞれ傾き検出の基準軸が設定される。・・・(中略)・・・
【0028】
これによりこの実施の形態では,この2種類のセンサの出力信号レベルの比により,電子スチルカメラ1が種々の向きに傾けられた場合でも,光軸回りの傾きを検出できるようになされている。
・・・(中略)・・・
【0030】
システム制御回路3は,図示しないメモリに記録された所定の処理プログラムを実行することにより,この電子スチルカメラ1の全体の動作を制御するコンピュータである。システム制御回路3は,ユーザーによる電源の操作子15の操作により,各部の動作を立ち上げ,撮像素子2により動画による撮像結果を取得して表示部6で表示する。
【0031】
この処理において,システム制御回路3は,傾き検出センサ14による傾き検出結果に基づいて,撮像結果の傾きを表示部6で表示する。またこの傾きの表示においては,傾き検出センサ14の出力信号により,縦長の構図による撮像結果か,横長の構図による撮像結果かを判定し,これら縦長及び横長の構図に対応するように表示を切り換えて,傾きを表示する。
【0032】
すなわちシステム制御回路3においては,X軸方向及びY軸方向に基準軸を設定してなるセンサ出力を絶対値化して比較することにより,これら2つのセンサ出力の振幅を比較する。ここでX軸方向(決定注:技術的にみて,「Y軸方向」の誤記と認められる。)に基準軸を設定してなるセンサ出力の振幅の方が大きいとの判定結果が得られた場合,図2(A)との対比により図4(A)に電子スチルカメラ1を背面より見て示すように,横長の構図による撮像結果と判定し,この状態における表示部6による表示画面の下側に,棒状の表示6Aを形成する。また水平方向に対するX軸方向の傾きを検出し,この棒状の表示6A上の中央を傾き0の位置に設定して,この傾き検出結果に対応する位置にマーカー6Bを表示する。しかしてこの場合,この棒状の表示6Aにおいては,水準器のように電子スチルカメラ1の傾きに応じてマーカー6Bが左右に移動することになる。
【0033】
これに対してY軸方向(決定注:技術的にみて,「X軸方向」の誤記と認められる。)の基準軸を設定してなるセンサ出力の振幅の方が大きいとの判定結果が得られた場合,図2(B)との対比により図4(B)に電子スチルカメラ1を背面より見て示すように,縦長の構図による撮像結果と判定し,この状態における表示部6による表示画面の下側に,棒状の表示6Aを形成する。また水平方向に対するY軸方向の傾きを検出し,この棒状の表示6A上の中央を傾き0の位置に設定して,この傾き検出結果に対応する位置にマーカー6Bを表示する。しかしてこの場合も,この棒状の表示6Aにおいては,水準器のように電子スチルカメラ1の傾きに応じてマーカー6Bが左右に移動することになる。
【0034】
またこれらによりそれぞれ図4(A)及び(B)に示す状態より,電子スチルカメラ1が上下逆向きに保持されている場合には,それぞれ表示画面の上側に棒状の表示6Aが形成されることになる。なおこの場合に,表示箇所を下側に切り換えるようにしてもよい。
【0035】
これによりこの電子スチルカメラ1では,この棒状の表示6Aにより電子スチルカメラ1の傾きを確認して,所望の構図により撮像結果を取得できるようになされている。また傾き検出センサ14の検出結果により撮像結果の構図を判定し,この構図の判定により棒状の表示6Aによる横長の構図と縦長の構図とで傾き検出結果の表示箇所を切り換えるようになされている。
・・・(中略)・・・
【0050】
電子スチルカメラ1では,傾き検出センサ14により光学系の光軸を中心にした傾きが検出され(図2及び図3),動画による撮像結果を表示している際に,この傾き検出結果が表示部6に併せて表示される(図4)。これによりこの電子スチルカメラ1では,この表示部6における傾き検出結果の表示に基づいて全体の傾きを補正してシャッターの操作子15Aを押圧操作することにより,傾いた構図による撮像結果の取得を防止することができ,その分,ユーザーによる使い勝手を向上することができる。」

(エ) 「【図面の簡単な説明】
・・・(中略)・・・
【図2】図1の電子スチルカメラにおける傾き検出センサの説明に供する平面図である。
・・・(中略)・・・
【図4】図1の電子スチルカメラにおける表示部6の表示を示す背面図である。
・・・(中略)・・・
【図2】

【図4】




(イ)甲2の記載から把握される発明
前記ア(ア)ないし(エ)で摘記した甲2の記載から,甲2に,第1の実施の形態に係る電子スチルカメラ1に関して,次の発明が記載されていると認められる。

「撮像素子2と,
表示部6と,
前記撮像素子2の水平方向及び垂直方向であるX軸方向及びY軸方向への加速度を検出する2軸の加速度センサにより構成され,2軸方向の出力信号レベルの比により,電子スチルカメラ1が種々の向きに傾けられた場合でも,光軸回りの傾きを検出できるようになされている傾き検出センサ14と,
前記撮像素子2により動画による撮像結果を取得して前記表示部6で表示するとともに,この処理において,前記X軸方向及びY軸方向に基準軸を設定してなるセンサ出力を絶対値化して比較することにより,これら2つのセンサ出力の振幅を比較し,どちらのセンサ出力の振幅の方が大きいかによって,横長の構図による撮像結果か,縦長の構図による撮像結果かを判定し,
横長の構図による撮像結果と判定された場合は,この状態における前記表示部6による表示画面の下側に,棒状の表示6Aを形成し,水平方向に対するX軸方向の傾きを検出し,前記棒状の表示6A上の中央を傾き0の位置に設定して,この傾き検出結果に対応する位置にマーカー6Bを表示し,
縦長の構図による撮像結果と判定された場合は,この状態における前記表示部6による表示画面の下側に,棒状の表示6Aを形成し,水平方向に対するY軸方向の傾きを検出し,前記棒状の表示6A上の中央を傾き0の位置に設定して,この傾き検出結果に対応する位置にマーカー6Bを表示するよう構成されたシステム制御回路3と,
を有し,
前記傾き検出センサ14により光学系の光軸を中心とした傾きが検出され,動画による撮像結果を表示している際に,この傾き検出結果が前記表示部6に併せて表示される
電子スチルカメラ1。」

2 甲1を主引例とする取消理由2(新規性欠如・進歩性欠如)について
(1)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲1発明の対比
(ア) 甲1発明の「撮像素子212」,「表示部150」,「傾斜測定部250」,「制御部220」及び「画像撮影装置1000」は,技術的にみて,本件訂正発明1の「撮像素子」,「画像表示部」,「傾き検出部」,「表示制御部」及び「撮像装置」にそれぞれ対応する。

(イ) 甲1発明の「表示部150」(本件訂正発明1の「画像表示部」に対応する。以下,「ア 本件訂正発明1と甲1発明の対比」欄において,「」で囲まれた甲1発明の構成に付した()内の文言は,当該甲1発明の構成に対応する本件訂正発明1の発明特定事項を指す。)には,撮像対象の画像が逐次表示されるところ,当該撮影対象の画像が,「撮像素子212」(撮像素子)により撮影されたことは明らかである。したがって,本件訂正発明1の「画像表示部」と,甲1発明の「表示部150」とは,「撮像素子により撮像された画像を表示する」ものである点で一致する。

(ウ) 甲1発明の「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定する「第1傾斜度」及び「第2傾斜度」は,「画像撮影装置1000」(撮像装置)の姿勢に関する2つのパラメータの値といえる。一方,本件訂正発明1の「傾き検出部」が検出する「ロール方向の傾き」及び「ピッチ方向の傾き」も,「撮像装置」の姿勢に関する2つのパラメータの値といえるから,甲1発明の「傾斜測定部250」と,本件訂正発明1の「傾き検出部」とは,「撮像装置の姿勢に関する2つのパラメータの値を検出する検出部」である点で共通する。

(エ) 甲1発明の「『上』の文字が天地方向の『天』に対応するように回転された『上,下,左,右』の文字」や「天地方向の『天』を示す矢印512」は,「画像撮影装置1000」(撮像装置)の姿勢を示す情報(以下,「姿勢情報」という。)といえる。一方,本件訂正発明1の「マーカを含むロール方向の傾きガイド表示」も「撮像装置」の姿勢を示す姿勢情報といえるから,甲1発明の「『上』の文字が天地方向の『天』に対応するように回転された『上,下,左,右』の文字」や「天地方向の『天』を示す矢印512」と,本件訂正発明1の「マーカを含むロール方向の傾きガイド表示」とは,「撮像装置の姿勢を示す姿勢情報」である点で共通する。
そして,甲1発明の「制御部220」は,
「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」のいずれかが所定値A以上であり,かつ,画像撮像装置1000を右に90度回転させた場合には,「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」に基づいて,「『上』の文字が天地方向の『天』に対応するように回転された『上,下,左,右』の文字」を含む画像500を生成して表示し,
「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」のいずれかが所定値A以上であり,かつ,水平面に対し画像形成装置1000を斜めに傾けた場合には,「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」に基づいて,「天地方向の『天』を示す矢印512」を含む画像510を生成して表示し,
「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」のいずれもが所定値A未満である場合には,傾斜情報記憶部260に記憶されている第1傾斜度及び第2傾斜度,すなわち,第1傾斜度及び第2傾斜度のいずれもが所定値A未満となる直前に測定した第1傾斜度及び第2傾斜度に基づいて,報知画像(画像500又は画像510)を生成して表示するものである。
ここで,「画像撮像装置1000を右に90度回転させた場合」とは,画像撮像装置1000の「ロール方向の傾き」が90度であることにほかならない。そして,甲1発明において,画像撮像装置1000を右に90度よりも小さい角度で回転させたとき,すなわち,「ロール方向の傾き」が0度を超え90度未満であるときには,「水平面に対し画像形成装置1000を斜めに傾けた場合」と判断され,「天地方向の『天』を示す矢印512」を含む画像510が表示されることとなる。
また,「『上』の文字が天地方向の『天』に対応するように回転された『上,下,左,右』の文字」を表示する位置(以下,「第1位置」という。)と,「天地方向の『天』を示す矢印512」を表示する位置(以下,「第2位置」という。)とが異なることは明らかである。
そうすると,甲1発明の「制御部220」は,「ロール方向の傾き」が90度に達したときに,姿勢情報(『上,下,左,右』の文字,矢印512)の表示位置を第2位置から第1位置に切り替える機能を有するものであって,「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」が所定の条件を満足し,「ロール方向の傾き」が0度を超え90度未満という所定の範囲を超えたときには,前記表示位置の切り替えを行うが,「傾斜測定部250」(傾き検出部)が測定した「第1傾斜度及び第2傾斜度」が所定の条件を満足せず,「ロール方向の傾き」が前記所定の範囲を超えたときには,前記表示位置の切り替えは行わず,「第1傾斜度及び第2傾斜度」が所定の条件を満足しなくなる直前の姿勢情報(『上,下,左,右』の文字,矢印512)を表示し続けるものといえる。
したがって,甲1発明の「制御部220」と,本件訂正発明1の「表示制御手段」とは,「画像表示部に傾き検出部により検出された撮像装置の姿勢に関するパラメータの値に応じて撮像装置の姿勢を示す姿勢情報を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記姿勢情報の表示位置を切り替える表示制御手段」であって,「前記傾き検出部により検出された姿勢に関するパラメータの値が所定の条件を満足し,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記姿勢情報の表示位置を切り替え,姿勢に関するパラメータの値が所定の条件を満足せず,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,姿勢情報の表示位置を切り替えない」点で共通する。

(オ) 前記(ア)ないし(エ)によれば,本件訂正発明1と甲1発明は,
「撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,撮像装置の姿勢に関する2つのパラメータの値を検出する検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出された撮像装置の姿勢に関するパラメータの値に応じて撮像装置の姿勢を示す姿勢情報を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記姿勢情報の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置において,
前記表示制御手段は,前記傾き検出部により検出された姿勢に関するパラメータの値が所定の条件を満足し,ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,前記姿勢情報の表示位置を切り替え,
姿勢に関するパラメータの値が所定の条件を満足せず,かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は,姿勢情報の表示位置を切り替えない撮像装置。」
である点で一致し,次の点で相違する又は一応相違する。

相違点1-1:
本件訂正発明1において,「傾き検出部」が検出する「姿勢に関する2つのパラメータの値」は,「ロール方向の傾き」と「ピッチ方向の傾き」であり,「ロール方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合の「表示制御手段」の動作が,「傾き検出部」により検出された「ピッチ方向の傾き」が所定の範囲内であるときには表示位置を切り替え,「ピッチ方向の傾き」が所定の範囲を超えたときには表示位置を切り替えないというものであるのに対して,
甲1発明において,「傾斜測定部250」が測定する「姿勢に関する2つのパラメータの値」は,「第1傾斜度」と「第2傾斜度」であり,「ロール方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合(右への回転が0度を超え90度未満という範囲を超え,90度に達した場合)の「制御部220」の動作は,「傾斜測定部250」により測定された「第1傾斜度及び第2傾斜度」のいずれかが所定値A以上であるときには表示位置を切り替え,「第1傾斜度及び第2傾斜度」のいずれもが所定値A以上でないときには表示位置を切り替えないというものである点。

相違点1-2:
本件訂正発明1の「表示制御手段」が,画像表示部に傾き検出部により検出された「ロール方向の傾き」に応じて「ロール方向の傾き」を示す「姿勢情報」を表示するのに対して,
甲1発明の「制御部220」は,傾斜測定部250により測定された「第1傾斜度」及び「第2傾斜度」に応じて「天地方向」を示す「姿勢情報」を表示する点。

相違点1-3:
本件訂正発明1の「姿勢情報」が,「マーカを含むロール方向の傾きガイド表示」であり,「表示制御手段」が,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合に,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消すのに対して,
甲1発明の「姿勢情報」は,「『上』の文字が天地方向の『天』に対応するように回転された『上,下,左,右』の文字」又は「天地方向の『天』を示す矢印512」であって,「マーカ」を含む表示ではなく,したがって,「制御部220」が,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合に,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消すという制御を行うことはない点。

イ 判断
(ア)新規性欠如について
少なくとも,相違点1-3は実質的な相違点である。
そして,本件訂正発明1と甲1発明との間に実質的な相違点がある以上,本件訂正発明1は,甲1発明と同一ではない。

(イ)進歩性欠如について
事案に鑑みて,まず相違点1-3について判断する。
甲2には,「棒状の表示6A」と「マーカー6B」とからなる表示によって,ユーザが電子スチルカメラ1の光軸回りの傾きを確認できるようにする技術が記載されており(前記1(2)アを参照。),甲2に記載された「電子スチルカメラ1の光軸回りの傾き」が,本件訂正発明1の「ロール方向の傾き」に相当し,甲2に記載された「マーカー6B」が,本件訂正発明1の「マーカ」に相当し,甲2に記載された「棒状の表示6Aとマーカー6Bとからなる表示」が,本件訂正発明1の「ロール方向の傾きガイド表示」に相当する。しかしながら,甲2には,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合に,「マーカー6B」を消すことは,記載も示唆もされていない。
また,令和1年11月27日に申立人より提出された意見書に添付された特開2001-39680号公報(参考資料2)には,画面の左右方向に延び,かつ,その長手方向に複数の目盛りが併設されてなるものであり,これに加えて現在の左右方向の傾斜角度に相当する区分に黒丸からなる指標71aが表示される左右傾斜表示部71によって,クレーン本体の左右方向の傾斜状態を認識できるようにしたクレーンの表示装置であって,傾斜角度が一定以上であるときや,傾斜角度検出手段が故障であるときには,左右傾斜表示部71を,点滅表示,反転表示,異色表示等の強調表示することが記載されており(請求項1,【0016】,【0053】,【0057】,【0061】,図10等を参照。),参考資料2に記載された「左右方向の傾斜角度」が,本件訂正発明1の「ロール方向の傾き」に相当し,参考資料2に記載された「指標71a」が,本件訂正発明1の「マーカ」に相当し,参考資料2に記載された「左右傾斜表示部71」が,本件訂正発明1の「ロール方向の傾きガイド表示」に相当する。しかしながら,参考資料2には,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合に,「指標71a」を消すことは記載も示唆もされていない。
さらに,申立人が提出した他の証拠(甲3:特開2006-324948号公報,甲4:特開2001-74450号公報,甲5:特開昭59-17543号公報,参考資料1:特開2003-66520号公報)を含め,「マーカを含むロール方向の傾きガイド表示」により「ロール方向の傾き」を示すものにおいて,「ピッチ方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合に,「マーカ」を消す技術が,本件特許出願の優先権主張の日より前に公知等になっていたことを示す証拠は見当たらない。
そして,本件訂正明細書の【0043】に記載されているように,相違点1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項を有することで,ロール角の表示精度が低下したことを警告することができるようになるのであるから,甲1発明において,相違点1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが,単なる設計事項ということもできない。
したがって,甲1発明において,相違点1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者といえども,容易に想到することができたことではない。
以上のとおりであるから,他の相違点について判断するまでもなく,本件訂正発明1は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2及び7について
本件訂正後の請求項2及び7は,本件訂正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明2及び7は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものに相当する。
したがって,本件訂正発明1が甲1発明と同一でなく,かつ,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上,本件訂正発明2及び7も,同様の理由で,甲1発明と同一でなく,かつ,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 甲2を主引例とする取消理由2(進歩性欠如)について
(1)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲2発明の対比
(ア) 甲2発明の「撮像素子2」,「表示部6」,「システム制御回路3」及び「電子スチルカメラ1」は,技術的にみて,本件特許発明1の「撮像素子」,「画像表示部」,「表示制御部」及び「撮像装置」にそれぞれ対応する。

(イ) 甲2発明の「表示部6」(本件訂正発明1の「画像表示部」に対応する。以下,「ア 本件訂正発明1と甲2発明の対比」欄において,「」で囲まれた甲2発明の構成に付した()内の文言は,当該甲2発明の構成に対応する本件訂正発明1の発明特定事項を指す。)には,「撮像素子2」(撮像素子)により取得された動画による撮像結果が表示されるから,本件訂正発明1の「画像表示部」と,甲1発明の「表示部150」とは,「撮像素子により撮像された画像を表示する」ものである点で一致する。

(ウ) 甲2発明において,2軸の加速度センサにおける2軸方向の出力信号レベルの比から,電子スチルカメラ1の光軸回りの傾きを検出(算出)するのが,「傾き検出センサ14」自体であるのか,それとも,「システム制御回路3」であるのかは,定かでないものの,前者の場合は,甲2発明の「傾き検出センサ14」が本件訂正発明1の「傾き検出部」に対応し,後者の場合は,甲2発明の「傾き検出センサ14」と「システム制御回路3」のうちの光軸回りの傾きを検出(算出)する機能とをあわせた構成が本件訂正発明1の「傾き検出部」に対応する。以下,前者であることを前提に検討を進めるが,後者である場合でも,結論に違いはない。
しかるに,「電子スチルカメラ1の光軸回りの傾き」とは,「ロール方向の傾き」にほかならないから,甲2発明の「傾き検出センサ14」と,本件訂正発明1の「傾き検出部」とは,「ロール方向の傾きを検出する」点で共通する。

(エ) 甲2発明の「棒状の表示6A」と「マーカー6B」は,「マーカー6B」が,「棒状の表示6A」上の中央に対してどのような位置に表示されているのかによって,「水平方向に対するX軸方向の傾き」又は「水平方向に対するY軸方向の傾き」を示している。ここで,甲2発明の「マーカー6B」は,本件訂正発明1の「マーカ」に相当する。また,甲2発明の「水平方向に対するX軸方向の傾き」及び「水平方向に対するY軸方向の傾き」は,横長の構図で撮像する場合の電子スチルカメラ1の姿勢(X軸方向が水平方向に一致する姿勢)を基準としたときの「ロール方向の傾き」,及び,縦長の構図で撮像する場合の電子スチルカメラ1の姿勢(Y軸方向が水平方向に一致する姿勢)を基準としたときの「ロール方向の傾き」にそれぞれ相当する(なお,後者は,横長の構図で撮像する場合の電子スチルカメラ1の姿勢(X軸方向が水平方向に一致する姿勢)を基準としたときの「ロール方向の傾き-90度」であるともいえる。)。そうすると,甲2発明の「棒状の表示6A」及び「マーカー6B」からなる表示は,「ロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示」といえ,甲2発明の「システム制御回路3」が行う「『水平方向に対するX軸方向の傾き』又は『水平方向に対するY軸方向の傾き』を検出し,『棒状の表示6A』上の中央を傾き0の位置に設定して,この傾き検出結果に対応する位置に『マーカー6B』を表示する」という動作は,「傾き検出センサ14」(傾き検出部)により検出された「ロール方向の傾き」に応じて「ロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示」を表示する動作といえる。
また,横長の構図で撮像する場合の電子スチルカメラ1の姿勢(X軸方向が水平方向に一致する姿勢)を基準として,0度ないし180度という傾きの範囲で考えると,甲2発明において,X軸方向の出力の絶対値の振幅の方が大きいのは,電子スチルカメラ1の光軸回りの傾き(ロール方向の傾き)が45度を超え135度未満のときであり,Y軸方向の出力の絶対値の振幅の方が大きいのは,電子スチルカメラ1の光軸回りの傾き(ロール方向の傾き)が0度以上45度未満又は135度を超え180度以下のときである。しかるに,甲2発明の「システム制御回路3」は,「傾き検出センサ14」(傾き検出部)の2軸方向の出力を絶対値化して比較することにより,これら2つの出力の振幅を比較し,どちらの出力の振幅の方が大きいかによって,横長の構図による撮像結果か,縦長の構図による撮像結果かを判定し,各状態における表示画面の下側となる位置に「棒状の表示6A」及び「マーカー6B」(ロール方向傾き情報)を表示しているのであるから,「電子スチルカメラ1」(撮像装置)の「ロール方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合は「棒状の表示6A及びマーカー6Bからなる表示」(マーカを含むロール方向の傾きガイド表示)の表示位置を切り替えているといえる。
したがって,甲2発明の「システム制御回路3」と,本件訂正発明1の「表示制御手段」とは,「画像表示部に傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える」ものである点で一致する。

(オ) 前記(ア)ないし(エ)によれば,本件訂正発明1と甲2発明は,
「撮像素子と,前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と,ロール方向の傾きを検出する傾き検出部と,前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し,撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と,を有する撮像装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点2-1:
本件訂正発明1では,「傾き検出部」が「ピッチ方向の傾き」をも検出するものであり,「表示制御手段」が,「傾き検出部」により検出された「ピッチ方向の傾き」が所定の範囲内であり,「ロール方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合は,「ロール方向の傾きガイド表示」の表示位置を切り替え,「ピッチ方向の傾き」が所定の範囲を超え,かつ「ロール方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合は,「ロール方向の傾きガイド表示」の表示位置を切り替えないのに対して,
甲2発明では,「傾き検出センサ14」は「ピッチ方向の傾き」を検出しておらず,「システム制御回路3」は,「傾きセンサ14」により検出された「ロール方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合は,「ピッチ方向の傾き」にかかわらず「棒状の表示6A及びマーカー6Bからなる表示」の表示位置を切り替える点。

相違点2-2:
本件訂正発明1の「表示制御手段」が,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合に,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消すのに対して,
甲1発明の「システム制御回路3」は,ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合に,ロール方向の傾きガイド表示に表示していたマーカを消すという制御を行わない点。

イ 判断
事案に鑑みて,まず相違点2-2について判断する。
前記2(1)イ(イ)においても説示したように,申立人が提出した他の証拠を含め,「マーカを含むロール方向の傾きガイド表示」により「ロール方向の傾き」を示すものにおいて,「ピッチ方向の傾き」が所定の範囲を超えた場合に,「マーカ」を消す技術が,本件特許出願の優先権主張の日より前に公知等になっていたことを示す証拠は見当たらない。
そして,本件訂正明細書の【0043】に記載されているように,相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を有することで,ロール角の表示精度が低下したことを警告することができるようになるのであるから,甲2発明において,相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが,単なる設計事項ということもできない。
したがって,甲2発明において,相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者といえども,容易に想到することができたことではない。
以上のとおりであるから,相違点2-1について判断するまでもなく,本件訂正発明1は,甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2及び7について
本件訂正後の請求項2及び7は,本件訂正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明2及び7は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものに相当する。
したがって,本件訂正発明1が,甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正発明2及び7も,同様の理由で,甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

4 小括
前記2及び3のとおりであるから,取消理由2によって,本件訂正発明1,2及び7に係る特許を取り消すことはできない。

第8 むすび
以上のとおり,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては,本件特許の請求項1,2及び7に係る特許を取り消すことはできない。また,他に本件特許の請求項1,2及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項3ないし6は,訂正により削除された。これにより,申立人による請求項3ないし6に係る特許異議の申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
撮像装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、撮像装置の傾きを検出し、この傾き情報に相応する傾きガイド表示を画像表示装置の画面に的確に表示し得る撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタルカメラ等の撮像装置においては、小型化および軽量化が進み、種々の場所に一層容易に携帯して使用できるようになり、さらには、携帯電話等にもディジタルカメラの機能が組み込まれるようになった。
このようなディジタルカメラを含む撮像装置は、小型化および軽量化が図られ、しかも人が保持するものであるために、必ずしも安定した姿勢において撮影されるものとは限らず、そのため撮影時には、従来にも増して気付きにくい傾きが画像に生じがちである。
一方、撮像装置の撮影手法として、意図的に傾けた構図により撮影するような場合もある。また、撮像姿勢についても、横長の、いわゆる横位置ばかりとは限らず、縦長に構えた、いわゆる縦位置の構図が用いられる場合もある。
いずれにしても、撮像装置には、撮影時に、装置本体の傾きを検出し、この傾きの角度をモニタ画面に表示するなどして、撮影者に画面の傾きを認知させるための機能を備えることが望ましい。
特許文献1(特開2004-343476号)には、静止画像の取得時に、この静止画像の傾きを検出し、この検出した傾きを示す情報を静止画像と共に記録媒体に記録することによって、必要に応じて、後処理により静止画像の傾きを補正し、これによって、ユーザの意図を正しく反映して、撮像結果の傾きを適正に補正することを可能とする撮像装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2007-174156号)には、動画または静止画に対応した撮影モードを設け、静止画撮影モードで、且つ傾きの表示が要求されている場合にのみ、検出された傾き情報から傾きガイド表示信号を生成して表示処理回路に送出し、撮像画像を表示する画面上に傾きガイド表示を表示する撮像装置が開示されている。
さらに、特許文献3(特許第3896505号)には、カメラに設けた姿勢検出手段によってカメラの姿勢を検出し、画像表示手段の画面上にカメラ自体の水平基準線と、カメラの姿勢に依存して変化する傾き情報と、を撮像画像と同時に表示するようにし、撮影者がこれら表示を参照することによってカメラの傾きを修正するこができるようにした撮像装置が開示されている。
なお、姿勢の確認のために、液体中の気泡を利用した水準器、いわゆるレベル、を、ディジタルカメラを含む撮像装置のホットシューを利用して設置可能としたものも市販され
ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような撮像装置においては、例えば特許文献1(特開2004-343476号)に開示された撮像装置の場合、表示画面では棒状の表示部を用いて傾きを表示しているが、傾き検出の精度が固定されており、傾き検出の精度を高くしても、それに応じた表示をすることができないという難点がある。
また、特許文献2(特開2007-174156号)および特許文献3(特許第3896505号)にそれぞれ開示された撮像装置の場合、撮影画像や合成画像の傾きを認知させることによって撮像装置の姿勢を認知させる構成になっており、直観的に把握するには便利であるが、撮像装置の傾きの大きさを高い精度で表示することができない、という難点がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、撮像装置のロール方向の傾きに応じて傾き情報の表示位置や表示形態を切り替えて、使い勝手を良くし、操作性を向上させるユーザインタフェースを実現し得る撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した本発明に係る撮像装置は、上述した目的を達成するために、撮像素子と、前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と、ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と、前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し、撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と、を有する撮像装置において、
前記表示制御手段は、前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり、ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え、
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え、かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず、
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴としている。
請求項2に記載した本発明に係る撮像装置は、請求項1の撮像装置であって、
前記表示制御手段は、前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴としている。
【0006】(削除)
【0007】
請求項7に記載した本発明に係る撮像装置は、前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像装置のロール方向の傾きに応じて傾き情報の表示位置を見易い位置に変化させ、操作性を向上させ得る撮像装置を提供することができる。
即ち、本発明の請求項1の撮像装置によれば、撮像素子と、前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と、ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と、前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し、撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と、を有する撮像装置において、
前記表示制御手段は、前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり、ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え、
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え、かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず、
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことにより、
撮像装置を構えたときのロール方向の傾きに応じて画像表示部における傾き情報が見易くなって、正確に把握することができ、延いては操作性を向上させることができる。
【0009】
本発明の請求項2の撮像装置によれば、前記表示制御手段は、前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることにより、傾きガイド情報を容易に把握することができる。
【0010】(削除)
【0011】(削除)
【0012】
本発明の請求項7の撮像装置によれば、前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることにより、
撮像装置を横位置または縦位置に備えた状態からロール方向に60度を越えるまで傾けた場合に、傾き情報の表示位置が切り替わるため、ロール方向の傾きを的確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置としてのディジタルカメラの外観を示すものであり、(a)は正面図、(b)は背面図、そして(c)は平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る撮像装置のシステム構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置が傾きのある状態から0度付近に戻る際のモニタ表示の表示形態の変化を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置が傾きのある状態から90度近くまで傾いた場合のモニタ表示の表示形態の変化を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置が傾いた状態から90度近くに達した際のモニタ表示の表示形態の変化を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示の傾きガイド表示のピッチ角の表示形態を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示の傾きガイド表示のピッチ角の表示形態を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る撮像装置において大きなピッチ角となるまで傾斜した場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示のロール角とピッチ角の両方の傾きガイド表示を示す図である。
【図11】本発明の第9の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示のロール角とピッチ角の両方の傾きガイド表示の例を説明するための図である。
【図12】本発明の第9の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示のロール角とピッチ角の両方の傾きガイド表示の他の例を説明するための図である。
【図13】本発明の第9の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示のロール角とピッチ角の両方の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図14】本発明の第10の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示のロール角とピッチ角の両方の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図15】本発明の第11の実施の形態に係る撮像装置における横位置の場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図16】本発明の第11の実施の形態に係る撮像装置における横位置の場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図17】本発明の第11の実施の形態に係る撮像装置における横位置の場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図18】本発明の第11の実施の形態に係る撮像装置における縦位置の場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図19】本発明の第11の実施の形態に係る撮像装置における縦位置の場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図20】本発明の第11の実施の形態に係る撮像装置における縦位置の場合のモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図21】本発明の第13の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態を示す図である。
【図22】本発明の第13の実施の形態に係る撮像装置におけるモニタ表示の傾きガイド表示の表示形態の制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づき、図面を参照して本発明の撮像装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態におけるディジタルカメラとして構成した撮像装置の外観を示すものであり、(a)は正面図、(b)は背面図、そして(c)は平面図である。また、図2は、撮像装置内部のシステム構成を模式的に示すブロック図である。
図1(a)(c)に示すように、撮像装置の上面には、レリーズスイッチ(シャッタレリーズボタン)SW1、モードダイヤルスイッチSW2および第1ジョグダイヤルスイッチSW3が配設されている。また、撮像装置の正面側には、ストロボ発光部1、測距ユニット2、光学ファインダ3および鏡胴ユニット4が設けられている。鏡胴ユニット4は、撮影レンズを含んでいる。
撮像装置の背面には、図1(b)に示すように、LCDモニタ5、第2ジョグダイヤルスイッチSW4、ズームスイッチ[テレ(TELE)]SW5、ズームスイッチ[ワイド(WIDE)]SW6、上スイッチSW7、右スイッチSW8、OKスイッチSW9、左スイッチSW10、下/マクロスイッチSW11、ディスプレイスイッチSW12、削除スイッチSW13、メニュースイッチSW14および電源スイッチSW15が設けられている。また、撮像装置の側面には、電池蓋6が設けられている。
【0015】
各スイッチSW1?SW15は、ユーザが操作するスイッチであり、操作キーユニットを構成する。なお、本発明に係る撮像装置としてのディジタルカメラの外観は、必ずしも図1に示す外観に限定されるものではなく、図1と異なる外観を呈していても構わない。
撮像装置としてのディジタルカメラの各部の機能および作用は、公知であるので、その詳細な説明は省略することにし、次に撮像装置内部のシステム構成を図2に基づき図1を参照しながら説明する。
図2において、固体撮像素子(CCD)101は、光学画像を光電変換するための、例えばCCD(電荷結合素子)またはCMOS(相補型金属酸化物半導体)等を用いて構成される撮像素子である。撮像処理手段としてのフロントエンドIC(F/E-IC)102は、画像ノイズ除去用のため相関二重サンプリングを行う相関二重サンプリング部(CDS)1021と、利得調整を行う利得制御部(AGC)1022と、アナログ-ディジタル変換を行うA/D(アナログ-ディジタル)変換部1023と、駆動タイミング信号を発生するタイミング信号発生部(TG)1024と、を有するIC(集積回路)として構成される。ここで、TG1024には、第1CCD信号処理ブロック1041より、垂直同期信号VDおよび水平同期信号HDが供給されると共に、CPUブロック1043より出力される信号によってCCD101およびF/E-IC102に対し駆動タイミング信号を出力する。
【0016】
ディジタルスチルカメラプロセッサ104(以下、「プロセッサ104」と称する)は、CCD101からF/E-IC102を介しての出力画像データにホワイトバランス設定およびガンマ設定を行い、且つF/E-IC102のTG1024に垂直同期信号VDおよび水平同期信号HDを供給する第1CCD信号処理ブロック1041と、フィルタリング処理により、画像データの輝度データ・色差データへの変換を行う第2CCD信号処理ブロック1042と、装置各部の動作を制御する中央処理ユニット(CPU)ブロック1043と、制御に必要なデータ等を一時的に保存するためのローカルSRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)1044と、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器とUSB通信を行うためのUSBブロック1045と、PC等の外部機器とシリアル通信を行うためのシリアルブロック1046と、JPEG圧縮/伸張を行うJPEGコーデック(JPEG-CODEC)ブロック1047と、画像データのサイズを補間処理により拡大/縮小するリサイズ(RESIZE)ブロック1048と、画像データを液晶(LCD)モニタ5やTV(テレビジョン)受像機等の外部表示機器に表示させるためのビデオ信号に変換するTV信号表示ブロック1049と、撮影された画像データを記録するためのメモリカードの制御を行うメモリカードコントローラブロック10410と、を有している。これらの各ブロックは、バスラインを介して相互に接続されている。
【0017】
また、プロセッサ104の外部には、RAW-RGB画像データ(ホワイトバランス調整およびγ調整が行われただけの状態のRGB画像データ)、YUV画像データ(輝度データ・色差データ変換が行われた状態の画像データ)、JPEG画像データ(JPEG圧
縮された状態の画像データ)を保存するSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ)103が配置され、このSDRAM103は、プロセッサ104にメモリコントローラ(図示せず)、バスラインを介して接続されている。
このSDRAM103は、プロセッサ104で画像データに各種処理を施す際に、画像データを一時的に保存する。保存される画像データは、例えば、CCD101から、F/E-IC102を経由して取り込んで、第1CCD信号処理ブロック1041でホワイトバランス調整およびガンマ調整が行われた状態のRAW-RGB画像データや、第2CCD信号処理ブロック1042で輝度データ・色差データ変換が行われた状態のYUV画像データ、JPEG・CODECブロック1047で、JPEG圧縮されたJPEG画像データなどである。
プロセッサ104の外部には、さらに、RAM等の内蔵メモリ(メモリカードスロットにメモリカードが装着されていない場合でも撮影画像データを記憶するための内蔵メモリ)107、制御プログラムおよびパラメータなどが格納されたROM(図示せず)が設けられ、これらもバスラインによってプロセッサ104に接続されている。
【0018】
ROMに格納される制御プログラムは、ディジタルカメラの電源スイッチSW15をオンすると、プロセッサ104のメインメモリ(図示せず)にロードされ、プロセッサ104はその制御プログラムに従って各部の動作制御を行うとともに、制御データおよびパラメータ等を内蔵メモリ107等に一時的に保存させる。
鏡胴ユニット4は、被写体の光学画像を取り込むズームレンズ41aを有するズーム光学系41、フォーカスレンズ42aを有するフォーカス光学系42、絞り43aを有する絞りユニット43およびメカニカルシャッタ44aを有するメカニカルシャッタユニット44からなるレンズ鏡筒を備えている。なお、ズームレンズ41a、フォーカスレンズ42aおよび絞り43aは、撮影光学系を構成している。また、撮影光学系の光軸をZ軸とするとともに、このZ軸に直交する平面をX-Y平面とする。
ズーム光学系41、フォーカス光学系42、絞りユニット43およびメカニカルシャッタユニット44は、それぞれ、ズームモータ41b、フォーカスモータ42b、絞りモータ43bおよびメカニカルシャッタモータ44b、によって駆動されるようになっている。
【0019】
この鏡胴ユニット4の各モータ41b?44bは、モータドライバ45によって駆動され、モータドライバ45は、プロセッサ104のCPUブロック1043によって制御される。
また、鏡胴ユニット4の各レンズ系により得られた光学像を光電変換する固体撮像素子であるCCD101の受光面には、被写体光学像が結像され、CCD101は、被写体光学像を電気的画像情報に変換してF/E-IC102に画像信号を出力する。
これらの信号制御処理は、プロセッサ104の第1CCD信号処理ブロック1041から出力されるVD(垂直同期)-HD(水平同期)信号によりTG1024を介して行われる。そのTG1024は、そのVD-HD信号に基づき駆動タイミング信号を生成する。
プロセッサ104は、CCD101からF/E-IC102を経由して得られる出力データにホワイトバランス調整およびガンマ調整を行うために、第1CCD信号処理ブロック1041により、垂直同期信号VD、水平同期信号HDを供給し、そして第2CCD信号処理ブロック1042により、フィルタリング処理による輝度データ・色差データへの変換を行う。
【0020】
また、CPUブロック1043は、装置各部の動作を制御し、制御に必要なデータ等をローカルSRAM1044に一時的に保存する。また、プロセッサ104は、加速度センサ111から送出される角度データを基に撮像装置の傾きを示すデータを算出しLCDドライバ108を介してその傾き情報を、液晶ディスプレイ(LCD)モニタ5に表示する(詳細は後述する)。
CPUブロック1043は、さらに、ストロボ回路114を制御することによってストロボ発光部1から照明光を発光させる。これに加えて、CPUブロック1043は、測距ユニット2をも制御する。
CPUブロック1043は、プロセッサ104のサブCPU112に接続され、サブCPU112は、操作スイッチSW1?SW15からなる操作キーユニットに接続されている。この操作キーユニット(SW1?SW15)は、ユーザが操作するキースイッチ群からなる操作部である。また、サブCPU112は、ROM・RAMをワンチップに内蔵したCPUであり、操作キーユニット(SW1?SW15)などの出力信号をユーザの操作情報として、CPUブロック1043に出力する。
【0021】
USBブロック1045は、パソコン等の外部機器とUSBコネクタ(図示せず)を介してUSB通信を行い、また、シリアルブロック1046は、シリアルドライバ回路(図示しない)からRS-232Cコネクタ等のシリアル通信コネクタを介して外部機器に接続され、シリアル通信を行う。TV信号表示ブロック1049は、LCDドライバ108を介してLCDモニタ5に接続されるとともに、ビデオアンプ(ビデオAMP)〔TV信号表示ブロック1049から出力されたビデオ信号を75Ωインピーダンスに変換するためのアンプ(アンプリファイア?増幅器)〕109を介してビデオジャック(カメラをTVなどの外部表示機器に接続するためのジャック)110に接続されている。メモリカードコントローラブロック10410は、メモリカードスロット(図示せず)のカード接点に接続されている。I2C(Inter Integrated Circuit?I2C)ブロック10411は、傾き検出手段としての加速度センサ111に接続されている。
LCDドライバ108は、駆動回路であり、LCDモニタ5を駆動すると共にTV信号表示ブロック1049から出力されたビデオ信号をLCDモニタ5に表示させる信号に変換する。LCDモニタ5は、モニタ用の表示装置であり、撮影前の被写体の状態を監視すること、また撮影画像を確認することおよび後述する撮像装置の傾きを表示することを意図し、メモリカードまたは内蔵メモリ107に記録された画像データおよび撮像装置の傾き情報を表示するために用いられる。
【0022】
ビデオAMP109は、TV信号表示ブロック1049から出力されるビデオ信号を、75Ωインピーダンス変換するための増幅器であり、ビデオジャック110は、TV受像機等の外部表示機器に接続するための接続ジャックである。
サブCPU112は、ROM/RAMをワンチップに内蔵したCPUであり、前述の操作キーユニット(SW1?SW15)などの出力信号を、ユーザの操作情報として、前述したCPUブロック1043に出力する。内蔵メモリ107は、撮影した画像データを記憶できるようにするためのメモリである。
傾き検出手段としての加速度センサ111は、前述した各部を構成したプリント回路基板(PCB)上に実装され、2軸X,Yのデータ(X,Y)と、温度Tのデータを検知してプロセッサ104のI2Cブロック10411に送出する。プロセッサ104は、I2Cブロック10411を介して加速度センサ111から与えられたデータを基に、表示すべきロール角等の傾き情報を、例えばCPUブロック1043により演算し(傾き算出手段)、このロール角の表示スケールの大きさに対応した表示画像を選択し(表示処理手段)、この表示画像上の当該ロール角を示す位置に目印となるマーカMの画像を合成して得られた画像をLCDモニタ5等(画像表示装置)に表示する。
【0023】
X0およびY0を2軸X,Yのデータ(X,Y)の各々の重力ゼロ時の出力データとする時、加速度センサ111の水平に対するロール角θは、次の(1)式で示される。
θ[deg]=180/π*arctan{(Y-Y0)/(X-X0)} …(1)
同様に、撮像装置のピッチング方向の傾きを検出し得るように設置された、他の加速度センサ111は、表示すべきピッチ角を検出し、そのデータをプロセッサ104に送出す
る。プロセッサ104は、加速度センサ111から送出されたデータを基に、表示する撮像装置の傾き(ピッチ角)を、例えばCPUブロック1043により演算し(傾き角算出手段)、LCDモニタ5の一部に撮影画像と重畳して表示することができる(但し、この機能はオプショナルであって省略可能とするが、この機能を設ける場合は、ロール角だけ、またはピッチ角だけ、もしくはロール角とピッチ角の両方、を表示させることをユーザに選択指示させるための選択ボタンを設けることが好ましい)。
プロセッサ104は、ロール角および/またはピッチ角のLCDモニタ5への表示に際し、算出したロール角および/またはピッチ角の大きさを判定し、この角度の大きさに応じて、この角度を表示する表示スケールのレンジを変化させる。この表示スケールには、あたかも液体を用いた水準器、いわゆるレベル、における気泡のような疑似的な気泡像であるマーカMの表示を付加しており、このマーカMが位置するスケールの目盛を見ることによって当該角度を認識する。このため、プロセッサ104は、レンジを選択した表示スケール上に、当該角度を示すマーカMの画像を合成してLCDモニタ5で表示する。また、当該角度は、内蔵メモリ107等に記録するものとする。
【0024】
プロセッサ104は、(1)式で求められるロール角(撮像装置の傾きを直接的に示すものではない)が、撮像装置が図3(a)に示すような状態、即ち、撮像装置が水平に対し、0度±5度から±60度の範囲である場合は、ロール角を示す表示スケールB1を、LCDモニタ5の表示画面に対して横向き(撮像装置の表示画面の長手方向に沿う方向)状態で前記画面に表示するように構成することができる。一方、撮像装置の水平に対する左右方向のロール角が所定の小範囲以内、例えば、0度±5度と水平近傍に至ると、ロール角を精度良く目測することができるように、図3(b)に示すように表示スケールB2のレンジを自動的に拡大させる。また、さらにロール角が図4(b)に示すように、±60度を越えると画面表示を縦向き状態(縦位置)に切り替えるように構成することができる。
さらに、撮像装置は、ロール角が90度±5度(垂直近傍)の領域になると、表示スケールB2を拡大させ、精度を上げるようにする。一般に、ユーザは、撮像装置が水平から左右に大きく傾いている時には、表示スケールB1は、ほとんど目視しなくとも撮像装置が傾いていることを認知することができる。しかしながら、撮像装置が撮影姿勢と考えられる水平状態になった時には、撮像装置が正しく水平になっているか否かを厳密に確認したくなるものであることからして、この実施形態に係る撮像装置では、前述のとおり、ロール角が水平近傍(0度±5度)である場合には、表示スケールB2のレンジを拡大させることができるので、マーカMの位置を精度よく読み取ることができ、このようなユーザの要求に対しても的確に応じることができる。
【0025】
なお、垂直近傍とは、必ずしも0度±5度に限定されるものではなく、例えば、0度±4?7度であってもよい。
また、図6に示すように、プロセッサ104は、常に1つの表示スケールのみを表示するように構成すると共に、この表示スケールB3の目盛間隔(スケール)を等間隔、つまり線形的には、表示せずに、ロール角が水平に近い場合(マーカMが中央付近にある場合中央)部分を細かいレンジで表示し、ロール角が水平に近くない場合、例えば、0度±5度から60度±5度の場合は、マーカMが位置する部分を粗いレンジで表示するような、非線形的な表示を行うように構成することもできる。
これにより、ロール角を、表示スケールB3自体の切り替えを行うことなく、1つの表示スケールのみを使用し、しかも精度が必要なタイミングでは高い精度で表示することができる。例えば、ロール角が±1度以降を対数表示にしたり、べき乗表示にしたりすることで表示スケールの目盛間隔を任意に非線形的に変更することもできる。
【0026】
また、プロセッサ104の一部に含まれる表示処理手段は、前述のロール角の表示方法において、ロール角が水平に近い状態(0度±5度)である場合と、水平に近くない通常
状態(0度±5度から0度±60度)である場合とで、加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数を変えるように構成することができる。即ち、水平に近くない通常状態の場合には、瞬時に撮像装置の大体の傾きを表示できるように加速度センサ111におけるロール角のサンプリング数・平均処理数が少なくなるように制御し、これにより、撮像装置の傾きが急激に変えられた場合にも対応することが可能となる。一方、水平状態に近い場合(0度±5度)では、表示処理手段は、加速度センサ111におけるロール角の加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数が多くなるように制御することで、傾きの値を高精度で表示するように構成することができる。また、通常状態と水平状態とで、表示スケールに沿って移動するマーカMの移動スピードを変えるように構成することができる。即ち、通常状態では応答速度を上げることで対応を素早くすることを優先させ、水平状態では応答速度を遅くして、ユーザが撮像装置を水平に合わせ易くすることを優先させることができる。
【0027】
また、プロセッサ104は、ピッチ角(いわゆる前後方向の傾き角)が、0度±5度から0度±60度の範囲に入る場合は、図8に示すように、幅広いレンジを持つピッチ角の表示スケールB4をLCDモニタ5の表示画面に対して縦向き状態で前記画面に表示するように構成することができる。
また、この表示スケールB4のレンジは、ピッチ角が0度近傍(0度±5度)と垂直近傍(90度±5度)に近づくと、撮像装置の傾きを精度良く目測することができるように、即ち、図7に示す表示スケールB5のように、レンジを自動的に拡大させ高精度な読取りができるように構成することができる。
また、プロセッサ104(表示処理手段)は、前述のピッチ角の表示方法において、ピッチ角が垂直に近い状態(90度±5度)である場合と、垂直に近くない通常状態(0度±5度から0度±30度)である場合とで、加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数を変えるように構成することができる。即ち、垂直に近くない通常状態(0度±5度から0度±30度)の場合には、瞬時に撮像装置の大体の傾きを表示できるように加速度センサ111におけるピッチ角のサンプリング数・平均処理数が少なくなるように制御し、これにより、撮像装置の傾きが急激に変えられた場合にも対応することが可能となる。
【0028】
一方、垂直に近い(垂直近傍の)場合(90度±5度)では、プロセッサ104は、加速度センサ111におけるピッチ角の加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数が多くなるような制御をすることで、傾きの値を高精度で表示するように構成することができる。また、通常状態(水平近傍を逸脱した状態)と水平に近い状態とで、表示スケールに沿って移動するマーカMの移動スピードを変えるように構成することができる。即ち、通常状態では応答速度を上げることで対応を素早くすることを優先させ、水平状態では応答速度を遅くしてユーザが撮像装置を水平に合わせ易くすることを優先させることができる。
以下では、ロール角とピッチ角の両方を組み合わせて表示させる場合の表示処理手段の機能を果たすプロセッサ104の処理を説明する。
プロセッサ104は、ロール角が0度±60度以下である場合、このロール角を、LCDモニタ5の表示画面に対して横向き状態の表示スケールB1とマーカMとで表示し、ピッチ角は、図10に示すように、縦向き状態の表示スケールB5とマーカMとで表示するように構成することができる。また、ロール角が0度±60度を越える場合(図示せず)には、ロール角の表示を縦向き状態の表示スケールに切り替えると共に、ピッチ角の表示を横向き状態の表示スケールに切り替えるように構成することができる。
【0029】
また、プロセッサ104は、表示レンジの幅を広く表示する表示スケールと、表示レンジの幅を狭く表示する表示スケールとで、その着色を異なるものとするように構成することができる。例えば、ロール角および/またはピッチ角が0度±5度の状態から0度±6
0度の状態へと傾きが大きくなった際には、表示スケールの着色を変える構成とする。また、ロール角および/またはピッチ角が90度±5度の状態から、90度±30度の状態へと傾きが大きくなった際にも表示スケールの着色を変える構成とする。なお、この着色の変化形態としては、例えば、黒色の表示スケールから赤色の表示スケールへの切り替えを行うことが考えられる。
さらに、撮像装置の操作面に、ロール角だけ、またはピッチ角だけ、もしくはロール角とピッチ角の両方、を傾きガイド表示させることをユーザに選択指示させるための選択ボタン(図示せず)を設ける構成とすることができる。
図3?10は、本発明の実施の形態に係る撮像装置において傾きを表示する表示方法を示す説明図である。
以下、図3?9を参照し、第1?第8の実施の形態に係る撮像装置においてその傾きを表示する具体的表示方法について説明する。
なお、以下に示す各実施の形態における処理は、主として加速度センサ111、プロセッサ104およびLCDモニタ5等により行われる。
【0030】
〔第1の実施の形態〕
この第1の実施の形態では、先に述べた(1)式で求められるロール角が、0度±5度から±60度の範囲である場合は(おおむね画面の長手方向がほぼ水平向きの横位置と考えられる)、図3(a)に示すように、ロール角を示す表示スケールB1を表示し、また、LCDモニタ5の表示画面に対して横向き状態(撮像装置の長手方向)で前記画面の下端近傍位置に表示するように構成してある。この表示スケールB1のレンジは、ロール角が0度±5度と水平に近づいた領域、即ち水平近傍領域に達すると、ロール角を精度良く目測することができるように、自動的にレンジを拡大させる。(図3(a)に示す表示スケールB1のレンジよりも図3(b)に示す表示スケールB2のレンジの方が目盛が拡大されており精度が高い)。また、図4(b)のように、ロール角が±60度を越えると(おおむね画面の長手方向がほぼ垂直向きの縦位置と考えられる)、表示スケールB1のように、自動的に表示が縦向き状態に切り替えられる。さらに、図5(a)に示すように、ロール角が90度±5度から90度±30度の範囲に入る場合は、縮小されたレンジの表示スケールB1を表示し、また、図5(b)に示すように、ロール角が垂直に近い90度±5度の場合は、レンジが拡大されて高精度で角度を出すことができる表示スケールB2を表示するようになる。
【0031】
〔第2の実施の形態〕
この第2の実施の形態では、図6に示すように表示スケールとしては1つの表示スケールB3だけを表示し、この表示スケールB3の目盛間隔(スケール)を線形的な等間隔には表示せずに、ロール角が水平に近い領域の目盛は、細かいレンジで表示し、ロール角が水平に近くない(ロール角が0度±30度)の領域のスケール目盛は、粗いレンジで表示するように構成してある。このように構成することにより、表示スケール自体の切り替えを行うことなくロール角を合理的に表示することができる。表示方法としては、例えば、ロール角が±1度以降を対数表示にしたり、べき乗表示にしたりする方法で表示スケールB3の目盛間隔を任意に変更することが可能である。
【0032】
〔第3の実施の形態〕
この第3の実施の形態では、ロール角またはピッチ角の表示方法としては、第1および第2の実施の形態に示す表示方法と同じであるが、プロセッサ104は、ロール角またはピッチ角が水平に近い状態(0度±5度)である場合と、水平ではない状態(0度±5度から0度±60度)にある場合とで、加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数を変えるように構成するものである。即ち、水平ではない通常状態の場合であると、瞬時に撮像装置の大体の傾きを表示できるように加速度センサ111におけるロール角またはピッチ角のサンプリング数・平均処理数が少なくなるように構成し、一方、ロール角また
はピッチ角が水平状態に近い場合では、プロセッサ104は、加速度センサ111におけるロール角の加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数を多くなるように構成して、傾きの値を高精度で表示することができるようにする。また、この実施の形態においては、通常状態と水平状態とで、表示スケール(B1,B2)に沿って移動するマーカMの移動スピードを変えるように構成することもできる。通常状態では、応答速度が上げられて素早く対応することが可能となり、水平状態では応答速度が遅くはなるが、ユーザが撮像装置を水平に合わせ易くすることができる。
【0033】
〔第4の実施の形態〕
この第4の実施の形態では、ピッチ角が0度±5度から0度±60度の範囲に入る場合は、図9に示すように、幅広い範囲のレンジ(粗いレンジ)を持つピッチ角の表示スケールB4をLCDモニタ5の表示画面に対して縦向き状態で前記画面に表示している。
また、この表示スケールB4のレンジは、ピッチ角が0度±5度と水平に近づくに連れて、撮像装置の傾きを精度良く目測することができるように、図7、図8に示す表示スケールB5のように、レンジを自動的に拡大表示させる。
【0034】
〔第5の実施の形態〕
この第5の実施の形態では、ピッチ角の表示方法としては、第4の実施の形態に示す表示方法と同じであるが、プロセッサ104は、ピッチ角が垂直に近い状態(90度±5度)である場合と、垂直ではない状態(90度±5度から90度±60度)である場合とで、加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数を変えるように構成した点が異なる。即ち、通常状態の場合であると、瞬時に撮像装置の大体の傾きを表示できるように加速度センサ111におけるピッチ角のサンプリング数・平均処理数が少なくなるように構成し、一方、ピッチ角が水平状態に近い場合では、プロセッサ104は、加速度センサ111のサンプリング数や平均処理数を多くなるように構成し、傾きの値を高精度で表示することができるように構成する。また、この実施の形態では、通常状態と水平状態とで、表示スケール(B1,B2)を移動させるマーカMの移動スピードを変えるように構成してある。このように構成することで、通常状態では応答速度が上げられて素早く対応することが可能となり、水平状態では応答速度が遅くなり、ユーザが撮像装置を水平に合わせ易くなる。
【0035】
〔第6の実施の形態〕
以下では、ロール角とピッチ角とを組み合わせた第6の実施の形態について図10を参照して説明する。
この第6の実施の形態では、図10に示すように、ロール角が0度±5度以下である場合、このロール角をLCDモニタ5の表示画面に対して横向き状態の表示スケールB2で表示し、ピッチ角は縦向き状態の表示スケールB5で表示している。また、ロール角が0度±60度を越えると、図示はしないが、ロール角の表示を縦向き状態の表示スケールに切り替えると共に、ピッチ角の表示を横向き状態の表示スケールに切り替える。
【0036】
〔第7の実施の形態〕
この第7の実施の形態では、表示レンジの幅を広く表示する表示スケールと、表示レンジの幅を狭く表示する表示スケールとで、その着色を異なるものとしている。例えば、ロール角および/またはピッチ角が0度±5度の状態では、黒色の表示であったものを、0度±60度の状態へと傾きが大きくなった際には表示スケールの色を赤色に変えるようにする。また、ロール角および/またはピッチ角が90度±5度の状態から、90度±30度の状態へと傾きが大きくなった際にも表示スケールの色を、例えば、黒色から赤色に変えるようにする。なお、表示スケールの色としては、黒と赤に限ることはなく、青、緑、黄等の組合わせでもよい。
【0037】
〔第8の実施の形態〕
この第8の実施の形態では、撮像装置の操作面に、ロール角だけ、またはピッチ角だけ、もしくはロール角とピッチ角の両方、を表示させることをユーザに選択指示させるための選択ボタン(図示せず)を設けている。
ユーザにとっては、撮影対象に応じて、適宜選択ボタンを操作して的確な撮影を行うことができ利便性が向上する。
【0038】
〔第9の実施の形態〕
次に、上述の撮像装置において、加速度センサ111として直交する3軸の加速度センサを用い、撮像装置のロール角とピッチ角の両方を表示させることを前提とした本発明の第9の実施の形態について説明する。
このように直交する3軸の出力を有する加速度センサ111を用い、この加速度センサ111が撮像装置に組み込まれる方向がわかっていれば、それぞれの軸にかかる加速度の大きさは重力加速度をその軸方向に分解したものになっているため、撮像装置のあらゆる方向の傾きを正確に知ることができる。
この場合、図10に示すように、撮像装置を横位置に構えたときに、Z軸のまわりの回転がロール方向、X軸のまわりの回転がピッチ方向、Y軸のまわりの回転がヨー方向となる。撮像装置を横にほぼ水平に構えたとき、Y軸が検出する加速度は、ほぼ重力加速度に等しく、X軸およびZ軸が検出する値はほぼゼロとなる。このように、重力加速度を主に検出しているのがどの軸であるかを検出することにより、撮像装置の概略の向きを知ることができる。
加速度センサ111が検出した傾きデータは、I2Cブロック10411を介してCPUブロック1043が受信し、重力加速度の主要検出軸および傾きの大きさをソフトウェアまたはハードウェア的に算出し、その結果を表示装置に表示する。
【0039】
このとき、図11に示すように、ロール方向およびピッチ方向の傾きであるロール角およびピッチ角を撮像装置のLCDモニタ5に表示する。
図11の場合、ロール角を示す傾きガイド表示G1およびピッチ角を示す傾きガイド表示G2の表示形態はほぼ同一であるが、表示画面の長手方向に沿う傾きガイド表示G1のゲージがロール方向の傾き、そして表示画面の短手方向に沿う傾きガイド表示G2のゲージがピッチ方向の傾きを示す。それぞれのゲージにおいて、四角いマークの位置が図示のように中央にあるときに傾き、つまりロール角およびピッチ角がゼロ、中央から離れるにつれて傾き角度、つまりロール角およびピッチ角が大きくなることを意味する。
図12に、撮像装置を縦位置に構えたときの表示例を示している。この場合では、ロール方向およびピッチ方向の傾きガイド表示の表示形態は、見かけ上は、図11の場合とほとんど同一であるが、図11との違いは、表示装置の短手方向のゲージを有する傾きガイド表示G3がロール方向の傾きであるロール角を示し、長手方向のゲージを有する傾きガイド表示G4がピッチ方向の傾きであるピッチ角を示している。
【0040】
しかしながら、このように構える方向を変えた場合のロール方向とピッチ方向の傾きガイド表示が入れ替わることで、両者の区別がつきにくくなる。これに対処するため、この実施の形態においては、図13に示すように、ロール方向とピッチ方向の傾きガイド表示の表示色を異ならせ、ロール方向の傾きガイド表示Gr1のマーカの表示色を、例えば赤色とし、そしてピッチ方向の傾きガイド表示Gp1のマーカの表示色を、例えば青色とする。この場合、例えば、撮像装置の向きを図13の横位置から縦位置に変更した場合にも、赤色のほうがロール方向の傾きガイド表示Gr1、そして青色のほうがピッチ方向の傾きガイド表示Gp1となる。このように、表示色を異ならせることによって、縦横が入れ替わった場合においても、それぞれの傾きガイド表示のゲージとロール角およびピッチ角の関係が直感的に理解できるようになる。
【0041】
〔第10の実施の形態〕
第10の実施の形態においては、同様の目的で、図14に示すように、ロール方向とピッチ方向の傾きガイド表示の表示形態を異ならせ、例えばロール方向の傾きガイド表示Gr2のゲージを中央が最も高さが低く幅狭で両端へ向かうに従って漸次高さが高く幅広となる形状とし、そしてピッチ方向の傾きガイド表示Gp2のゲージを通常の幅が均一な長方形状の形状とする。この場合も、例えば、撮像装置の向きを図14の横位置から縦位置に変更した場合にも、両端の幅が広いほうがロール方向の傾きガイド表示Gr2、そして幅が均一のほうがピッチ方向の傾きガイド表示Gp2となる。このように、表示形態を異ならせることによって、縦横が入れ替わった場合においても、それぞれの傾きガイド表示のゲージとロール角およびピッチ角の関係が直感的に理解できるようになる。
なお、これら第9および第10の実施の形態において、ピッチ方向の傾きガイド表示の表示を必ずしも必要としない場面では、プログラムの設定により、ピッチ方向の傾きガイド表示を非表示とする手段を設けることも、図1および図2に示す構成において実現可能である。即ち、それぞれのゲージの表示有無を設定する画面をLCDモニタ5等の表示手段に表示し、操作ボタン(図示せず)などを用いて設定を行った結果をEEPROMまたはメインメモリに記憶させ、表示時に呼び出した設定内容に従って表示を行うなどすればよい。
【0042】
〔第11の実施の形態〕
次に、上述の撮像装置において、加速度センサ111として直交する2軸の加速度センサを用い、撮像装置のピッチ角が所定の範囲内であるときにのみロール角の傾きガイド表示を表示させることを前提とした本発明の第11の実施の形態について説明する。
加速度センサ111は、プロセッサ104等が実装されるメインのPCB(プリント配線基板)、即ちメインボード上に撮像装置に対して垂直に実装され、直交する2軸XおよびYと温度Tのデータを出力する。そのデータから撮像装置の傾きを演算し、それに相応する傾きガイド表示をLCDモニタ5等に表示する。
加速度センサ111の水平に対するロール角θは、先に述べた(1)式であらわされ、ピッチ角φは、次の(2)式であらわされる。
φ[deg]=180/π*arctan(Gz/Gxy)
Gz=sqrt(Gxyz2-Gxy2)
Gxy=sqrt{(X-X0)2+(Y-Y0)2} …(2)
ここでGxyzは、1Gの時の出力値、X0およびY0は、各々重力ゼロ時の出力である。
【0043】
そして、加速度センサ111を撮像装置に対して垂直に実装する。より具体的には、加速度センサ111は、例えば、撮像装置の背面側から見て、右端寄りで且つ下端寄りの部分のメインボード上に垂直に実装されるが、必ずしもこの位置にかぎられるもにではない。この状態でピッチ角を増加させてゆくと、加速度センサ111から出力されるX軸およびY軸の出力値が、次第に小さくなって、ノイズやオフセットずれの影響を受け易くなる。つまり、ピッチ角をつければつけるほど、ロール角の表示精度は低下してゆくことになる。そこで、図15?図17および図18?図20に示すようにピッチ角がある角度となった場合、例えば表示を点滅させること、バーに表示していた角度を示すマーカを消すこと、警告音を鳴らすことなどによって警告する。図15?図17は、横位置の場合を示し、それぞれ(a)は、斜視図、(b)は、側面図である。図15は、撮像装置がほぼ鉛直の状態を示しており、図16は、ややピッチ角を付けた状態を示しており、図17は、大きくピッチ角を付けた場合で、警告のためにロール角の傾きガイド表示Gが点滅している状態を示している。図18?図20は、縦位置の場合を示し、それぞれ(a)は、斜視図、(b)は、側面図である。図18は、撮像装置が縦位置でほぼ鉛直の状態を示しており、図19は、ややピッチ角を付けた状態を示しており、図20は、大きくピッチ角を付けた場合で、警告のためにロール角の傾きガイド表示Gが点滅している状態を示している。
【0044】
〔第12の実施の形態〕
次に、上述の撮像装置において、撮像装置の温度が所定の範囲内であるときにのみロール角の傾きガイド表示を表示させることを前提とした本発明の第12の実施の形態について説明する。
温度を変化させるとそれに応じて加速度センサ111のX軸およびY軸の出力値が変化する。例えば、温度を上げることにより、X軸およびY軸の出力値が小さくなるとすると、このような場合にはノイズやオフセットずれの影響を受け易くなる。そこで、加速度センサ111の出力Tが規格範囲外の温度となる出力値となった場合には、それまで表示していたピッチ角もしくはロール角の表示を点滅させること、バーに表示していた角度を示すマーカMを消すこと、警告音を鳴らすことなどによって警告する。
この場合にも、表示形態は、例えば図17および図20の場合とほぼ同様となる。
【0045】
〔第13の実施の形態〕
次に、本発明の撮像装置に係る第13の実施の形態について説明する。
上述の撮像装置において、ピッチ角を増大させていって撮像装置を平伏せ状態とした場合には、XおよびYがともに0Gとなりロール角を算出することができない。このような0Gの近傍でもXおよびYの出力値が低下するため、精度が悪くなる。そこで、図21に示すように撮像装置の角度によって傾きガイド表示Gの表示バーの位置を変化させるとすると、XおよびYが0G付近(例えば閾値0.1G以下)では傾きガイド表示Gの表示バーの位置を、図21の(a)のように長手方向に沿って配置するか、図21の(b)のように短手方向に沿って配置するかどちらにすればよいか判別することができない。そのような場合における表示方法を、図22のフローチャートに示している。
t=nの時の出力値Xt=nおよびYt=nが各々0.1G以下であるか否かを判別し(ステップS11)、両者が0.1G以下ではないときは、そのまま出力値Xt=nおよびYt=nを用いてθを計算して(ステップS12)、モニタに表示する(ステップS13)。
【0046】
ところが、Xt=nおよびYt=nの出力値が共に0.1G以下のときは、XおよびYの出力値が、m秒前において共に0.1G以下ではないか否かを判別し(ステップS14)、共に0.1G以下ではないm秒前の出力値Xt=n-mおよびYt=n-mからその角度θを判断し、表示バーの位置を決めて(ステップS15)、ステップS13に移行し、モニタに表示する。そのとき、どちらかの出力値が0.1G以上になるまでその傾きガイド表示のバーの位置を固定し、むやみにバーの位置が変わり見づらくなるのを防ぐ。これは再生時も同じであり、撮像装置の角度により表示向きを回転させるときに、撮像装置を平伏せ状態にすると画像をどちらに回転させればいいか判別できないが、これもモニタリングの表示バーと同様の処理で表示向きを変更する。なお、mの値をいくつにしてもm秒前の状態のXt=n-mおよびYt=n-mが共に0.1G以下にしかならない場合には、第11の実施の形態とほぼ同様にして、警告表示を行う(ステップS16)。
【0047】
〔第14の実施の形態〕
次に、本発明の撮像装置に係る第14の実施の形態について説明する。
ピッチ角をつけていって、XおよびYが共に閾値以下の出力値になった時に、先に述べた通り警告表示とする場合には、高い精度を得る必要がなくなるため、サンプリング数を少なくして、プロセッサ104等の処理系に負荷がかかるのを防ぎ、消費電力を下げるようにする。
【符号の説明】
【0048】
1 ストロボ発光部
2 測距ユニット
3 光学ファインダ
4 鏡胴ユニット
5 LCDモニタ
6 電池蓋
104 ディジタルスチルカメラプロセッサ
108 LCDドライバ
111 加速度センサ
112 サブCPU
1041 第1CCD信号処理ブロック
1043 CPUブロック
10411 I2Cブロック
SW1?SW15 操作キー
B1、B2、B3、B4、B5 表示スケール
M マーカ
G 傾きガイド表示
Gp1、Gp2 ピッチ角の傾きガイド表示
Gr1、Gr2 ロール角の傾きガイド表示【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】 特開2004-343476号公報
【特許文献2】 特開2007-174156号公報
【特許文献3】 特許第3896505号公報
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、前記撮像素子により撮像された画像を表示する画像表示部と、ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と、前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾きに応じてロール方向の傾きを示すマーカを含むロール方向の傾きガイド表示を表示し、撮像装置のロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替える表示制御手段と、を有する撮像装置において、
前記表示制御手段は、前記傾き検出部により検出されたピッチ方向の傾きが所定の範囲内であり、ロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替え、
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超え、かつロール方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示の表示位置を切り替えず、
ピッチ方向の傾きが所定の範囲を超えた場合は、前記ロール方向の傾きガイド表示に表示していた前記マーカを消すことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記傾きガイド表示の表示位置を水平方向および/または垂直方向の端辺部に沿った位置に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記ロール方向の傾きの所定の範囲は±60度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-22 
出願番号 特願2017-156346(P2017-156346)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G03B)
P 1 651・ 841- YAA (G03B)
P 1 651・ 121- YAA (G03B)
P 1 651・ 113- YAA (G03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金高 敏康  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
清水 康司
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6409925号(P6409925)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 撮像装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 阿部 琢磨  
復代理人 新川 圭二  
代理人 真田 修治  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 黒岩 創吾  
復代理人 新川 圭二  
代理人 伊東 忠重  
代理人 真田 修治  

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