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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65G
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65G
管理番号 1360489
異議申立番号 異議2018-700907  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-09 
確定日 2020-02-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6321794号発明「選別ステーションにおいて所望の順序で保管ユニットを保管設備から利用できるようにすることによる注文調達方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6321794号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第6321794号の請求項1ないし7、9ないし13、15及び16に係る特許を維持する。 特許第6321794号の請求項8及び14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6321794号の請求項1?16に係る特許についての出願は、2014年7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月17日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成30年4月13日に特許権の設定登録がされ、同年5月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年11月 9日 :特許異議申立人大隅庸平(以下「異議申立
人」という。)による請求項1?16に係
る特許に対する特許異議の申立て
平成31年 2月14日付け:取消理由通知書
平成31年 4月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

令和 1年 6月17日 :異議申立人による意見書の提出
令和 1年 7月10日付け:手続補正指令書(方式)
令和 1年 7月19日 :手続補正書の提出
令和 1年 7月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 1年11月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

令和 1年11月25日 :特許権者による上申書の提出
令和 2年 1月 6日 :異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和1年11月5日の訂正の請求(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記各リフトは、前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)により選別レベルで選別ステーション(10)に直接に接続されることを特徴とする」とあるのを、
「前記各リフトは、前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)により選別レベルで選別ステーション(10)に直接に接続され、
前記シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を推し進めることで能動的に移動させ、
注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、
前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ、
これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される、
ことを特徴とする」に訂正する(下線は、特許権者が付与。以下同様。)。
(請求項1の記載を引用する請求項2?7、9?13、15及び16も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9が引用する請求項を、「請求項8」から「請求項1」に訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項10?13、15及び16も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10が引用する請求項を、「請求項1から9のいずれか一項」から、「請求項1から7及び請求項9のいずれか一項」に訂正する。
(請求項10の記載を引用する請求項11?13、15及び16も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11が引用する請求項を、「請求項1から10のいずれか一項」から、「請求項1から7、9及び10のいずれか一項」に訂正する。
(請求項11の記載を引用する請求項12、13、15及び16も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12が引用する請求項を、「請求項1から11のいずれか一項」から、「請求項1から7、及び9から11のいずれか一項」に訂正する。
(請求項12の記載を引用する請求項15及び16も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13が引用する請求項を、「請求項1から11のいずれか一項」から、「請求項1から7、及び9から11のいずれか一項」に訂正する。
(請求項13の記載を引用する請求項15及び16も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15が引用する請求項を、「請求項1から14のいずれか一項」から、「請求項1から7、及び9から13のいずれか一項」に訂正する。
(請求項15の記載を引用する請求項16も同様に訂正する。)

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項16が引用する請求項を、「請求項1から15のいずれか一項」から、「請求項1から7、9から13、及び15のいずれか一項」に訂正する。

本件訂正は、一群の請求項〔1-16〕に対してなされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「シャトル型の少なくとも1つの自動保管・回収装置」のシャトルに関して、「前記シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を押し進めることで能動的に移動させ」ることを特定するとともに、「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)」の回収に関して、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ、これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)における、請求項8の「前記シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を移動させる」との記載、段落【0027】の「やりとりは、AS/RSに関して能動的に或いは受動的に行われ得る」との記載、及び段落【0069】の「したがって、シャトル5又はその伸縮アームは、交差搬送位置Qに保管ユニットTを預けることができるとともに、それらのユニットを隣り合うラッキングR内の対応する位置へ押し進めることができる」との記載によれば、上記「前記シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を押し進めることで能動的に移動させ」ることは、本件特許明細書等に開示されているといえる。
更に、本件特許明細書等における、段落【0087】の「ラッキングR内に保管される保管ユニットTが選別のために必要とされる場合、シャトル5は、ユニットが所望の通路2内になければ、そのユニットを拾い上げて、それを交差搬送位置Qへ輸送し、そこから、ユニットは、隣り合う通路へ移送されて、シャトル5により拾い上げられる。必要に応じて、このプロセスは、ユニットが送り先通路2に達するまで繰り返される。」、及び段落【0088】の「最終的な通路2において、シャトル5は、ユニットTを拾い上げて、それを出庫バッファコンベア9へ輸送する。」との記載、並びに段落【0002】、【0005】、【0020】?【0023】及び【0056】?【0073】の記載によれば、上記「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ、これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことは、本件特許明細書等に開示されているといえる。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正である。

(2)訂正事項2及び8について
訂正事項2は訂正前の請求項8を削除するものであり、また、訂正事項8は訂正前の請求項14を削除するものであるから、訂正事項2及び8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3?7、9及び10について
訂正事項3?7、9及び10は、訂正事項2及び8により特許請求の範囲の請求項8及び14が削除されたことに伴い、請求項8及び14を引用していた請求項9?13、15及び16において引用する請求項を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?16〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上述のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?7、9?13、15及び16に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明7」、「本件発明9」?「本件発明13」、「本件発明15」及び「本件発明16」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7、9?13、15及び16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
選別ステーション(10)において所望の順序で注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)を保管設備(1)から利用できるようにすることによる注文調達の方法であって、
前記保管設備は、
注文ユニット及び/又は製品ユニットが保管される複数のマルチレベル保管ラックを備える保管ラッキングであって、前記保管ラックは、背中合わせで対を成して配置されるとともに、対間に通路を有する、保管ラッキングと、
それぞれの保管ラッキング通路において通路ごとに及びレベルごとに設けられるシャトル型の少なくとも1つの自動保管・回収装置であって、自動的な保管及び回収によって注文ユニット及び/又は製品ユニットが保管されて前記保管ラックから回収される、自動保管・回収装置と、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを少なくとも1つの保管出口コンベアへ移送するために使用される少なくとも1つのリフトと、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングへと供給するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管入口コンベアと、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングから回収するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管出口コンベアと、
注文を調達するために製品ユニットから注文ユニットへと選別するための少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーションであって、該選別ステーションには注文ユニット及び/又は製品ユニットが供給される、少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーションとを備え、
注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)は、前記保管ラック自体内の交差搬送位置(Q)を介して供給元保管ラックから隣り合う送り先保管ラックへ向けて2つの隣り合う前記保管ラック(R)間で直接にやりとりされる、方法において、
前記各リフトは、前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)により選別レベルで選別ステーション(10)に直接に接続され、
前記シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を押し進めることで能動的に移動させ、
注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、
前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ、
これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される、
ことを特徴とする
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのリフト(8)は、1つの通路のラック(R)の対のうちの1つに配置されることを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リフト(8)が1つの通路の各ラック(R)に配置されることを特徴とする
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シャトル(5)は、入庫バッファコンベア(7)及び/又は出庫バッファコンベア(9)によって前記少なくとも1つのリフト(8)から切り離され、前記バッファコンベア(7,9)が前記ラック(R)内に配置されることを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)が同じレベルに配置されることを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)が異なるレベルに配置されることを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記交差搬送位置(Q)は、1つのラック(R)内の入庫バッファコンベア(7)及び/又は出庫バッファコンベア(9)の直ぐ背後/近傍に配置されることを特徴とする
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
供給元ラックの前記シャトル(5)は、隣り合う送り先ラック内の交差搬送位置(Q)へ注文ユニット又は製品ユニット(T)を配置することを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
保管ラック入口・出口には、少なくとも1つの前記保管入口コンベア(4)と、少なくとも1つのリフト(8)と、少なくとも1つの前記保管出口コンベア(6)とから成るコンベアループ(11)が形成され、前記少なくとも1つのリフト(8)は、前記保管入口コンベア(4)により供給されるとともに、それ自体が前記保管出口コンベア(6)に供給することを特徴とする
請求項1から7及び請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2つ以上の前記リフトが選別ステーション(10)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、9及び10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つの前記リフト(8)のみが1つ以上の前記選別ステーション(10)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、及び9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単一の前記通路(2)内の2つの前記リフト(8)が単一のレベルで1つのステーション(10)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、及び9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記選別ステーション(10)が互いに対向しており、前記リフト(8)がこれらの選別ステーション間に位置されることを特徴とする
請求項1から7、及び9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
2つの前記選別ステーション(10)は、単一のレベル(I)であるが合流及び逸らしの使用を伴うことなく2つの前記リフト(8)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、9から13、及び15のいずれか一項に記載の方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和1年7月19日の手続補正により補正された平成31年4月19日の訂正の請求による請求項1?7、9?13、15及び16に係る特許に対して、当審が令和1年7月30日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
請求項1?7、9?13、15及び16に係る発明は、甲1発明、甲第1?4号証に記載された事項、及び甲第5?7号証に開示される周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1?7、9?13、15及び16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2001-233404号公報
甲第2号証:特開平7-206111号公報
甲第3号証:特開平6-32409号公報
甲第4号証:再公表特許第2010/026633号
甲第5号証:特開2013-86917号公報
甲第6号証:特開昭50-8270号公報
甲第7号証:再公表特許2010/049987号

2 当審の判断
(1)各甲号証の記載事項
ア 甲第1号証
甲第1号証には、「自動倉庫」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】例えばコンテナやトレイ、或いはバケットに物品を収納して棚に格納する自動倉庫の場合、格納庫の外側に設けた作業台に棚からコンテナ類(ワーク)を移し換えて、作業台でコンテナ類への物品の出し入れしたり点検するなどの作業を行っている。
【0003】図16では、スタッカクレーン方式の自動倉庫において、作業台を備えたタイプの従来例をに示している。
【0004】図16の各分図(A)?(C)はいずれも平面図であり、自動倉庫は、相対向して配置した一対の格納庫1と、両格納庫1の間の通路に配置したスタッカクレーン2とを備えており、スタッカクレーン2は、レール4に沿って走行するベース5と、ベース5に立設した支柱(或いはマスト,コラム)6と、マスト6に昇降自在に取付けたリフト7とを備えている。
【0005】この場合、ベース5は安定性を確保するため走行方向に沿って細長い形状になっており、支柱6はベース5のほぼ中央部に立設されている。そして、支柱6を挟んでリフト7と反対側の部分に動力部や制御ボックスを設けていることから、レール4は格納庫1の一端部1aから外側にはみ出している。
【0006】そして、図16のうち(A)に示すのは最も単純な形態であり、格納庫1の他端部1bの外側に作業台8を設け、スタッカクレーン2で格納庫1から取出した荷物Wを作業台8に移し換えて、作業が済んだら再びスタッカクレーン2で荷物Wを格納庫1の元の位置に戻すようにしている。」(下線は、当審で付与。以下同様。)

(イ)「【0030】≪概要≫本実施形態はスタッカクレーン方式の自動倉庫に適用しており、自動倉庫は、相対向して配置した一対の格納庫1と、両格納庫1の間の空間を走行するスタッカクレーン2とを備えている。
【0031】格納庫1は多数段の棚3を備えており、スタッカクレーン2は、従来と同様にベース5と支柱6とリフト7とを備えている。本実施形態では、棚3は全体がフラットな平棚に構成されており、1枚の棚板に複数の荷物(コンテナ類)Wを載置できるように設定している。
【0032】≪バッファコンベヤ≫レール4のはみ出し部4aの外側の部位には、当該レール4と直交した方向に延びる作業用コンベヤ9を配置している。作業用コンベヤ9の一端には上流側バッファコンベヤ(出庫コンベヤ)11が接続されており、作業用コンベヤ9の他端には下流側バッファコンベヤ(入庫コンベヤ)10が接続されている。そして、両格納庫1とも最下段の棚3を除去し、この部位に両バッファコンベヤ10,11を入り込ませている。本例では、両バッファコンベヤ10,11とも格納庫1の全長にわたって延びている。
【0033】作業コンベヤ9は人の腰程度の高さが必要であるが、一般に格納庫1における最下段の棚3は人の腰よりも低い高さになっている。このため、バッファコンベヤ10,11のうち格納庫1から外側に位置した部位は傾斜させている。
【0034】図4に示すように、本実施形態ではバッファコンベヤ10,11はローラコンベヤ方式にしているが(駆動手段は省略している)、ベルトコンベヤやチェーンコンベヤ等の様々の搬送手段を採用できる。
【0035】言うまでもないが、スタッカクレーン2のリフト9をバッファコンベヤ10,11の高さに合わせることにより、バッファコンベヤ10,11の任意の位置とスタッカクレーン2のリフト7との間に荷物Wを移し換えることができる。
【0036】本実施形態の自動倉庫は、格納庫1への外部からの荷物Wの搬出入を作業用コンベヤ9の箇所で行うクローズドシステムになっているが、図2及び図6に一点鎖線で示すように搬出入コンベヤ12を別途接続することにより、外部からの荷物Wの搬出入を自動的に行うオープンシステムとしても良い。
【0037】≪制御例≫次に、荷物Wの入出庫の制御例を図6に基づいて説明する。
【0038】スタッカクレーン2から上流側バッファコンベヤ10に移し換える出庫と、下流側バッファコンベヤ11からスタッカクレーン2に移し換える入庫との制御態様としては、格納庫1の末端部(A位置)で行う、格納庫1の長手方向の任意の位置で行う、格納庫1のほぼ中間部(B位置)で行う、という3つの態様に大別される。」
(なお、段落【0032】に記載の「上流側バッファコンベヤ(出庫コンベヤ)11」及び「下流側バッファコンベヤ(入庫コンベヤ)10」は、それぞれ「下流側バッファコンベヤ(出庫コンベヤ)11」及び「上流側バッファコンベヤ(入庫コンベヤ)10」の誤記と認める。)


(ウ)「【0045】この実施形態では、格納庫1の2段目の棚の箇所にバッファコンベヤ10,11を入り込ませて、バッファコンベヤ10,11を全体として水平状に構成している。作業用コンベヤ9の高さが高い場合は、踏み台を使用して作業をすれば良い。」

(エ)「【0052】(5).第7実施形態(図14?図16)
図14?図16では第8実施形態を示しており、図14は平面図、図16は概略側面図である。
【0053】この実施形態では、各棚3の箇所に移載用台車14を走行自在に配置する一方、格納庫1の外側の一端部又は両端部にリフト15を配置し、このリフト15を介して各段の格納庫1と搬出入コンベヤ12との間に荷物Wを移し換えるようにしている。各段の棚3の端部には中継コンベヤ16を接続している。
【0054】そして、下から2断面の棚の箇所にバッファコンベヤ10,11を設けており、リフト15とバッファコンベヤ10,11との間に荷物Wを移し換えることができる。搬出入用コンベヤ12を備えていないクローズドシステムにしても良い。なお、本例の場合、移載用台車14とリフト15とが請求項に記載した移載手段を構成している。」

(オ)甲第1号証に記載の自動倉庫は、「例えばコンテナやトレイ、或いはバケットに物品を収納して棚に格納する自動倉庫」(前記「(1)」の段落【0002】)を前提としているから、荷物Wが棚3から自動的に保管及び回収されることは、当業者であれば明らかな事項である。
また、自動倉庫においては、注文に応じて外部からの荷物Wの搬出入を行う方法が実行されていることは、当業者であれば明らかな事項である。

(カ)【図14】を参照すると、移動用台車14が2つの格納庫1の間の空間にあることが、また、【図15】を参照すると、リフト15は、バッファコンベヤ11及びバッファコンベヤ10と同じ高さの箇所で作業用コンベヤ9に接続されていることが、それぞれ分かる。

(キ)上記事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、第8実施形態として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「作業コンベヤ9において自動倉庫へ外部から荷物Wの搬出入を行う方法であって、
前記自動倉庫は、
荷物Wが載置される多数段の棚3を備える2つの格納庫1であって、2つの格納庫1間に空間を有するように配置された、2つの格納庫1と、
前記空間において各棚3の箇所に走行自在に配置する移載用台車14であって、自動的な保管及び回収によって荷物Wが保管されて前記棚3から回収される、移載用台車14と、
荷物Wを上流側バッファコンベヤ10及び下流側バッファコンベヤ11との間で移し換えることができるリフト15と、
荷物Wを前記格納庫1へ入庫するために、前記リフト15との間で荷物Wを移し換えることができる下流側バッファコンベヤ11と、
荷物Wを前記格納庫1から出庫するために、前記リフト15との間で荷物Wを移し換えることができる上流側バッファコンベヤ10と、
作業用コンベヤ9の一端には下流側バッファコンベヤ11が接続されており、作業用コンベヤ9の他端には上流側バッファコンベヤ10が接続されており、格納庫1への外部からの荷物Wの搬出入を行う箇所である作業用コンベヤ9を備える、方法において、
前記リフト15は、前記下流側バッファコンベヤ11及び前記上流側バッファコンベヤ10と同じ高さの箇所で作業用コンベヤ9に接続されている
方法。」

イ 甲第2号証
甲第2号証には、「自動倉庫装置および在庫物品移動方法」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項2】 制御装置が指定するレーンの指定された位置の棚の在庫物品をスタッカークレーンによって特定箇所の棚まで搬送し、特定箇所の棚でそこに設置されているレーン間移動装置によって背中合わせになっている隣のレーンの棚まで移動し、隣のレーンの特定箇所の棚に移動して来た物品を当該レーンのスタッカークレーンによって指定された位置の棚まで搬送して入庫することを特徴とする在庫物品移動方法。」

(イ)「【0002】
【従来の技術】従来一般に、複数のレーンごとにスタッカークレーンを設置し、制御装置からの入庫指令に基づき、入庫口におかれた物品をスタッカークレーンによって該当する位置の棚まで運んで入庫し、また制御装置からの出庫指令に基づき、該当する位置の棚の物品をスタッカークレーンによって取り出して出庫口に出庫する自動倉庫装置では、1台のスタッカークレーンに集中して負荷がかからないように各物品をレーン間で分散して入庫するように制御装置で入庫管理し、また出庫においても各レーンから分散して出庫するように制御装置で出庫管理している。
【0003】しかしながら、このような入出庫管理を行なったとしても、出庫作業が進んで在庫状況が変化すると、レーンによって在庫に偏りが発生し、あるスタッカークレーンに負荷が集中して出庫効率が低下することがある問題点があった。」

(ウ)「【0014】自動倉庫装置の機械的な構成は図2?図4に示してあり、各レーン1、レーン2、…ごとに向かい合わせに多数の棚14,14,…が列になるように並べられ、その棚列間に従来から用いられているスタッカークレーン15-1,15-2,…が設備されている。またレーン1とレーン2とのレーン間、レーン3とレーン4とのレーン間、…のように隣合うレーン間それぞれにおいて、特定の位置で背中合わせになっている棚14,14間にレーン間移動装置16-1,16-2,…が設備されている。
【0015】このレーン間移動装置16-1,16-2,…は図3および図4に詳しく示されているように、背中合わせになった棚14,14間でそれらの棚板14a,14a上にレーン間移動用コンベア17を渡し、レーン間移動制御装置13-1,13-2,…によってこれらのレーン間移動用コンベア17をレーン間でいずれの方向にも駆動できるようにした構成である。なお、各棚14はスタッカークレーン15-1,15-2,…のフォーク15aが挿入できる空間を中央に開けて対向するように両側に棚板14a,14aが配置されている。そして各棚板14aは構造物である柱18によって支持されており、物品2の移動をセンシングするためのセンサ19が各柱18に取り付けられている。」

(エ)「【0021】この在庫移動において、いま、図2においてレーン1移動元棚14-1に在庫する物品2を隣のレーン2の移動先棚14-2に移動する必要が生じた場合、主制御装置11はまずレーン1のスタッカークレーン制御装置12-1に対して移動元棚14-1の物品をレーン間移動装置としてのレーン間移動用コンベア17が設置されている棚位置まで搬送する指令を与え、この指令にしたがってレーン1スタッカークレーン制御装置12-1が移動元棚14-1の物品2をレーン間移動用コンベア17の設置されている棚まで搬送し、ここでフォーク15aを棚14内に差し入れてレーン間移動用コンベア17上に置く(図2におけるi→iiの移動)。
【0022】続いて、主制御装置11はレーン間移動制御装置13-1に対してレーン間移動用コンベア17を起動させる指令を与え、レーン間移動用コンベア17がレーン1からレーン2に向かう駆動を開始し、物品2をレーン1側の棚から背中合わせになったレーン2の棚へ移動させる。そして物品2が完全にレーン2側の棚に移動すればセンサ19がそれをセンシングし、レーン間移動制御装置13-1はレーン間移動用コンベア17の動作を停止させる(ii→iii)。」

(オ)「【0024】以降、在庫移動計画にしたがって主制御装置11は隣合うレーン間でスタッカークレーンとレーン間移動装置を利用して在庫物品の移動制御を実行し、在庫物品をレーンごとに分散し、出庫計画の実行時の各スタッカークレーン15-1,15-2,…の稼働率を平準化し、効率の良い出庫作業ができるようにする。
【0025】なお、この発明は上記実施例に限定されることはなく、レーン間移動装置は背中合わせの棚板間に板を渡し、その上で物品をスタッカークレーンによってすべらせて奥側になる隣のレーンの棚に移動させるだけの簡単な構造であってもよく、背中合わせの棚間で物品を直接移動させることができれば特に機構が限定されることはない。またレーンの数、レーン間移動装置の設置位置も限定されることはない。」

(カ)「【0026】
【発明の効果】以上のように請求項1の発明の自動倉庫装置によれば、物品のレーン間の移動が必要になったときに制御装置によってスタッカークレーンとレーン間移動装置を制御し、移動元のレーンのある位置の在庫物品をレーン間移動装置が設置されている棚まで移動し、そこでレーン間移動装置によって隣合うレーンの背中合わせの棚まで移動し、次に背中合わせの棚から移動してきた物品を当該レーンのスタッカークレーンによって指定された棚まで搬送して入庫するようにしているので、一連の移動手順によって隣合うレーン間で在庫物品を移動し、レーン間で在庫の平準化を図ることができ、同時に在庫物品の移動に搬入コンベア、搬出コンベア、トラバーサなどの機械設備を別途必要とせず、在庫の平準化作業が効率良く行なえ、また付属設備の設置スペースを省略し、設備コストも低減することができる。」

(キ)上記事項及び図示内容を総合すると、甲第2号証には、次の事項が記載されている(以下「甲第2号証に記載された事項」という。)。
「各レーン1、レーン2、…ごとに向かい合わせに多数の棚14、14、…が列になるように並べられ、
棚列間にスタッカークレーン15-1、15-2、…が設備されており、
隣合うレーン間それぞれにおいて、特定の位置で背中合わせになっている棚14、14間にレーン間移動装置16-1、16-2、…が設備されており、
レーン間移動装置は背中合わせの棚板間に板を渡し、その上で物品をスタッカークレーンによってすべらせて奥側になる隣のレーンの棚に移動させるもので、背中合わせの棚間で物品を直接移動させるようになっており、
各スタッカークレーン15-1、15-2、…の稼働率を平準化し、効率の良い出庫作業ができるようにするために、レーン間で在庫の平準化を図り、指定するレーンの指定された位置の棚の在庫物品をスタッカークレーンによって特定箇所の棚まで搬送し、特定箇所の棚でそこに設置されているレーン間移動装置によって背中合わせになっている隣のレーンの棚まで移動し、隣のレーンの特定箇所の棚に移動して来た物品を当該レーンのスタッカークレーンによって指定された位置の棚まで搬送して入庫すること。」

ウ 甲第3号証
甲第3号証には、「自動倉庫設備」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0005】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付の例示図に基づいて説明すると、図1に於いて、1及び2は並設された2つの倉庫ユニットであって、各々、並設されたラック3,4及び5,6と、これら各ラック間の台車走行通路1a,2aに於いて上下2段に架設された荷移載用走行台車7,8及び9,10とから構成され、これら各走行台車7?10には、ラック3?6の4段の荷収納部3a?6aのレベルに対応するように、各々上下2段の荷移載部7a,7b?10a,10bが設けられている。又、前記各荷移載部7a,7b?10a,10bには、図2にも示すように、この種の荷移載用走行台車に設けられる荷移載手段として周知の、走行方向に対して左右何れ側にも出退移動自在で且つ荷すくい上げ及び荷降ろしのための昇降運動が可能なランニングフォーク11が設けられている。
【0006】前記両倉庫ユニット1,2に於ける各台車走行通路1a,2aの一端部間には、昇降搬送装置12と中継用荷移載台13a?13dとが並設されている。即ち、昇降搬送装置12は、一方の倉庫ユニット1の2つのラック3,4の内、倉庫ユニット2に隣接する側のラック4の一端外側に配設され、ラック3?6の下端荷収納部レベルと上端荷収納部レベルとの間で昇降ガイド支柱14に沿って昇降可能な荷移載台15を備えている。又、各段中継用荷移載台13a?13dは、他方の倉庫ユニット2の2つのラック5,6の内、倉庫ユニット1に隣接する側のラック5の一端外側に、ラック3?6の各段荷収納部3a?6aに対応するレベルで配設されている。16は、前記昇降搬送装置12の下端部横外側に併設された入出庫用コンベヤ(駆動ローラコンベヤ)である。
【0007】前記昇降搬送装置12の昇降荷移載台15上と各段中継用荷移載台13a?13d上とには、この両者間で荷移載を行うための荷移載手段19,20が設けられている。この荷移載手段19,20は、図2及び図3にも示すように、前記荷移載用走行台車7?10の荷移載部7a?10b上に設けられているランニングフォーク11が進入昇降する凹部17,18と、この凹部17の左右両側で並設された一対の移載用駆動コンベヤ(ローラコンベヤ)19a,19b及び20a,20bとから構成されている。更に、前記昇降搬送装置12に於ける昇降荷移載台15の前記凹部17内には、前記ランニングフォーク11の進入昇降経路より下側のレベル(図2参照)と、前記移載用駆動コンベヤ19a,19bの荷支持レベルよりも高い上側レベル(図3B参照)との間で昇降可能で且つ前記入出庫用コンベヤ16との間の荷移載方向に駆動される昇降コンベヤ21が配設されている。」

(イ)「【0013】倉庫ユニット1のラック3,4又は倉庫ユニット2のラック5,6から入出庫用コンベヤ16への荷Wの出庫作業は、上記入庫作業とは逆の手順で行うことが出来る。即ち、倉庫ユニット2のラック5,6からの出庫作業は、荷移載用走行台車9,10の荷移載部9a?10bの内の出庫レベルにある荷移載部上に、ランニングフォーク11を利用してラック5又は6内から荷Wを出庫移載し、この荷Wを、中継用荷移載台13a?13dの内の出庫レベルにある中継用荷移載台上に、前記ランニングフォーク11を利用して搬出移載し、次に当該荷Wを、出庫レベルまで上昇させた昇降搬送装置12の昇降荷移載台15上に、移載用駆動コンベヤ20a,20b及び19a,19bを利用して搬出移載する。この後、当該昇降荷移載台15を下降限まで下降させて入出庫用コンベヤ16に接続させ、上昇させた昇降コンベヤ21と入出庫用コンベヤ16とを利用して、荷Wを入出庫用コンベヤ16上に搬出移載すれば良い。
【0014】倉庫ユニット1のラック3,4からの出庫作業は、荷移載用走行台車7,8の荷移載部7a?8bの内の出庫レベルにある荷移載部上に、ランニングフォーク11を利用してラック3又は4内から荷Wを出庫移載し、この荷Wを、出庫レベルまで上昇させた昇降搬送装置12の昇降荷移載台15上に、ランニングフォーク11を利用して搬出移載する。この後、当該昇降荷移載台15を下降限まで下降させて入出庫用コンベヤ16に接続させ、上昇させた昇降コンベヤ21と入出庫用コンベヤ16とを利用して、荷Wを入出庫用コンベヤ16上に搬出移載すれば良い。」

(ウ)上記事項及び図示内容を総合すると、甲第3号証には、次の事項が記載されている(以下「甲第3号証に記載された事項」という。)。
「ラック4の一端外側に配設され、ラック3?6の下端荷収納部レベルと上端荷収納部レベルとの間で昇降ガイド支柱14に沿って昇降可能な荷移載台15上に設けられた荷移載手段19と、ラック5の一端外側に、ラック3?6の各段荷収納部3a?6aに対応するレベルで配設されている各段中継用荷移載台13a?13d上に設けられた荷移載手段20とにより、この両者間で荷の移載を行い、
ラック5、6からの出庫作業は、荷Wを、ラック5、6間の台車走行通路2aに架設された荷移載用走行台車9、10の荷移載部9a?10b上に移載し、中継用荷移載台13a?13d上に搬出移載し、出庫レベルまで上昇させた昇降搬送装置12の昇降荷移載台15上に、移載用駆動コンベヤ20a、20b及び19a、19bを利用して搬出移載し、当該昇降荷移載台15を下降限まで下降させて入出庫用コンベヤ16に接続させ、荷Wを入出庫用コンベヤ16上に搬出移載し、
ラック3、4からの出庫作業は、荷Wを、ラック3、4間の台車走行通路1aに架設された荷移載用走行台車7、8の荷移載部7a?8b上に移載し、出庫レベルまで上昇させた昇降搬送装置12の昇降荷移載台15上に移載し、当該昇降荷移載台15を下降限まで下降させて入出庫用コンベヤ16に接続させ、荷Wを入出庫用コンベヤ16上に搬出移載すること。」

エ 甲第4号証
甲第4号証には、「立体自動倉庫」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0026】
左右の入出庫ステーション18L,18R間には間隙があり、各段の移載シャトル16は、これらの入出庫ステーション18L,18R間にまで移動可能であり、移載シャトル16と同じ高さレベルに位置する待機コンベヤ20に対しても荷Pの受渡しを行うことができる。
【0027】
積層ラック12L,12Rとは反対側となる各入出庫ステーション18L,18Rの隣接位置には、昇降装置22が配置されている。昇降装置22は、左右の入庫ステーション18L,18R間の間隙に隣接する位置に配置されたマスト24と、このマスト24の左右の側面にそれぞれ昇降可能に設けられた昇降台26L,26Rとから構成されている。なお、左側の昇降台26Lは、請求の範囲でいう第1の昇降台、右側の昇降台26Rは、請求の範囲でいう第2の昇降台に相当する。
【0028】
昇降台26L,26Rは、待機コンベヤ20と同様のコンベヤを搭載しており、その搬送方向は、入出庫ステーション18L,18Rに接近する方向と、その反対方向とに切り換えることが可能となっている。また、昇降台26L,26Rの搬送面は、昇降台26L,26Rの昇降により、入出庫ステーション18L,18Rの最下段から最上段までの任意の待機コンベヤ20の搬送面に整列させることができ、よって、昇降台26L,26Rと入出庫ステーション18L,18Rの待機コンベヤ20との間での荷Pの受渡しが可能となっている。
【0029】
なお、昇降台26L,26Rの搬送面には、荷Pを2個以上載置できることが好ましく、本第1実施形態では、2個の荷Pを搬送方向に沿って並べて同時に載置することができるようになっている。」

(イ)「【0030】
更に、昇降装置22に対して、外部の搬送システム28が接続されている。外部搬送システム28は、昇降装置22における各昇降台26L,26Rに対して荷Pの受渡しを行うことができるよう、左右各側について、上下2段の搬送コンベヤ30L,30R;32L,32Rを備えている。本第1実施形態を示す図1、2の例では、各側の下段の搬送コンベヤ30L,30Rは入庫コンベヤであり、上段の搬送コンベヤ32L,32Rは出庫コンベヤであり、それぞれ同側の昇降台26L,26Rを昇降させることによって、昇降台26L,26Rの搬送面を、入庫コンベヤ30L,30Rの出口端又は出庫コンベヤ32L,32Rの入口端と整列させることが可能となっている。その逆に下段の搬送コンベヤ30L,30Rを出庫コンベヤ、上段の搬送コンベヤ32L,32Rを入庫コンベヤとすることも可能である。或いは、搬送コンベヤ30Lを出庫コンベヤ、搬送コンベヤ30Rを入庫とし、搬送コンベヤ32Lを入庫コンベヤ、搬送コンベヤ32Rを出庫コンベヤとすることも、その逆に搬送コンベヤ30Lを入庫コンベヤ、搬送コンベヤ30Rを出庫コンベヤとし、搬送コンベヤ32Lを出庫コンベヤ、搬送コンベヤ32Rを入庫コンベヤとすることも可能である。なお、左側の入庫コンベヤ30L及び出庫コンベヤ32Lはそれぞれ、請求の範囲にいう第1の入庫コンベヤ及び出庫コンベヤ、右側の入庫コンベヤ30R及び出庫コンベヤ32Lはそれぞれ、請求の範囲にいう第2の入庫コンベヤ及び出庫コンベヤに相当するものである。」

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「作業コンベヤ9」は、本件発明1の「選別ステーション(10)」に相当する。
以下同様に、「荷物W」は、「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)」に、
「自動倉庫」は、「保管設備(1)」に、
「自動倉庫へ外部から荷物Wの搬出入を行う」ことは、「保管設備(1)から利用できるようにする」ことに、
「自動倉庫へ外部から荷物Wの搬出入を行う方法」は、「注文調達の方法」に、
「多数段の棚3を備える」「格納庫1」は、「マルチレベル保管ラック」に、
荷物Wが棚3に「載置される」ことは、注文ユニット及び/又は製品ユニットが「保管される」ことに、
「2つの格納庫1」は、「複数のマルチレベル保管ラックを備える保管ラッキング」に、
「各棚3の箇所に走行自在に配置する移載用台車14」は、「レベルごとに設けられるシャトル型の少なくとも1つの自動保管・回収装置」及び「シャトル(5)」に、
「荷物Wを前記格納庫1から出庫するために、前記リフト15との間で荷物Wを移し換えることができる上流側バッファコンベヤ10」は、「注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングから回収するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管出口コンベア」に、
「荷物Wを上流側バッファコンベヤ10及び下流側バッファコンベヤ11との間で移し換えることができるリフト15」は、「注文ユニット及び/又は製品ユニットを少なくとも1つの保管出口コンベアへ移送するために使用される少なくとも1つのリフト」に、
「荷物Wを前記格納庫1へ入庫するために、前記リフト15との間で荷物Wを移し換えることができる下流側バッファコンベヤ11」は、「注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングへと供給するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管入口コンベア」に、
「格納庫1への外部からの荷物Wの搬出入を行う箇所である作業用コンベヤ9」は、「注文を調達するために製品ユニットから注文ユニットへと選別するための少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーション」に、
「前記リフト15は、前記下流側バッファコンベヤ11及び前記上流側バッファコンベヤ10と同じ高さの箇所で作業用コンベヤ9に接続されている」ことは、「前記各リフトは、前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)により選別レベルで選別ステーション(10)に直接に接続され」ることに、それぞれ相当する。

甲1発明の「2つの格納庫1間に空間を有する」ことは、本件発明1の、背中合わせで配置された保管ラックの「対」において「対間に通路を有する」ことと、「保管ラックの間に、通路を有する」ことである限りにおいて共通する。
甲1発明の「移載用台車14」が2つの格納庫1間の「空間」に配置されることは、本件発明1の「自動保管・回収装置」が「それぞれの保管ラッキング通路において通路ごとに」設けられることと、「保管ラッキング通路において通路に」設けられる限りにおいて共通する。

また、甲1発明においては、荷物Wが上流側バッファコンベヤ10により作業コンベヤ9に搬出され、作業コンベヤ9において物品の出し入れ等の作業が行われ、その後に荷物Wが下流側バッファコンベヤ11に送り出されるようになっているから、所望の順序で荷物Wを自動倉庫から出し入れするようになっていることは、当業者であれば明らかである。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。
「選別ステーションにおいて所望の順序で注文ユニット及び/又は製品ユニットを保管設備から利用できるようにすることによる注文調達の方法であって、
前記保管設備は、
注文ユニット及び/又は製品ユニットが保管される複数のマルチレベル保管ラックを備える保管ラッキングであって、前記保管ラックの間に、通路を有する、保管ラッキングと、
保管ラッキング通路において通路に及びレベルごとに設けられるシャトル型の少なくとも1つの自動保管・回収装置であって、自動的な保管及び回収によって注文ユニット及び/又は製品ユニットが保管されて前記保管ラックから回収される、自動保管・回収装置と、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを少なくとも1つの保管出口コンベアへ移送するために使用される少なくとも1つのリフトと、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングへと供給するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管入口コンベアと、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングから回収するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管出口コンベアと、
注文を調達するために製品ユニットから注文ユニットへと選別するための少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーションであって、該選別ステーションには注文ユニット及び/又は製品ユニットが供給される、少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーションとを備える、方法において、
前記各リフトは、前記保管入口コンベア及び前記保管出口コンベアにより選別レベルで選別ステーションに直接に接続される
方法。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1においては、保管ラッキングは、「保管ラックは、背中合わせで対を成して配置されるとともに、対間に通路を有」しており、
シャトル型の自動保管・回収装置は、「それぞれの保管ラッキング通路において通路ごとに」設けられ、
「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)は、前記保管ラック自体内の交差搬送位置(Q)を介して供給元保管ラックから隣り合う送り先保管ラックへ向けて2つの隣り合う前記保管ラック(R)間で直接にやりとりされ」、
シャトル型の自動保管・回収装置である「シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を押し進めることで能動的に移動させ」るとの構成を備えているのに対して、
甲1発明においては、格納庫1は、背中合わせで対を成して配置されておらず、
2つの格納庫1間に空間(通路)を有しているにすぎず、移載用台車14は、1つの空間に設けられているだけであり、
交差搬送位置を有しておらず、移載用台車14は、荷物Wを隣り合う棚3間で直接にやりとりすることもない点。

[相違点2]
本件発明1においては、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ、これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」との構成を備えるのに対して、
甲1発明においては、かかる構成を備えていない点。

事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
(ア)甲第1及び4号証について
甲第1及び4号証には、本件発明1の「交差搬送位置(Q)」に相当する構成が記載も示唆もされていないから、甲第1及び4号証は、当該交差搬送位置(Q)を構成要件とする上記相違点2に係る本件発明1の構成を開示するものではない。

(イ)甲第2号証について
甲第2号証に記載された事項(前記「第4 2(1)イ(キ)」を参照。)の「指定するレーンの指定された位置の棚の在庫物品」は、本件発明1の「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」、すなわち「対応ユニット」に相当する。
以下同様に、「スタッカークレーンによって特定箇所の棚まで搬送」することは、「対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させる」ことに、
「レーン間移動装置」の設置位置は、「交差搬送位置(Q)」に、
「特定箇所の棚でそこに設置されているレーン間移動装置によって背中合わせになっている隣のレーンの棚まで移動」させることは、「交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させること」に、
「隣のレーンの特定箇所の棚に移動して来た物品を当該レーンのスタッカークレーンによって指定された位置の棚まで搬送して入庫すること」は、「所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ」ることに、それぞれ相当する。
そうすると、甲第2号証に記載された事項は、本件発明1の「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ」ることに相当する構成を開示している。

しかし、「対応ユニット」に関して、本件発明1においては、「注文に対応する」ものであるのに対して、甲第2号証に記載された事項においては、「指定するレーンの指定された位置の棚の在庫物品」にすぎず、注文に対応するものではなく、
更に、本件発明1においては、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ものであるのに対して、甲第2号証に記載された事項における在庫物品の移動は、レーン間で在庫の平準化を図るためであり、特定のレーンから搬出するためのものではない。
したがって、甲第2号証は、上記相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」を、「交差搬送位置(Q)を通して」移動させ、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことを開示するものではない。

また、甲第2号証に記載された事項は、各スタッカークレーン15-1、15-2、…の稼働率を平準化し、効率の良い出庫作業ができるようにすることを目的として、レーン間で在庫の平準化を図る技術であるから((前記「第4 2(1)イ」の「(イ)」の段落【0003】及び【0004】、同「(オ)」の段落【0024】、並びに同「(カ)」を参照。)、
甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用し、間に空間を有する「2つの格納庫」を複数組設け、背中合わせの格納庫1間で荷物をやりとりできるように構成できたとしても、各空間ごとの移載用台車14の稼働率が平準化されることになり、本件発明1の「所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」を、「交差搬送位置(Q)を通して」移動させ、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ようにすること、すなわち、1つの保管ラッキング通路から注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)を搬出する構成とすることはできない。

(ウ)甲第3号証について
甲第3号証に記載された事項においては、荷移載手段19と荷移載手段20との間で荷の移載を行うものであるが、荷移載手段19は、ラック4の一端外側で昇降ガイド支柱14に沿って昇降可能な荷移載台15上にあり、また、荷移載手段20は、ラック5の一端外側で、且つ、各段中継用荷移載台13a?13d上にある。
また、甲第3号証に記載された事項においては、荷移載手段19が設けられる昇降荷移載台15は、ラック5、6間の台車走行通路2aに架設された荷移載用走行台車9、10から移載された荷Wを、荷移載手段20が設けられる各段中継用荷移載台13a?13dから、入出庫用コンベヤ16へと出庫すると共に、ラック3、4間の台車走行通路1aに架設された荷移載用走行台車7、8の荷Wを、荷移載用出庫台車7、8から入出庫用コンベヤ16へと出庫するためのものである。
そうすると、甲第3号証に記載された事項の「荷移載手段19」及び「荷移載手段20」の位置は、本件発明1の「2つの隣り合う前記保管ラック(R)間で直接にやりとりされる」ための、「保管ラック自体内」の「交差搬送位置(Q)」に相当するものとはいえず、更に、甲第3号証に記載された事項においては、出庫作業、すなわち回収が、「所望の保管ラッキング通路を介して」行われるものでもない。
したがって、甲第3号証は、上記相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」を、「交差搬送位置(Q)を通して」移動させ、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことを開示するものではない。

(エ)甲第5?7号証について
甲第5号証(特に、段落【0025】、【0029】、【0044】、【0048】、【0058】、【図3】及び【図4】を参照。)、甲第6号証(特に、1ページ右下欄8行?13行、2ページ左上欄6行?18行、及び第1?8図を参照。)、及び甲第7号証(特に、段落【0018】、【0029】、【0030】、及び【図1】?【図4】を参照。)は、物品をすべらせて奥側になる隣のレーンの棚に移動させるための装置について、すなわち本件発明1の「交差搬送位置(Q)」に相当する構成に関しての周知の技術を開示している。
しかし、当該甲第5?8号証は、上記相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」を、「交差搬送位置(Q)を通して」移動させ、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことについて開示するものではない。

(オ)甲第8号証について
異議申立人が令和2年1月6日に提出した意見書に添付の甲第8号証:特開昭48-51470号公報(特に、1ページ左下欄5行?右下欄5行、2ページ左下欄15行?19行、2ページ右下欄13行?20行、及び第2図を参照。)には、「荷格納設備」に関して、「上下方向水平方向共に複数の区画収納室間(2)を有する棚(1)を通路(3)を挟んで立設し、この通路(3)に、前記棚(1)に沿って往復走行可能で且つ区画収納室間(2)と該棚(1)の側方に設けた荷さばき場(8)との間で荷(7)の受渡しを行なう荷受渡し装置(5)を設け、前記通路(3)を複数並設して隣接する棚(1)同士を背中合せにした荷格納設備において、前記棚(1)の長さ方向適当箇所に、背中合せの区画収納空間(2)に亘っての荷移動空間(9)を形成し、この荷移動空聞(9)に前記荷受渡し装置(5)との間で荷(7)の受渡しが可能な荷搬送手段(14)を設け、1つの通路に対応する区画収納空間(2)の荷(7)を、他の通路に対応する区画収納空間(2)へ移し替えること」(以下「甲第8号証に記載された事項」という。)が記載されている。
ここで、甲第8号証に記載された事項の「1つの通路に対応する区画収納空間(2)の荷(7)」は、本件発明1の「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」、すなわち「対応ユニット」に相当する。
以下同様に、「荷移動空間(9)」は、「交差搬送位置(Q)」に、
「他の通路に対応する区画収納空間(2)」は、「前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラック」に、それぞれ相当する。

そうすると、甲第8号証に記載された事項は、本件発明1の「注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ」ることに相当する構成を開示している。

しかし、「対応ユニット」に関して、本件発明1においては、「注文に対応する」ものであるのに対して、甲第8号証に記載された事項においては、注文に対応するものではなく、
更に、本件発明1においては、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ものであるのに対して、甲第8号証に記載された事項においては、1つの通路に対応する区画収納空間(2)の荷(7)を、他の通路に対応する区画収納空間(2)へ移し替えるにすぎず、区画収納空間(2)からの出庫に関するものではない。
また、甲第8号証には、荷の移し替えを行う目的についての記載はない。
したがって、甲第8号証は、上記相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」を、「交差搬送位置(Q)を通して」移動させ、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことを開示するものではない。

(カ)小括
以上のように、甲第1?4及び8号証、並びに甲第5?7号証に開示される周知の技術は、少なくとも、上記相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないもの」を、「交差搬送位置(Q)を通して」移動させ、「これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される」ことについて開示するものではないから、たとえ甲1発明に甲第1?4及び8号証に記載された事項、並びに甲第5?7号証に開示される周知の技術を適用したとしても、相違点2に係る本件発明1の構成に至るものではない。
また、上記相違点2に係る本件発明1の構成が、本件特許に係る出願の優先日前に周知の技術であったともいえず、更に、設計的事項ということもできない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲第1?4及び8号証に記載された事項、並びに甲第5?7号証に開示される周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2?7、9?13、15及び16について
本件発明2?7、9?13、15及び16は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、甲第1?4及び8号証に記載された事項、並びに甲第5?7号証に開示される周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
異議申立人は特許異議申立書(32ページ19行?33ページ1行)において、訂正前の請求項14に係る発明に対して、本件特許明細書等の図1、3、5及び9において示された実施形態において、保管入口コンベヤ4とバッファコンベヤ7*との間にはリフト8が介在しているから、訂正前の請求項14の「保管入口及び/又は出口コンベアレベルが、保管入口及び/又は出口コンベアに直接に供給する或いは保管入口及び/又は出口コンベアによって供給される随意的なバッファコンベア」は、本件特許明細書等に記載されておらず、サポート要件を満たしていないものであって、訂正前の請求項14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。
しかし、本件訂正により請求項14は削除されたので、異議申立人が主張する上記の理由は、その対象が存在しないものとなった。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1?7、9?13、15及び16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7、9?13、15及び16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項8及び14に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項8及び14に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別ステーション(10)において所望の順序で注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)を保管設備(1)から利用できるようにすることによる注文調達の方法であって、
前記保管設備は、
注文ユニット及び/又は製品ユニットが保管される複数のマルチレベル保管ラックを備える保管ラッキングであって、前記保管ラックは、背中合わせで対を成して配置されるとともに、対間に通路を有する、保管ラッキングと、
それぞれの保管ラッキング通路において通路ごとに及びレベルごとに設けられるシャトル型の少なくとも1つの自動保管・回収装置であって、自動的な保管及び回収によって注文ユニット及び/又は製品ユニットが保管されて前記保管ラックから回収される、自動保管・回収装置と、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを少なくとも1つの保管出口コンベアへ移送するために使用される少なくとも1つのリフトと、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングへと供給するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管入口コンベアと、
注文ユニット及び/又は製品ユニットを前記保管ラッキングから回収するために前記リフトごとに設けられる少なくとも1つの保管出口コンベアと、
注文を調達するために製品ユニットから注文ユニットへと選別するための少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーションであって、該選別ステーションには注文ユニット及び/又は製品ユニットが供給される、少なくとも1つの全自動又は半自動選別ステーションとを備え、
注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)は、前記保管ラック自体内の交差搬送位置(Q)を介して供給元保管ラックから隣り合う送り先保管ラックへ向けて2つの隣り合う前記保管ラック(R)間で直接にやりとりされる、方法において、
前記各リフトは、前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)により選別レベルで選別ステーション(10)に直接に接続され、
前記シャトル(5)自体は、前記交差搬送位置(Q)内にある注文ユニット又は製品ユニット(T)を押し進めることで能動的に移動させ、
注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)のいずれかであって、所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックに保管されていないものを対応ユニットとした場合、前記対応ユニットが保管されている保管ラックに隣接する前記保管ラッキング通路を通じて、前記対応ユニットを移動させるとともに、前記交差搬送位置(Q)を通して、前記対応ユニットを移動させることを含み、
前記所望の保管ラッキング通路まで、又は前記所望の保管ラッキング通路に隣接する保管ラックまで、前記対応ユニットを移動させ、
これにより、注文に対応する複数の注文ユニット及び/又は製品ユニット(T)が、前記所望の保管ラッキング通路を介して、所望の回収順序に従って、回収される、
ことを特徴とする
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのリフト(8)は、1つの通路のラック(R)の対のうちの1つに配置されることを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リフト(8)が1つの通路の各ラック(R)に配置されることを特徴とする
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シャトル(5)は、入庫バッファコンベア(7)及び/又は出庫バッファコンベア(9)によって前記少なくとも1つのリフト(8)から切り離され、前記バッファコンベア(7,9)が前記ラック(R)内に配置されることを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)が同じレベルに配置されることを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保管入口コンベア(4)及び前記保管出口コンベア(6)が異なるレベルに配置されることを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記交差搬送位置(Q)は、1つのラック(R)内の入庫バッファコンベア(7)及び/又は出庫バッファコンベア(9)の直ぐ背後/近傍に配置されることを特徴とする
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
供給元ラックの前記シャトル(5)は、隣り合う送り先ラック内の交差搬送位置(Q)へ注文ユニット又は製品ユニット(T)を配置することを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
保管ラック入口・出口には、少なくとも1つの前記保管入口コンベア(4)と、少なくとも1つのリフト(8)と、少なくとも1つの前記保管出口コンベア(6)とから成るコンベアループ(11)が形成され、前記少なくとも1つのリフト(8)は、前記保管入口コンベア(4)により供給されるとともに、それ自体が前記保管出口コンベア(6)に供給することを特徴とする
請求項1から7及び請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2つ以上の前記リフトが選別ステーション(10)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、9及び10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つの前記リフト(8)のみが1つ以上の前記選別ステーション(10)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、及び9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単一の前記通路(2)内の2つの前記リフト(8)が単一のレベルで1つのステーション(10)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、及び9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】(削除)
【請求項15】
前記選別ステーション(10)が互いに対向しており、前記リフト(8)がこれらの選別ステーション間に位置されることを特徴とする
請求項1から7、及び9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
2つの前記選別ステーション(10)は、単一のレベル(I)であるが合流及び逸らしの使用を伴うことなく2つの前記リフト(8)に接続されることを特徴とする
請求項1から7、9から13、及び15のいずれか一項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-30 
出願番号 特願2016-526501(P2016-526501)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B65G)
P 1 651・ 121- YAA (B65G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福島 和幸  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
登録日 2018-04-13 
登録番号 特許第6321794号(P6321794)
権利者 デマティック ゲーエムベーハー
発明の名称 選別ステーションにおいて所望の順序で保管ユニットを保管設備から利用できるようにすることによる注文調達方法  
代理人 関 大祐  
代理人 廣瀬 隆行  
代理人 田巻 文孝  
代理人 関 大祐  
代理人 弟子丸 健  
代理人 廣瀬 隆行  
代理人 田中 伸一郎  

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