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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C09J |
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管理番号 | 1360493 |
異議申立番号 | 異議2019-700194 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-03-11 |
確定日 | 2020-02-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6387510号発明「光硬化性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6387510号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6387510号の請求項3ないし6に係る特許を維持する。 特許第6387510号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6387510号の請求項1?6に係る特許(以下、「本件特許」という。)は、平成26年11月20日に出願され、平成30年8月24日にその特許権の設定登録がされ、同年9月12日にその特許掲載公報が発行されたものであり、その後、その請求項1、3?6に係る特許に対して、特許異議申立人前田桂子により、平成31年3月11日に特許異議の申立てがされたものである。 また、その後の経緯は、以下のとおりである。 なお、以下の第2で述べるとおり、本件訂正により、請求項1が削除されるとともに、請求項3?6が、いずれも、特許異議の申立てがされていない請求項2に従属するものに限定されたので、特許法第120条の5第5項ただし書の特別の事情があると認め、本件訂正請求に関し、申立人に対して意見書を提出する機会を与えなかった。 令和元年5月27日付け 取消理由通知 同年7月23日 意見書の提出(特許権者) 同年10月31日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年12月20日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 第2 訂正の適否 1 訂正の趣旨及び内容 令和元年12月20日の訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第6387510号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める、というものであり、その内容は、以下のとおりである。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーである、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。」 と記載されているのを、 「表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物であって、前記光硬化性樹脂組成物が、軟化点70?150℃の水添ロジンエステル、液状可塑剤、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートオリゴマー及び光重合開始剤を含み、 前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり、 前記(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリウレタン構造を骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマーである、光硬化性樹脂組成物。」 と訂正する。 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1又は2」と記載されているのを、「請求項2」と訂正する。 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1又は2」と記載されているのを、「請求項2」と訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1又は2」と記載されているのを、「請求項2」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項1に係る訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2が請求項1を引用する形式で記載されているものを、独立形式での記載に改めるとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものにすること」を目的とするものである。 また、訂正事項2に係る訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (3)訂正事項3ないし5について 訂正事項3ないし5は、訂正前の請求項3、4及び6が訂正前の請求項1を直接に引用するように記載されていたところ、訂正前の請求項1が削除されることにより、当該請求項1を引用する記載が不明瞭となることを避けるために、当該請求項1を引用する記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするもの、又は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項3ないし5に係る訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 3 独立特許要件について 訂正事項2は、特許異議の申立てがされていない請求項2に係る訂正事項であるが、その目的は、上記のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものにすること」であるから、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2ないし6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正前の請求項1ないし6は、本件訂正前において一群の請求項を形成するものである。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1ないし5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1?6]について訂正を認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、その請求項の番号により「本件訂正発明1」などともいう。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物であって、前記光硬化性樹脂組成物が、軟化点70?150℃の水添ロジンエステル、液状可塑剤、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートオリゴマー及び光重合開始剤を含み、 前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり、 前記(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリウレタン構造を骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマーである、光硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 請求項2記載の光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体。 【請求項4】 光学表示体の製造方法であって、 (A)表示体及びタッチパネルのいずれか一方の基板、表示体及び前面板のいずれか一方の基板、又はタッチパネル及び前面板のいずれか一方の基板に、請求項2記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、 (B)工程(A)で得られた基板にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、及び (C)工程(B)で得られた基板と、工程(A)で光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合させる工程 を含む、製造方法。 【請求項5】 さらに(D)工程(C)の後、さらに光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射する工程を含む、請求項4記載の製造方法。 【請求項6】 光学表示体の製造方法であって、 (A’)表示体及びタッチパネルのいずれか一方の基板、表示体及び前面板のいずれか一方の基板、又はタッチパネル及び前面板のいずれか一方の基板に、請求項2記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、 (B’)工程(A’)で得られた基板と工程(A’)で請求項2記載の光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合する工程、及び (C’)光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射する工程 を含む、光学表示体の製造方法。」 第4 特許異議の申立てについて 請求項1は、上記第2のとおり、本件訂正により削除されたので、請求項3?6に対する特許異議の申立てについて検討する。 1 取消理由通知で採用した取消理由について (1) 取消理由の概要 請求項3?6に係る特許に対して、令和元年10月31日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 <取消理由> 取消理由1 本件特許の特許請求の範囲の請求項3?5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由2 本件特許の特許請求の範囲の請求項3、6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(甲第2号証)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <刊行物> 甲第1号証:特開2014-118450号公報 甲第2号証:特開2014-203265号公報 なお、以下、甲第1,2号証を、それぞれ、「甲1」、「甲2」、ともいう。 (2) 刊行物の記載事項 a 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審が付した。 「【請求項1】 画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、 成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、 成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である ことを特徴とする光硬化性樹脂組成物。 (中略) 【請求項4】 画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(A)?(C): <工程(A)> 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布する工程; <工程(B)> 塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して硬化樹脂層を形成する工程; 及び <工程(C)> 画像表示部材に、硬化樹脂層が内側となるように光透過性カバー部材を貼り合わせて画像表示装置を得る工程 を有し、 該光硬化性樹脂組成物として、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である光硬化性樹脂組成物を使用する製造方法。 (中略) 【請求項7】 画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(A)?(C): <工程(A)> 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布する工程; <工程(B)> 塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させることにより仮硬化樹脂層を形成する工程; <工程(C)> 画像表示部材に、仮硬化樹脂層が内側となるように光透過性カバー部材を貼り合わせる工程; 及び <工程(D)> 画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に対し紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光透過性の硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程 を有し、 該光硬化性樹脂組成物として、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である光硬化性樹脂組成物を使用する製造方法。」 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶表示パネル等の画像表示部材とその表面側に配される透明保護シート等の光透過性カバー部材とを、光透過性硬化樹脂層を介して接着・積層して画像表示装置を製造する際に当該光透過性硬化樹脂層を形成するための光硬化性樹脂組成物に関する。」 「【0023】 <成分(イ)> 本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化物の膜性維持のために、光ラジカル重合成分として、アクリル系オリゴマー成分(成分(イ))を含有する。このようなアクリル系オリゴマー成分として、本発明においては、主鎖にポリイソプレン骨格を有するポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、主鎖にポリブタジエン骨格を有するポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及び主鎖にポリウレタン骨格を有するポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種を使用する。 (中略) 【0026】 また、ポリウレタン系(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、GPC測定による分子量が好ましくは1000?100000のもの使用することができ、その好ましい具体例として、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・サイテック社;UA-1、ライトケミカル社)等を挙げることができる。」 「【0028】 <成分(ロ)> 本発明の光硬化性樹脂組成物は、反応希釈剤として機能する光ラジカル重合性のアクリル系モノマー成分(成分(ロ))を含有する。アクリル系モノマー成分の好ましい具体例としては、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。」 「【0030】 <成分(ハ)> 本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(イ)のアクリル系オリゴマー成分と相溶し、粘着性付与剤としても使用可能な可塑剤成分(成分(ハ))を含有する。成分(イ)のアクリル系オリゴマー成分と相溶しない場合には、硬化物が白濁し視認性が低下することが懸念される。このような可塑剤成分は、固形の粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)とを含有する。ここで、“固体”とは、JISK5601-2-2による軟化点が60?150℃、好ましくは80?120℃であること意味する。また、液状とは、大気圧下、25℃で、コーンプレートレオメーターで0.01?100Pa・s(25℃)の粘度を示す状態を意味する。 【0031】 このような軟化点を示す固体の粘着付与剤(1)は、紫外線照射によりそれ自身が光硬化をせず、光硬化性樹脂組成物から形成された硬化樹脂層又は仮硬化樹脂層の初期接着強度(いわゆるタック性)を向上させ、また仮硬化樹脂層を更に本硬化させた硬化樹脂層の最終的な接着強度を高める作用を有するものである。粘着付与剤(1)の具体例としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の石油樹脂などを使用することができる。また、発明の効果を損なわない範囲で、成分(イ)のアクリル系オリゴマー成分や成分(ロ)のアクリレート系モノマー成分を、好ましくは予め1000?50000程度の分子量となるようにポリマー化したもの、例えば、ブチルアクリレートと2-ヘキシルアクリレートとアクリル酸との共重合体や、シクロヘキシルアクリレートとメタクリル酸との共重合体等を配合することができる。 【0032】 液状可塑成分(2)は、紫外線照射によりそれ自身は光硬化をせず、光硬化後の硬化樹脂層あるいは仮硬化樹脂層に柔軟性を与え、また硬化樹脂層間あるいは仮硬化樹脂層の硬化収縮率を低減させるものである。このような液状可塑成分(2)としては、液状のポリブタジエン系可塑剤、ポリイソプレン系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤及びアジピン酸エステル系可塑剤からなる群から選択される少なくも一種を挙げることができる。」 「【0082】 実施例1?6、比較例1?4 (工程(A)(塗布工程)) まず、45(w)×80(l)×0.4(t)mmのサイズのガラス板を用意し、このガラス板の周縁部全域に、乾燥厚で40μmとなるように4mm幅の遮光層を、熱硬化タイプの黒色インク(MRXインキ、帝国インキ製造社)を用いて、スクリーン印刷法により塗布し、乾燥させることにより、遮光層付きガラス板を用意した。 【0083】 また、表1に示す配合量(質量部)の、アクリル系オリゴマー成分、アクリル系モノマー成分、可塑剤成分(固形の粘着付与剤及び液状可塑成分)及び光重合開始剤を均一に混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。」 「【0093】 【表1】 」 b 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、および透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間の中から選択された少なくとも1箇所に重合性組成物を介在させる工程、 重合性組成物の一部に、透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部越しに光を照射することにより、重合性組成物を部分的に重合させる工程、ならびに 透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部の全面に光を照射することにより、部分的に重合された箇所を含む重合性組成物を重合する工程 を含む画像表示装置の製造方法であって、重合性組成物が、 (成分1)アクリロイル基を有する化合物およびメタクリロイル基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物、および (成分2)α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤 を含み、かつ重合性組成物の25℃の粘度が500?5000mPa・sであることを特徴とする画像表示装置の製造方法。 (中略) 【請求項3】 重合性組成物が、さらに、 (成分3)アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤 を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置の製造方法。 (中略) 【請求項5】 成分1が、 数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物、ならびに 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。 (中略) 【請求項7】 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物が、 炭素数8?18の炭化水素基を有するアクリレート、炭素数8?18の炭化水素基を有するメタクリレート、エーテル結合を有するアクリレートおよびエーテル結合を有するメタクリレートからなる群より選択された化合物、および アクリルアミド系化合物、メタクリルアミド系化合物、アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレートからなる群より選択された化合物 を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項8】 重合性組成物が、さらに、 (成分4)アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子および水素原子で構成された化合物、ならびに、アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子、水素原子および酸素原子で構成された化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物 を含むことを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項9】 成分4が、 25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物 を含むことを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項10】 成分4が、25℃で液状である化合物を含み、 前記25℃で液状である化合物は、 ポリ(α-オレフィン)液状物、エチレン-プロピレン共重合体液状物、エチレン-α-オレフィン共重合体液状物、プロピレン-α-オレフィン共重合体液状物、液状ポリブテン、液状水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状水添ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状水添ポリイソプレン、液状ポリブタジエンポリオール、液状水添ポリブタジエンポリオール、液状ポリイソプレンポリオールおよび液状水添ポリイソプレンポリオールからなる群より選択された少なくとも1種の化合物 を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項11】 成分4は、25℃で液状である化合物を含み、 前記25℃で液状である化合物は、 ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群より選択された少なくとも1種の化合物 を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項12】 成分4が、25℃で液状である化合物を含み、 前記25℃で液状である化合物は、液状ポリ(α-オレフィン)液状物、エチレン-プロピレン共重合体液状物、エチレン-α-オレフィン共重合体液状物、プロピレン-α-オレフィン共重合体液状物、液状ポリブテン、液状水添ポリブテン、液状水添ポリブタジエン、液状水添ポリイソプレン、液状水添ポリブタジエンポリオールおよび液状水添ポリイソプレンポリオールからなる群より選択された少なくとも1種の化合物 を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。 【請求項13】 成分4が、25℃で固体である化合物を含み、 前記25℃で固体である化合物は、水添石油樹脂、テルペン系水添樹脂および水添ロジンエステルからなる群より選択された少なくとも1種の化合物 を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の製造方法。」 「【0017】 画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、および透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間の中から選択された少なくとも1箇所に重合性組成物を介在させる方法には、特に制限はない。 画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間に重合性組成物を介在させる場合には、画像表示装置の画像表示部を有する基部上に、重合性組成物を塗布し、その後、画像表示装置の画像表示部を有する基部の重合性組成物塗布面と透光性の保護部の貼り合せ面とを重合性組成物を介して接触させても、透光性の保護部の貼り合せ面上に、重合性組成物を塗布し、その後、透光性の保護部の重合性組成物塗布面と画像表示装置の画像表示部を有する基部の貼り合せ面とを重合性組成物を介して接触させてもいっこうにかまわず、特に制限はない。 また、重合性組成物を介して、画像表示装置の画像表示部を有する基部の重合性組成物塗布面と透光性の保護部の貼り合せ面とを、または透光性の保護部の重合性組成物塗布面と画像表示装置の画像表示部を有する基部の貼り合せ面とを接触させる際に、重合性組成物を塗布した部を上面にして接触させても、重合性組成物を塗布した部を下面にして接触させてもいっこうにかまわず、特に制限はない。 さらに、接触させた後、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部の間にある重合性組成物を押し広げて、重合性組成物の厚みを所望の厚みに調整することが必要であるが、上面に配した部の自重のみで押し広げても、外部より圧力をかけて押し広げてもいっこうにかまわず、特に制限はない。 画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、あるいは透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間に重合性組成物を介在させる場合においても、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間に重合性組成物を介在させる場合と同様であり、特に制限はない。 また、これらの貼り合せには、貼り合せ機が使用されるのが一般的である。しかし、本発明において、貼り合せ機を使用することは必須ではなく、貼り合せ機を用いずに本工程を行ってもいっこうにかまわない。 【0018】 次に、重合性組成物の一部に、透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択される少なくとも1つの透光性の部越しに光を照射することにより、重合性組成物を部分的に重合させる工程について説明する。 この工程で、使用されるランプについては、後述の成分2および重合性組成物が成分3を含む場合には、成分2および成分3が感光可能な光を発することのできるランプであれば特に制限はないが、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧UVランプ、Deep UVランプ、キセノンランプ等を使用することができる。」 「【0025】 次に、本発明(I)の画像表示装置の製造方法に用いられる重合性組成物の成分である成分1について説明する。 成分1は、アクリロイル基を有する化合物およびメタクリロイル基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物である。 成分1は、アクリロイル基とメタクリロイル基のいずれか、あるいは、両方を分子内に有する化合物である。 ただし、前述のように成分1を含む重合性組成物の25℃での粘度は、500?5000mPa・sでなければならない。従って、これらの条件を容易に満たすには、成分1は数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物、ならびに分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を併用して用いることが好ましい。 数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物は、25℃での粘度は500mPa・sよりもずっと大きいことが多い。これらの高分子化合物と分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を併用することにより、容易に、本発明(I)の画像表示装置の製造方法に用いられる重合性組成物の25℃での粘度を500?5000mPa・sに調整することができる。 【0026】 また、材料面からみると、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリイソプレン系アクリレート、ポリイソプレン系メタクリレート、ポリブタジエン系アクリレート、ポリブタジエン系メタクリレート、水添ポリイソプレン系アクリレート、水添ポリイソプレン系メタクリレート、水添ポリブタジエン系アクリレートおよび水添ポリブタジエン系メタクリレートからなる群より選択された少なくとも1種以上の高分子化合物、ならびに分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を併用して用いることが好ましい。」 「【0037】 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物とは、1分子中にアクリロイル基を有する分子量500以下の化合物である。 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物としては、例えば、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルエチルアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート等の環状脂肪族基を有するアクリレート、ヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソノニルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、4-メチル-2-プロピルヘキシルアクリレート、イソオクタデシルアクリレート、2-ヘプチルウンデシルアクリレート等の鎖状脂肪族基を有するアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3-メチル-3-オキセタニルメチルアクリレート、1,4-ジオキサスピロ[4.5]デク-2-イルメチルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート等の分子中にエーテル結合を有するアクリレート、α-アクリロキシ-γ-ブチロラクトン等の環状エステルを有するアクリロイル基含有化合物、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピルメタクリレート等のアルコール性水酸基含有アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-アクリロイルモリホリン、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系化合物等を挙げることができる。 アクリロイル基含有化合物の分子量の下限は限定するものではないが、アクリロイル基含有化合物の分子量は好ましくは86以上である。 【0038】 分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物とは、1分子中にメタクリロイル基を有する分子量500以下の化合物であれる。 分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物としては、例えば、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルエチルメタクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート等の環状脂肪族基を有するメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、4-メチル-2-プロピルヘキシルメタクリレート、イソオクタデシルメタクリレート、2-ヘプチルウンデシルメタクリレート等の鎖状脂肪族基を有するメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、3-メチル-3-オキセタニルメチルメタクリレート、1,4-ジオキサスピロ[4.5]デク-2-イルメチルメタクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート等の分子中にエーテル結合を有するメタクリレート、α-メタクリロキシ-γ-ブチロラクトン等の環状エステルを有するメタクリロイル基含有化合物、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピルメタクリレート等のアルコール性水酸基含有メタクリレート、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メタクリロイルモリホリン、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、N-n-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-イソブトキシメチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド系化合物等を挙げることができる。 メタクリロイル基含有化合物の分子量の下限は限定するものではないが、メタクリロイル基含有化合物の分子量は好ましくは100以上である。」 「【0050】 成分4として用いられる、25℃で液状である化合物としては、例えば、ポリ(α-オレフィン)液状物、エチレン-プロピレン共重合体液状物、プロピレン-α-オレフィン共重合体液状物、エチレン-α-オレフィン共重合体液状物、液状ポリブテン、液状水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状水添ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状水添ポリイソプレン、液状ポリブタジエンポリオール、液状水添ポリブタジエンポリオール、液状ポリイソプレンポリオール、液状水添ポリイソプレンポリオール、水添ダイマージオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。」 「【0079】 また、成分4として、25℃で固体である化合物を使用することもできる。 成分4として用いられる、25℃で固体である化合物としては、分子内に炭素-炭素不飽和結合を有さない化合物であることが好ましい。 このような化合物としては、25℃で固体のエポキシ樹脂、25℃で固体のポリエステル樹脂、25℃で固体のポリオール樹脂や、25℃で固体の水添石油樹脂、テルペン系水添樹脂、水添ロジンエステル等を挙げることができる。 高誘電率の重合物を目的とした重合性組成物に用いられる場合、これらの中で、特に好ましいものとしては、水添ロジンエステルである。 低誘電率の重合物を目的とした重合性組成物に用いられる場合、これらの中で、特に好ましいものとしては、水添石油樹脂、テルペン系水添樹脂である。」 「【0111】 (実施配合例1) ラウリルアクリレート(商品名:ブレンマーLA、日油株式会社製)14.5質量部、テルペン系水添樹脂(商品名:CLEARON(登録商標)K100、ヤスハラケミカル株式会社製)24.0質量部、コンデンサー、温度計および攪拌機付き200mL四口セパラブル丸底フラスコの中に入れ、撹拌しながら、オイルバスを用いて、200mL四口セパラブル丸底フラスコ内の温度を90℃に昇温した。テルペン系水添樹脂がラウリルアクリレートに完全に溶解したのを確認して、温度を50℃以下まで冷却した。 その後、前記水添ポリイソプレンアクリレート1 20.0質量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(株式会社日本触媒製)3.5質量部、水添ポリブタジエンポリオール(商品名:NISSO-PB GI-1000、日本曹達株式会社製)20質量部、水添ダイマージオール(商品名:Pripol2033、クローダ社製)17.0質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX(登録商標)1010、BASF社製)1.0質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Irgacure(登録商標)184、BASF社製)0.8質量部および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名:SpeedCure TPO、Lambson製)0.4質量部を、前記200mL四口丸底フラスコの中に入れ、撹拌しながら、オイルバスを用いて、73℃に昇温し、溶液が均一になるまで、撹拌を継続し、25℃での粘度が3500mPa・sの微黄色均一溶液を得た。 【0112】 (実施配合例2?実施配合例14および比較配合例1?比較配合例5) 実施配合例1と同様の方法によって、表1および表2に示す配合組成に従って配合した。実施配合例2?実施配合例14で調製した配合物を、それぞれ重合性組成物A2?重合性組成物A14とし、比較配合例1?比較配合例5で調製した配合物を、それぞれ、重合性組成物B1?重合性組成物B5とした。 なお、表1および表2の数字は、特にことわりのない限り、「質量部」を意味する。 【0113】 【表1】 【0114】 【表2】 」 (3) 取消理由1について a 甲1に記載された発明 甲1には、 【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】の記載に基づき、以下の発明(以下、それぞれ、「甲1発明」、「甲1製法発明1」、及び、「甲1製法発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「 画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、 成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、 成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である 光硬化性樹脂組成物。」 <甲1製法発明1> 「 画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(A)?(C): <工程(A)> 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布する工程; <工程(B)> 塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して硬化樹脂層を形成する工程; 及び <工程(C)> 画像表示部材に、硬化樹脂層が内側となるように光透過性カバー部材を貼り合わせて画像表示装置を得る工程 を有し、 該光硬化性樹脂組成物として、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である光硬化性樹脂組成物を使用する製造方法。」 <甲1製法発明2> 「 画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(A)?(C): <工程(A)> 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布する工程; <工程(B)> 塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させることにより仮硬化樹脂層を形成する工程; <工程(C)> 画像表示部材に、仮硬化樹脂層が内側となるように光透過性カバー部材を貼り合わせる工程; 及び <工程(D)> 画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に対し紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光透過性の硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程 を有し、 該光硬化性樹脂組成物として、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である光硬化性樹脂組成物を使用する製造方法。」 また、甲1には、画像表示部材と光透過性カバー部材を、「甲1発明」の組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層した、以下の画像表示装置(以下、「甲1画像表示装置発明」という。)も記載されていると認められる。 <甲1画像表示装置発明> 「画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(イ)?(ニ): <成分(イ)>ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分; <成分(ロ)>アクリル系モノマー成分; <成分(ハ)>可塑剤成分; 及び <成分(ニ)>光重合開始剤成分 を含有し、 成分(イ)と成分(ロ)との光硬化性樹脂組成物中における合計含有量が25?80質量%であり、成分(ハ)の光硬化性樹脂組成物中における含有量が65?10質量%であり、 成分(ハ)が、60?150℃の軟化点を有する固形の粘着付与剤(1)と、液状可塑成分(2)とを含有しており、且つ粘着付与剤(1)と液状可塑成分(2)との質量比が60?30:30?10の範囲である光硬化性樹脂組成物、から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して、画像表示部材と光透過性カバー部材を積層した画像表示装置。」 b 本件訂正発明3について (a) 本件訂正発明3と甲1表示体発明の対比 本件訂正発明3(請求項2記載の光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体。)を、請求項2を引用しない形式で記載すると以下のとおりのものである。これを踏まえて、本件訂正発明3と甲1表示体発明を対比する。 「表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物であって、前記光硬化性樹脂組成物が、軟化点70?150℃の水添ロジンエステル、液状可塑剤、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートオリゴマー及び光重合開始剤を含み、 前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり、 前記(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリウレタン構造を骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマーである、 光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体。」 甲1画像表示装置発明の「液状可塑成分(2)」は、本件訂正発明3の「液状可塑剤」に相当する。 甲1画像表示装置発明の「アクリル系モノマー成分」は、本件訂正発明3の「ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート」の上位概念に該当する。 甲1画像表示装置発明の「ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分」は、本件訂正発明3の「(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当する。 甲1画像表示装置発明の「光重合開始剤成分」は、本件訂正発明3の「光重合開始剤」に相当する。 甲1画像表示装置発明の「画像表示部材」、「光透過性カバー部材」、「光硬化性樹脂組成物」、「画像表示装置」は、それぞれ、本件訂正発明3の「表示体」、「前面板」、「光硬化性樹脂組成物」、「光学表示体」に相当する。 甲1画像表示装置発明の「画像表示部材と、光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の硬化樹脂層を介して、画像表示部材と光透過性カバー部材を積層した画像表示装置」は、本件訂正発明3の「表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体」に相当する。 そうすると、本件訂正発明3と甲1画像表示装置発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「 表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物であって、 前記光硬化性樹脂組成物が、液状可塑剤、アクリル系モノマー成分、(メタ)アクリレートオリゴマー、及び、光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体。」 <相違点1> 「光硬化性樹脂組成物」について、本件訂正発明3は、「軟化点70?150℃の水添ロジンエステル」を含むものであるのに対し、甲1画像表示装置発明は、これを含むものであるか明らかでない点 <相違点2> 「液状可塑剤」について、本件訂正発明3は、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定されているのに対し、甲1画像表示装置発明は、そのような特定を有していない点 <相違点3> 「アクリル系モノマー成分」について、本件訂正発明3は、「ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート」と特定されているのに対し、甲1画像表示装置発明は、そのような特定を有していない点 <相違点4> 「(メタ)アクリレートオリゴマー」について、本件訂正発明3は、「ポリウレタン構造を骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー」に特定されているのに対し、甲1画像表示装置発明は、「ポリイソプレン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるアクリレート系オリゴマー成分」に特定されている点 (b) 相違点の検討 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 甲1画像表示装置発明の「液状可塑成分(2)」について、甲1の【0032】には、「このような液状可塑成分(2)としては、液状のポリブタジエン系可塑剤、ポリイソプレン系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤及びアジピン酸エステル系可塑剤からなる群から選択される少なくも一種を挙げることができる。」と記載されているが、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーについては記載も示唆もない。 そうすると、当業者は、甲1画像表示装置発明の「液状可塑成分(2)」を、甲1の記載に基づき、液状のポリブタジエン系可塑剤などに特定することを着想し得たとはいえるが、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定することを着想し得たとはいえない。 また、特許異議申立人が提出した、甲第2?10号証をみても、液状可塑成分の具体例として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ等は記載されていないから、甲第2?10号証を合わせみても、甲1画像表示装置発明において、「液状可塑成分(2)」を、甲1に具体的に例示されている液状のポリブタジエン系可塑剤などではなく、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定することを当業者が動機づけられるような記載や示唆はないし、そのような技術常識もない。 したがって、当業者といえども、甲1画像表示装置発明の「液状可塑成分(2)」を、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーに特定して、甲1画像表示装置発明が相違点2に係る構成を備えるものとすることを、容易になし得たとは認められない。 (c) 効果について 本件訂正発明3は、「光硬化プロセスのみを用いて、十分な接着力によって、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板を貼り合わせることができる光硬化性樹脂組成物が提供され、これを用いた光学表示体、及び光学表示体の製造方法が提供される。」(【0006】)という効果を奏するものであり、かつ、当該効果は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されている実施例2?4、6?8(【0056】の【表1】などを参照。)によって、具体的に裏付けられているものである。 (d) 申立人の主張について 相違点2に係る、液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーに特定されている点は、本件特許の請求項2(前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーである、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。 )に係る事項であるが、請求項2は、本件特許異議の申立ての対象となっていない。また、改めて特許異議申立書を精査しても、上記事項に関するいかなる主張(例えば、提出した証拠(甲第1?10号証)のいずれかに、この事項が記載ないし示唆されているなど)も見い出せない。 (e) 小括 以上のとおりであるから、さらに相違点1、3、4について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 c 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、「請求項2記載の光硬化性樹脂組成物」を発明特定事項として含むものであり、「請求項2記載の光硬化性樹脂組成物」は、「前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり」を発明特定事項として含むものである。 また、甲1製法発明1は、「液状の光硬化性樹脂組成物」を発明特定事項として含み、当該「光硬化性樹脂組成物」は液状可塑成分(2)を含むものであることが限定されているが、当該「液状可塑成分(2)」の種類に関する限定を何も備えていない。 以上を踏まえて、本件訂正発明4と甲1製法発明1を対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点5> 「液状可塑剤」について、本件訂正発明4は、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定されているのに対し、甲1製法発明1は、そのような特定を有していない点 相違点5について検討すると、相違点5は、相違点2と同一のものであるから、上記b(b)と同様の理由により、当業者といえども、甲1製法発明1が相違点5に係る構成を備えるものとすることを、容易になし得たとは認められない。 また、本件訂正発明4は、「光硬化プロセスのみを用いて、十分な接着力によって、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板を貼り合わせることができる光硬化性樹脂組成物が提供され、これを用いた光学表示体、及び光学表示体の製造方法が提供される。」(【0006】)という効果を奏するものである。 以上のとおりであるから、さらに検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 d 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、本件訂正発明4を引用し、さらに「(D)工程(C)の後、さらに光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射する工程を含む」との限定を付加したものであるが、上記cのとおり、本件訂正発明4は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。 そうすると、本件訂正発明5も、本件訂正発明4と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。 (4) 取消理由2について a 甲2に記載された発明 甲2には、 請求項1を引用する請求項5を引用する請求項7を引用する請求項8を引用する請求項9に係る画像表示装置の製造方法の発明、及び、該製造方法の発明で使用する重合性組成物の発明(以下、それぞれ、「甲2製法発明」、及び、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 また、甲2製法発明の製造方法で製造した画像表示装置の発明(以下、「甲2表示装置発明」という。)も記載されていると認められる。 <甲2製法発明> 「画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、および透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間の中から選択された少なくとも1箇所に重合性組成物を介在させる工程、 重合性組成物の一部に、透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部越しに光を照射することにより、重合性組成物を部分的に重合させる工程、ならびに 透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部の全面に光を照射することにより、部分的に重合された箇所を含む重合性組成物を重合する工程 を含む画像表示装置の製造方法であって、 重合性組成物が、 (成分1)アクリロイル基を有する化合物およびメタクリロイル基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物、および (成分2)α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤 を含み、かつ重合性組成物の25℃の粘度が500?5000mPa・sであり、 成分1が、 数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物、ならびに 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含み、 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物が、 炭素数8?18の炭化水素基を有するアクリレート、炭素数8?18の炭化水素基を有するメタクリレート、エーテル結合を有するアクリレートおよびエーテル結合を有するメタクリレートからなる群より選択された化合物、および アクリルアミド系化合物、メタクリルアミド系化合物、アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレートからなる群より選択された化合物を含み、 重合性組成物が、さらに、 (成分4)アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子および水素原子で構成された化合物、ならびに、アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子、水素原子および酸素原子で構成された化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含み、 成分4が、 25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む、 画像表示装置の製造方法。」 <甲2発明> 「画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、および透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間の中から選択された少なくとも1箇所に重合性組成物を介在させる工程、 重合性組成物の一部に、透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部越しに光を照射することにより、重合性組成物を部分的に重合させる工程、ならびに 透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部の全面に光を照射することにより、部分的に重合された箇所を含む重合性組成物を重合する工程 を含む画像表示装置の製造方法に用いる重合性組成物であって、 重合性組成物が、 (成分1)アクリロイル基を有する化合物およびメタクリロイル基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物、および (成分2)α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤 を含み、かつ重合性組成物の25℃の粘度が500?5000mPa・sであり、 成分1が、 数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物、ならびに 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含み、 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物が、 炭素数8?18の炭化水素基を有するアクリレート、炭素数8?18の炭化水素基を有するメタクリレート、エーテル結合を有するアクリレートおよびエーテル結合を有するメタクリレートからなる群より選択された化合物、および アクリルアミド系化合物、メタクリルアミド系化合物、アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレートからなる群より選択された化合物を含み、 重合性組成物が、さらに、 (成分4)アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子および水素原子で構成された化合物、ならびに、アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子、水素原子および酸素原子で構成された化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含み、 成分4が、 25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む、 重合性組成物。」 <甲2表示装置発明> 「画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、および透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間の中から選択された少なくとも1箇所に重合性組成物を介在させる工程、 重合性組成物の一部に、透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部越しに光を照射することにより、重合性組成物を部分的に重合させる工程、ならびに 透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部の全面に光を照射することにより、部分的に重合された箇所を含む重合性組成物を重合する工程 を含む画像表示装置の製造方法であって、 重合性組成物が、 (成分1)アクリロイル基を有する化合物およびメタクリロイル基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物、および (成分2)α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤 を含み、かつ重合性組成物の25℃の粘度が500?5000mPa・sであり、 成分1が、 数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物、ならびに 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含み、 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物が、 炭素数8?18の炭化水素基を有するアクリレート、炭素数8?18の炭化水素基を有するメタクリレート、エーテル結合を有するアクリレートおよびエーテル結合を有するメタクリレートからなる群より選択された化合物、および アクリルアミド系化合物、メタクリルアミド系化合物、アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレートからなる群より選択された化合物を含み、 重合性組成物が、さらに、 (成分4)アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子および水素原子で構成された化合物、ならびに、アクリロイル基、メタクリロイル基、ラジカル重合を抑制する機能、ラジカル重合を禁止する機能および光重合開始機能のいずれも有しない炭素原子、水素原子および酸素原子で構成された化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含み、 成分4が、 25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む、 画像表示装置の製造方法で製造した画像表示装置。」 b 本件訂正発明3について (a) 本件訂正発明3と甲2表示装置発明の対比 甲2表示装置発明の「分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物」は、「炭素数8?18の炭化水素基を有するアクリレート、炭素数8?18の炭化水素基を有するメタクリレート、エーテル結合を有するアクリレートおよびエーテル結合を有するメタクリレートからなる群より選択された化合物、および アクリルアミド系化合物、メタクリルアミド系化合物、アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレートからなる群より選択された化合物」であり、その選択肢として「アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレート」を含むから、本件訂正発明3の「ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート」に対応する。 甲2表示装置発明の「数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物」について、甲2の【0026】には「材料面からみると、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリイソプレン系アクリレート、ポリイソプレン系メタクリレート、ポリブタジエン系アクリレート、ポリブタジエン系メタクリレート、水添ポリイソプレン系アクリレート、水添ポリイソプレン系メタクリレート、水添ポリブタジエン系アクリレートおよび水添ポリブタジエン系メタクリレートからなる群より選択された少なくとも1種以上の高分子化合物」と記載されているから、その選択肢として、「ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート」を含むと認められる。 したがって、甲2表示装置発明の「数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物からなる群より選択された少なくとも1種の高分子化合物」は、本件訂正発明3の「(メタ)アクリレートオリゴマー」に対応する。 甲2表示装置発明の「α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤」は、本件訂正発明3の「光重合開始剤」に相当する。 甲2表示装置発明の重合性組成物は、「25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む」ものであるから、「25℃で液状である化合物」および「25℃で固体である化合物」をともに含む場合を包含する。したがって、甲2発明の「25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む」は、本件訂正発明3の「軟化点70?150℃の水添ロジンエステル、液状可塑剤を含み」に対応する。 甲2表示装置発明の「画像表示部を有する基部」、「透光性の保護部」、「透光性のタッチセンサー部」、「重合性組成物」、「画像表示装置」は、それぞれ、本件訂正発明3の「表示体」、「前面板」、「タッチパネル」、「光硬化性樹脂組成物」、「光学表示体」に相当する。 甲2表示装置発明の「画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性の保護部との間、画像表示装置の画像表示部を有する基部と透光性のタッチセンサー部との間、および透光性のタッチセンサー部と透光性の保護部との間の中から選択された少なくとも1箇所に重合性組成物を介在させる工程、重合性組成物の一部に、透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部越しに光を照射することにより、重合性組成物を部分的に重合させる工程、ならびに透光性の保護部および透光性のタッチセンサー部から選択された少なくとも1つの透光性の部の全面に光を照射することにより、部分的に重合された箇所を含む重合性組成物を重合する工程を含む画像表示装置の製造方法で製造した画像表示装置」は、本件訂正発明3の「表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体」に相当する。 そうすると、本件訂正発明3と甲2表示装置発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物であって、 前記光硬化性樹脂組成物が、 25℃で液状である化合物および25℃で固体である化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物、 分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物、 数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物、及び 光重合開始剤を含む、光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体。」 <相違点1’> 「光硬化性樹脂組成物」について、本件訂正発明3は、「軟化点70?150℃の水添ロジンエステル」を含むものであるのに対し、甲2表示装置発明は、これを含むものであるか明らかでない点 <相違点2’> 「液状可塑剤」について、本件訂正発明3は、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定されているのに対し、甲2表示装置発明は、そのような特定を有していない点 <相違点3’> 「分子量500以下のアクリロイル基含有化合物および分子量500以下のメタクリロイル基含有化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物」について、本件訂正発明3は、「ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート」と特定されているのに対し、甲2表示装置発明は、「炭素数8?18の炭化水素基を有するアクリレート、炭素数8?18の炭化水素基を有するメタクリレート、エーテル結合を有するアクリレートおよびエーテル結合を有するメタクリレートからなる群より選択された化合物、および アクリルアミド系化合物、メタクリルアミド系化合物、アルコール性水酸基含有アクリレートおよびアルコール性水酸基含有メタクリレートからなる群より選択された化合物」と特定されている点。 <相違点4’> 「数平均分子量が1000?40000であるアクリロイル基含有高分子化合物および数平均分子量が1000?40000であるメタクリロイル基含有高分子化合物」について、本件訂正発明3は、「ポリウレタン構造を骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー」に特定されているのに対し、甲2表示装置発明は、そのような特定を有していない点。 (b) 相違点の検討 事案に鑑み、まず、相違点2’について検討する。 甲2表示装置発明の「25℃で液状である化合物」について、甲2の【0050】には、「成分4として用いられる、25℃で液状である化合物としては、例えば、ポリ(α-オレフィン)液状物、エチレン-プロピレン共重合体液状物、プロピレン-α-オレフィン共重合体液状物、エチレン-α-オレフィン共重合体液状物、液状ポリブテン、液状水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状水添ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状水添ポリイソプレン、液状ポリブタジエンポリオール、液状水添ポリブタジエンポリオール、液状ポリイソプレンポリオール、液状水添ポリイソプレンポリオール、水添ダイマージオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。」と記載されているが、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーについては記載も示唆もない。 そうすると、当業者は、甲2表示装置発明の「25℃で液状である化合物」を、甲2の記載に基づき、ポリ(α-オレフィン)液状物などに特定することを着想し得たとはいえるが、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定することを着想し得たとはいえない。 また、甲2表示装置発明において、「25℃で液状である化合物」を、甲2に具体的に例示されているポリ(α-オレフィン)液状物などではなく、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定する方が好ましいことが、当業者には明らかであるといえるような技術常識などもない。 したがって、当業者といえども、甲2表示装置発明の「25℃で液状である化合物」を、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーに特定して、甲2表示装置発明が相違点2’に係る構成を備えるものとすることを、容易になし得たとは認められない。 (c) 効果について 本件訂正発明3は、「光硬化プロセスのみを用いて、十分な接着力によって、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板を貼り合わせることができる光硬化性樹脂組成物が提供され、これを用いた光学表示体、及び光学表示体の製造方法が提供される。」(【0006】)という効果を奏するものであり、かつ、当該効果は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されている実施例2?4、6?8(【0056】の【表1】などを参照。)によって、具体的に裏付けられているものである。 (d) 申立人の主張について 相違点2’に係る、液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーに特定されている点は、本件特許の請求項2(前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーである、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。)に係る事項であるが、請求項2は、本件特許異議の申立ての対象となっていない。また、改めて特許異議申立書を精査しても、上記事項に関するいかなる主張(例えば、提出した証拠(甲第1?10号証)のいずれかに、この事項が記載ないし示唆されているなど)も見い出せない。 (e) 小括 以上のとおりであるから、さらに相違点1’、3’、4’について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 c 本件訂正発明6について 本件訂正発明6は、「請求項2記載の光硬化性樹脂組成物」を発明特定事項として含むものであり、「請求項2記載の光硬化性樹脂組成物」は、「前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり」を発明特定事項として含むものである。 また、甲2製法発明は、「重合性組成物」を発明特定事項として含み、当該「重合性組成物」は25℃で液状である化合物を含むものであることが限定されているが、当該「25℃で液状である化合物」の種類に関する限定を何も備えていない。 以上を踏まえて、本件訂正発明6と甲2製法発明を対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点5’> 「液状可塑剤」について、本件訂正発明6は、「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマー」に特定されているのに対し、甲2製法発明は、そのような特定を有していない点 相違点5’について検討すると、相違点5’は、相違点2’と同一のものであるから、上記b(b)と同様の理由により、当業者といえども、甲2製法発明が相違点5’に係る構成を備えるものとすることを、容易になし得たとは認められない。 また、本件訂正発明6は、「光硬化プロセスのみを用いて、十分な接着力によって、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板を貼り合わせることができる光硬化性樹脂組成物が提供され、これを用いた光学表示体、及び光学表示体の製造方法が提供される。」(【0006】)という効果を奏するものである。 以上のとおりであるから、さらに検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 2 取消理由通知で採用しなかった取消理由について (1) 取消理由の概要 請求項3?6に係る特許に対する特許異議の申立ての理由の概要は以下のとおりである。 <取消理由> 取消理由3 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3?5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(主たる刊行物として甲第1号証、及び、請求項4、5に対する周知文献として甲第5?7号証)に記載された発明であるか、または、当該発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由4 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3、6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(主たる刊行物として甲第2号証、及び、請求項6に対する周知文献として甲第8?10号証)に記載された発明であるか、または、当該発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由5 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(主たる刊行物として甲第3号証、及び、従たる刊行物として甲第1号証)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由6 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(主たる刊行物として甲第4号証、及び、従たる刊行物として甲第1号証)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <刊行物> 甲第1号証:特開2014-118450号公報 甲第2号証:特開2014-203265号公報 甲第3号証:特開2014-65790号公報 甲第4号証:国際公開第2013/161812号 甲第5号証:特開2013-152339号公報 甲第6号証:特開2014-119557号公報 甲第7号証:国際公開第2013/57958号 甲第8号証:特開2013-254195号公報 甲第9号証:特開2013-254189号公報 甲第10号証:特開2010-7044号公報 (2) 判断 取消理由3、4は、それぞれ、取消理由1、2に該当する。また、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項1が削除された。したがって、取消理由5、6(本件訂正発明3を対象とするもの)について検討する。 本件訂正発明3は、本件訂正発明2を引用する発明であって、「前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり」を発明特定事項として備えるものである。 また、上記1(3)b(b)のとおり、甲1?10のいずれにも、当該発明特定事項について記載がない。 そうすると、さらに検討するまでもなく、当該発明特定事項を備える本件訂正発明3を甲第3または4号証、及び、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項3?6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立て理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項3?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件訂正により請求項1に係る特許は削除されたため、請求項1に対して申立人がした特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物であって、前記光硬化性樹脂組成物が、軟化点70?150℃の水添ロジンエステル、液状可塑剤、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートオリゴマー及び光重合開始剤を含み、 前記液状可塑剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブテンとの組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルとポリブタジエンの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体との組合せ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、水添ロジンエステル系樹脂(ただし、液状であることとする)、キシレン樹脂、アクリルポリマー又はアクリルコポリマーであり、 前記(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリウレタン構造を骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマーである、光硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 請求項2記載の光硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、光学表示体。 【請求項4】 光学表示体の製造方法であって、 (A)表示体及びタッチパネルのいずれか一方の基板、表示体及び前面板のいずれか一方の基板、又はタッチパネル及び前面板のいずれか一方の基板に、請求項2記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、 (B)工程(A)で得られた基板にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、及び (C)工程(B)で得られた基板と、工程(A)で光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合させる工程 を含む、製造方法。 【請求項5】 さらに(D)工程(C)の後、さらに光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射する工程を含む、請求項4記載の製造方法。 【請求項6】 光学表示体の製造方法であって、 (A’)表示体及びタッチパネルのいずれか一方の基板、表示体及び前面板のいずれか一方の基板、又はタッチパネル及び前面板のいずれか一方の基板に、請求項2記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、 (B’)工程(A’)で得られた基板と工程(A’)で請求項2記載の光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合する工程、及び (C’)光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射する工程 を含む、光学表示体の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-02-05 |
出願番号 | 特願2014-236005(P2014-236005) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(C09J)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松原 宜史 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
天野 宏樹 蔵野 雅昭 |
登録日 | 2018-08-24 |
登録番号 | 特許第6387510号(P6387510) |
権利者 | 協立化学産業株式会社 |
発明の名称 | 光硬化性樹脂組成物 |
代理人 | 特許業務法人津国 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |