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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61G
管理番号 1360510
異議申立番号 異議2019-700759  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-24 
確定日 2020-03-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6491988号発明「寝台装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6491988号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6491988号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年10月6日に出願され、平成31年3月8日に特許権の設定登録がされ、同年3月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?4に係る特許に対し、令和1年9月24日に、特許異議申立人株式会社プラッツ(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年11月19日に申立人より手続補正書が提出され、同年11月25日付けで上記手続補正書に係る手続についての却下理由通知書が通知され、同年12月10日に申立人より弁明書が提出され、令和2年1月7日付けで手続却下の決定がなされたものである。

第2 本件発明
特許第6491988号の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムと、
前記複数のボトムを支持する複数のメインフレームと、
前記複数のメインフレームを支持するベースフレームと、
前記背ボトムと前記脚ボトムを連動して駆動するボトム駆動機構と、
前記ボトム駆動機構に連結される取付け部材と、
を備え、
前記メインフレームには、前記取付け部材に連結され、回動可能な第1回動部材と、回動可能な第2回動部材とが設けられ、
前記第1回動部材と前記第2回動部材を連結する連動リンクをさらに備え、
前記ベースフレームには、平面視において前記連動リンクと交差する左右方向に延びる第1連結棒が設けられ、前記第1連結棒の一部は前記連動リンクとの接触を避けるように湾曲していることを特徴とする電動ベッド。
【請求項2】
前記第1連結棒の一部は直線状であることを特徴とする請求項1記載の電動ベッド。
【請求項3】
前記メインフレームは頭側フレームと足側フレームを含み、
前記頭側フレームには前記第1回動部材が設けられ、前記足側フレームには前記第2回動部材が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電動ベッド。
【請求項4】
前記ベースフレームは、前記左右方向に交差する前後方向に延びる2本の第1縦部材と、前記第1縦部材に設けられた脚部材とを備え、
前記ベースフレームに、前記左右方向に延びる第2連結棒が設けられ、前記前後方向に延びる2本の第1リンクが前記第2連結棒に設けられ、前記前後方向に延びる2本の第2リンクが前記第1連結棒に設けられ、
それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを連結ピンで連結することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の電動ベッド。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1?11号証を提出するとともに、以下の申立理由1及び2により請求項1?4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 証拠方法
(1)甲第1号証:取扱説明書
「在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ」
パラマウントベッド株式会社
(2)甲第2号証:取扱説明書
「電動在宅介護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩」
シーホネンス株式会社
(3)甲第3号証:取扱説明書
「在宅向け電動ケアベッド コンフォーネ」
Panasonic
パナソニック エイジフリーライフテック株式会社
(4)甲第4号証:取扱説明書
「電動在宅ケアベッド K-520A・B/530 和夢純」
シーホネンス株式会社
(5)甲第5号証:リライフベッドシリーズ取扱説明書
「Relife リライフ」
株式会社ランダルコーポレーション
(6)甲第6号証:特開2006-109871号公報
(7)甲第7号証:パラマウントベッド株式会社のホームページ
「TECHNOLOGY&HISTORY|会社情報|パラマウントベッド株式会社|PARAMOUNT BED」のプリントアウト:2019年8月22日印刷
(https://www.paramount.co.jp/tech_hist/history/2010/index.html)
(8)甲第8号証:パラマウントベッド株式会社のホームページ
「会社沿革|パラマウントベッド株式会社|PARAMOUNT BED」のプリントアウト:2019年8月26日印刷
(https://www.paramount.co.jp/company/history.html)
(9)甲第9号証:シーホネンス株式会社のホームページ
「会社沿革|シーホネンス株式会社|SEAHONENCE.inc」のプリントアウト:2019年8月22日印刷
(http://www.seahonence.co.jp/hp/Company/CorporateHistory.html)
(10)甲第10号証:パナソニック株式会社のホームページ
「電動ケアベッド「コンフォーネ」を発売|プレスリリース|Panasonic Newsroom Japan」のプリントアウト:2019年8月22日印刷
(https://news.panasonic.com/jp/press/data/2015/01/jnl50123-2/jn150123-2.html)
(11)甲第11号証:「2010年度 グッドデザイン賞 受賞」のプリントアウト:2019年8月23日印刷
(http://www.lundal.co.jp/news/images/upload/G_makushutoku.pdf)

2 申立理由
(1)申立理由1(特許法第29条第2項:甲第1号証を主たる証拠とするもの)
本件発明1?4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書44頁下から5行?46頁9行、47頁13行?49頁9行)。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項:甲第2号証を主たる証拠とするもの)
請求項1?4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3?6号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(特許異議申立書46頁10行?47頁12行、47頁13行?49頁9行)。

第4 申立理由についての判断
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項等
(1-1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には次の図面及び説明文が記載されている(なお、かっこ書きで取扱説明書の頁番号等を併記する。手書きの文字等は、申立人が付したものである。以下同様。)。
(1a)1枚目(表紙)

(1b)2枚目(5頁)

(1c)3枚目(24頁)

(1d)4枚目(38頁)

(1e)5枚目(43頁)

(1f)6枚目(44頁)

(1g)7枚目(48頁)

(1h)8枚目(49頁)

(1i)9枚目(50頁)

(1j)10枚目(51頁)

(1k)11枚目(53頁)

(1l)12枚目(56頁)

(1m)13枚目(59頁)

(1n)14枚目(60頁)

(1o)15枚目(61頁)

(1p)16枚目(95頁)

(1q)17枚目(101頁)

(1r)18枚目(裏表紙)

(1-2)認定事項
甲第1号証には、摘示(1a)のとおり在宅ケアベッドについて開示されており、かかる在宅ケアベッドの構造について、以下の事項が認定できる。
ア 摘示(1c)より、在宅ケアベッドは電動ベッドとして構成されていること
イ 摘示(1b)より、背ボトム、キューマボトム、膝ボトム及び足ボトムを有すること
ウ 摘示(1e)(1f)より、ベースフレーム、足側フレーム及び頭側フレームを有すること
エ 摘示(1g)(1h)(1i)(1j)より、ベースフレーム上に足側フレーム及び頭側フレームが取付けられること
オ 摘示(1m)(1n)より、頭側フレームのリトラフレームに背ボトム及びキューマボトムが取付けられること
カ 摘示(1o)より、足側フレームに膝ボトム及び足ボトムが取付けられること
キ 摘示(1d)(1l)より、背膝連動を行うための背膝連動幹を有すること
ク 摘示(1l)(なお、摘示(1l)に示される図に、「部材A」及び「部材B」を追記した図を参考図1(甲1)として示す。)より、背膝連動幹の一端部は頭側フレームの部材Aに取付けられ、他端部は足側フレームの部材Bに取付けられること

ケ 摘示(1k)(なお、摘示(1k)に示される図に、「部材A」及び「部材C」を追記した図を参考図2(甲1)として示す。)より、背アクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結されていること

コ 摘示(1g)(なお、摘示(1g)に示される図に、「部材D」及び「部材E」を追記した図を参考図3(甲1)として示す。)より、ベースフレームには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられていること

(1-3)甲第1号証に記載された発明
上記(1-1)及び(1-2)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「在宅ケアベッドにおいて、
在宅ケアベッドは電動ベッドとして構成され、
背ボトム、キューマボトム、膝ボトム及び足ボトムと、
ベースフレーム、足側フレーム及び頭側フレームと、を有し、
ベースフレーム上に足側フレーム及び頭側フレームが取付けられ、
頭側フレームのリトラフレームに背ボトム及びキューマボトムが取付けられ、
足側フレームに膝ボトム及び足ボトムが取付けられ、
背膝連動を行うための背膝連動幹を有するとともに、背膝連動幹の一端部は頭側フレームの部材Aに取付けられ、他端部は足側フレームの部材Bに取付けられ、
背アクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結され、
ベースフレームには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられている、
在宅ケアベッド。」

(2)甲第2号証の記載事項等
(2-1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には次の図面及び説明文が記載されている。
(2a)1枚目(表紙)

(2b)2枚目(8頁)

(2c)3枚目(10頁)

(2d)4枚目(19頁)

(2e)4枚目(20頁)

(2f)5枚目(21頁)

(2g)5枚目(22頁)

(2h)6枚目(24頁)

(2i)7枚目(25頁)

(2j)7枚目(26頁)

(2k)8枚目(27頁)

(2l)8枚目(28頁)

(2m)9枚目(29頁)

(2n)9枚目(30頁)

(2o)10枚目(31頁)

(2p)10枚目(32頁)

(2q)11枚目(33頁)

(2r)12枚目(54頁)

(2s)13枚目(63頁)

(2t)14枚目(裏表紙)

(2-2)認定事項
甲第2号証には、摘示(2a)のとおりNX-2型の電動在宅介護ベッドについて開示されており、かかる電動在宅介護ベッドの構造について、以下の事項が認定できる。
ア 摘示(2b)(2c)より、電動在宅介護ベッドは電動ベッドとして構成されていること
イ 摘示(2b)より、背ボトム、座ボトム、膝ボトム及び脚ボトムを有すること
ウ 摘示(2d)(2e)より、ハイローベースユニット、リアユニット及びフロントユニットを有すること
エ 摘示(2g)(2h)より、ハイローベースユニット上にリアユニット及びフロントユニットが取付けられること
オ 摘示(2n)(2o)より、リアユニットに座ボトム、膝ボトム及び脚ボトムが取付けられること
カ 摘示(2q)より、フロントユニットに背ボトムが取付けられること
キ 摘示(2c)(2j)(2r)より、背上げ脚連動モーションを行うための背上げ脚連動モーションユニットを有すること
ク 摘示(2s)には、「モーター数」の項に「NX-2:2モータ-」と記載され、「モーター形式」の項に「リニアアクチェータ(DCモータ-)」と記載されているから、上記アの電動在宅介護ベッドは、リニアアクチェータを駆動機構として用いることが明らかでる。
したがって、「(NX-2)」の構造を示す摘示(2j)(なお、摘示(2j)に示される図に、「リニアアクチュエーター」「部材A」「部材B」及び「部材C」を追記した図を参考図1(甲2)として示す。)より、
背上げ脚連動モーションユニットの一端部はフロントユニットの部材Aに設けられたあたま側固定金具に取付けられ、他端部はリアユニットの部材Bに設けられたあし側固定金具に取付けられること、及び、
リニアアクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結されていること

ケ 摘示(2f)(2l)(なお、摘示(2f)に示される図に、「部材D」及び「部材E」を追記した図を参考図2(甲2)として示し、摘示(2l)に示される図に、「部材A」、「部材D」及び「部材E」を追記した図を参考図3(甲2)として示す。)より、ハイローベースユニットには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられていること

(2-3)甲第2号証に記載された発明
上記(2-1)及び(2-2)によれば、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「電動在宅介護ベッドにおいて、
電動在宅介護ベッドは電動ベッドとして構成され、
背ボトム、座ボトム、膝ボトム及び脚ボトムと、
ハイローベースユニット、リアユニット及びフロントユニットと、を有し、
ハイローベースユニット上にリアユニット及びフロントユニットが取付けられ、
リアユニットに座ボトム、膝ボトム及び脚ボトムが取付けられ、
フロントユニットに背ボトムが取付けられ、
背上げ脚連動モーションを行うための背上げ脚連動モーションユニットを有するとともに、背上げ脚連動モーションユニットの一端部はフロントユニットの部材Aに設けられたあたま側固定金具に取付けられ、他端部はリアユニットの部材Bに設けられたあし側固定金具に取付けられ、
リニアアクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結され、
ハイローベースユニットには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられている、
電動在宅介護ベッド。」

(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には次の図面及び説明文が記載されている。
(3a)1枚目(表紙)

(3b)2枚目(9頁)

(3c)3枚目(22頁)

(3d)4枚目(36頁)

(3e)6枚目(39頁)

(3f)7枚目(40頁)

(3g)8枚目(41頁)

(3h)9枚目(42頁)

(3i)10枚目(43頁)

(3j)11枚目(45頁)

(3k)12枚目(47頁)

(3l)13枚目(48頁)

(3m)14枚目(49頁)

(3n)15枚目(裏表紙)

(4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には次の図面及び説明文が記載されている。
(4a)1枚目(表紙)

(4b)2枚目(11頁)

(4c)3枚目(12頁)

(4d)4枚目(13頁)

(4e)5枚目(17頁)

(4f)6枚目(38頁)

(4g)7枚目(39頁)

(4h)8枚目(裏表紙)

(5)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には次の図面及び説明文が記載されている。
(5a)1枚目(表紙)

(5b)2枚目(2頁)

(5c)3枚目(4頁)

(5d)4枚目(18頁)

(5e)5枚目(25頁)

(6)甲第6号証の記載事項
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には次の記載がある。
(6a)「【0001】
本発明は、背上げ可能なベッドにおける組立構造に関するものである。
・・・
【0010】
本発明に係る背上げ可能なベッドBにおける組立構造について、図面に基づいて説明する。このベッドBは、昇降機構1が具備されたベッドフレーム2と、このベッドフレーム2に取り付けられる基部フレーム3と、さらに、この基部フレーム3内を前後に移動する摺動フレーム4と、この摺動フレーム4の摺動動作に連動する引込手段5を介して取り付けられる脚部支持フレーム6と、前記摺動フレーム4上に取り付けられる腰部支持枠7と、前記基部フレーム3及び摺動フレーム4間に起伏機構8を介して取り付けられる背部支持枠9と、さらに、脚部支持フレーム6に取り付けられる脚部支持枠10とから主に構成されている。
以下、各部の構成を図面に基づいて詳述する。
・・・
【0016】
次に前記ベッドフレーム2に取り付けられる基部フレーム3について第5図に基づいて説明する。
この基部フレーム3は、略々矩形状に構成されている。まず、左右の側部パイプ40,40の前後端部に連結パイプ41,42を固着している。そして、後側の連結パイプ41には駆動手段43の取付部となるブラケット44が固着されるとともに、起伏機構8の取付部となるブラケット45,45も固着されている。そして、左右の側部パイプ40,40にはそれぞれレール部材46及び前側カムプレート47、後側カムプレート48が固着されている。なお、前側カムプレート47及び後側カムプレート48はL字状のプレートであり、互いに一定間隔離間した状態でレール部材46から内側に突出するように固着されている。また、前側カムプレート47にはそれぞれ軸部材49が固着されている。
・・・
【0036】
続いて、背部支持枠9について説明する。
この背部支持枠9は、基部フレーム3への取付部となる後側リンク126の切欠き部129aと、摺動フレーム4への取付部となる前側リンク127の筒状部材136の間隔が変化することによって作動する起伏機構8によって支持されている。
まず、(a)図の状態の場合、前述の間隔が最も広がった状態となっており、後側リンク126と前側リンク127が前方に回動した状態となっている。このとき、前側リンク127に枢支された背部支持枠9は後方に倒れた状態となり、後側リンク126の連結部材131で支持され、水平な状態となっている。
この状態から、(b)(c)(d)図のように駆動手段43を短くして前述の間隔を狭くしていくと、後側リンク126と前側リンク127がそれぞれ起立するように回動する。このとき、背部支持枠9は持ち上げられながら起立するように作動される。
【0037】
上記のように各支持枠7,9,10は動作され、(a)図に示す水平状態から、背部支持枠9が起立し、腰部支持枠7の下方に脚部支持枠10が収納され、椅子状態へと各支持枠7,9,10を動作させることができる。また、背部支持枠9の起立に伴って、腰部支持枠7は上方回動するので、利用者が前方へずれるのを防ぐことができる。さらに、腰部支持枠7の後端部に対して背部支持枠9が後方上方に離間しながら起立するので、マットレスMを通して伝わる利用者への圧迫感といった不快感を軽減させることもできる。」
(6b)甲第6号証には以下の図が示されている。

(7)甲第7号証の記載事項
甲第7号証には次の記載がある。
(7a)3枚目

(8)甲第8号証の記載事項
甲第8号証には次の記載がある。
(8a)3枚目

(9)甲第9号証の記載事項
甲第9号証には次の記載がある。
(9a)4枚目

(9b)5枚目

(10)甲第10号証の記載事項
甲第10号証には次の記載がある。
(10a)1枚目

(11)甲第11号証の記載事項
甲第11号証には次の記載がある。
(11a)1枚目

(11b)3枚目

2 当審の判断
2-1 甲第1?5号証の公知性について
(1)甲第1号証について
甲第1号証は、「在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ」の「取扱説明書」であり(摘示(1a))、第1号証の18枚目(摘示(1r))の右下に「’12.03」と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2012年3月には公知になっていたとも推認できる。
また、甲第7号証(摘示(7a))及び甲第8号証(摘示(8a))によれば、上記「在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ」は、2009年にJIS規格の認証を取得し、2009年4月に販売が開始されたものと推認できる。
そして、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲第1号証の「取扱説明書」は、本件特許の出願日前の2012年3月には公知になったものと一応推認することができる。

(2)甲第2号証について
甲第2号証は、「電動在宅介護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩」の「取扱説明書」であり(摘示(2a))、甲第2号証の14枚目(摘示(2t))の右下に「2014.07.01」と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2014年7月1日には公知になっていたとも推認できる。
また、甲第9号証(摘示(9b))によれば、上記「電動在宅介護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩」は、2014年10月にJIS規格の認証を取得するとともに発売されたものと推認できる。
そして、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布することを目的としたものといえるから、甲第2号証の「取扱説明書」は、本件特許の出願日前の2014年7月には公知になったものと一応推認することができる。

(3)甲第3号証について
甲第3号証は、「在宅向け電動ケアベッド コンフォーネ」の「取扱説明書」であり(摘示(3a))、第3号証の15枚目(摘示(3n))に「○C Panasonic AGE-FREE Life Tech Co.,Ltd.2012」(なお、「○C」は、丸付きのCを表す。以下同様。)と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2012年には公知になっていたとも推認できる。
また、甲第10号証(摘示(10a))によれば、上記「在宅向け電動ケアベッド コンフォーネ」は、2015年2月2日より販売が開始されたものと推認できる。
そして、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲第3号証の「取扱説明書」は、本件特許の出願日前の2015年2月2日には公知になったものと一応推認することができる。

(4)甲第4号証について
甲第4号証は、「電動在宅ケアベッド K-520A・B/530 和夢純」の「取扱説明書」であり(摘示(4a))、第4号証の8枚目(摘示(4h))の右下に「2009.10.00」と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2009年10月には公知になっていたとも推認できる。
また、甲第9号証(摘示(9a))によれば、上記「電動在宅ケアベッド K-520A・B/530 和夢純」は、2008年11月に発売されたものと推認できる。
そして、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲第4号証の「取扱説明書」は、本件特許の出願日前の2009年10月には公知になったものと一応推認することができる。

(5)甲第5号証について
甲第5号証は、「Relife リライフ」「リライフベッドシリーズ」の「取扱説明書」であり(摘示(5a))、第5号証の2枚目(摘示(5b))の右下に「10 8-1」と記載されているから、上記「取扱説明書」は、2010年8月1日には公知になっていたとも推認できる。
また、甲第11号証(摘示(11a)(11b))によれば、上記「リライフベッド」は、2010年度にグッドデザイン賞を受賞していることから、2010年度内において発売されたものと推認できる。
そして、「取扱説明書」は、製品に添付して頒布されたものといえるから、甲第5号証の「取扱説明書」は、本件特許の出願日前の2010年8月1日には公知になったものと一応推認することができる。

(6)まとめ
上記(1)?(5)のとおり、甲第1?5号証は、いずれも本件特許の出願日前には公知になったものと一応推認することができるので、それら甲第1?5号証が、本件特許の出願日前に日本国内において頒布された刊行物であるとして、以下、申立理由1及び申立理由2について検討する。

2-2 申立理由1(特許法第29条第2項:甲第1号証を主たる証拠とするもの)について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「背ボトム」は、本件発明1の「背ボトム」に相当し、以下同様に、「キューマボトム」は「腰ボトム」に、「膝ボトム」及び「足ボトム」は「脚ボトム」に相当する。
そして、甲1発明の「背ボトム、キューマボトム、膝ボトム及び足ボトム」は、複数のボトムということもできるから、本件発明1の「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトム」に相当するものといえる。
イ 甲1発明の「足側フレーム」及び「頭側フレーム」は、本件発明1の「複数のメインフレーム」に相当する。
そして、甲1発明は、「頭側フレームのリトラフレームに背ボトム及びキューマボトムが取付けられ、足側フレームに膝ボトム及び足ボトムが取付けられ」ることから、上記「足側フレーム」及び「頭側フレーム」が、「背ボトム、キューマボトム、膝ボトム及び足ボトム」を支持することは明らかである。
したがって、甲1発明の「足側フレーム」及び「頭側フレーム」は、上記アをも踏まえると、本件発明1の「前記複数のボトムを支持する複数のメインフレーム」に相当するものといえる。
ウ 甲1発明の「ベースフレーム」は、本件発明1の「ベースフレーム」に相当する。
そして、甲1発明は、「ベースフレーム上に足側フレーム及び頭側フレームが取付けられ」ることから、上記「ベースフレーム」が、「足側フレーム」及び「頭側フレーム」を支持することは明らかである。
したがって、甲1発明の「ベースフレーム」は、上記イをも踏まえると、本件発明1の「前記複数のメインフレームを支持するベースフレーム」に相当するものといえる。
エ 甲1発明は、「背膝連動を行うための背膝連動幹を有するとともに、背膝連動幹の一端部は頭側フレームの部材Aに取付けられ、他端部は足側フレームの部材Bに取付けられ、背アクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結され」るものであるところ(参考図1(甲1)、参考図2(甲1)を参照)、摘示(1d)(1l)(1p)等の記載に照らして、背アクチュエーターの駆動によって、背ボトムと膝ボトムが連動することは技術的に明らかである。
したがって、甲1発明の「背アクチュエーター」は、上記アをも踏まえると、本件発明1の「前記背ボトムと前記脚ボトムを連動して駆動するボトム駆動機構」に相当するものといえる。
オ 甲1発明は、「背アクチュエーターに部材Cが連結される」(参考図2(甲1)を参照)ものであるかから、甲1発明の「部材C」は、上記エをも踏まえると、本件発明1の「前記ボトム駆動機構に連結される取付け部材」に相当するものといえる。
カ 甲1発明は、「背膝連動を行うための背膝連動幹を有するとともに、背膝連動幹の一端部は頭側フレームの部材Aに取付けられ、他端部は足側フレームの部材Bに取付けられ、背アクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結され」るものであるところ(参考図1(甲1)、参考図2(甲1)を参照)、摘示(1l)(1m)の記載に照らして、背アクチュエーターの駆動によって、部材A及び部材Bが回動することは技術的に明らかである。
したがって、甲1発明において、「頭側フレームの部材A」及び「足側フレームの部材B」を備えることは、上記イ及びオをも踏まえると、本件発明1の「前記メインフレームには、前記取付け部材に連結され、回動可能な第1回動部材と、回動可能な第2回動部材とが設けられ」ることに相当するものといえる。
キ 甲1発明は、「背膝連動を行うための背膝連動幹を有するとともに、背膝連動幹の一端部は頭側フレームの部材Aに取付けられ、他端部は足側フレームの部材Bに取付けられ」(参考図1(甲1)を参照)るものであるから、甲1発明の「背膝連動幹」は、上記カをも踏まえると、本件発明1の「前記第1回動部材と前記第2回動部材を連結する連動リンク」に相当するものといえる。
ク 甲1発明の「在宅ケアベッド」は、「電動ベッドとして構成され」たものであるから、本件発明1の「電動ベッド」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムと、
前記複数のボトムを支持する複数のメインフレームと、
前記複数のメインフレームを支持するベースフレームと、
前記背ボトムと前記脚ボトムを連動して駆動するボトム駆動機構と、
前記ボトム駆動機構に連結される取付け部材と、
を備え、
前記メインフレームには、前記取付け部材に連結され、回動可能な第1回動部材と、回動可能な第2回動部材とが設けられ、
前記第1回動部材と前記第2回動部材を連結する連動リンクをさらに備える、
電動ベッド。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、「前記ベースフレームには、平面視において前記連動リンクと交差する左右方向に延びる第1連結棒が設けられ、前記第1連結棒の一部は前記連動リンクとの接触を避けるように湾曲している」のに対し、甲1発明は、「ベースフレームには、左右方向に延びる、部材D及部材Eが設けられている」点。

(1-2)判断
ア 本件発明1は、「前記ベースフレームには、平面視において前記連動リンクと交差する左右方向に延びる第1連結棒が設けられ、前記第1連結棒の一部は前記連動リンクとの接触を避けるように湾曲している」ものであるから、本件発明1は、「第1連結棒」と「連動リンク」との配設構成として、「第1連結棒」が、「平面視において前記連動リンクと交差する左右方向に延びる」こと(以下「構成A」ということもある。)を前提とし、「前記第1連結棒の一部」が、「前記連動リンクとの接触を避けるように湾曲している」こと(以下「構成B」ということもある。)を、その発明特定事項として特定したものといえる。
ここで、甲1発明は、「背膝連動を行うための背膝連動幹を有する」ものであって、「ベースフレームには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられている」ので(参考図3(甲1)を参照)、上記「部材D」及び「部材E」を、上記構成A及び構成Bのように構成することが当業者にとって容易想到か否かについて以下検討する。

イ 検討
(ア)甲1発明の「部材D」及び「部材E」の構成について
a 「部材D」の構成について
甲1発明は、「ベースフレーム上に」「頭側フレームが取付けられ」るものであるところ、摘示(1l)(参考図1(甲1))及び摘示(1g)(参考図3(甲1))に示されるベースフレームの脚座の位置等をも考慮すると、頭側フレームの「部材D」は、「背膝連動幹」と平面視において交差するように配置されているようにも看取し得るから、上記「部材D」と「背膝連動幹」とは、上記構成Aと同様な配設構成を有するものということもできる。
しかし、上記「部材D」は、摘示(1e)(1g)(1h)(1i)等にも示されているように、全体として「直線状」に形成されているから、上記構成Bのように湾曲した構成ということはできない。
また、甲第1号証には、摘示(1l))(参考図1(甲1))のとおり「背膝連動幹の取付け」に係る構成が記載されているところ、その取付け態様において、上記「部材D」と「背膝連動幹」とが接触するようなことは記載も示唆もなく、さらに、摘示(1c)の「ゆかからベッドのボトム上面はでの高さを、約20cmから約65cmまで調節できます。」との記載によれば、甲1発明は、ベッドの高さ調節時においても、上記「部材D」と「背膝連動幹」とが接触することがないように設計されていることも技術的に明らかである。
したがって、「背膝連動幹の取付け」時において、さらには、ベッドの高さ調節時において、上記「部材D」と「背膝連動幹」とが接触することがないように設計された甲1発明の「在宅ケアベッド」において、敢えて上記「部材D」を上記構成Bのように「湾曲」させるべき合理性はない。

b 「部材E」の構成について
甲第1号証の摘示(1g)(参考図3(甲1))等によれば、甲1発明の「部材E」の形状は、その一部が湾曲している、ということもできる。
しかし、甲第1号証の摘示(1l)(参考図1(甲1))に示されているとおり、「背膝連動幹の取付け」に際し、上記「部材E」は、平面視において、そもそも「背膝連動幹」と交差するように配置されたものではない。また、甲第1号証には、摘示(1d)に示されているとおり、ベッドの高さを上げた状態での「背膝連動幹」の配設構造が図示されているが、そのような状態においても、上記「部材E」が、平面視において、「背膝連動幹」と交差するように配置されるということはできない。
そして、平面視において、そもそも交差することのないように配置された「部材E」及び「背膝連動幹」の配設構造を、上記構成Aのように「平面視において」「交差する」ように構成すべき合理性は一切なく、むしろそのように構成することには阻害要因が存在するというべきである。

(イ)甲1発明に対する甲第2?6号証に記載された技術的事項の適用について
上記(ア)で述べたとおり、甲1発明の「在宅ケアベッド」の構成を前提とするならば、「部材D」及び「部材E」について、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることの動機付けはなく、また、そのように構成することには阻害要因が存在するものということもできるが、申立人は、「甲第1号証に示すように、背膝連動幹と交差する左右方向に延びるパイプが公知技術であり、さらに、パイプ、フレームと交差する部品の一部を湾曲させてそれと交差するパイプ等と衝突しないように構成することは、甲第1号証のみならず甲第2?6号証に示すように、周知技術であるから、甲第1号証に開示されたパイプにおいて、甲第1号証に開示された背膝連動幹、甲第2号証に開示された背上げ脚連動モーションユニット等のように、背ボトムと膝ボトムを連動して駆動するために設けられた、本件発明1における連動リンクに相当する部材のとの接触を避けるように、このパイプの一部を湾曲させる構成は、当業者にとっては設計事項にすぎない。」旨主張するので(特許異議申立書45頁13?23行)、申立人の主張する甲2?6号証をも含めて相違点1の容易想到性について以下検討する。

a 甲第2号証について
甲第2号証の記載事項は、上記「1(2)(2-1)」のとおりである。
そして、上記「1(2)(2-3)」のとおりの甲2発明が記載されているものと認められる。
ここで、甲2発明の「部材D」、「部材E」及び「背上げ脚連動モーションユニット」の構成について検討すると、甲第2号証の摘示(2f)(参考図2(甲2))等によれば、甲2発明の「部材D」及び「部材E」の形状は、その一部が湾曲している、ということもできる。
しかし、後記「2-3(1)(1-2)イ(ア)」で詳述するとおり、摘示(2l)に示される平面図等によれば、上記「部材D」及び「部材E」が、平面視において上記「背上げ脚連動モーションユニット」と交差する左右方向に延びる、とまでいうことはできないし、まして「部材D」及び「部材E」の湾曲している一部が、「背上げ脚連動モーションユニット」との接触を避けるように湾曲しているということはできないから、甲第2号証には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできない。
したがって、甲1発明に、甲第2号証に記載された「部材D」及び「部材E」に係る技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。

b 甲第3号証について
甲第3号証には、上記「1(3)」のとおり「在宅向け電動ケアベッド」に係る技術について開示されている。
そして、摘示(3c)によれば、上記「在宅向け電動ケアベッド」は「背足連動切り換えレバー」を用いて「背足連動手動切り換え」が行えることが明らかであり、また、摘示(3e)に示される図より、「頭側ベースユニット」及び「頭側ベースユニット」のそれぞれに、左右方向に延び、その一部が湾曲しているような部材を設けていることが看取できる。
しかし、上記「頭側ベースユニット」及び「頭側ベースユニット」のそれぞれに設けられた、左右方向に延び、その一部が湾曲しているような部材が、平面視において上記「背足連動切り換えレバー」と交差する左右方向に延びるものであって、それら湾曲している部分が「背足連動切り換えレバー」との接触を避けるように湾曲しているということはできないから、甲第3号証には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできない。
したがって、甲1発明に、甲第3号証に記載された「在宅向け電動ケアベッド」に係る技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。

c 甲第4号証について
甲第4号証には、上記「1(4)」のとおり「電動在宅ケアベッド」に係る技術について開示されている。
そして、摘示(4b)(4c)(4d)によれば、上記「電動在宅ケアベッド」は「ケアモーションユニット」を用いて「背上げ脚連動」が行えることが明らかであり、また、摘示(4e)に示される図より、「ハイローベースユニット」に、左右方向に直線状に延びる部材を設けていることが看取できる。
しかし、上記「ハイローベースユニット」に設けられた上記直線状に伸びる部材には、湾曲した部位が認められないため、甲第4号証には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできない。
したがって、甲1発明に、甲第4号証に記載された「電動在宅ケアベッド」に係る技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。

e 甲第5号証について
甲第5号証には、上記「1(5)」のとおり「リライフベッド」に係る技術について開示されている。
そして、摘示(5e)によれば、上記「リライフベッド」は「切り替えレバー」を用いて「背・膝ボトム連動切り替え」が行えることが明らかであり、また、摘示(5c)に示される図より、「ハイローユニット」に、左右方向に直線状に延びる部材を設けていることが看取できる。
しかし、上記「ハイローユニット」に設けられた上記直線状に伸びる部材には、湾曲した部位が認められないため、甲第5号証には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできない。
したがって、甲1発明に、甲第5号証に記載された「リライフベッド」に係る技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。

f 甲第6号証について
(a)甲第6号証には、上記「1(6)」のとおり「背上げ可能なベッドにおける組立構造」に関する技術について開示されているところ(摘示(6a)【0010】)、上記「背上げ可能なベッド」の分解状態を示す斜視図が図1(摘示(6b))に図示されるとともに、その構造について、「昇降機構1が具備されたベッドフレーム2と、このベッドフレーム2に取り付けられる基部フレーム3と、さらに、この基部フレーム3内を前後に移動する摺動フレーム4と、この摺動フレーム4の摺動動作に連動する引込手段5を介して取り付けられる脚部支持フレーム6と、前記摺動フレーム4上に取り付けられる腰部支持枠7と、前記基部フレーム3及び摺動フレーム4間に起伏機構8を介して取り付けられる背部支持枠9と、さらに、脚部支持フレーム6に取り付けられる脚部支持枠10とから主に構成されている」(摘示(6a)【0010】)ことが記載されている。
しかし、上記「背上げ可能なベッド」は、上記「腰部支持枠7」、「背部支持枠9」及び「脚部支持枠10」を動作させることで、図20(摘示(6b))に示されるとおり「(a)図に示す水平状態から、背部支持枠9が起立し、腰部支持枠7の下方に脚部支持枠10が収納され、椅子状態へと各支持枠7,9,10を動作させることができる。」(摘示(6a)【0037】)というものであって、そもそも、甲1発明の「背膝連動を行うための背膝連動幹を有する」構造ではないから、甲1発明に甲第6号証に記載された「背上げ可能なベッド」の構成を適用する動機付けはない。
(b)また、甲第6号証には、上記「背上げ可能なベッド」を構成する「基部フレーム3」を示す斜視図が図5(摘示(6b))に図示されるとともに、その構造について、「左右の側部パイプ40,40の前後端部に連結パイプ41,42を固着している」(摘示(6a))【0016】)ことが記載され、また、図5より、上記「連結パイプ42」は、左右方向に延び、その一部が湾曲していることが看取できるが、上記(a)で述べたとおり、甲第6号証に記載された「背上げ可能なベッド」は、甲1発明の「背膝連動幹」に相当する構造が存在しないから、上記「基部フレーム3」の構成を加味しても、甲第6号証には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできない。
したがって、甲1発明に、甲第6号証に記載された「背上げ可能なベッド」に係る技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明と上記相違点1において相違するものであるところ、相違点1に係る本件発明1の構成は上記(ア)(イ)のとおり容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第2?6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2-3 申立理由2(特許法第29条第2項:甲第2号証を主たる証拠とするもの)について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「背ボトム」は、本件発明1の「背ボトム」に相当し、以下同様に、「座ボトム」は「腰ボトム」に、「膝ボトム」及び「脚ボトム」は「脚ボトム」に相当する。
そして、甲2発明の「背ボトム、座ボトム、膝ボトム及び脚ボトム」は、複数のボトムということもできるから、本件発明1の「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトム」に相当するものといえる。
イ 甲2発明の「リアユニット」及び「フロントユニット」は、本件発明1の「複数のメインフレーム」に相当する。
そして、甲2発明は、「リアユニットに座ボトム、膝ボトム及び脚ボトムが取付けられ、フロントユニットに背ボトムが取付けられ」ることから、上記「リアユニット」及び「フロントユニット」が、「背ボトム、座ボトム、膝ボトム及び脚ボトム」を支持することは明らかである。
したがって、甲2発明の「リアユニット」及び「フロントユニット」は、上記アをも踏まえると、本件発明1の「前記複数のボトムを支持する複数のメインフレーム」に相当するものといえる。
ウ 甲2発明の「ハイローベースユニット」は、本件発明1の「ベースフレーム」に相当する。
そして、甲2発明は、「ハイローベースユニット上にリアユニット及びフロントユニットが取付けられ」ることから、上記「ハイローベースユニット」が、「リアユニット」及び「フロントユニット」を支持することは明らかである。
したがって、甲2発明の「ハイローベースユニット」は、上記イをも踏まえると、本件発明1の「前記複数のメインフレームを支持するベースフレーム」に相当するものといえる。
エ 甲2発明は、「背上げ脚連動モーションを行うための背上げ脚連動モーションユニットを有するとともに、背上げ脚連動モーションユニットの一端部はフロントユニットの部材Aに設けられたあたま側固定金具に取付けられ、他端部はリアユニットの部材Bに設けられたあし側固定金具に取付けられ、リニアアクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結されている」るものであるところ(参考図1(甲2)を参照)、摘示(2c)(2j)(2m)(2r)等の記載に照らして、リニアアクチュエーターの駆動によって、背ボトムと膝ボトムが連動することは技術的に明らかである。

したがって、甲2発明の「リニアアクチュエーター」は、上記アをも踏まえると、本件発明1の「前記背ボトムと前記脚ボトムを連動して駆動するボトム駆動機構」に相当するものといえる。
オ 甲2発明は、「リニアアクチュエーターに部材Cが連結される」(参考図1(甲2)を参照)ものであるかから、甲2発明の「部材C」は、上記エをも踏まえると、本件発明1の「前記ボトム駆動機構に連結される取付け部材」に相当するものといえる。
カ 甲2発明は、「背上げ脚連動モーションを行うための背上げ脚連動モーションユニットを有するとともに、背上げ脚連動モーションユニットの一端部はフロントユニットの部材Aに設けられたあたま側固定金具に取付けられ、他端部はリアユニットの部材Bに設けられたあし側固定金具に取付けられ、リニアアクチュエーターに部材Cが連結されるとともに、部材Cに部材Aが連結されている」るものであるところ(参考図1(甲2)を参照)、摘示(2j)等の記載に照らして、背アクチュエーターの駆動によって、部材A及び部材Bが回動することは技術的に明らかである。
したがって、甲2発明において、「フロントユニットの部材A」及び「リアユニットの部材B」を備えることは、上記イ及びオをも踏まえると、本件発明1の「前記メインフレームには、前記取付け部材に連結され、回動可能な第1回動部材と、回動可能な第2回動部材とが設けられ」ることに相当するものといえる。
キ 甲2発明は、「背上げ脚連動モーションを行うための背上げ脚連動モーションユニットを有するとともに、背上げ脚連動モーションユニットの一端部はフロントユニットの部材Aに設けられたあたま側固定金具に取付けられ、他端部はリアユニットの部材Bに設けられたあし側固定金具に取付けられ、」(参考図1(甲2)を参照)るものであるから、甲2発明の「背上げ脚連動モーションユニット」は、上記カをも踏まえると、本件発明1の「前記第1回動部材と前記第2回動部材を連結する連動リンク」に相当するものといえる。
ク 甲2発明の「電動在宅介護ベッド」は「電動ベッドとして構成され」たものであるから、本件発明1の「電動ベッド」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムと、
前記複数のボトムを支持する複数のメインフレームと、
前記複数のメインフレームを支持するベースフレームと、
前記背ボトムと前記脚ボトムを連動して駆動するボトム駆動機構と、
前記ボトム駆動機構に連結される取付け部材と、
を備え、
前記メインフレームには、前記取付け部材に連結され、回動可能な第1回動部材と、回動可能な第2回動部材とが設けられ、
前記第1回動部材と前記第2回動部材を連結する連動リンクをさらに備える、
電動ベッド。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
本件発明1は、「前記ベースフレームには、平面視において前記連動リンクと交差する左右方向に延びる第1連結棒が設けられ、前記第1連結棒の一部は前記連動リンクとの接触を避けるように湾曲している」のに対し、甲2発明は、「ハイローベースユニットには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられている」点。

(1-2)判断
ア 上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、本件発明1は、「第1連結棒」と「連動リンク」との配設構成として、「第1連結棒」が、「平面視において前記連動リンクと交差する左右方向に延びる」こと(「構成A」)を前提とし、「前記第1連結棒の一部」が、「前記連動リンクとの接触を避けるように湾曲している」こと(「構成B」)を、その発明特定事項として特定したものといえる。
ここで、甲2発明は、「背上げ脚連動モーションを行うための背上げ脚連動モーションユニットを有する」ものであって、「ハイローベースユニットには、左右方向に延びる、部材D及び部材Eが設けられている」ので(参考図2(甲2)を参照)、上記「部材D」及び「部材E」を、上記構成A及び構成Bのように構成することが当業者にとって容易想到か否かについて以下検討する。

イ 検討
(ア)甲2発明の「部材D」及び「部材E」の構成について
a 「部材D」の構成について
甲第2号証の摘示(2f)(参考図2(甲2))等によれば、甲2発明の「部材D」の形状は、その一部が湾曲している、ということもできる。
しかし、甲第2号証の摘示(2j)(上記参考図1(甲2)を参照)に示される「リニアアクチュエータ」、「部材C」、「部材A」及び「背上げ脚連動モーションユニット」の配設構造、さらに、摘示(2l)に示される、平面視における「部材D」と「部材A」の配設構造(上記参考図1及び3(甲2)も併せ参照)によれば、「部材D」は、平面視において、そもそも「脚連動モーションユニット」と交差するように配置されたものではない。
また、摘示(2c)の「ゆかからボトムまでの高さは25?67.5cm間で調節できます。」との記載、及び、摘示(2h)に示される図と「2.ハイローベースユニットの矢印ラベルとフロントユニットのローラー受けの矢印ラベルを合わせてローラー受けにローラーをはめて取り付けます。フロントユニットのローラー受けがハイローベースユニットのローラーに合うように取り付けます。」との記載によれば、甲2発明は、「電動在宅介護ベッド」の高さを25?67.5cm間で調節可能に構成されていることが明らかであり、かかる高さの調節時には、「ハイローベースユニット」に設けられた「部材D」が、ローラー受けに沿って移動するものと推察されるが、そのような高さ調節時において、上記「部材D」が、平面視において「背上げ脚連動モーションユニット」と交差するように配置されている、とまでいうことはできない。
さらに、「部材D」及び「背上げ脚連動モーションユニット」の配設構造を、上記構成Aのように「平面視において」「交差する」ように構成していると解すべき合理性もない。

b 「部材E」の構成について
甲第2号証の摘示(2f)(参考図2(甲2))等によれば、甲2発明の「部材E」の形状は、その一部が湾曲している、ということもできる。
しかし、甲第2号証の摘示(2i)に示される「背上げ脚連動モーションユニット」及び「部材B」の配設構造(上記参考図1(甲2)も併せ参照)、さらに、摘示(2l)に示される、平面視における「部材E」の配設構造(上記参考図3(甲2)も併せ参照)によれば、「部材E」は、平面視において、そもそも「背上げ脚連動モーションユニット」と交差するように配置されたものではない。
また、上記aで述べたとおり、甲2発明は、「電動在宅介護ベッド」の高さ調節時には、「ハイローベースユニット」に設けられた「部材D」がローラー受けに沿って移動するものと推察されること等からして、「部材E」が、平面視において「背上げ脚連動モーションユニット」側に移動するような構造ということはできない。
したがって、甲2発明の「部材E」は、そもそも、平面視において、「背上げ脚連動モーションユニット」と交差するように配置されるということはできないから、「部材E」及び「脚連動モーションユニット」の配設構造を、上記構成Aのように「平面視において」「交差する」ように構成すべき合理性は一切なく、むしろそのように構成することには阻害要因が存在するというべきである。

(イ)甲2発明に対する甲第1、3?6号証に記載された技術的事項の適用について
上記(ア)で述べたとおり、甲2発明の「電動在宅介護ベッド」の構成を前提とするならば、「部材D」及び「部材E」について、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることの動機付けはなく、また、阻害要因が存在するものということもできるが、申立人は、「甲2号証に開示された梁パイプにおいて、甲第1号証に開示された背膝連動幹、甲第2号証に開示された背上げ脚連動モーションユニット等のように、背ボトムと膝ボトムを連動して駆動するために設けられた、本件発明1における連動リンクに相当する部材との接触を避けるように、このパイプの一部を湾曲させる構成は、当業者にとってはいわゆる設計事項にすぎない。」旨主張するので(特許異議申立書46頁下から5行?47頁1行)、申立人の主張する甲1、3?6号証をも含めて相違点Aの容易想到性について以下検討する。

a 甲第1号証について
甲第1号証の記載事項は、上記「1(1)(1-1)」のとおりである。
そして、上記「1(1)(1-3)」のとおりの甲1発明が記載されているものと認められる。
ここで、甲1発明の「部材D」、「部材E」及び「背上げ脚連動モーションユニット」の構成について検討すると、上記「2-2(1)(1-2)イ(ア)」で詳述したとおり、甲1発明の「部材D」の形状は、直線状に形成されており、その一部が湾曲している、ということはできない。
また、甲1発明の「部材E」の形状は、その一部が湾曲している、ということもできるが、「部材E」は、平面視において甲1発明の「背膝連動幹」と交差する左右方向に延びるものではなく、まして「部材E」の湾曲している一部が、「背膝連動幹」との接触を避けるように湾曲しているということはできない。
したがって、甲第1号証には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできないから、甲2発明に、甲第1号証に記載された「部材D」及び「部材E」に係る技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点Aに係る本件発明1の構成に至るものではない。

b 甲第3?6号証について
上記「2-2(1)(1-2)イ(イ)」で詳述したとおり、甲第3?6には、上記構成A及び構成Bが記載されているということはできないから、甲2発明に、甲第3?6号証に記載された技術的事項が適用し得たとしても、上記相違点Aに係る本件発明1の構成に至るものではない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は甲2発明と上記相違点Aにおいて相違するものであるところ、相違点Aに係る本件発明1の構成は上記(ア)(イ)のとおり容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲2発明及び甲第1、3?6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?4について
また、本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-02-18 
出願番号 特願2015-198764(P2015-198764)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 泰二郎木村 麻乃  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 島田 信一
氏原 康宏
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6491988号(P6491988)
権利者 パラマウントベッド株式会社
発明の名称 寝台装置  
代理人 小崎 純一  
代理人 特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所  
代理人 市川 浩  
代理人 日向寺 雅彦  

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