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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
管理番号 1360514
異議申立番号 異議2019-700845  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-23 
確定日 2020-03-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6534825号発明「分岐付ケーブル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6534825号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6534825号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年2月16日に出願され、令和1年6月7日にその特許権の設定登録がされ、同年6月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年10月23日に特許異議申立人本堂裕司(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6534825号の請求項1ないし7に係る特許(以下「本件特許発明1ないし7」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルと、電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブルとを有しており、
前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続されており、
前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2幹線ケーブルと前記支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体および前記支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、
前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され、
前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記支線ケーブルを既存の設備に接続する作業性が確保されていることを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項2】
幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルと、電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブルとを有しており、
前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続されており、
前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2幹線ケーブルと前記支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われており、
前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体および前記支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、
前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され、
前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記支線ケーブルを既存の設備に接続する作業性が確保されていることを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項3】
幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルと、電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブルとを有しており、
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、既存の設備に電気的に接続するために前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルと、を有しており、
前記第1幹線ケーブルと前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであり、
前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され、
前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1支線ケーブルよりも前記第2支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2支線ケーブルを前記設備に接続する作業性が確保されていることを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項4】
幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルと、電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブルとを有しており、
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、既存の設備に電気的に接続するために前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルと、を有しており、
前記第1幹線ケーブルと前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われており、
前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され、
前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1支線ケーブルよりも前記第2支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2支線ケーブルを前記設備に接続する作業性が確保されていることを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項5】
前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体、および前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ接続部材を介して接続されており、
前記接続部材の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金であることを特徴とする請求項3又は4に記載の分岐付ケーブル。
【請求項6】
前記接続部材を介して前記第1幹線ケーブルと前記第2幹線ケーブルとを接続した箇所と、前記接続部材を介して前記第1支線ケーブルと前記第2支線ケーブルとを接続した箇所を、絶縁性の材料で被覆した絶縁被覆部を備えることを特徴とする請求項5に記載の分岐付ケーブル。
【請求項7】
当該分岐付ケーブルは、前記幹線ケーブルと前記支線ケーブルとが施工現場での布設前に接続され所定箇所に布設されるように構成されていることを特徴とする請求項1?6の何れか一項に記載の分岐付ケーブル。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は、本件特許発明1及び3は、甲第1号証(特開昭53-73379号公報)、甲第2号証(特開2011-14437号公報)及び甲第3号証(特許異議申立書にて「実開平6-60929号公報」と記載されているが、考案の詳細な説明(段落【0004】及び【0005】)を引用していることから、「実願平5-2089号(実開平6-60929号)のCD-ROM」の誤記と認められる。)に記載の各発明、本件特許発明2及び4は、甲第1ないし3号証及び甲第4号証(特開2008-262808号公報)に記載の各発明、本件特許発明5ないし7は、甲第1ないし4号証及び甲第5号証(実願平2-78068号(実開平4-36773号)のマイクロフィルム)に記載の各発明、に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第113条第2号により取り消されるべきものである旨主張する。
また、異議申立人は、本件特許発明1ないし7は、同法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項第2号の規定に違背するものであり、本件特許発明2、4ないし7は、同法第36条第6項第1号の規定に違背するものであり、同法第113条第4号により取り消されるべきものである旨主張する。

第4 甲号証の記載
1.甲第1号証
甲第1号証には、「配線用ケーブル」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1)「アルミニウム導体を有する幹線ケーブルと、銅導体を有し且つ前記幹線ケーブルより分岐されて負荷側のリード線或は機器端子等へ接続される分岐線ケーブルとより成り、上記幹線ケーブルと分岐線ケーブルとは予じめ連結一体化されて構成したことを特徴とする配線用ケーブル。」(特許請求の範囲)

(2)「尚、上記幹線ケーブルと分岐線ケーブルとの連結作業はたとえば製造工場等において行うものである。
次に添付図面により本発明配線用ケーブルの一実施例を説明すると、1はアルミニウム導体を有する幹線ケーブル、2、2、2---は銅導体を有する分岐線ケーブルにして、ケーブル製造工場等に於いて前記幹線ケーブル1と予じめ連結一体化されている。3、3、3---はその連結部を示し、半田付け乃至は圧縮端子等によって、アルミニウム導体と銅導体との間に電蝕を生じないようにそれらを堅固に連結している。A、B、Cは電気機器である。分岐線ケーブル2は前記電気機器A、B、Cの端子或は負荷側のリード線4、4に接続されている。この間に別の銅導体を有する接続用ケーブル5を連結して必要に応じて配線距離を長くしている。6、6、6は銅導体同志の接続部である。7は幹線ケーブル1の端部に設けられたジョイントボックスである。
斯様に構成する本実施例配線用ケーブルによれば、アルミニウム導体を有する幹線ケーブル1と銅導体を有する分岐線ケーブル2とを予じめ連結一体化して構成されていることから、幹線ケーブルのアルミニウム導体化により従来と比べて非常に経済的であると共に軽量化できる。而もこの場合、幹線ケーブルのアルミニウム導体と分岐線ケーブルの銅導体との接続が予じめ製造工場等で行われるために、接続部における電蝕という問題は一挙に解消され得る。」(2頁左上欄3行ないし右上欄11行)

(3)「

」(図)

・上記(1)及び(3)によれば、配線用ケーブルは、アルミニウム導体を有する幹線ケーブル1と、銅導体を有し且つ前記幹線ケーブル1に分岐接続される複数の分岐線ケーブル2とからなるものである。
・上記(2)及び(3)によれば、幹線ケーブル1は、端部にジョイントボックス7が設けられて別のケーブルが接続されるものである。
・上記(2)及び(3)によれば、分岐線ケーブル2は、一端部が半田付け乃至は圧縮端子等により幹線ケーブル1に接続され、他端部が接続部6によりリード線4に接続されるものである。また、リード線4は、電気機器Bに接続されるものである。

上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「アルミニウム導体を有する幹線ケーブルと、銅導体を有し且つ前記幹線ケーブルに分岐接続される複数の分岐線ケーブルとからなる配線用ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、端部にジョイントボックスが設けられて別のケーブルが接続され、
前記分岐線ケーブルは、一端部が半田付け乃至は圧縮端子等により前記幹線ケーブルに接続され、他端部が接続部によりリード線に接続され、
前記リード線は、電気機器に接続される、配線用ケーブル。」

2.甲第2号証
甲第2号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1)「【請求項1】
複数の第1素線を撚り合わせてなる略円筒状の第1撚線導体を有する第1電線と、複数の第2素線を撚り合わせてなる略円筒状の第2撚線導体を有する第2電線とを超音波接続により直線状に連結する電線連結構造において、
前記第1素線の外径が前記第2素線の外径より太く形成され、
前記第1電線の前記第1撚線導体の端部を、前記第2電線の前記第2撚線導体の端部に食い込ませる形状としたことを特徴とする電線連結構造。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記第1電線が、複数のアルミニウム素線を撚り合わせてなるアルミニウム撚線導体を有するアルミニウム電線からなり、
前記第2電線が、複数の銅素線を撚り合わせてなる銅撚線導体を有する銅電線からなる請求項1または2記載の電線連結構造。」

(2)「【0008】
特許文献1の図4に示されるように、電線同士を超音波接続により直線状に接続する場合、略円筒状の電線同士、すなわち曲面同士を接触させることになるので、超音波接続の際に接続する電線同士の位相位置がずれ易く、製造における再現性が悪くなる可能性があるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に開示されている超音波接続では、特許文献1の図4(b)に示されるように、電線の撚線導体同士の接合面が傾斜状に形成されるため、一方の電線の撚線導体の先端部が先細りに形成され、撚線導体の先端部付近で素線が断線してしまう場合が多いという問題もある。」

(3)「【0022】
図1(a),(b)に示すように、電線連結構造1は、複数の第1素線を撚り合わせてなる略円筒状の第1撚線導体2を有する第1電線3と、複数の第2素線を撚り合わせてなる略円筒状の第2撚線導体4を有する第2電線5とを超音波接続により直線状に連結した構造である。
【0023】
第1電線3は、第1素線としてのアルミニウム素線を撚り合わせたアルミニウム撚線導体2の外周にシース(外皮)6を被覆したアルミニウム電線3である。
【0024】
第2電線5は、第2素線として銅素線を撚り合わせた銅撚線導体4の外周にシース(外皮)7を被覆した銅電線5である。」

(4)「【0040】
アルミニウム素線の外径を銅素線の外径より太く形成することにより、超音波接続装置21によりアルミニウム電線3と銅電線5とを連結する際に、たとえ、アルミニウム撚線導体2と銅撚線導体4との接触が曲面同士の接触になっても、アルミニウム撚線導体2の端部が銅撚線導体4の端部に食い込むようになるため、連結するアルミニウム電線3と銅電線5の相対位置のずれが低減する。その結果、製造における再現性がよくなる。
【0041】
また、アルミニウム撚線導体2の端部が銅撚線導体4の端部に食い込むという形状は、両撚線導体2,4の先端部が先細りになるということを低減しているため、両撚線導体2,4の先端部付近における素線の断線を低減することが可能となる。」

上記(1)ないし(4)によれば、甲第2号証には、「複数の第1素線を撚り合わせてなる第1撚線導体を有する第1電線と、複数の第2素線を撚り合わせてなる第2撚線導体を有する第2電線とを超音波接続により直線状に連結する電線連結構造において、前記第1素線の外径が前記第2素線の外径より太く形成され、前記第1電線の前記第1撚線導体の端部を、前記第2電線の前記第2撚線導体の端部に食い込ませる形状とした電線連結構造であって、前記第1電線が、複数のアルミニウム素線を撚り合わせてなるアルミニウム撚線導体を有するアルミニウム電線からなり、前記第2電線が、複数の銅素線を撚り合わせてなる銅撚線導体を有する銅電線からなる、電線連結構造」の技術事項が記載されている。

3.甲第3号証
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1)「【0004】
この考案は上記のような課題を解消するためになされたもので、狭隘な箇所でも小さい曲げ半径で曲げて配線や接続を容易に行うことができるケーブルを得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この考案に係るケーブルは、当該ケーブルに用いる標準仕様の素線より小径の規格の素線を用い、所定の導体断面積が得られる本数の前記小径の素線を束ねて導体を形成したものである。」

(2)「【0009】
例えば、導体断面積60平方mmのケーブルの線心の導体は、従来のものでは径2mmの素線を19本束ねたものであったが、この考案によるものでは径1.4mmの素線を37本束ねたものとなっている。したがって、この実施例によるケーブルを曲げるとき、各素線は径が小さくなれば、径の4乗に比例して曲げ抵抗が小さくなり、素線本数が多いだけ、各素線相互間のすべり変位の累積も大きくなり得る。すなわち、従来のケーブルに比してこの実施例によるケーブルは、曲げることが非常に容易になる。したがって、図1(C)に示すような狭隘な箇所で、線心11を小さい曲げ半径で曲げて接続しなければならない場合、作業を容易かつ迅速に行うことができ、ケーブルを損傷させるおそれもない。なお、絶縁被覆14及びシース15は導体12より可撓性が非常に大きいので、曲げに対する抵抗はあまり大きくない。なお、可撓性の点ではキャプタイヤケーブルが優れているが、機械的強度が弱く、高価であるというような短所がある。これに対して、この考案によるケーブルの素線13は標準より小径であるが、機械的強度は劣ることなく、規格寸法の素線を使用するので、価格の増加は殆どない。」

(3)「

」(図1)

上記(1)ないし(3)によれば、甲第3号証には、「標準仕様の素線より小径の規格の素線を用いることで、ケーブルを狭隘な箇所でも小さい曲げ半径で曲げて配線や接続を容易に行うことができる」技術事項が記載されている。

4.甲第4号証
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1)「【0021】
次に、前記構成に基づくケーブルの製造工程について説明する。まず、公知のクラッド工程により、アルミニウム線の周囲に銅が被覆され、CCA線15が得られる。CCA線15における銅体積比はこの時点で13?20%とされる。得られたCCA線15は、伸線工程で所望の径となるまで伸線され、続いて軟化機50に通され(図2参照)、連続して200?500℃で軟化され、CCA線15のアルミニウム部15a及び銅部15bがそれぞれ軟アルミ及び軟銅となる。
【0022】
軟化したCCA線15は所定の本数撚り合わされて導体14とされ、続いてこの導体14周囲に絶縁体層16が配設されたものが、さらに複数本撚り合わされた後、シース17をまとめて被覆されて、ケーブル1として完成した状態となる。」

(2)「【0026】
このように、本実施形態に係る電線・ケーブルは、銅体積比を13?20%としたCCA線15を軟化して銅部15b及びアルミニウム部15aをそれぞれ軟銅及び軟アルミとし、複数本の撚線状態として電線・ケーブルの導体14とすることから、適切な割合で表層に配置した銅部15bが導線に高い機械的強度を付与することに加えて、表面の摩擦抵抗を少なくし、屈曲応力の集中を緩和して、耐屈曲性を向上させると共に、柔軟性や耐振動性にも優れることとなり、軽量化を実現しつつ取扱い性に優れた電線・ケーブルとすることができる。また、適切な割合で銅部15bを配置して、摩擦を小さくし且つ強度を上げることで、製造時に断線しにくく、製造が容易になると共に、端子取付時等の圧縮加工でアルミニウム部15aが露出することもなく、信頼性、安定性に優れた端子接続が行える。」

(3)「

」(図1)

上記(1)ないし(3)によれば、甲第4号証には、「アルミニウム線の周囲に銅が被覆されてCCA線が得られる」技術事項が記載されている。

5.甲第5号証
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「アルミニウム導体幹線に銅導体分岐線を接続するための分岐スリーブであつて、幹線貫通孔と分岐線挿入孔とを有するアルミニウム材からなり、前記分岐線挿入孔の内表面にはアルミハンダメツキが施されていることを特徴とする分岐スリーブ。」(実用新案登録請求の範囲)

上記実用新案登録請求の範囲によれば、甲第5号証には、「アルミニウム材からなり、アルミニウム導体幹線に銅導体分岐線を接続するための分岐スリーブ」の技術事項が記載されている。

第5 当審の判断
1.特許法第29条第2項について
(1)請求項1に係る発明について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

ア.甲1発明の「複数の分岐線ケーブル」は、幹線ケーブルに分岐接続されるものであるから、本件特許発明1の「前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブル」に相当する。よって、甲1発明の「幹線ケーブルと、」「前記幹線ケーブルに分岐接続される複数の分岐線ケーブルとからなる配線用ケーブル」は、本件特許発明1の「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブル」に相当する。

イ.甲1発明の「幹線ケーブル」は、本件特許発明1の「主たる第1幹線ケーブル」に相当する。
ただし、本件特許発明1は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

ウ.上記ア.及びイ.を踏まえると、甲1発明の「分岐線ケーブル」が「幹線ケーブルに分岐接続される」ことは、本件特許発明1の「前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続され」ることに相当する。

エ.上記イ.を踏まえると、甲1発明の「幹線ケーブル」が「アルミニウム導体を有する」ことは、本件特許発明1の「前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウム」「であ」ることに相当する。

オ.上記ア.を踏まえると、甲1発明の「分岐線ケーブル」が「銅導体を有」することは、本件特許発明1の「前記支線ケーブルの導体の材料が銅」「であ」ることに相当する。
ただし、本件特許発明1は「前記第2幹線ケーブル」「の導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

カ.本件特許発明1は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体および前記支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてな」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

キ.本件特許発明1は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

ク.本件特許発明1は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記支線ケーブルを既存の設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルを有しており、
前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続されており、
前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウムであり、前記支線ケーブルの導体の材料が銅である、分岐付ケーブル。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点2>
本件特許発明1は「前記第2幹線ケーブル」「の導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点3>
本件特許発明1は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体および前記支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてな」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点4>
本件特許発明1は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点5>
本件特許発明1は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記支線ケーブルを既存の設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

上記<相違点5>について検討する。
甲第2号証には、「複数の第1素線を撚り合わせてなる第1撚線導体を有する第1電線と、複数の第2素線を撚り合わせてなる第2撚線導体を有する第2電線とを超音波接続により直線状に連結する電線連結構造において、前記第1素線の外径が前記第2素線の外径より太く形成され、前記第1電線の前記第1撚線導体の端部を、前記第2電線の前記第2撚線導体の端部に食い込ませる形状とした電線連結構造であって、前記第1電線が、複数のアルミニウム素線を撚り合わせてなるアルミニウム撚線導体を有するアルミニウム電線からなり、前記第2電線が、複数の銅素線を撚り合わせてなる銅撚線導体を有する銅電線からなる、電線連結構造」の技術事項が記載されている。
ここで、甲第2号証の、アルミニウム素線の外径を銅素線の外径より太く形成することについて検討するに、該形成は、上記「第4 2.(2)及び(4)」によれば、アルミニウム電線と銅電線とを超音波接続する際に、接続する電線同士の位相位置がずれ易く、製造における再現性が悪くなる可能性があるという問題、及び撚線導体の先端部付近で素線が断線してしまう場合が多いという問題を解決するためものであることが記載されている。
してみると、甲1発明は、幹線ケーブルと分岐線ケーブルとの接続を、半田付け乃至は圧縮端子等により行うものであって超音波接続で行うものではないので、甲1発明において上記のような問題が生じることはなく、甲1発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用するべき合理的な動機付けが存在しない。
また、甲1発明は、上記「第4 1.(3)」によれば、幹線ケーブルに対して分岐線ケーブルがT字に接続されており、幹線ケーブルと分岐線ケーブルの端部同士を連結するものではないことは明らかである。してみると、甲第2号証に記載された技術事項は、電線の端部同士を連結する電線連結構造であるから、甲1発明の幹線ケーブルと分岐線ケーブルとの連結において、甲第2号証に記載された技術事項を適用することは阻害要因があるといえる。
そして、甲第3号証には、「標準仕様の素線より小径の規格の素線を用いることで、ケーブルを狭隘な箇所でも小さい曲げ半径で曲げて配線や接続を容易に行うことができる」技術事項が記載されている。しかしながら、甲第3号証には、銅導体の素線の径をアルミニウム導体の素線の径よりも細くすることは記載も示唆もされておらず、甲1発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用したとしても、甲1発明の分岐線ケーブルの素線の径を幹線ケーブルの素線の径よりも細くするという上記相違点5の構成にはなり得ない。
したがって、上記相違点1ないし4について判断するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2及び3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

この点について、異議申立人は、特許異議申立書にて「相違点3について、導体がアルミ線のケーブルと銅線のケーブルとを接続したとき、銅素線の外径がアルミ線のそれより細いことは甲第2号証の請求項1、3に記載されています。相違点4について、甲第3号証では、素線の径を細くすると、ケーブルの可撓性が高く、曲げやすく、作業性が向上することが記載されています。・・・(中略)・・・なお、甲第2号証、甲第3号証ともケーブルに関する発明であり、甲第1号証の発明とはその技術分野が共通しています。すなわち、甲第1号証に記載の発明に甲第2、3号証に記載の発明を組み合わせることはこの分野の当業者にとって格別の困難性は認められません。かつ、組み合わせることについての阻害要因も見当たりません。以上の通り、本件特許発明1は、上記甲第1?3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得た程度の発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではありません。」旨を主張している。ここで、相違点3及び4とは上記の相違点4及び5に係る相違点である。
しかしながら、甲第2及び3号証に記載された技術事項が甲1発明と技術分野が共通していたとしても、上記に記載したとおり、甲1発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用するべき合理的な動機付けが存在せず、また、甲1発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用することについて阻害要因があるといえ、さらに、甲1発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用したとしても上記相違点5の構成にはなり得ないので、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2及び3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)請求項2に係る発明について
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。

ア.甲1発明の「複数の分岐線ケーブル」は、幹線ケーブルに分岐接続されるものであるから、本件特許発明2の「前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブル」に相当する。よって、甲1発明の「幹線ケーブルと、」「前記幹線ケーブルに分岐接続される複数の分岐線ケーブルとからなる配線用ケーブル」は、本件特許発明2の「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブル」に相当する。

イ.甲1発明の「幹線ケーブル」は、本件特許発明2の「主たる第1幹線ケーブル」に相当する。
ただし、本件特許発明2は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

ウ.上記ア.及びイ.を踏まえると、甲1発明の「分岐線ケーブル」が「幹線ケーブルに分岐接続され」ることは、本件特許発明2の「前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続され」ることに相当する。

エ.上記イ.を踏まえると、甲1発明の「幹線ケーブル」が「アルミニウム導体を有する」ことは、本件特許発明2の「前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウム」「であ」ることに相当する。

オ.本件特許発明2は「前記第2幹線ケーブルと前記支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われて」いるのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

カ.本件特許発明2は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体および前記支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてな」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

キ.本件特許発明2は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

ク.本件特許発明2は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記支線ケーブルを既存の設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

そうすると、本件特許発明2と甲1発明とは、
「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルを有しており、
前記支線ケーブルは、前記第1幹線ケーブルに接続されており、
前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウムである、分岐付ケーブル。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明2は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点2>
本件特許発明2は「前記第2幹線ケーブルと前記支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われて」いるのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点3>
本件特許発明2は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体および前記支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてな」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点4>
本件特許発明2は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点5>
本件特許発明2は「前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記支線ケーブルを既存の設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

上記<相違点5>について検討する。
上記相違点5は、上記(1)の相違点5と同じものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)請求項3に係る発明について
本件特許発明3と甲1発明とを対比する。

ア.甲1発明の「複数の分岐線ケーブル」は、幹線ケーブルに分岐接続されるものであるから、本件特許発明3の「前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブル」に相当する。よって、甲1発明の「幹線ケーブルと、」「前記幹線ケーブルに分岐接続される複数の分岐線ケーブルとからなる配線用ケーブル」は、本件特許発明3の「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブル」に相当する。

イ.甲1発明の「幹線ケーブル」は、本件特許発明3の「主たる第1幹線ケーブル」に相当する。
ただし、本件特許発明3は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

ウ.上記ア.及びイ.を踏まえると、甲1発明の「分岐線ケーブル」は、一端部が幹線ケーブルに接続されるものであるから、本件特許発明3の「一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブル」に相当する。また、甲1発明の「リード線」は、電気機器に接続され、分岐線ケーブルの他端部に接続されるものであるから、本件特許発明3の「既存の設備に電気的に接続するために前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブル」に相当する。

エ.上記イ.を踏まえると、甲1発明の「幹線ケーブル」が「アルミニウム導体を有する」ことは、本件特許発明3の「前記第1幹線ケーブル」「の導体の材料がアルミニウム」「であ」ることに相当する。
ただし、本件特許発明3は「前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

オ.本件特許発明3は「前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

カ.本件特許発明3は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

キ.本件特許発明3は「前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1支線ケーブルよりも前記第2支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2支線ケーブルを前記設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

そうすると、本件特許発明3と甲1発明とは、
「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルを有しており、
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、既存の設備に電気的に接続するために前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルと、を有しており、
前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウムである、分岐付ケーブル。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明3は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点2>
本件特許発明3は「前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点3>
本件特許発明3は「前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の材料が銅、銅合金、銀又は銀合金のいずれかであ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点4>
本件特許発明3は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点5>
本件特許発明3は「前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1支線ケーブルよりも前記第2支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2支線ケーブルを前記設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

上記<相違点5>について検討する。
甲第2号証には、「複数の第1素線を撚り合わせてなる第1撚線導体を有する第1電線と、複数の第2素線を撚り合わせてなる第2撚線導体を有する第2電線とを超音波接続により直線状に連結する電線連結構造において、前記第1素線の外径が前記第2素線の外径より太く形成され、前記第1電線の前記第1撚線導体の端部を、前記第2電線の前記第2撚線導体の端部に食い込ませる形状とした電線連結構造であって、前記第1電線が、複数のアルミニウム素線を撚り合わせてなるアルミニウム撚線導体を有するアルミニウム電線からなり、前記第2電線が、複数の銅素線を撚り合わせてなる銅撚線導体を有する銅電線からなる、電線連結構造」の技術事項が記載されている。
ここで、甲第2号証の、アルミニウム素線の外径を銅素線の外径より太く形成することについて検討するに、該形成は、上記「第4 2.(2)及び(4)」によれば、アルミニウム電線と銅電線とを超音波接続する際に、接続する電線同士の位相位置がずれ易く、製造における再現性が悪くなる可能性があるという問題、及び撚線導体の先端部付近で素線が断線してしまう場合が多いという問題を解決するためものであることが記載されている。
してみると、甲1発明は、分岐線ケーブルとリード線との接続を、接続部により行うものであって超音波接続で行うものではなく、そもそも該分岐線ケーブルがアルミニウム導体でもないので、甲1発明において上記のような問題が生じることはなく、甲1発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用するべき合理的な動機付けが存在しない。
また、甲第3号証には、「標準仕様の素線より小径の規格の素線を用いることで、ケーブルを狭隘な箇所でも小さい曲げ半径で曲げて配線や接続を容易に行うことができる」技術事項が記載されている。しかしながら、甲第3号証には、銅導体の素線の径をアルミニウム導体の素線の径よりも細くすることは記載も示唆もされておらず、甲1発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用したとしても、甲1発明のリード線の素線の径を分岐線ケーブルの素線の径よりも細くするという上記相違点5の構成にはなり得ない。
したがって、上記相違点1ないし4について判断するまでもなく、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2及び3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)請求項4に係る発明について
本件特許発明4と甲1発明とを対比する。

ア.甲1発明の「複数の分岐線ケーブル」は、幹線ケーブルに分岐接続されるものであるから、本件特許発明4の「前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブル」に相当する。よって、甲1発明の「幹線ケーブルと、」「前記幹線ケーブルに分岐接続される複数の分岐線ケーブルとからなる配線用ケーブル」は、本件特許発明4の「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブル」に相当する。

イ.甲1発明の「幹線ケーブル」は、本件特許発明4の「主たる第1幹線ケーブル」に相当する。
ただし、本件特許発明4は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

ウ.上記ア.及びイ.を踏まえると、甲1発明の「分岐線ケーブル」は、一端部が幹線ケーブルに接続されるものであるから、本件特許発明4の「一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブル」に相当する。また、甲1発明の「リード線」は、電気機器に接続され、分岐線ケーブルの他端部に接続されるものであるから、本件特許発明4の「既存の設備に電気的に接続するために前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブル」に相当する。

エ.上記イ.を踏まえると、甲1発明の「幹線ケーブル」が「アルミニウム導体を有する」ことは、本件特許発明4の「前記第1幹線ケーブル」「の導体の材料がアルミニウム」「であ」ることに相当する。
ただし、本件特許発明4は「前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

オ.本件特許発明4は「前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われて」いるのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

カ.本件特許発明4は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

キ.本件特許発明4は「前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1支線ケーブルよりも前記第2支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2支線ケーブルを前記設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

そうすると、本件特許発明4と甲1発明とは、
「幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルに分岐接続された複数の支線ケーブルとを備えている分岐付ケーブルであって、
前記幹線ケーブルは、主たる第1幹線ケーブルを有しており、
前記支線ケーブルは、一端部が前記第1幹線ケーブルに接続された第1支線ケーブルと、既存の設備に電気的に接続するために前記第1支線ケーブルの他端部に接続された第2支線ケーブルと、を有しており、
前記第1幹線ケーブルの導体の材料がアルミニウムである、分岐付ケーブル。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明4は「電源に電気的に接続するために前記第1幹線ケーブルの一方の端部に接続された第2幹線ケーブル」を有するのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点2>
本件特許発明4は「前記第1支線ケーブルの導体の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金であ」るのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点3>
本件特許発明4は「前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われて」いるのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点4>
本件特許発明4は「前記第1幹線ケーブルの導体と前記第2幹線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1幹線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2幹線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1幹線ケーブルよりも前記第2幹線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2幹線ケーブルを前記電源に接続する作業性が確保され」ているのに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点5>
本件特許発明4は「前記第1支線ケーブルの導体と前記第2支線ケーブルの導体は、それぞれ複数の素線が撚り合わされてなり、前記第1支線ケーブルの導体を構成する素線よりも、前記第2支線ケーブルの導体を構成する素線の径自体が細くされたことによって、前記第1支線ケーブルよりも前記第2支線ケーブルの方の可撓性が高くされてその取り回し性が向上されたことで、前記第2支線ケーブルを前記設備に接続する作業性が確保されている」のに対し、甲1発明にはその旨の特定はされていない点。

上記<相違点5>について検討する。
上記相違点5は、上記(3)の相違点5と同じものである。よって、上記(3)に示した理由と同様の理由により、請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)請求項5ないし7に係る発明について
請求項5及び6に係る発明は、請求項3又は4に係る発明に対して、さらに限定した構成を追加したものであり、請求項7に係る発明は、請求項1ないし4の何れか一項に係る発明に対して、さらに限定した構成を追加したものである。よって、上記(1)ないし(4)に示した理由と同様の理由により、請求項5ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし5号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第1号及び同法第36条第6項第2号について
(1)請求項1ないし7に係る発明について
本件特許明細書の段落【0027】、【0028】、【0030】、【0031】、【0040】ないし【0048】、【0056】ないし【0060】には、第1幹線ケーブル50、第2幹線ケーブル60、第1支線ケーブル10、第2支線ケーブル20が素線、絶縁層及びシースからなり、第1幹線ケーブル50の素線の径をφ2.6mm、第2幹線ケーブル60の素線の径をφ2.0mm、第1支線ケーブル10の素線の径をφ2.0mm、第2支線ケーブル20の素線の径をφ1.6mmとして、第2支線ケーブル20及び第2幹線ケーブル60の可撓性を向上させることが記載されている。
ここで、素線、絶縁被膜(絶縁層)及びシースからなるケーブルにおいて、該ケーブルの可撓性を高くする方法の一つとして、該素線の径を細くすることが有効であることは技術常識であり(必要であれば、上記「第4 3.(2)及び(3)」を参照。)、このような技術常識を考慮すれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ充分に記載したものであるといえ、また、請求項1ないし7の記載は、明確性要件を満たしているといえる。
したがって、請求項1ないし7に係る発明は、特許法第36条第4項第1号の要件及び同法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

この点について、異議申立人は、特許異議申立書にて「ところが、幹線ケーブル、支線ケーブルについての可撓性の高低、すなわち曲げやすさについては、以下の要素により決定されることは自明であります。すなわち、ケーブル構成材である素線(撚線)、絶縁層、シースの材質、太さ(厚み)、さらには素線表面の潤滑剤の有無などによりケーブルの可撓性は左右されます。言い換えれば、本件特許発明にあってケーブル導体の素線の径を細くするのみでは、可撓性が高くなるかについては否定される場合が含まれるのです。・・・(中略)・・・以上の理由により、本件特許発明については、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)の規定に違背していることになります。」旨を主張している。
しかしながら、上記に記載したとおり、素線、絶縁被膜(絶縁層)及びシースからなるケーブルにおいて、該ケーブルの可撓性を高くする方法の一つとして、該素線の径を細くすることが有効であることは技術常識であり、このような技術常識を考慮すれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ充分に記載したものであるといえ、また、請求項1ないし7の記載は、明確性要件を満たしているといえる。
よって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)請求項2、4ないし7に係る発明について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、上記の観点に立って、本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。
請求項2に記載の「前記第2幹線ケーブルと前記支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われて」いること、また、請求項4に記載の「前記第2幹線ケーブルと前記第2支線ケーブルの導体の表面が、銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金のいずれかからなる被覆層で覆われて」いることは、本件特許明細書の段落【0050】ないし【0053】及び【0060】において、第2支線ケーブル20の導体と第2幹線ケーブル60の導体を、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる素線本体の表面を被覆層(銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金)で覆った素線を複数撚り合わせたものとすることとして記載されている。また、当該導体により、発明の課題(段落【0010】を参照。)である分岐付ケーブルの軽量化を解決できると認識し得るものである。よって、請求項2、4ないし7の記載は、サポート要件に適合するものであるといえる。
そして、本件特許明細書には、第2支線ケーブル20の導体と第2幹線ケーブル60の導体を、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる素線本体の表面を被覆層(銅、銅合金、銀、銀合金、錫又は錫合金)で覆った素線を複数撚り合わせたものとすることが記載されているので、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2、4ないし7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ充分に記載したものであるといえ、また、請求項2、4ないし7の記載は、明確性要件を満たしているといえる。
したがって、請求項2、4ないし7に係る発明は、特許法第36条第4項第1号の要件、同法第36条第6項第1号の要件及び同法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

この点について、異議申立人は、特許異議申立書にて「これらの請求項においては、ケーブルの導体の表面を銅などで被覆するとの記載があります。ところが、導体は複数の素線を撚り合わせて形成されていますので、撚り合わせ後の導体を上記金属でどのように被覆するのかが不明です。明細書については不記載です。そうすると、導体を構成する複数の撚り線である素線の表面を銅などで1本ずつ被覆することが考えられますが、この点については段落番号0050などに記載があります。・・・(中略)・・・以上の理由により、本件特許発明については、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)の各規定に違背していることになります。」旨を主張している。
しかしながら、複数の素線を撚り合わせた後の導体を銅等でどのように被覆するのかが不明であったとしても、上記に記載したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2、4ないし7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ充分に記載したものであるといえ、また、請求項2、4ないし7の記載は、サポート要件及び明確性要件を満たしているといえる。
よって、異議申立人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし7に係る発明を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし7に係る発明を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-02-28 
出願番号 特願2015-27926(P2015-27926)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (H01B)
P 1 651・ 537- Y (H01B)
P 1 651・ 121- Y (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 佐々木 洋
須原 宏光
登録日 2019-06-07 
登録番号 特許第6534825号(P6534825)
権利者 古河電工産業電線株式会社 古河電気工業株式会社
発明の名称 分岐付ケーブル  

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