• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60S
管理番号 1360517
異議申立番号 異議2020-700006  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-08 
確定日 2020-03-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6541950号発明「洗車装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6541950号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6541950号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成26年9月22日の出願であって、令和1年6月21日に特許権の設定登録がされ、同年7月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1に係る特許に対し、特許異議申立人 株式会社ダイフク(以下「申立人」という。)により、令和2年1月8日に特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6541950号の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
所定の停車位置に停車させた自動車の下面以外の車体面を洗浄する上部洗浄装置と、該自動車の主に下面を洗浄する下部洗浄装置とを備えた洗車装置であって、
前記上部洗浄装置は、自動車の車長方向に移動自在に設けられ、移動に伴い自動車の車体面を洗浄する洗車処理装置と、自動車の長さを検出する車長検出手段と、自動車が前記停車位置にいることを検出する停車検出手段とを備え、
前記下部洗浄装置は、前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出する自動車の停車位置の床面に設けられ、洗浄水を噴射する噴射ノズルを有する複数の噴水管を車種毎の自動車の長さに区切って配置した洗浄ユニットを備え、該洗浄ユニットの噴水管は、第1の車種の車長に対応した第1の噴水管と、第1の車種より長い第2の車種の車長に対応した第2の噴水管とを少なくとも備え、第2の噴水管が有する噴射ノズルの数は、第1の噴水管が有する噴射ノズルの数よりも少なく、
前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出された停車位置に停車した自動車に対して、前記上部洗浄装置の車長検出手段で検出する自動車の長さが第1の車種の車長までであれば第1の噴水管からのみ洗浄水を噴射し、自動車の長さが第2の車種の車長までであれば第1の噴水管と第2の噴水管とから洗浄水を噴射する制御手段を備えたことを特徴とする洗車装置。
【請求項2】
前記洗浄ユニットの第1の噴水管と第2の噴水管における自動車の後端側に位置する噴射ノズルは、その噴射口を垂直上向きに対して自動車の内側向きに傾斜し、且つ自動車前方に指向させて取り付け、自動車下面に噴射されたときの直線状の噴射パターンが、車幅方向に対して自動車中心側を自動車側面側よりも自動車の前方になるように調整したことを特徴とする上記請求項1記載の洗車装置。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1、2号証を提出し、以下の申立理由により、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
・甲第1号証:特開平9-104327号公報
・甲第2号証:英国特許出願公告第1421390号明細書

1 申立理由(特許法第29条第2項)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

第4 各甲号証の記載事項等
1 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付した。以下同様。
「【請求項1】 自動車を跨いで走行し自動車の上面及び側面を洗浄するタイプの洗車機に併設される下回り洗浄装置であって、洗車機に備えられ自動車端部を検出する手段と、洗車機と独立して走行し自動車の下方を移動可能とされたキャリアと、該キャリアに備えられ自動車の底面に向けて洗浄水を放出する放水ノズルと、前記キャリアを洗車機と並行して走行させ前記検出手段で自動車端部を検出したタイミングに基づいて前記放水ノズルからの放水を制御する手段とを設け、洗車機で自動車の上面及び側面を洗浄する間に自動車の前後端間底面を洗浄することを特徴とする洗車機における下回り洗浄装置。」

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車を跨いで走行し自動車の上面及び側面を洗浄するタイプの洗車機に併設され、車体の主に底面を洗浄する下回り洗浄装置に関する。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明はこうした問題点に対処し、迅速に下回り洗浄を伴う洗車ができ、周囲へ洗浄水を飛散させることもなく、しかも安全でかつ比較的安価な装置を提供しようとするものである。」

「【0006】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例の正面外観図、図2は同じく実施例の平面説明図である。1は門形に形成される洗車機本体で、レール2・2’上を該レール間に停車される自動車Aを跨ぐように往復走行する。3は一対のスイングアーム4・4’を介して揺動可能に支持されるトップブラシで、車体との接触により揺動して主に車体の上面をブラッシング洗浄する。5・5’は本体天部に左右移動すなわち開閉動作できるよう吊下げられた一対のサイドブラシで、車体の側面形状に沿って開閉動作し、車体の前後左右の各側面をブラッシング洗浄する。6・7・7’はそれぞれ本体上方及び両側に設けられるブロワノズルで、車体に対し高圧で空気を吹き付け、車体に付いた水を飛散させて乾燥を計る。このうちノズル6はリンク機構により昇降可能に形成され、車体上面形状に沿って昇降動作する。
【0007】8は車輪9を駆動する本体走行用の電動機である。10は本体1前面に設けられる操作パネルで、電源の投入・洗車操作等を行なう。11は本体1上方に備えられる超音波センサーで、実願昭60-60909号に記載されるものと同様な構成を有し、下方に向けて超音波を照射しその反射波が受信されるまでの時間データに基づき主にその下方の自動車の高さを検出する。なおこの他に本体には、特に図示しないが、水・洗剤水・ワックス液等を散布するノズルが適所に配置される。
【0008】従って、洗車機本体1はその走行に伴い、上記各ブラシを駆動して自動車の主に上面及び側面を洗浄し、更にブロワノズル6・7・7’により車体の乾燥を行なう。
【0009】12は下回り洗浄装置の主体を成すキャリアで、前記レール2・2’の内側に敷設されるレール13・13’上を走行し、洗浄する自動車Aの底面とレール13・13’の敷設面との間を往復し得る構成を有し、通常は図2の如く前記サイドブラシ5・5’の間に位置している。14は該キャリア12に設けられる放水ノズルで、自動車Aの底面に向け洗浄水をキャリア12の直行方向へ拡開して散布する噴水口15を複数備えている。16はキャリア12を走行させる駆動部で、電動機17及び該電動機17により駆動されるチェーン機構18とから成っている。」

「【0011】従って、下回り洗浄装置は、キャリア12の走行に伴い放水ノズル14より放水して、自動車の底面の洗浄を行なう。尚、上記洗車機本体1とキャリア12とは、少なくともその洗浄動作時には、同じ速度で走行するよう機械的あるいは電気的に調整されている。」

「【0013】32はサイドブラシ5・5’の前後への傾動を検出するスイッチで、往行洗車時及び復行洗車時の各工程の始めに、サイドブラシ5・5’を閉じて本体1を走行させ、このサイドブラシが洗浄する車体の前端又は後端に当接し傾動したのを検出するもので、これを以て車体の前後端位置を検出している。33はエアシリンダー30・30’に取り付けられサイドブラシ5・5’の開閉を検出するスイッチで、エアシリンダーのピストンに内蔵するマグネットに応動するリードスイッチから成っている。」

「【0019】以上のように、この実施例では洗車機本体1とキャリア12は常に一緒に走行し、従って車体の上面・側面並びに底面が同時に洗浄でき、しかも下回り洗浄の放水は常に洗車機本体内において成され、外部へ飛散することがない。更に、サイドブラシ5・5’の動作を検出スイッチ32・33でモニタすることにより車体の前後端を検出し、放水ノズル14からの放水を車体の下方にあるときのみ行なうよう制御するので、余計な場所へ放水して悪影響を及ぼす等の危険がない。
【0020】図6は上記以外の実施例を示す平面説明図で、下回り洗浄装置におけるキャリア部を除き同様の構成を有している。従って、上記実施例と共通する部分は同一の記号を付して説明する。」

「【0023】64・64’は、洗車機本体1に対する自動車Aの停車位置を定める停車台で、自動車の前輪Wを前後一対のパイプ65・65’の間に乗り入れることにより、その自動車の停車位置が決定される。この停車台によって定められる自動車の停車位置は、洗車機本体1が待機位置(図示位置)にあるとき、超音波センサー11の検出位置(センサー直下)にその先端部があるよう定められており、これに応じて自動車の先端が待機位置(図示位置)にあるキャリア60のノズル15の近くに達するよう、前記距離Lが定められる。66はキャリア60の走行限界を表すリミットスイッチである。
【0024】図7は他の実施例の要部制御系を示すブロック図で、超音波センサー11における検出信号に基づき、そのセンサーの検出位置に自動車が存在するか否かを検出する自動車検知回路70を新たに設けた点を除き図4とほぼ同一の構成である。 操作パネル10には、少なくともI・IIの2種類の洗車動作を指定する選択キー71が備えられ、制御回路40ではこれに応じた少なくとも2通りの異なるプログラム制御を行なう。上記洗車動作I・IIのうち、Iでは洗車機1による洗浄を行なわずに下回り洗浄のみを行ない、IIでは洗車機1による洗浄と並行して下回り洗浄を行なう。」

「【0030】(b)操作パネル10において、IIの洗車動作が選択され洗車スタートされると、前記したステップ(1)と同様に自動車Aが所定位置に停車されているか否かを確認した後(11)、洗車機1においてサイドブラシ5・5’を閉じると共にその本体1を往行させる(12)。本体1走行に伴いサイドブラシ5・5’が車体前面に当接すると、検出スイッチ32でこれを検出し(13)、本体1の走行を停止すると共にステップ(12)の走行開始からこの停止までの走行時間を計時して、メモリT1へセットする(14)。
【0031】続いて、サイドブラシ5・5’を回転駆動し互いに開きながら自動車前面の洗浄を行なう(15)。サイドブラシ5・5’が開いて車体前面の洗浄が終了すると、これを検出スイッチ33で検出して(16)、洗車機本体1及びキャリア60を走行させ、放水ノズル14より放水を行なう(17)。洗車機本体1はここで、サイドブラシ5・5’及びトップブラシ3を回転駆動して車体の左右側面及び上面を洗浄する。走行に伴い、超音波センサー11で車体の後端を検出すると(18)、この時点を起点として時間T1’が経過した後キャリア60の走行を停止し更に放水ノズル14の放水を停止する(19)。この後、検出スイッチ33をモニタしサイドブラシ5・5’が車体後端に至って互いに閉じたのを確認して(20)、本体1の走行を停止し(21)、往行洗車を終了する。以後は、先の実施例において述べた通り1往復の洗車コースであれば、上記動作に続いて復行時には、ブロワノズル6・7・7’による乾燥を行ない、2往復の洗車コースであれば、上記と同様な手順を以て復行洗浄を行なう。
【0032】尚、時間T1とT1’とは、前記TとT’の関係と全く同一の関係にあり、本例ではT1=T1’としている。
【0033】以上のように、この実施例では超音波センサー11を備えて、動作Iのように洗車機本体1での洗浄を行なわない場合でも、自動車Aの前後端を検出し、キャリア60における放水を車体を外れては行なわないように制御できる。また、キャリア60における放水は常に洗車機本体1内において成されるから、水が外部へ飛散することがない。」

「【0035】しかも、自動車端部を検出しこの検出したタイミングに基づいて放水ノズルからの放水を制御するので、自動車の底面のみに放水し自動車端部から外れて放水するのを停止することが可能となり、確実に洗浄水の飛散を防止し洗浄水の浪費も排除できる。更に、自動車端部の検出手段は洗車機側に設けられ、端部検出用のスイッチ等を地面から離れた十分に高い位置に設置することが可能となり、漏電対策が容易になると共に、ガソリンスタンド等の揮発性可燃物を扱う場所でも安全に使用できる(ガソリンスタンドではスイッチ等の火花発生の可能性のある電気部品は地面から60cm以上の高さに設ける必要がある)。また、これに伴い、自動車端部の検出手段として洗車機に通常設けられる車体検出手段を兼用させることが可能となり、下回り洗浄装置に専用の検出手段を設ける場合に比べて構造が簡単で安価な装置が得られる。」

甲第1号証には、以下の【図6】が示されている。


イ 甲第1号証からの認定事項
【請求項1】の記載から、「洗車機」及び「下回り洗浄装置」に関する技術について開示されているところ、上記アから次のことが認定できる。

(ア)【請求項1】の各構成における、「自動車」は、段落【0020】?段落【0033】に記載された実施例(以下「他の実施例」という。)の「自動車A」に対応し、以下同様に、「洗車機」は「洗車機本体1」に、「キャリア」は「キャリア60」に、「放水ノズル」は「放水ノズル14」に、それぞれ対応すること。

(イ)段落【0020】に「図6は上記以外の実施例を示す平面説明図で、下回り洗浄装置におけるキャリア部を除き同様の構成を有している。従って、上記実施例と共通する部分は同一の記号を付して説明する。」と記載され、該「上記実施例」(段落【0006】?段落【0019】)と「他の実施例」において、「車機本体1」、「レール2、2’」、「トップブラシ3」、「サイドブラシ5、5’」、「ブロワノズル6、7、7’」及び「スイッチ32」の構成が共通しているところ、上記(ア)を踏まえると、

・段落【0006】の「1は門形に形成される洗車機本体で、レール2・2’上を該レール間に停車される自動車Aを跨ぐように往復走行する。3は一対のスイングアーム4・4’を介して揺動可能に支持されるトップブラシで、車体との接触により揺動して主に車体の上面をブラッシング洗浄する。5・5’は本体天部に左右移動すなわち開閉動作できるよう吊下げられた一対のサイドブラシで、車体の側面形状に沿って開閉動作し、車体の前後左右の各側面をブラッシング洗浄する。6・7・7’はそれぞれ本体上方及び両側に設けられるブロワノズルで、車体に対し高圧で空気を吹き付け、車体に付いた水を飛散させて乾燥を計る。」との記載から、「他の実施例」の洗車機本体1は、門形に形成され、レール2、2’上を該レール2、2’間に停車される自動車Aを跨ぐように往復走行し、車体との接触により揺動して主に車体の上面をブラッシング洗浄するトップブラシ3と、車体の側面形状に沿って開閉動作し、車体の前後左右の各側面をブラッシング洗浄する一対のサイドブラシ5、5’と、車体に対し高圧で空気を吹き付け、車体に付いた水を飛散させて乾燥を計るブロワノズル6、7、7’とを備えること。

・段落【0023】の「この停車台によって定められる自動車の停車位置は、洗車機本体1が待機位置(図示位置)にあるとき、超音波センサー11の検出位置(センサー直下)にその先端部があるよう定められており、これに応じて自動車の先端が待機位置(図示位置)にあるキャリア60のノズル15の近くに達するよう、前記距離Lが定められる。」との記載、及び段落【0024】の「図7は他の実施例の要部制御系を示すブロック図で、超音波センサー11における検出信号に基づき、そのセンサーの検出位置に自動車Aが存在するか否かを検出する自動車検知回路70を新たに設けた点を除き図4とほぼ同一の構成である。」との記載から、「他の実施例」の洗車機本体1は、自動車Aが停車位置に存在するか否かを検出する超音波センサー11を備えること。

・段落【0013】の「32はサイドブラシ5・5’の前後への傾動を検出するスイッチで、往行洗車時及び復行洗車時の各工程の始めに、サイドブラシ5・5’を閉じて本体1を走行させ、このサイドブラシが洗浄する車体の前端又は後端に当接し傾動したのを検出するもので、これを以て車体の前後端位置を検出している。」との記載から、「他の実施例」の自動車端部を検出する手段は、洗浄する車体の前後端位置を検出するサイドブラシ5、5’の前後への傾動を検出するスイッチ32であること。

ウ 甲第1号証に記載された発明
上記ア及びイによれば、甲第1号証の特に「他の実施例」の記載から、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「自動車Aを跨いで走行し前記自動車Aの上面及び側面を洗浄するタイプの洗車機本体1及び下回り洗浄装置であって、前記洗車機本体1に併設される前記下回り洗浄装置は、前記洗車機本体1に備えられ自動車端部を検出する手段と、前記洗車機本体1と独立して走行し前記自動車Aの下方を移動可能とされたキャリア60と、該キャリア60に備えられ前記自動車Aの底面に向けて洗浄水を放出する放水ノズル14と、前記キャリア60を前記洗車機本体1と並行して走行させ前記検出手段で前記自動車端部を検出したタイミングに基づいて前記放水ノズル14からの放水を制御する手段とを設け、前記洗車機本体1で前記自動車Aの上面及び側面を洗浄する間に前記自動車Aの前後端間底面を洗浄し、
前記洗車機本体1は、門形に形成され、レール2、2’上を該レール2、2’間に停車される前記自動車Aを跨ぐように往復走行し、車体との接触により揺動して主に車体の上面をブラッシング洗浄するトップブラシ3と、車体の側面形状に沿って開閉動作し、車体の前後左右の各側面をブラッシング洗浄する一対のサイドブラシ5、5’と、車体に対し高圧で空気を吹き付け、車体に付いた水を飛散させて乾燥を計るブロワノズル6、7、7’と、前記自動車Aが停車位置に存在するか否かを検出する超音波センサー11とを備え、
前記自動車端部を検出する手段は洗浄する車体の前後端位置を検出する前記サイドブラシ5・5’の前後への傾動を検出するスイッチ32である、
洗車機本体1及び下回り洗浄装置。」

2 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
()内に当審における仮訳を示す。
(1)1ページ82?91行

(本発明の目的は、簡単な構造で従来の装置よりも水消費量の低い洗浄装置を提供することである。)

(2)2ページ62?87行

(本発明の洗浄装置は逆U字型の門型洗浄機1を備える。門型洗浄機1にはサイドブラシ5、6とルーフブラシ7と、車両を乾燥させる送風機8、9とが設けられる。門型洗浄機1は床面に固定されたレール10、11に沿って往復動する。門型洗浄機1の移動中に3つの回転ブラシが車両の外形に自動的に追従する。)

(3)2ページ91?95行

(洗浄装置はパイプシステム14によって構成される車両の下面の洗浄設備を備える。)

(4)2ページ101?126行

(パイプシステム14は長さ方向に互いに遮断された個別のセクションに細分され、各セクションの長さは13.5フィート未満であり、各セクションに関連して提供される電磁弁を使用して一度に1つのセクションのみから車両の下面に液体を噴霧する。各電磁弁は、門型洗浄機が即座に配されるパイプセクションのみに高圧ポンプから液体を供給するために、その移動中に門型洗浄機によって直接影響を受けるアクチュエータから電気的に作動する。
パイプシステム14は門型洗浄機1の移動の開始位置に対応するレール経路の端部から連続する7つのセクション17、18、19、20、21、22、23を備える。)

(5)3ページ17?34行

(洗浄機の移動の開始位置に最も近いセクション17、18は、他のセクション19?23よりも長く、例えば4フィートである。
セクション19は幾分短く例えば2.3フィートであり、セクション20?30は更に短く例えば0.8フィートである。異なる長さのパイプセクションを配分することにより、門型洗浄機の移動により制御される車両の下面の洗浄が可能な限り車両の長さに制限されることを保証する。)

(6)3ページ46?68行

(洗浄機の移動中、その上に洗浄機が即座に配置されるパイプセクション17?23のみに液体が高圧ポンプ32から供給されるように、門型洗浄機によって直接影響を受けるアクチュエータから電磁弁が作動する。
アクチュエータは門型洗浄機の下端に取り付けられる磁気スイッチ等のスイッチングディバイス35を備える。スイッチングディバイス35はパイプシステム14の個々のセクションに対応する間隔でレール10に溶接されたスイッチ感応ディバイス36?41により閉じられる。)

(7)3ページ92?103行

(門型洗浄機が前方(図1の左方)に移動する間、門型洗浄機がレール10に取り付けられたスイッチ感応ディバイス36?41の一を通過する毎に磁気スイッチ35が閉じられる。磁気スイッチ35が閉じられると、AC電源43’は回転スイッチによって一のパイプセクションの電磁弁から門型洗浄機の移動方向にある次のパイプセクションの電磁弁に切り替えられる。)

甲第2号証には、以下の図1が示されている。


第5 当審の判断
1 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(1)後者の「門形に形成され、レール2・2’上を該レール間に停車される」「前記自動車Aを跨いで走行し自動車Aの上面及び側面を洗浄するタイプの洗車機本体1」は、前者の「所定の停車位置に停車させた自動車の下面以外の車体面を洗浄する上部洗浄装置」に相当し、後者の「自動車Aの前後端間底面を洗浄」する「前記洗車機本体1に併設される前記下回り洗浄装置」は、前者の「該自動車の主に下面を洗浄する下部洗浄装置」に相当し、後者の「洗車機本体1及び下回り洗浄装置」は、前者の「洗車装置」に相当する。

(2)後者の「洗車機本体1」は、【図6】等からみて自動車Aの車長方向に走行することは明らかであるから、後者の「前記洗車機本体1は、門形に形成され、レール2・2’上を該レール間に停車される前記自動車Aを跨ぐように往復走行し」との構成は、前者の「前記上部洗浄装置は、自動車の車長方向に移動自在に設けられ」との構成に相当し、後者の「車体との接触により揺動して主に車体の上面をブラッシング洗浄するトップブラシ3と、車体の側面形状に沿って開閉動作し、車体の前後左右の各側面をブラッシング洗浄する一対のサイドブラシ5、5’と、車体に対し高圧で空気を吹き付け、車体に付いた水を飛散させて乾燥を計るブロワノズル6、7、7’」は、前者の「移動に伴い自動車の車体面を洗浄する洗車処理装置」に相当する。

(3)後者の「自動車が停車位置に存在するか否かを検出する超音波センサー11」は、前者の「自動車が前記停車位置にいることを検出する停車検出手段」に相当する。

(4)上記(3)を踏まえると、後者は、洗車機本体1の超音波センサー11で検出された停車位置に停車した自動車に対して、洗浄水を放出することは明らかであるから、
後者の「前記下回り洗浄装置は、」「前記洗車機本体1と独立して走行し前記自動車Aの下方を移動可能とされたキャリア60と、該キャリア60に備えられ前記自動車Aの底面に向けて洗浄水を放出する放水ノズル14と、前記キャリア60を前記洗車機本体1と並行して走行させ前記検出手段で前記自動車端部を検出したタイミングに基づいて前記放水ノズル14からの放水を制御する手段とを設け」との構成と、
前者の「前記下部洗浄装置は、前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出する自動車の停車位置の床面に設けられ、洗浄水を噴射する噴射ノズルを有する複数の噴水管を車種毎の自動車の長さに区切って配置した洗浄ユニットを備え、該洗浄ユニットの噴水管は、第1の車種の車長に対応した第1の噴水管と、第1の車種より長い第2の車種の車長に対応した第2の噴水管とを少なくとも備え、第2の噴水管が有する噴射ノズルの数は、第1の噴水管が有する噴射ノズルの数よりも少なく、前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出された停車位置に停車した自動車に対して、前記上部洗浄装置の車長検出手段で検出する自動車の長さが第1の車種の車長までであれば第1の噴水管からのみ洗浄水を噴射し、自動車の長さが第2の車種の車長までであれば第1の噴水管と第2の噴水管とから洗浄水を噴射する制御手段を備え」との構成とは、
「前記下部洗浄装置は、洗浄水を噴射する噴射ノズルを有し、前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出された停車位置に停車した自動車に対して、洗浄水を噴射する制御手段を備え」る点で共通する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「所定の停車位置に停車させた自動車の下面以外の車体面を洗浄する上部洗浄装置と、該自動車の主に下面を洗浄する下部洗浄装置とを備えた洗車装置であって、
前記上部洗浄装置は、自動車の車長方向に移動自在に設けられ、移動に伴い自動車の車体面を洗浄する洗車処理装置と、自動車が前記停車位置にいることを検出する停車検出手段とを備え、
前記下部洗浄装置は、洗浄水を噴射する噴射ノズルを有し、
前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出された停車位置に停車した自動車に対して、洗浄水を噴射する制御手段を備えた洗車装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明1は、上部洗浄装置は、「自動車の長さを検出する車長検出手段」を備え、下部洗浄装置は、「前記上部洗浄装置の停車検出手段で検出する自動車の停車位置の床面に設けられ」るものであり、洗浄水を噴射する噴射ノズルを有する「複数の噴水管を車種毎の自動車の長さに区切って配置した洗浄ユニットを備え、該洗浄ユニットの噴水管は、第1の車種の車長に対応した第1の噴水管と、第1の車種より長い第2の車種の車長に対応した第2の噴水管とを少なくとも備え、第2の噴水管が有する噴射ノズルの数は、第1の噴水管が有する噴射ノズルの数よりも少なく」するものであって、「前記上部洗浄装置の車長検出手段で検出する自動車の長さが第1の車種の車長までであれば第1の噴水管からのみ洗浄水を噴射し、自動車の長さが第2の車種の車長までであれば第1の噴水管と第2の噴水管とから」洗浄水を噴射する制御手段を備えるものであるのに対し、
甲1発明は、洗車機本体1は、「前記自動車端部を検出する手段」としての「洗浄する車体の前後端位置を検出する前記サイドブラシ5・5’の前後への傾動を検出するスイッチ32」を備え、下回り洗浄装置は、「前記洗車機本体1と独立して走行し前記自動車Aの下方を移動可能とされたキャリア60」であって、「前記キャリア60を前記洗車機本体1と並行して走行させ前記検出手段で前記自動車端部を検出したタイミングに基づいて」前記放水ノズル14からの放水を制御する手段を設ける点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 上記「第4 2」の甲第2号証の記載事項、及び図1(特にパイプシステム14が床面に設けられる点)から、甲第2号証には、床面に固定されたレール10、11に沿って往復動する門型洗浄機1及び車両の下面を洗浄する床面に設けられるパイプシステム14を備える洗浄装置に関し、以下の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。
「床面に固定されたレール10、11に沿って往復動する門型洗浄機1及び車両の下面を洗浄する床面に設けられるパイプシステム14を備える洗浄装置において、
前記パイプシステム14は門型洗浄機1の移動の開始位置に対応するレール経路の端部から連続する7つのパイプセクション17、18、19、20、21、22、23を備え、洗浄機の移動の開始位置に最も近いパイプセクション17、18は、他のパイプセクション19?23よりも長く形成され、門型洗浄機1の移動中、その上に門型洗浄機1が即座に配置されるパイプセクション17?23のみに液体が高圧ポンプ32から供給されるように作動することで、門型洗浄機1の移動により制御される車両の下面の洗浄が可能な限り車両の長さに制限されること。」

イ 甲1発明と甲2事項は、自動車を跨いで走行し自動車を洗浄するタイプの洗車機に併設され、車体の底面を洗浄する下回り洗浄装置に関するものであるから、発明が属する技術分野が共通し、また、両者は、該下回り洗浄装置で洗浄する際に、周囲へ洗浄水を飛散させることを防止することを課題としている点でも共通している。さらに、洗車機(甲1発明の「洗車機本体1」、甲2事項の「門型洗浄機1」)の走行に合わせて下回り洗浄装置(甲1発明の「キャリア60」、甲2事項の「パイプシステム14」)が車体の底面を洗浄するという機能においても共通するから、甲1発明に甲2事項を適用する動機付けは存在するものである。
そして、甲1発明に甲2事項を適用すると、甲1発明の「下回り洗浄装置」の「キャリア60」が甲2事項の「パイプシステム14」に置換されることになる。
しかしながら、甲2事項のパイプシステム14が備える複数のパイプセクション17?23は、門型洗浄機1の移動中、その上に門型洗浄機1が即座に配置されるパイプセクション17?23のみに液体が高圧ポンプ32から供給されるように作動する構成、つまり、門型洗浄機1の位置に対応するパイプセクションから液体が供給する構成にはなっているが、車種毎の車両の長さに区切って配置した洗浄ユニットといえるものでないから、該複数のパイプセクション17?23は、上記相違点に係る本件発明1の「該洗浄ユニットの噴水管は、第1の車種の車長に対応した第1の噴水管と、第1の車種より長い第2の車種の車長に対応した第2の噴水管」に相当するものではない。
加えて、甲1発明の「前記自動車端部を検出する手段」としての「洗浄する車体の前後端位置を検出する前記サイドブラシ5・5’の前後への傾動を検出するスイッチ32」は、自動車の前後端位置を検出することにとどまるものであるから、本件発明1の「車長検出手段」といえるものでなく、甲2事項も、該「車長検出手段」を備えるものでない。そうすると、甲1発明に甲2事項を適用しても、門型洗浄機1の車長検出手段で検出する車両の長さが第1の車種の車長までであれば第1の噴水管からのみ液体を噴射し、車両の長さが第2の車種の車長までであれば第1の噴水管と第2の噴水管とから液体を噴射する制御手段を備える構成には至らない。

ウ ここで、申立人は、上記相違点に関し、甲第2号証には、
「パイプセクション17?23の一部が第1の車種の車長に対応し、パイプセクション17?23の他の一部が第1の車種よりも長い第2の車種に対応すること」が記載されている旨主張するので(特許異議申立書11ページ22?25行)、以下検討する。
甲2事項は、上記アで述べたように、「門型洗浄機1の移動中、その上に門型洗浄機1が即座に配置されるパイプセクション17?23のみに液体が高圧ポンプ32から供給されるように作動する」ものであって、具体的な構成としては、甲第2号証の記載事項(7)に記載されるように、門型洗浄機がレール10に取り付けられたスイッチ感応ディバイス36?41の一を通過する毎に磁気スイッチ35が閉じられ、該磁気スイッチ35が閉じられると、AC電源43’は回転スイッチによって一のパイプセクションの電磁弁から門型洗浄機の移動方向にある次のパイプセクションの電磁弁に切り替えて液体が高圧ポンプ32から供給されるように構成されるものであるから、パイプセクション17?23の一部が第1の車種の車長に対応した第1の噴水管であり、パイプセクション17?23の他の一部が第1の車種より長い第2の車種の車長に対応した第2の噴水管といえるものではない。

したがって、申立人の上記主張は採用できない。

エ したがって、甲1発明に甲2事項を適用しても、本件発明1の上記相違点に係る構成に至るものでない。
よって、上記相違点に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-03-04 
出願番号 特願2014-192394(P2014-192394)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B60S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森本 康正  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 島田 信一
一ノ瀬 覚
登録日 2019-06-21 
登録番号 特許第6541950号(P6541950)
権利者 エムケー精工株式会社
発明の名称 洗車装置  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ