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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1360526
異議申立番号 異議2019-701024  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-12 
確定日 2020-03-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6533846号発明「香味増強剤、ならびに該増強剤および香料を含有する組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6533846号の請求項1?19に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6533846号の請求項1?19に係る特許についての出願は、平成30年3月13日(優先権主張 平成30年1月31日)の出願であって、令和1年5月31日にその特許権の設定登録がされ、令和1年6月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和1年12月12日に特許異議申立人 田中眞喜子により特許異議の申立てがされた。

2 本件特許発明
特許第6533846号の請求項1?19に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
親油性界面活性剤を有効成分として含有し、前記親油性界面活性剤が油剤に溶解または分散されている、香味増強剤。
【請求項2】
親油性界面活性剤が、HLB値が10以下の非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の香味増強剤。
【請求項3】
親油性界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の香味増強剤。
【請求項4】
油剤が、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、長鎖脂肪酸、動物性油脂および植物性油脂からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の香味増強剤。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の香味増強剤と、香料とを含有する、香味の増強用組成物(ただし、乳化組成物の態様であるものを除く)であって、前記組成物は、グリセリンおよびジグリセリン含有率の和が10%以下であるポリグリセリンをエステル化してなるポリグリセリン脂肪酸エステル、および中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有しない、組成物。
【請求項6】
親油性界面活性剤の含有量が、香料の含有量1重量部に対し0.0003重量部?9999重量部となるように香味増強剤が含有される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
さらに親水性溶媒を含有する、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
親水性溶媒が、低級アルコールおよび多価アルコールからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
親水性溶媒の含有量が、香料1重量部に対し0.003重量部?8000重量部である、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
さらに油剤を含有する、請求項5?9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
油剤が、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、長鎖脂肪酸、動物性油脂および植物性油脂からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
香料の含有量が0.01重量%?30重量%である、請求項5?11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
香料に、請求項1?4のいずれか1項に記載の香味増強剤を添加し、混合すること(ただし乳化の態様で混合することを除く)を含み、グリセリンおよびジグリセリン含有率の和が10%以下であるポリグリセリンをエステル化してなるポリグリセリン脂肪酸エステル、および中鎖脂肪酸トリグリセリドを混合しない、香味の増強方法。
【請求項14】
親油性界面活性剤の含有量が、香料の含有量1重量部に対し0.0003重量部?9999重量部となるように香味増強剤を添加する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
香料を親水性溶媒に溶解もしくは分散させて香味増強剤と混合する、または、香料と香味増強剤との混合物を親水性溶媒に溶解もしくは分散させる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
親水性溶媒が、低級アルコールおよび多価アルコールからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
親水性溶媒の含有量が、香料1重量部に対し0.003重量部?8000重量部である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
さらに油剤を添加して香料と香味増強剤を混合する、請求項13?17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
油剤が、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、長鎖脂肪酸、植物性油脂および動物性油脂からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項18に記載の方法。」
(以下、請求項1?請求項19に係る発明を、請求項順にそれぞれ、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、……、「本件特許発明19」ともいう。)

3 申立理由の概要
特許異議申立人 田中 眞喜子は、以下の甲第1号証を証拠として提出し、請求項1?19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨を主張する。
甲第1号証:特公昭52-35746号公報
(以下、「甲第1号証」を「甲1」ともいう。)

4 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
記載事項(1-1)
「(57)特許請求の範囲
1 (1) フレーバーオイルに、
(2) 該フレーバーオイルに対して20?100%(重量)の、炭素数8?14の脂肪酸のソルビトール、ソルビタンもしくはソルバイドのエステル、
(3) シヨ糖アセテートイソブチレート、及び
(4) 該シヨ糖アセテートイソブチレートに対して5?30%(重量)の、炭素数6?12の飽和脂肪酸トリグリセライド、
を添加混合することを特徴とする飲料用の香料組成物の製法。」(1欄16?27行)
(なお、「(57)」は原文では○中に「57」である。)

記載事項(1-2)
「本発明者等は、これらの課題を深く検討した結果、SAIBと、ソルビタン脂肪酸エステル等の特定のエステルと、飽和脂肪酸からなるトリグリセライドとをフレーバーオイルに加えて成る組成物、を用いることにより、得られた飲料が均一となり、かつ長期間安定になり得ることを見いだした。しかも、本発明の組成物を用いた場合、飲料に、SAIBを単独に使用した場合よりもすぐれたクラウデイを作ることができた。ここでクラウデイとは、飲料に濃厚感を与えるために、均一な不透明感を与えることで、当業界では広く行なわれているものである。」(2欄33行?3欄7行)

記載事項(1-3)
「実施例 1
オレンジ油10g、ソルビタン・モノラウレート4g,SAIB50gおよびカプリル酸トリグリセライド10gを40?50℃に加温して、均一に混合しておく。別にイオン交換水126ml、70%ソルビトール水溶液300gを混合し、40?50℃に加温した水溶液をつくる。この水溶液を常圧で12,000 rpmのT.K.ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で撹拌しつつ、これに上記の香料組成物を加え、5分間予備乳化する。次いで、これを2段式の圧力式ホモジナイザーで、一段目2,000lb/inch、二段目500lb/inchの条件で乳化し、更にもう1回くりかえし乳化する。こうして得られた乳化香料を2g、クエン酸2g、食用黄色色素5号0.1g,1/5濃縮果汁20gおよび砂糖130gをイオン交換水に加え全体を1lとし、びん詰後、加熱殺菌する。得られた果汁飲料は、長期間保存していても、オイルの分離やSAIBの沈でんもなく、またクラウデイも均一である。」(4欄34行?5欄9行)

ここで、記載事項(1-3)の実施例1は、記載事項(1-1)に記載された飲料用の香料組成物の製法に係る発明を実施したものであって、記載事項(1-3)の「…これに上記の香料組成物を加え、…」にいう「香料組成物」とは、「オレンジ油10g、ソルビタン・モノラウレート4g,SAIB50gおよびカプリル酸トリグリセライド10gを40?50℃に加温して、均一に混合」したものと認められる。
また、記載事項(1-3)における「SAIB」は、「シヨ糖アセテートイソブチレート」の略称であることが、技術常識から明らかである。
したがって、甲1には、
「オレンジ油10g、ソルビタン・モノラウレート4g、シヨ糖アセテートイソブチレート50gおよびカプリル酸トリグリセライド10gを40?50℃に加温して、均一に混合して得られた、飲料用の香料組成物」の発明(以下、「甲1発明)ともいう。」が記載されていると認められる。

5 当審の判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ソルビタン・モノラウレート」は、本件特許明細書の段落0011において親油性界面活性剤の例とされる「モノラウリン酸ソルビタン」(本件特許公報5頁35?36行)の別称であることから、本件特許発明1における「親油性界面活性剤」に該当する。
また、甲1発明における「シヨ糖アセテートイソブチレート」および「カプリル酸トリグリセライド」はそれぞれ、本件特許明細書の段落0015において油剤の例とされる「ショ糖酢酸イソ酪酸エステル」(本件特許公報6頁21行)および「カプリル酸トリグリセリド」(本件特許公報6頁21行)の別称であることから、本件特許発明1における「油剤」に該当する。
そして、甲1発明においては、親油性界面活性剤に該当する「ソルビタン・モノラウレート」の量が、油剤に該当する「シヨ糖アセテートイソブチレート」および「カプリル酸トリグリセライド」の量に比して極めて少ないこと、及び、それらが「均一に混合」されていることから、技術常識に照らして、甲1発明の「飲料用の香料組成物」は「親油性界面活性剤が油剤に溶解または分散されている」状態になっていると認められ、これは本件特許発明1における「親油性界面活性剤が油剤に溶解または分散されている」状態に該当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
(一致点)
「親油性界面活性剤を有効成分として含有し、前記親油性界面活性剤が油剤に溶解または分散されている」組成物である点で一致し、
(相違点)
本件特許発明1は、香料を含有しない香味増強剤である一方、甲1発明は、オレンジ油を含有する飲料用の香料組成物である点で相違する。

この相違点に関して、記載事項(1-2)には「SAIBと、ソルビタン脂肪酸エステル等の特定のエステルと、飽和脂肪酸からなるトリグリセライドとをフレーバーオイルに加えて成る組成物、を用いることにより、得られた飲料が均一となり、かつ長期間安定になり得ることを見いだした。しかも、本発明の組成物を用いた場合、飲料に、SAIBを単独に使用した場合よりもすぐれたクラウデイを作ることができた。」とあって、「SAIBと、特定のエステルと、飽和脂肪酸からなるトリグリセライドとをフレーバーオイルに加えて成る組成物」による効果が示されている一方、甲1発明からオレンジ油を除いたものが香味増強剤となり得ることは、甲1に記載も示唆もなく、技術常識から明らかであるとも認められない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、特許異議申立人は、本件明細書の段落0010によれば、「香味」とは「香気と味を意味する」とされているところ、甲1の2頁左欄5行目には、飲料に濃厚感を与えるために、ソルビタン・モノラウレート並びにSAIBおよびカプリル酸トリグリセライドを添加することが記載されており、当該濃厚感の付与は,少なくとも香気及び味のいずれかを付与するものであると考えるのが自然であるから、甲1にはソルビタン・モノラウレート並びにSAIBおよびカプリル酸トリグリセライドが香味を増強する用途に使用されることが記載されているといえる、として、予めオレンジ油とは別にソルビタン・モノラウレート並びにSAIBおよびカプリル酸トリグリセライドを調製しておき、これをオレンジ油に用いるための香味増強剤とすることは、当業者が適宜選択し得る程度のことであるから、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張する(特許異議申立書13頁下から4行?14頁19行参照)。
しかし、特許異議申立人が示す甲1の記載箇所には、記載事項(1-2)のとおり「クラウデイとは、飲料に濃厚感を与えるために、均一な不透明感を与えることで、当業界では広く行われているものである。」と記載されており、これは、「クラウデイ」が均一な不透明感を与えることで結果として飲料に濃厚感を与えるためのものとして当業界で広く行われているものであることを説明する記載にとどまり、ここにいう「濃厚感」が香気及び味のいずれかに関連するものであって実際に香気や味を増強させているといえる根拠は見出せず、特許異議申立人が示す甲1の記載箇所に、ソルビタン・モノラウレート並びにSAIBおよびカプリル酸トリグリセライドが香味増強用に使用されることが記載されているとすることはできない。
そして、ソルビタン・モノラウレート並びにSAIBおよびカプリル酸トリグリセライドが香味増強用に使用できることは、甲1に記載も示唆もなく、技術常識から明らかであるとも認められないので、特許異議申立人の上記主張には理由がない。

(2)本件特許発明2?19について
上記のとおり、本件特許発明1が甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1の全ての発明特定事項を含む香味増強剤に係る発明である本件特許発明2?4もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、上記のとおり、本件特許発明1?4が甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1?4のいずれかの香味増強剤と香料とを含有する、香味の増強用組成物に係る発明である本件特許発明5?12もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、上記のとおり、本件特許発明1?4が甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、香料に本件特許発明1?4のいずれかの香味増強剤を添加し混合することを含む、香味の増強方法の発明である本件特許発明13?19もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-02-28 
出願番号 特願2018-45599(P2018-45599)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金田 康平藤井 美穂  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 櫛引 智子
村上 騎見高
登録日 2019-05-31 
登録番号 特許第6533846号(P6533846)
権利者 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
発明の名称 香味増強剤、ならびに該増強剤および香料を含有する組成物  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 高島 一  
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