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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01D
管理番号 1360833
審判番号 不服2018-12233  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-12 
確定日 2020-03-09 
事件の表示 特願2013-243435「涙型の部分スパンシュラウド」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月12日出願公開、特開2014-109272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)11月26日(パリ条約による優先権主張2012年11月30日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成29年9月15日付け(発送日:平成29年9月26日)で拒絶理由が通知され、平成29年12月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年5月8日付け(発送日:平成30年5月15日)で拒絶査定がされ、これに対して平成30年9月12日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和元年6月24日付け(発送日:令和元年6月28日)で当審より拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和元年9月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和元年9月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
前縁および後縁ならびに半径方向内側の端部および半径方向外側の端部を有するエーロフォイル部分と、
前記エーロフォイル部分の前記半径方向内側の端部に取り付けられた根元セクションと、
前記根元セクションと前記半径方向外側の端部の間で前記エーロフォイル部分上に位置する部分スパンシュラウドとを備えるターボ機械用の回転式動翼であって、
前記部分スパンシュラウドが、前記エーロフォイル部分の吸気側に配置された第1の部分スパンシュラウドと、前記エーロフォイル部分の圧力側に配置された第2の部分スパンシュラウドとを備え、
前記第1及び第2の部分スパンシュラウドが、前記第1及び第2の部分スパンシュラウドの前縁から測定したとき、前記第1及び第2の部分スパンシュラウドの前記前縁から前記第1及び第2の部分スパンシュラウドの後縁まで延在する翼弦長の36%のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え、
前記動翼の隣接する動翼の第2の部分スパンシュラウドと第1の部分スパンシュラウドが、互いに係合するほぼZ形状の接触面を有し、
前記第1の部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有する、回転式動翼。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。

1.(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)本願の請求項1ないし8に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する記載事項の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(明確性)について
請求項1、2、4ないし7に係る発明並びにこれらの請求項を直接的または間接的に引用する請求項3及び8に係る発明は明確でない。
特に、請求項1及び5の「前記部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形を有する」との記載事項並びに請求項2及び6の「前記部分スパンシュラウドが、表3に記載されるX-Y座標によって規定される外形を有する」との記載事項は、明確でない。

●理由2(進歩性)について
請求項1ないし8に対して:引用文献1ないし4

<引用文献等一覧>
1.特開2011-137424号公報
2.特開2007-187053号公報(周知技術を示す文献)
3.特開昭60-111001号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-96180号公報(周知技術を示す文献)

第4 特許法第29条第2項についての判断
1 引用文献、引用発明
(1)引用文献1
当審拒絶理由において引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-137424号公報(以下「引用文献1」という。)には、「タービン動翼翼列および蒸気タービン」に関し図面(特に、図1、2、11及び12を参照。)とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。以下同様。

ア 「【0001】
本発明は、蒸気タービンのタービン動翼翼列に係り、特に、タービン段落の低圧段に備えられるタービン動翼翼列および、このタービン動翼翼列を備えた蒸気タービンに関する。」

イ 「【0021】
図1は、本発明に係る一実施の形態のタービン動翼翼列10を構成する動翼20の斜視図である。図2は、本発明に係る一実施の形態のタービン動翼翼列10を図1に示されたW1-W1断面で示した図である。
【0022】
図1および図2に示すように、タービン動翼翼列10は、翼背面21に突設された背側連結部材22と翼腹面23に突設された腹側連結部材24とを備える複数の動翼20が、タービンロータ(図示しない)の周方向に植設されて構成されている。
【0023】
また、図2に示すように、動翼20が回転する際、隣接する動翼20の背側連結部材22と腹側連結部材24とが当接して中間連結部材30を構成する。なお、背側連結部材22および腹側連結部材24の当接面の形状は、同じ形状に構成される。」

ウ 「【0049】
(中間連結部材30の断面形状)
ここでは、中間連結部材30の断面形状について説明する。
【0050】
図11は、図2のW2-W2断面において、中間連結部材30の最大厚さ(Tmax)の位置を示す図である。図11の横軸は、中間連結部材30の上流側端縁31(前縁)から下流側端縁32(後縁)までの距離(コード長)Cに対する、中間連結部材30の厚さが最大となる前縁からの距離Lの比(L/C)を示している。
【0051】
図11に示すように、中間連結部材30は、前縁から後縁にかけての所定の範囲の位置に、最大厚さ(Tmax)を有し、流体抵抗を抑制する流線形状に形成されている。また、中間連結部材30が最大厚さ(Tmax)を有する所定の範囲は、L/Cが0.4以下となる位置とすることが好ましい。
【0052】
次に、L/Cが0.4以下となる位置に中間連結部材30の最大厚さ(Tmax)が存在するように中間連結部材30を構成することが好適な理由を説明する。
【0053】
図12は、中間連結部材30の最大厚さ(Tmax)の位置とプロファイル損失の関係を示す図である。図12の横軸は、図11の横軸と同様に、中間連結部材30の上流側端縁31から下流側端縁32までの距離(コード長)Cに対する、中間連結部材30の厚さが最大となる前縁からの距離Lの比(L/C)を示している。なお、図12に示したプロファイル損失は、数値流体解析によって得られた結果である。また、図12において、L/Cが0.2となる場合のプロファイル損失を基準としている。
【0054】
図12に示すように、プロファイル損失は、L/Cが0.4を超えると急激に増加する。ここで、L/Cが大きくなると、図11に示す、後縁における中間連結部材30の一方の表面と他方の表面間の角度ε(以下、楔角度εという)が増加する。
【0055】
この結果から、L/Cが0.4を超える位置に中間連結部材30の最大厚さ(Tmax)が存在すると、L/Cが0.4よりも上流側(最大厚さ(Tmax)となる上流側)では、作動流体は、中間連結部材30の表面に沿って流れるが、その下流側では、楔角度εが増加するため、翼厚さの急激な減少と曲率の変化に流れが追従できなくなり、剥離が生じ、プロファイル損失が急激に増加するものと考えられる。
【0056】
また、翼厚さの急激な減少を抑制するために、後縁の厚さを厚くして楔角度εを減少させることも考えられるが、後縁の後流のウェーク幅を拡大するため効果的ではない。
【0057】
そこで、中間連結部材30は、L/Cが0.4以下となる位置に中間連結部材30の最大厚さ(Tmax)が存在するように構成されている。」

エ 「【符号の説明】
【0080】
10…タービン動翼翼列、20,20a,20b…動翼、21…翼背面、22…背側連結部材、23…翼腹面、24…腹側連結部材、25、51…前縁、26…後縁、30…中間連結部材、31…上流側端縁、32…下流側端縁、40…後流渦、41…翼腹側境界層、42…翼背側境界層、43…馬蹄渦、44…高損失領域、50…静翼、52…ダイヤフラム内輪、53…ダイヤフラム外輪、60…ロータディスク、70,71…座部、70a,71a…突起部、72…スリーブ、S,S1,S2…スロート。」

オ 上記エ及び図1の図示内容並びに技術常識から、動翼20は、前縁25および後縁26並びに半径方向内側の端部および半径方向外側の端部を有するエーロフォイル部分と、前記エーロフォイル部分の前記半径方向内側の端部に取り付けられた根元セクションと、 前記根元セクションと前記半径方向外側の端部の間で前記エーロフォイル部分上に位置する中間連結部材30とを備えているといえる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「前縁25および後縁26ならびに半径方向内側の端部および半径方向外側の端部を有するエーロフォイル部分と、
前記エーロフォイル部分の前記半径方向内側の端部に取り付けられた根元セクションと、
前記根元セクションと前記半径方向外側の端部の間で前記エーロフォイル部分上に位置する中間連結部材30とを備える蒸気タービンの動翼20であって、
前記中間連結部材30が、前記エーロフォイル部分の翼背面21に突設された背側連結部材22と、前記エーロフォイル部分の翼腹面23に突設された腹側連結部材24とを備え、
前記背側連結部材22及び腹側連結部材24が、前記背側連結部材22及び腹側連結部材24の前縁から測定したとき、前記背側連結部材22及び腹側連結部材24の前記前縁から前記背側連結部材22及び腹側連結部材24の後縁まで延在する翼弦長の40%以下のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え、
前記動翼20の隣接する動翼20の腹側連結部材24と背側連結部材22が、互いに隣接する当接面を有している、
動翼20。」

2 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「前縁25」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明における「前縁」に相当し、以下同様に、「後縁26」は「後縁」に、「中間連結部材30」は「部分スパンシュラウド」に、「蒸気タービン」は「ターボ機械」に、「動翼20」は「回転式動翼」に、「翼背面21に突設」は「吸気側に配置」に、「背側連結部材22」は「第1の部分スパンシュラウド」に、「翼腹面23に突設」は「圧力側に配置」に、「腹側連結部材24」は「第2の部分スパンシュラウド」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「翼弦長の40%以下のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え」と、本願発明の「翼弦長の36%のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え」とは、「翼弦長の40%以下のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え」という限りにおいて一致し、同様に、「互いに当接する当接面を有し」と「互いに係合するほぼZ形状の接触面を有し」とは、「互いに接触する接触面を有し」という限りにおいて一致している。
よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「前縁および後縁ならびに半径方向内側の端部および半径方向外側の端部を有するエーロフォイル部分と、
前記エーロフォイル部分の前記半径方向内側の端部に取り付けられた根元セクションと、
前記根元セクションと前記半径方向外側の端部の間で前記エーロフォイル部分上に位置する部分スパンシュラウドとを備えるターボ機械用の回転式動翼であって、
前記部分スパンシュラウドが、前記エーロフォイル部分の吸気側に配置された第1の部分スパンシュラウドと、前記エーロフォイル部分の圧力側に配置された第2の部分スパンシュラウドとを備え、
前記第1及び第2の部分スパンシュラウドが、前記第1及び第2の部分スパンシュラウドの前縁から測定したとき、前記第1及び第2の部分スパンシュラウドの前記前縁から前記第1及び第2の部分スパンシュラウドの後縁まで延在する翼弦長の40%以下のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え、
前記動翼の隣接する動翼の第2の部分スパンシュラウドと第1の部分スパンシュラウドが、互いに接触する接触面を有している、回転式動翼。」

〔相違点1〕
第1及び第2の部分スパンシュラウドに関して、本願発明においては、翼弦長の「36%」のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備え、「前記第1の部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有する」ものであるのに対して、引用発明においては、翼弦長の40%以下のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備えるものであり、「前記第1の部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有する」という事項を備えていない点。

〔相違点2〕
「互いに接触する接触面」に関して、本願発明においては、互いに「係合するほぼZ形状の」接触面であるのに対して、引用発明においては、互いに当接する当接面である点。

上記相違点1について検討する。
引用発明においては、翼弦長の40%以下のところに位置する最大の厚さを有する断面形状を備えるものであるから、引用発明も、翼弦長の36%を示唆するものといえる。
また、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、第1及び第2の部分スパンシュラウドを、翼弦長の「36%」のところに最大の厚さが位置する断面形状とした点には、顕著な作用効果を見出すことはできない。
そして、「前記第1の部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有する」との事項は、「第5」において後述するように、明確な事項とはいえないものの、本願の発明の詳細な説明の記載(特に、段落【0023】ないし【0025】並びに図8及び9)を参酌しても、第1の部分スパンシュラウドをそのような構成とすることによる、顕著な作用効果を見出すことはできない。
そうすると、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、第1及び第2の部分スパンシュラウドの断面形状の最大厚さ位置及び第1の部分スパンシュラウドの翼弦長に沿った断面形状を、単に最適化または好適化したものに過ぎず、当業者が通常の創作能力の範囲で容易になし得たものである。

上記相違点2について検討する。
動翼の隣接する動翼の第2の部分スパンシュラウドと第1の部分スパンシュラウドが、互いに係合するほぼZ形状の面を有するものとすることは、本願の優先日前に周知の技術である(以下「周知技術」という。例えば、特開2007-187053号公報(当審拒絶理由において引用された引用文献2)の段落【0025】ないし【0032】並びに図8及び9、特開昭60-111001号公報(当審拒絶理由において引用された引用文献3)の第2ページ左上欄第5行ないし右上欄第16行及び第2図ないし第4図、特開2010-96180号公報(当審拒絶理由において引用された引用文献4)の段落【0023】及び【0024】並びに図6及び7を参照。)。
引用発明において、動翼の隣接する動翼の第2の部分スパンシュラウドと第1の部分スパンシュラウドが、互いに係合するほぼZ形状の面を有する構成とし、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものである。

3 請求人の主張について
請求人は令和元年9月25日の意見書の「理由2について」において次のように主張している。
「上記手続補正書に記載されておりますように、本願発明では、吸気側に配置される第1の部分スパンシュラウドが、表2または表3に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有するという特徴を備えます。
引用文献1の第0035段落に『このように、中間連結部材30の下流側端縁32が、スロートSよりも上流側に位置することで、動翼20の翼背側においても、中間連結部材30の下流側端縁32を加速域に存在させることができる。これによって、中間連結部材30の下流に発達する渦の発達を抑制することができる。さらに、図5に示すような、一般的な中間連結部材30aの下流の翼背側に形成される高損失領域44を抑制することができる。』と説明されておりますように、引用文献1では、中間連結部材30の下流側端縁32が、スロートSよりも上流側に位置するように配置することが高損失領域44を抑制するために必須となりますので、引用文献2-4を含む公知技術を引用文献1に組み合わせて引用文献1を本願発明の上記特徴を有するように変形することは引用文献1の当業者にとって困難であったと思料いたします。
引用文献1の図6、7に示されておりますように、引用文献1の背側連結部材22は、短い翼弦長を有するように設計されます。
このように、引用文献1を本願発明の上記特徴を有するように変更を加えることには阻害要因が存在し、本願の全ての請求項にかかる発明は、引用文献1-4によって容易に想到し難いと考えられ、本願は上記理由2には該当しないものであると思料いたします。」
上記主張について検討する。
引用文献1の段落【0035】の上記記載は、中間連結部材30の下流側端縁32と、スロートSの位置関係を述べているだけであって、中間連結部材30や背側連結部材22の外形を特定するものではないから、引用発明において、背側連結部材22(本願発明における「第1の部分スパンシュラウド」に相当。)を、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の翼弦長に沿った断面を有するものとすることを阻害するものではない。
また、引用文献1には「図6および図7には、コード長BDがコード長ACよりも長くなるように、背側連結部材22および腹側連結部材24を形成した場合における、動翼面との境界面における断面形状の一例を示している。」(段落【0039】)、「背側連結部材22および腹側連結部材24の当接面の形状は、同じ形状に構成される。」(段落【0038】)との記載があり、図6、7に示されているように、引用文献1の背側連結部材22は腹側連結部材24よりも動翼面との境界面において短い翼弦長を有するように設計されているとしても、両者の当接面の形状は同じ形状に構成されるのであるから、引用発明において周知技術を参酌するときに、互いに係合するほぼZ形状の面を有するものとすることを阻害するものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

4 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 特許法第36条第6項第2号についての判断
本願の特許請求の範囲の請求項1には「第1の部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有する」との記載がある(上記「第3 本願発明」を参照。)。しかしながら、「表2」そのものは請求項1には記載されていないから、請求項1の記載は明確でない。
仮に、「表2」が本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0025】に記載された「表2」を示唆するとしても、「翼弦長に沿った断面」とは(第1の部分スパンシュラウドを)どのように切った断面なのか(第1の部分スパンシュラウドは、隣接する動翼に向かって延びているが、そのうちのどの位置で切った断面なのか、また、直線的に切った断面なのか、動翼の面に沿った方向に切った断面なのか等)が不明であるから、第1の部分スパンシュラウドの外形が明確でない。
さらに、「X-Y座標」について、X軸、Y軸及び原点をどのようにとるのか、表2に記載される数字がどのような技術上の意味を持つのかが意見書の主張を参酌しても明確でない。
したがって、本願の特許請求の範囲の請求項1の「第1の部分スパンシュラウドが、表2に記載されるX-Y座標によって規定される外形の前記翼弦長に沿った断面を有する」との発明特定事項が明確でない。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-15 
結審通知日 2019-10-18 
審決日 2019-10-29 
出願番号 特願2013-243435(P2013-243435)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F01D)
P 1 8・ 121- WZ (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西中村 健一  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 鈴木 充
金澤 俊郎
発明の名称 涙型の部分スパンシュラウド  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  

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