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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1360835
審判番号 不服2018-16995  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-20 
確定日 2020-03-09 
事件の表示 特願2015-521989「少なくとも1つの吸湿性で流動可能な固形物質を含む製品のための包装」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月23日国際公開、WO2014/012633、平成27年 8月3日国内公表、特表2015-521981〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成25年7月5日((パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年7月17日 (EP)欧州特許庁、2012年7月17日 (US)アメリカ合衆国、2012年8月10日 (FR)フランス、2012年8月14日 (DE)ドイツ、2012年8月15日 (US)アメリカ合衆国、2012年8月21日 (ES)スペイン、2012年8月27日 (PL)ポーランド、2012年8月30日 (AT)オーストリア))、及び、(優先権主張 平成24年10月4日 (JP)日本国))を国際出願日とする出願であって、以降の手続は次のとおりである。
平成28年7月4日 :手続補正書の提出
平成28年12月1日 :上申書の提出
平成28年12月1日 :手続補正書の提出
平成29年4月27日付け :拒絶理由通知
平成29年8月8日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年12月5日付け :拒絶理由通知<最後>
平成30年6月8日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年8月14日付け :補正の却下の決定(平成30年6月8日提出の手続補正書でした手続補正を却下)
平成30年8月14日付け :拒絶査定
平成30年12月20日 :本件審判請求書提出、同時に手続補正書の提出
平成31年7月5日 :上申書提出

第2 平成30年12月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月20日提出の手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
上記平成30年12月20日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、上記平成29年8月8日提出の手続補正書により補正された本願特許請求の範囲の請求項1について補正するもので、本件補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。

(1)本件補正前
「【請求項1】
少なくとも1つの吸湿性流動可能固形物質を含む製品(3)用の包装(1)であって、該包装(1)は、製品(3)を収容するための透湿性材料で出来た封止可能な製品袋(2)と、該製品袋(2)を取り囲む輸送容器(4)と、該製品袋(2)の外側であって輸送容器(4)の内側に位置する吸湿剤(14)とを含み、
輸送容器(4)内には、製品(3)を収容した製品袋(2)を取り囲む、輸送容器から取り外し可能かつ輸送容器に後から挿入可能であって、防湿性材料製の、吸湿剤被覆体(10)が存在し、吸湿剤(14)は、吸湿剤被覆体(10)の製品袋(2)に面する内側(11)上に固定されることを特徴とする、前記包装(1)。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
少なくとも1つの吸湿性流動可能固形物質を含む製品(3)の輸送/貯蔵用の包装(1)であって、該包装(1)は、製品(3)を収容するための透湿性材料で出来た封止可能な製品袋(2)と、該製品袋(2)を取り囲む開閉可能な輸送容器(4)と、吸湿剤被覆体(10)と、該製品袋(2)の外側であって前記吸湿剤被覆体(10)の内側に位置する吸湿剤(14)とを含み、
前記吸湿剤被覆体(10)は、輸送容器から取り外し可能かつ輸送容器に後から挿入可能であって、防湿性材料製であり、製品(3)を収容した製品袋(2)を取り囲み輸送容器(4)内に配置されており、吸湿剤(14)は、前記吸湿剤被覆体(10)の製品袋(2)に面する内側(11)上に固定されることを特徴とする、前記包装(1)。」

2.補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1の「製品(3)用の包装(1)」について、「製品(3)の輸送/貯蔵用の包装(1)」と、「製品(3)」に関する「包装(1)」の用途の限定を付加するものであり、
本件補正前の請求項1の「輸送容器(4)」について、「開閉可能な輸送容器(4)」と限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本願明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであることも明らかである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるもので、上記1.(2)に示したとおりのものである。

(2)引用文献
(2-1)引用文献1
原査定の拒絶の理由、すなわち平成29年12月5日付け拒絶理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2002-127293号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水分、微生物、紫外線等の影響で品質劣化を起こし易い物質を保存するための包装用材、容器、および該容器を用いる保存方法に関する。」

イ.「【0002】
【従来の技術】医薬品原料となるアミノ酸や核酸関連物質を保存したり、製品として出荷したりする場合、該物質は、まず、プラスチック製の内袋に詰められ、次に、紙製ドラム缶や金属缶などの丈夫な外装容器に詰められる。・・・
【0003】しかしながら、従来のフィルムを包装用材とした内装袋を使用する場合、該包装用材の層間を透過してくる水分を防止する機能(以下、防湿効果という)が十分でなく、吸湿し易い物質を保護するためには乾燥剤等の補助資材を多量に使用する必要があった。」

ウ.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水分、紫外線、微生物等の影響で品質劣化を起こし易い物質を、品質劣化を起こすことなく保存でき、かつ乾燥剤等の補助剤の使用量を従来に比べて低減できる包装用材、該包装用材を有する包装容器、および該包装容器を用いる保存方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、プラスチックフィルムにアルミニウムや酸化アルミナや酸化ケイ素を蒸着した既知の包装用材を2枚以上貼り合わせることにより、該包装用材を1枚使用した時に比べて透湿度を顕著に低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

エ.「【0016】このようにして得られる本発明のフィルムは固体または粉体を包装するための包装用材(以下、本発明の包装用材と略す)として使用することができる。このようにして得られる本発明のフィルムは、低い透湿度を有しているので低透過性包装用材として利用することができる。特に、後述の包装容器に使用する場合は、該本発明のフィルムの透湿度は1.0g/m^(2)・日以下であることが好ましく、0.2g/m^(2)・日以下がさらに好ましい。なお、フィルムの透湿度の測定は、例えば、最新ラミネート加工便覧、1989年、加工技術研究会発行に記載されているような公知の方法で行うことが出来る。
(2)包装容器
本発明に用いられる包装容器は、包装の対象となる物質を直接包装するための個装袋、該個装袋を包装するための内装袋、および該内装袋を収容するための外装からなる。本発明の包装容器の垂直方向の断面の概略図を第5図に示した。
【0017】該図中、aは包装の対象となる物質(図中、pで示す)を直接包装するための個装袋を示し、bは内装袋を示し、cは外装を示す。該個装袋と該内装袋の間には、後述するように、乾燥剤(該図中、dで示す)が挿入されていてもよい。また、該内装袋は、上記(1)で得られる、本発明の包装用材からなる袋を使用する。本発明で包装の対象となる物質(以下、被包装物質と略す)は、いずれの物質でもよいが、固体または粉体が好ましい。該被包装物質が、水分、微生物、紫外線等の影響により性状または品質に変化を起こす物質である場合は、本発明の包装容器または包装方法を用いて保存することにより、これらの要因により当該物質の性状または品質に変化を起こすことなく長期間保存することができる。
【0018】該水分、微生物、紫外線等の影響により性状または品質に変化を起こす物質としては、例えば、食品、食品添加物、医薬品、医薬品原料、化粧品原料、アミノ酸、抗生物質および核酸関連物質等の物質をあげることができる。
<イ>個装袋、内装袋
本発明において個装袋とは被包装物質を包む袋で、例えばプラスチックフィルムからなる。プラスチックフィルムは、いずれのプラスチックフィルムでもよいが、ポリエチレンフィルムが好ましく用いられる。
【0019】上記の個装袋は、以下に述べるように、被包装物質を包装する際の乾燥剤使用の有無によって異なる透湿度のフィルムを使用する。すなわち、乾燥剤を使用しない場合には、該個装袋用包装用材には、透湿度の低いフィルム、例えば10g/m^(2)・日以下の透湿度を有するフィルムを用いることが好ましい。このようなフィルムとしては、例えば共押出し3層構造ポリエチレンフィルム(丸東化研社製)をあげることができる。乾燥剤を使用する場合には、個装用包装用材は透湿度の高いフィルム、例えば2,000g/m^(2)・日以上の透湿度を有する高透過性フィルムを用いることが好ましい。このようなフィルムとしては、例えばタイベック(デュポン社製)をあげることができる。
【0020】内装袋は、上記(1)の本発明の包装用材を製袋した袋を用いる。この場合、該包装用材の透湿度は少なくとも1.0g/m^(2)・日以下であることが好ましく、0.2g/m^(2)・日以下であることがさらに好ましい。上記個装袋と内装袋は、別々に用いてもよいが、あらかじめ個装袋と内装袋の一部を内側に固定して使用してもよい。
<ロ>乾燥剤
本発明における個装袋が、高透湿性を有する包装用材からなる場合は、個装袋と内装袋の間に乾燥剤を挿入する。該乾燥剤としては、一般的に使用されているいずれの乾燥剤も使用することができる。具体的にはシリカゲル、塩化カルシウム、ソーダ石灰、硫酸マグネシウム、酸化バリウム、シリカアルミナ系乾燥剤等を用いることができる。
【0021】本発明の包装用材を内装袋に使用する場合、使用する乾燥剤の量は、従来のプラスチックフィルムを1枚使用したフィルムを用いたときに比べて低減することができる。本発明における個装袋が、透湿度10g/m2・日以下の透湿度を有するような低透湿性の包装用材からなる場合は、乾燥剤を使用しなくてもよい。
<ニ>外装
外装は、内装を包むものであればいずれでもよい。外装に使用できる容器としては、例えば、紙製ドラム缶、段ボール箱、あるいは金属缶などの容器、または、紙製あるいはプラスチック製の袋などを用いることができる。
【0022】上記包装方法により包装された対象物を開封することなく通常の環境に保持することで、被包装物質をその性状や品質を劣化させることなく、長期間保存することができる。また、本発明の包装容器は、外装から被包装物質を取り出してクリーンルームに保存する場合などに、紫外線等による被包装物質の品質劣化を防止することができる。
(2)包装方法
本発明の包装方法を以下に説明する。
【0023】上記(1)で得られる個装袋で被包装物質を包装し、個装袋の口を輪ゴムなどで結束する。続いて該個装袋を内装袋で包装し、内装袋の口を輪ゴムなどで結束する。最後に該内装袋を外装に収納する。上記(1)で述べたように、個装袋が高透過性フィルムからなる場合は、個装袋を内装袋で包装する際に、乾燥剤を個装袋と内装袋の間に入れる。あらかじめ個装袋の一部を内装袋に固定してある場合は、個装袋に被包装物質を入れ、個装袋の口を結束し、しかる後に内装袋の口を結束する。この場合、個装袋を内装袋で包装する手間を省略できるので作業効率を向上させることができる。
【0024】また、乾燥剤が必要な場合は、あらかじめ個装袋と内装袋の間に乾燥剤を入れておくことにより、作業効率を向上させることができる。
(3)発明の効果の測定
本発明の包装容器は、従来の1枚のフィルムを使用した包装容器と比較して、被包装物質に対し、顕著な防湿効果を有する。当該効果は、本発明の包装容器で被包装物質を長期間保存し、保存前と保存後の乾燥減量を測定することで調べることができる。乾燥減量は、被包装物質を乾燥機で乾燥させて、乾燥前と乾燥後の重量の差を測定することで算出する。乾燥減量は小さいほど、被包装物質が保存中に吸湿していなかったことを示す。
【0025】また、当該防湿効果は、被包装物質を長期間保存する前後の、個装袋内の相対湿度(以下、RHと略す)を湿度計等で測定することにより調べることができる。相対湿度を測定することにより、カビなどの微生物の増殖の有無を予測することができる。RHが60%以下である場合は、一般に微生物は増殖しなくなるので、被包装物を長期間保存した場合に微生物の増殖による品質の低下を防ぐことができる。また、防湿効果は、長期保存後の被包装物質の品質を調べることによっても調べることができる。品質の指標としては、微生物の増殖の有無、被包装物が粉体である場合は、該粉体の固化の有無等をあげることができる。」

オ.「【図5】 第5図は、本発明の包装容器の垂直方向の断面の概略図である。aは包装の対象となる物質(図中p)を直接包装するための個装袋、bは内装袋、cは外装、dは乾燥剤を示す。」



カ.引用文献1の「本発明における個装袋が、高透湿性を有する包装用材からなる場合は、個装袋と内装袋の間に乾燥剤を挿入する」(上記摘記事項エ.の段落【0020】)という記載から、「乾燥剤」が「個装袋と内装袋の間に乾燥剤を挿入」されるものにおいては、「個装袋」は「高透湿性を有する包装用材」を用いることができるといえる。

キ.引用文献1の「このようにして得られる本発明のフィルムは、低い透湿度を有しているので低透過性包装用材として利用することができる。特に、後述の包装容器に使用する場合は、該本発明のフィルムの透湿度は1.0g/m^(2)・日以下であることが好ましく、0.2g/m^(2)・日以下がさらに好ましい」(上記摘記事項エ.の段落【0016】)という記載から、引用文献1には、「低透過性包装用材」の透過度として、「1.0g/m^(2)・日以下であることが好ましく、0.2g/m^(2)・日以下がさらに好ましい」という記載がある。一方、上記摘記事項エ.の段落【0020】には、「内装袋は、上記(1)の本発明の包装用材を製袋した袋を用いる。この場合、該包装用材の透湿度は少なくとも1.0g/m^(2)・日以下であることが好ましく、0.2g/m^(2)・日以下であることがさらに好ましい。」という記載があるから、引用文献1に記載された「内装袋b」は、湿気を透過しにくいといえるので、「透湿度の低い材料製」である。

ク.引用文献1の「本発明の包装容器は、外装から被包装物質を取り出してクリーンルームに保存する場合などに、紫外線等による被包装物質の品質劣化を防止することができる。」(摘記事項エ.の段落【0022】)及び「最後に該内装袋を外装に収納する。」(摘記事項エ.の段落【0023】)の記載から、引用文献1に記載された「内装袋b」は、「外装c」から取り出し可能かつ「外装c」に後から挿入可能であるといえる。

上記摘記事項ア.?エ.、オ.の図示、及び、認定事項カ.?ク.から、引用文献1には、次の、引用発明が記載されている。

「水分の影響により性状または品質に変化を起こす粉体物質である被包装物質pの製品としての出荷や長期保存のための包装であって、該包装は、被包装物質pを収容するための透湿度の高いフィルムで出来た口を結束できる個装袋aと、該個装袋aを取り囲む開閉可能な外装cと、内装袋bと、該個装袋aの外側であって前記内装袋bの内側に位置する乾燥剤dとを含み、
前記内装袋bは、外装cから取り外し可能かつ外装cに後から挿入可能であって、透湿度の低い材料製であり、被包装物質pを収容した個装袋aを取り囲み外装c内に配置されている、前記包装。」

(2-2)引用文献2
上記原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平02-119566号(実開平04-74673号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「本考案は容器内に乾燥剤収納袋を封入して内容物の劣化防止を図った乾燥剤入り容器に関する。」(1ページ16?17行)
イ.「即ち、本考案は、底壁5周縁より周壁6を立設してなる容器体2と、該容器体2の上端面開口を閉塞するとともに、その周縁を容器体周壁6上面に気密に且つ剥離可能に固着してなる蓋板3とからなり、上記容器周壁6の内面の一端部より所定間隔をあけて相対向する一対の係止突起8を突設し、各突起8と容器体周壁6内面間に両端を各々挟持させて乾燥剤収納袋4を係止させてなることを特徴とする乾燥剤入り容器を要旨とするものである。
「作用」
容器体周壁6内面の一端より所定間隔をもって相対向する一対の係止突起8を突設して、各突起8と容器体周壁6内面間に乾燥剤収納袋4の両端を挟持させたので、乾燥剤収納袋4が容器体2内の一端に常時固定され、内容物との混同や、邪魔になるといった不都合を生じる虞がない。」(2ページ15行?3ページ10行)
ウ.「第1図及ぶ(当審注:「及び」の誤記である。)第2図は本考案容器の一実施例を示し、図中1は乾燥剤入り容器を示す。該容器1は、容器体2と、蓋板3と、乾燥剤収納袋4とから構成している。
容器体2は、合成樹脂等で形成し、円形の底壁5周縁より円筒状の周壁6を立設し、該周壁6上端縁より外向きフランジ7を延設して構成している。又、周壁6前部に所定間隔を開けて相対向する一対の係止突起8を突設している。この係止突起8は、周壁6を内方へ所定形状に凹ませることにより形成しているが、もとよりこれに限られず、通常の周壁内面より内方へ突設させたものであってもよい。」(3ページ14行?4ページ6行)
エ.「乾燥剤収納袋4は、通気性を有する材質で構成した袋の内部に乾燥剤を収納した一般的なものであり、但しその形状を両端が上記係止突起8と容器体周壁6間に挿入可能な厚さに構成している。この様に構成した収納袋4を、その両端を上記各係止突起8と容器体周壁6内面間に挟持させて容器体2内の一端に固定する如く構成している。」(4ページ13?19行)
オ.第1図及び第2図


以上の摘記事項ア.?エ.、及び、オ.の図示から、引用文献2には、次の引用文献2事項が記載されている。

「吸湿により劣化する内容物を封入する容器において、当該内容物を取り囲む囲む容器体2のうち、内容物に対する面に、乾燥剤収納袋を固定する。」

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比すると、その構成及び作用から、補正発明の「被包装物質p」及び「包装」は、補正発明の「製品(3)」及び「包装(1)」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「透湿度の高いフィルムで出来た口を結束できる個装袋a」、「透湿度の低い材料製」の「内装袋b」、「外装c」、「乾燥剤d」は、補正発明の「透湿性材料で出来た封止可能な製品袋(2)」、「防湿性材料製」の「吸湿剤被覆体(10)」、「輸送容器(4)」、「吸湿剤(14)」に、それぞれ相当する。
引用発明の「被包装物質p」は、「水分の影響により性状または品質に変化を起こす粉体物質」であり、「当該防湿効果は、被包装物質を長期間保存する前後の、個装袋内の相対湿度・・・を湿度計等で測定することにより調べることができる。」(摘記事項エの段落【0025】)という記載から、「被包装物質p」は、「吸湿性」であるといえる。そして、「被包装物質p」は、「粉体物質」であるから、「流動可能固形物質」であるといえる。そうすると、引用発明の「水分の影響により性状または品質に変化を起こす粉体物質である被包装物質p」は、補正発明の「少なくとも1つの吸湿性流動可能固形物質を含む製品(3)」に相当する。
製品としての出荷は、製品を製造や保管等されていた場所から、需要地へ「輸送」することを伴うから、補正発明の「製品としての出荷や長期保存」は、「輸送/貯蔵」に相当する。

すると、補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。

<一致点A>
「少なくとも1つの吸湿性流動可能固形物質を含む製品(3)の輸送/貯蔵用の包装(1)であって、該包装(1)は、製品(3)を収容するための透湿性材料で出来た封止可能な製品袋(2)と、該製品袋(2)を取り囲む開閉可能な輸送容器(4)と、吸湿剤被覆体(10)と、該製品袋(2)の外側であって前記吸湿剤被覆体(10)の内側に位置する吸湿剤(14)とを含み、
前記吸湿剤被覆体(10)は、輸送容器から取り外し可能かつ輸送容器に後から挿入可能であって、防湿性材料製であり、製品(3)を収容した製品袋(2)を取り囲み輸送容器(4)内に配置されている、前記包装(1)。」

<相違点A>
本件発明の「吸湿剤(14)」は、「該製品袋(2)の外側であって前記吸湿剤被覆体(10)の内側に位置」し、「前記吸湿剤被覆体(10)の製品袋(2)に面する内側(11)上に固定される」のに対し、引用発明の「乾燥剤d」は、「個装袋a」の外側であって、「内装袋b」の内側に位置するものではあるものの、「内装袋b」の「個装袋a」に面する内側上に固定されるものであるか明らかではない点。

(4)判断
ア.相違点Aについて
引用発明の乾燥剤dは、透湿度の高いフィルムを介して個装袋a内の被包装物質pから湿気を除去するものであるから、個装袋a内から放出される湿気を除去することが容易な位置に、乾燥剤dを位置せしめ、かつ、そのような好適な位置から乾燥剤が動かないように固定することの動機付けが、引用発明には存在するといえる。その際、引用発明の乾燥剤dは、個装袋aの外側であって、内装袋bの内側に位置するから、固定する位置としては、個装袋aの内装袋bに面する位置か、内装袋bの個装袋aに面する位置のいずれかが想定される。そして、個装袋aは、「透湿度の高いフィルムで出来た」ものであり、内装袋bは、「透湿度の低い材料製」であるから、乾燥剤dを、「透湿度の高いフィルム」に固定すると、当該「フィルム」における湿気が通る流路を乾燥剤dが塞ぐこととなる。そのため、内側に位置する個装袋aの側に固定することは、好ましくないと当業者であれば認識し得るものである。また、乾燥剤を外側の壁体の、内側に面した位置に固定することは、原査定の理由に引用した上記引用文献2事項である。さらに、原審の平成30年8月14日付け補正の却下の決定の理由に引用された特開2003-187967号公報(特に【図11】、【図12】に図示された「乾燥剤128」について記載された段落【0013】に着目されたい。)のほか、特開2009-249013号公報(特に【図1】(b)に図示された「乾燥剤50」について記載された段落【0029】?【0030】に着目されたい。)、米国特許第6,308,826号明細書(特に図1A?図1Dの図示と、当該図示に関連した4欄49?5欄35行に着目されたい。)にも記載されているように、乾燥剤が所定の位置に留まるように、外側の壁体に固定することは、通常、行うことである。
そうすると、引用発明において、乾燥剤dが個装袋aの透湿性を妨げないようにすべく、乾燥剤dの固定位置として、外側の壁体にあたる内装袋bの側を選択して、上記<相違点A>に係る補正発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たものである。

イ.作用効果について
請求人は、補正発明は、上記<相違点A>に基いて、「既存の容器に使用でき、使い捨ても使いまわしもでき、且つ吸湿剤は製品との相対的位置が確実に保持される」(平成29年8月8日提出の意見書の第2.2-2、下線は当審で付した。)との格別な作用効果を奏する旨、主張している。
しかし、既存の容器を使用でき、使い捨ても使いまわしもできることは、引用発明のものも同様であり、製品との相対位置が保持されることも、上述のように乾燥剤を壁体に固定して動くことがないようにすることが引用文献2のほか、上記文献に記載されているから、上記「吸湿剤は製品との相対的位置が確実に保持される」との補正発明の作用効果は、当業者が予測し得る範囲内のものである。

ウ.小括
よって、補正発明は、引用発明及び引用文献2事項の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年8月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]の1.(1)に示したとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(平成29年12月5日付け拒絶理由<最後>)の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができない、というものである。

3.引用文献
引用文献1には、上記第2の2.(2-1)に示した摘記事項ア.?エ.、オ.の図示、及び、認定事項カ.?ク.があり、上記引用発明が記載されている。
引用文献2には、上記第2の2.(2-2)に示した摘記事項ア.?エ.、オ.の図示があり、上記引用文献2事項が記載されている。

4.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は次の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点B>
「少なくとも1つの吸湿性流動可能固形物質を含む製品(3)用の包装(1)であって、該包装(1)は、製品(3)を収容するための透湿性材料で出来た封止可能な製品袋(2)と、該製品袋(2)を取り囲む輸送容器(4)と、該製品袋(2)の外側であって輸送容器(4)の内側に位置する吸湿剤(14)とを含み、
輸送容器(4)内には、製品(3)を収容した製品袋(2)を取り囲む、輸送容器から取り外し可能かつ輸送容器に後から挿入可能であって、防湿性材料製の、吸湿剤被覆体(10)が存在する、前記包装(1)」である点。

<相違点B>
本願発明の「吸湿剤(14)」は、「吸湿剤被覆体(10)の製品袋(2)に面する内側(11)上に固定される」ものであるのに対し、引用発明の「乾燥剤d」は、「個装袋a」の外側であって、「内装袋b」の内側に位置するものではあるものの、「内装袋b」の「個装袋a」に面する内側上に固定されるものであるか明らかではない点。

(2)<相違点B>についての判断
上記第2で述べたように、引用発明の「乾燥剤d」を、「内装袋b」の「個装袋a」に面する内側上に固定されるものとすることは、引用発明及び引用文献2事項に基いて、当業者が容易になし得た事項である。

(3)小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおりであるので、本願発明は、引用発明及び引用文献2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-16 
結審通知日 2019-10-17 
審決日 2019-10-29 
出願番号 特願2015-521989(P2015-521989)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 久保 克彦
石井 孝明
発明の名称 少なくとも1つの吸湿性で流動可能な固形物質を含む製品のための包装  
代理人 葛和 清司  

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