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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1360882
審判番号 不服2019-1682  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-06 
確定日 2020-03-13 
事件の表示 特願2015- 45172「情報処理装置、及び情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 8日出願公開、特開2016-163980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月6日の出願であって、平成30年7月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年10月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 平成31年2月6日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容について
本件補正は、特許請求の範囲の記載について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成30年9月6日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へ補正することを含むものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成30年9月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「情報の入出力に関する複数の機能部と、
前記複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者にサービスを提供するメニュー画面を、取得した取得情報に基づく認証結果に応じて表示部に表示させるサービス制御部と、
前記取得情報を携帯機器から取得する外部通信部と
を備え、
前記取得情報には、前記サービスを識別するサービス識別情報が含まれ、
前記サービス制御部は、
前記サービス識別情報に対応する前記サービスを前記メニュー画面に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「情報の入出力に関する複数の機能部と、
前記複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者にサービスを提供するメニュー画面を、取得した取得情報に基づく認証結果に応じて表示部に表示させるサービス制御部と、
前記取得情報を携帯機器から取得する外部通信部と
を備え、
前記取得情報には、前記サービスを識別するサービス識別情報が含まれ、
前記サービス制御部は、
前記サービス識別情報に対応する前記サービスを前記メニュー画面に表示させ、
前記メニュー画面に表示された操作を受け付ける選択肢の選択によって、前記サービスを提供し、
前記選択肢には、前記サービスの名称、前記サービスの画像、及び前記サービスの内容が表示されている
ことを特徴とする情報処理装置。」

2 補正の適否(新規事項について)
(1)本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記サービス識別情報に対応する前記サービスを前記メニュー画面に表示させる」という記載を、「前記サービス識別情報に対応する前記サービスを前記メニュー画面に表示させ、前記メニュー画面に表示された操作を受け付ける選択肢の選択によって、前記サービスを提供し、前記選択肢には、前記サービスの名称、前記サービスの画像、及び前記サービスの内容が表示されている」と補正すること(以下、「補正事項」という。)を含むものである。

(2)本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の記載
上記補正事項に関して、当初明細書等には以下の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同じ。)

ア 「【0070】
ステップS110において、サービス制御部42は、提供可能な貸出サービスのメニュー画面を表示する。すなわち、サービス制御部42は、提供可能な貸出サービスを貸出サービス処理部44に実行させる。サービス制御部42は、例えば、提供可能な貸出サービスのサービス識別情報に対応する「プログラムID」を、管理サーバ装置50のサービス記憶部521から取得する。そして、貸出サービス処理部44は、プログラム記憶部31に記憶されているアプリケーションプログラムのうち、取得した「プログラムID」に対応するアプリケーションプログラムを実行させて、貸出サービスを実行させる。貸出サービス処理部44は、アプリケーションプログラムに従って、当該貸出サービスのメニュー画面を表示部22に表示させる。
なお、提供可能な貸出サービスが複数ある場合には、サービス制御部42は、複数の提供可能な貸出サービスのうちから、利用者に提供する貸出サービスを選択するための選択メニュー画面を表示部22に表示させるようにしてもよい。」

イ 「【0086】
また、図11(b)は、画像形成装置10における貸出サービスを提供するメニュー画面(画像G2)の一例を示している。画像形成装置10は、図8に示すような認証処理を実行した後に、図8のステップS110において、画像G2に示すようなメニュー画面を表示部22に表示する。なお、この図に示す例では、利用者が、契約している貸出サーバビスが、コピー”、“写真サービス”、“プリントサービス”、及び“スキャンサービス”であり、画像形成装置10は、画像G2に示すように、提供可能な貸出サービスのみを表示部22に表示する。
【0087】
また、図11(c)は、画像形成装置10における貸出サービスを提供するメニュー画面(画像G3)の別の一例を示している。この場合、画像形成装置10は、貸出サービスとともに、通常サービスを、異なる表示形態(例えば、表示を薄くするなど)により表示させる。このように、画像形成装置10のサービス制御部42は、取得情報に基づく認証を必要とせずに提供されるサービスうち、貸出サービスによって提供されないサービスを、貸出サービスとは異なる表示形態でメニュー画面に表示させる。」

ウ 「【0095】
また、本実施形態では、サービス制御部42は、認証結果に応じて、提供可能な貸出サービスが複数存在する場合に、当該提供可能な貸出サービスを示す表示情報を表示部22に表示させる。
これにより、利用者は、提供可能な貸出サービスが複数存在する場合に、提供可能な貸出サービスを認識することができ、例えば、複数の提供可能な貸出サービスのうちから、貸出サービスを選択することができる。」

エ 「【0101】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による画像形成装置10(情報処理装置)及び情報処理システム1について説明する。
上述した第1の実施形態では、利用者又は携帯機器3から取得する取得情報に、利用者識別情報が含まれる例を説明したが、本実施形態では、取得情報に、利用者識別情報及びサービス識別情報が含まれる場合の一例について説明する。
【0102】
本実施形態による情報処理システム1の構成は、図1?図7を参照して説明した第1の実施形態の構成と同様であるので、ここではその説明を省略する。
なお、本実施形態による画像形成装置10及び情報処理システム1は、サービス制御部42及び課金処理部45の処理が異なる点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態によるサービス制御部42は、取得情報に含まれる利用者識別情報及びサービス識別情報と一致する貸出利用者情報が利用者情報記憶部523に記憶されている場合に、当該貸出利用者情報に含まれるサービス識別情報に対応する貸出サービスを提供する。
また、サービス制御部42は、管理サーバ装置50の装置情報記憶部522に記憶されている装置情報に基づいて、取得情報に基づく認証結果に応じて提供する貸出サービスが、自装置において提供可能であるか否かを判定する。サービス制御部42は、当該貸出サービスが提供可能である場合に、当該貸出サービスを示す情報を表示部22に表示させる。また、サービス制御部42は、当該貸出サービスが提供可能でない場合に、装置情報記憶部522に記憶されている装置情報に基づいて、当該貸出サービスが提供可能な他装置を抽出し、抽出した他装置が設置されている設置場所に関する情報(例えば、コンビニチェーン名や店舗名)を表示部22に表示させる。
【0104】
また、本実施形態による課金処理部45は、サービス制御部42によって提供される貸出サービスと、当該貸出サービスを利用する契約者に対応する貸出料金情報を、管理サーバ装置50のサービス記憶部521から取得する。すなわち、課金処理部45は、例えば、携帯機器3又は利用者から取得した利用者識別情報、及びサービス制御部42によって提供される貸出サービスに対応する貸出料金情報を、サービス記憶部521から取得する。そして、課金処理部45は、取得した貸出料金情報に基づいて、当該貸出サービスの利用料金を利用者が契約者(利用者又はグループ)ごとに課金する。
【0105】
次に、図12及び図13を参照して、本実施形態による画像形成装置10及び情報処理システム1の動作について説明する。
図12は、本実施形態における貸出サービスの提供処理の一例を示すフローチャートである。
【0106】
この図において、ステップS301からステップS303の処理は、図8に示すステップS101からステップS103の処理と同様であるので、ここではその説明を省略する。なお、ステップS303において、制御部40は、外部通信部23に対する接続かある場合(ステップS303:YES)に、処理をステップS304に進める。また、制御部40は、外部通信部23に対する接続かない場合(ステップS303:NO)に、処理をステップS305に進める。
【0107】
ステップS304において、制御部40のサービス制御部42は、外部通信部23が利用者識別情報及びサービス識別情報を受信したか否かを判定する。サービス制御部42は、例えば、外部通信部23を介して取得情報を取得し、取得した取得情報に利用者識別情報及びサービス識別情報が含まれているか否かを判定する。サービス制御部42は、外部通信部23が利用者識別情報及びサービス識別情報を受信した場合(ステップS304:YES)に、処理をステップS307に進める。また、サービス制御部42は、外部通信部23が利用者識別情報及びサービス識別情報を受信していない場合(ステップS304:NO)に、処理をステップS301に戻す。
【0108】
また、ステップS305において、制御部40は、上述した図8に示すステップS101と同様に、操作部21が特殊操作を受け付けたか否かを判定する。制御部40は、操作部21が特殊操作を受け付けた場合(ステップS305:YES)に、処理をステップS306に進める。また、制御部40は、操作部21が特殊操作を受け付けていない場合(ステップS305:NO)に、処理をステップS301に戻す。
【0109】
ステップS306において、サービス制御部42は、操作部21が利用者識別情報及びサービス識別情報を受け付けたか否かを判定する。サービス制御部42は、操作部21が利用者識別情報及びサービス識別情報を受け付けた場合(ステップS306:YES)に、処理をステップS307に進める。また、サービス制御部42は、操作部21が利用者識別情報を受け付けていない場合(ステップS306:NO)に、処理をステップS301に戻す。
【0110】
ステップS307において、制御部40の認証処理部41は、取得した利用者識別情報及びサービス識別情報を含む認証情報を、管理サーバ装置50に送信する。
次に、認証処理部41は、認証結果を取得する(ステップS308)。すなわち、認証処理部41は、ネットワーク通信部18が管理サーバ装置50から受信した取得情報に基づく認証結果を取得する。なお、管理サーバ装置50は、受信した認証情報に含まれる利用者識別情報及びサービス識別情報と一致する貸出利用者情報が利用者情報記憶部523に記憶されている場合に、認証処理が成功したものとする認証結果を送信する。すなわち、本実施形態による認証処理部41は、認証結果として、利用者識別情報に対応する利用者に対して、指定されたサービス識別情報に対応する貸出サービスを提供可能であるか否かの結果を取得する。
【0111】
次に、サービス制御部42は、認証OK(認証成功)であるか否かを判定する(ステップS309)。サービス制御部42は、認証OKである場合(ステップS309:YES)に、処理をステップS311に進める。また、サービス制御部42は、認証OKでない場合(ステップS309:NO)に、処理をステップS310に進める。
【0112】
ステップS310において、サービス制御部42は、提供可能な貸出サービスがないことを表示する。すなわち、サービス制御部42は、例えば、提供可能な貸出サービスがないことを示すメッセージを表示部22に表示させる。サービス制御部42は、ステップS310の処理後に、処理をステップS301に戻す。
【0113】
また、ステップS311において、サービス制御部42は、貸出サービスが自装置で実行可能であるか否かを判定する。サービス制御部42は、例えば、管理サーバ装置50の装置情報記憶部522に記憶されている装置情報に基づいて、取得情報に基づく認証結果に応じて提供する貸出サービスが、自装置において提供可能であるか否かを判定する。すなわち、サービス制御部42は、例えば、装置情報記憶部522に記憶されている装置情報のうち、自装置の「装置ID」に対応する装置情報を検索し、当該装置情報に、指定された貸出サービスに対応するサービス識別情報が「可能サービスID」として記憶されているか否かを判定する。なお、装置情報記憶部522には、「コンビニチェーンID」及び「店舗ID」が記憶されており、サービス制御部42は、「コンビニチェーンID」及び「店舗ID」を含めて一致する場合(コンビニチェーンや店舗名が一致する場合)に、貸出サービスが自装置で実行可能であると判定してもよい。サービス制御部42は、貸出サービスが自装置で実行可能である場合(ステップS311:YES)に、処理をステップS312に進める。また、サービス制御部42は、貸出サービスが自装置で実行可能でない場合(ステップS311:NO)に、処理をステップS314に進める。
【0114】
ステップS312及びステップS313の処理は、図8に示すステップS110及びステップS112の処理と同様であるので、ここではその説明を省略する。」

オ 「【0120】
以上説明したように、本実施形態では、取得情報には、利用者識別情報(例えば、「利用者ID」又は「グループID」)と、さらにサービス識別情報(例えば、「貸出サービスID」)とが含まれる。本実施形態によるサービス制御部42は、取得情報に含まれる利用者識別情報及びサービス識別情報と一致する貸出利用者情報が利用者情報記憶部523に記憶されている場合に、当該貸出利用者情報に含まれるサービス識別情報に対応する貸出サービスを提供する。すなわち、サービス制御部42は、当該貸出利用者情報に含まれるサービス識別情報に対応する貸出サービスを提供するメニュー画面(例えば、下位のメニュー画面である操作画面など)を表示部22に表示させる。
これにより、本実施形態による画像形成装置10は、初期メニュー画面にない貸出サービスを予め指定(選択)して提供することができる。そのため、本実施形態による画像形成装置10は、さらに利便性を向上させることができる。」

カ 「【0165】
[第7の実施形態]
次に、図24を参照して、第7の実施形態による画像形成装置10(情報処理装置)及び情報処理システム1について説明する。
本実施形態では、貸出サービスの操作画面の表示に関する変形例について説明する。
また、本実施形態による情報処理システム1及び画像形成装置10の構成は、基本的に、第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0166】
なお、本実施形態における利用者情報記憶部523は、「表示内容」として、利用者に応じてサービスにおける選択枝を特定(制限)した操作画面に関する情報を記憶する。すなわち、利用者情報記憶部523に記憶されている「表示内容」は、例えば、利用者に応じた使用条件を予め設定した操作画面や、一部の操作画面を省略するなど、契約に応じて表示する操作画面を選択可能になっている。
【0167】
また、本実施形態におけるサービス制御部42は、複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供する際に、利用者に応じて機能部の機能を制限した操作画面を表示部22に表示させる。すなわち、サービス制御部42は、利用者に応じてサービスにおける選択枝を特定(制限)した操作画面を表示部22に表示させる。例えば、サービス制御部42は、複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者に貸し出す貸出サービスに対する操作画面を、取得した取得情報に基づく認証結果に応じて表示部22に表示させる。すなわち、サービス制御部42は、利用者情報記憶部523に記憶されている貸出利用者情報に基づいて、貸出サービスにおける利用者に応じた操作画面を表示部22に表示させる。
具体的に、例えば、サービス制御部42は、利用者を識別する利用者識別情報(「利用者ID/機器ID」)と、操作画面に関する情報(「表示内容」)とを対応付けて記憶する利用者情報記憶部523から、利用者に対応する操作画面に関する情報(「表示内容」)を取得する。サービス制御部42は、取得した当該情報(「表示内容」)に基づいて操作画面を表示部22に表示させる。
【0168】
次に、図24及び図25を参照して、本実施形態による画像形成装置10の貸出サービスの具体的な表示例について説明する。
図24及び図25は、本実施形態による画像形成装置10の操作画面の表示例を示す図である。
【0169】
図24において、画像G4は、貸出サービスのメニュー画面(操作画面の一例)を示す、画像G5は、画像G4において、“文章プリント”が利用者により指定された場合に移行するプリント設定の操作画面である。また、画像G6は、“フルカラー”とプリント部数が“2”に設定された操作画面である。
図24に示す例では、通常の操作画面では、画像G4→画像G5→画像G6の順に表示が移行するところを、利用者の契約により貸出サービスでは、“フルカラー”に機能が限定され、プリント部数が、“2”に限定されている。そのため、画像形成装置10のサービス制御部42は、画像G5の操作画面の表示を省略して、画像G4→画像G6に移行する操作画面を表示部22に表示させる。
【0170】
また、図25において、画像G7は、貸出サービスのメニュー画面(操作画面の一例)を示す、画像G8は、画像G7において、“画像プリント”が利用者により指定された場合に移行するプリントタイプの設定の操作画面である。また、画像G9は、画像G8の次の操作画面である設定画面である。また、画像G10は、プリント枚数が“L判 2枚”に設定された操作画面である。
図25に示す例では、通常の操作画面では、画像G7→画像G8→画像G9→画像G10の順に表示が移行するところを、利用者の契約により貸出サービスでは、プリント部数が“L判 2枚”に限定されている。そのため、画像形成装置10のサービス制御部42は、画像G9の操作画面の表示を省略して、画像G7→画像G8→画像G10に移行する操作画面を表示部22に表示させる。
【0171】
なお、画像形成装置10において、貸出サービスの単位(契約単位)で、予め設定可能な項目としては、例えば、カラーモード、両面設定、部数(プリント枚数)、画像プリントタイプ、印刷可能な回数の制限、操作画面(設定画面)のスキップ(省略)などである。
【0172】
このように、サービス制御部42は、例えば、利用者に応じた使用条件を予め設定した操作画面を表示部22に表示させる。すなわち、サービス制御部42は、利用者に応じて予め設定されている使用条件を示す設定値(例えば、カラーの指定や実行枚数などの設定値)を、操作画面に表示させる。また、サービス制御部42は、予め定められた設定手順に基づいて使用条件を設定する複数の操作画面のうち、予め設定されている使用条件を設定する操作画面の表示を省略させる。このようにすることにより、利用者は、契約通りの設定が操作画面に表示されているか否かを確認して実行するだけで容易に貸出サービスを実行することができる。」

(3)判断

ア 本件補正後の請求項1における「サービス」は、「サービス識別情報に対応する」ものであって、「前記メニュー画面に表示された操作を受け付ける選択肢の選択によって、前記サービス」が提供されるものであるから、本件補正後の請求項1の「メニュー画面」には、サービス識別情報に対応する「サービス」が複数存在し、当該複数のサービスが選択肢として表示されるものであるといえる。

イ これに対して、サービス識別情報に対応する「サービス」が複数存在し、当該複数のサービスが選択肢として表示されるメニュー画面の態様として、当初明細書等には、上記(2)イ、及び図11(b)、(c)に示されるように、サービスの名称、及びサービスの内容が表示されるものが記載されているにすぎず、そこには、サービスの名称、サービスの内容に加えて、「サービスの画像」を表示させることは記載されていない。

ウ 請求人は、審判請求書の請求の理由の【本発明が特許されるべき理由】の1.1)において、段落【0169】、【0170】、図24、及び図25等を上記補正の根拠としているが、図24に示された画像G4及び図25に示された画像G7は、「プリントメニュー」、「もどる」と示されているように、サービス識別情報に対応する所定のサービスが選択・指定された際に表示される下位のメニュー画面である操作画面であって、サービス識別情報に対応する「サービス」が複数存在し、当該複数のサービスが選択肢として表示されるメニュー画面であるとはいえない。

エ してみると、上記補正事項により特定されたところの「前記サービス識別情報に対応する前記サービスを前記メニュー画面に表示させ、前記メニュー画面に表示された操作を受け付ける選択肢の選択によって、前記サービスを提供」する際に、当該メニュー画面に表示される選択肢に、「サービスの名称」、「サービスの内容」に加えて、「サービスの画像」を表示させるものとする点は、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等の記載から自明の事項でもないので、当該点は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

オ したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成30年9月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?6、8に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、この出願の請求項7に係る発明は、下記の引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2008-104143号公報
引用文献2:特開2013-29956号公報
引用文献3:特開2012-221069号公報
引用文献4:特開2010-67111号公報
引用文献5:特開2013-257818号公報

3 引用文献
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に出願公開がされた引用文献1には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、方法、およびプログラムに関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなシステムにおいては、一台のMFPを複数のユーザが共同で使用する場合が多い。したがって、企業などにおいては、ユーザの立場や権限によってMFPから利用できるサービスを変えたいというニーズが高い。一方、所属団体は複数のMFPを保有するため、ユーザは、どのMFPからも常に同じサービスを利用できることが望まれる。
【0004】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、複数のMFPから構成される画像処理システムにおいて、ユーザごとにカスタマイズされたメニュー画面をMFPに提供することを目的とする。」

ウ 「【0020】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理システムについて図面を参照して説明する。
【0021】
本画像処理システムは、図1に示すように、認証サーバ2と、複数のサービスサーバ3と,複数のMFP1(Multi-Function Peripherals)とがネットワークを介して相互に接続された構成を有している。
【0022】
MFP1は、コピー、ファクシミリ、スキャナなどのMFPの基本機能に加えて、ドキュメント管理サービス機能を提供する、サービスサーバ3のクライアントとしての機能を備える。MFP1は、図2に示すように、制御部110,RAM(Random Access Memory)111,ROM(Read Only Memory)112、記憶部113、外部メディアI/F(InterFace)114、I/F(InterFace)115、通信部116、印刷部118、スキャナ部119を備える。
【0023】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されており、MFP1の全体の制御を行う。また、制御部110は、記憶部113等にあらかじめインストールされた所定のアプリケーションプログラム(例えば、スプレッドシート表示アプリケーション、文書表示アプリケーション等)を起動して、電子ファイルの操作・処理(例えば、参照、印刷等)を実行する。尚、制御部110の動作の詳細については、後述する。
【0024】
RAM(Random Access Memory)111は、制御部110が行う処理に必要なデータ(例えば、電子ファイルのデータ等)を格納する揮発性メモリである。
【0025】
ROM(Read Only Memory)112は、制御部110がMFP1全体の制御を行うためのプログラム等を格納する不揮発性メモリである。例えば、ROM112は、制御部110と認証サーバ2との間で電子ファイルを送受信するための制御を実行するプログラムを格納する。
【0026】
表示装置122は、ドットマトリクスタイプの液晶表示装置等から構成され、このMFP1の出力装置の1つを構成し、任意の文字、記号、数字、図形、操作メニュー等を表示する。表示装置122は、中サイズの画面サイズを有する。
タッチパネル123は、接触式の入力装置であり、表示装置122と積層され、タッチパネル式表示装置を構成する。
ICカードリーダ124は、ユーザ認証用のICカードに記憶されているユーザIDを読み取る接触式または非接触式の読み取り装置である。
I/F(InterFace)115は、制御部110からの表示データを表示装置122に供給し、タッチパネル123からの入力データを制御部110に供給し、ICカードリーダ124を介してICカードと制御部110との間の通信を仲介する。
また、I/F115は、キーボード、マウス等の入力装置とのインタフェース機能を含んでいてもよい。」

エ 「【0033】
MFP1の具体的な概観を図3に示す。MFP1は、給紙部、プリントエンジン等を備え印刷・複写ができる印刷部118、スキャナの機能を持つスキャナ部119、ファクシミリ・通信の機能を持つ通信部116(図示せず)を備えている。」

オ 「【0061】
以下、MFP1から本画像処理システムの機能を利用するフローを説明する。
図11は、MFP1が立ち上がってから、メインメニューを表示するまでのフローである。
【0062】
制御部110は、ユーザによって電源をONされると、ROMから所定の起動プログラムを読み出し、表示装置122に図10(a)に示すログイン画面を表示する。ログイン画面を表示すると、ユーザからの操作を待つ(ステップS1001)。本ログイン画面は、他の画面に移った状態で数分間何ら操作が入力されなかった場合や、各機能の終了を入力した場合にも表示される。
【0063】
ユーザは、ログイン情報(ユーザID、およびパスワード)を、タッチパネル123により入力するか、ユーザのICカードをICカードリーダ124に読み取らせて入力する。タッチパネル123により入力する場合、確認ボタンを押圧することで入力内容が決定される(ステップS1002)。入力内容が決定されると、制御部110は当該ログイン情報とを認証サーバ2に送信し、認証結果を待つ(ステップS1003)。なお、ユーザ認証のための情報入力方法はこれらに限られず、例えば生体認証などによっておこなってもよい。
【0064】
認証サーバ2は、送信されたユーザIDとパスワードとを用いて、認証を行う(ステップS1021)。認証がOKであれば(ステップS1021;Yes)、認証サーバ2はその旨の通知をMFP1に送信し、後述するメニュー画面の表示動作を行う。認証がNGであれば(ステップS1021;No)、その旨の通知をMFP1に送信する。
【0065】
認証がOKであるという通知を受けると、制御部110は、機種情報を認証サーバ2へと通信部116を通じて送信する(ステップS1005)。認証サーバ2の制御部210は、通信部217からMFP1の送信したログイン情報を受信する。そして、制御部210は受信したユーザIDに基づいて、ユーザに権限の与えられているサービスに関する情報を特定する。すなわち、制御部210は、会員情報DB2131からユーザIDに対応するサービスIDを取得する(ステップS1022)。制御部210は、このサービスIDに対応するサービスを、MFP1が提供できるか否かを、MFP1から受信した機種を特定する情報に基づいて判定する(ステップS1023)。具体的には、制御部210は、MFP1から受信した機種情報(機種ID)と、機種情報DB2134とを照らし合わせることで、当該MFPが、ユーザに権限が与えられているサービスを提供できるかを特定する。制御部210はMFP1から受信した機種に関する情報や、該MFP1にログインしているユーザのIDを、該ユーザがMFP1からログオフ(ログインしてから数分間何ら操作が入力されなかった場合や、ユーザが各機能の終了を入力した場合にログオフされる)するまでRAM211に保存し、必要に応じて読み出す。
【0066】
ユーザに対し利用権限が与えられているサービスを提供できると判断すると(ステップS1023;Yes)、制御部210は、画面DB2133を参照し、当該ユーザに対し権限が与えられているサービスに対応するパーツ画像データ(ボタンなど)と、それが選択された場合の動作(例えば特定のアプリケーションを起動するなど)に係る情報を取得する。制御部210はそれらパーツ画像を組み合わせて、一つのメニュー画面を作成する。さらに、制御部210は、MFP1から、ステップS1005で受信した機種情報に基づいて、メニュー画面をMFP1の表示装置122に適当なサイズに適合し、パーツ画像を操作した場合の動作情報とともにMFP1へと送信する(ステップS1024)。MFP1は、通信部116を通じて受信したメニュー画面データを表示装置122に表示する(ステップS1007)。
【0067】
一方、受信した機種情報から、認証サーバ2の制御部210が、MFP1はユーザに権限の与えられているサービスに対応していないと判断した場合、その旨をMFP1へと送信する(ステップS1023;No)。この場合、MFP1の制御部110は該当サービスを利用できない旨の警告を表示装置122に表示する。あるいは、該当サービスを選択できる部品(ボタンなど)については表示しないようにしてもよい(ステップS1006)。
尚、認証がNGであるとの通知を受けると(ステップS1021;No)、MFP1は、ログインが失敗した旨を表示装置122に表示し(ステップS1004)、再度ログイン情報の入力を促す画面を表示する(ステップS1001)。
【0068】
図10(b)および(c)は、ログインが成功した場合の、ユーザA(ユーザID0000Aをもつユーザ)、およびユーザB(ユーザID0000Bをもつユーザ)のメインメニューの例をそれぞれ示したものである。ユーザAは、図6の会員情報DB2131に示すように、サービスID:S0001、S0003、S0004、S0005、S1001、S1002、およびS2001を有するサービスを利用する権限が与えられているとする。認証サーバ2は、サービス情報DB2132を参照し、メインメニューから選択可能なサービスを特定する。即ち、「メニュー」欄に「メインメニュー」が登録されているサービスを取得する。メインメニューで選択可能であるサービスは、サービスID:S0001、S0003、S0004、S0005、を有するサービスである。よって、図10(b)に示すように、制御部210は、これらサービスIDに対応する、ドキュメント管理ボタン(A社用)、コピーボタン、ファックスボタン、スキャナボタンを有したメインメニューを作成し、MFP1へと送信する。そしてMFP1は受信したメニュー画面を表示装置122に表示する。
【0069】
一方、ユーザBはサービスID:S0003、S0004、S0005、によって特定されるサービスを利用する権限が与えられている。よって、図10(c)に示すように、MFP1のメインメニューには、サービスID:S0003、S0004、S0005、に対応するサービスを選択可能な、コピーボタン、ファックスボタン、スキャナボタンが表示される。」

カ 上記ウの【0026】より、表示データは、制御部110からI/F(InterFace)115を介して表示装置122に供給されるものであるところ、上記オの【0068】における、認証サーバ2から送信された「メニュー画面」は、MFP1で受信されて、制御部110が表示装置122に表示させているといえる。

キ 上記ウの【0021】、上記オの【0063】、【0065】、【0066】より、メニュー画面は、MFP1とネットワークを介して相互に接続された認証サーバ2において、ICカードリーダ124から読み取られたユーザIDに対応するサービスIDが特定され、当該特定されたサービスIDに対応するサービスを、MFP1が提供できるか否か判定され、当該サービスを提供できると判断された場合に、当該サービスのサービスIDに対応するパーツ画像を組み合わせて作成されたものであるといえる。

上記アないしキから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「給紙部、プリントエンジン等を備え印刷・複写ができる印刷部118、スキャナの機能を持つスキャナ部119、ファクシミリ・通信の機能を持つ通信部116と、
ドキュメント管理ボタン(A社用)、コピーボタン、ファックスボタン、スキャナボタンとして例示されるようなパーツ画像を組み合わせて作成されたメニュー画面を、表示装置122に表示させる制御部110と、
ユーザ認証用のICカードに記憶されているユーザIDを読み取るICカードリーダ124と、
を備え、
前記メニュー画面は、MFP1とネットワークを介して相互に接続された認証サーバ2において、前記ICカードリーダ124から読み取られたユーザIDに対応するサービスIDが特定され、当該特定されたサービスIDに対応するサービスを、MFP1が提供できるか否か判定され、当該サービスを提供できると判断された場合に、当該サービスのサービスIDに対応するパーツ画像を組み合わせて作成されたものである
MFP1。」

(2)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に出願公開がされた引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス提供装置、サービス提供システム、及びプログラムに関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、認証テーブルに登録されていない利用者にサービスを提供するサービス提供装置、サービス提供システム、及びプログラムを提供することである。」

ウ 「【0060】
図1に示されるサービス提供システムにおいて、画像形成装置1は、利用者に、コピー機能、プリント機能、スキャン機能、及びファックス機能のサービスを提供する装置である。本実施形態では、サービス提供装置として画像形成装置1を挙げるが、これに限定されることはなく、例えば、インターネットを介してサービスを提供するASP(Application Service Provider)のサーバや、そのサービスの提供を受けるための端末装置などを含むサービス提供システムであってもよい。なお、提供するサービスは、上記のように複数の種類に限定されることはなく、1種類であってもよい。」

エ 「【0065】
また、画像形成装置1は、課金処理部5と、識別情報取得部6と、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)70と、画像処理部71と、画像読取部72と、モデム72と、印刷処理部73とを含む。」

オ 「【0068】
識別情報取得部6は、利用者を特定するための識別情報を取得する識別情報取得手段であり、例えば、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)によって利用者のICカード60から識別情報を読み取るICカードリーダである。識別情報取得部6は、画像形成装置1の本体部とUSB(Universal Serial Bus)インターフェースなどを介して接続される。」

カ 「【0071】
利用者は、画像形成装置1を利用する場合、ICカード60を識別情報取得部6に翳して、装置1に識別番号を認識させる。もっとも、識別情報取得部6は、識別情報を取得する取得手段であれば、他の装置により構成してもよい。すなわち、例えば、利用者の磁気カード、または、スマートフォンや携帯電話機などの携帯端末装置から識別情報を読み取る装置を採用してもよい。」

4 対比・判断
(1)本願発明と引用発明1との対比

ア 引用発明1の「MFP1」は、本願発明の「情報処理装置」に相当する。

イ 本願発明の「情報の入出力に関する複数の機能部」に関し、本願明細書の【0019】では、原稿搬送部11、スキャナ部12、画像処理部13、給紙部15、画像形成部16、排紙部17、ネットワーク通信部18、及び操作パネル部20が例示されているところ、引用発明1の「給紙部、プリントエンジン等を備え印刷・複写ができる印刷部118、スキャナの機能を持つスキャナ部119、ファクシミリ・通信の機能を持つ通信部116」は、本願発明の「情報の入出力に関する複数の機能部」に相当する。

ウ 本願発明の「外部通信部」は、「前記取得情報を携帯機器から取得する」ものであるところ、引用発明1の「ICカードリーダ124」は、「ユーザ認証用のICカードに記憶されているユーザIDを読み取る」ものである。したがって、本願発明と引用発明1とは、「取得情報を取得する外部通信部」を備えるものである限りにおいて共通する。

エ 引用発明1の「メニュー画面」は、コピー、ファックス、スキャナ等に例示されるように、「印刷部118」「スキャナ部119」、「通信部116」のうちの少なくとも一部を使用したサービスを提供するものである。これに対し、本願発明の「前記複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者にサービスを提供するメニュー画面」は、「少なくとも一部を利用者にサービスを提供する」との記載が、日本語としての係り受けが明らかではなく不明瞭であるところ、本願明細書の【0174】、【0180】の記載を考慮すると、当該記載は、「複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を使用したサービスを利用者に提供するメニュー画面」を意味するものと認められる。よって、引用発明1の「ドキュメント管理ボタン(A社用)、コピーボタン、ファックスボタン、スキャナボタンとして例示されるようなパーツ画像を組み合わせて作成されたメニュー画面」は、本願発明の「前記複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者にサービスを提供するメニュー画面」に相当する。
そして、引用発明1の「制御部110」は、当該「メニュー画面」を、「表示装置122に表示させる」ものであるから、本願発明と引用発明1とは、「複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者にサービスを提供するメニュー画面を、表示部に表示させる制御部」を備えるものである限りにおいて共通する。

オ 本願発明の「サービス制御部」は、「前記サービス識別情報に対応する前記サービスを前記メニュー画面に表示させる」ものであるところ、引用発明1の「制御部110」は、「MFP1とネットワークを介して相互に接続された認証サーバ2において、前記ICカードリーダ124から読み取られたユーザIDに対応するサービスIDが特定され、当該特定されたサービスIDに対応するサービスを、MFP1が提供できるか否か判定され、当該サービスを提供できると判断された場合に、当該サービスのサービスIDに対応するパーツ画像を組み合わせて作成された」「メニュー画面」を表示させているものである。
したがって、本願発明と引用発明1とは、「制御部は、前記サービスを前記メニュー画面に表示させる」ものである限りにおいて共通する。

(2)一致点・相違点
上記(1)の対比を踏まえれば、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違するものである。

<一致点>
「情報の入出力に関する複数の機能部と、
前記複数の機能部のうちの予め選択された少なくとも一部を利用者にサービスを提供するメニュー画面を、表示部に表示させる制御部と、
前記取得情報を取得する外部通信部と
を備え、
前記制御部は、
前記サービスを前記メニュー画面に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。」

<相違点>
(相違点1)
外部通信部が取得する取得情報を、本願発明は、「携帯機器」から取得するのに対し、引用発明1では、「ICカード」から取得している点。

(相違点2)
本願発明は、「前記取得情報には、前記サービスを識別するサービス識別情報が含まれ」ており、メニュー画面に表示される「サービス」は、「前記サービス識別情報に対応」するものとなっているのに対し、引用発明1では、取得情報にはユーザIDが含まれ、当該ユーザIDに対応するサービスIDが認証サーバ2において特定されており、メニュー画面に表示されるサービスは、当該サービスIDに対応するものとなっている点。

(相違点3)
本願発明は、「サービス制御部」が、「取得した取得情報に基づく認証結果に応じて」メニュー画面を表示部に表示させているのに対し、引用発明1では、「制御部110」が、認証サーバ2において作成されたメニュー画面を表示部に表示させている点。

(3)判断
以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について
上記相違点1について検討すると、本願明細書の【0040】において、「外部通信部23を介して画像形成装置10に接続される携帯機器3は、例えば、NFCインターフェースを備えるスマートフォンなどの携帯電話、利用者を認証する情報を保持しているIC(Integrated Circuit)カード又はコンタクトレスICカードなどである。」と記載されているように、本願発明における「携帯機器」は、ICカードを包含すると認められるところ、引用発明1は、「ICカードリーダ124」が、「ICカード」から情報を取得しているものであるから、引用発明1の「ICカード」は、本願発明の「携帯機器」に含まれると認められる。よって、上記相違点1は実質的な相違点であるとはいえない。
また、仮に上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、上記3(2)にて摘記したように、引用文献2には、識別情報を取得する識別情報取得部6を備えた画像形成装置1において、前記識別情報取得部6は、利用者のICカード60から識別情報を読み取るICカードリーダであっても、スマートフォンや携帯電話機などの携帯端末装置から識別情報を読み取る装置を採用しても良いこと、すなわち、ICカードリーダと携帯端末装置から識別情報を読み取る装置とは置換可能であることが示唆されているから、引用発明1における外部通信部として、引用文献2の示唆に基づいて、スマートフォンや携帯電話機などの携帯端末装置から識別情報を読み取る装置を採用することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のものである。

イ 相違点2について
上記相違点2について検討すると、取得情報に含まれる「サービス識別情報」に関して、本願発明は、利用者に提供するサービスを識別するものであり、当該サービス識別情報に対応するサービスがメニュー画面に表示されるとの特定がなされているのみであるから、本願発明における「サービス識別情報」は、利用者に提供される複数のサービスのうちの個々のサービスを識別するものには限定されないというべきである。したがって、本願発明における「サービス識別情報」は、利用者が利用可能な複数のサービスのリストからなる情報も包含するものであって、引用発明1においては、当該「サービス識別情報」が認証サーバ2に記憶されているといえる。
そうすると、上記相違点2は、単に、当該リスト情報を包含するサービス識別情報がどの装置に記憶されているかの相違にすぎず、当該サービス識別情報をどの装置に記憶させるかは、情報処理装置を備えるシステムを具現化するに当たり、当業者が適宜設定し得る設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明1において、当該サービス識別情報をユーザIDとともに携帯機器に記憶させ、当該携帯機器からサービス識別情報を取得することにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のものである。

ウ 相違点3について
上記相違点3について検討すると、メニュー画面の作成を、認証サーバと情報処理装置のいずれの装置で行うかは、両装置の処理能力や両装置間の通信負荷等を考慮しながら、当業者が適宜設定し得る設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明1において、メニュー画面の作成を情報処理装置の制御部にて行い、取得した取得情報に基づく認証結果に応じて当該メニュー画面を表示部に表示させることにより、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のものである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 請求人は、審判請求書の請求の理由の【本発明が特許されるべき理由】の2.1)において、「請求項1に係る本願発明は、上述したように、携帯機器から「サービス識別情報」を取得することで、初期メニュー画面にない貸出サービスを携帯機器から予め指定(選択)して提供することができるという本願特有の効果(第1の効果)を得るものである。これに対して、引用文献1では「認証サーバ2」から「サービス識別情報」を取得しており、携帯機器によりサービスを選択(指定)することは不可能である。
さらに、例えば、引用文献1では、ユーザIDに対しサービスが決まっているため、メニュー画面には複数の選択可能なサービスが表示される。このような状況において、ユーザが、例えば、コピーサービスだけ実行したい場合には、引用文献1のようにメニュー画面には複数のサービスが表示されると、どれを選択すればよいのかユーザが迷い、操作性において利便性に課題が生じる。これに対して、請求項1に係る本願発明では、受けたいサービスのみを携帯機器から予め指定(選択)できるので、引用文献1における上記のような課題は生じることはなく、操作性において利便性を向上させることができる。」と主張している。
しかしながら、本願発明では、「携帯機器によりサービスを選択(指定)する」との事項は特定されていないから、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない効果の主張であって、これを採用することはできない。
なお、本願明細書の段落【0120】には、「本実施形態による画像形成装置10は、初期メニュー画面にない貸出サービスを予め指定(選択)して提供することができる。」と記載されているのみであり、「複数のサービスのうち、受けたいサービスのみを携帯機器から予め指定(選択)すること」は記載されておらず、「携帯機器から」サービスを予め指定(選択)することについても記載されていない。そして、本願明細書の段落【0040】に記載されているように、本願の「携帯機器」には、ICカードのような、ユーザからの選択操作を受け付ける手段を有さないものも包含するものであるから、携帯機器がユーザからの選択操作を受け付ける手段を有することを前提とする上記主張は、本願明細書の記載に基づくものとも認められない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-01-08 
結審通知日 2020-01-14 
審決日 2020-01-27 
出願番号 特願2015-45172(P2015-45172)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 小林 謙仁
尾崎 淳史
発明の名称 情報処理装置、及び情報処理システム  
代理人 西澤 和純  
代理人 覚田 功二  
代理人 三木 雅夫  
代理人 野村 進  

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