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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1360961
審判番号 不服2018-5126  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-13 
確定日 2020-03-17 
事件の表示 特願2016-532036号「連結のためのオーバヘッドビュー」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月21日国際公開、WO2015/074016、平成29年1月26日国内公表、特表2017-502866号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)11月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年11月18日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月24日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、平成30年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成31年3月15日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和1年6月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、令和1年6月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
車両をトレーラに連結する連結装置であって、
車両連結器及びトレーラ結合器の画像データを収集するように構成された複数のカメラと、
前記画像データに基づいてオーバヘッドビュー画像として表現された3次元データを生成し、前記3次元データに基づいて連結器高さ及び結合器高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて前記車両連結器と前記トレーラ結合器との相対高さを計算し、前記相対高さが予め定められた閾値より小さい場合に警報を発生するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラはさらに、前記相対高さが前記予め定められた閾値より小さい場合に、連結器高さを調整するように構成されている、連結装置。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
[理由]
この出願の請求項1?16に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1:特表2007-523007号公報
2:特開2002-359839号公報
3:米国特許出願公開第2006/0255560号明細書
以下、それぞれ「引用文献1ないし3」という。

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様である。)。
(1a)
「【0008】
本発明の課題は、大きな力の消費及び他の人の助けを伴うことなく車両にトレーラを簡単に且つ迅速に連結させることを可能にする運転者支援システムを提示することである。
・・・
【0011】
この種の運転者支援システムは、大きな負担を伴わずにトレーラを自動車(広義の自動車:モータビークル)に連結するという長所を提供する。トレーラは、例えばキャンピングカー、又は、重い貨物又はかさばる貨物を輸送するため又は動物輸送に用いられるトレーラであり得る。・・・」
(1b)
「【0019】
有利には、センサユニットは、周辺認識又は画像再生・支援システムの更なる構成部として形成されている。この支援システムは、有利には後退カメラシステム及び/又は駐車間隔管理システム(パーク・ディスタンス・コントロール・システム:PDC)であり得る。そのために例えば既存の後退カメラシステム内の画像評価機能が、第1ステップで、自動対象認識ユニットを用いて車両に装着されているトレーラ連結器及びトレーラに装着されている対向部材を認識し、それらの相対位置或いはそれらの間の間隔を画像データから自動で算出するように形成されている。自動対象認識ユニットは、車両に装着されているトレーラ連結器の交換時にもこのトレーラ連結器が明らかに認識されるように構成され得る。周辺認識・支援システムのもとでは例えば視覚的に又はRADAR又はLIDARを基礎とする軌道案内支援システム又はプリ・クラッシュ・センサユニットも理解され得る。
【0020】
有利にはセンサユニットは表示装置と接続されていて、この表示装置は、運転者座席から見ることのできる場所に装着されていて、車両に装着されているトレーラ連結器の位置を、トレーラに装着されている対向部材の位置に対して相対的に、幾何学的に変換されたビデオ画像として又はシンボル形式をもって表示する。
【0021】
それにより運転者は、表示装置を用い、容易に、車両に装着されているトレーラ連結器をトレーラに装着されている対向部材のところに直接的に位置づける可能性をもつ。両方の連結部分が互いに十分に有効な状態で位置決めされていると、運転者に対し、運転者が車両の少なくとも後部を操作要素の操作により自動で下降させるべきであることが自動で通知される。この操作要素は、多機能操作要素の一部として、又は音声認識部又はジェスチュア認識部としても形成され得る。表示装置はヘッド・アップ・ディスプレイとして形成され得る。描写は、両方の連結部分のシンボル描写、及び/又は幾何学的に変換されたカメラ画像の描写であり得る。画像の幾何学的な変換のもとでは、カメラ視野の仮想上の変更、及び/又は電子的なひずみ補正、及び/又は所定の画像領域の拡大又は変形が理解され得る。描写は、この描写が運転者に対して場面の3次元的な印象を伝達するようにも行なわれ得る。」【0022】
有利には、快適性の理由、デザインの理由、又はコストの理由から、表示装置上には、操車・補助ライン、及び/又は操車・補助シンボル、及び/又は車両レベル調整装置・操作要素としてのソフト・キーが描写されている。
【0023】
車両に装着されているトレーラ連結器とトレーラに装着されている対向部材との間の間隔が、予め定められた限界値を下回る場合、及び/又は両方の連結部分の相対位置が直前に控えた連結過程を指摘する場合、表示装置上にはソフト・キーとして車両レベル調整装置・操作要素が現れる。それにより運転者には、車両に装着されているトレーラ連結器をトレーラに装着されている対向部材の下に位置付けるために、運転者が前記の操作要素の操作により少なくとも車両の後部の下降を開始する又は操作すべきであることが通知される。操車・シンボルの表示による本発明に従う更なる構成は、同様に極めて有利である。
【0024】
それらのシンボルは、両方の連結部分を引き合わせるための少なくとも1つの推奨操舵方向、及び/又は両方の連結部分の間の間隔の数値表示を表し得る。例えばセンサユニットにより、車両に装着されているトレーラ連結器とトレーラに装着されている対向部材が自動で認識されると、両方のコンポーネント(トレータ連結器及び対向部材)の相対位置が表示装置上に概要的に描写され、それにより運転者にとって、車両に装着されているトレーラ連結器をできるだけ快適に且つ精密にトレーラ側の対向部材のところ又はその下に位置付けることが容易にされる。操車・シンボルはラインでもあり得て、これらのラインは、例えば算出された最適の走行ライン及びシンボル的に描写された推奨操舵過程として挿入表示され得る。」
(1c)
「【0031】
図1は、視覚センサとしての後退カメラ(バックカメラ)5と、超音波センサ6と、トレーラ連結器(トレーラカップリング)3とが装着されている車両1を示している。トレーラ2にはトレーラ連結器3に対する対向部材(カウンタピース)4が装着されていて、対向部材4は、手動のクランク装置を用いないでトレーラ2を支持する装置8により支持される。
【0032】
図2は、本発明に従う運転者支援システムの実施例をブロック図として示している。図1及び図2の同じ構成部材には同じ符号が付けられている。
【0033】
制御ユニット9により車両レベル調整装置(車高調整装置)17のアクチュエータ7a?7dがコントロールされる。車両レベル調整装置17の方は固有の制御装置10をもち、本発明に従う運転者支援システムの制御ユニットを同様に制御装置10内に含ませることも可能である。
【0034】
例として概要が描かれたこの運転者支援システムは、視覚センサとしての少なくとも1つの後退カメラ5、及び/又は1つの又は複数の超音波センサ6とを含んでいる。後退カメラ5及び超音波センサ6は、ここでは例えば後退カメラシステムの一部として形成されている制御ユニット9と接続されている。コストの理由からセンサユニットはリヤビューカメラシステムだけに基づくことも可能である。センサユニット16は、この例では後退カメラシステムの制御装置の一部として実現される制御ユニット9を有している。しかし制御ユニットは、車両内に既存の制御装置内に実装されているソフトウェア機能だけでも可能である。
【0035】
更にこのシステムは、車両レベル調整装置・操作要素12を備えた表示ユニット11を含んでいて、車両レベル調整装置・操作要素12は、車両1の少なくとも後部を下降或いは上昇させるための2つの操作要素12a及び12bの形式、又は多機能操作要素の一部として、又は音声認識部又はジェスチュア認識部としても形成され得る。車両レベル調整装置17の制御装置10により車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dがコントロールされる。
【0036】
車両1に装着されているトレーラ連結器3をトレーラ2に装着されている対向部材4に連結するための本発明に従う運転者支援システムは次のことにより傑出する。即ち、制御ユニット9が車両1内に設けられていて、更に、予め定められた第1条件B1a又はB1bが存在する場合に車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータが、車両1の少なくとも後部が下降されるようにコントロールされる、及び/又は、予め定められた第2条件B2a又はB2bが存在する場合に車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータが、車両1の少なくとも後部が上昇されるようにコントロールされることによってである。
【0037】
予め定められた第1条件は次の場合に存在する。即ち、センサユニット16を用いて検知された、車両1に装着されているトレーラ連結器3とトレーラ2に装着されている対向部材4との間の間隔が、少なくとも予め定められた間隔値を下回る場合、及び/又は、車両1に装着されているトレーラ連結器3が、操車動作を伴うことなく、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合(B1a)、及び/又は、このために設けられている車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12b(この図面ではリヤビューカメラからの画像内にソフト・キーとして挿入される)が操作される場合(B1b)である。
【0038】
既述のようにセンサユニット16は表示装置11と接続されていて、表示装置11は、運転者座席から見ることのできる場所に装着されていて、車両1に装着されているトレーラ連結器3の位置を、トレーラ2に装着されている対向部材4の位置に対して相対的に表示する。車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bは運転者の到達可能範囲内に装着されていて、その操作により、制御ユニットが車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロールする。車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bはソフト・キーとして表示装置11上に形成されている。表示装置11上に示された表示は、例えば矢印の形式の自動生成される操車提案を一目瞭然にシンボル描写することにより補足される。
【0039】
この運転者支援システムは、ここでは非図示の操作要素を用いた特別な構成可能性において、予め定められた第1条件B1a或いはB1bが存在する場合、制御ユニット9が、センサユニット16により検知された、トレーラ2に装着されている対向部材4に対する車両1に装着されているトレーラ連結器3の相対位置に依存し、車両における操舵システム13及び/又は駆動ユニット14及び/又は制動ユニット15を、車両1に装着されているトレーラ連結器3がトレーラ2に装着されている対向部材4の下に完全自動で又は部分自動で位置付けられるようにコントロールする。
【0040】
車両1が下降されている場合で、予め定められた第2条件B2a或いはB2bが存在する場合、制御ユニット9は車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が上昇されるようにコントロールする。予め定められた第2条件は次の場合に存在する。即ち、センサユニット16を用いて検知された、車両1に設けられているトレーラ連結器3が、トレーラ2に設けられている対向部材4の下に位置付けられている場合(B2a)、及び/又は、車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bが操作される場合(B2b)である。」
(1d)
図1及び図2は、以下のとおりである。
【図1】

【図2】

(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1c)の段落【0034】の「少なくとも1つの後退カメラ5・・・後退カメラ5・・・は、・・・後退カメラシステムの一部として形成されている制御ユニット9と接続されている。・・・センサユニット16は、・・・後退カメラシステムの制御装置の一部として実現される制御ユニット9を有している。」という記載と、図2において、センサユニット16が後退カメラ5を含んで構成されていることとを併せると、引用文献1のセンサユニット16は、制御ユニット9と接続されている少なくとも1つの後退カメラ5を有している、センサユニット16であることが明らかである。
このことと、摘記(1b)、(1c)及び図1、2(摘記(1d))から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「周辺認識又は画像再生・後退カメラシステムである支援システムの構成部として形成されているセンサユニット16であって、
制御ユニット9と接続されている少なくとも1つの後退カメラ5と、後退カメラシステムの制御装置の一部として形成されている制御ユニット9とを有し、
後退カメラシステム内の画像評価機能が、自動対象認識ユニットを用いて車両に装着されているトレーラ連結器及びトレーラに装着されている対向部材を認識し、それらの相対位置を画像データから自動で算出するように形成され、
センサユニット16が接続されている表示装置11は、運転者座席から見ることのできる場所に装着されていて、車両1に装着されているトレーラ連結器3の位置を、トレーラ2に装着されている対向部材4の位置に対して相対的に表示し、
車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合、
表示装置11上に形成されている車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bの操作により、制御ユニット9が、車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロールし、
制御ユニット9が、トレーラ2に装着されている対向部材4に対する車両1に装着されているトレーラ連結器3の相対位置に依存し、車両における操舵システム13及び/又は駆動ユニット14及び/又は制動ユニット15を、車両1に装着されているトレーラ連結器3がトレーラ2に装着されている対向部材4の下に完全自動で又は部分自動で位置付けられるようにコントロールする、センサユニット16。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0019】図1は、リアビューカメラ及びヒッチを搭載した車両とトレーラ等との関係を示した図である。車両1の後部には、リアビューカメラ2が搭載されている。このリアビューカメラ2は、車両1後部に1個設けることでも、また、2個設けて2個のカメラの撮像画像を合成して運転席の画面に表示することでもよい。車両1の後部中央にはヒッチ3が固定されており、車両1をバックさせ、トレーラ4側の連結具5にこのヒッチ3を連結する様になっている。更に車両1の後部には超音波距離センサ6が取り付けられており、後方障害物までの距離が計測可能となっている。」
(2b)
「【0027】マッピングテーブル11bとは、ビューカメラの撮像画像の座標変換を行うテーブルである。図1または図2に示すビューカメラ2は、斜め上方から車両1の後方画像を撮像するため、地面に対して上下に離れている部材間の画像は、実際より離れた画像として撮像される。この場合、カメラ2の撮像画像を、図1または図2に示す仮想視点Aから真下を見た画像に変換すれば、運転者にとってより見やすい画像となる。
【0028】特に、本実施形態の様に、ヒッチ3と連結具5との重なり程度を運転者が視認できるようにするにの上視点Aから見た画像は好適である。・・・」

第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)
引用発明の「少なくとも1つの後退カメラ5」は、「後退カメラシステムの制御装置の一部として形成されている」「制御ユニット9と接続されている」ことから、引用発明の「後退カメラシステム内の画像評価機能が、自動対象認識ユニットを用いて車両に装着されているトレーラ連結器及びトレーラに装着されている対向部材を認識し、それらの相対位置を画像データから自動で算出するように形成され」る構成の「画像データ」は、「車両に装着されているトレーラ連結器及びトレーラに装着されている対向部材」の「画像データ」であり、かつ、「少なくとも1つの後退カメラ5」が収集した「画像データ」であることが、明らかである。
(2)
引用発明の「車両に装着されているトレーラ連結器3」及び「トレーラに装着されている対向部材4」は、それぞれ、本願発明の「車両連結器」及び「トレーラ結合器」に相当する。
(3)
上記(1)及び(2)を踏まえると、引用発明の「制御ユニット9と接続されている、少なくとも1つの後退カメラ5」は、車両連結器及びトレーラ結合器の画像データを収集するように構成されているといえるから、引用発明の「制御ユニット9と接続されている、少なくとも1つの後退カメラ5」と、本願発明の「車両連結器及びトレーラ結合器の画像データを収集するように構成された複数のカメラ」とは、「車両連結器及びトレーラ結合器の画像データを収集するように構成されたカメラ」の限りで共通する。
(4)
引用発明の「後退カメラシステムの制御装置の一部として形成されている制御ユニット9」と、本願発明の「前記画像データに基づいてオーバヘッドビュー画像として表現された3次元データを生成し、前記3次元データに基づいて前記車両連結器と前記トレーラ結合器との相対高さを計算し、前記相対高さが予め定められた閾値より小さい場合に警報を発生するように構成されたコントローラ」とは、「コントローラ」の限りで共通する。
(5)
引用発明において、「後退カメラシステムの制御装置の一部として形成されている制御ユニット9」「を有し」ている、「周辺認識又は画像再生・後退カメラシステムである支援システムの構成部として形成されているセンサユニット16」は、「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合」、「制御ユニット9が」、「車両1に装着されているトレーラ連結器3がトレーラ2に装着されている対向部材4の下に完全自動で又は部分自動で位置付けられるようにコントロールする」ことから、車両1をトレーラ2に連結できるように位置付けする機能を備えており、連結装置であるといえる。
したがって、上記(2)を踏まえると、引用発明の「後退カメラシステムの制御装置の一部として形成されている制御ユニット9」「を有し」ている、「周辺認識又は画像再生・後退カメラシステムである支援システムの構成部として形成されているセンサユニット16」は、本願発明の「車両をトレーラに連結する連結装置」に相当する。

2 一致点及び相違点
上記1から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「車両をトレーラに連結する連結装置であって、
車両連結器及びトレーラ結合器の画像データを収集するように構成されたカメラと、
コントローラと、
を備える、連結装置。」
<相違点1>
「カメラ」及び「コントローラ」に関して、
本願発明は、カメラが、「複数」のカメラであり、コントローラが、「前記画像データに基づいてオーバヘッドビュー画像として表現された3次元データを生成し、前記3次元データに基づいて連結器高さ及び結合器高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて前記車両連結器と前記トレーラ結合器との相対高さを計算し、前記相対高さが予め定められた閾値より小さい場合に警報を発生するように構成された」コントローラであるのに対して、
引用発明は、カメラが、「少なくとも1つ」の後退カメラ5であり、コントローラが、「後退カメラシステムの制御装置の一部として形成されている制御ユニット9」であって、「後退カメラシステム内の画像評価機能が、自動対象認識ユニットを用いて車両に装着されているトレーラ連結器及びトレーラに装着されている対向部材を認識し、それらの相対位置を画像データから自動で算出するように形成され、」「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合、表示装置11上に形成されている車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bの操作により、制御ユニット9が、車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロール」するように構成されている点。
<相違点2>
本願発明は、「前記コントローラはさらに、前記相対高さが前記予め定められた閾値より小さい場合に、連結器高さを調整するように構成されている」のに対して、
引用発明は、「センサユニット16が接続されている表示装置11は、運転者座席から見ることのできる場所に装着されていて、車両1に装着されているトレーラ連結器3の位置を、トレーラ2に装着されている対向部材4の位置に対して相対的に表示し、車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合、表示装置11上に形成されている車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bの操作により、制御ユニット9が、車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロール」するように構成されている点。

第6 判断
1 相違点についての検討
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア 本願発明の「複数のカメラ」について
引用発明の「少なくとも1つの後退カメラ5」は、「複数のカメラ」として特定することができるから、引用発明の「少なくとも1つの後退カメラ5」は、本願発明の「複数のカメラ」に相当するということもできる。
また、仮に、そこまではいえないとしても、引用発明の「少なくとも1つの後退カメラ5」は、「複数のカメラ」とすることが想定されており、リアビューカメラを複数用いることは、周知技術(例えば、引用文献2の段落【0019】、引用文献3のFIG.7等)であることを踏まえると、引用発明の「少なくとも1つの後退カメラ5」を、「複数のカメラ」とすることは、当業者が適宜になし得たことである。

イ 本願発明の「画像データ」「3次元データ」及び「相対高さを計算する」について
(ア)
引用発明の「後退カメラシステム内の画像評価機能が、自動対象認識ユニットを用いて車両に装着されているトレーラ連結器及びトレーラに装着されている対向部材を認識し、それらの相対位置を画像データから自動で算出するように形成され」る構成の「相対位置」は、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」との「相対位置」であって、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」とを連結するための「相対位置」であるといえる。
そして、「車両に装着されているトレーラ」として、例えばキャンピングカーなどが対象とされており(摘記(1a)の段落【0011】)、その「相対位置」は、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」の前後、左右及び上下の位置と考えることが自然であることから、引用発明の上記「相対位置」を、「画像データから自動で算出する」ためには、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」とのそれぞれについて、前後、左右及び上下の位置、すなわち実質的に、画像データに基づいて3次元における座標データを生成すべきことが技術的に明らかである。
(イ)
また、引用発明の「センサユニット16が接続されている表示装置11は、運転者座席から見ることのできる場所に装着されていて、車両1に装着されているトレーラ連結器3の位置を、トレーラ2に装着されている対向部材4の位置に対して相対的に表示」する構成の「相対的に表示」すなわち相対表示は、「車両1に装着されているトレーラ連結器3の位置を、トレーラ2に装着されている対向部材4の位置に対して」「相対的に表示」するものであること、及び、「描写」が「3次元的な印象を伝達する」こと(摘記(1b)の段落【0021】)から、上記の「相対的に表示」(相対表示)は、「表示装置11」に、「車両1に装着されているトレーラ連結器3の位置」と「トレーラ2に装着されている対向部材4の位置」との、前後、左右及び上下(すなわち3次元)の位置関係を、画像として表現できるように構成することも想定の範囲であるといえる。
(ウ)
さらに、引用発明は、「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合」「制御ユニット9が、車両レベル調整装置17の」「少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロール」するものであるから、「車両1に装着されているトレーラ連結器3」と「トレーラ2に装着されている対向部材4」との、少なくとも、上下の位置関係すなわち相対高さを把握する必要があることは、技術的に明らかである。
そして、引用文献1の「車両に装着されているトレーラ連結器をできるだけ快適に且つ精密にトレーラ側の対向部材のところ又はその下に位置付ける」(摘記(1b)の段落【0024】)という記載に照らせば、「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合」に、「下降するようにコントロール」するためには、上記の上下のみならず、左右及び前後の位置関係も把握する必要があることが、示唆されているといえる。
(エ)
また、カメラの撮像画像を仮想視点から直下を見た画像に変換して視認に好適な画像とすること、すなわち、オーバヘッドビュー画像として表現することも、引用文献2(摘記(2a)及び(2b)参照)に記載されているように周知技術といえる。
(オ)
したがって、引用発明において、コントローラである「制御ユニット9」が、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」とのそれぞれに関して、画像データに基づいてオーバヘッドビュー画像として表現された3次元データを生成し(上記(ア)?(エ))、この3次元データに基づいて、連結器である「車両に装着されているトレーラ連結器」高さ、及び、結合器である「トレーラに装着されている対向部材」高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて、車両連結器とトレーラ結合器との相対高さである、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」との相対高さを計算する(上記(ア)?(ウ))ことは、当業者にとって格別に困難なことではない。

ウ 本願発明の「警報」について
(ア)
引用発明は、「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合、表示装置11上に形成されている車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bの操作により、制御ユニット9が、車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロール」する(以下「事項A」という。)ものである。
(イ)
引用文献1には、事項Aに関して、「予め定められた第1条件B1a」、「即ち」、「センサユニット16を用いて検知された、車両1に装着されているトレーラ連結器3とトレーラ2に装着されている対向部材4との間の間隔が、少なくとも予め定められた間隔値を下回る場合、及び/又は、車両1に装着されているトレーラ連結器3が、操車動作を伴うことなく、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合(B1a)」(摘記(1c)の段落【0037】)と記載されていることから、事項Aの「衝突可能である場合」として、「予め定められた間隔値を下回る場合」、すなわち、予め定められた「間隔値」という閾値より小さい場合が想定されており、当該「間隔」すなわち「車両1に装着されているトレーラ連結器3とトレーラ2に装着されている対向部材4との間の間隔」に関して、予め定められた閾値より小さい場合が想定されていることは、明らかである。
(ウ)
そして、引用文献1には、「車両に装着されているトレーラ連結器とトレーラに装着されている対向部材との間の間隔が、予め定められた限界値を下回る場合、及び/又は両方の連結部分の相対位置が直前に控えた連結過程を指摘する場合、表示装置上にはソフト・キーとして車両レベル調整装置・操作要素が現れる。それにより運転者には、車両に装着されているトレーラ連結器をトレーラに装着されている対向部材の下に位置付けるために、運転者が前記の操作要素の操作により少なくとも車両の後部の下降を開始する又は操作すべきであることが通知される。操車・シンボルの表示による本発明に従う更なる構成は、同様に極めて有利である。」(摘記(1b)の段落【0023】)及び「それらのシンボルは、両方の連結部分を引き合わせるための少なくとも1つの推奨操舵方向、及び/又は両方の連結部分の間の間隔の数値表示を表し得る。例えばセンサユニットにより、車両に装着されているトレーラ連結器とトレーラに装着されている対向部材が自動で認識されると、両方のコンポーネント(トレータ連結器及び対向部材)の相対位置が表示装置上に概要的に描写され、それにより運転者にとって、車両に装着されているトレーラ連結器をできるだけ快適に且つ精密にトレーラ側の対向部材のところ又はその下に位置付けることが容易にされる。」(摘記(1b)の段落【0024】)と記載されていることから、「車両に装着されているトレーラ連結器とトレーラに装着されている対向部材との間の間隔が、予め定められた限界値を下回る場合」、「通知」や「連結部分の間の間隔の数値表示」をすることで、警報するようにすることが示唆されているといえる。
そして、車両が衝突する危険がある場合に、警報を発生するようにすることは、技術常識である。
(エ)
したがって、引用発明において、「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合」、「車両1に装着されているトレーラ連結器3」と「トレーラ2に装着されている対向部材4」との間の上下の間隔が、予め定められた閾値より小さくなると(上記(イ))、警報を発生するように構成する(上記(ウ))、すなわち、本願発明の「相対高さが予め定められた閾値より小さい場合に警報を発生するように構成」することは、当業者にとって格別に困難なことではない。

エ 相違点1につてのまとめ
以上から、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術を引用発明に適用することで、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成、すなわち、カメラが、「複数の」カメラであり(上記ア)、コントローラが、「前記画像データに基づいてオーバヘッドビュー画像として表現された3次元データを生成し、前記3次元データに基づいて連結器高さ及び結合器高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて前記車両連結器と前記トレーラ結合器との相対高さを計算し」(上記イ)、「前記相対高さが予め定められた閾値より小さい場合に警報を発生するように構成された」(上記ウ)コントローラである構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。

(2)相違点2について

引用発明の「車両に装着されているトレーラ連結器」は、「車両1の少なくとも後部が下降する」ことで、高さが調整されるといえることから、引用発明の事項Aに含まれる「制御ユニット9が、車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロール」する構成は、本願発明の「前記コントローラは」、「連結器高さを調整するように構成されている」という構成を意味しているということもできる。

そして、事項Aの「衝突可能である場合」として、予め定められた閾値より小さい場合が想定されているといえる(上記(1)ウ(イ))。

したがって、引用発明の事項Aすなわち「車両1に装着されているトレーラ連結器3が、トレーラ2に装着されている対向部材4と衝突可能である場合、表示装置11上に形成されている車両レベル調整装置・操作要素12a或いは12bの操作により、制御ユニット9が、車両レベル調整装置17のアクチュエータ7a?7dの少なくとも1つのアクチュエータを、車両1の少なくとも後部が下降するようにコントロール」する構成から、本願発明の「前記コントローラはさらに、前記相対高さが前記予め定められた閾値より小さい場合に、連結器高さを調整するように構成されている」構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。

2 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、当審拒絶理由に対する令和1年6月14付けの意見書において、以下のとおり主張している。
「引用文献1?3のいずれにおいても、『前記3次元データに基づいて連結器高さ及び結合器高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて前記車両連結器と前記トレーラ結合器との相対高さを計算』する、という本願発明1における発明特定事項A・・・については記載されていません。
引用文献1には、車両1に装着されているトレーラ連結器3をトレーラ2に装着されている対向部材4に連結するための運転者支援システムにおいて、トレーラ連結器3と対向部材4との衝突可能性について言及されています(請求項2、[0037])。
しかしながら、引用文献1には、複数のカメラを用いて得られた3次元データを使用する構成、さらには、3次元データに基づいてトレーラ連結器3と対向部材4の高さをそれぞれ求め、これらの高さに基づいてトレーラ連結器3と対向部材4との相対高さを算出する構成について記載されていません。
・・・
すなわち、引用文献1?3のいずれにおいても、上記発明特定事項A・・・について記載されていません。
よって、たとえ当業者が引用文献1?3を参照しても、上記発明特定事項Aを有する本願発明1の構成・・・には至りません。」

(2)検討
上記1(1)イで述べたとおり、引用発明において、コントローラである「制御ユニット9」が、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」とのそれぞれに関して、画像データに基づいてオーバヘッドビュー画像として表現された3次元データを生成し、この3次元データに基づいて、連結器である「車両に装着されているトレーラ連結器」高さ、及び、結合器である「トレーラに装着されている対向部材」の高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて、車両連結器とトレーラ結合器との相対高さである、「車両に装着されているトレーラ連結器」と「トレーラに装着されている対向部材」との相対高さを計算することは、当業者にとって格別に困難なことではないから、上記主張における、「前記3次元データに基づいて連結器高さ及び結合器高さを求め、前記連結器高さ及び前記結合器高さに基づいて前記車両連結器と前記トレーラ結合器との相対高さを計算」するという発明特定事項Aは、引用発明から、当業者が容易になし得たといえる。
したがって、上記(1)の主張は、採用できない。

3 まとめ
以上から、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-07 
結審通知日 2019-10-15 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2016-532036(P2016-532036)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中村 泰二郎
出口 昌哉
発明の名称 連結のためのオーバヘッドビュー  
代理人 前川 純一  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  

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