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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1361105
審判番号 不服2019-4914  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-12 
確定日 2020-03-26 
事件の表示 特願2017- 5356「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 62110〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月6日に出願した特願2011-267139号の一部を平成27年11月26日に新たな特許出願とした特願2015-230640号の一部を、さらに平成29年1月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は概ね以下のとおりである。
平成29年11月27日付けで拒絶理由通知
平成30年1月25日に意見書及び手続補正書の提出
平成30年6月4日付けで拒絶理由通知
平成30年8月10日に意見書の提出
平成31年1月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成31年4月12日に審判請求書及び手続補正書の提出

第2 平成31年4月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「【請求項1】
断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉内部に真空断熱材を備えて構成される冷蔵庫であって、
前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部と、前記扉に設けられ、前記差込部を収容した状態で前記ガスケットが取り付けられるガスケット取付部と、を有し、
前記真空断熱材の前記断熱箱体を構成する側壁側の端部は、前記差込部よりも外側に位置し、
前記扉の真空断熱材の周囲に形成される耳部分が当該真空断熱材の内側に折り返され、当該耳部分の折り返し先端が、前記差込部の中心よりも内側にあり、
前記ガスケット取付部と前記真空断熱材とは、前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する位置に設定されていることを特徴とする冷蔵庫。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年1月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉内部に真空断熱材を備えて構成される冷蔵庫であって、
前記扉の真空断熱材の周囲に形成される耳部分が当該真空断熱材の内側に折り返され、当該耳部分の折り返し先端が、扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部の中心よりも内側にあることを特徴とする冷蔵庫。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「前記扉の真空断熱材の周囲に形成される耳部分が当該真空断熱材の内側に折り返され、当該耳部分の折り返し先端が、扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部の中心よりも内側にある」との記載を、「前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部と、前記扉に設けられ、前記差込部を収容した状態で前記ガスケットが取り付けられるガスケット取付部と、を有し、前記真空断熱材の前記断熱箱体を構成する側壁側の端部は、前記差込部よりも外側に位置し、前記扉の真空断熱材の周囲に形成される耳部分が当該真空断熱材の内側に折り返され、当該耳部分の折り返し先端が、前記差込部の中心よりも内側にあり、前記ガスケット取付部と前記真空断熱材とは、前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する位置に設定されている」とすることにより、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「扉内部」に備えられている「真空断熱材」について、「前記真空断熱材の前記断熱箱体を構成する側壁側の端部は、前記差込部よりも外側に位置し」として、「差込部」との位置関係を限定するとともに、「前記扉に設けられ、前記差込部を収容した状態で前記ガスケットが取り付けられるガスケット取付部」「を有し」、「前記ガスケット取付部と前記真空断熱材とは、前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する位置に設定されている」として、「ガスケット取付部」との位置関係を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2011-102679号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。
「【請求項1】
前面に開口し内部に貯蔵室が形成された冷蔵庫本体と、前記冷蔵庫本体の前面開口部を閉塞する扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉は、庫外側に配された扉面材と、庫内側に配された扉内板と、前記扉面材と前記扉内板との間に挟まれ真空断熱パネルと発泡断熱材とが配設された断熱部とを備え、前記扉面材と前記真空断熱パネルとの間に前記扉面材に接する補強板が配設されていることを特徴とする冷蔵庫。」

「【0001】
本発明は、扉の断熱材として真空断熱パネルを用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫は、外箱と内箱との間に発泡断熱材を設けた冷蔵庫本体により構成され、その冷蔵庫本体の内部に貯蔵室を形成しているが、断熱性能を向上させて消費電力量を低減させたり、あるいは、断熱箱体の壁厚を薄くして庫内容積効率を向上させるため、外箱と内箱との間に充填する発泡断熱材の一部に換えて真空断熱パネルが設けられている。
【0003】
また、冷蔵庫本体の前面開口部を閉塞する扉についても、扉の外側に配される扉面材と、扉の内側に配される扉内板との間に発泡断熱材を配設した断熱部を設けているが、冷蔵庫本体と同様、断熱性能を向上させるため、断熱部に配設される発泡断熱材の一部に換えて真空断熱パネルが配設されているものが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。」

「【0014】
本実施形態の冷蔵庫10は、図1に示すように、鋼板からなる外箱12と貯蔵空間を形成する内箱13との間に断熱空間を設けて冷蔵庫10の外郭をなす冷蔵庫本体11を構成している。
【0015】
外箱12の庫内側には、真空断熱パネル16が貼り付けられており、外箱12と内箱13との間隙にポリウレタンフォームからなる発泡断熱材17の原液を注入し発泡充填することで、外箱12の庫内側に真空断熱パネル16が配設された状態で、外箱12及び内箱13が一体化されている。
【0016】
内箱13の内部に形成された貯蔵空間は、断熱仕切壁15によって上方の冷蔵空間と下方の冷凍空間とに区画されている。
【0017】
冷蔵空間は、さらに仕切壁21によって上下に区画され、上部空間に複数段の載置棚を設けた冷蔵室22が設けられ、下部空間に引き出し式の収納容器25aを配置する野菜室24が設けられている。
【0018】
野菜室24の下方に配置された冷凍空間には、自動製氷機を備えた製氷室32と小型冷凍室34を左右に併設しており、その下方には冷凍室36が設けられている。
【0019】
図2に示すように、冷蔵室22の前面開口部は、冷蔵庫本体11の左右両側に設けられたヒンジ23a,23aにより回動自在に枢支された左右一対の冷蔵室扉23,23により閉塞されている。野菜室24、製氷室32、小型冷凍室34及び冷凍室36の前面開口部は、引き出し式扉25,33,35,37により閉塞されている。各引き出し式扉25,33,35,37の裏面側に固着した左右一対の支持枠に収納容器25a,33a,37aが保持されており、開扉動作とともに庫外に引き出されるように構成されている。
【0020】
そして、前記冷蔵空間および冷凍空間のそれぞれの背面部には、冷蔵用冷却器41および冷凍用冷却器42と、各冷却器41,42に対応するファン43,44がそれぞれ配設されている。冷蔵用冷却器41及び冷凍用冷却器42は、冷蔵庫本体11の下部に設けた圧縮機45の吐出側からの冷媒が、不図示の冷凍サイクルにより交互に導入されることで冷却される。冷蔵用冷却器41及び冷凍用冷却器42により生成された冷気は、ファン43,44によりダクトを介してそれぞれの貯蔵室内に導入され、各貯蔵室を所定の温度に冷却する。
【0021】
上記構成の冷蔵庫10において、冷凍室36の扉37は、図3?図5に示すように、庫外側に配された扉面材52と、庫内側に配された扉内板54と、扉面材52及び扉内板54の上下端部を連結する上下キャップ56,58と、扉面材52と扉内板54との間に挟まれた断熱部60とを備える。
【0022】
詳細には、図4に示すように、扉面材52は、両側縁を冷凍室側にコ字状に折り曲げて側壁53が形成された鋼板からなり、コ字状に折り返された側壁53の先端部53aにおいて扉内板54が固定されている。また、扉面材52は、幅方向中央部に冷凍室扉37の厚みが薄くなるように扉内板54に向けて突出する凸部55が設けられている。この凸部55は、冷蔵庫10の上下方向に沿って設けられている(図2参照)。
【0023】
扉内板54は、合成樹脂材を板状に形成してなり、冷凍室扉37と冷凍室36内部との隙間をシールするガスケット(不図示)を保持するためのガスケット保持部54aが周縁部に形成されている。扉内板54の両側縁は、上記のように扉面材52の側壁先端部53aに固定され、これにより、扉面材52と扉内板54との間には、上下に開口した断熱部60が形成される。
【0024】
上キャップ56は、合成樹脂からなり、断熱部60の上面開口を閉塞して冷凍室扉37の上面を構成する。下キャップ58は、合成樹脂からなり、断熱部60の下面開口を閉塞して冷凍室扉37の下面を構成する。
【0025】
断熱部60は、扉面材52、扉内板54、及び上下キャップ56,58によって閉塞された空間であり、その内部に補強板62と真空断熱パネル64や発泡断熱材66などの断熱材とが配設される。
【0026】
補強板62は、発泡スチロールなどの板状の断熱材であって、扉面材52に設けられた凸部55を避けるように凸部55を挟んで両側に配置され、扉面材52の断熱部60側に付着されている。
【0027】
補強板62の厚さTは、図5に示すように、凸部55の突出量L以上に設定されており、補強板62が扉面材52に付着された状態で、補強板62における扉内板54との対向面62aより奥まった位置に、あるいは、該対向面62aと同一平面内に、凸部55の頂部55aが位置する。
【0028】
真空断熱パネル64は、例えば、アルミニウム箔と合成樹脂のラミネートフィルムを製袋した厚みが70?120μm程度のガスバリア容器に、綿状のガラス繊維(グラスウール)からなるコア材を収納し、ガスバリア容器の内部を0.03?30Pa程度に真空排気した状態で封止して形成された板状の部材であり、凸部55を挟んで両側に配置された一対の補強板62の対向面62aに跨って付着されている。
【0029】
発泡断熱材66は、ポリウレタンフォーム原液を断熱部60に発泡充填することで形成され、扉面材52と真空断熱パネル64とで補強板62を挟んだ状態で、扉面材52、扉内板54、及び上下キャップ56,58を一体化する。これにより、冷凍室36の前面開口部を断熱して閉塞する断熱扉が形成される。
【0030】
以上のように、本実施形態の冷蔵庫10では、真空断熱パネル64と扉面材52との間に補強板62が介在され、真空断熱パネル64が扉面材52に直接接することがないため、真空断熱パネル64と発泡断熱材66との熱収縮率の違いに起因して生じる外観の変形を抑えることができると共に、扉面材52に補強板62が直接付着されされていることから扉面材52の剛性を高めることができ、より一層、冷凍室扉37の外観が変形しにくい。」





(イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項
上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)の請求項1、段落0001、0014及び0030並びに図1?4の記載によれば、引用文献1には、冷蔵庫10が記載されている。

b 上記(ア)の請求項1、段落0002、0014及び0015並びに図1の記載によれば、冷蔵庫10は、鋼板からなる外箱12と貯蔵空間を形成する内箱13との間に断熱空間を設けた冷蔵庫本体11を有していることが記載されている。

c 上記(ア)の請求項1、段落0016、0018、0019、0021、0025及び0029並びに図1?4の記載によれば、冷蔵庫10は、内箱13の内部に形成された貯蔵空間が区画された冷凍空間に設けられた冷凍室36の前面開口部を閉塞し、開扉動作する冷凍室扉37を有し、該冷凍室扉37の扉面材52、扉内板54、及び上下キャップ56,58によって閉塞された空間である断熱部60の内部に真空断熱パネル64と発泡断熱材66とが配設されることが記載されている。
ここで、上記(ア)の段落0028の記載によれば、真空断熱パネル64は、アルミニウム箔と合成樹脂のラミネートフィルムを製袋したガスバリア容器に、綿状のガラス繊維(グラスウール)からなるコア材を収納し、ガスバリア容器の内部を真空排気した状態で封止して形成された板状の部材であることが記載されている。

d 上記(ア)の段落0023及び図1?4の記載によれば、扉内板54は、冷凍室扉37と冷凍室36内部との隙間をシールするガスケットを保持するためのガスケット保持部54aが周縁部に形成されることが記載されている。

e 上記(ア)の段落0022?0025及び図1?4の記載によれば、冷蔵庫10の左右方向において、真空断熱パネル64の端部は、ガスケット保持部54の外側の端部と略同じ位置にされることが記載されている。
ここで、図4における上下方向は冷蔵庫10の左右方向となっており、図4の記載から、左右方向における真空断熱パネル64の端部と、ガスケット保持部54の外側の端部との位置関係を上記のとおり看取できる。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「鋼板からなる外箱12と貯蔵空間を形成する内箱13との間に断熱空間を設けた冷蔵庫本体11および前記内箱13の内部に形成された貯蔵空間が区画された冷凍空間に設けられた冷凍室36の前面開口部を閉塞し、開扉動作する冷凍室扉37を有し、該冷凍室扉37の扉面材52、扉内板54、及び上下キャップ56,58によって閉塞された空間である断熱部60の内部に、アルミニウム箔と合成樹脂のラミネートフィルムを製袋したガスバリア容器に、綿状のガラス繊維(グラスウール)からなるコア材を収納し、ガスバリア容器の内部を真空排気した状態で封止して形成された板状の部材である真空断熱パネル64と発泡断熱材66とが配設される冷蔵庫10であって、
前記扉内板54は、前記冷凍室扉37と前記冷凍室36内部との隙間をシールするガスケットを保持するためのガスケット保持部54aが周縁部に形成されており、
左右方向において、前記真空断熱パネル64の端部は、前記ガスケット保持部54の外側の端部と略同じ位置にされている冷蔵庫10。」

イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2006-336722号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に係り、特に有機系バインダーを用いない無機繊維集合体を芯材として用いた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に好適なものである。」

「【0028】
第1実施形態の真空断熱材16は、有機系バインダーを含まない無機繊維重合体20をプラスチックフィルムからなる内袋21内に収納した芯材18と、芯材18を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材19とを備えて構成されている。この真空断熱材16は、無機繊維重合体20を内袋21内に収納しているので、無機繊維重合体20を有機系バインダーで固める必要がなく、有機系バインダーを含まない無機繊維重合体20とすることができ、これにより、有機系バインダーを含む無機繊維重合体20を用いる場合に比較して、ガスの発生を大幅に少なくすることができる。なお、真空断熱材16は平板状の矩形パネルで構成される。
・・・
【0032】
ここで、第1実施形態における真空断熱材16及び冷蔵庫の断熱壁15の製造方法について説明する。
【0033】
1辺を開口した矩形状の内袋21内にバインダーを使用しない無機繊維重合体20を圧縮した状態で挿入し、内袋21内を開口辺側から減圧して内袋21の開口辺を溶着して芯材18を製作する。内袋21の開口辺の溶着は、内袋21の開口辺を両側からヒーターで加熱して溶融することにより行われる。開口辺の溶着後は耳部21aと呼ばれる。このようにして製作された芯材18は、減圧装置(真空引き装置)内から取り出すと、芯材18の表面に大気圧が加わるので、内圧と大気圧との差圧により内袋21が無機繊維重合体20の表面に密着され、差圧と無機繊維重合体20の復元力とがバランスした状態で所定の厚さの平板状パネルとなる。これによって、無機繊維重合体20にバインダーを使用する必要がなく、芯材18を容易に取り扱うことができる。
【0034】
次いで、1辺を開口した矩形状の外包材19(金属箔ラミネートフィルム)内に芯材18を収納し、外包材19内を開口辺側から芯材18内の圧力よりも低く減圧する。これにより、内袋21の一部が内外圧力差により破壊され、芯材18内も外包材19内と同じ圧力に減圧される。内袋21を圧力差を利用して開封する代わりに、道具を用いて開封するようにしてもよい。芯材18及び外包材19内を所定の圧力まで減圧した状態で、外包材19の開口辺を溶着することにより、図3及び図4に示す状態の真空断熱材16を製作する。なお、図3は図4に示す真空断熱材16を模式的に示す図である。外包材19の開口辺の溶着は、外包材19の開口辺を両側からヒーターで溶着用プラスチック層を加熱して溶融することにより行われる。この開口辺は溶着された後に耳部19aと呼ばれる。
【0035】
次いで、図5に示すように、外包材19の耳部19aを外包材19の一側平面部に接触するように折り曲げる。これによって、真空断熱材16の運搬作業や、外箱13と内箱14とで形成される空間への挿入作業などを容易にすることができると共に、発泡断熱材17の充填の障害とならないようにすることができる。
【0036】
次いで、耳部19aを折り曲げた状態の真空断熱材16を外箱13と内箱14とで形成される空間へ挿入し、図5に示すように、真空断熱材16の一側(耳部19aを折り曲げた側19cと反対側)19bを外箱13に密着させて設置する。この状態で、外箱13と内箱14とで形成される空間に発泡断熱材17を充填することにより、図5に示す断熱壁15が完成する。」





ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2005-331000号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、真空断熱材、及び真空断熱材を用いた冷蔵庫、並びに真空断熱材の製造方法に関する。」

「【0029】
真空断熱材30はウレタン等の発泡断熱材13より熱伝導率の小さい真空断熱材であり、真空断熱材30は図2に示す如く、芯材31と芯材31を被覆する外被材32とから構成し、外被材32の内部を減圧密封するときに、外被材32の芯材31表面よりはみ出す所を耳部33となし、耳部33を真空断熱材表面側に重ね合わせ密着するように折り曲げて、この折り曲げ部の耳部33と真空断熱材表面との間に接着部材36を介在させて、耳部33と真空断熱材表面との間の空気層を小さくするように形成して、耳部33が発泡断熱材13側となるように、発泡断熱材13内に設置されている。
【0030】
また、真空断熱材30は図3に示すように構成されている。
【0031】
図3は本発明の第一の実施例を示す真空断熱材30の要部の断面図である。
【0032】
図3において、31は断熱性を有する繊維材料で形成された芯材であり、32は芯材31を被覆するガスバリア性を有する複層のラミネートフィルムで形成された外被材である。外被材32は、真空断熱材30を高真空度に保持できるように、中間層にガスバリア性を確保するためのアルミ箔やアルミ蒸着層等を有し、その最外層に耐突き刺し性を有するナイロン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の層を有し、その最内層に高密度ポリエチレン樹脂等の熱溶着可能な合成樹脂層を有して形成されている。
【0033】
33は、外被材32の内部を減圧密封するときに、外被材32の芯材31表面よりはみ出した部分である「耳部」であり、耳部33を真空断熱材表面側30aに重ね合わせ密着するように折り曲げて、この折り曲げ部の耳部33と真空断熱材表面30aとの間に接着部材36を介在させて、耳部33と真空断熱材表面30aとの間の空気層30bを小さくするように形成してある。また、同時に、折り曲げ部の耳部33と真空断熱材側壁表面30cとの間に接着部材36を介在させて、耳部33と真空断熱材側壁表面30cとの間の空気層30eを小さくするように形成してある。
【0034】
34は前述の熱溶着可能な合成樹脂層部で熱溶着した熱溶着部であり、熱溶着部34は前述の耳部33の一部として形成されている。換言すれば、外被材32の内部を減圧密封するために、外被材32周縁に熱溶着部34を形成して内部の高真空度を保持するように構成してある。なお、通常は熱溶着部34は耳部33の一部として構成されるが、外被材32を、二辺を折り曲げたピロー型の袋形状に形成したときは、熱溶着部34は耳部33の一部として構成されるとは限らないことは自明である。
【0035】
以上、本発明の第一の実施例は、図3に示すように、複層のラミネートフィルムで形成された、かなりの剛性を有する耳部33が、接着部材36により、真空断熱材に固着されるので、耳部33と真空断熱材の表面や側壁表面との間の間隙30bや間隙30eの大きさが減少し、この間隙に滞留する断熱性能の悪い空気層が減少するので、トータルとしての熱漏洩が減少する真空断熱材及び該真空断熱材を用いた冷蔵庫を提供できる。」





エ 引用文献4
(ア)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2011-122739号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、断熱箱体に真空断熱パネルを組込んだ冷蔵庫に関する。」

「【0020】
次に、真空断熱パネル5自体の構造について図6から図8を用いて説明する。
真空断熱パネル5は、断熱性能を有する芯材13を、袋体としての外包材15で覆って構成される。図8に詳細を示すように、前記芯材13は、例えばグラスウール等の無機繊維の積層材13aを、例えばポリエチレン等の合成樹脂フィルムから成る内包材14内に収納した後、圧縮硬化して形成されている。このとき、切欠き部5a、5b及び凹溝部9、10に対応した凸形状を有する型を用いて積層材13aを圧縮硬化させることで、芯材13を切欠き部5a、5b及び凹溝部9、10を有した形態に形成されている。
【0021】
内包材14内に収納した積層材13aを圧縮硬化させて芯材13を得た後、芯材13を外包材15に収容して外包材15内を真空排気して減圧させる。減圧を維持したまま外包材15の開口部を熱溶着により密封して、外包材15を密閉することで真空断熱パネル5が得られる。
このとき、前記外包材15は、2枚の積層フィルムを周囲部において貼合わせて(熱溶着して)構成されているのであるが、真空断熱パネル5のうち一方の面即ち凹溝部9、10を有する側の面を構成する第1の積層フィルム16と、反対側の面(フラットな面)を構成する第2の積層フィルム17とで、その材質が異なり、その結果、熱伝導率が異なるものとされている。
【0022】
即ち、図8に示すように、第1の積層フィルム16は、外側から芯材13側に向かって、表面保護層16aと、ガスバリア層となるアルミ蒸着層16bと、熱溶着層16cとを順に有する3層構造とされている。これに対し、第2の積層フィルム17は、外側から芯材13側に向かって、表面保護層17aと、ガスバリア層となるアルミ箔層17bと、熱溶着層17cとを順に有する3層構造とされている。即ち、第1の積層フィルム16と第2の積層フィルム17とでは、ガスバリア層の材質をアルミ蒸着層16bとするかアルミ箔層17bとするかの点で異なっている。本実施例では、熱伝導率が低い側の第1の積層フィルム16が、一方の面である外箱3側に配置されるようになっている。
【0023】
前記第1、第2の積層フィルム16、17においては、表面保護層16a、17aは、例えばポリエチレンテレフタラート等の比較的熱に強い合成樹脂から構成されている。また、熱溶着層16c、17cは例えば高密度ポリエチレン等の熱溶着性を有する合成樹脂から構成されている。第1の積層フィルム16の熱溶着層16c面と第2の積層フィルム17の熱溶着層17c面を対向して重ね合わせた上で、周囲部を加圧及び加熱することで第1の積層フィルム16と第2の積層フィルム17とが熱溶着され、密封された袋状の外包材15が形成される。
【0024】
このとき、真空断熱パネル5の外縁部には、芯材13の周囲にはみ出す形態で接着用の耳部18が設けられる。第1の積層フィルム16と第2の積層フィルム17との間の十分なシール性を得るために、熱溶着面積を十分に大きくする必要があり、耳部18が幅広に設けられる。図8に示すように、上下の耳部18は、貯蔵室7側に折り返され、第2の積層フィルム17の面に沿って接着剤等で接着固定される。また、図示はしていないが、切欠き部5a、5bに沿う耳部18においても同様に、切欠き部5a、5bの斜面に沿って貯蔵室7側に折り返されて、第2の積層フィルム17の面に沿って接着剤等で接着固定される。」





(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者における「冷蔵庫10」は、前者における「冷蔵庫」に相当し、以下同様に、「真空断熱パネル64」は「真空断熱材」に、「ガスケット保持部54a」は「ガスケット取付部」に、それぞれ相当する。

イ 後者の「鋼板からなる外箱12と貯蔵空間を形成する内箱13との間に断熱空間を設けた冷蔵庫本体11」は、外箱12と内箱13との間に、真空断熱パネル16や発泡断熱材17などの断熱材が配設される断熱空間が設けられたものであるから、前者の「断熱箱体として構成される冷蔵庫本体」に相当する。

ウ 後者の「前記内箱13の内部に形成された貯蔵空間が区画された冷凍空間に設けられた冷凍室36の前面開口部」は、断熱箱体として構成される冷蔵庫本体11における前面開口部の一部であるから、前者の「前記断熱箱体の前面開口部」に相当する。
そして、後者の「前記内箱13の内部に形成された貯蔵空間が区画された冷凍空間に設けられた冷凍室36の前面開口部を閉塞し、開扉動作する冷凍室扉37」は、前者の「前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉」に相当する。

エ 後者の「該冷凍室扉37の扉面材52、扉内板54、及び上下キャップ56,58によって閉塞された空間である断熱部60の内部に、アルミニウム箔と合成樹脂のラミネートフィルムを製袋したガスバリア容器に、綿状のガラス繊維(グラスウール)からなるコア材を収納し、ガスバリア容器の内部を真空排気した状態で封止して形成された板状の部材である真空断熱パネル64と発泡断熱材66とが配設される」態様は、冷凍室扉37の内部に真空断熱パネル64を備えたものであるから、前者の「該扉内部に真空断熱材を備えて構成される」態様に相当する。

オ 後者の「前記冷凍室扉37と前記冷凍室36内部との隙間をシールするガスケット」は、冷凍室扉37の端部である扉内板54の周縁部に形成されたガスケット保持部54aに保持されることから、前者の「前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケット」に相当する。
そして、後者の「ガスケット」は、ガスケット保持部54aに保持されるための前者の「差込部」に相当する部分を有することは明らかである。
そうすると、後者の「前記扉内板54は、前記冷凍室扉37と前記冷凍室36内部との隙間をシールするガスケットを保持するためのガスケット保持部54aが周縁部に形成されており」との態様は、前者の「前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部と、前記扉に設けられ、前記差込部を収容した状態で前記ガスケットが取り付けられるガスケット取付部と、を有し」との態様に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉内部に真空断熱材を備えて構成される冷蔵庫であって、
前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部と、前記扉に設けられ、前記差込部を収容した状態で前記ガスケットが取り付けられるガスケット取付部と、を有している冷蔵庫。」

[相違点1]
本件補正発明では、「前記真空断熱材の前記断熱箱体を構成する側壁側の端部は、前記差込部よりも外側に位置し」ているのに対し、引用発明では、「左右方向において、前記真空断熱パネル64の端部は、前記ガスケット保持部54の外側の端部と略同じ位置にされている」点。

[相違点2]
本件補正発明では、「前記扉の真空断熱材の周囲に形成される耳部分が当該真空断熱材の内側に折り返され、当該耳部分の折り返し先端が、前記差込部の中心よりも内側にあり、前記ガスケット取付部と前記真空断熱材とは、前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する位置に設定されている」のに対して、引用発明では、真空断熱パネル64の耳部分の構成については不明であり、そのような構成を有しているかは不明である点。

(4)判断
ア 相違点1及び2について
断熱性能の向上を図ることは冷蔵庫の普遍的な課題であって、引用発明において、冷凍室扉37に配設する断熱性の高い真空断熱パネル64(真空断熱材)を、発泡断熱材66の充填の作業性や冷凍室扉37の強度を損なわない範囲で、できる限り広い範囲で配設することは設計上考慮することであるから、左右方向において、真空断熱パネル64の端部を、前記ガスケット保持部54に取り付けられるガスケットの「差込部」に相当する部分よりも外側に位置させることは、当業者が適宜なし得ることである。
また、引用発明の真空断熱パネル64は、アルミニウム箔と合成樹脂のラミネートフィルムを製袋したガスバリア容器に、綿状のガラス繊維(グラスウール)からなるコア材を収納し、ガスバリア容器の内部を真空排気した状態で封止して形成された板状の部材であるところ、封止部分は外気が侵入し易い箇所であるから、封止部分を真空断熱パネル64の短い辺に設置すべく左右の両端に設けることが通常である。
そして、真空断熱パネル64の封止部分は耳部分であるところ、冷蔵庫に用いられる真空断熱材において、その周囲に形成される耳部分を当該真空断熱材の庫内側に折り返されるようにすることは、例えば原査定で引用された引用文献2?4(上記(2)イ?エを参照。)に記載されているように、本願の出願前に周知技術であるから、引用発明に周知技術を適用し、真空断熱パネル64の封止部分が当該真空断熱パネル64の内側に折り返されるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
その際、真空断熱材の耳部分を幅広として十分なシール性を確保することは当然に考慮することであるから、引用発明の真空断熱パネル64の封止部分(耳部分)の折り返し先端を、ガスケット保持部54に取り付けられるガスケットの「差込部」に相当する部分よりも内側に位置させることは、当業者が適宜なし得ることである。
また、引用発明に周知技術を適用したものにおいて、冷凍室扉37を閉扉動作した際に、ガスケットの冷蔵庫本体11への接触により受ける荷重がガスケット保持部54と発泡断熱材66を介して拡散しながら発泡断熱材66と接触する真空断熱パネル64の左右方向の端部付近に作用することは明らかであるから、本件補正発明の「前記ガスケット取付部と前記真空断熱材とは、前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する位置に設定されている」に相当する構成を有するといえる。
一方、本件補正発明の上記相違点1及び2に係る構成について、本願の明細書には、その技術的意義を説明する記載は何らされていないから、格別な技術的意義を認めることができない。
そうすると、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成とすることは、周知技術に基づき、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

なお、請求人は、審判請求書(「1.請求項1に係わる発明の説明」、「4.請求項1に係わる発明と引用例との対比」の項参照。)において、本件補正発明が「耳部分の折り返し先端が、ガスケットを扉に取り付ける差込部の中心よりも内側にあるため、扉を閉じることでガスケットが冷蔵庫本体に接触したときの荷重が、差込部を介して耳部分の折り返し部位を真空断熱材の内側に押し付けるように効率よく作用する。このため、折り返し部位の密着状態が強固に維持され、折り返し部位の剥がれを抑制して密封性を高めることができる。」と主張する。
しかしながら、本件補正発明は「前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する」ところ、これについて、本願の明細書には何ら説明をする記載はなく、ガスケット取付部(49)と真空断熱材(35)との間に位置する扉(21)の扉内板(33)の剛性等の特性が不明であり、また、扉(21)の扉内板(33)と真空断熱材(35)の耳部分の折り返し部位との間に空隙が存在することが否定できないから、「扉を閉じることでガスケットが冷蔵庫本体に接触したときの荷重が、差込部を介して耳部分の折り返し部位を真空断熱材の内側に押し付けるように効率よく作用する。」とまでは認めることができない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

ウ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成30年1月25日の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。
(理由(進歩性))
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (刊行物等については引用文献等一覧参照)
・引用文献等 1?4
・備考
本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2011-102679号公報
引用文献2:特開2006-336722号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2005-331000号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2011-122739号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?4及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
前記第2の[理由]2(3)の検討を踏まえて、本願発明と引用発明とを対比すると、一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉内部に真空断熱材を備えて構成される冷蔵庫。」

[相違点A]
本願発明では、「前記扉の真空断熱材の周囲に形成される耳部分が当該真空断熱材の内側に折り返され、当該耳部分の折り返し先端が、扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを扉に取り付ける差込部の中心よりも内側にある」のに対して、引用発明では、真空断熱パネル64の耳部分の構成については不明であり、そのような構成を有しているかは不明である点。

そこで、上記相違点Aについて検討すると、相違点Aに係る本願発明の構成は、前記第2の[理由]2(3)の相違点2に係る本件補正発明の構成から「前記ガスケット取付部と前記真空断熱材とは、前記扉を閉じたときの前記ガスケットの前記冷蔵庫本体への接触により受ける荷重が前記ガスケット取付部を介して前記耳部分の折り返し部位に作用する位置に設定されている」という構成を省いたものと実質的に同じであることから、前記第2の[理由]2(4)の相違点2についての検討を踏まえると、上記相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-23 
結審通知日 2020-01-28 
審決日 2020-02-10 
出願番号 特願2017-5356(P2017-5356)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
塚本 英隆
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 三好 秀和  

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