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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1361107 |
審判番号 | 不服2019-5586 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-25 |
確定日 | 2020-03-26 |
事件の表示 | 特願2014- 43016「医用画像処理装置及び医用画像診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月28日出願公開、特開2015-167637〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月5日の出願であって、平成29年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月5日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年1月17日付けで平成30年9月10日にした手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対して同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成31年4月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年4月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載について、補正前の (1) 「 【請求項1】 複数の検査項目に亘り、複数の画像データを読み出す読出部と、 前記画像データごとの前記検査項目を表す付帯情報に基づいて、前記画像データの縮小画像が前記検査項目ごとに並べられた縮小画像配列を複数の検査項目に亘り表示部に表示させる表示制御部と、を備え、 前記表示制御部は、 前記縮小画像配列のうち、所定数の前記縮小画像を表示する表示ウィンドウを表示部に表示させるべく、前記所定数と前記縮小画像の縮小率とに基づいて前記表示ウィンドウを設定する表示ウィンドウ設定部を有する医用画像処理装置。」 を、 (2) 「 【請求項1】 複数の検査項目に亘り、複数の画像データを読み出す読出部と、 前記画像データごとの前記検査項目を表す付帯情報に基づいて、前記画像データの縮小画像が前記検査項目ごとに並べられた縮小画像配列を複数の検査項目に亘り表示部に表示させる表示制御部と、を備え、 前記表示制御部は、 前記表示部に表示される前記複数の検査項目に亘る前記縮小画像配列のうち、部分配列となる所定数の前記縮小画像を表示する表示ウィンドウを前記表示部上に表示させるべく、前記所定数と前記縮小画像の縮小率とに基づいて前記表示ウィンドウの大きさを設定する表示ウィンドウ設定部を有する医用画像処理装置。」 と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。) 2 補正の適否 上記請求項1に係る補正は、「表示ウィンドウ」に「表示する」、「前記縮小画像配列のうち」の「所定数の前記縮小画像」について、「前記複数の検査項目に亘る」「部分配列となる所定数の前記縮小画像」であるとの限定を付加する補正、「表示ウィンドウ設定部」がする「前記表示ウィンドウを設定する」ことについて、「前記表示ウィンドウの大きさを設定する」との限定を付加する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいる。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 なお、「表示ウィンドウを表示部に表示させる」を「表示ウィンドウを前記表示部上に表示させる」とする補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とする補正であり、請求項1に記載された発明の範囲に影響するものではない。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-6915号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。以下同様。)。 (引1-ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は医用画像を表示する医用画像表示装置及び医用画像表示方法に係り、特に原画像よりも小さく表示された複数の画像から選択された画像に対応する原画像を表示する医用画像表示装置及び医用画像表示方法に関する。」 (引1-イ)「【0004】 医師等の操作者が画像表示装置において画像データに基づく医用画像を観察したいとき、操作者は典型的には複数の患者についての患者情報を示す患者リストを表示するよう操作する。それから操作者が患者リストから患者のうちの1人を選択操作すると、選択された患者に関する複数の検査についての検査情報に基づく検査リストが表示される。操作者は検査リストから1つの検査を選択する操作を行う。これにより、検査リストから選択された検査についての1つ又はそれ以上の縮小画像が画像データに基づいて表示される。 【0005】 その後は通常、操作者は縮小画像を観察し、縮小画像のうちの1つを選択する。この選択に応じて、選択された縮小画像に対応する画像が大きなサイズで表示される。もし表示された画像が所望のものであれば、操作者は例えば診断のために当該表示画像を観察する。もし選択した検査の中に操作者が望む画像がないとき(或いは縮小画像の観察により無いと判断したとき)は、操作者は検査リストに戻る操作を行い、再度検査リストを表示させる必要がある。操作者は検査リストから異なる検査を選択し、上記した操作を繰り返すことになる(例えば、特許文献1参照)。 【特許文献1】特開平7-168845号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上記した操作作業は縮小画像とは異なる画面に表示される検査リストに戻ることを操作者に要求するため、操作者は所望画像が見つからない限り画面の切り替えを繰り返し行うことが要求される。検査リストは検査日や検査時刻についての情報しか含まない場合もある。この場合、操作者にとって所望の画像を見つけるのは困難であり結果としてほぼ全ての検査について検査の選択と縮小画像の観察、さらには対応する拡大画像の観察を強いられる場合も生じる。この結果、所望の画像を見つけるまでに時間がかかってしまう。 【0007】 さらに、患者の検査部位や撮影条件は検査間で類似する場合も少なくない。縮小画像は通常、原画像よりも少ない情報しか有していないので、画像間の相違を認識するのも容易ではなく、特に複数の検査について検査リストの画面と縮小画像の画面とを行ったり来たりしながら表示する場合は尚更である。 【0008】 本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、所望の画像を容易に見つけ出すことを可能とする医用画像表示装置及び医用画像表示方法を提供することを目的とする。」 (引1-ウ)「【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、所望の画像を容易に見つけ出すことが可能となり、画像観察効率の向上を図ることが可能となる。」 (引1-エ)「【0017】 (実施例1) 図1は本発明の実施例1に係る医用画像表示装置の構成の例を示すブロック図である。同図に示すように、医用画像表示装置10はインターフェース1、医用情報記憶ユニット2、バッファ記憶ユニット3、プロセッサ4、表示ユニット5、操作ユニット6、及び制御ユニット7を含む。 【0018】 インターフェース1は医用画像装置20にネットワークを介して接続され、医用画像装置20から画像情報及び付帯情報を含む医用情報を受信する。医用画像装置20は上記した医用画像装置のうちの1つ又はそれ以上のものであってもよい。画像情報は例えば画像データと撮影時刻を含む撮影条件情報とを含む。画像データは二次元画像データ、三次元画像データ、動画像データ、等であり、それぞれ1以上の二次元画像、1以上の三次元画像、1以上の動画像を表すものである。各動画像は一連の画像(複数の画像)を含むものであり、例えば、一連のフレーム画像や一連のスライス画像をも含む。インターフェース1がディスクドライブとして動作する場合、インターフェース1はCD-RやDVD等の記録媒体に記録された医用情報を受け取るようにしてもよい。受信した(受け取った)医用情報は医用情報記憶ユニット2に提供される。 【0019】 医用情報記憶ユニット2はインターフェース1で受信された(受け取られた)医用情報を記憶する。医用情報記憶ユニット2は例えば磁気ディスクのような記憶デバイスを含む。バッファ記憶ユニット3は検査リスト記憶部31及び画像リスト記憶部32を有する。検査リスト記憶部31は付帯情報に含まれた特定の患者情報に係る検査情報を記憶する。検査情報は医用情報記憶ユニット2に記憶された医用情報(付帯情報)から抽出される。画像リスト記憶部32は当該患者情報に係る画像情報を記憶する。画像情報は医用情報記憶ユニット2に記憶された医用情報から抽出される。 【0020】 プロセッサ4は画像情報に含まれる画像データに基づいて、原画像よりも小さい参照画像として表示される参照画像データを作成する。参照画像は例えばサムネイル画像、サイズ縮小画像、等であり、以下、サムネイル画像と称する。また、参照画像データについても以下サムネイル画像データと称する。サムネイル画像データは画像情報の一部として医用情報記憶ユニット2に記憶される。また、特定の患者情報に係るサムネイル画像データについては画像リスト記憶部32にも記憶される。プロセッサ4は検査情報に関してアイコンデータも作成する。アイコンデータの詳細については後述する。作成されたアイコンデータは検査情報の一部として医用情報記憶ユニット2に記憶される。また、特定の患者情報に係るアイコンデータについては検査リスト記憶部31にも記憶される。 【0021】 プロセッサ4は検査リスト記憶部31に記憶されたアイコンデータと画像リスト記憶部32に記憶されたサムネイル画像データを抽出する。抽出されたアイコンデータ及びサムネイル画像データは表示ユニット5に転送される。表示ユニット5はCRT(Cathode Ray Tube)表示部或いは液晶表示部(LCD:Liquid Crystal Display)を有し、医用情報記憶ユニット2に記憶された患者情報、検査情報、画像情報等を表示する。また、表示ユニット5はプロセッサ4から転送されたアイコンデータに基づいてアイコンを表示し、プロセッサ4から転送されたサムネイル画像データに基づいてサムネイル画像を表示する。 【0022】 操作ユニット6は例えばキーボード、トラックボール、マウス、ジョイスティック等の入力デバイスのうち1以上を有する。操作ユニット6はタッチパネルや様々なスイッチ(ボタン)を含んでもよい。操作ユニット6は指定、指示、選択のための情報を入力するのに用いられ、インタラクティブなインターフェースとして動作するものであってもよい。 【0023】 制御ユニット7はCPU(Central Processing Unit)やメモリ回路を含み、医用画像表示装置10全体の制御を行う。特に、制御ユニット7は操作ユニット6から入力された情報を受け取り、一時的にメモリ回路に入力情報を記憶し、この入力情報に基づいてインターフェース1、医用情報記憶ユニット2、バッファ記憶ユニット3、プロセッサ4、及び表示ユニット5を制御する。」 (引1-オ)「【0031】 図4は本発明の実施例1に係る所望画像を表示する流れの例を示すフローチャートである。例えば医師のような医用画像表示装置10の操作者が操作ユニット6を操作することにより、医用情報記憶ユニット2において第1の層22に記憶された患者のリストが表示ユニット5に表示される(ステップS1)。表示された患者リストは患者情報(A)乃至(N)を含む。操作者が患者Aについて特定の画像を観察する必要がある場合、操作者は操作ユニット6を用いて患者情報(A)を選択する(ステップS2)。 【0032】 患者情報(A)の選択に応じ、医用情報記憶ユニット2において第2の層23に記憶された検査情報(A-a)乃至(A-h)が検査リスト記憶部31に転送され一時的に記憶される。また、医用情報記憶ユニット2において第3の層24に記憶された画像情報(A-a-1)乃至(A-h-40)のような検査A-a乃至A-hに係る画像情報が画像リスト記憶部32に転送され一時的に記憶される。プロセッサ4は検査リスト記憶部31に記憶された検査情報(A-a)乃至(A-h)に含まれるアイコンデータを抽出する。抽出されたアイコンデータは表示ユニット5に転送される。表示ユニット5は患者Aの検査リストとして転送されたアイコンデータに基づくアイコンを表示する(ステップS3)。 【0033】 プロセッサ4はさらに画像リスト記憶部32に記憶された例えば画像情報(A-a-1)乃至(A-a-8)に含まれるサムネイル画像データを抽出する。抽出されたサムネイル画像データは表示ユニット5に転送される。表示ユニット5は患者Aの初期画像リストとして転送されたサムネイル画像データに基づくサムネイル画像を表示する(ステップS4)。」 (引1-カ)「【0055】 (実施例2) 図1に示す医用画像表示装置10の構成は実施例2にも適用され得るものである。図9は本発明の実施例2に係る表示ユニット5における画像表示の第1の例を示す図である。 【0056】 図5と同様、表示ユニット5がアイコン84及びサムネイル画像85を表示するとき、アイコン84は画面90において垂直方向に沿って表示される。また、アイコン84は画面90の左側に設けられた検査リスト表示領域81に表示される。検査リスト表示領域81のスペースに制限がある場合、限られた数のアイコン84が並べて表示される。図9では検査A-a乃至A-fに対応するアイコンA-a乃至A-fが検査リスト表示領域81に表示される。検査A-g及びA-hに対応するアイコンは操作ユニット6を用いたスクロール操作によって表示されてもよい。スクロール操作後、アイコンA-a及びA-bが検査リスト表示領域81から消える一方で検査A-g及びA-hに対応するアイコンが表示される。 【0057】 検査リスト表示領域81に表示されたアイコン84の各々に対しサムネイル画像85は画面60(当審注:前後の文脈から「画面60」は「画面90」の誤記と認める。)において水平方向に沿ってアイコン84に対応する態様で画像リスト表示領域82に表示される。1又はそれ以上の特定のアイコン84に係るサムネイル画像85に対して画像リスト表示領域82のスペースに制限がある場合、当該特定のアイコン84に対しては限られた数のサムネイル画像85が並べて表示される。図9ではアイコンA-aに対するサムネイル画像A-a-1乃至A-a-7が画像リスト表示領域82に表示され、サムネイル画像A-a-8はサムネイル画像A-a-1乃至A-a-7と共に表示されない。サムネイル画像A-a-8は操作ユニット6を用いたスクロール操作によって表示されてもよい。このときサムネイル画像A-a-1が画像リスト表示領域82から消える。サムネイル画像85は操作ユニット6を用いて選択可能である。スクロール操作は例えば上記したアイコンA-aのような(選択された)特定のアイコン84に係るサムネイル画像85についてのみ行われるようにしてもよいし、検査リスト表示領域81に表示された全てのアイコン84に係るサムネイル画像85について同時に行われるようにしてもよい。 【0058】 実施例1と同様、操作者が画像リスト表示領域82に所望の画像に対応するサムネイル画像があると判断すると、操作者は操作ユニット6を操作し当該サムネイル画像85を選択する。操作者は2以上のサムネイル画像85を選択してもよい。この場合、操作者は複数のアイコン84のうち特定の1つについて2以上のサムネイル画像85を選択してもよいし、2以上のアイコンについて複数のサムネイル画像85を選択するようにしてもよい。1又はそれ以上のサムネイル画像85の選択に応じ、選択されたサムネイル画像85に対応する原画像が例えば画面90の大きさで表示される。原画像の表示中、アイコン84及びサムネイル画像85は画面90には表示されなくてもよい。 【0059】 表示ユニット5が例えば2画面有するときは、図10に示すように、アイコン84及びサムネイル画像85が画面90に表示される一方で、原画像がもう一方の画面100に表示されるようにしてもよい。」 (引1-キ)「【0064】 実施例2によれば、検査情報を表す複数のアイコン84及びこれらのアイコン84に関するサムネイル画像85が互いに対応して表示ユニット5に並べて表示される。従って、操作者は検査情報を選択し、サムネイル画像を表示し、所望の画像であるか判断するために表示画面(ウィンドウ)を前後しながら切り替える必要がない。さらに、操作者は画面(ウィンドウ)切り替えを行うことなく異なる検査に係るサムネイル画像を比較することができるようになる。このような表示は操作者が1又はそれ以上の所望の画像に対応するサムネイル画像を選択するのに役立ち得る。結果として、画像観察(診断)効率の向上を図ることが可能となる。 【0065】 上述の各実施例においてはアイコンが検査情報に基づいて検査を表すように作成された。しかし、アイコンはX線断層像撮影装置から得られた画像(以下、CT画像と称す)の一連のセットを表すように作成されてもよい。例えば、第1のアイコンが一連のCT画像の第1のセットを表してもよい。例えば、第1のセットに含まれた一連の画像は100枚のスライス画像となる。この場合、サムネイル画像は第1のセットに含まれた100枚のスライス画像に基づいて作成される。同様に、第2のアイコンが一連のCT画像の第2のセットを表してもよい。例えば、第2のセットに含まれた一連の画像は50枚のスライス画像となる。」 (引1-ク) 「【図1】 」 (引1-ケ) 「【図2】 」 (引1-コ) 「【図9】 」 イ 上記(引1-ア)ないし(引1-コ)の記載から、引用文献1には、 「 インターフェース1、医用情報記憶ユニット2、バッファ記憶ユニット3、プロセッサ4、表示ユニット5、操作ユニット6、及び制御ユニット7を含む医用画像表示装置10であって、 インターフェース1は、医用画像装置20にネットワークを介して接続され、医用画像装置20から画像情報及び付帯情報を含む医用情報を受信し、受信した医用情報は医用情報記憶ユニット2に提供され、 医用情報記憶ユニット2は、インターフェース1で受信された医用情報を記憶し、 バッファ記憶ユニット3は検査リスト記憶部31及び画像リスト記憶部32を有し、検査リスト記憶部31は、付帯情報に含まれた特定の患者情報に係る検査情報を記憶し、画像リスト記憶部32は、当該患者情報に係る画像情報を記憶し、 プロセッサ4は、 画像情報に含まれる画像データに基づいて、原画像よりも小さい参照画像として表示されるサムネイル画像データを作成し、特定の患者情報に係るサムネイル画像データは画像リスト記憶部32に記憶され、 検査情報に関してアイコンデータも作成し、特定の患者情報に係るアイコンデータは検査リスト記憶部31に記憶され、 検査リスト記憶部31に記憶されたアイコンデータと画像リスト記憶部32に記憶されたサムネイル画像データを抽出し、抽出されたアイコンデータ及びサムネイル画像データは表示ユニット5に転送され、 表示ユニット5は、プロセッサ4から転送されたアイコンデータに基づいてアイコンを表示し、プロセッサ4から転送されたサムネイル画像データに基づいてサムネイル画像を表示するものであって、 アイコン84は、画面90の左側に設けられた検査リスト表示領域81に、画面90において垂直方向に沿って表示されるが、検査リスト表示領域81のスペースに制限がある場合、限られた数のアイコン84が並べて表示され、 検査リスト表示領域81に表示されたアイコン84の各々に対しサムネイル画像85は画面90において水平方向に沿ってアイコン84に対応する態様で画像リスト表示領域82に表示されるが、1又はそれ以上の特定のアイコン84に係るサムネイル画像85に対して画像リスト表示領域82のスペースに制限がある場合、当該特定のアイコン84に対しては限られた数のサムネイル画像85が並べて表示される、 医用画像表示装置10。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)本件補正発明と引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア) a 引用発明の「付帯情報に含まれた特定の患者情報に係る検査情報」は、本件補正発明の「検査項目」に相当する。 b 引用発明の「画像情報に含まれる画像データ」は、本件補正発明の「画像データ」に相当する。 c 引用発明の「検査情報」及びそれに対応する「画像データ」が、それぞれ複数あることは明らかである。 d 上記aないしcを踏まえると、「医用画像装置20にネットワークを介して接続され」た「インターフェース1」が「医用画像装置20から画像情報及び付帯情報を含む医用情報を受信し」、「医用情報記憶ユニット2」が「インターフェース1で受信された医用情報を記憶」する引用発明は、「付帯情報に含まれた」複数の「検査情報」と当該検査情報に対応する「画像情報に含まれる」複数の「画像データ」を受信して記憶するものであるから、本件補正発明の「複数の検査項目に亘り、複数の画像データを読み出す読出部」に相当する構成を備えているといえる。 (イ) a 引用発明の「原画像よりも小さい参照画像として表示されるサムネイル画像」は、本件補正発明の「画像データの縮小画像」に相当する。 b 引用発明の「画面90」は、本件補正発明の「表示部」に相当する。 c 引用発明の「検査リスト表示領域81に表示されたアイコン84の各々に対しサムネイル画像85は画面90において水平方向に沿ってアイコン84に対応する態様で画像リスト表示領域82に表示される」ことは、「アイコン84」が「検査情報に関して」「作成し」た「アイコンデータに基づい」たものであるから、「検査リスト表示領域81に表示された」「検査情報に関」する「アイコン84の各々に対しサムネイル画像85は画面90において水平方向に沿って」「検査情報」「に対応する態様で画像リスト表示領域82に表示される」ことである。 d 引用発明の「検査情報」は、本件補正発明の「検査項目」に相当するから、上記aないしcを踏まえると、引用発明の「検査リスト表示領域81に表示されたアイコン84の各々に対しサムネイル画像85は画面90において水平方向に沿ってアイコン84に対応する態様で画像リスト表示領域82に表示される」ことは、本件補正発明の「前記画像データごとの前記検査項目を表す付帯情報に基づいて、前記画像データの縮小画像が前記検査項目ごとに並べられた縮小画像配列を複数の検査項目に亘り表示部に表示」することに相当する。 e よって、引用発明は、本件補正発明の「前記画像データごとの前記検査項目を表す付帯情報に基づいて、前記画像データの縮小画像が前記検査項目ごとに並べられた縮小画像配列を複数の検査項目に亘り表示部に表示させる表示制御部」に相当する構成を備えているといえる。 (ウ) 引用発明の「画像リスト表示領域82」は「画面90」の部分領域であるから、引用発明の「1又はそれ以上の特定のアイコン84に係るサムネイル画像85に対して画像リスト表示領域82のスペースに制限がある場合、当該特定のアイコン84に対しては限られた数のサムネイル画像85が並べて表示される」ことは、本件補正発明の「前記表示部に表示される前記複数の検査項目に亘る前記縮小画像配列のうち、部分配列となる所定数の前記縮小画像を表示する」に相当する。 イ そうすると、本件補正発明と引用発明とは、 「 複数の検査項目に亘り、複数の画像データを読み出す読出部と、 前記画像データごとの前記検査項目を表す付帯情報に基づいて、前記画像データの縮小画像が前記検査項目ごとに並べられた縮小画像配列を複数の検査項目に亘り表示部に表示させる表示制御部と、を備え、 前記表示部に表示される前記複数の検査項目に亘る前記縮小画像配列のうち、部分配列となる所定数の前記縮小画像を表示する、医用画像処理装置。」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 前記表示部に表示される前記複数の検査項目に亘る前記縮小画像配列のうち、部分配列となる所定数の前記縮小画像を表示することについて、本件補正発明においては、「前記表示制御部」が「前記表示部に表示される前記複数の検査項目に亘る前記縮小画像配列のうち、部分配列となる所定数の前記縮小画像を表示する表示ウィンドウを前記表示部上に表示させるべく、前記所定数と前記縮小画像の縮小率とに基づいて前記表示ウィンドウの大きさを設定する表示ウィンドウ設定部を有する」るのに対し、引用発明においては、そのような特定がされていない点。 (4)判断 ア 上記相違点1について検討する。 複数のサムネイル画像を画面表示する際に、当該サムネイル画像が表示される領域となるウィンドウを設定し、当該ウィンドウを画面上に表示させることは、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-202635号公報(以下「引用文献2」という。)及び特開平9-153985号公報(以下「引用文献3」という。)にも記載されているように、画像表示の技術分野において慣用されている。 ここで、ウィンドウの大きさを、一度に表示させようとする数のサムネイル画像を表示させることが可能な大きさとすることは、当然考慮すべき事項である。 そして、ウィンドウ内に表示することができるサムネイル画像数は、サムネイル画像のサイズ、すなわち、サムネイル画像の縮小率に依存するものであるから、ウィンドウの大きさを、一度に表示させようとするサムネイル画像数及びサムネイル画像の縮小率を考慮して決定することに困難性はない。 引用発明は、プロセッサ4がサムネイル画像データを作成するものであるから、引用発明を、プロセッサ4が作成するサムネイル画像の縮小率と一度に表示させようとするサムネイル画像数を考慮して、サムネイル画像の表示領域となる、画面90に表示させるウィンドウの大きさを決定するものとし、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。 イ 本件補正発明の奏する作用効果 本願の発明の詳細な説明の段落【0050】に記載された「ユーザは、複数の検査項目に亘る複数の縮小画像を一覧して視認しながら所望の医用画像を選択することができる。したがって、医用画像の選択の簡便化を図る医用画像処理装置1を提供することができる。」という効果は、本件補正発明の奏する効果であると認められる。 また、請求人は、審判請求書の請求の理由の3.(2-4)において、「本願発明においては、表示画面上に縮小画像が表示される表示ウィンドウを表示させます。当該表示ウィンドウに表示される内容は、上述しましたように、『表示部に表示される複数の検査項目に亘る縮小画像配列のうち、部分配列となる所定数の縮小画像』です。この際ウィンドウ内に表示される縮小画像は、例えば、特定のシリーズに関する画像データや特定の検査項目に関する画像データに限定されるわけではなく、複数のシリーズ、複数の検査項目の画像データの間を自由に行き来する(表示させる)ことが可能です。それにより、表示ウィンドウにおいて、所望の縮小画像が表示可能となります。」と本件補正発明の奏する効果を主張する。 しかしながら、引用発明は、「検査リスト表示領域81に表示されたアイコン84の各々に対しサムネイル画像85は画面90において水平方向に沿ってアイコン84に対応する態様で画像リスト表示領域82に表示され」、「特定のアイコン84に対しては限られた数のサムネイル画像85が並べて表示される」もの、すなわち、特定の検査情報に関するサムネイル画像については、複数のサムネイル画像のうち一部を表示させつつ、複数の検査情報に対応する複数のサムネイル画像が同時に表示されるものであって、それにより、上記(引1-キ)の段落【0064】に摘記したように「操作者は検査情報を選択し、サムネイル画像を表示し、所望の画像であるか判断するために表示画面(ウィンドウ)を前後しながら切り替える必要がない。さらに、操作者は画面(ウィンドウ)切り替えを行うことなく異なる検査に係るサムネイル画像を比較することができるようになる。このような表示は操作者が1又はそれ以上の所望の画像に対応するサムネイル画像を選択するのに役立ち得る。結果として、画像観察(診断)効率の向上を図ることが可能となる。」という効果を奏するものである。 したがって、上記の本件補正発明の奏する効果は、引用発明が奏する効果と同じものであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項並びに引用文献2及び3に記載された慣用技術から当業者が予測し得る程度を超えるものではない。 ウ よって、本件補正発明は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成31年4月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年2月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、理由2は、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2006-6915号公報 引用文献2:特開2005-202635号公報 引用文献3:特開平9-153985号公報 引用文献4:特開2007-233841号公報 引用文献5:国際公開第2012/141330号 引用文献6:特開2009-37282号公報 引用文献7:国際公開第2009/063900号 なお、引用文献4及び5は、請求項2及び3に対して、引用文献6及び7は、請求項3に対して引用されたものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「所定数の前記縮小画像」及び「前記表示ウィンドウを設定する」ことに係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(3)及び(4)で説示したとおり、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-01-21 |
結審通知日 | 2020-01-28 |
審決日 | 2020-02-12 |
出願番号 | 特願2014-43016(P2014-43016) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 裕之 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 森 竜介 |
発明の名称 | 医用画像処理装置及び医用画像診断装置 |
代理人 | 特許業務法人三澤特許事務所 |