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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1361200
審判番号 不服2018-10213  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-26 
確定日 2020-03-25 
事件の表示 特願2015-549802「血管内画像の位置の特定」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日国際公開、WO2014/113188、平成28年 3月 3日国内公表、特表2016-506276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月10日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内に応答がなく、平成30年3月23日付けで拒絶査定されたところ、同年7月26日に拒絶査定不服審判の請求がされ、それと同時に手続補正がされ、その後、当審において平成31年4月10日付けで拒絶理由が通知され、令和元年10月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし20に係る発明は、令和元年10月10日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 【請求項1】
撮像窓及び撮像アセンブリを有する撮像カテーテルにおいて、前記撮像アセンブリは、画像コレクタを有し、前記画像コレクタは、前記画像コレクタの内側に配置された放射線不透過性標識を持ち、前記画像コレクタを含む前記撮像アセンブリは、血管系を撮像しながら、前記撮像窓内で平行移動可能であり、前記放射線不透過性標識は、前記撮像窓内での前記平行移動の間に前記撮像アセンブリ内の前記画像コレクタの位置を示すように前記画像コレクタと縦方向において同一場所に位置する、撮像カテーテル。」


第3 当審の平成31年4月10日付け拒絶理由の概要

当審の平成31年4月10日付け拒絶理由のうち、理由1の概要は、次のとおりである。

(進歩性)本願の請求項1ないし20に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1-8
・引用文献 1、2

・請求項 9-20
・引用文献 1-3

<引用文献一覧>
引用文献1:特開2000-229083号公報
引用文献2:特開平10-192281号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2011/0319752号明細書


第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1について

(1)引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。以下同様。)。

(引1-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血管、脈管、消化器管等の体腔内に挿入して、管腔断面像の表示などを行うために用いられる超音波カテーテルに関するものである。」

(引1-イ)「【0006】術者は、超音波カテーテルを血管狭窄部へ持っていくと、カテーテルシースを意図した位置に固定した状態を保持しつつ、ドライブシャフトを引っ張って、超音波振動子を手前に移動させながら、狭窄部を通過させて観察する。これにより、術者は狭窄部を一旦通過させたところで超音波カテーテルを固定すれば、その後は繰り返し挿通させる必要がない。」

(引1-ウ)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の超音波カテーテルにおいては、X線造影下で確認できるのはX線造影マーカのみであり、ステンレス等で構成される超音波振動子のハウジングやドライブシャフトは殆ど確認できない。また、X線造影マーカが設けられたカテーテルの先端位置と、超音波振動子の位置に、数センチのズレが存在するため、X線映像下でマーカが血管の狭窄部を通過したことを確認したとしても、超音波振動子が狭窄部を通過した確証はない。特に、上述したような、超音波振動子がカテーテルシースに対して軸方向に移動するタイプの超音波カテーテルにおいては、移動によって超音波振動子が現在どの位置に存在するか、把握するのが困難である。
【0010】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、体腔内等の管内で、X線透視画像を観察しながら作業する際に、超音波振動子の現在位置を正確に把握することが可能な超音波カテーテルを提供することを目的とする。」

(引1-エ)「【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0016】図1は本発明に係る超音波カテーテルを示す側面図である。
【0017】図2は図1に示した実施の形態に係る超音波カテーテルの先端部の部分断面図である。
【0018】図3は本発明に係る超音波カテーテルシステムの全体構成を説明するための概略構成図である。
【0019】図1において、超音波カテーテル1は、体腔あるいは管腔内に挿入されるカテーテルシース2と、外部駆動源30(図3)と接続するためのコネクタ3とからなり、コネクタ3は、カテーテルシース2に連結したシースコネクタ3aと、後述する駆動力伝達用のドライブシャフトを介して超音波振動子と連結するドライブシャフトコネクタ3bとよりなる。カテーテルシース2の先端にはガイドワイヤ用ルーメン(管路)15が備えられている。シースコネクタ3aに設けられているフラッシング用ポート5は、超音波振動子に付着した気泡を除去するためカテーテルシース内に超音波伝達媒体である生理食塩水を加圧注入(フラッシング)するためのものであり、フラッシングを行う時以外は、栓をされている。ドライブシャフトコネクタ3bには、術前にカテーテルシース2内を生理食塩水で満たすプライミング作業の終了を確認するための確認用ポート6が設けられており、こちらも普段は栓をされる。
【0020】カテーテルシース2は、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂の多層構造からなり、管腔内の超音波振動子が存在する位置より基端には、樹脂層の間に金属製の編組や平板コイル等の補強体が設けられる。
【0021】図2における10はステンレス等の金属線密巻きコイルからなる回転駆動力を超音波振動子に伝達するためのドライブシャフトであり、その内部には図示しない信号線が超音波振動子13に接続されてコネクタ3まで延在している。ドライブシャフト10の先端には円筒形のハウジング11が固定される。
【0022】ハウジング11の側壁には開口12が設けられ、その内部に上述の信号線に接続された超音波振動子13が固定される。ハウジング11は、X線造影性の高い金属材料である、プラチナ(Pt)や、イリジウム(Ir)、金(Au)、またはそれらの合金等によって構成される。ハウジング11はカテーテルシース2内との摺動抵抗を軽減するため、ドライブシャフト10とほぼ等しい外径を持つ円筒形のパイプ形状に形成され、細径化のため薄肉に形成される。これにより、ハウジング11がX線透視画像下で明瞭に造影されるので、術者は超音波振動子13の位置を正確に把握できる。
【0023】超音波振動子13は、矩形状あるいは円形状をしたPZT等からなる圧電材の両面に、電極を蒸着、印刷等により形成したものである。超音波振動子13の設置位置は、ドライブシャフト10が回転ムラを引き起こさないように、超音波振動子13や図示しない背面材を組み込んだ状態におけるハウジング11の重心が、回転軸方向の中心付近となるような位置に設置される。
【0024】超音波振動子13を固定したハウジング11の先端には更に、小径コイルからなる弾性部材14が備えられる。弾性部材14は、ドライブシャフト10に連動して回転する。弾性部材14により、ドライブシャフト10や超音波振動子13の回転安定性が向上し、カテーテルシース2を固定した状態で超音波振動子13を軸方向に移動させる際に、ハウジングがカテーテルシース2に接触するのを防ぐことができる。また、弾性部材14が存在することによって、ドライブシャフト10や超音波振動子13が存在しないカテーテルシース2の先端部分での急激な物性の変化が押さえられ、段階的に柔軟になるため、この部分での折れ曲がり(キンク)が防止される。ハウジング11と、ドライブシャフト10および弾性部材14の固定は、ハンダ等の固定材料23にて行われる。弾性部材14は、Ni-Ti合金等の超弾性合金や、ステンレス等の金属線からなるが、コイルでなく、直線状の棒状体で形成しても良い。また、一定の径でなく、カテーテル先端側に向かって縮径させても良い。
【0025】15は、カテーテルシース2の先端部に設けられたガイドワイヤ用ルーメンである。ガイドワイヤ用ルーメン15は、超音波振動子13よりも先端位置に設けられたガイドワイヤ挿入口16と、超音波カテーテル1の最も先端位置となるガイドワイヤ出口17の間に延在し、カテーテルシース2の先端部に接着された長さ15?40mm程度の樹脂製の管状部材18よりなる。
【0026】ガイドワイヤ用ルーメン15の管路内壁には、カテーテルシースの管腔内と連通する通路19の開口20が設けられる。通路19は、カテーテルシース2の管腔内先端に設けられた樹脂製の補強チップ21の中心を通るように形成される。
【0027】22は、体腔内挿入時にX線透視下で超音波カテーテル1の先端位置を確認するためのX線不透過マーカであり、Pt、Au、Ir等のX線不透過性(造影性)の高い金属コイルから構成される。
【0028】24は補強チップ21と弾性部材14との境界部を補強するための補強部材である大径コイルであり、X線不透過マーカ22と同様、Pt、Au、Ir等のX線不透過性の高い金属コイルから構成される。大径コイル24は、カテーテルシース2の管腔内壁に密着するように設けられ、その中には弾性部材14の先端が部分的に納まる。大径コイル24の存在によって、血管内におけるガイドワイヤ用ルーメン15の付け根の位置がX線透視下で確認できる。また、大径コイル24は、ガイドワイヤ用ルーメン15とカテーテルシース2の付け根部分の補強も行っている。樹脂製の補強チップ21は形状加工が容易であるため、付け根部分に外観上段差が出ないように形成することが可能であるが、半面柔軟性に難があり、カテーテルシース2との移行部分の物性変化が急激になる。この移行部分に大径コイル24を設けることによって、柔軟性を保ちながら補強することが可能となるため、移行部分での耐屈曲性が高められる。また、大径コイル24は、中に弾性部材14の先端を回転可能に収納しているため、超音波カテーテル2の挿入操作時には、カテーテルシース2の内部に空洞となる部分が存在せず、全長に渡って強度が保たれる。
【0029】術前に行うプライミングの作業は、通路19を介して行われる。超音波カテーテル1の先端から注入が行われることによって、先端部に設置される超音波振動子13付近での液圧が高くなり、超音波振動子13の表面に気泡が付着しにくくなる。具体的には、プライミングの作業は、術前に専用のホルダー(図示しない)に超音波カテーテル1を収納し、ガイドワイヤ出口17から開口20を通じて、後端に備えられた確認用ポート6に到るまで生理食塩水等の超音波伝達媒体がカテーテル内に注入される。また、術中には、フラッシング用ポート5よりフラッシングを行い、カテーテルシース2内から開口20および管状部材18を通じて、外部に生理食塩水等を排出することができる。なお、通路19は、補強チップ21を介してガイドワイヤ用ルーメン15の管路内壁に連通しているので、カテーテルシース2の先端部分の強度を低下させることはない。
【0030】図3における外部駆動源30は、モータを内蔵し、ドライブシャフト10を介して超音波振動子13を回転駆動させる。また、超音波振動子13とはドライブシャフト10内に延在する信号線を介して電気的にも接続されており、超音波の送信・受信信号は超音波診断装置31へ送られる。超音波診断装置31は、表示部32により体腔内の横断面像を表示し、画像の調節や駆動装置の制御は操作パネル33により行われる。また、得られた画像は画像記録装置34により録画される。
【0031】図4は、本発明の超音波カテーテル1の、基端部の構造を説明する側面断面図である。図4において、ドライブシャフトコネクタ3bは、ドライブシャフト10の基端側に接続され、超音波振動子13をカテーテルシース2に対して相対的に手元側へ移動させることができる。ドライブシャフトコネクタ3bは、ドライブシャフト10の基端の所定部分を覆いながらシースコネクタ3a内を摺動可能なガイドチューブ40を備えている。ガイドチューブ40は、ドライブシャフト10を引っ張った際に、ドライブシャフト10の基端部分を外界に露呈させないためのもので、その先端部には膨張部41を有し、シースコネクタ3aからのガイドチューブ40の脱落を防止する。
【0032】シースコネクタ3aは、カテーテルシース2の後端と接続ポート42にて連結されており、シースコネクタ3a内に挿入されるドライブシャフトコネクタ3bとの間における気密性を保つためのOリング状をしたシール材43と、ネジ部44とを備えており、押し子45に備えられたネジ機構とネジ部44の接続により、シール材43が把持される。
【0033】ドライブシャフトコネクタ3bの基端部は、外部駆動源30と着脱可能であり、回転端子46がモータ駆動装置と勘合してドライブシャフト10と共に回転する。47は信号線である。
【0034】本発明の超音波カテーテル1における超音波の走査(スキャン)は、外部駆動源30内のモータの回転運動をドライブシャフト10に伝達し、ドライブシャフト10の先端に固定されたハウジング11を回転させることによって、ハウジング11に設けられた超音波振動子13で送受される超音波を略径方向に走査することによって行われる。ここで得られる超音波画像は、血管内の横断面像である。また、超音波カテーテル1全体、あるいはドライブシャフトコネクタ3bを手元側へ引っ張り、ドライブシャフト5を長手方向に移動させることによって、血管内の軸方向に間隔を空けた包囲組織体における360°の断面画像を任意の位置まで走査的に得ることができる。
【0035】次に、本発明の超音波カテーテルの作用について説明する。図5は、本発明の超音波カテーテル1を血管内の狭窄部に挿入している様子を示す図である。ここでは、ガイドワイヤ50は固定され、ガイドワイヤ50をガイドワイヤ用ルーメン15に挿通した超音波カテーテル1が体腔外から押し進められる。
【0036】図6は図5のものをX線映像下で観察した様子を示すものである。X線映像下では、樹脂全体にタングステン等のX線造影粒子を混入されたガイドワイヤ50に加えて、超音波カテーテル1先端のX線不透過マーカ22と、大径コイル24及びハウジング11が視認可能である。超音波スキャンを開始し、超音波振動子13を手元側へ引く作業が行われると、超音波振動子13は超音波カテーテル1の先端から離れていくが、ハウジング11のX線造影性によって、術者は常時超音波振動子13の位置を把握することができる。
【0037】なお、以上説明した実態の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物を含む趣旨である。
【0038】
【発明の効果】以上に述べたごとく、本発明の超音波カテーテルによれば、X線造影下において、超音波振動子の位置を正確に把握することができ、超音波振動子を移動させた場合であっても常に位置を把握できるため、手術の効率が向上し、ひいては操作者の不快感や疲労感を低減することができる。」

(引1-オ)【図1】




(引1-カ)【図2】




(引1-キ)【図3】




(引1-ク)【図4】




(引1-ケ)【図6】




(2)上記(引1-ア)ないし(引1-ケ)の記載から、引用文献1には、

「 血管、脈管、消化器管等の体腔内に挿入して、管腔断面像の表示などを行うために用いられる超音波カテーテル1であって、
超音波カテーテル1は、体腔あるいは管腔内に挿入されるカテーテルシース2と、外部駆動源30と接続するためのコネクタ3とからなり、
コネクタ3は、カテーテルシース2に連結したシースコネクタ3aと、駆動力伝達用のドライブシャフト10を介して超音波振動子13と連結するドライブシャフトコネクタ3bとよりなり、
カテーテルシース2の先端にはガイドワイヤ用ルーメン(管路)15が備えられており、カテーテルシース2は、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂の多層構造からなり、管腔内の超音波振動子が存在する位置より基端には、樹脂層の間に金属製の編組や平板コイル等の補強体が設けられており、
ドライブシャフト10は、ステンレス等の金属線密巻きコイルからなり、回転駆動力を超音波振動子13に伝達するためのものであり、その内部には信号線が超音波振動子13に接続されてコネクタ3まで延在しており、ドライブシャフト10の先端には円筒形のハウジング11が固定されており、
ハウジング11の側壁には開口12が設けられ、その内部に上述の信号線に接続された超音波振動子13が固定されており、ハウジング11は、X線造影性の高い金属材料である、プラチナ(Pt)や、イリジウム(Ir)、金(Au)、またはそれらの合金等によって構成されており、ハウジング11がX線透視画像下で明瞭に造影されるので、術者は超音波振動子13の位置を正確に把握することができ、
超音波振動子13は、矩形状あるいは円形状をしたPZT等からなる圧電材の両面に、電極を蒸着、印刷等により形成したものであり、
超音波振動子13を固定したハウジング11の先端には更に、小径コイルからなる弾性部材14が備えられ、弾性部材14は、ドライブシャフト10に連動して回転し、
ガイドワイヤ用ルーメン(管路)15の先端付近には、体腔内挿入時にX線透視下で超音波カテーテル1の先端位置を確認するための、Pt、Au、Ir等のX線不透過性(造影性)の高い金属コイルから構成されるX線不透過マーカ22が設けられており、
カテーテルシース2の管腔内先端には、樹脂製の補強チップ21が設けられ、その基端側には、補強チップ21と弾性部材14との境界部を補強するための補強部材である大径コイル24が設けられており、大径コイル24は、X線不透過マーカ22と同様、Pt、Au、Ir等のX線不透過性の高い金属コイルから構成され、血管内におけるガイドワイヤ用ルーメン15の付け根の位置をX線透視下で確認することができ、
ドライブシャフトコネクタ3bは、ドライブシャフト10の基端側に接続され、超音波振動子13をカテーテルシース2に対して相対的に手元側へ移動させることができ、
ドライブシャフトコネクタ3bの基端部は、外部駆動源30と着脱可能であり、回転端子46がモータ駆動装置と勘合してドライブシャフト10と共に回転し、
超音波カテーテル1における超音波の走査(スキャン)は、外部駆動源30内のモータの回転運動をドライブシャフト10に伝達し、ドライブシャフト10の先端に固定されたハウジング11を回転させることによって、ハウジング11に設けられた超音波振動子13で送受される超音波を略径方向に走査することによって行われ、ドライブシャフトコネクタ3bを手元側へ引っ張り、ドライブシャフト5を長手方向に移動させることによって、血管内の軸方向に間隔を空けた包囲組織体における360°の断面画像を任意の位置まで走査的に得ることができ、
X線映像下では、超音波カテーテル1先端のX線不透過マーカ22と、大径コイル24及びハウジング11が視認可能であり、超音波スキャンを開始し、超音波振動子13を手元側へ引く作業が行われると、超音波振動子13は超音波カテーテル1の先端から離れていくが、ハウジング11のX線造影性によって、術者は常時超音波振動子13の位置を把握することができる、超音波カテーテル1。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 引用文献2について

引用文献2には、次の事項が記載されている。

(引2-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キャビティの画像を提供するために、キャビティ内に配置される、プロウディアン等の米国特許第4,917,097号に記載された種類の超音波撮像装置に関し、更に詳細には、脈管系の画像を発生するため、撮像装置のトランスジューサアッセンブリ部分を脈管系内に配置できる大きさにした超音波撮像装置及び該装置の製造方法に関する。」

(引2-イ)「【0019】
【発明の実施の形態】次に、図1を参照すると、この図には、装置をその最終的な円筒形形態に形成する前の組み立て済みの平らな形態で超音波トランスジューサアッセンブリが示してある。超音波トランスジューサアッセンブリは、超音波トランスジューサアッセンブリの他の例示の構成要素が取り付けられた可撓性回路2を有する。可撓性回路2は、好ましくは、デュポン社から入手できるカプトン(カプトン(KAPTON)は登録商標である)等の可撓性ポリイミドフィルム層(基材)を有する。しかしながら、可撓性であり且つ比較的強いマイラー(マイラー(MYLAR)は登録商標である)等の他の適当な材料で可撓性回路2のフィルム層を形成できる。可撓性回路2は、クロム付着層上に超小型回路を製作するのに使用される周知のスパッタリング技術、めっき技術、及び蝕刻技術によって、可撓性回路2の表面上に付着させた展性金属(例えば金)から形成された金属製相互接続回路を更に有する。
【0020】相互接続回路は、一組の五つの集積回路チップ6とPZT又はPZT複合材料でできた一組の64本のトランスジューサエレメント8との間、五つの集積回路チップのうちの隣接したチップ間、及び五つの集積回路チップと超音波カテーテルを画像信号プロセッサにケーブル(図示せず)を介して通信接続するための一組のケーブルパッド10との間で可撓性回路2の表面上に付着させた導線ラインからなる。ケーブルは、例えば、螺旋状に巻いてあり且つ薄いプラスチック製スリーブ内に被覆された七本の43AWG絶縁マグネットワイヤからなる。これらの七本のケーブルの集積回路チップ6への接続及びそれらの機能は、プロウディアン(故人)等の米国特許第4,917,097号に説明されている。」

(引2-ウ)「【0026】次に、図2を参照すると、この図には、例示の超音波トランスジューサアッセンブリが再成形済みの状態で示してある。この形状は、図1に示す部分的に組み立てた状態の平らな超音波トランスジューサアッセンブリを以下に説明する形成プロセスを使用して巻いて円筒形形状にすることによって得られる。側方に向いた円筒形トランスジューサアレイ装置で超音波を全体に半径方向に伝達し、受け入れるため、トランスジューサエレメント8を含む超音波トランスジューサアッセンブリのトランスジューサ部分12を円筒形形状にする。トランスジューサエレメント8が配置されたトランスジューサ部分12は、別の態様では、図2に示す円筒形とは異なる方法で、側方に発射する(side-fire )平らなアレイや前方に向いた平らな又は湾曲したアレイ等の別の視野に従って成形でき且つ配向できる。
【0027】超音波トランスジューサアッセンブリの電子装置部分14は、どのような形状であってもよい。しかしながら、例示の例では、集積回路チップ6を支持する可撓性回路2の部分は、可撓性回路2と集積回路チップ6との間の電気的接続部のため、比較的平らである。かくして、5個の集積回路チップ6を支持する可撓性回路2の部分は、円筒形に再形成した(巻いた)場合に五角形形状をなす。本発明の変形例では、4個の集積回路を持つ再形成済みの可撓性回路は、矩形断面を持つ。集積回路の数及び結果的に得られる断面形状はこの他にもある。
【0028】図2は、集積回路チップ6を支持する可撓性回路2の部分から延びる、可撓性回路2に設けられたケーブルパッド10の組を更に示す。超音波トランスジューサアッセンブリの中央の内腔16(トランスジューサアッセンブリを取り付けたカテーテルの使用中にガイドワイヤを通す)は、放射線不透過性のプラチナ/イリジウム等の薄い導体でできた内腔チューブ18によって構成される。放射線不透過性材料は、超音波トランスジューサアッセンブリを使用する医療的処置を行っているときに超音波トランスジューサアッセンブリを身体内に配置する上で助けとなる。以下に更に詳細に説明するように、内腔チューブ18の導電性は、ケーブルパッド10に接続されたワイヤのうちの少なくとも一つに含まれる接地ワイヤにトランスジューサの接地電極を接続するための手段を提供する。」

(引2-エ)【図1】




(引2-オ)【図2】





第5 本願発明と引用発明との対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明の「超音波カテーテル1」は、本願発明の「撮像カテーテル」に相当する。

(イ)引用発明1の「ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂の多層構造からな」る「カテーテルシース2」のうち、「樹脂層の間に金属製の編組や平板コイル等の補強体が設けられて」いない「管腔内の超音波振動子が存在する位置」の部分は、本願発明の「撮像窓」に相当する。

(ウ)引用発明の「超音波振動子13」及び「超音波振動子13が固定されて」いる「ハウジング11」は、併せて本願発明の「撮像アセンブリ」に相当する。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用発明の「ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂の多層構造からなり、管腔内の超音波振動子が存在する位置より基端には、樹脂層の間に金属製の編組や平板コイル等の補強体が設けられて」いる「カテーテルシース2」と、「側壁には開口12が設けられ、その内部に」「超音波振動子13が固定されて」いる「ハウジング11」とを有する「超音波カテーテル1」は、本願発明の「撮像窓及び撮像アセンブリを有する撮像カテーテル」に相当する。


(ア)引用発明の「超音波振動子13」は、本願発明の「画像コレクタ」に相当する。

(イ)上記(ア)及びア(ウ)を踏まえると、引用発明の「ハウジング11の側壁には開口12が設けられ、その内部に」「超音波振動子13が固定されて」いることは、本願発明の「前記撮像アセンブリは、画像コレクタを有し」ていることに相当する。


(ア)引用発明の「X線造影性の高い金属材料である、プラチナ(Pt)や、イリジウム(Ir)、金(Au)、またはそれらの合金等によって構成されており」、「X線透視画像下で明瞭に造影されるので、術者は超音波振動子13の位置を正確に把握することができ」る「ハウジング11」は、本願発明の「放射線不透過性標識」に相当する。

(イ)上記(ア)、ア(ウ)及びイ(イ)を踏まえると、引用発明の「ハウジング11の側壁には開口12が設けられ、その内部に」「超音波振動子13が固定されており、ハウジング11は、X線造影性の高い金属材料である、プラチナ(Pt)や、イリジウム(Ir)、金(Au)、またはそれらの合金等によって構成されており、ハウジング11がX線透視画像下で明瞭に造影されるので、術者は超音波振動子13の位置を正確に把握することができ」ることと、本願発明の「前記画像コレクタは、前記画像コレクタの内側に配置された放射線不透過性標識を持」つこととは、「前記撮像アセンブリは、放射線不透過性標識を持つ」ことで共通する。


上記ア(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明の「ドライブシャフトコネクタ3bは、ドライブシャフト10の基端側に接続され、超音波振動子13をカテーテルシース2に対して相対的に手元側へ移動させることができ」、「ドライブシャフトコネクタ3bを手元側へ引っ張り、ドライブシャフト5を長手方向に移動させることによって、血管内の軸方向に間隔を空けた包囲組織体における360°の断面画像を任意の位置まで走査的に得ることができ」ることは、本願発明の「前記画像コレクタを含む前記撮像アセンブリは、血管系を撮像しながら、前記撮像窓内で平行移動可能であ」ることに相当する。


(ア)引用発明は、「ハウジング11」「の内部に」「超音波振動子13が固定されて」いるものであるから、「超音波振動子13をカテーテルシース2に対して相対的に手元側へ移動させる」際、「ハウジング11」が「超音波振動子13」との位置関係を保持した状態で「超音波振動子13」とともに移動することは明らかである。

(イ)引用発明は、「ハウジング11」「の内部に」「超音波振動子13が固定されて」いるものであるから、超音波カテーテル1の長さ方向における「ハウジング11」と「超音波振動子13」の位置関係は、「超音波振動子13」全体を包含するように「ハウジング11」が存在していることは明らかである。

(ウ)上記(ア)、(イ)及びア(イ)を踏まえると、引用発明の「超音波振動子13をカテーテルシース2に対して相対的に手元側へ移動させる」ため、「超音波振動子13を手元側へ引く作業が行われると、超音波振動子13は超音波カテーテル1の先端から離れていくが、ハウジング11のX線造影性によって、術者は常時超音波振動子13の位置を把握することができる」ことと、本願発明の「前記放射線不透過性標識は、前記撮像窓内での前記平行移動の間に前記撮像アセンブリ内の前記画像コレクタの位置を示すように前記画像コレクタと縦方向において同一場所に位置する」こととは、「前記放射線不透過性標識は、前記撮像窓内での前記平行移動の間に前記撮像アセンブリ内の前記画像コレクタの位置を示すように縦方向において前記画像コレクタが存在する場所を包含する場所に位置する」ことで共通する。

2 そうすると、本願発明と引用発明とは、

「 撮像窓及び撮像アセンブリを有する撮像カテーテルにおいて、前記撮像アセンブリは、画像コレクタを有し、前記撮像アセンブリは、放射線不透過性標識を持ち、前記画像コレクタを含む前記撮像アセンブリは、血管系を撮像しながら、前記撮像窓内で平行移動可能であり、前記放射線不透過性標識は、前記撮像窓内での前記平行移動の間に前記撮像アセンブリ内の前記画像コレクタの位置を示すように縦方向において前記画像コレクタが存在する場所を包含する場所に位置する、撮像カテーテル。」

の発明である点で一致し、以下の2点で相違する。

(相違点1)
前記撮像アセンブリが持つ放射線不透過性標識が、本願発明においては、「前記画像コレクタ」が持ち、「前記画像コレクタの内側に配置され」ているのに対し、引用発明においては、「内部に」「超音波振動子13が固定されて」いる「ハウジング11」である点。

(相違点2)
前記撮像窓内での前記平行移動の間に前記撮像アセンブリ内の前記画像コレクタの位置を示すように、前記放射線不透過性標識が位置する、縦方向において前記画像コレクタが存在する場所を包含する場所が、本願発明においては、「前記画像コレクタと縦方向において同一場所」であるのに対し、引用発明においては、「ハウジング11」「の内部に」「超音波振動子13が固定されて」いることから、「超音波振動子13」の存在範囲を超えて「ハウジング11」が存在している点。


第6 当審の判断

1 上記各相違点について検討する。

(1)相違点1について

引用文献2には、脈管系内に配置する超音波撮像装置のトランスジューサアッセンブリに関して、全方向の画像を取得すべく、超音波トランスジューサアッセンブリのトランスジューサ部分を円筒形形状にするとともに、中央の内腔を放射線不透過性のプラチナ/イリジウム等の薄い導体でできた内腔チューブによって構成することにより、超音波トランスジューサアッセンブリを使用する医療的処置を行っているときに超音波トランスジューサアッセンブリを身体内に配置する上で助けとなることが記載されている。
ここで、放射線不透過性の内腔チューブが超音波トランスジューサアッセンブリを身体内に配置する上で助けとなるということは、放射線不透過性の内腔チューブがX線撮像時のX線造影マーカとして機能することを意味することは、当業者にとって明らかである。

ドライブシャフト10の回転により包囲組織体における360°の断面画像を取得する引用発明において、引用文献2に記載された円筒形形状の超音波トランスジューサアッセンブリを採用し、ドライブシャフト10を回転させるこなく包囲組織体における360°の断面画像を取得することができるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、引用文献2に記載された円筒形形状の超音波トランスジューサアッセンブリは、中央の内腔を放射線不透過性のプラチナ/イリジウム等の薄い導体でできた内腔チューブがX線造影マーカとして機能するものであるから、引用発明において引用文献2に記載された円筒形形状の超音波トランスジューサアッセンブリを採用した場合、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えたものとなる。

(2)相違点2について

引用文献2に記載された超音波トランスジューサアッセンブリは、トランスジューサ部分12と電子装置部分14が長手方向に並んで配置され、両者の内側に内腔チューブ18が存在していることから、本願発明の放射線不透過性標識に相当する「内腔チューブ18」の長手方向における存在範囲は、本願発明の画像コレクタに相当する「トランスジューサ部分12」の存在範囲を超えている。そのため、引用文献2は、上記相違点2に係る本願発明の特定事項である「前記放射線不透過性標識は」「前記画像コレクタと縦方向において同一場所に位置する」という構成を明示してはいない。
しかしながら、マーカの大きさは、視認性や所望の位置特定精度に応じて設定すべき設計的事項にすぎず、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用する際、マーカとしての精度を重視し、「超音波振動子13」又は「トランスジューサ部分12」と同一長さの放射線不透過性物質をマーカとして用い、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のごとくすることは、当業者にとって単なる設計変更にすぎない。

2 本願発明の奏する作用効果

本願発明によってもたらされる効果は、引用文献1及び2の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。

3 請求人の主張について

請求人は、令和元年10月10日提出の意見書において、本願発明の放射線不透過性標識は、ユーザが、ガイドワイヤの先端に対して、推定する必要なく、所与の画像の位置を迅速に検証することを可能にするものであり、引用文献1及び2の「ハウジング11」及び「内腔チューブ18」は、それぞれ「ハウジング11」内の「超音波振動子13」の位置及び「超音波トランスジューサアッセンブリ」内の「トランスジューサ部分14」の位置を示すことはできない旨主張する。

しかしながら、引用発明の「ハウジング11」は「超音波振動子13」とともに移動するものであり、ガイドワイヤやカテーテルシース2の先端からの位置を推定する必要がないものである。
また、マーカの長さを「超音波振動子13」又は「トランスジューサ部分14」と同一長さとすることにより「超音波振動子13」又は「トランスジューサ部分14」の位置を特定できるようにすることが、当業者にとって単なる設計変更にすぎないことは、上記1(2)で説示したとおりである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

4 まとめ

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-30 
結審通知日 2019-10-31 
審決日 2019-11-12 
出願番号 特願2015-549802(P2015-549802)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
▲高▼見 重雄
発明の名称 血管内画像の位置の特定  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  

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