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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1361201
審判番号 不服2018-10504  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-01 
確定日 2020-03-25 
事件の表示 特願2013-134635「入力感知方法及びその方法を処理する電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日出願公開、特開2014- 16989〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月27日(パリ条約による優先権主張2012年7月5日、米国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 2月23日付け:拒絶理由通知書
平成29年 5月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月15日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成29年12月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月23日付け:平成29年12月26日の手続補正につい ての補正の却下の決定、拒絶査定
平成30年 8月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年8月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 電子装置で入力を検出するための方法であって、
ユーザの入力に基づいて、入力形態に対応する機能及び該機能が行われる前記電子装置の動作状態を設定するステップと、
タッチスクリーンに対する入力を検出するステップと、
前記入力が検出された動作状態が予め設定された動作状態に対応する場合、前記検出された入力に対する入力特性を基に入力形態を判断するステップと、
前記入力形態に対応する機能を行うステップと、を有し、
前記機能が行われる電子装置の動作状態は、ユーザからの入力により設定され、ロック機能が設定される動作状態及びロック機能が解除される動作状態のうちの少なくとも一つを含み、
前記検出された入力に対する入力特性は、前記検出された入力によって発生した音の周波数特性であることを特徴とする入力感知方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 電子装置で入力を検出するための方法であって、
ユーザの入力に基づいて入力形態に対応する機能及び該機能が行われる状況を設定するステップと、
タッチスクリーンに対する入力を検出するステップと、
前記入力が検出された状況が予め設定された状況に対応する場合、前記検出された入力に対する入力形態を判断するステップと、
前記入力形態に対応する機能を行うステップと、を有し、
前記機能が行われる状況は、ロック機能が設定される状況、ロック機能が解除される状況、及びアプリケーションが実行される状況のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする入力感知方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「状況」について、「電子装置の動作状態」と限定し、「前記検出された入力に対する入力形態を判断する」ことについて、「前記検出された入力に対する入力特性を基に入力形態を判断する」と限定するともに、「前記検出された入力に対する入力特性は、前記検出された入力によって発生した音の周波数特性である」との限定を付加し、「前記機能が行われる状況は、ロック機能が設定される状況、ロック機能が解除される状況、及びアプリケーションが実行される状況のうちの少なくとも一つを含む」ことについて、「ユーザからの入力により設定され」るとの限定を付加するとともに、択一的記載の要素の一つである「アプリケーションが実行される状況」を削除し、「ロック機能が設定される動作状態及びロック機能が解除される動作状態のうちの少なくとも一つを含」むと限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2006/197753号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(訳文は、ファミリー文献である特表2008-537615号公報を参照した。下線は、当審で付した。以下、同様。)

(ア)段落[0040]-[0044](段落【0012】-【0016】)
「[0040] Electronic device manufacturers have discovered the advantages of combining separate hand-held electronic devices to form multi-function devices. By having a single multi-function device, a user is not burdened with carrying, purchasing, and maintaining multiple devices. Further, the user is not limited in the operations that can be performed, i.e., the user can perform different operations with a single device that would have otherwise required the use of a different devices.
[0041] As used herein, the term "multi-functional" is used to define a device that has the capabilities of two or more traditional devices in a single device. The multi-functional device may, for example, include two or more of the following device functionalities: PDA, cell phone, music player, video player, game player, digital camera, handtop, Internet terminal, GPS or remote control. For each new device functionality that is added to a single device, the complexity and size of the device tends to increase. Therefore, with hand-held devices, there is typically a trade-off between beeping the footprint small and complexity low while still maximizing the functionality of the device.
[0042] In some cases, combing devices may result in redundant hardware components, which allows components to be used for multiple different, device functionalities. In other cases, certain hardware components are distinct to each device and therefore additional space and connectivity must be made available. Furthermore, each device functionality typically has its own programming or application software and, therefore, the multifunction device must be designed with enough memory to accommodate all the various software components.
[0043] A personal digital assistant (PDA) is a mobile hand-held device that provides computing and information storage and retrieval capabilities for personal and/or business use. PDAs are severally capable of tracking names, addresses, phone numbers and appointments. They are also often capable of taking notes, performing calculations, paging, data messaging, and electronic mail. PDAs may also include functionality for playing simple games, music, and other media files. Examples of PDAs include the Palm Pilot and Blackberry.
[0044] Like most hand-held devices, PDAs typically include a display and various input devices. The input devices may include a stylus and touch screen that work in combination with a handwriting recognition program, keypads, mini-keyboards, navigation pads, and/or soft or fixed function buttons.」
(当審仮訳:
[0040] 電子機器の製造業者は、多機能装置を作るために、別々のハンドヘルド電子機器を組み合わせることについての利点を発見した。一つの多機能装置を持つことにより、ユーザは、複数の装置を持ち歩いたり、購入したり、維持したりすることで悩まされることはない。また、ユーザは実行可能な操作に制限されることはない。すなわち、ユーザは、他の方法で異なる装置の使用を必要とするであろう異なる操作を一つの装置で実行することができる。
[0041] ここで用いられるように、用語「多機能の(multi-functional)」は、2つ以上の伝統的な装置の能力を一つの装置内に有する装置を定義するために用いられる。多機能装置は、例えば、以下の装置の機能性、すなわち、PDA、携帯電話、ミュージックプレーヤ、ビデオプレーヤ、ゲームプレーヤ、デジタルカメラ、ハンドトップ、インターネット端末、GPSおよび遠隔制御器の2以上の機能性を含む。一つの装置に追加される各新しい装置機能性のために、装置の複雑さおよびサイズは増加する傾向にある。そのため、ハンドヘルド装置では、典型的に、まだ装置の機能性を極大化しつつ、設置面積を小さくすることに対する警鈴と複雑さを低減することに対する警鈴との間のトレードオフがある。
[0042] ある場合には、複数の装置を組み合わせることにより、余分なハードウェアコンポーネントをもたらすかもしれない。このような組み合わせにより、多数の異なる装置の機能性のために構成要素を用いることができる。他の場合には、あるハードウェアコンポーネントは各装置に対して別であり、そのため、追加のスペースおよび結合性が利用可能にされなければならない。また、典型的に、各装置の機能性は、それ自身のプログラミングあるいはアプリケーションソフトウェアを有し、そのため、多機能装置は、種々のソフトウェアコンポーネントのすべてを収容するのに十分なメモリを持つように設計されなければならない。
[0043] パーソナル携帯情報機器(PDA)は、個人使用やビジネス使用のためのコンピュータ計算、情報ストレージおよび検索能力を提供するモバイルハンドヘルド装置である。PDAは、名前、住所、電話番号およびアポイントメントを別々に追跡することができる。また、PDAは、しばしば、ノートを取ったり、計算、ページング、データメッセージ送信および電子メールを実行したりすることもできる。また、PDAは、簡単なゲーム、ミュージックおよび他のメディアファイルをプレイする機能性を含んでもよい。PDAの例としては、パームパイロット(Palm Pilot)やブラックベリー(Blackberry)が含まれる。
[0044] ほとんどのハンドヘルド装置のように、典型的に、PDAはディスプレイと種々の入力装置とを含む。入力装置は、手書き認識プログラムとともに実行するスタイラスおよびタッチスクリーンと、キーパッドと、ミニキーボードと、ナビゲーションパッドと、ソフトまたは固定機能ボタンとの少なくともいずれかを含んでもよい。)

(イ)段落[0097]-[0098](段落【0069】-【0070】)
「[0097] One particularly suitable input arrangement is a touch screen. A touch screen in conjunction with GUI may be configured as the primary input arrangement for a hand-held device. A touch screen is basically a transparent input panel positioned in front of the display. A touch screen generates input signals when an object such as a finger or stylus touches or is moved across the surface of the touch screen. In most cases, touch screens allow a user to make selections and initiate movements in a GUI by simply touching the display screen via a finger. For example, a user may make a selection by pointing directly to a graphical object displayed on the display screen. Corresponding to an on-screen button for performing specific actions in the hand-held electronic device. In general, the touch screen recognizes the touch and position of the touch on the display and a controller of the hand-held electronic device interprets the touch and thereafter performs an action based on the touch event. There are several types of touch screen technologies including resistive, capacitive, infrared and surface acoustic wave.
[0098] A preferred touch screen for a multi-functional hand-held computer is a multipoint capacitive touch screen. Such a touch screen comprises several independent and spatially distinct sensing points, nodes, or regions that are positioned throughout the touch screen. The sensing points are dispersed about the touch screen with each sensing point representing a different position on the surface of the touch screen. The sensing points may be positioned in a grid or a pixel array where each sensing point is capable of generating a signal. A signal is produced each time an object is positioned over a sensing point. When an object is placed over multiple sensing points or when the object is moved between or over multiple sensing point, multiple signals can be generated. The sensing points generally map the touch screen plane into a coordinate system such as a Cartesian coordinate system or polar coordinate system. One example of such a touch screen is disclosed in U.S. patent application Ser. No. 10/840,862, titled "Multipoint Touch Screen" filed on May 6, 2004.」
(当審仮訳:
[0097] 一つの特に適切な入力アレンジメントはタッチスクリーンである。GUIに関連したタッチスクリーンは、ハンドヘルド装置の主な入力アレンジメントとして構成されてもよい。タッチスクリーンは、基本的に、ディスプレイの前面に配置された透明な入力パネルである。指またはスタイラスのようなオブジェクトがタッチし、あるいはタッチスクリーンの表面を横切って移動されるとき、タッチスクリーンは入力信号を生成する。ほとんどの場合、タッチスクリーンにより、ユーザは、ディスプレイスクリーンを指で単にタッチすることにより、GUIを選択したり、その移動を開始したりすることができる。例えば、ユーザは、ディスプレイスクリーンに表示されているグラフィカルオブジェクトを直接指すことによりそれを選択してもよい。これは、ハンドヘルド電子機器の特定のアクションを実行するためのスクリーン上のボタンに対応する。一般に、タッチスクリーンは、ディスプレイ上のタッチおよびタッチ位置を認識し、ハンドヘルド電子機器の制御部は、そのタッチを解釈し、その後そのタッチイベントに基づいたアクションを実行する。抵抗性、容量性、赤外線および表面弾性波を含むいくつかのタイプのタッチスクリーン技術がある。
[0098] 多機能ハンドヘルドコンピュータの好ましいタッチスクリーンはマルチポイント容量性タッチスクリーンである。そのようなタッチスクリーンは、独立した空間的に別のいくつかの感知ポイント、ノードまたは領域を備える。それらはタッチスクリーンを通して配置される。感知ポイントは、タッチスクリーンの表面の異なる位置を表す各感知ポイントを有するタッチスクリーンについて分散される。感知ポイントは、それぞれが信号を生成することができるグリッドまたはピクセルアレイに配置されてもよい。オブジェクトがある感知位置上に置かれるたびに信号が生成される。オブジェクトが多数の感知位置上に置かれ、あるいは、オブジェクトが多数の感知位置間またはその上で移動されるとき、多数の信号を生成することができる。一般に、感知ポイントは、タッチスクリーン平面をデカルト座標系や極座標系のような座標系にマッピングする。そのようなタッチスクリーンの一例は、2004年5月6日に出願され、「マルチポイントタッチスクリーン」と題する米国特許出願第10/840,862号に開示される。)

(ウ)段落[0105]-[0116](段落【0077】-【0088】)
「[0105] The multi-functional hand-held electronic device described above may further include force or pressure sensing devices such as a force sensing display or housing.
1. Force Sensitive Display
[0106] A force sensitive display causes one or more input signals to be generated when pressure is exerted on the display screen of the device. The input signals can be used to initiate commands, make selections, or control motion in a display. Such displays generally provide a slight amount of flex (unnoticeable to the user) so, that any forces exerted thereon can be measured by a force detection arrangement generally provided underneath the display. The force detection arrangement monitors the forces exerted on the display and produces signals indicative thereof. The force detection arrangement may include one or more force sensors such as force sensitive resistors, force sensitive capacitors, load cells, pressure plates, piezoelectric transducers, strain gauges, etc. The force sensors may be attached to the back of the display or to a structural platform located within the housing of the device. When a force is applied to the display, it is transmitted through the display to the force sensor located underneath the display.
[0107] FIG. 19 is a side elevation view, in cross section, of a hand-held device 300 incorporating a force sensitive display 302 . The force sensitive display 302 includes a display 308 and one or more force sensors 310 disposed underneath the display 308 (between the display and a structural platform 306 ). In most cases, the force sensitive display 302 includes a plurality of sensors 310 that are laid out in an array. For example, the sensors 310 may be positioned side by side in rows and columns. The force sensors 310 measure the amount of force being applied to the display and when a desired force threshold is reached a control signal is generated. In some cases, an elastomer 312 is placed between the display and the structural platform to help transmit the force being exerted on the surface of the display to the force sensors disposed below the display.
[0108] Force sensing may be provided in conjunction with a touch screen to differentiate between light and hard touches. The determination of whether a touch is a light touch or a hard touch may be made by monitoring the force with the force sensors and comparing the force to a predetermined threshold. When the force threshold is not exceeded, the touch is considered a light touch. When the force threshold is exceeded, the touch is considered a hard touch. Each type of touch may be used to control different aspects of the device. Light touches may be associated with passive events such as navigation (e.g., cursor control scrolling, panning, zoom, rotation, etc.) and hard touches may be associated with active events such as selections or commands (e.g., button click).
[0109] FIG. 20 illustrates an input device 320 that combines touch sensing and force sensing devices to provide x, y and z components when touched. The touch sensing device provides position sensing in the x and y directions, and the force sensing device provides force sensing in the z direction. These devices cooperate to output x, y location and z pressure information whenever there is a touch on the touch surface.

・・・(中略)・・・

[0115] FIG. 22 is a side elevation view of an input device 350 that may be positioned over a display. The input device 350 combines touch sensing and force sensing into a single device. In this embodiment, both the touch sensing and force sensing is provided by mutual capacitance. As shown, the input device 350 is formed from various layers including a top drive layer 352 , a middle sense layer 354 , and a bottom drive layer 356 . Furthermore, the middle sense layer 354 is positioned on an elastomer layer 358 disposed between the middle sense layer 354 and the bottom drive layer 356 . The top and bottom drive layers 353 and 356 include a plurality of spatially separated lines in rows and the middle sense layer 354 includes a plurality of spatially separated lines in columns. The top and middle layers 352 and 354 therefore form a grid, and the bottom and middle layers 356 and 354 form a grid.
[0116] During operation, the lines on the top layer 352 are scanned, and thereafter the lines on the bottom layer 356 are scanned (or vice versa). When there is a touch, the mutual capacitance measured between the top drive layer 352 and the middle sense layer 354 provide the x and y location of the touch. In addition, the mutual capacitance measured between the bottom drive layer 356 and the middle sense layer 354 provide the amount of force of the touch. This particular arrangement provides a full image of force superimposed on a full image of touch. The input device including the touch layers and the force layers may be operated similarly to the methods described in U.S. patent application Ser. No. 10/840,862, titled "Multipoint Touch Screen," filed on May 6, 2004.」
(当審仮訳:
[0105] 上述の多機能ハンドヘルド電子機器は、力感知ディスプレイまたはハウジングのような力あるいは圧力感知装置をさらに含んでいてもよい。
1.力感知ディスプレイ
[0106] 力感知ディスプレイは、装置のディスプレイスクリーン上に圧力が加えられると、1以上の入力信号を生成させる。入力信号は、コマンドを開始したり、選択したり、ディスプレイの動きを制御するために用いられ得る。そのようなディスプレイは、一般に、ディスプレイの下に一般に設けられる力検出アレンジメントによってその上に加えられる力を測定することができるように、(ユーザには知覚できない)わずかな量のコードを提供する。力検出アレンジメントは、ディスプレイ上に加えられる力をモニタし、それを示す信号を作り出す。力検出アレンジメントは、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ロードセル、圧力プレート、圧電変換器、ひずみゲージなどの1以上の力センサを含んでいてもよい。力センサは、ディスプレイの背面あるいは装置のハウジング内に位置する構造的プラットフォームに取り付けられればよい。ディスプレイに力が加えられると、ディスプレイを通してディスプレイの下に位置する力センサにその力が伝達される。
[0107] 図19は、力感知ディスプレイ302を統合するハンドヘルド装置300の側断面図である。力感知ディスプレイ302は、ディスプレイ308と、そのディスプレイ308の下(ディスプレイと構造的プラットフォーム306の間)に配置される1以上の力センサ301とを含む。ほとんどの場合、力感知ディスプレイ302は、配列された複数のセンサ310を含む。例えば、センサ310は行と列に並んで配置されればよい。力センサ310は、ディスプレイに加えられている力の大きさを計測し、所望の力閾値に達すると、制御信号を生成する。ある場合には、ディスプレイの表面に加えられている力をディスプレイの下に配置される力センサに伝達するのを助けるために、エラストマー312がディスプレイと構造的プラットフォームの間に配置される。
[0108] 力感知は、ソフトタッチとハードタッチとを区別するために、タッチスクリーンと関連して提供されてもよい。タッチがソフトタッチかハードタッチかの決定は、力センサでもその力をモニタし、その力を所定の閾値と比較することによりなされてもよい。力が閾値を超えないとき、そのタッチはソフトタッチとして考慮される。力が閾値を超えると、そのタッチはハードタッチとして考慮される。各タイプのタッチは、その装置の異なる態様を制御するために用いられればよい。ソフトタッチは、ナビゲーションなどの受動的なイベント(例えば、カーソル制御スクロール、パン、ズーム、回転など)に関連すればよく、ハードタッチは、選択やコマンドのような能動的イベント(例えば、ボタンクリック)に関連すればよい。
[0109] 図20は、タッチされたときにx、yおよびz成分を提供するために、タッチ感知装置と力感知装置とを組み合わせた入力装置320を示す。タッチ感知装置は、x、y方向の位置感知を提供し、力感知装置は、z方向の力感知を提供する。これらの装置は、タッチ面上のタッチがあるか否かについてのx、y位置およびz圧力情報を出力するために協動する。

・・・(中略)・・・

[0115] 図22は、ディスプレイ上に配置され得る入力装置350の側面図である。入力装置350は、タッチ感知および力感知を一つの装置に結合する。本実施形態では、タッチ感知および力感知の両方が相互キャパシタンスにより提供される。図示のように、入力装置350は、上部駆動層352、中間感知層354および底部駆動層356を含む種々の層から形成される。さらに、中間感知層354は、中間感知層354と底部駆動層356の間に配置されるエラストマー層358上に位置する。上部駆動層352および底部駆動層356は、列をなす空間的に分離された複数のラインを含み、中間感知層354は、行をなす空間的に分離された複数のラインを含む。そのため、上部層352および中間層354はグリッドを形成するとともに、底部層356および中間層354はグリッドを形成する。
[0116] 作動中、上部層352上のラインがスキャンされ、その後底部層356上のラインがスキャンされる(あるいはその全く逆でもよい)。タッチがあると、上部駆動層352と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンスは、そのタッチのx、y位置を提供する。さらに、底部駆動層356と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンスは、タッチの力の大きさを提供する。この特定のアレンジメントは、タッチのフルイメージ上に重ね合わせられる力のフルイメージを提供する。タッチ層および力層を含む入力装置は、2004年5月6日に出願され、「マルチポイントタッチスクリーン」と題する米国特許出願第10/840,862号に開示される方法と同様に操作されればよい。)

(エ)段落[0145]-[0151](段落【0117】-【0123】)
「[0145] The z pressure exerted on a touch sensing device can be combined with the x and y locations of the touch to form a new touch vocabulary. As should be appreciated, up to this point touch vocabularies have only included x and y locations, not z pressure. A proposed touch vocabulary includes variety of variables including the UI mode, the force of the touch (e.g., light or hard), the number of fingers used, whether or not there is any movement during the touch, the duration of the touch, and the touch location, all or some of which can be combined to form a variety of behaviors and user feedback.
[0146] The UI mode is generally related to the mode or state of the device. Each device includes a variety of states and each state may require a different UI mode. A media player (a mode) may, for example, include a set of hierarchal layers (states) with each layer requiring a different UI.
[0147] As noted above, the force of the touch may, for example, be described as light or hard. A light touch may occur when a user lightly touches the surface of the touch surface, i.e., the finger hovers on top of the surface and is primarily moved in the x and y directions. A hard touch may occur when a user presses on the touch surface with a certain amount of force, i.e., the finger is primarily moved in the z direction against the touch surface.
[0148] Motion during the touch is used to describe whether the finger has remained stationary during a touch event or has substantially moved in the X-Y plane (e.g., translation, rotation, etc.). The motion may be described as none at all or a swipe or twist in some particular direction. By way of example, the swipe may be up, down, right, left, or some combination thereof, and the twist may be clockwise or counterclockwise.
[0149] Duration is defined as the amount of time the finger stays at any one point. Duration may be variable or it may include states such as short and long. The touch location may be a random point or a specific location such as an onscreen button.
[0150] FIG. 26 is an additional touch method 500 implementing this technique. The method begins at block 502 when one or more touches are detected. Thereafter, in block 504 , the UI mode is determined. In block 506 , a determination is made as to whether the touches are light touches or hard touches. Alternatively, blocks 502 and 504 could be reversed, effectively resulting in an instance of the touch method for each mode. In block 508 , the number of distinct touches (e.g., fingers) is determined. In block 510 , a determination is made as to whether the touches are stationary or in motion. In block 512 , the duration of the touches is determined. In block 514 , the locations of the touches are determined. Following blocks 502 - 514 , the method proceeds to block 516 where an action is performed based on the UI mode, the pressure of the touch, the number of touches, whether or not the touch is moving, the duration of the touch, and the touch location. The actions may be passive or active depending on the values of each characteristic.
[0151] One example of a touch vocabulary associated with a music player is shown in FIGS. 27 A-E.」
(当審仮訳:
[0145] 新しいタッチ用語を形成するために、タッチ感知装置上に加えられるz圧力をタッチのx、y位置と組み合わせることができる。認識されるべきであるように、この時点までタッチ用語は、xおよびy位置だけが含まれ、z圧力は含まれていなかった。提案されるタッチ用語は、UIモード、タッチの力(例えば、ソフトかハードか)、用いる指の数、タッチ中に移動があるか否か、タッチの期間、およびタッチ位置を含む種々の変数を含んでいる。これらのすべてまたはいくつかは、種々の動作やユーザフィードバックを形成するために結合され得る。
[0146] UIモードは、一般に、装置のモードまたは状態に関連する。各装置は種々の状態を含み、各状態は異なるUIモードを必要としてもよい。メディアプレーヤ(あるモード)は、例えば、異なるUIを必要とする各層で階層(状態)セットを含んでもよい。
[0147] 上述のように、タッチの力は、例えば、ソフトまたはハードとして記述されればよい。ユーザがタッチ面の表面を軽くタッチするとき、すなわち、指が表面の上部に留まり、xおよびy方向に主に移動するとき、ソフトタッチが発生すればよい。ユーザがある大きさの力でタッチ面上を押し、すなわち、指がタッチ面に対してz方向に主に移動するとき、ハードタッチが発生すればよい。
[0148] タッチ中の動きは、指がタッチイベント中静止したままであるか、X-Y平面で実質的に移動したか(例えば、水平移動、回転など)を記述するために用いられればよい。その動きは、全くない、強打、あるいはある特定の方向へのねじりとして記述されてもよい。例として、強打は、上、下、右、左あるいはそのいくつかの組み合わせであればよく、ねじりは、時計回りまたは反時計回りであればよい。
[0149] 継続時間は、指があるポイントに留まっている時間量として定義される。継続時間は可変的であればよく、短い、長いなどの状態を含めばよい。タッチ位置は、ランダムなポイントまたはスクリーン上のボタンなどの特定の位置であればよい。
[0150] 図26は、この技術を実行する追加のタッチ方法500である。その方法は、ブロック502にて始まり、1以上のタッチが検出される。その後、ブロック504では、UIモードが決定される。ブロック506では、タッチがソフトタッチであるかハードタッチであるかについて決定がなされる。その代わりに、ブロック502および504を逆にすることができ、各モードのためのタッチ方法の例をもたらす。ブロック508では、別のタッチ数(例えば、複数の指)が決定される。ブロック510では、タッチが静止しているか、動いているかについての決定がなされる。ブロック512では、タッチの継続時間が決定される。ブロック514では、タッチの位置が決定される。ブロック502?514に次いで、方法はブロック516に移行し、UIモード、タッチの圧力、タッチ数、タッチが移動しているか否か、タッチの継続時間、およびタッチ位置に基づいてアクションが実行される。そのアクションは、各特徴の値に応じて受動的または能動的であればよい。
[0151] ミュージックプレーヤに関連したタッチ用語の一例は図27A?図27Eに示される。)

(オ)第27A-27E図
第27A-27E図を参照すると、タッチ用語は、UIモード、タッチの種類及び位置と動作とが対応付けられたものであると認定できる。

上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 GUIに関連したタッチスクリーンは、ハンドヘルド装置の主な入力アレンジメントとして構成され、ディスプレイの前面に配置された透明な入力パネルであり、
多機能ハンドヘルド電子機器は、力感知ディスプレイのような力あるいは圧力感知装置をさらに含んでおり、
力感知ディスプレイは、装置のディスプレイスクリーン上に圧力が加えられると、1以上の入力信号を生成させるものであって、入力信号は、コマンドを開始したり、選択したり、ディスプレイの動きを制御するために用いられ、
力感知は、ソフトタッチとハードタッチとを区別するために、タッチスクリーンと関連して提供され、
タッチされたときにx、yおよびz成分を提供するために、タッチ感知装置と力感知装置とを組み合わせた入力装置320は、タッチ感知装置が、x、y方向の位置感知を提供し、力感知装置が、z方向の力感知を提供し、
ディスプレイ上に配置される入力装置350は、タッチ感知および力感知を一つの装置に結合し、タッチ感知および力感知の両方が相互キャパシタンスにより提供されるものであって、上部駆動層352、中間感知層354および底部駆動層356を含む種々の層から形成され、
作動中、タッチがあると、上部駆動層352と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンスは、そのタッチのx、y位置を提供し、さらに、底部駆動層356と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンスは、タッチの力の大きさを提供し、
新しいタッチ用語を形成するために、タッチ感知装置上に加えられるz圧力をタッチのx、y位置と組み合わせることにより、提案されるタッチ用語は、UIモード、タッチの力(ソフトかハードか)、およびタッチ位置を含む種々の変数を含んでおり、これらのいくつかは、種々の動作を形成するために結合され、ここで、UIモードは、装置のモードまたは状態に関連し、
タッチ用語は、UIモード、タッチの種類及び位置と動作とが対応付けられたものである、
タッチ方法。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2010/162182号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、段落[0061]-[0064]に、次の記載がある。

「[0061] FIG. 2 is an exemplary view illustrating a setting screen for an unlocking object related to the electronic appliance according to exemplary embodiments of the present invention.
[0062] As shown in FIG. 2 , a mobile terminal, capable of unlocking operation according to an input gesture, is provided as an example. The mobile terminal may include an input gesture module associated with a mapping table to determine whether an input gesture matches with the respective gesture of an unlocking object. And the determination may be processed using a mapper (e.g., mapping table).
[0063] In some examples, the user may setup an option for locking and unlocking of the mobile terminal using a menu. As seen in FIG. 2 , for example, five types of gestures may be provided, and the user may select an application to be mapped to one of the five gestures. FIG. 2 may show that each of the gestures …(中略)… can be mapped with respect to a dialer function, a main menu, a call log function, a phonebook function, and a message function.
[0064] The user may unlock the mobile terminal by applying (e.g., executing or making) one of the five gestures, and may immediately invoke the application mapped to the applied gesture. For example, if the user makes the gesture through a touch screen, the mobile terminal 100 may recognize the gesture , and may unlock the input means, and may invoke the phonebook function and display of a related screen may be followed.」
(当審仮訳:
[0061] 図2は、本発明の例示的な実施の形態による電子機器に関連する、ロック解除オブジェクトに対するセッティング画面を説明する例示的な図である。
[0062] 図2に示されるように、入力ジェスチャーによるロック解除操作をすることができる携帯端末が、例として与えられる。携帯端末は、入力ジェスチャーがロック解除オブジェクトの各ジェスチャーと一致するかを決定するマッピングテーブルと関連する入力ジェスチャーモジュールを含んでもよい。そして、決定は、マッパー(例えば、マッピングテーブル)を用いて処理されてもよい。
[0063] いくつかの例では、ユーザが、メニューを用いて、携帯端末のロック及びロック解除に対するオプションを設定してもよい。例えば、図2で見られるように、5種類のジェスチャーが与えられ、そして、ユーザは、5つのジェスチャーの1つにマッピングされるアプリケーションを選択してもよい。図2は、∨、0、/、<及び●(●は、円周のうちの第2象限の円弧で表される記号を表す。)のジェスチャーのそれぞれが、ダイヤラ機能、メインメニュー、セルログ機能、電話帳機能及びメッセージ機能に関して、マッピングされ得ることを示す。
[0064] ユーザは、5つのジェスチャーの1つを適用する(例えば、実行する、又は、行う)ことにより、携帯端末をロック解除してもよく、そして、適用されたジェスチャーにマッピングされたアプリケーションを直ちに起動してもよい。例えば、ユーザが、タッチスクリーンにより、<のジェスチャーをする場合、携帯端末100は、<のジェスチャーを認識し、入力手段をロック解除し、そして、電話帳機能を起動してもよく、そして、関連したスクリーンの表示が続いてもよい。)

ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2012/078079号(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(訳文は、ファミリー文献である特表2014-503891号公報を参照した。)

(ア)第20頁第3-5行(段落【0178】)
「The device may be one wherein the first screen is a touch screen, and the first screen is operable to be unlocked by a touch gesture in which a finger starts at either the top or bottom of the screen and moves towards the centre of the screen.」
(当審仮訳:
上記機器は、第1の画面は、タッチ画面であって、指が画面の上部又は下部の何れかから開始して画面の中央へ向けて移動するタッチのジェスチャーによってロック解除されることが可能であるものであってもよい。)

(イ)第20頁第20-23行(段落【0184】)
「The device may be one wherein the finger must achieve a threshold speed in order to complete the lock. The device may be one wherein for the lock the finger starts at the bottom of the screen. The device may be one wherein the device is a slate device.」
(当審仮訳:
上記機器は、第1の画面が、タッチ画面であって、指が画面の上部又は下部の何れかから開始して画面の中央へ向けて移動するタッチのジェスチャーによってロックされることが可能であるものであってもよい。)

エ 引用文献A
平成29年2月23日付けの拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-028555号公報(以下、「引用文献A」という。)には、図面とともに、段落【0042】-【0081】に、次の記載がある。

「【0042】
<情報処理装置の構成について>
続いて、図5A?図14を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置の構成について、詳細に説明する。
【0043】
[操作体の種別について]
まず、図5Aおよび図5Bを参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置10の操作に用いられる操作体の種別について説明する。図5Aおよび図5Bは、本実施形態に係る情報処理装置で用いられる操作体について説明するための説明図である。
【0044】
情報処理装置10は、以下で詳細に説明するように、操作体がタッチパネル上で操作されることで生じる振動に関する情報である振動情報に基づいて操作体を2つの種別に大別し、タッチパネルを操作した操作体がいずれの種別に属するものであるかを特定する。ここで、情報処理装置10が特定する操作体の種別は、例えば、相対的に硬質の部分を有する操作体、または、相対的に軟質の部分を有する操作体といった、操作体の硬さや柔らかさに関する種別である。
【0045】
例えば図5Aに示したように、操作体12がユーザの指である場合、ユーザの指には、相対的に硬質の部分に対応する爪の部分と、相対的に軟質の部分に対応する皮膚面の部分の2つが存在する。本実施形態に係る情報処理装置10は、図5Aに例示したように、爪の部分を操作体12として用いた場合と、指の皮膚面を操作体12として用いた場合の2つに大別する。ここで、爪の部分を用いた操作は、図5Aに示したように、爪のみによる操作と、爪と指の皮膚面による操作と、を含む。本実施形態に係る情報処理装置10は、爪による操作を、相対的に硬質な部分を用いて行われた操作と特定し、指の皮膚面による操作を、相対的に軟質な部分を用いて行われた操作と特定する。

・・・(中略)・・・

【0048】
以下では、操作体12としてユーザの指を用いた場合を例にとって、説明を行うこととする。
【0049】
[情報処理装置の構成について]
続いて、図6?図9を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置の構成について詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る情報処理装置の構成を説明するためのブロック図である。図7および図8は、本実施形態に係る移動方向検知部について説明するための説明図である。図9は、本実施形態に係る操作体種別特定部について説明するための説明図である。
【0050】
なお、以下では、振動情報の一例として、操作体12の操作により空気が振動することで生じる音に関する情報(以下、音響情報と称する。)を例にとって説明を行うこととする。
【0051】
情報処理装置10は、例えば図6に示したように、入力位置検出部151、移動方向検知部153、音響情報取得部155、フーリエ変換部157、操作体種別特定部159、アプリケーション制御部161、表示制御部163および記憶部165を主に備える。
【0052】
入力位置検出部151は、操作体12によって接触されたタッチパネル101の位置を検出する。入力位置検出部151は、操作体12により接触された際にタッチパネル101に掛かった押圧力を検知できるように構成されていてもよい。また、入力位置検出部151は、操作体12により直接接触されていなくても、タッチパネル101に近接したタッチパネル101上の空間に操作体12が存在するのを検知し、接触位置として認識できる機能を有していてもよい。つまり、ここで言う接触位置は、操作体12がタッチパネル101の画面上で空を描くように行った動作に対する位置情報を含むものであってもよい。
【0053】
入力位置検出部151は、検出した接触位置に関する情報(より詳細には、接触位置の座標)を、入力位置情報として、移動方向検知部153、アプリケーション制御部161および表示制御部163に伝送する。例えば、検出した接触位置が1箇所である場合には、入力位置検出部151は、入力位置情報として、1つの座標(X1,Y1)を出力する。また、タッチパネル101が複数の接触を同時に検出可能なものであれば、入力位置検出部151は、検出した接触位置の個数に応じて複数の座標を出力してもよい。
【0054】
また、入力位置検出部151は、操作体12の接触を検出すると、操作体12がタッチパネル101に接触している旨を表す情報を、後述する音響情報取得部155に伝送する。かかる情報が音響情報取得部155に伝送されることで、音響情報取得部155は、操作体12の種別を特定するために利用される音響情報の取得を開始することができる。

・・・(中略)・・・

【0061】
振動情報取得部の一例である音響情報取得部155は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。音響情報取得部155は、入力位置検出部151から、操作体12がタッチパネル101に接触した旨を表す情報が伝送されると、振動センサ(マイク)を起動して振動情報(音響情報)の取得を開始する。音響情報取得部155は、振動センサ(マイク)105から伝送された音響情報を取得してデジタルデータとし、後述するフーリエ変換部157に伝送する。また、音響情報取得部155は、取得した音響情報を、後述する記憶部165等に一時的に格納してもよい。
【0062】
操作体12の接触を音響情報の取得開始のトリガとすることで、音響情報取得部155は、常に動作待機しなくとも良くなり、情報処理装置10の待機電力等を抑制することができる。また、常に音響情報を取得するわけではなくなるため、取得した音響情報を格納しておくバッファ等の容量を抑えることができる。
【0063】
また、情報処理装置10にノイズキャンセル用マイク113が設けられている場合には、ノイズに対応する音響情報をノイズキャンセル用マイク113から取得してデジタルデータとし、音響情報のノイズ除去に利用してもよい。ノイズキャンセル用マイク113から取得した音響情報をノイズに対応する音響情報として利用することで、振動センサ105から取得した音響情報のS/N比(Signal to Noise ratio)等を向上させることができる。その結果、後述する操作体種別特定部159において、より正確な操作体の種別の特定を行うことが可能となる。
【0064】
フーリエ変換部157は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。フーリエ変換部157は、音響情報取得部155から伝送された音響情報に対応するデータをフーリエ変換し、周波数ドメインにおける音響情報を生成する。フーリエ変換部157は、生成した周波数ドメインにおける音響情報を、後述する操作体種別特定部159に伝送する。
【0065】
操作体種別特定部159は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。操作体種別特定部159は、取得された振動情報に基づいて操作体12を2つの種別に大別し、タッチパネル101を操作した操作体12がいずれの種別に属するものであるかを特定する。より具体的には、操作体種別特定部159は、操作体12によるタッチパネル101の操作を、操作体12のうち相対的に硬質の部分を用いた操作と、操作体12のうち相対的に軟質の部分を用いた操作と、に大別する。その上で、操作体種別特定部159は、タッチパネル101を操作した操作体12が、相対的に硬質な部分または相対的に軟質な部分のいずれに該当するのかを特定する。
【0066】
例えば、本実施形態に係る操作体種別特定部159は、音響情報取得部155により取得された音響情報(より詳細には、更にフーリエ変換部157によりフーリエ変換された音響情報)に基づいて、操作体12の種別を特定する。

・・・(中略)・・・

【0080】
操作体種別特定部159は、このようにして決定された操作体12の種別に関する特定結果を、後述するアプリケーション制御部161に伝送する。また、操作体種別特定部159は、得られた特定結果を、後述する記憶部165等に履歴情報として記録しておいてもよい。
【0081】
アプリケーション制御部161は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。アプリケーション制御部161は、操作体種別特定部159により特定された操作体12の種別に応じて、所定のサービスを提供するアプリケーションの動作を制御する。より詳細には、アプリケーション制御部161は、入力位置検出部151から伝送される位置情報、移動方向検知部153から伝送される移動方向等の情報および操作体種別特定部159から伝送される操作体の種別情報に基づき、アプリケーションを制御する。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「多機能ハンドヘルド電子機器」は、本件補正発明の「電子装置」に対応する。
また、引用発明の「多機能ハンドヘルド電子機器」は、「入力装置」として、「ディスプレイの前面に配置された透明な入力パネルであ」る「タッチスクリーン」と、「ディスプレイスクリーン上に圧力が加えられると、」「コマンドを開始したり、選択したり、ディスプレイの動きを制御するために用いられ」る「入力信号を生成させる」「力感知ディスプレイ」とを備えるものである。
さらに、引用発明の、「タッチ感知および力感知を一つの装置に結合」する「入力装置350」は、「ディスプレイ上に配置され」、「上部駆動層352、中間感知層354および底部駆動層356を含む種々の層から形成され」るものであって、「作動中、タッチがあると、上部駆動層352と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンスは、そのタッチのx、y位置を提供し、さらに、底部駆動層356と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンスは、タッチの力の大きさを提供」する、すなわち、「上部駆動層352と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンス」、「底部駆動層356と中間感知層354の間で測定される相互キャパシタンス」に基づいて、それぞれ、「タッチのx、y位置」、「タッチの力(ソフトかハードか)」を「感知」するものである。
そして、引用発明の「多機能ハンドヘルド電子装置」は、「装置のモードまたは状態に関連」する「UIモード、タッチの力(ソフトかハードか)、およびタッチ位置」と、「動作とが対応付けられた」「タッチ用語」に基づいて、「UIモード」、「入力装置350」により感知された、「タッチのx、y位置」、「タッチの力(ソフトかハードか)」及び「位置」に対応する「動作」をするものである。

よって、引用発明の、「多機能ハンドヘルド電子機器」の「入力装置350」への「タッチ」を「感知」する「タッチ方法」は、本件補正発明の「電子装置で入力を検出するための方法であ」る「入力感知方法」に対応する。

イ 引用発明の「タッチ用語」は、「UIモード、タッチの力(ソフトかハードか)」と「動作とが対応付けられたものであ」るところ、引用発明の「タッチの力(ソフトかハードか)」、「動作」、「UIモード」は、それぞれ、本件補正発明の「入力形態」、「入力形態に対応する機能」、「該機能が行われる前記電子装置の動作状態」に相当する。
また、引用発明の、「新しいタッチ用語を形成する」ことは、本件補正発明の「ユーザの入力に基づいて、入力形態に対応する機能及び該機能が行われる前記電子装置の動作状態を設定するステップ」と、「入力形態に対応する機能及び該機能が行われる前記電子装置の動作状態を設定するステップ」である点で共通する。

ウ 引用発明の「入力装置350」は、上記アに記載したとおりのものであるところ、引用発明の、「タッチスクリーン」への「タッチ」を「感知」することは、本件補正発明の「タッチスクリーンに対する入力を検出するステップ」に相当する。

エ 引用発明の「入力装置350」は、「タッチスクリーン」への「タッチの力(ソフトかハードか)」を「感知」するものであって、「タッチスクリーン」への「タッチの力(ソフトかハードか)」が「感知」されたときの「UIモード」が、「タッチ用語」の「UIモード」である場合にも、当然、「タッチスクリーン」への「タッチの力(ソフトかハードか)」を「感知」するから、引用発明の当該「感知」をすることは、本件補正発明の「前記入力が検出された動作状態が予め設定された動作状態に対応する場合、前記検出された入力に対する入力特性を基に入力形態を判断するステップ」と、「前記入力が検出された動作状態が予め設定された動作状態に対応する場合、前記検出された入力に対する」「入力形態を判断するステップ」である点で共通する。

オ 引用発明の「多機能ハンドヘルド電子装置」は、上記ア、エに記載したように、「タッチスクリーン」への「タッチの力(ソフトかハードか)」が「感知」されたときの「UIモード」が、「タッチ用語」の「UIモード」である場合に、「UIモード」、「タッチスクリーン」への「タッチの力(ソフトかハードか)」に対応する「動作」をするものであるから、引用発明の当該「動作」をすることは、本件補正発明の「前記入力形態に対応する機能を行うステップ」に相当する。

よって、本件補正発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。

[一致点]
「 電子装置で入力を検出するための方法であって、
入力形態に対応する機能及び該機能が行われる前記電子装置の動作状態を設定するステップと、
タッチスクリーンに対する入力を検出するステップと、
前記入力が検出された動作状態が予め設定された動作状態に対応する場合、前記検出された入力に対する入力形態を判断するステップと、
前記入力形態に対応する機能を行うステップと、を有する入力感知方法。」

[相違点1]
「入力形態に対応する機能及び該機能が行われる前記電子装置の動作状態」の「設定」を、本件補正発明では、「ユーザの入力に基づいて」行うのに対して、引用発明では、「ユーザの入力に基づいて」行うことが特定されていない点。

[相違点2]
「前記検出された入力に対する」「入力形態」の「判断」を、本件補正発明では、「前記検出された入力に対する入力特性を基に」行うのに対して、引用発明では、入力装置の力感知ディスプレイを用いて行う点。

[相違点3]
本件補正発明では、「前記機能が行われる電子装置の動作状態は、ユーザからの入力により設定され、ロック機能が設定される動作状態及びロック機能が解除される動作状態のうちの少なくとも一つを含」むのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

[相違点4]
本件補正発明では、「前記検出された入力に対する入力特性は、前記検出された入力によって発生した音の周波数特性である」のに対して、引用発明では、そもそも、「前記検出された入力に対する入力特性」を検出していない点。

(4)判断
ア 機能が行われる電子装置の動作状態に関連する、上記相違点1、3について、まとめて検討する。

引用文献2には、タッチスクリーンへのジェスチャーによりロック解除される携帯端末において、ロック解除する際の複数のジェスチャーのそれぞれに、ロック解除する際に起動する機能を、ユーザの入力により設定すること、要するに、携帯端末がロック状態である場合における、タッチスクリーンへのジェスチャーと、ジェスチャーに対応する機能とを、ユーザの入力により設定すること、及び、機能を起動する際の携帯端末の動作状態が、ロック状態であることが記載されている(上記(2)イを参照されたい。)。
また、引用文献3には、携帯ディスプレイ機器のタッチ画面を、タッチのジェスチャーにより、ロック解除やロックをすることが記載されている(上記(2)ウを参照されたい。)。

引用発明と、引用文献2に記載された技術とは、電子装置が特定の動作状態である場合における、タッチスクリーンに対する入力と、入力に対応する機能とを設定する点で共通するものであるから、引用発明に、引用文献2に記載された技術を適用して、多機能ハンドヘルド電子機器がロック状態である場合における、タッチスクリーンに対するタッチの力(ソフトかハードか)と、タッチの力に対応する動作とを、ユーザの入力により設定するとともに、引用文献3に記載されているように、多機能ハンドヘルド電子機器がロック解除状態である場合においても、タッチスクリーンに対するタッチの力(ソフトかハードか)と、タッチの力に対応する動作とを、ユーザの入力により設定することにより、上記相違点1、3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 検出された入力に対する入力特性に関連する、上記相違点2、4について、まとめて検討する。

引用文献Aには、ユーザの指である操作体12の、タッチパネル101への接触形態を、接触により生じる音の周波数情報に基づいて特定することが記載されている(上記(2)エを参照されたい。)。

引用発明と、引用文献Aに記載された技術とは、タッチスクリーンに対する入力形態を判断する点で共通するものであるから、引用発明に、引用文献Aに記載された技術を適用して、タッチスクリーンに対する入力形態を、入力により生じる音の周波数情報に基づいて判断することにより、上記相違点2、4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、及び、引用文献2-3、Aに記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、及び、引用文献2-3、Aに記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る発明は、平成29年5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。

(理由1)平成29年5月18日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(理由2)本願請求項1-21に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許出願公開第2006/197753号明細書
引用文献2:米国特許出願公開第2010/162182号明細書
引用文献3:国際公開第2012/078079号
引用文献4:米国特許出願公開第2011/084914号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1-3及びその記載事項は、上記「第2」の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2」の[理由]2で検討した本件補正発明から、「状況」、「前記検出された入力に対する入力形態を判断する」こと、及び、「前記機能が行われる状況は、ロック機能が設定される状況、ロック機能が解除される状況、及びアプリケーションが実行される状況のうちの少なくとも一つを含む」ことに係る限定事項を削除したものであって、引用発明と対比すると、上記相違点1-4(上記「第2」の[理由]2(3)を参照。)のうち、上記相違点1、3を有し、その余の点で一致する。
そうすると、本願発明は、上記「第2」の[理由]2(3)、(4)に記載したように、引用発明、及び、引用文献2-3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明、及び、原査定の拒絶の理由1について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-10-28 
結審通知日 2019-10-29 
審決日 2019-11-12 
出願番号 特願2013-134635(P2013-134635)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 野崎 大進
白井 亮
発明の名称 入力感知方法及びその方法を処理する電子装置  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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