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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24H
管理番号 1361227
審判番号 不服2018-14756  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-06 
確定日 2020-04-02 
事件の表示 特願2017-244736号「燃料電池システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 91614号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月30日に出願された特願2016-233697号の一部を平成29年12月21日に新たな特許出願とされた特願2017-244736号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 4月10日 :拒絶理由通知
平成30年 6月18日 :意見書、手続補正書
平成30年 8月 3日 :拒絶査定
平成30年11月 6日 :審判請求、手続補正書
令和 元年 9月 3日 :拒絶理由通知
令和 元年11月11日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書
による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「燃料電池の排熱を熱源に用いる燃料電池システムであって、
燃料電池の排熱を第1の循環路に流れる第1の熱媒に熱交換し前記第1の熱媒を加熱する燃料電池ユニットと、
前記第1の熱媒をタンクに溜め、前記第1の熱媒の前記タンクから第2の循環路への循環量を制御する第1の制御部を有し、給水と前記第2の循環路に流れる前記第1の熱媒の熱を熱交換する第1の給湯ユニットと、
前記燃料電池ユニットおよび前記第1の給湯ユニットとは別体で構成され、給湯路と該給湯路を分岐したバイパス路と前記第1の給湯ユニットからの給水を加熱する補助熱源とともに、前記給湯路に設けられて前記バイパス路と通じる混合弁の開度を制御する第2の制御部とを有し、前記第1の給湯ユニットからの給水を前記給湯路と前記バイパス路とに流し、前記補助熱源で加熱した前記給湯路を流れる前記第1の給湯ユニットからの給水と、前記バイパス路を流れる前記第1の給湯ユニットからの給水とを前記混合弁で前記第2の制御部により制御された開度に応じて混合して設定温度で給湯する第2の給湯ユニットと、
を備える燃料電池システム。」

第3 拒絶の理由
令和元年9月3日の当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。
(理由)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?3:引用文献等 1、2、4?6
・請求項4:引用文献等 1、2、3、4?6
・請求項5、6:引用文献等 1、2、4?6

<引 用 文 献 等 一 覧>
引用文献1.特開2005-61711号公報
引用文献2.特開2016-44888号公報
引用文献3.特開2010-133641号公報
引用文献4.特開2013-224790号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2016-156524号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.特開平10-288405号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、参考までに当審が付したものである。以下同様である。)。
(1a) 「【0001】
本発明は、排熱発生装置から発生する排熱を用いて給湯及び暖房を行うように構成されている排熱回収給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる排熱回収給湯装置は、例えば、コージェネレーションシステムにて用いられるものであり、コージェネレーションシステムでは、エンジンにて駆動される発電装置や燃料電池を用いた発電装置を備えるが、このエンジンや燃料電池が排熱発生装置に相当し、排熱回収給湯装置は、このような排熱発生装置から発生する排熱を用いて給湯するように構成してある。」
(1b) 「【0023】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係る排熱回収給湯装置Hを備えたコージェネレーションシステムを示し、このコージェネレーションシステムは、発電機(図示省略)とその発電機を駆動するガスエンジン30を備えた発電装置Gと、ガスエンジン30の排熱を用いて給湯及び暖房を行う排熱回収給湯装置Hとから構成してある。つまり、ガスエンジン30が、排熱発生装置に相当する。
【0024】
先ず、図1に基づいて、発電装置Gについて説明を加える。
発電装置Gには、ガスエンジン30の冷却水ジャケット30jにわたって冷却水循環路31を通じて冷却水が循環される冷却水熱交換器32を設け、冷却水循環路31には、冷却水を循環させる冷却水循環ポンプ33を設けてある。そして、詳細は後述するが、排熱回収給湯装置Hは、その冷却水熱交換器32に排熱回収用の熱媒を循環させて、ガスエンジン30の排熱を回収するように構成してある。
更に、冷却水循環路31において、冷却水熱交換器32から排出された冷却水が冷却水ジャケット30jへ通流する部分に、ラジエータ放熱用温調弁70を介してラジエータ71を接続し、又、冷却水を冷却水熱交換器32及びラジエータ71を迂回させて通流させるバイパス路72を、バイパス用温調弁73を介して冷却水循環路31に接続してある。ラジエータ放熱用温調弁70は、冷却水の温度がラジエータ放熱切換用設定温度(例えば82°C程度)以上のときは、ラジエータ71に冷却水が流れる流路に切り換わるように構成し、バイパス用温調弁73は、冷却水の温度が冷却水バイパス用設定温度(例えば60°C程度)以下のときは、冷却水がバイパス流路72に流れる流路に切り換わるように構成してある。
つまり、ガスエンジン30の起動時は、冷却水の温度が低いので、冷却水を冷却水熱交換器32及びラジエータ71を迂回させて通流させることにより、冷却水の放熱を抑制して、適切に起動できるようにしてある。
又、出力の大きいとき等、冷却水の温度が高くなって、冷却水熱交換器32だけでは放熱量が不足するときには、冷却水を冷却水熱交換器32とラジエータ71とに通流させるようにして、放熱量を大きくしている。
【0025】
次に、排熱回収給湯装置Hについて説明を加える。
排熱回収装置Hは、ガスエンジン30の排熱を回収した熱媒を貯留する熱媒貯留槽1、外気暖房ユニット80(暖房用熱交換器の一例)及び給水加熱用熱交換器2(給湯用熱交換器の一例)、排熱回収装置Hの各種制御を司る制御部3並びにその制御部3に各種制御情報を指令するリモコン操作部4を備え、ガスエンジン30の排熱を回収した熱媒を、熱媒貯留槽1を通過した後で外気暖房ユニット80の授熱側流路80a及び給水加熱用熱交換器2の受熱側流路2aに供給される形態で、熱媒循環路5にて循環させるように構成し、並びに、給水加熱用熱交換器2の授熱側流路2gの入水側に、水道水が水道圧にて供給される給水路6を接続すると共に、送水側に給湯路7を接続して、ガスエンジン30の排熱を回収した熱媒と熱交換する水道水を、給水路6を通じて水道圧にて給水加熱用熱交換器2に入水させ且つ水道圧にて給湯路7に送出するように構成してある。」
(1c) 「【0027】
熱媒循環路5は、熱媒を冷却水用熱交換器32と熱媒貯留槽1とにわたって循環させる加熱側熱媒循環路部分5aと、熱媒貯留槽1を通過した後の熱媒を、外気暖房ユニット80及び給水加熱用熱交換器2の順に循環させる放熱側熱媒循環路部分5gとから構成し、加熱側熱媒循環路部分5aには加熱側熱媒循環ポンプ37を設け、放熱側熱媒循環路部分5gには放熱側熱媒循環ポンプ38を設けてある。
【0028】
加熱側熱媒循環路部分5aは、熱媒を熱媒貯留槽1の底部から取り出して、上部から熱媒貯留槽1に戻すように熱媒貯留槽1に接続して、熱媒貯留槽1の上部が高温層となる温度成層が形成される状態で、ガスエンジン30の排熱により熱媒貯留槽1の熱媒を加熱するように構成してある。
又、放熱側熱媒循環路部分5gは、熱媒を熱媒貯留槽1の上部から取り出して、底部から熱媒貯留槽1に戻すように熱媒貯留槽1に接続して、熱媒貯留槽1の上部の高温側の熱媒を複数の熱負荷器に提供するように構成してある。具体的には、熱負荷器としてのファンコイルユニットなどの外気暖房ユニット80及び給水加熱用熱交換器2に熱媒を直列に通流させるように構成してある。外気暖房ユニット80は、その授熱側流路80aに流入する熱媒をファン80bにて放熱させて、熱媒から奪った熱を外気暖房ユニット80の外部に提供するように構成されている。
【0029】
給水路6には、給水路6を通流する水道水の流量を検出する給水流量センサ40を設けてある。
給湯路7は、通常給湯路7uと高温給湯路7hとに分岐し、通常給湯路7uにはミキシング弁11を設け、そのミキシング弁11に、給水路6から分岐したミキシング水路12を接続し、各給湯路7u、7hの先端にはシャワー、カラン等の給湯栓13を接続してある。
つまり、通常給湯路7uにより、給水加熱用熱交換器2から送出された湯水と給水加熱用熱交換器2に入水される前の水道水とをミキシング弁11にて混合して、給湯栓13を通じて給湯し、高温給湯路7hにより、給水加熱用熱交換器2から送出された湯水をそのまま給湯栓13を通じて給湯するように構成してあり、高温給湯路7hにて、通常給湯路7uよりも高温の給湯が可能となるように構成してある。
【0030】
更に、通常給湯路7uにおいて、ミキシング弁11の設置箇所よりも下流側に対応する箇所に、給湯用補助湯沸器(給湯用補助加熱手段に相当する)14を三方弁15を介して接続して、その三方弁15を湯水が給湯用補助湯沸器14に供給される側に切り換えることにより、通常給湯路7uを通流する湯水を給湯用補助湯沸器14にて補助的に加熱するように構成してある。
【0031】
給湯用補助湯沸器14は、周知の瞬間湯沸器を用いているので詳細な説明は省略するが、加熱対象の湯水が通流する湯沸器熱交換器14nとその湯沸器熱交換器14nを加熱するバーナ14bを備え、バーナ14bにはガス燃料を供給する燃料供給路16を接続し、その燃料供給路16には、バーナ14bへのガス燃料供給を断続する開閉弁17、及び、バーナ14bへのガス燃料供給量を調整するガス流量調整弁18を設けてある。
【0032】
給湯路7において、通常給湯路7uと高温給湯路7hとに分岐する箇所よりも上流側に対応する箇所に、給水加熱用熱交換器2から送出される湯水の温度(以下、熱交換器送出温度と称する場合がある)を検出する送出温度センサ19を設け、通常給湯路7uにおいて、給湯用補助湯沸器14の設置箇所よりも下流側に対応する箇所に、給湯栓13にて給湯される湯水の温度(以下、給湯温度と称する場合がある)を検出する給湯温度センサ20を設け、通常給湯路7uには、通常給湯流量センサ21を設けてある。
【0033】
リモコン操作部4には、図示を省略するが、運転状態と停止状態とに切り換える運転スイッチ、及び、通常給湯路7uにて給湯する給湯目標温度を設定する給湯温度設定部等を設けてあり、運転スイッチにて運転状態に切り換えられている間は、制御部3の制御動作が可能となる。」
(1d) 「【0035】
以下、排熱回収給湯温度制御について説明を加える。
制御部3には、予め、給湯設定温度(例えば、40°C)、及び、その給湯設定温度よりも低い(例えば、5°C程度低い)補助加熱開始設定温度を設定して記憶させてある。
制御部3は、給水流量センサ40が設定流量以上の流量を検出すると、放熱側熱媒循環ポンプ38を設定初期回転速度で作動させて、給水加熱用熱交換器2に供給される水道水の加熱を開始し、その加熱された水道水の温度、即ち、送出温度センサ19の検出温度が補助加熱開始設定温度以上のときは、三方弁15を湯水が給湯用補助湯沸器14を迂回する側に切り換えた状態で、送出温度センサ19の検出温度を給湯設定温度に維持するように放熱側熱媒循環ポンプ38の回転速度を調節する。
【0036】
又、通常給湯路7uの給湯栓13が開栓されることにより、通常給湯路7uを水道圧により湯水が流れて、通常給湯流量センサ21が設定流量以上の流量を検出すると、制御部3は、送出温度センサ19及び給湯温度センサ20それぞれの検出温度に基づいて、熱交換器送出温度がリモコン操作部4にて設定される給湯目標温度以上のときは、通常給湯制御を実行し、熱交換器送出温度が給湯目標温度よりも低いときは、補助加熱給湯制御を実行する。つまり、給湯負荷が大きくなったり、発電装置Gの運転が停止されてガスエンジン30からの排熱発生がなくなると、熱交換器送出温度が給湯目標温度よりも低くなるので、補助加熱給湯制御が実行されることになる。
通常給湯制御では、三方弁15を湯水が給湯用補助湯沸器14を迂回する側に切り換え、且つ、給湯用補助湯沸器14のバーナ14bの燃焼を停止させた状態で、給湯温度センサ20にて検出される給湯温度が給湯目標温度になるようにミキシング弁11の作動を制御する。
補助加熱給湯制御では、三方弁15を湯水が給湯用補助湯沸器14に供給される側に切り換え、且つ、給湯用補助湯沸器14のバーナ14bを燃焼させ、且つ、ミキシング弁11をミキシング水路12側が閉じ状態となるように制御した状態で、給湯温度センサ20にて検出される給湯温度が給湯目標温度になるように、ガス流量調整弁18の開度を調節して、バーナ14bの燃焼量を調節する。」
(1e) 「【0066】
(ヌ) 上記の実施形態においては、ガスエンジン30にて駆動される発電装置Gを備えたコージェネレーションシステムにて用いる排熱回収給湯装置Hに本発明を適用する場合について例示したが、本発明をコージェネレーションシステムにて用いる排熱回収給湯装置Hに適用する場合、上記の実施形態の如きガスエンジン30等の各種エンジンにて駆動される発電装置Gを備えたもの以外に、例えば、ガスタービンにて駆動される発電装置Gを備えたものにおいて、ガスタービンを排熱発生装置として適用したり、あるいは、燃料電池を用いた発電装置Gを備えたものにおいて、燃料電池を排熱発生装置として適用したりすることが可能である。
又、本発明は、コージェネレーションシステムにて用いる排熱回収給湯装置以外に、各種燃焼装置や各種燃焼式原動機等の各種の排熱発生装置の排熱を用いて給湯する排熱回収給湯装置に適用することが可能である。」
(1f) 「【図1】


(2) 引用文献1に記載された発明
上記(1e)によれば、上記【図1】の第1実施形態において、ガスエンジン30にて駆動される発電装置Gを備えたもの以外に、燃料電池を用いた発電装置Gを備え、燃料電池を排熱発生装置とした発明が把握できる。よって、上記(1a)?(1f)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「燃料電池を備えた発電装置Gと、燃料電池の排熱を用いて給湯及び暖房を行う排熱回収給湯装置Hとから構成してなるコージェネレーションシステムであって、
排熱回収給湯装置Hは、燃料電池の排熱を回収した熱媒を貯留する熱媒貯留槽1、外気暖房ユニット80(暖房用熱交換器の一例)及び給水加熱用熱交換器2(給湯用熱交換器の一例)、排熱回収装置Hの各種制御を司る制御部3並びにその制御部3に各種制御情報を指令するリモコン操作部4を備え、
排熱回収給湯装置Hは、冷却水熱交換器32に排熱回収用の熱媒を循環させて、燃料電池の排熱を回収するように構成し、燃料電池の排熱を回収した熱媒を、熱媒貯留槽1を通過した後で外気暖房ユニット80の授熱側流路80a及び給水加熱用熱交換器2の受熱側流路2aに供給される形態で、熱媒循環路5にて循環させるように構成し、並びに、給水加熱用熱交換器2の授熱側流路2gの入水側に、水道水が水道圧にて供給される給水路6を接続すると共に、送水側に給湯路7を接続して、燃料電池の排熱を回収した熱媒と熱交換する水道水を、給水路6を通じて水道圧にて給水加熱用熱交換器2に入水させ且つ水道圧にて給湯路7に送出するように構成し、
熱媒循環路5は、熱媒を冷却水用熱交換器32と熱媒貯留槽1とにわたって循環させる加熱側熱媒循環路部分5aと、熱媒貯留槽1を通過した後の熱媒を、外気暖房ユニット80及び給水加熱用熱交換器2の順に循環させる放熱側熱媒循環路部分5gとから構成し、加熱側熱媒循環路部分5aには加熱側熱媒循環ポンプ37を設け、放熱側熱媒循環路部分5gには放熱側熱媒循環ポンプ38を設けてあり、制御部3により、放熱側熱媒循環ポンプ38の回転速度を調節し、
給湯路7は、通常給湯路7uと高温給湯路7hとに分岐し、通常給湯路7uにはミキシング弁11を設け、そのミキシング弁11に、給水路6から分岐したミキシング水路12を接続し、各給湯路7u、7hの先端にはシャワー、カラン等の給湯栓13を接続してあり、
通常給湯路7uにより、給水加熱用熱交換器2から送出された湯水と給水加熱用熱交換器2に入水される前の水道水とをミキシング弁11にて混合して、給湯栓13を通じて給湯し、高温給湯路7hにより、給水加熱用熱交換器2から送出された湯水をそのまま給湯栓13を通じて給湯するように構成してあり、高温給湯路7hにて、通常給湯路7uよりも高温の給湯が可能となるように構成してあり、
通常給湯路7uにおいて、ミキシング弁11の設置箇所よりも下流側に対応する箇所に、給湯用補助湯沸器(給湯用補助加熱手段に相当する)14を三方弁15を介して接続し、制御部3は、熱交換器送出温度が給湯目標温度以上のときは、三方弁15を、湯水が給湯用補助湯沸器14を迂回する側に切り換えて、通常給湯制御を実行し、熱交換器送出温度が給湯目標温度よりも低いときは、三方弁15を、湯水が給湯用補助湯沸器14に供給される側に切り換えることにより、通常給湯路7uを通流する湯水を給湯用補助湯沸器14にて補助的に加熱する補助加熱給湯制御を実行する、
コージェネレーションシステム。」
2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2a) 「【0001】
本発明はたとえば、排熱源からの熱を貯湯によって蓄熱し、給湯加熱などに用いる給湯技術に関する。」
(2b) 「【0019】
図1は、第1の実施の形態に係る給湯システムを示している。この給湯システム2は本発明の給湯システムの一例であり、図1に記載これた構成に本発明が限定されるものではない。」
(2c) 「【0023】
給湯時、給水路5-2により給水Wが貯湯タンク4の下層側に供給される。この給水Wで押し上げられるように、貯湯タンク4の上層側から温水HWが出湯路5-3に流れる。この給湯システム2には制御部8で制御される第1および第2の温度調整部10-1、10-2が備えられている。混合弁12-1の出側には出湯温を検出する第2の温度センサの一例である温度センサ6-2が備えられ、この温度センサ6-2の検出温度をT2とする。この検出温度T2が、温度調整部10-1、10-2の切替えに用いられる。つまり、T2≧Tでは温度調整部10-1による温度調整、T2<Tでは温度調整部10-2による温度調整により、設定温度Tの出湯が行われる。温度調整部10-2には熱媒HCの熱によって温水HWを加熱する補助熱源14が備えられる。この補助熱源14は、発熱量が下限値から上限値に制御可能であり、出湯中、温度センサ6-1の検出温度T1が設定温度Tより低下した時点の先行加熱時の発熱量をたとえば、燃焼などの動作が維持される程度の下限値に設定すればよい。この発熱量は一例であり、この条件に本発明が限定されるものではない。」
(2d) 「【0028】
(T2<Tの場合)
【0029】
設定温度Tの出湯には貯湯タンク4の蓄熱量が不足している場合である。この場合、補助熱源14を用いた間接加熱で不足熱量を補完する。補助熱源14における熱源にはたとえば、燃焼ガスを燃焼して燃焼熱を生じるバーナ140を用いればよい。
【0030】
給湯時、貯湯タンク4からの温水HWを全面的に使用し、バイパス路5-4の給水Wの混合を行わない。つまり、混合弁12-1は、温水HW側を全開状態とする。この場合、温度センサ6-2の検出温度T2は温水HWの温度を表す。
【0031】
貯湯タンク4の温水HWが出湯路5-3より温度調整部10-2に導かれると、温度調整部10-2では、給湯時、先行的に補助熱源14を動作させ、つまり、バーナ140を燃焼させ、この燃焼熱を熱媒循環路5-6に循環する熱媒HCに熱交換する。熱媒循環路5-6には、熱交換器16-1、16-2および循環ポンプ18ー1が備えられている。熱交換器16-1は第1の熱交換部、熱交換器16-2は第2の熱交換部の一例である。バーナ燃焼に連動して循環ポンプ18-1が動作し、熱媒HCが熱交換器16-1、16-2に循環する。バーナ140の燃焼熱が熱交換器16-1により熱媒HCに熱交換され、熱媒HCの熱が熱交換器16-2により温水HWに熱交換される。この熱交換により、加熱された温水HWを加熱温水hHWとする。
【0032】
出湯路5-3にある温度センサ6-3が、この場合の出湯温度を検出する。この検出温度T3が制御部8に提供され、混合弁12-2の加熱温水hHW側と、加熱前の温水HW側の開度比率が制御される。これにより、加熱温水hHW側と加熱前の温水HWとの混合水MW2が得られ、設定温度Tに調整された混合水MW2(=hHW+HW)が出湯水となる。」
(2e) 「【0044】
温水HWに熱媒HCの熱が熱交換され、熱交換器16-2から加熱温水hHWが得られる。混合弁12-2ではバイパス路5-5を通過する温水HWと、熱交換器16-2からの加熱温水hHWとを混合し、混合水MW2が得られる。この混合水MW2の出湯温度が温度センサ6-3で検出され、混合弁12-2のバイパス路5-5側の開度と加熱温水hW側の開度の開度比率が制御され、設定温度Tに制御された混合水MW2の出湯が得られる。」
(2f) 「【図1】


(2) 引用文献2に記載された事項
上記(2a)?(2f)を総合すると、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「温水HWが出湯路5-3より温度調整部10-2に導かれると、熱交換器16-2により温水HWを加熱温水hHWとし、混合弁12-2でバイパス路5-5を通過する温水HWと、熱交換器16-2からの加熱温水hHWとを混合し、混合弁12-2の開度比率が制御され、設定温度Tに制御された混合水MW2の出湯が得られる、給湯システム。」
3 引用文献4
(1) 引用文献4の記載
(4a) 「【0022】
本発明の実施形態について、図1?図3を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態の貯湯式給湯装置1は、貯湯ユニット10、ヒートポンプユニット50、補助熱源ユニット80、及び、貯湯式給湯装置1を遠隔操作するためのリモコン140を備えて構成されている。」
(4b) 「【0046】
次に、貯湯ユニット10と補助熱源ユニット80は、別体に設置される場合と一体化して設置される場合があり、本実施形態では、図2に示したように、一体化して設置されている。図2(a)の正面図及び図2(b)の右側面図を参照して、補助熱源ユニット80と貯湯ユニット10は、筐体200内に前後して連結されている。」
(4c) 「【符号の説明】
【0085】
1…貯湯式給湯装置、10…貯湯ユニット、11…貯湯タンク、12…給水管、13…出湯管、21…給湯混合弁、26…タンク出湯温度センサ、28…混合温度センサ、29…出湯バイパス弁、33…出湯バイパス管、34…給水バイパス管、50…ヒートポンプユニット、80…補助熱源ユニット、100…貯湯コントローラ、101…タンク通信回路、102…沸かし上げ指示送信部、103…タンク外気温度送信部、120…ヒートポンプコントローラ、121…ヒートポンプ通信回路、123…電源供給制御回路、124…電源切替回路、125…ヒートポンプ制御回路、130…補助熱源コントローラ、131…補助熱源通信回路、132…凍結防止制御部、133…補助熱源外気温度送信部。」
(4d) 「


(2) 引用文献4に記載された事項
上記(4a)?(4c)、【図1】を総合すると、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
・「貯湯ユニット10、ヒートポンプユニット50、補助熱源ユニット80、及び、貯湯式給湯装置1を遠隔操作するためのリモコン140を備えた貯湯式給湯装置1において、貯湯ユニット10と補助熱源ユニット80は、別体に設置される場合があること。」(以下「引用文献4記載の技術的事項1」という。)
・「貯湯ユニット10、ヒートポンプユニット50、及び補助熱源ユニット80の各ユニット毎に、貯湯コントローラ100、ヒートポンプコントローラ120、及び補助熱源コントローラ130が設けられること。」(以下「引用文献4記載の技術的事項2」という。)
4 引用文献5
(1) 引用文献5の記載
(5a) 「【0021】
先ず、本発明に係る貯湯給湯装置1の全体構造について説明する。
図1,図2に示すように、貯湯給湯装置1は、外部熱源機(図示略)によって発生した熱を高温の湯水として貯留する貯湯タンク3及びこの貯湯タンク3を収容する外装ケース4等からなる貯湯タンクユニット2と、貯湯タンク3内の湯水温度が低い場合に再加熱を行う補助熱源機5等を備えている。貯湯タンク3と補助熱源機5とを組み合わせることで、貯湯給湯装置1にハイブリッド給湯システムが構築されている。」
(5b)「【図1】

【図2】


(2) 引用文献5に記載された事項
上記(5a)、(5b)を総合すると、引用文献5には、以下の事項(以下「引用文献5記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「補助熱源機を備えた貯湯給湯装置において、補助熱源機は、貯湯タンクとは別体に設けること。」
5 引用文献6
(1) 引用文献6の記載
(6a) 「【0013】
【実施例】本発明の実施例について図面に沿って説明すると、図1は、本発明の太陽熱給湯機に、補助熱源15を接続した系統図であり、大別すると、太陽熱集熱機2、筐体4及び補助熱源15よりなっている。太陽熱集熱機2には、プロピレングリコール水溶液を充填させた循環パイプ5を接続してあり、該循環パイプ5を前記筐体4内に設置した貯湯タンク1に引込み接続している。前記プロピレングリコール水溶液は、ポンプ6により循環されるものであり、水溶液を補充するために、補助タンク19をその経路の途中に設けている。」
(6b) 「【図1】


(2) 引用文献6に記載された事項
上記(6a)、(6b)を総合すると、引用文献6には、以下の事項(以下「引用文献6記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「補助熱源を備えた給湯機において、補助熱源は、太陽熱集熱機や筐体とは別体に設けること。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明の「燃料電池」、「熱媒」、「熱媒貯留槽1」、「給湯用補助湯沸器14」、「加熱側熱媒循環路部分5a」及び「放熱側熱媒循環路部分5g」は、その機能や技術上の意義を考慮すると、それぞれ、本願発明の「燃料電池」、「第1の熱媒」、「タンク」、「補助熱源」、「第1の循環路」及び「第2の循環路」に相当する。
引用発明の「水道水」は、給水路6を通じて給水加熱用熱交換器2に入水されることから、本願発明の「給水」に相当する。
また、引用発明の「通常給湯路7u」のうち「給湯用補助湯沸器14に供給される側」は、本願発明の「給湯路」に相当する。
さらに、引用発明は、「通常給湯路7uにおいて」、「給湯用補助湯沸器(給湯用補助加熱手段に相当する)14を三方弁15を介して接続し」、「三方弁15」が、「湯水が給湯用補助湯沸器14を迂回する側」と、「湯水が給湯用補助湯沸器14に供給される側とに切り換える」ものであるから、引用発明の「通常給湯路7u」のうち「給湯用補助湯沸器14を迂回する側」は、給湯用補助湯沸器14からみて、給湯用補助湯沸器14をバイパスする側といえるものである。
そうすると、引用発明は、本願発明の「給湯路と該給湯路を分岐したバイパス路」とを備えるものといえる。
引用発明の「燃料電池を備えた発電装置Gと、燃料電池の排熱を用いて給湯及び暖房を行う排熱回収給湯装置Hとから構成してなるコージェネレーションシステム」は、燃料電池の排熱を給湯の熱源に用いているといえ、燃料電池を備えたシステムを構成したものなので、本願発明の「燃料電池の排熱を熱源に用いる燃料電池システム」に相当する。
引用発明の「冷却水熱交換器32に排熱回収用の熱媒を循環させて、燃料電池の排熱を回収するように構成し」た態様は、燃料電池の排熱を熱媒に熱交換し、熱媒を加熱しているといえるので、本願発明の「燃料電池の排熱を第1の循環路に流れる第1の熱媒に熱交換し前記第1の熱媒を加熱する」態様に相当する。
また、引用発明の「燃料電池を備えた発電装置G」と本願発明の「燃料電池ユニット」とは、「燃料電池を備えた装置」との限りで一致する。
引用発明の「燃料電池の排熱を回収した熱媒を貯留する熱媒貯留槽1」を備え、「排熱回収装置Hの各種制御を司る制御部3」を備え、「放熱側熱媒循環路部分5gには放熱側熱媒循環ポンプ38を設けてあり、制御部3により、放熱側熱媒循環ポンプ38の回転速度を調節」し、「放熱側熱媒循環路部分5g」により、「熱媒貯留槽1を通過した後の熱媒を、外気暖房ユニット80及び給水加熱用熱交換器2の順に循環させ」て、「燃料電池の排熱を回収した熱媒と熱交換する水道水を、給水路6を通じて水道圧にて給水加熱用熱交換器2に入水させ且つ水道圧にて給湯路7に送出するように構成し」た態様と、本願発明の「前記第1の熱媒をタンクに溜め、前記第1の熱媒の前記タンクから第2の循環路への循環量を制御する第1の制御部を有し、給水と前記第2の循環路に流れる前記第1の熱媒の熱を熱交換する第1の給湯ユニット」とは、「前記第1の熱媒をタンクに溜め」、「前記第1の熱媒の前記タンクから第2の循環路への循環量を制御する制御部を有し」、「給水と第2の循環路に流れる前記第1の熱媒の熱を熱交換する第1の給湯装置」との限りで一致する。
また、引用発明の「通常給湯路7uにおいて、ミキシング弁11の設置箇所よりも下流側に対応する箇所に、給湯用補助湯沸器(給湯用補助加熱手段に相当する)14を三方弁15を介して接続し、制御部3は、熱交換器送出温度が給湯目標温度以上のときは、三方弁15を、湯水が給湯用補助湯沸器14を迂回する側に切り換えて、通常給湯制御を実行し、熱交換器送出温度が給湯目標温度よりも低いときは、三方弁15を湯水が給湯用補助湯沸器14に供給される側に切り換えることにより、通常給湯路7uを通流する湯水を給湯用補助湯沸器14にて補助的に加熱する補助加熱給湯制御を実行する」態様は、湯水が制御部3により制御された設定温度で給湯されていることをふまえると、本願発明の「前記第1の給湯ユニットからの給水を加熱する補助熱源とともに、前記給湯路に設けられて前記バイパス路と通じる混合弁の開度を制御する第2の制御部とを有し、前記第1の給湯ユニットからの給水を前記給湯路と前記バイパス路とに流し、前記補助熱源で加熱した前記給湯路を流れる前記第1の給湯ユニットからの給水と、前記バイパス路を流れる前記第1の給湯ユニットからの給水とを前記混合弁で前記第2の制御部により制御された開度に応じて混合して設定温度で給湯する第2の給湯ユニット」と、「前記第1の給湯装置からの給水を加熱する補助熱源とを有し、前記第1の給湯装置からの給水を前記給湯路と前記バイパス路とに流し、制御部により制御された設定温度で給湯する第2の給湯装置を備える」との限りで一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。
「燃料電池の排熱を熱源に用いる燃料電池システムであって、
燃料電池の排熱を第1の循環路に流れる第1の熱媒に熱交換し前記第1の熱媒を加熱する燃料電池を備えた装置と、
前記第1の熱媒をタンクに溜め、前記第1の熱媒の前記タンクから第2の循環路への循環量を制御する制御部を有し、給水と第2の循環路に流れる前記第1の熱媒の熱を熱交換する第1の給湯装置と、
給湯路と該給湯路を分岐したバイパス路と前記第1の給湯装置からの給水を加熱する補助熱源とを有し、前記第1の給湯装置からの給水を前記給湯路と前記バイパス路とに流し、制御部で制御された設定温度で給湯する第2の給湯装置と、
を備える燃料電池システム。」
そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
第2の給湯装置について、本願発明は、「前記給湯路に設けられて前記バイパス路と通じる混合弁の開度を制御」するものであって、「前記補助熱源で加熱した前記給湯路を流れる」給水と、「前記バイパス路を流れる」給水とを「前記混合弁で」、「制御部により制御された開度に応じて混合して設定温度で給湯する」ものであるのに対して、引用発明は、「通常給湯路7uにおいて、ミキシング弁11の設置箇所よりも下流側に対応する箇所に、給湯用補助湯沸器(給湯用補助加熱手段に相当する)14を三方弁15を介して接続し、制御部3は、熱交換器送出温度がリモコン操作部4にて設定される給湯目標温度以上のときは、三方弁15を、湯水が給湯用補助湯沸器14を迂回する側に切り換えて、通常給湯制御を実行し、熱交換器送出温度が給湯目標温度よりも低いときは、三方弁15を、湯水が給湯用補助湯沸器14に供給される側に切り換えることにより、通常給湯路7uを通流する湯水を給湯用補助湯沸器14にて補助的に加熱する補助加熱給湯制御を実行する」ものである点。
<相違点2>
燃料電池を備えた装置、第1の給湯装置及び第2の給湯装置について、本願発明は、「燃料電池ユニット」、「第1の給湯ユニット」及び「第2の給湯ユニット」とされ、「第2の給湯ユニット」が「前記燃料電池ユニットおよび前記第1の給湯ユニットとは別体で構成され」て、さらに「制御部」が、「第1の給湯ユニット」及び「第2の給湯ユニット」にそれぞれ有されている「第1の制御部」及び「第2の制御部」とされているのに対して、引用発明は、各装置がユニットであるとは特定されておらず、また、各装置が別体であるか否かも不明であり、「制御部」は、一つである点。
2 判断
(1) 相違点1について
前記引用文献2記載の技術的事項のとおり、引用文献2には、相違点1に係る本願発明の特定事項が開示されているといえる。
そして、引用発明の第2の給湯装置に相当する部分は、補助熱源で給水を加熱する給湯路と、バイパス路を備え、設定温度で給湯するものである点で、引用文献2記載の技術的事項と構成及び機能が共通する。
そうすると、引用発明の上記部分について、引用文献2記載の技術的事項を採用し、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2) 相違点2について
引用文献4記載の技術的事項1、引用文献5記載の技術的事項、及び引用文献6記載の技術的事項によれば、装置をユニット化することは、本願出願前(遡及日前)に周知の事項(以下「周知事項1」という。)であり、装置のどの部分をユニットとするかは、当業者が適宜決定できることである。
また、引用文献4記載の技術的事項1及び【図1】、引用文献5記載の技術的事項及び【図1】、並びに引用文献6記載の技術的事項及び【図1】によれば、給湯装置の構成として、補助熱源を含むユニットを他のユニットとは別体とすることは、本願出願前(遡及日前)に周知の事項(以下「周知事項2」という。)である。
そして、引用発明と周知事項1、2とは、給湯装置という同一の技術分野に属するものであり、引用発明における補助熱源を有する第2の給湯装置に相当する部分と周知事項2における補助熱源を含むユニットとは、湯水を補助的に加熱するという共通の機能を有する。
したがって、引用発明において周知事項1、2を適用することに動機付けはあるといえる。
よって、引用発明に周知事項1、2を適用して、引用発明の「燃料電池を備えた発電装置G」、第1の給湯装置をなす「『燃料電池の排熱を回収した熱媒を貯留する熱媒貯留槽1』、『外気暖房ユニット80(暖房用熱交換器の一例)』、『給水加熱用熱交換器2(給湯用熱交換器の一例)』」、及び第2の給湯装置をなす「『給湯用補助湯沸器(給湯用補助加熱手段に相当する)14』、『三方弁15』、『通常給湯路7u』」を、それぞれユニット化して、「燃料電池ユニット」、「第1の給湯ユニット」及び「第2の給湯ユニット」とし、補助熱源を備える「第2の給湯ユニット」を「燃料電池ユニット」および「第1の給湯ユニット」とは別体で構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。
さらに、引用文献4記載の技術的事項2によれば、ユニット毎に制御部を設けることが、本願出願前(遡及日前)に周知の事項(以下「周知事項3」という。)であると認められ、当該周知事項3をふまえると、引用発明において、装置を複数のユニットからなるものとし、別体としたものについて、各ユニット毎に制御部を有したものとすることが普通である。そして、熱媒貯留槽を含むユニットに有される制御部を第1の制御部、給湯用補助湯沸器を含むユニットに有される制御部を第2の制御部とすることは、格別なことではない。
そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項、周知事項1?3から予測し得る程度のものであり、当業者の予測を超える格別のものとは認められない。
(4) 請求人の主張について
ア 請求人は、本願発明が「燃料電池システムの給湯機能に給湯ユニットの温度調整機能を活用することができ、給湯ユニットを設置する際に既存の給湯装置を利用できる」という効果を奏する旨、主張する(審判請求書の「5.本願発明と引用文献に記載の発明との対比」参照)。
しかしながら、請求人の主張する効果は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項、周知事項1?3から予測できるし、格別な効果と認めることはできない。
イ また、請求人は、以下の点も主張する。
「斯かる内容の引用文献1は、本願のように、別体である各ユニットに制御部が備えられていること、第1の制御部がタンクから第2の循環路へと循環させる熱媒の量を制御すること、別体として存在する第2の給湯ユニットに備えられた第2の制御部によって混合弁の開度を制御し、第1の給湯ユニットからの給水とバイパス路を流れる第1の給湯ユニットからの給水とを混合弁で第2の制御部により制御された開度に応じて混合して設定温度で給湯することのいずれについての記載も無い。また斯かる点について示唆する記載も無い。」(令和元年11月11日意見書4.(1)ア)の項)
「斯かる内容である引用文献2は、本願のように、別体である各ユニットに制御部が備えられていること、第1の制御部がタンクから第2の循環路へと循環させる熱媒の量を制御すること、別体として存在する第2の給湯ユニットに備えられた第2の制御部によって混合弁の開度を制御し、第1の給湯ユニットからの給水とバイパス路を流れる第1の給湯ユニットからの給水とを混合弁で第2の制御部により制御された開度に応じて混合して設定温度で給湯することのいずれについての記載も無い。また斯かる点について示唆する記載も無い。
・・・引用文献2は単一筐体であり、単一の制御部によって全ての制御を行っているため、貯湯タンクからの温水の取り出しを制御する制御部が混合弁の制御をも行っている。こうした、制御部が本願とは内容が大きく異なる制御を行っている引用文献2を引用文献1に組み合わせる動機付けは無い。」( 令和元年11月11日意見書4.(1)イ)の項)
しかしながら、装置における適宜の構成をユニットとして構成すること、各ユニットに制御部を設けること、及び制御部が混合弁の開度の制御を行うことは、上記(1)及び(2)で検討したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術的事項及び周知事項1?3に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるので、上記請求人の主張も採用できない。
3 結論
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知事項1?3に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知事項1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-01-07 
結審通知日 2020-01-14 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2017-244736(P2017-244736)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 光司  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 平城 俊雅
山崎 勝司
発明の名称 燃料電池システム  
代理人 畝本 正一  

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