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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1361234 |
審判番号 | 不服2018-17184 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-25 |
確定日 | 2020-04-02 |
事件の表示 | 特願2015-160974「接合体、接合体の製造方法、及び車両用構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月23日出願公開、特開2017-39234〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年8月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 2月 5日付け:拒絶理由通知 平成30年 4月20日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 9月21日付け:拒絶査定 平成30年12月25日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年12月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成30年12月25日付けの手続補正の内容 平成30年12月25日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年4月20日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の記載である、 「【請求項1】 繊維強化樹脂を含み、前記繊維強化樹脂の繊維が露出する繊維露出部を表面の少なくとも一部に有する第一の成形体と、 第二の成形体と、 前記第一の成形体における前記繊維露出部と前記第二の成形体との接合部と、を有し、 前記第一の成形体が熱可塑性樹脂を含み、前記第二の成形体が熱硬化性樹脂を含む成形体若しくは金属製の成形体であるか、又は前記第一の成形体が熱硬化性樹脂を含み、前記第二の成形体が熱可塑性樹脂を含む成形体である接合体。」 を、 「【請求項1】 繊維強化樹脂を含み、前記繊維強化樹脂の繊維が露出する繊維露出部を表面の少なくとも一部に有する第一の成形体と、 第二の成形体と、 前記第一の成形体における前記繊維露出部と前記第二の成形体との接合部と、を有し、 前記第一の成形体が熱硬化性樹脂を含み、前記第二の成形体が熱可塑性樹脂を含む成形体であり、 前記繊維露出部が、複数の穴を有する接合体。」 と補正する事項を含むものである(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。また、本件補正後の請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。)。 2 本件補正の適否 2-1 本件補正の目的 (1)特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である繊維露出部について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2 独立特許要件の検討 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。 (1)明確性について ア 本件補正発明の特定事項について 本件補正発明は、「前記繊維露出部が、複数の穴を有する」と特定され、繊維の露出部位に対して穴が複数あるものと解され、この「繊維露出部」は、第一の成形体の表面の少なくとも一部に有するものである。 しかしながら、既に繊維が露出した部位に対して、更に「穴」を複数の箇所へ、どのような位置関係で設けているか不明である。 加えて、「前記繊維露出部が、複数の穴を有する接合体。」という発明特定事項に関し、「複数の穴を有する」という文言は、接合後の「接合体」の性状を特定するのか、接合前の第一の成形体の表面の性状を示すのかも不明である。 したがって、本件補正によって追加された「繊維露出部が、複数の穴を有する」という事項は、技術的に明確でない。 よって、本件補正発明は不明確である。 イ さらに、「前記繊維露出部が、複数の穴を有する」ことにつき、本願明細書及び図面の記載を参酌しつつ検討する。 繊維露出部に設けられた「穴」に対応すると考えられる本願明細書及び図面の記載は、以下の(ア)?(カ)と認められる。 (ア)【0030】 「図2は、コロナ放電処理により繊維露出部を設けた成形体の、繊維露出部における模式断面図を表す。図2に表されるように、成形体1の表面にポーラス状の凹凸が存在し、繊維3が成形体1の表面に露出している。」(下線は、合議体が記した。) (イ)「【図2】 」 (ウ)【0052】 「コロナ放電処理により形成された成形体の繊維露出部の写真を、図8に示す。」 (エ)「【図8】 」 (オ)【0054】 「図9に、コロナ放電処理後のC-SMCを用いた第一の成形体と、連続繊維材を用いた第二の成形体と、を超音波溶着して形成された接合部の断面写真を示す。 図9から明らかなように、C-SMCと連続繊維材との界面に繊維が存在していることがわかる。図9中、点線を付した箇所は、C-SMCと連続繊維材との界面を示す。」 (カ)「【図9】 」 上記(ア)の「ポーラス」という文言は、一般に多孔質であることを指し、【図2】から、繊維3の間に凹部が存在し、それが複数箇所あることが看取できる。 しかしながら、繊維が表面に出ている箇所以外はすべて凹部となっていることから、繊維露出部の範囲は、第一の成形体の表面全体と解せられるところ、【図8】からは、【図2】において大半の表面を覆うことが示される繊維露出及びそれ以外の箇所をすべて占める凹部を視認することできない。 同様に、【図9】は接合部の断面を表すものであるが、界面上の繊維の露出と、C-SMC側の窪みが視認できるものの、複数の穴の存在が確認できないし、【図2】との対比において、繊維と繊維間に存在する凹部とその形状が明らかに相違している。 したがって、上記(ア)?(カ)の記載を総合すると、繊維露出部が特定できず、結果として「前記繊維露出部が、複数の穴を有する」状態を特定することができない。 ウ 請求人は、審判請求書の「(3)(ii)補正の根拠の明示」において、「繊維露出部が、複数の穴を有することとする補正は、当初明細書の0052段落及び図8に基づいてされたものである。0052段落には熱硬化性樹脂材であるC-SMCにコロナ放電処理を行った旨が記載されており、図8にはコロナ放電処理により形成された成形体の繊維露出部の写真が開示されている。図8の写真を確認すると、樹脂露出部に無数の穴が存在していることがわかる。また、コロナ放電処理により繊維露出部を設けた成形体の、繊維露出部における模式断面図を表す図2にも、繊維3の付近に樹脂2の窪みが生じていることがわかる。」と主張している。 しかしながら、上記アで述べたように、【図8】のいずれの場所から繊維が露出しているか明確に判別できず、そして、どの箇所が「穴」であるかも明確に判別できない。また、模式断面図である【図2】において、繊維間の表面に樹脂2の窪みが生じていることは視認できるが、【図8】及び【図9】との対応関係が理解できず、結局、複数の穴がどのように形成されているのか不明である。 エ 明確性についてのまとめ よって、本件補正発明は、明確でないから、本件補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を充足するとはいえず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえない。 (2)進歩性について さらに、仮に、本件補正発明における、「前記繊維露出部が、複数の穴を有する」という特定事項が、【図9】から読み取れる、第一の成形体の表面に、「複数の窪みがあり、そこに繊維が露出している状態」を意味しており、明確であるとして、以下、進歩性について検討する。 ア 引用文献2に記載された事項等 (ア)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された特開2015-16575号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「複合成形品」に関して、おおむね次の記載がある。 なお、下線は当審で付したものである。 ・「【請求項1】 第1成形品と第2成形品とが溶着された複合成形品であって、 前記第1成形品は、無機充填剤を含有し、表面に、前記第2成形品と溶着する第1溶着面が設けられている樹脂成形品であり、 前記第2成形品は、表面に、前記第1成形品と溶着する第2溶着面が設けられている成形品であり、 前記第1成形品と前記第2成形品とは、前記第1溶着面と前記第2溶着面とが互いに向き合って接するとともに、弾性体が挿入される空間が設けられており、 前記第1溶着面には、側壁面から無機充填剤が突出する微小溝が形成され、これら複数の微小溝には前記無機充填剤及び前記第2成形品の溶融固化物が含まれ、 前記空間には、弾性体が挿入されている、複合成形品。」 ・「【請求項4】 前記第1成形品と前記第2成形品とは異なる材料からなる、請求項1から3のいずれかに記載の複合成形品。」 ・「【0016】 <複合成形品1> 図1は本発明の複合成形品1の概略断面図である。複合成形品1は、第1成形品10と第2成形品20とを備え、これらは溶着面11,21で溶着されている。 【0017】 [第1成形品10] 第1成形品10は、無機充填剤を含有する樹脂成形品である。また、第1成形品10の表面には、第2成形品20と溶着する第1溶着面11が凹部12を隔てて並設されている。 【0018】 〔樹脂〕 樹脂の種類は、無機充填剤を残して樹脂を一部除去することにより微小溝を形成できるものであれば特に限定されない。・・・(略)・・・ 【0020】 樹脂は、熱可塑性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。」 ・・・(略)・・・ 【0030】 無機充填剤13として、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等を挙げることができる。無機充填剤13が複合成形品1から脱落することを防止し、無機充填剤13が第1成形品10及び第2成形品20の破壊を抑えるアンカーの役割を果たすようにするため、無機充填剤13の長さは、長手方向の長さが微小溝11Aの短手方向の長さよりも長いことが好ましい。言い換えると、微小溝11Aの短手方向の長さは、無機充填剤13の長手方向の長さよりも短いことが好ましい。形状が繊維状であれば、平均繊維長が微小溝11Aの短手方向の長さよりも長いことが好ましく、形状が不定形、板状、粒子状であれば、長径、好ましくは平均粒子径が微小溝11Aの短手方向の長さよりも長いことが好ましい。」 ・「【0067】 本発明によると、対象となる樹脂成形品が互いに異種材料であっても、2次成形品の溶着予定面が溶かされれば、その溶解した樹脂が微小溝11Aに入り込むため、複合成形品1を得ることができる。また、1次成形品と2次成形品との両方を同時に溶かすものでないため、1次成形品のよう寸法安定性に優れる。そして、第1成形品10として、無機充填剤13を含有する樹脂成形品にレーザの照射や化学処理を行い、無機充填剤13が露出され側面から無機充填剤が突出している複数の微小溝11Aを形成したものを用いるとともに、第1成形品10と第2成形品20との間の隙間12に弾性体を挿入することで、第1成形品と第2成形品とを接合した際に、微小溝11Aに露出する無機充填剤13が第1成形品10及び第2成形品20の破壊を抑えるアンカーの役割を果たし、弾性体を挟み込む形で強度に接合一体化することが可能で、結果として複合成形体1の接合部の気密性への信頼性を著しく高めらることができる。特に、第1成形品10と第2成形品20が異なる材料の組み合わせの場合にも気密を実現できる点で好適である。」 ・「【0078】 [第1成形品の製造] 上記ガラス繊維入りLCP(製品名:ベクトラLCP E130i,ポリプラスチックス社製)を上記(射出成形の条件)で示した条件で射出成形した射出成形品に、発振波長が1.064μm、溝の幅が200μm、隣り合う溝の間隔が200μmとなるように斜格子状に照射した。レーザの照射回数は10回とし、走査速度は1000mm/sとした。これにより、試験例2-1に係る第1成形品を得た。 ・・・(略)・・・ 【0080】 [複合成形品の製造] 試験例2-1に係る第1成形品について、溝を設ける面を第1溶着予定面とし、ジュラコンPOM M450-44(ポリプラスチックス社製)と超音波溶着を行った。」 (イ)引用発明 実施例である[複合成形品の製造]の記載を【請求項4】の記載に沿って整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「第1成形品と第2成形品とが超音波溶着された複合成形品であって、 前記第1成形品は、ガラス繊維入りLCP(製品名:ベクトラLCP E130i,ポリプラスチックス社製)からなり、表面に、前記第2成形品と溶着する第1溶着面が設けられている樹脂成形品であり、 前記第2成形品は、ジュラコンPOM M450-44(ポリプラスチックス社製)からなり、表面に、前記第1成形品と溶着する第2溶着面が設けられている成形品であり、 前記第1成形品と前記第2成形品とは、前記第1溶着面と前記第2溶着面とが互いに向き合って接し、 前記第1溶着面には、側壁面から無機充填剤が突出する微小溝が形成され、これら複数の微小溝には前記無機充填剤及び前記第2成形品の溶融固化物が含まれる複合成形品。」 イ 対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「第1成形品」及び「第2成形品」は、本件補正発明の「第一の成形体」及び「第二の成形体」に、それぞれ対応する。 また、引用発明における、第2成形品を形成する「ジュラコンPOM M450-44(ポリプラスチックス社製)」は、ポリアセタールであるから、熱可塑性樹脂と認められる。 そして、引用発明における「無機充填剤」は、「ガラス繊維入りLCP」に含まれる「ガラス繊維」に相当し、引用発明の第1成形品表面に設けられた「第1溶着面」には、複数の微小溝が形成され、「無機充填剤」である「ガラス繊維」が突出、すなわち、繊維が露出されている部分という意味で、本件補正発明における「繊維露出部」が形成されているといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明は、 「繊維強化樹脂を含み、前記繊維強化樹脂の繊維が露出する繊維露出部を表面の少なくとも一部に有する第一の成形体と、 第二の成形体と、 前記第一の成形体における前記繊維露出部と前記第二の成形体との接合部と、を有し、 前記第二の成形体が熱可塑性樹脂を含む成形体である接合体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件補正発明の第一の成形体は、「熱硬化性樹脂を含」むものであるが、引用発明の第1成形品は、「ガラス繊維入りLCP(製品名:ベクトラLCP E130i,ポリプラスチックス社製)」、すなわち、熱可塑性樹脂であることから、熱硬化性樹脂を含むものでない点。 <相違点2> 本件補正発明の第一の成形体の表面には、「繊維露出部が、複数の穴を有する」状態で存在する、すなわち、繊維が露出しているのは、複数の窪みであるのに対し、引用発明の第1成形品の第1溶着面で、ガラス繊維が露出しているのは、複数の「微小溝」である点。 なお、上記「(2)進歩性について」の冒頭で述べたように、「前記繊維露出部が、複数の穴を有する」という本件補正発明の特定事項を、「複数の窪みがあり、そこに繊維が露出している状態」を意味するものとしている。 ウ 相違点についての判断 そこで、上記相違点について、以下に検討する。 (ア)相違点1について 引用文献2の段落【0020】には、第1成形品を形成する樹脂に関し、「樹脂は、熱可塑性であってもよいし、熱硬化性であってもよい」と記載されており、周知である熱硬化性樹脂への置換は、当業者が適宜なし得ることといえる。 (イ)相違点2について 引用発明の「微小溝」も、長さ方向と幅方向の大きさの差がある窪みであるといえるから、相違点2は、実質的な相違点とはいえない。 なお、仮に、相違点であるとしても、本件補正発明も引用発明も共に、一方の成形体の窪みに露出した繊維と、他方の成形体の溶融固化物が絡みあって接合強度を向上させている点で作用機序も同一であり、窪みの長さの差異によって当業者が予想し得ない異質な効果を発揮するものともいえないから、当業者が、窪みの長さを溝と呼べる形状とするか、長さ方向と幅方向の大きさに、さほど違いがない形状にするかは、単なる設計的事項であるといえる。 エ 効果について 実質的な相違点である上記相違点1に係る本件補正発明の効果は、用いられる熱硬化性樹脂の種類を問わない点や、技術常識から勘案しても当業者が予想し得ないほど格別顕著なものとはいえない。 オ 審判請求人の主張について 請求人は、上記相違点2に関し、審判請求書において、「引用文献2に記載の発明は、側壁面から無機充填剤が突出する微小溝を必須の構成要件として備えるものである。引用文献2に記載の発明において必須の構成要件である微小溝に替えてその他の発明特定事項を採用することは、微小溝を備えることで成立する引用文献2に記載の発明を毀損する行為である。そのため、引用文献2に記載の発明において、微小溝に替えて複数の穴を採用する動機付けは、引用文献2には存在しない。」と主張するが、上記ウ(イ)で述べたとおり、相違点2は実質的な相違点とは認められないし、仮に相違点であったとしても、当業者にとって単なる設計的事項に過ぎない。 また、請求人は、審判請求書の「(3)(iii-1)請求項1に記載の発明と引用文献との対比及び検討」において、「本願請求項1に記載の発明では、繊維露出部に複数の穴を有するため、第一の成形体に含まれる繊維がこの穴からむき出しになる。これにより、第二の成形体に含まれる熱可塑性樹脂が繊維と絡みやすくなり、接合強度に優れる接合体を得ることが可能になる。」と主張している。 しかしながら、「第二の成形体に含まれる熱可塑性樹脂が繊維と絡」むことが、本願明細書の【図2】の記載から、どのように起こりうるのか不明であるし、たとえ、【図9】の記載のように、窪みに突出した界面上の繊維が熱可塑性樹脂と絡むのであれば、引用発明における微小溝においても、同種の効果が発揮されていると認められる。 さらに、請求人は、上記相違点1について、平成30年4月20日付けの意見書において、「引用文献2でいうところの「異なる材料」が具体的にどのような材料の組み合わせであるか、引用文献2には実施例の記載を除き明示されておりません。・・(略)・・引用文献2の記載から、本願発明のような、第一の成形体が熱可塑性樹脂を含み、第二の成形体が熱硬化性樹脂を含む成形体若しくは金属製の成形体であるか、又は第一の成形体が熱硬化性樹脂を含み、第二の成形体が熱可塑性樹脂を含む成形体である組み合わせを導き出すことは、当業者にとって容易なことではありません。」と主張している。 しかしながら、本件補正発明は、「第一の成形体が熱硬化性樹脂を含み」と特定し、熱硬化性樹脂の材料も量も不明であることから、単に周知の熱硬化性樹脂を選択した際における効果以上のものを認めることができないし、熱硬化性樹脂が選択できることは、引用文献2の段落【0020】に記載されている。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 カ 進歩性についてのまとめ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (3)独立特許要件の検討の小括 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものといえる。 2-3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の請求項1?5に係る発明は、平成30年4月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲のとおりであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に摘記したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、本願の優先日前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用文献2:特開2015-16575号公報 3 引用文献2の記載事項及び引用発明 引用文献2の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2 2-2(1)アのとおりである。 4 対比・判断 上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本件補正発明は、本願発明の発明特定事項に、「前記繊維露出部が、複数の穴を有する」という限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に上記限定を加えた本件補正発明が、上記第2[理由]2 2-2(2)のとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定のない本願発明もまた、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 結語 上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-01-30 |
結審通知日 | 2020-02-04 |
審決日 | 2020-02-19 |
出願番号 | 特願2015-160974(P2015-160974) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今井 拓也 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 大畑 通隆 |
発明の名称 | 接合体、接合体の製造方法、及び車両用構造体 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 加藤 和詳 |