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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1361364
審判番号 不服2018-17116  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-25 
確定日 2020-04-07 
事件の表示 特願2016- 6783「デブリセンサを備えた清浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月14日出願公開、特開2016- 52607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年(平成16年)1月28日を国際出願日とする特願2006-551023号の一部を平成22年6月8日に新たな特許出願とした特願2010-130902号の一部を平成24年3月2日に新たな特許出願とした特願2012-47075号の一部を平成25年11月21日に新たな特許出願とした特願2013-241021号の一部を平成27年4月20日に新たな特許出願とした特願2015-85818号の一部を平成28年1月18日に新たな特許出願としたものであって、同年8月24日に手続補正がなされ、平成29年1月25日付の拒絶理由の通知に対し、同年4月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月26日付の拒絶理由の通知に対し、平成30年3月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年8月27日付で同年3月2日になされた手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対して同年12月25日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「シャーシと、
前記シャーシに搭載された清浄ヘッドと、
前記シャーシに搭載された障害物追尾センサと、
清浄経路に近接して配置された圧電式デブリセンサであって、該圧電式デブリセンサへのデブリの衝突に応答して該衝突を示すデブリ信号を生成する、圧電式デブリセンサと、
前記清浄ヘッド及び前記障害物追尾センサと通信し、前記デブリ信号に応答して高出力清浄モードを実行するよう構成された制御装置と、を備え、
前記高出力清浄モードは、
前記清浄ヘッドへのパワー供給を上げることと、
前記高出力清浄モードであることを示す、ユーザが認識できる信号を発することを含み、
前記制御装置は、前記デブリ信号に応答して前記自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、前記高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する、
自律型清浄装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年4月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「シャーシと、
前記シャーシに搭載された清浄ヘッドと、
前記シャーシに搭載された障害物追尾センサと、
清浄経路に近接して配置された圧電式デブリセンサであって、該圧電式デブリセンサへのデブリの衝突に応答して該衝突を示すデブリ信号を生成する、圧電式デブリセンサと、
前記清浄ヘッド及び前記障害物追尾センサと通信し、前記デブリ信号に応答して高出力清浄モードを実行するよう構成された制御装置と、を備え、
前記高出力清浄モードは、前記清浄ヘッドへのパワー供給を上げることを含む、
自律型清浄装置。」

2 補正の適否
(1)新規事項について
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記1(1)のとおりであり、本件補正により、請求項1には、「制御装置は、前記デブリ信号に応答して前記自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、前記高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」なる記載が追加された。
これに対し、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下同様。)

ア 「【0064】
自律型ロボット清浄装置に採用されると、デブリセンサからのデブリ信号は、行動モードを選択し(スポット清浄モードになるように)、動作状態(速度、パワー、またはその他のような)を変更し、デブリの方向に操縦し(特に、等間隔に離された左および右デブリセンサが使用されて差分信号が生成される)、または他の行動を起こすように使用することができる。
【0065】
本発明に係るデブリセンサはまた、非自律型清浄装置に組み込むことができる。例えば、図7に示すような相対的に従来技術に属する真空掃除機700などの非自律型清浄装置に採用されると、装置の清浄または真空経路内に位置する圧電デブリセンサ704PSにより生成されたデブリ信号706を、制御マイクロプロセッサ708により真空掃除機702の本体に採用して、ユーザーが認識できる信号(表示灯710を点灯するなどして)を生成し、パワーシステム703からのパワーを増大し、または行動のある組合せ(「高パワー」電灯の点灯および同時にパワーを増大するような)を取ることができる。
【0066】
デブリセンササブシステムの動作のアルゴリズムの態様は、図8にまとめてある。そこに示されるように、本発明に係る方法は、デブリとの衝突を、そして、デブリの存在、量または体積、および方向を示す左および右デブリ信号を検出すること(802)、デブリ信号値に基づいて、動作モードまたは移動パターン(「スポットカバレッジ」のような)を選択すること(804)、差分左/右デブリ信号に基づいて移動方向を選択すること(例えば、よりデブリが多い側へ向けて操縦すること)(806)、デブリの存在または他の特徴を示すユーザーが認識できる信号を生成すること(例えば、ユーザーが認識可能なLEDを点灯すること)(808)、または動作状態、例えばパワーを変更または制御すること(810)を含むことができる。
【0067】
本発明の更なる実践は、自律型清浄装置の、床または他の表面上の運動を利用して、清浄装置の移動についての情報と結び付けてデブリ信号を処理してデブリ勾配を計算する(図8における812)。デブリ勾配は、自律型清浄装置がある表面に沿って移動するときの、デブリとの衝突計数における変化を示している。勾配の符号(増大または減少するデブリに関連して正または負)を調べることにより、自律型清浄装置コントローラは装置経路または移動パターンを連続的に調整して、デブリのある場所を最も効果的に清浄するようにできる(812)。」

イ 「【0098】
ここで記述したように採用されると、本発明により、自律型清浄装置は、その動作を制御し、または例えば、デブリセンサにより生成された信号に基づいて、より「汚れた」場所へ装置を向かうように操縦するような、検出されたデブリに応答する複数の動作モード、移動パターン、または行動の中から選択することができる。」

上記記載、及び当初明細書等の他の記載によれば、当初明細書等には、デブリセンサからのデブリ信号は、行動モードをスポット清浄モードになるように選択すること、動作状態を変更すること、またはデブリの方向に操縦することに使用できることが記載(【0064】)され、また、デブリ信号値に基づいて、動作モードまたは移動パターン(「スポットカバレッジ」(当審注:図8では、「スポットモード」と記載されている。)のような)を選択すること(804)、差分左/右デブリ信号に基づいて移動方向を選択すること(例えば、よりデブリが多い側へ向けて操縦すること)、例えばパワーを変更または制御すること(【0066】)も記載されている。また、自立型清浄装置ではなく、非自立型清浄装置にデブリセンサを組み込んだ場合に、圧電デブリセンサにより生成されたデブリ信号706を、制御マイクロプロセッサ708により真空掃除機702の本体に採用して、パワーシステム703からのパワーを増大(【0065】)することも記載されている。
しかしながら、当初明細書等には、本件補正により追加された、デブリ信号に応答して実行される「高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」ことは、記載されていない。
この点について詳述すると、本件補正後の請求項1には、清浄ヘッドへのパワー供給を上げる「高出力清浄モード」について記載されている。これに対し、当初明細書等には、自立型ロボット清浄装置の移動に関する行動モードを複数のモードから選択することは、記載されているが、清浄ヘッドへのパワー供給に関する「高出力清浄モード」については、記載されていない。また、当初明細書等には、デブリ信号に応答して、パワーを増大することは記載されているが、パワーを増大させることには、連続的にパワーを増大させるものも含まれるから、このパワーを増大している期間が「高出力清浄モード」を実施している期間であるとまで記載されているとはいえない。
さらに、本件補正後の請求項1には、上記のように「高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」ことが記載されているが、当初明細書等には、デブリ信号に応答して、パワーを増大することは記載されているものの、このパワーを増大している期間が「高出力清浄モード」を実施している期間であることは前記のように記載されておらず、さらに、この期間にデブリが多い側へ向けて自立型清浄装置を操縦することも、記載されていないから、仮に、パワーを増大している期間が「高出力清浄モード」を実施している期間であるとしても、「高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」ことまで記載されているとはいえない。
また、本件補正後の請求項1には、制御装置が「前記デブリ信号に応答して前記自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、前記高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」と記載されている。この記載によれば、請求項1に記載された制御装置は、デブリ信号に応答して、高出力清浄モードを実行中に自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦するものであるから、制御装置は、デブリ信号を受けて、高出力清浄モードを実行しているか否かにより、自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦するか否かが変わることとなるが、このような事項は、当初明細書等には、記載されていない。
したがって、本件補正により追加された、清浄ヘッドへのパワー供給を上げる「高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」ことは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)独立特許要件について
上記(1)に示したように、本件補正は新規事項を追加するものであるが、仮に、本件補正が新規事項を追加するものでないとすると、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「高出力清浄モード」及び「制御装置」について、上記1に示すとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願昭61-39330号(実開昭62-151851号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a 「電動送風機と、自動走行機構部を内蔵した掃除機本体と、この掃除機本体が走行する床面に対向した吸込口と、前記掃除機本体内の電動送風機のファン前方に設けたダスト箱と、吸込口とダスト箱へつなぐ空気通路と、電動送風機と電源とに直列に接続した吸込力制御部と、前記空気通路に設けたゴミ検出部とを有し、このゴミ検出部の信号に応じて吸込力制御部による電動送風機の入力を制御してなる電気掃除機。」(2,実用新案登録請求の範囲)

b 「本考案は、自動走行式の掃除機で、マイクロコンピューター等を内蔵し、プログラムに従がって無人で掃除を行なう電気掃除機に関するものである。」(明細書1ページ16行ないし同ページ19行)

c 「しかしながら、従来の電気掃除機では、被掃除面のゴミの量にかかわらず、通常一回だけ同じ所を走行し、吸い込むのが普通であった。このため、ゴミの少ない所はそれできれいに掃除が行なえるが、多い所は不十分なため、ゴミ残りが発生するという問題があった。また、これを防止するため吸い込み力を大きめに設定したり、走行スピードを遅くしておくと、ゴミの少ない所で不必要な吸い込み電力をロスするという問題があった。
本考案は上記問題点を解消した電気掃除機を提供することを目的とする。」(明細書2ページ11行ないし3ページ1行)

d 「第1図は本考案の一実施例における電気掃除機の斜視図、第2図は側断面図で、掃除機本体1には、吸い込み用のモータ2、ファン3が内蔵され、ファン3の前方にはダスト箱4が設けられている。掃除機本体1の下部右側には走行用の車輪5が設けられ、モータ6にて駆動される。左側には同じく車輪7とモータ8が設置され、後方には従動輪9と10が設けられている。本体1の前方、床面上部に吸込ロ11が設けられ、吸込口11とダスト箱4はパイプ12によって結ばれており、パイプ12とダスト箱4の接続部にゴミ検出部13が設けられている。本体1の中央下部には電源用のバッテリー14とマイクロコンピューターを内蔵した制御回路15が設けられている。
第3図は回路ブロック図で、バッテリー14に走行用モータ6,8と、吸い込み用モータ2、制御回路15が接続され、制御回路15内はモータ6と直列に駆動制御部16、モータ8と直列に駆動制御部17が、モータ2と直列に吸込力制御部18が、駆動制御部16と17にはマイクロコンピューター(図示せず)を内蔵した走行制御部19が接続され、ゴミ検出部13は吸込力制御部18に接続されている。ゴミ検出部13はゴミを検出するために赤外発光ダイオード20に対向してフォトダイオード21が設けてある。」(明細書4ページ1行ないし5ページ5行)

e 「第4図はゴミ検出部13の拡大断面図であり、中央の空気通路22の上方に赤外発光ダイオード20が一列に並べてあり、これに対向して空気通路22の下方にフォトダイオード21が設けてあり、このフォトダイオード21の信号は吸込力制御部18へ伝達される。
上記構成において、掃除機を動かして掃除を行なうと、バッテリー14によりモータ2,6,8と制御回路15は電流が供給されて動作し、マイクロコンピューター内蔵の走行制御部19の制御で駆動制御部16,17がそれぞれモータ6,8の制御を行ない、モータ6,8は車輪5,7を回転させるため、本体1が移動する。従動輪9,10は本体1の移動により自然に回転するだけで、移動の方向はモータ6,8よって駆動される車輪5,7の回転数の差で右へ曲ったり左へ曲ったりする。マイクロコンピューターにはあらかじめ走行パターンがプログラムされており、その指示にしたがってモータ6,8が制御される。この走行制御は他に床面に反射テープを貼り付け、そのテープ上をセンサで検知しながらトレースしてもよく、また、マーカーにより電波信号等を出し、その信号を目印に走行させてもよい。」(明細書5ページ6行ないし6ページ8行)

f 「また、吸い込み用モータ2により、ファン3が回転して吸込口11よりゴミが吸い込まれ、パイプ12内を通り、ゴミ検出部13の空気通路22内を通ってゴミはダスト箱4内へ吸い込まれる。この時、ゴミ検出部13は、ゴミが空気通路22内を通ると、赤外発光ダイオード20からの赤外光がフォトダイオード21へ達するのを妨たげられて(当審注:「妨たげられて」は「妨げられて」の誤記。)フォトダイオード21の出力信号が低下する。このため、吸込力制御部18は吸い込み用モータ2の入力を増大させるべく設定してある。
ゴミの少ない所を本体1が移動しているときは、空気通路22内を通るゴミの量は少なく、吸い込み用モータ2の入力は小さくおさえられ、ゴミの多い所を移動しているときは、逆にモータ2の入力が増大してより強力な吸い込みを行なう。このため、ゴミの少ない所ではパワーをおさえて、バッテリー(エネルギー)の消耗を防ぎ、ゴミの多い所では吸い込み力を増大させてゴミの吸い込み不良を少なくすることができる。」(明細書6ページ9行ないし7ページ7行)

g 上記bより、引用文献1には、無人で掃除を行なう電気掃除機について記載されているといえ、上記d及びfより、掃除機本体1には、吸込口11とファン3が設けられているといえるから、引用文献1に記載された電気掃除機は、掃除機本体1と、掃除機本体1に設けられた吸込口11とファン3を備えている。

h 上記dより、吸込口11と掃除機本体1に設けられたダスト箱4を結ぶパイプ12とダスト箱4との接続部にゴミ検出部13が設けられている。上記eより、このゴミ検出部13は、中央の空気通路22の上方に赤外発光ダイオード20が一列に並べてあり、これに対向して空気通路22の下方にフォトダイオード21が設けてあることがわかる。引用文献1の図4の記載より、赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21との間の空気通路22を通るゴミが検出されることがわかり、また赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21とが設けられるゴミ検出部13は、パイプ12とダスト箱4との接続部に設けられるものであるから、ゴミが検出される中央の空気通路22は、パイプ12とダスト箱4との接続部の空気通路である。また、上記fより、ゴミが空気通路22内を通ると、赤外発光ダイオード20からの赤外光がフォトダイオード21へ達するのを妨げられてフォトダイオード21の出力信号が低下することがわかる。これらのことから、引用文献1には、吸込口11と掃除機本体1に設けられたダスト箱4を結ぶパイプ12のダスト箱4との接続部に設けられた赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21であって、前記接続部の空気通路をゴミが通ると、フォトダイオード21の出力信号が低下する、赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21について記載されている。

i 上記dより、制御回路15内は、吸い込み用モータ2と直列に吸込力制御部18が接続されているから、引用文献1の第3図とあわせてみると、制御回路15は、吸い込み用モータ2と接続されているといえる。上記fより、この吸い込み用モータ2は、ファン3を回転しているといえ、また、同じく上記fより、吸込力制御部18は、フォトダイオード21の出力信号が低下すると、強力な吸い込みを行なうことがわかり、吸込力制御部18は、制御回路15内のものであるから、引用文献1には、ファン3を回転する吸い込み用モータ2と接続され、フォトダイオード21の出力信号が低下すると、強力な吸い込みを行なうよう設定された制御回路15が記載されている。

j 上記fより、吸い込み用モータ2の入力を増大させると、強力な吸い込みを行なうことがわかるから、強力な吸い込みを行なうときは、吸い込み用モータ2への入力を増大させることを含み、吸い込み用モータ2への入力を増大させると、これにより回転するファン3の回転も増大するといえる。

k 上記d及び引用文献1の第3図の記載より、制御回路15内には、マイクロコンピューターを内蔵した走行制御部19があり、上記eの記載より、このマイクロコンピューターにはあらかじめ走行パターンがプログラムされており、その指示にしたがってモータ6,8が制御され、電気掃除機が移動することがわかるから、引用文献1には、制御回路15は、あらかじめプログラムされた走行パターンにしたがって電気掃除機を移動させることが記載されている。

l 上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「掃除機本体1と、
前記掃除機本体1に設けられた吸込口11とファン3と、
吸込口11と掃除機本体1に設けられたダスト箱4を結ぶパイプ12のダスト箱4との接続部に設けられた赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21であって、前記接続部の空気通路をゴミが通ると、フォトダイオード21の出力信号が低下する、赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21と、
前記ファン3を回転する吸い込み用モータ2と接続され、前記フォトダイオード21の出力信号が低下すると、強力な吸い込みを行なうよう設定された制御回路15と、を備え、
前記強力な吸い込みを行うときは、
前記ファン3の回転を増大させることを含み、
前記制御回路15は、あらかじめプログラムされた走行パターンにしたがって電気掃除機を移動させる
無人で掃除を行なう電気掃除機。」

(イ)引用文献2
同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平6-38912号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

a 「【請求項1】塵埃検知部に圧電素子を用いた塵埃検知装置。」

b 「【請求項4】圧電素子からなる塵埃検知装置を備え、検知量に応じた塵埃量表示、吸引力制御、床ブラシ駆動制御のいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはすべてを行なうことを特徴とする掃除機。」

c 「【0002】
【従来の技術】近年、塵埃の量に応じて吸引力を制御したり,室内の汚れ状態を判定表示するような高付加価値の電気掃除機の要求が高まりつつある。そのための塵埃の量の検知には発光ダーオード(当審注:「発光ダーオード」は、「発光ダイオード」の誤記。)とフォトトランジスタの組み合せによるフォトカプラ等が用いられ、光学的に光軸を横切る塵埃の量を検知する方法が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記、光学式の場合、初期の測定精度は高いが、長期の使用中にさまざまな塵埃を吸引することにより、発光部、受光部ともにその窓部に塵埃が付着し光強度を著しく損ねる結果、塵埃検知の精度が使用とともに低下するといった欠点があった。塵埃の付着要因としては、摩擦による塵埃の帯電効果およびフォトカプラ窓材の帯電効果による塵埃の付着、吸引時における液を含んだ塵埃による窓の汚れが考えられ、その対策として、窓部を一定間隔でクリニングする方法や帯電防止剤で窓部をコーティングする方法等が採られているが、不十分であり、塵埃検知精度の低下という課題があった。
【0004】本発明は上記課題を解決するもので、低コストで信頼性が高い塵埃検知装置およびそれを用いた掃除機を提供するものである。」

d 「【0010】(実施例1)図2を用いてより詳しく説明する。圧電体素子からなる塵埃センサ4をノズル2に埋設し、フレキシブルな可撓性に富んだ保護用板6でカバーする。5はセンサからの信号線である。今、電気掃除機をON状態にすることによりノズル内に吸引気流が流れ、気流中に塵埃が含まれていると、屈曲部の保護用板6に衝突する。このとき、前記保護用板6が変形し、かつ、塵埃センサ4も局部的に変形する結果、出力信号が得られる。すなわち、塵埃量と出力信号の強度および発生頻度との間には相関関係が成立し、センサの信号処理により、塵埃量を推論できる。」

e 「【0012】以上説明のように圧電体を用いた塵埃センサからの出力信号の処理により塵埃検知装置が可能であった。
【0013】なお、塵埃センサの設置位置は気流が一部分でも壁面に当る位置であれば塵埃検知装置として機能することが判明した。」

上記記載から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。

「掃除機に用いられ、塵埃の量の検知に光学的に光軸を横切る塵埃の量を検知する光学式の場合、発光部、受光部ともにその窓部に塵埃が付着し、塵埃検知の精度が使用とともに低下するという欠点を解決するために、ノズル内に吸引気流が流れ、気流が当る位置に設置された圧電体を用いた塵埃センサ4であって、塵埃センサ4へ塵埃が衝突したとき、該衝突の結果、出力信号が得られる圧電体を用いた塵埃センサ4。」

(ウ) 引用文献3
同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-60782号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

a 「【請求項1】 ごみを吸い取る清掃手段と、本体を移動させる走行手段と、該走行手段の走行方向を制御する操舵手段を備えた掃除ロボットにおいて、前記清掃手段に設けられたごみ検知手段により掃除されたごみの量を検出し、走行中に第1の設定ごみ量以上を検出した後、第2の設定ごみ量以下を検出すると、進行方向に対して180度方向転換を行うようにしたことを特徴とする掃除ロボット。」

b 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自律走行する掃除ロボットに関するものである。」

c 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の掃除ロボットは、プログラムされた経路に従って掃除を行いながら自動運転するものであり、ごみの量に応じて単に移動速度を制御するだけでごみの吸い残しを減らすようにしている。従って、基本動作は予めプログラムされた経路に従って自動運転するもので、ごみの多い場所を重点的に掃除することはできないという問題があった。
【0005】本発明の第1の目的(請求項1、2、3、4、5)は上記従来の課題を解決するために、ごみの多い場所を優先的に掃除する掃除ロボットの走行制御方式を提示するものである。」

d 「【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面とともに本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態を示す掃除ロボットの外観透視図、図2は同じく掃除ロボットの要部の構成を示すブロック図である。これらの図において、1は移動する掃除ロボット本体であり、この掃除ロボット本体1には、移動のための左右の駆動車輪51、52を含む走行兼操舵装置5と補助輪6が設けられている。
【0016】前記掃除ロボット本体1内には、各部に電力を供給するバッテリー4と、障害物との距離を測定する距離センサ2と、前記駆動車輪51、52のそれぞれに設けられた走行距離センサ(図示せず)と、本体1の動作を制御する制御部3と、掃除ロボット本体1の周囲に配されたバンパ8と、回転ブラシ9a、吸い込み口9b及びクリーナ部9cから構成される清掃手段9と、吸い込み口を通過するごみの量を検知するフォトインタラプタ等からなるごみ検知手段10と、清掃区域と前記掃除ロボット本体1が移動した軌跡を記憶する軌跡記憶手段12と、使用者に掃除済区域等の動作状況を知らせる表示部7を設けている。
【0017】上記構成において、まず通常の掃除ロボット本体1の動作を説明する。制御部3には、予め掃除エリアが記憶されている。掃除ロボット本体1の周囲に設置した距離センサ2により壁面等の障害物の有無及び障害物との距離を測定し、この測定結果に基づき、駆動車輪51、52の速度差を制御して、掃除ロボット本体1の移動方向の制御、つまり操舵制御を行い、掃除部9で掃除を行いながら自律走行する。そして、前記制御部3に予め記憶されたエリアを掃除する。この時の軌跡を掃除済区域として表示部7に表示する。」

e 「【0018】<実施形態1>図3は本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。ステップS1で所定の走行パターンに従って掃除走行を開始した掃除ロボット本体1は、ステップS2において、ごみ検知手段10で検知したごみ量から、ごみ量が多い状態を示す第1の設定量以上であるか否かを制御部3で判断して、第1の設定量未満の場合、そのまま設定された走行パターンに従って掃除走行を継続する。第1の設定量以上の場合は、ステップS3でごみ量が少ない状態を示す第2の設定量以下のごみ量を検出するまで直進掃除走行(ステップS4)を行う。
【0019】ステップS3において、第2の設定量以下のごみ量を検出すると、ステップS5で所定の間隔(例えば吸い込み口9bの幅等掃除ロボット1が一度に行える掃除区域幅)をあけて180°方向転換を行い直進掃除走行を継続し、ステップS6で再度ごみ量が第1の設定量以上であるか否かを制御部3で判断し、再度ごみ量が第1の設定量以上になると、ステップS3に戻って第2の設定量以下のごみ量を検出するまで直進掃除走(ステップS4)を行い、前記ステップS3からS6までの方向転換動作を繰り返し行う。
【0020】尚、方向転換後、ステップS6で再度ごみ量が第1の設定量以上であるか否かを判断する時に、ステップS8で方向転換後所定距離走行したか又は所定時間が経過したかどうかを判断しており、所定距離走行又は所定時間経過しても再度ごみ量が第1の設定量以上にならない場合は、第1の設定量を検出してから最初の方向転換した地点に戻り(ステップS9)、通常の走行パターンに従って掃除走行を継続する。」

f「【0021】図4は前記第1の実施形態で掃除ロボット本体1を動作させた時の掃除ロボット1の移動経路を示す説明図である。始め、掃除ロボット1は通常の走行パターンに従って掃除区域を折り返しながら掃除走行を行う。30はごみの多い区域を示しており、このごみの多い区域30を掃除ロボット1が掃除しながら通過すると、ごみ検知手段10は第1の設定量以上のごみを検出する。そして、ごみの少ない区域に達すると第2の設定量以下を検出するので、180°方向転換を行う(A1点)。従って、図4に示すようにごみの多い区域30をA1,A2,A3,A4点で折り返しながら掃除走行することができる。
【0022】ごみの多い区域30を掃除ロボット1が完全に通過した場合は、A4点で方向転換後、所定距離又は所定時間経過しても、ごみ検知手段10は再度第1の設定量以上のごみを検出しないので、A5点から最初に方向転換した場所(A1点)に戻り、通常の走行パターンに従って掃除走行を継続(点線20)する。この実施形態では、ごみの多い区域30を再度掃除することになり、念入りに掃除を行うことになる。」

g 上記記載dから、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項1」という。)が記載されていると認められる。

「壁面等の障害物の有無及び障害物との距離を測定する距離センサを掃除ロボット本体1の周囲に設置し、制御部3が移動制御する掃除ロボット。」

また、上記記載aないしfから、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項2」という。)が記載されていると認められる。

「吸い込み口を通過するごみの量を検知するフォトインタラプタ等からなるごみ検知手段10と、障害物の有無及び障害物との距離を測定する距離センサ2の測定結果に基づき掃除ロボット本体1の移動方向の制御を行う制御部3を備え、
制御部3は、ごみ検知手段10で検知したごみ量から、ごみ量が多い状態を示す第1の設定量以上であるか否かを判断し、第1の設定量以上の場合は、ごみ量が少ない状態を示す第2の設定量以下のごみ量を検出するまで直進掃除走行を掃除ロボットに行わせ、第2の設定量以下のごみ量を検出すると、所定の間隔をあけて180°方向転換を掃除ロボットに行わせ直進掃除走行を継続させ、再度ごみ量が第1の設定量以上であるか否かを判断し、再度ごみ量が第1の設定量以上になると、第2の設定量以下のごみ量を検出するまで直進掃除走を掃除ロボット本体1に行なわせる動作を繰り返し行わせる、
自律走行する掃除ロボット。」

ウ 引用発明との対比と一致点、相違点
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「掃除機本体1」、「設けられた」は、それぞれ、本件補正発明の「シャーシ」、「搭載された」に相当する。
本件補正発明の「清浄ヘッド」に関して、本願の明細書には、「自己調整清浄ヘッドシステム145は、二段階ブラシアセンブリと真空アセンブリを備え、それぞれは、電動モーターにより独立してパワーが供給される」(【0043】)と記載されていることから、この「清浄ヘッド」は、電動モーター118によりパワーが供給される真空アセンブリを備え、清浄作用を有しているものを含むと解されるから、引用発明の「吸込口11とファン3」は、本件補正発明の「清浄ヘッド」に相当する。
本件補正発明の「清浄経路」に関して、本願の明細書に「圧電デブリセンサ素子125PSは、ロボット装置100の清浄経路に位置することができ、例えば、清浄ヘッドの屋根に搭載され、それにより、ブラシ素子により掃き集められ、および/または真空により引き寄せられた粒子127が衝突したときは、デブリセンサ素子125PSは、デブリが衝突したこと、そしてこのようにして、自律型清浄装置が動作している領域にデブリが存在することを示す電気パルスを生成する。」(【0044】)と記載されていることから、本願の図3の記載とあわせてみると、本件補正発明の「清掃経路」は、自立型清浄装置に引き寄せられたデブリが通過する経路であると解されるから、引用発明の「吸込口11と掃除機本体1に設けられたダスト箱4を結ぶパイプ12のダスト箱4との接続部に」は、本件補正発明の「清浄経路に近接して」に相当する。引用発明の「設けられた」は、本件補正発明の「配置された」に相当する。引用発明の「赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21」は、本件補正発明の「圧電式デブリセンサ」と「塵埃センサ」である限りで一致し、引用発明の「前記接続部の空気通路をゴミが通ると、フォトダイオード21の出力信号が低下する」ことは、本件補正発明の「該圧電式デブリセンサへのデブリの衝突に応答して該衝突を示すデブリ信号を生成する」ことと、「塵埃が検出されると検出信号を出力する」ことという限りで一致する。
引用発明の「フォトダイオード21の出力信号が低下する」ことは、本件補正発明の「デブリ信号に応答」することと「(塵埃が検出された)検出信号が出力される」ことという限りで一致する。また、引用発明の「強力な吸い込みを行なう」は、本件補正発明の「高出力清浄モードを実行する」に相当し、前者の「設定された」、「制御回路15」は、それぞれ後者の「構成された」、「制御装置」に相当する。
引用発明の「強力な吸い込みを行なうとき」は、本件補正発明の「高出力清浄モード」に相当し、引用発明の「ファン3の回転を増大させることを含み」は、本件補正発明の「清浄ヘッドへのパワー供給を上げること」に相当する。
引用発明の「あらかじめプログラムされた走行パターンにしたがって電気掃除機を移動させる」ことは、本件補正発明の「前記デブリ信号に応答して前記自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、前記高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」ことと、「清浄装置を自立的に移動制御する」ことという限りで一致し、引用発明の「無人で掃除を行なう電気掃除機」は、本件補正発明の「自立型清浄装置」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、次の[一致点]で一致し、[相違点1]ないし[相違点5]の点で相違する。

[一致点]
「シャーシと、
前記シャーシに搭載された清浄ヘッドと、
清浄経路に近接して配置された塵埃センサであって、塵埃が検出されると検出信号を出力する、塵埃センサと、
前記検出信号が出力されると、高出力清浄モードを実行するよう構成された制御装置と、を備え、
前記高出力清浄モードは、
前記清浄ヘッドへのパワー供給を上げることを含み、
前記制御装置は、清浄装置を自立的に移動制御する
自立型清浄装置。」

[相違点1]
本件補正発明は、障害物追尾センサをシャーシに搭載し、この障害物追尾センサが制御装置と通信するのに対し、引用発明は、このような障害物追尾センサを搭載していない点。

[相違点2]
塵埃センサに関して、本件補正発明は、圧電式デブリセンサであって、該圧電式デブリセンサへのデブリの衝突に応答して該衝突を示すデブリ信号を生成するのに対して、引用発明は、赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21であって、前記接続部の空気通路をゴミが通ると、フォトダイオード21の出力信号が低下する点。

[相違点3]
本件補正発明は、制御装置が「清浄ヘッド」「と通信」するのに対し、引用発明は、制御回路15がファン3を回転する吸い込み用モータ2と接続されている点。

[相違点4]
本件補正発明は、自立型清浄装置が高出力清浄モードであることを示す、ユーザが認識できる信号を発するのに対し、引用発明は、強力な吸い込みを行なうことを示す、ユーザが認識できる信号を発するものとされていない点。

[相違点5]
清浄装置を自立的に移動制御する点に関して、本件補正発明では、前記デブリ信号に応答して前記自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、前記高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦するのに対して、引用発明では、あらかじめプログラムされた走行パターンにしたがって電気掃除機を移動させる点。

エ 判断
以下、各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
本願の出願前において、自立的に移動する清浄装置に、障害物の位置等を検知するセンサを設け、制御装置が清浄装置を移動制御することは、周知技術(例えば、上記引用文献3記載事項1参照。)である。そして、引用発明も無人で掃除を行なう電気掃除機、すなわち自律的に移動する清浄装置であって、このような無人で掃除を行うためには、周囲の障害物の位置等を検知する必要があることは当業者に自明な事項であるから、引用発明に上記周知技術を適用し、本件補正発明の上記相違点1に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
引用発明の塵埃センサである赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21は、赤外発光ダイオード20で発した光をフォトダイオード21で検知する量を測定することにより、塵埃の有無や量を検出しているものであるから、発光ダイオード20やフォトダイオード21に塵埃が付着すると正しい塵埃の検出ができなくなるという課題を内在しているものであり、このことは、引用発明に接した当業者にとって自明な事項である。
そして、上記引用文献2には、このような課題を解決するために、塵埃センサへ塵埃が衝突したとき、該衝突の結果、出力信号が得られる圧電体を用いた塵埃センサを掃除機に用いることが記載されており、引用発明の赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21に換えて引用文献2に記載された圧電体を用いた塵埃センサを用い、本件補正発明の上記相違点2に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3について
引用発明のファン3は、吸い込み用モータ2により回転するものであるから、制御回路15は、吸い込み用モータ2を介してファン3と接続されているといえる。そして、このように接続された制御回路15によりファン3が制御されるものであるから、上記相違点は実質的なものではない。また、仮に実質的なものであるとしても、引用発明は、制御回路15によりファン3の制御を行うものであるから、この制御のために制御回路とファン3との間で通信を行うようにし、本件補正発明の上記相違点3に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(エ)相違点4について
本願の出願前において、掃除機の動作パワーの高低を表示することは周知技術であり(周知例として、平成30年8月27日付の補正の却下の決定の理由で示した特開平5-161579号公報(【0013】ないし【0017】参照)がある。)、引用発明の無人で掃除を行なう電気掃除機においても、その使用者が動作状態を確認できるようにするという事情があることは、当業者であれば想定し得ることであるから、上記周知技術を引用発明に適用し、本件補正発明の上記相違点4に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(オ)相違点5について
引用文献1には、上記イ(ア)cに示すように「従来の電気掃除機では、被掃除面のゴミの量にかかわらず、通常一回だけ同じ所を走行し、吸い込むのが普通であった。このため、ゴミの少ない所はそれできれいに掃除が行なえるが、多い所は不十分なため、ゴミ残りが発生するという問題があった」ことが示されている。
また、引用文献3には、上記引用文献3記載事項2が記載されていると認められるところ、この引用文献3記載事項2の「ごみ検知手段10で検知したごみ量から、ごみ量が多い状態を示す第1の設定量以上であるか否かを判断し、第1の設定量以上の場合は、ごみ量が少ない状態を示す第2の設定量以下のごみ量を検出するまで直進掃除走行を掃除ロボットに行わせ、第2の設定量以下のごみ量を検出すると、所定の間隔をあけて180°方向転換を掃除ロボットに行わせ直進掃除走行を継続させ、再度ごみ量が第1の設定量以上であるか否かを判断し、再度ごみ量が第1の設定量以上になると、第2の設定量以下のごみ量を検出するまで直進掃除走を掃除ロボット本体1に行なわせる動作を繰り返し行わせる」ことは、結局、検出されるごみ量が第1の設定量以上となった地点から第2の設定量以下となる地点までの範囲を掃除することとなり、引用文献3の図4に示される範囲を掃除することとなるから、これは本件補正発明の「デブリ信号に応答してスポット清浄モードに移行させ」て、「自立型清浄装置をデブリが存在にする領域に向けて操縦する」ことに相当する。そして、このような掃除を行うのは、ごみ検知手段10で検知したごみ量がごみ量が多い状態を示す第1の設定量以上である場合であり、これは、本件補正発明においてデブリ信号に応答して実行される「高出力清浄モードを実行中」である場合であるから、引用文献3には、デブリ信号に応答して自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦することが記載されているといえる。
そして、上記のように、引用文献1には、無人で掃除を行なう電気掃除機が、一回だけ同じ所を走行し、ゴミを吸い込むのでは、ゴミ残りが発生するという課題が示されていることから、この課題を解決するために、上記引用文献3記載事項2を引用発明に適用することは、当業者にとって容易になし得たことであり、引用発明は、ゴミを検出したときに、強力な吸い込みを行うものであるから、引用発明に引用文献3記載事項2を適用した結果、ゴミを検出した信号に応答して、強力な吸い込みを行っているときに自律型清浄装置をゴミが存在する領域に向けて操縦することとなるから、本件補正発明の上記相違点5に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(オ)また、相違点1ないし5を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2ないし3に記載された事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)本件補正についてのむすび
以上のことから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。また、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成29年4月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2・1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:実願昭61-39330号(実開昭62-151851号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開平6-38912号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2・2(2)イ(ア)及び(イ)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2・2(2)で検討した本件補正発明から、「前記高出力清浄モードであることを示す、ユーザが認識できる信号を発することを含み、前記制御装置は、前記デブリ信号に応答して前記自律型清浄装置をスポット清浄モードに移行させ、前記高出力清浄モードを実行中に該自律型清浄装置をデブリが存在する領域に向けて操縦する」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の[一致点]で一致し、[相違点1]に対応する[相違点6]、[相違点2]に対応する[相違点7]及び[相違点3]に対応する[相違点8]で相違する。

[一致点]
「シャーシと、
前記シャーシに搭載された清浄ヘッドと、
清浄経路に近接して配置された塵埃センサであって、塵埃が検出されると検出信号を出力する、塵埃センサと、
前記検出信号が出力されると、高出力清浄モードを実行するよう構成された制御装置と、を備え、
前記高出力清浄モードは、
前記清浄ヘッドへのパワー供給を上げることを含む、
自立型清浄装置。」

[相違点6]
本願発明は、障害物追尾センサをシャーシに搭載し、この障害物追尾センサが制御装置と通信するのに対し、引用発明は、このような障害物追尾センサを搭載していない点。

[相違点7]
塵埃センサに関して、本願発明は、圧電式デブリセンサであって、該圧電式デブリセンサへのデブリの衝突に応答して該衝突を示すデブリ信号を生成するのに対して、引用発明は、赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21であって、前記接続部の空気通路をゴミが通ると、フォトダイオード21の出力信号が低下する点。

[相違点8]
清浄ヘッドを制御する制御装置に関して、本件補正発明は、制御装置が「清浄ヘッド」「と通信」するのに対し、引用発明は、制御回路15がファン3を回転する吸い込み用モータ2と接続されている点。

そして、上記[相違点6]について検討すると、上記第2・2(2)エ(ア)の[相違点1]についての判断と同様の理由により、引用発明に周知技術を適用し、本願発明の上記相違点6に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことであり、上記[相違点7]について検討すると、上記第2・2(2)エ(イ)の[相違点2]についての判断と同様の理由により、引用発明の赤外発光ダイオード20とフォトダイオード21に換えて引用文献2に記載された圧電体を用いた塵埃センサを用い、本願発明の上記相違点7に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。さらに、上記[相違点8]について検討すると、上記第2・2(2)エ(ウ)の[相違点3]についての判断と同様の理由により、[相違点8]は、実質的な相違点でないか、引用発明に基づいて本願発明の上記相違点8に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。
また、相違点6ないし8を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、原査定の理由のとおり、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-01 
結審通知日 2019-11-11 
審決日 2019-11-22 
出願番号 特願2016-6783(P2016-6783)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 柿崎 拓
長馬 望
発明の名称 デブリセンサを備えた清浄装置  
代理人 松岡 修平  
代理人 松岡 修平  
代理人 松岡 修平  
代理人 松岡 修平  
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