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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1361376
審判番号 不服2018-2048  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-14 
確定日 2020-04-16 
事件の表示 特願2016-141163「画像符号化データ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開、特開2017- 5723〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)6月11日(優先権主張 平成25年6月12日、平成25年8月26日)を国際出願日とする出願である特願2015-522544号の一部を、平成28年7月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 8月21日付け:拒絶理由通知
同年10月25日 :意見書の提出、手続補正
同年12月 7日付け:拒絶査定
平成30年 2月14日 :拒絶査定不服審判請求
令和 1年 5月24日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 1年 7月25日 :意見書の提出、手続補正
令和 1年11月19日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 2年 1月23日 :意見書の提出、手続補正

第2 当審拒絶理由の概要
令和1年11月19日付けの当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

(発明該当性)この出願の請求項1に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

記: 請求項1の「画像符号化データ」は、「画像符号化データ」が有する「データ構造」が、「画像復号装置」と協働して情報処理を実現しているものとはいえない。
よって、請求項1の「画像符号化データ」は、「データ構造」に基づく情報処理に技術的特徴は認められず、また、「復号する処理に用いられる」という用途を提示しているのみであるから、「情報の単なる提示」を行うものに該当する。
したがって、請求項1に係る「画像符号化データ」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」(「自然法則を利用した技術的思想の創作」)に該当しない。

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年1月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)?(C4)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成C4と称する。また、下線は令和2年1月23日の手続補正により補正された箇所を示す。

(本願発明)
(A)各フレームが第一のフィールドと第二のフィールドの二つのフィールドを有し、前記各フレームの各フィールドのピクチャごとに符号化された複数のデータから構成されるとともに、当該複数のデータがそれぞれ、前記ピクチャを分割した最大ブロック単位の複数の符号化データを含む画像符号化データであって、
(B)前記画像符号化データは、
(B1)複数の前記各フレームにおいて任意の位置の特定のフレームの第一のフィールドである第一のピクチャであって、イントラピクチャかつ非IRAP(non-Intra Random Access Point)ピクチャである前記第一のピクチャが符号化された第一のデータと、
(B2)前記第一のフィールドより符号化順が後となる前記特定のフレームの第二のフィールドであって前記第一のデータの前記第一のピクチャを用いてインター予測される第二のピクチャが符号化された第二のデータと、
(B3)前記特定のフレームより符号化順が後で表示順が前となるとともに、前記第一のデータの前記第一のピクチャまたは前記第二のデータの前記第二のピクチャを用いてインター予測される第三のピクチャが符号化された第三のデータと、
を有し、
(B4)前記第一のデータ、前記第二のデータ、及び、前記第三のデータは、データごとに、符号化されたピクチャに関するヘッダ情報、当該ピクチャを分割した前記最大ブロック単位の複数の符号化データ、前記最大ブロックを階層的に分割したブロックの分割状況を示す情報、及び、ブロック単位の符号化モードを含み、
(B5)前記最大ブロック単位の符号化データは、複数の前記ブロックの差分画像の圧縮データを有し、
(B6)前記第一のデータのピクチャに関するヘッダ情報は、非IRAPピクチャであること、かつ、前記第一のデータの前記第一のピクチャがビットストリームの途中からの復号を開始可能なピクチャであることを示す情報を含み、
(B7)前記第一のデータの前記符号化モードは、イントラ予測モードを示し、
(C)前記画像符号化データは、
前記画像符号化データを復号する画像復号装置により、
(C1)前記ピクチャに関するヘッダ情報を復号し、
前記ピクチャに関するヘッダ情報に基づいて、前記第一のピクチャが符号化された前記第一のデータを特定し、
(C2)前記第一のデータを特定するまでに復号したヘッダ情報を有するデータに含まれる最大ブロック単位の符号化データに対して復号処理を行わず、
(C3)前記第一のデータを特定すると、
(C31)前記第一のデータを用いて最大ブロック単位の符号化データに対する復号処理を開始し、圧縮データから差分画像を生成するとともに、前記イントラ予測モードを示す符号化モードに基づき前記第一のピクチャ内のブロックを参照するイントラ予測をすることにより予測画像を生成し、生成した前記差分画像と前記予測画像とに基づいて前記第一のピクチャを復号し、
(C32)前記第二のデータを用いて、圧縮データから差分画像を生成するとともに、前記第一のピクチャ内のブロックを参照するインター予測をすることにより予測画像を生成し、生成した前記差分画像と前記予測画像とに基づいて前記第二のピクチャを復号し、
(C33)前記第三のデータを用いて、圧縮データから差分画像を生成するとともに、前記第一のピクチャ内のブロックまたは前記第二のピクチャ内のブロックを参照するインター予測をすることにより予測画像を生成し、生成した前記差分画像と前記予測画像とに基づいて前記第三のピクチャを復号し、
(C4)前記特定のフレームより表示順が前である前記第三のピクチャの出力後に、前記特定フレームの前記第一のピクチャまたは前記第二のピクチャを出力する処理、
(A)に用いられることを特徴とする画像符号化データ。

第4 判断
1.本願発明の「画像符号化データ」の発明特定事項について
(1)「画像符号化データ」の構成
本願発明の「画像符号化データ」は、「各フレームが第一のフィールドと第二のフィールドの二つのフィールドを有し、前記各フレームの各フィールドのピクチャごとに符号化された複数のデータから構成される」ものであり、「当該複数のデータがそれぞれ、前記ピクチャを分割した最大ブロック単位の複数の符号化データを含む」(構成A)ものである。

そして、当該「画像符号化データ」は、構成Bに示されるように、「複数の前記各フレームにおいて任意の位置の特定のフレームの第一のフィールドである第一のピクチャであって、イントラピクチャかつ非IRAPピクチャである第一のピクチャが符号化された第一のデータ」(構成B1)、「前記第一のフィールドより符号化順が後となる前記特定のフレームの第二のフィールドであって前記第一のデータの前記第一のピクチャを用いてインター予測される第二のピクチャが符号化された第二のデータ」(構成B2)、「前記特定のフレームより符号化順が後で表示順が前となるとともに、前記第一のデータの前記第一のピクチャまたは前記第二のデータの前記第二のピクチャを用いてインター予測される第三のピクチャが符号化された第三のデータ」(構成B3)を有しており、「前記第一のデータ、前記第二のデータ、及び、前記第三のデータ」は、「データごとに、符号化されたピクチャに関するヘッダ情報、当該ピクチャを分割した前記最大ブロック単位の複数の符号化データ、前記最大ブロックを階層的に分割したブロックの分割状況を示す情報、及び、ブロック単位の符号化モード」を含んで(構成B4)いる。
また、「前記最大ブロック単位の符号化データ」は、「複数の前記ブロックの差分画像の圧縮データ」を有し(構成B5)、「前記第一のデータのピクチャに関するヘッダ情報」は、「非IRAPピクチャであること、かつ、前記第一のデータの前記第一のピクチャがビットストリームの途中からの復号を開始可能なピクチャであることを示す情報」を含み(構成B6)、「前記第一のデータの前記符号化モード」は、「イントラ予測モード」を示す(構成B7)ものである。

(2)「画像符号化データ」に基づき実行される情報処理
本願発明の「画像符号化データ」は、構成Cの「画像復号装置」により復号処理されるものであって、構成C1ないし構成C4の復号処理が実行されることが記載されている。
構成C1は、「ヘッダ情報」を復号し、「ヘッダ情報」に基づいて「第一のデータ」を特定する情報処理といえる。
構成C2は、「第一のデータ」を特定するまで「最大ブロック単位の符号化データ」に対して復号処理を行わない情報処理といえる。
構成C3は、「第一のデータ」を特定すると、「第一のデータ」を用いて「最大ブロック単位の符号化データ」に対する復号処理を開始し、「第一のピクチャ」を復号し(構成C31)、「第二のデータ」を用いて「第二のピクチャ」を復号し(構成C32)、「第三のデータ」を用いて「第三のピクチャ」を復号する(構成C33)情報処理といえる。
そして、構成C4は、「第三のピクチャ」の出力後に、「第一のピクチャ」または「第二のピクチャ」を出力する情報処理といえる。

2.発明該当性についての判断
(1)「画像符号化データ」の「データ構造」について
ア.MPEG等の国際標準映像符号化方式により生成される「符号化データ」は、一般的に、パケット化されたビデオストリーム、オーディオストリーム、制御情報などを多重化し、特定のフォーマット(データ構造)にパッケージ化したビットストリームである。
そして、ビデオストリームのビデオ符号化データは、階層構造を有し、その階層構造は、上位層からシーケンス、ピクチャ、スライス、最大ブロック、符号化ブロックなどの各階層からなり、各階層の符号化の処理パラメータ及び当該ビデオ符号化データに関する情報を記述した各階層の符号化関連情報(ヘッダ又はパラメータセット)と、符号化ブロックにおける階層のビデオ符号化データから構成されるものである。

イ.構成Aの「画像符号化データ」について検討する。
構成Aは、「画像符号化データ」が「各フレームの各フィールドのピクチャごとに符号化された複数のデータ」から構成されること、当該「各フレーム」が「第一のフィールド」と「第二のフィールド」の二つのフィールドを有すること、当該「複数のデータ」は「それぞれ、ピクチャを分割した最大ブロック単位の複数の符号化データ」を含むことを記載している。

よって、構成Aの「画像符号化データ」が「複数のデータ」から構成されることは、構成Aの「画像符号化データ」が、ピクチャの階層の「複数のデータ」から構成されていることを特定しているといえる。
また構成Aの「複数のデータ」が「複数の符号化データ」を含むことは、構成Aの「複数のデータ」が、最大ブロックの階層の「最大ブロック単位の複数の符号化データ」から構成されていることを特定しているといえる。

ウ.構成B1ないし構成B3の「画像符号化データ」について検討する。
構成B1ないし構成B3は、「画像符号化データ」が、それぞれ所定の属性を有するピクチャごとの「第一のデータ」ないし「第三のデータ」を有していることを記載しているのみであるから、「画像符号化データ」の階層構造を特定しているとはいえない。

エ.構成B4ないし構成B5の「画像符号化データ」について検討する。
構成B4は、「第一のデータ」ないし「第三のデータ」が、データごとに、「ヘッダ情報」、「最大ブロック単位の複数の符号化データ」、「最大ブロックを階層的に分割したブロック分割状況を示す情報」及び「ブロック単位の符号化モード」を含むことを特定している。
構成B5は、構成B4の「最大ブロック単位の符号化データ」が、最大ブロックを階層的に分割した「ブロックの差分画像の圧縮データ」を含むことを特定している。

よって、構成B4ないし構成B5の「画像符号化データ」は、ピクチャの階層の「第一のデータ」、「第二のデータ」及び「第三のデータ」から構成されること、当該「第一のデータ」、「第二のデータ」及び「第三のデータ」が、最大ブロックの階層の「最大ブロック単位の複数の符号化データ」を含むこと、さらに、当該「最大ブロック単位の符号化データ」が、符号化ブロックの階層の「ブロックの差分画像の圧縮データ」を含むことを特定している。

オ.構成B6ないし構成B7の「画像符号化データ」について検討する。
構成B6は、構成B4の「第一のデータ」が含む「ヘッダ情報」が含む情報を特定し、構成B7は、構成B4の「第一のデータ」が含む「ブロック単位の符号化モード」の内容を示しているのみであり、それぞれは、「画像符号化データ」のデータ構造を特定するものではない。

カ.上記ア、イ、エによると、本願発明の「画像符号化データ」は、シーケンス、ピクチャ、最大ブロック及び符号化ブロックの各階層からなるデータにより構成されているといえるから、データ要素間の論理的関係が階層構造を有するデータであって、「データ構造」を有するデータといえる。

(2)「データ構造に基づく情報処理を具体的に行うもの」について
本願発明の「画像符号化データ」は、上記1(2)のとおりである。
構成C2及び構成C3の情報処理は、ピクチャに関する「ヘッダ情報」に基づいて「最大ブロック単位の符号化データ」を含む「第一のデータ」、「第二のデータ」及び「第三のデータ」の情報処理を行わないか開始するかを決定し、「第一のデータ」、「第二のデータ」及び「第三のデータ」の復号処理(情報処理)を特定しているに過ぎないといえる。

したがって、本願発明の「画像符号化データ」は、ピクチャの階層の「複数のデータ」、「ヘッダ情報」、最大ブロックの階層の「最大ブロック単位の複数の符号化データ」、符号化ブロックの階層の「ブロックの差分画像の圧縮データ」のデータ要素間の論理的関係が階層構造を有するデータの「データ構造」に基づいた情報処理が、「画像復号装置」と協働して具体的に実現しているとはいえない。

よって、本願発明の「画像符号化データ」は、階層構造を有するデータの「データ構造」に基づく情報処理が具体的に実現されているとはいえず、復号処理で復号されることを提示しているのみであるから、「情報の単なる提示」を行うものに該当するといえる。

3.意見書の主張について
請求人は、令和2年1月23日の意見書の2.2.(2)ウにおいて、
「 すなわち、本願発明の「画像符号化データ」は、ピクチャの階層のデータである「ピクチャに関するヘッダ情報」に基づいて、ピクチャの階層のデータである「ピクチャに関するヘッダ情報」を復号した段階で、処理対象のデータがビットストリームの途中からの復号を開始可能なピクチャではないと認識することができ、ビットストリームの途中からの復号を開始可能なピクチャではない当該データに含まれるブロックの階層のデータに対して復号処理することなく、かつ、ピクチャの階層のデータである「ピクチャに関するヘッダ情報」を復号した段階で、処理対象のデータがビットストリームの途中からの復号を開始可能なピクチャであると認識することができ、復号可能な第一のピクチャが符号化された第一のデータにおけるブロックの階層のデータに対する復号処理を開始し、当該復号処理の際に、ブロックの階層のデータに相当する「イントラ予測モードを示す符号化モード」に基づいてイントラ予測処理を行って復号画像を生成する処理を実現することができるものです。」
「 このように、本願発明は、「データ構造」を有するデータである「画像符号化データ」に配置された符号化データ及び符号化関連情報が、「画像復号装置」に入力され「画像復号装置」と協働することにより、「画像復号装置」において復号画像を生成する復号処理として上記したような特別な情報処理が実現されるものです。
したがいまして、本願発明は、「画像符号化データ」の階層構造及び各階層に配置された符号化データ及び符号化関連情報に基づいて、「データ構造」に基づく情報処理を具体的に行うものであります。」
と主張している。

しかしながら、上記2.(2)において判断したとおりであるから、請求人の意見書による上記主張は、採用することができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1の「画像符号化データ」は、「情報の単なる提示」を行うものであるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」(「自然法則を利用した技術的思想の創作」)に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-17 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-02 
出願番号 特願2016-141163(P2016-141163)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (H04N)
P 1 8・ 537- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 川崎 優
清水 正一
発明の名称 画像符号化データ  
代理人 井上 和真  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 田澤 英昭  
代理人 中島 成  

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