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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1361383 |
審判番号 | 不服2018-14098 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-24 |
確定日 | 2020-04-16 |
事件の表示 | 特願2016-128739「無線中継装置、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-187215〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年3月8日に出願した特願2012-51632号の一部を、平成28年6月29日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 8月18日付け 拒絶理由通知書 平成29年10月16日 意見書、手続補正書の提出 平成30年 3月15日付け 拒絶理由通知書 平成30年 5月18日 意見書、手続補正書の提出 平成30年 7月19日付け 拒絶査定 平成30年10月24日 拒絶査定不服審判の請求、 手続補正書の提出 令和 1年10月 4日付け 拒絶理由通知書(当審) 令和 1年12月 3日 意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1-12に係る発明は、令和1年12月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「 IEEE802.11準拠の無線LANにおける無線中継装置であって、 3つ以上の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択する選択手段と、 前記選択手段により選択された無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置との間でデータの送受信を行うとともに、前記選択手段により選択された無線通信チャネルの各々について、当該チャネルを介した通信と当該チャネルの電波状態の計測の少なくとも一方を実行する通信制御手段と、を有し、 前記選択手段は、前記3つ以上の無線通信チャネルのうち電波状態の計測のみを行う無線通信チャネルを連続させることなく前記3つ以上の無線通信チャネルの各々を選択することを特徴とする無線中継装置。」 第3 拒絶の理由 令和1年10月4日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して下記3、1、4、5が引用されている。 3.特開2009-130484号公報 1.特開2004-147124号公報 4.特開2007-067610号公報 5.特開2005-151433号公報 第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等 1.引用発明 当審拒絶理由で引用された特開2009-130484号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) (1)「【0003】 無線LANは、IEEE(the Institute of Electrical and ElectronicEngineers)802.11で規格が統一化され、IEEE802.11の拡張仕様として、IEEE802.11a、IEEE802.11bの規格がある。 【0004】 IEEE802.11aは、最大54Mbpsの速度で通信できる新しい規格であり、5GHz帯の周波数帯域を使用している。IEEE802.11bは、無線LANの標準規格であって、現在最も多く使用されている。IEEE802.11bは、最大11Mbpsの速度で通信でき、2.4GHz帯の周波数帯域を使用している。 【0005】 無線LANでは、アクセスポイントと移動端末装置であるクライアントとが電波でつながれることで通信が行われる。ここで、無線LANで使われる"アクセスポイント"とは、LANにつないである中継器(無線局)のことを指す。 【0006】 また、アクセスポイントは、自身の存在を示すために、ビーコン(Beacon)信号を発する。クライアントは、ビーコン信号のスキャン(探索)を行う。 【0007】 IEEE802.11a準拠の無線LAN接続において、ビーコン信号は、チャネル(CH)1?8までCH毎に周波数が決められている。IEEE802.11b準拠の無線LAN接続において、ビーコン信号は、チャネル(CH)1?14までCH毎に周波数が決められている。よって、無線LANは計22CHが規定されている。更に今後、IEEE802.11aは、11種類ものCHが追加されることになっている。従って、無線LANは、従来の計22CHに11種類のCHを追加した計33CHとなる。各アクセスポイントは、自身に設定されたCHのビーコン信号をエア中に発する。」 (2)「【0038】 図3は、アクセスポイントの構成図を示す。図4は、アクセスポイントのメモリ部の構成図を示す。図5は、クライアントの構成図を示す。図3、図4及び図5において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。 【0039】 図3に示すように、無線通信部としての無線LAN部33と、有線通信部としての有線LAN部40と、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)30と、メモリ部35とを備え、これらはバスによって接続されている。無線LAN部33は、CPU30によって制御され、クライアントCLへ情報を通知する等の処理を実行する。 【0040】 無線LAN部33には、CPU30によって制御されて既述のクライアントが無線接続され、無線コントローラ31及び無線インタフェース部(I/F)32を備え、無線インタフェース部32にはアンテナ33が接続されている。無線コントローラ31は、CPU30の制御に基づき、無線インタフェース部32を制御する。無線インタフェース部32は、アンテナ34を通して無線LANの使用周波数の電波を送受信し、クライアントとの無線接続及びその無線接続により、データ通信を行う。 【0041】 有線LAN部40には、有線コントローラ38及び有線インタフェース部(I/F)39を備え、CPU30によって制御され、接続された他のアクセスポイントAPとの間でデータ通信を行う。有線コントローラ38は、CPU30の制御に基づき、有線インターフェース部39を制御する。有線インタフェース部39は、送信部及び受信部を備え、LANケーブル4を通して他のアクセスポイントAPと有線接続され、そのアクセスポイントAPとデータ通信を行う。 【0042】 CPU30は、各機能部の制御部であって、メモリ部35に格納されている周囲スキャンプログラムを実行する。CPU30は、各種処理として全CHのスキャン処理、周囲に存在するアクセスポイントAPと接続可能なCHの情報を格納したテーブルAの作成処理、接続処理、切断処理等を実行する。」 上記(1)、(2)の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると、以下のことがいえる。 ア 上記(1)の段落【0003】、【0005】には、無線LANは、IEEE(the Institute of Electrical and ElectronicEngineers)802.11で規格が統一化されていること、無線LANで使われる"アクセスポイント"とは、LANにつないである中継器(無線局)のことを指すことがそれぞれ記載されている。 よって、引用例には、「IEEE802.11準拠の無線LANにおける中継器(無線局)であるアクセスポイント」が記載されているといえる。 イ 上記(2)の段落【0040】には、アクセスポイントのCPU30の制御に基づき、無線インタフェース部32がアンテナ34を通して無線LANの使用周波数の電波を送受信し、クライアントとデータ通信を行うことが記載されているといえる。そして、上記(1)の段落【0005】によれば、クライアントは移動端末装置であるから、引用例のアクセスポイントのCPUは、「無線LANの周波数の電波を介した移動端末装置との間のデータの送受信の制御」を行うといえる。 また、上記(2)の段落【0042】には、アクセスポイントのCPU30が、全CHのスキャン処理を行うことが記載されているといえる。ここで、上記(1)の段落【0007】によれば、無線LANのチャネルは計33CHであるから、引用例のアクセスポイントのCPUは、「無線LANの2つ以上の周波数の電波のスキャン処理」を行うといえる。 よって、引用例のアクセスポイントは、「無線LANの周波数の電波を介した移動端末装置との間のデータの送受信の制御と、無線LANの2つ以上の周波数の電波のスキャン処理の少なくとも一方を実行するCPU」を有するといえる。 してみれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 IEEE802.11準拠の無線LANにおける中継器(無線局)であるアクセスポイントであって、 無線LANの周波数の電波を介した移動端末装置との間のデータの送受信の制御と、無線LANの2つ以上の周波数の電波のスキャン処理の少なくとも一方を実行するCPUと、を有するアクセスポイント。」 2.周知事項 当審拒絶理由に引用された特開2004-147124号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) (1)「【0047】 (第2実施形態) 本実施形態ではさらに、前述した新規チャネルアサイン時に、より回線状態が良好なチャネルを選択するために、通信に使用する巡回チャネルにモニタチャネルを追加して、巡回チャネルとモニタチャネルとを巡回することで、モニタチャネルにより空きチャネルの回線状態を監視することができる。 【0048】 例えば図10に示すように巡回チャネルにモニタチャネルを追加する。図10は、巡回チャネル2,5,9の3チャネル巡回の受信チャネルにモニタチャネルを1チャネル追加した例を示している。モニタチャネルの周波数は順番に空きチャネルに設定され、すべての空きチャネルの回線状態を順番に調査する。巡回チャネル2,5,9とモニタチャネル1で一巡し、二巡目のモニタチャネルはチャネル3となり、空きチャネルを順次モニタする。」 (2)図10として以下の図面が記載されている。 「 」 当審拒絶理由に引用された特開2007-67610号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) (3)「【0037】 このように、本実施例によれば、通信チャネル毎の無線LANアクセスポイントのスキャンを分散して実施し、スキャンとの間に音声データパケットを送出するため、音声通話が途切れる無音の時間を一つの通信チャネルのスキャン時間内に留めることができる。また、スキャン時間を音声データパケットのペイロードサイズから算出する最適値に設定しているため、音声通話が途切れる無音の時間を最小にすることができる。そして、これらの効果により、高速なハンドオーバーを実現することができる。」 (4)図3として以下の図面が記載されている。 「 」 当審拒絶理由に引用された特開2005-151433号公報(以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) (5)「【0008】 図5において、いま、ステーション11が例えば38CHを使用して自身での通信を行っているものとする。このとき、OS14からバックグランドスキャンの指示があると、ステーション11は、T1として示す800msの間、自身の通信を続けた後、T2として示す次の100msの間、1つのCHを用いて、プローブリクエスト(探索信号)を発して、それに対する応答が得られたか否かにより、そのCHを使用するAPが自身の周辺に存在するか否かを検出する処理を行う。 【0009】 ステーション11は、次のT3として示す800msの間、自身の通信を行い、T4として示すさらに次の100msの間、時間T2で使用したのとは異なる他のCHを用いて、前述と同様に、そのCHを使用するAPが自身の周辺に存在するか否かを検出する処理を行う。ステーション11は、前述した処理を繰り返し実行することにより、APが使用可能とされている全てのCHについて、そのCHを使用しているAPの存在を検出する処理を行う。この処理は、通常、APが使用可能な2.4GHz帯の全CH、5.0GHz帯の全CHに対して行われる。」 (6)図5として以下の図面が記載されている。 「 」 上記(1)のモニタチャネル、(4)のAPの探索(ChA-D)、(5)のプローブリクエスト(探索信号)を発するCHは、「電波状態の計測のみを行う無線通信チャネル」といえ、上記(1)?(6)の記載によれば、これらの「電波状態の計測のみを行う無線通信チャネル」が連続することなく3つ以上の無線通信チャネルの各々が選択されるといえる。 したがって、「電波状態の計測のみを行う無線通信チャネルを連続させることなく3つ以上の無線通信チャネルの各々を選択する。」ことは、無線通信技術における周知事項(以下、「周知事項」という。)であると認められる。 第5 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 ア 引用発明の「IEEE802.11準拠の無線LANにおける中継器(無線局)であるアクセスポイント」は、本願発明の「IEEE802.11準拠の無線LANにおける無線中継装置」に相当する。 イ 引用発明のアクセスポイントは、「無線LANの周波数の電波を介した移動端末装置との間のデータの送受信の制御と、無線LANの2つ以上の周波数の電波のスキャン処理の少なくとも一方を実行する」「CPU」を有するものであるところ、データの送受信の制御と共にスキャン処理を行う際に、「CPU」が無線LANの周波数の電波の各々を巡回的に選択することは常套手段であるから、引用発明のアクセスポイントは、「3つ以上の無線LANの周波数の電波の各々を巡回的に選択する」「CPU」を有するものであるといえる。 そして、「無線LANの周波数の電波」を「無線通信チャネル」と称することは任意であるから、引用発明のアクセスポイントは、本願発明と同様に、「3つ以上の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択する選択手段」を有するといえる。 ウ 引用発明の「移動端末装置」は、本願発明の「無線端末装置」に相当する。そして、引用発明のアクセスポイントが「無線LANの周波数の電波を介した移動端末装置との間のデータの送受信の制御」を行うことは、データの送受信を行う無線通信チャネルとして選択された無線チャネルを介して移動端末装置との間でデータの送受信を行うことであるといえるから、本願発明の「前記選択手段により選択された無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置との間でデータの送受信を行う」ことに相当する。 また、「スキャン処理」において、「電波状態の計測」を行うことは常套手段であるから、引用発明の「無線LANの2つ以上の周波数の電波のスキャン処理」は、本願発明の「前記選択手段により選択された無線通信チャネルの各々について」、「当該チャネルの電波状態の計測」を実行することに相当する。 よって、引用発明の「無線LANの周波数の電波を介した移動端末装置との間のデータの送受信の制御と、無線LANの2つ以上の周波数の電波のスキャン処理の少なくとも一方を実行するCPU」は、本願発明の「前記選択手段により選択された無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置との間でデータの送受信を行うとともに、前記選択手段により選択された無線通信チャネルの各々について、当該チャネルを介した通信と当該チャネルの電波状態の計測の少なくとも一方を実行する通信制御手段」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「 IEEE802.11準拠の無線LANにおける無線中継装置であって、 3つ以上の無線通信チャネルの各々を巡回的に選択する選択手段と、 前記選択手段により選択された無線通信チャネルの少なくとも1つを介して無線端末装置との間でデータの送受信を行うとともに、前記選択手段により選択された無線通信チャネルの各々について、当該チャネルを介した通信と当該チャネルの電波状態の計測の少なくとも一方を実行する通信制御手段と、を有する無線中継装置。」 (相違点) 「選択手段」について、本願発明では、「3つ以上の無線通信チャネルのうち電波状態の計測のみを行う無線通信チャネルを連続させることなく3つ以上の無線通信チャネルの各々を選択する」のに対して、引用発明では、3つ以上の無線通信チャネルの各々を選択するが、「電波状態の計測のみを行う無線通信チャネルを連続させることなく3つ以上の無線通信チャネルの各々を選択する」との特定がない点。 以下、相違点について検討する。 上記「第4」「2.」のとおり、「電波状態の計測のみを行う無線通信チャネルを連続させることなく3つ以上の無線通信チャネルの各々を選択する」ことはスキャン処理方法として周知であるから、引用発明におけるスキャン処理方法として、当該周知事項を採用し、スキャン処理を行う無線通信チャネルを連続させることなく無線通信チャネルを選択することは、当業者が適宜なし得ることである。 また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。 そうすると、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-02-13 |
結審通知日 | 2020-02-18 |
審決日 | 2020-03-02 |
出願番号 | 特願2016-128739(P2016-128739) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田部井 和彦 |
特許庁審判長 |
中木 努 |
特許庁審判官 |
本郷 彰 原田 聖子 |
発明の名称 | 無線中継装置、およびプログラム |
代理人 | 松本 隆 |