ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J |
---|---|
管理番号 | 1361385 |
審判番号 | 不服2018-15036 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-12 |
確定日 | 2020-04-15 |
事件の表示 | 特願2017-502798「生体試料格納システムおよびラベル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月21日国際公開、WO2016/010814、平成29年 8月24日国内公表、特表2017-523833〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)7月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年(平成26年)7月17日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成30年2月9日付けで拒絶理由が通知され、平成30年5月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年7月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年11月12日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成30年11月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年11月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである(下線は、補正箇所であり、当審が付与したものである。)。 「【請求項1】 容器のためのラベルであって、前記ラベルが、 第1可読情報部分を有する第1層であって、前記第1層の少なくとも一部が、感熱性材料であって、その上またはその中に可読情報が焼き付けられることのできる感熱性材料で形成された、第1層と、 前記第1層に取り外し可能に取り付けられ、且つ前記第1層上に重ね合わされた第2層であって、前記第2層が第2可読情報部分を有し、前記第2層の少なくとも一部が、感熱性材料であって、その上またはその中に可読情報を焼き付けることができる感熱性材料で形成された、第2層と を含み、 前記第1可読情報部分および/または前記第2可読情報部分は、時間インジケータ、温度インジケータ、試料および/または前記容器の他の情報識別特徴、前記容器が期限切れしているかをユーザが観察することを可能にする時間および温度保存期間インジケータに関連する情報、または、適切な回数の混合および適切な長さの混合時間が実施されることを確実にする混合インジケータに関する情報のうち少なくとも一つを含み、および、 前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分は、その上またはその中に第1可読情報および第2可読情報が所定温度の熱の印加に応じて形成されるように感熱性であり、前記第1層と前記第2層の間に、前記第2層を前記第1層から取り外せるようにするために剥離層が備えられており、 前記第1層と前記第2層は、所定の温度での加熱に応答して前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分が同時に前記第1層および前記第2層上または前記第1層および前記第2層内に与えられることを可能にするように、相互に対して配置されており、および、前記剥離層が前記第2層を前記第1層から取り外すことを可能にする、ラベル。」 (2)本件補正前の、平成30年5月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、以下のとおりである。 「【請求項1】 容器のためのラベルであって、前記ラベルが、 第1可読情報部分を有する第1層であって、前記第1層の少なくとも一部が、感熱性材料であって、その上またはその中に可読情報が焼き付けられることのできる感熱性材料で形成された、第1層と、 前記第1層に取り外し可能に取り付けられ、且つ前記第1層上に重ね合わされた第2層であって、前記第2層が第2可読情報部分を有し、前記第2層の少なくとも一部が、感熱性材料であって、その上またはその中に可読情報を焼き付けることができる感熱性材料で形成された、第2層と を含み、 前記第1可読情報部分および/または前記第2可読情報部分は、時間インジケータ、温度インジケータ、試料および/または前記容器の他の情報識別特徴、前記容器が期限切れしているかをユーザが観察することを可能にする時間および温度保存期間インジケータに関連する情報、または、適切な回数の混合および適切な長さの混合時間が実施されることを確実にする混合インジケータに関する情報のうち少なくとも一つを含み、および、 前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分は、その上またはその中に第1可読情報および第2可読情報が所定温度の熱の印加に応じて形成されるように感熱性であり、前記第1層と前記第2層の間に、前記第2層を前記第1層から取り外せるようにするために剥離層が備えられている、ラベル。」 2 補正の適否について 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ラベル」について、「前記第1層と前記第2層は、所定の温度での加熱に応答して前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分が同時に前記第1層および前記第2層上または前記第1層および前記第2層内に与えられることを可能にするように、相互に対して配置されており、および、前記剥離層が前記第2層を前記第1層から取り外すことを可能にする」と特定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1の(1)のとおりである。 (2)引用文献及び引用発明 (2-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2009-526231号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。 ア.記載事項 「【0001】 本発明は、患者から生物学的体液サンプルを捕集するための容器に関する情報を提供するためのシステム及び方法に関する。」 「【0009】 本発明のさらに別の実施形態では、生物学的サンプルを捕集するための容器及び該容器に貼られたラベルを含み、該生物学的サンプル又は容器に関する情報はラベル上に位置され、前記情報の少なくとも一部が該容器に貼られているラベルの面上に位置される生物学的サンプル閉じ込めシステム及び方法が提供される。」 イ.図示事項 図3Aより、ラベルに情報が視認できるように記載されていることが看取される。 (2-2)上記(2-1)を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「患者から生物学的サンプルを捕集するための容器に関する情報を提供するためのラベルであって、 生物学的サンプルを捕集するための容器に貼られ、該生物学的サンプル又は容器に関する情報が視認できるように記載される、 ラベル。」 (2-3)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-6743号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、医薬品である薬剤の内容を表示するために、薬剤の容器や包装その他の医療関連部材に付される薬剤管理用多層ラベルに関する。」 「【0002】 【従来の技術】従来、医薬品、健康食品、化粧品等の容器または包装には、商品名が直接印刷されているものや、紙、合成紙、プラスティック等の表面に印刷されていて、裏面に粘着剤が塗布されたラベルが貼付されていものが用いられている。」 「【0005】この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたもので、信頼性が高い薬剤管理が可能となり、さらに、ラベルの取り扱いが容易で医師や看護婦等の医療従事者の負担を減らすことができる薬剤管理用多層ラベルを提供することを目的とする。」 「【0009】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1?図4は、この発明の第一実施形態の薬剤管理用多層ラベルを示す。この実施形態では代表的な層構成として二層のラベルからなり、この薬剤管理用多層ラベル2は、上側から第一層ラベル4と、第二層ラベル6と、第二層ラベル6の下側のシート材である剥離シート8とから成る。 【0010】第一層ラベル4は、紙または樹脂フィルム等のラベル基材14と、このラベル基材14の表面に設けられ薬剤名記載部16やバーコードその他の表示が印刷されている印刷インキ層18と、ラベル基材14の裏面に粘着剤を塗布または印刷してなる粘着層10とを備える。 【0011】第二層ラベル6は、透明樹脂フィルム等のラベル基材20と、このラベル基材20の上面に設けられ、第一層ラベル4の薬剤名記載部16等の表示とほぼ同じ位置22に、同じ薬剤名やバーコードその他の表示が印刷されいる印刷インキ層24と、この印刷インキ層24の上面に設けられ剥離剤が塗布または印刷された剥離層26とを備える。さらに、ラベル基材20の下面には、粘着剤が塗布されて形成された粘着層12を有する。なお、印刷インキ層18,24の位置や内容は適宜設定可能なものであり、各々異なるものが各ラベル4,6に印刷されていても良い。」 (2-4)上記(2-3)を踏まえると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「医薬品である薬剤の内容を表示するために薬剤の容器に付される薬剤管理用多層ラベルであって、薬剤を他の容器に移した際にその内容表示を高い信頼性で行うことを目的として、上側から第一層ラベル4と、第二層ラベル6とから成り、第一層ラベル4は、紙または樹脂フィルム等のラベル基材14と、このラベル基材14の表面に設けられ薬剤名記載部16やバーコードその他の表示が印刷されている印刷インキ層18とを備え、第二層ラベル6は、透明樹脂フィルム等のラベル基材20と、このラベル基材20の上面に設けられ、第一層ラベル4の薬剤名記載部16等の表示とほぼ同じ位置22に、同じ薬剤名やバーコードその他の表示が印刷されている印刷インキ層24と、この印刷インキ層24の上面に設けられ剥離剤が塗布または印刷された剥離層26とを備える薬剤管理用多層ラベル。」 (3)対比・判断 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「容器」及び「ラベル」は、それぞれ、本件補正発明の「容器」及び「ラベル」に相当する。 引用発明の「生物学的サンプル又は容器に関する情報」は、ラベルに「視認できるように記載され」ているものであるから、可読情報であるといえ、本件補正発明の「可読情報」に相当する。そして、引用発明の当該情報が記載されているラベルは、可読情報を備えさせる箇所を有することから、引用発明の当該ラベルは、本件補正発明における「第1可読情報部分」に相当する構成を有しているといえる。 そして、引用発明の「生物学的サンプル又は容器に関する情報」は、インジケータ以外の容器の他の情報であるといえることから、本件補正発明の「時間インジケータ、温度インジケータ、試料および/または前記容器の他の情報識別特徴、前記容器が期限切れしているかをユーザが観察することを可能にする時間および温度保存期間インジケータに関連する情報、または、適切な回数の混合および適切な長さの混合時間が実施されることを確実にする混合インジケータに関する情報のうち少なくとも一つ」に相当するといえる。 そうすると、両者は、 「容器のためのラベルであって、前記ラベルが、 第1可読情報部分を有し、可読情報が与えられるものであり、 前記第1可読情報部分は、時間インジケータ、温度インジケータ、試料および/または前記容器の他の情報識別特徴、前記容器が期限切れしているかをユーザが観察することを可能にする時間および温度保存期間インジケータに関連する情報、または、適切な回数の混合および適切な長さの混合時間が実施されることを確実にする混合インジケータに関する情報のうち少なくとも一つを含む、 ラベル」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: ラベルについて、本件補正発明では、第1可読情報部分を有する第1層であって、前記第1層の少なくとも一部が、感熱性材料であって、その上またはその中に可読情報が焼き付けられることのできる感熱性材料で形成された、第1層と、前記第1層に取り外し可能に取り付けられ、且つ前記第1層上に重ね合わされた第2層であって、前記第2層が第2可読情報部分を有し、前記第2層の少なくとも一部が、感熱性材料であって、その上またはその中に可読情報を焼き付けることができる感熱性材料で形成された、第2層とを含み、前記第1可読情報部分および/または前記第2可読情報部分は、時間インジケータ、温度インジケータ、試料および/または前記容器の他の情報識別特徴、前記容器が期限切れしているかをユーザが観察することを可能にする時間および温度保存期間インジケータに関連する情報、または、適切な回数の混合および適切な長さの混合時間が実施されることを確実にする混合インジケータに関する情報のうち少なくとも一つを含み、および、前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分は、その上またはその中に第1可読情報および第2可読情報が所定温度の熱の印加に応じて形成されるように感熱性であり、前記第1層と前記第2層の間に、前記第2層を前記第1層から取り外せるようにするために剥離層が備えられており、前記第1層と前記第2層は、所定の温度での加熱に応答して前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分が同時に前記第1層および前記第2層上または前記第1層および前記第2層内に与えられることを可能にするように、相互に対して配置されており、および、前記剥離層が前記第2層を前記第1層から取り外すことを可能にするのに対し、引用発明では、そのような構成を有しない点。 上記相違点について判断する。 一般に、医薬品等を扱う容器において、その内容物を他の容器等に移した場合にその内容表示を他の容器等において高い信頼性で行うことは、安全上当然の要請といえる。そして、引用発明においても、容器の内容物である生物学的サンプルを他の容器等に移すことは予定されていることといえ、その際にその内容物の内容表示を他の容器等において高い信頼性で行うことは内在する要請であることを踏まえれば、引用発明に対して引用発明2を適用して、引用発明のラベルを、第一層と、剥離層によって第一層から取り外すことを可能にするように重ね合わされた第二層とからなる多層ラベルとし、第一層及び第二層がそれらの上または中に可読情報部分を有する構成とすることに何ら困難性はない。 また、原審の平成30年2月9日付け拒絶理由通知で周知の事項を示す文献として提示された、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-125733号公報(段落【0002】等を参照。)や、実願昭62-186554号(実開平1-90074号)のマイクロフィルム(明細書第11ページ第3-8行等を参照。)、特開平8-36360号公報(段落【0023】等を参照。)等の記載からみて、容器用ラベルの技術分野において、ラベルを感熱性材料で形成すること、そして、当該ラベルを複数重ね合わせて用いることで一度の加熱によりそれぞれのラベルに同じ情報を熱印字できることは、周知の技術である。してみると、引用発明のラベルを引用発明2のように、複数層から構成するにあたって、上記の周知の技術のようにラベルを感熱性材料とすることで上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることに何ら困難性はない。 よって、本件補正発明は、引用発明、引用発明2及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。したがって、本件補正は、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、前記第2の[理由]1の(2)に記載されたとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願発明は、引用発明、引用発明2及び上記周知の技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献及び引用発明 前記第2の[理由]2の(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記第1層と前記第2層は、所定の温度での加熱に応答して前記第1可読情報部分および前記第2可読情報部分が同時に前記第1層および前記第2層上または前記第1層および前記第2層内に与えられることを可能にするように、相互に対して配置されており、および、前記剥離層が前記第2層を前記第1層から取り外すことを可能にする」との特定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2の(3)に記載したとおり、引用発明、引用発明2及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2の記載事項及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-11-13 |
結審通知日 | 2019-11-19 |
審決日 | 2019-12-02 |
出願番号 | 特願2017-502798(P2017-502798) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61J)
P 1 8・ 121- Z (A61J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今井 貞雄、立花 啓 |
特許庁審判長 |
芦原 康裕 |
特許庁審判官 |
栗山 卓也 寺川 ゆりか |
発明の名称 | 生体試料格納システムおよびラベル |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |