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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1361389
審判番号 不服2019-776  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-21 
確定日 2020-04-15 
事件の表示 特願2016-510137「カテーテル組立体および内カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開,WO2015/146408〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27年)2月23日(優先権主張 平成26年3月28日)を国際出願日とする特許出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成30年 7月 6日付け:拒絶理由通知
平成30年 9月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月10日付け:拒絶査定
平成31年 1月21日 :審判請求書,同時に手続補正書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成31年1月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「管状の外カテーテル本体および前記外カテーテル本体の基端に設けられた外カテーテルハブを備える外カテーテルと,前記外カテーテル本体内に挿入可能な内カテーテル本体および前記内カテーテル本体の基端に設けられて前記外カテーテルハブに連結可能であるとともに内部に内カテーテルハブ内腔が形成された内カテーテルハブを備える内カテーテルと,を有する,腕の血管から導入されて下肢の血管の治療に用いられるカテーテル組立体であって,
前記内カテーテル本体は,前記内カテーテルハブから先端方向へ延在するシャフトと,前記シャフトの先端に設けられ,先端部および基端部にて外部に開口してガイドワイヤーを挿入可能な内カテーテル内腔が形成される管体と,を有し,
前記外カテーテルハブと内カテーテルハブとを連結した際に,前記内カテーテル本体は,前記管体の先端が前記外カテーテル本体の先端よりも先端側に配置され,かつ,前記管体の基端が前記外カテーテル本体の先端よりも基端側に配置されており,前記管体の基端は,前記外カテーテル本体の外カテーテル内腔に位置することを特徴とする,カテーテル組立体。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の1つは,本願の請求項1に係る発明は,本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明,引用文献3に記載された発明及び周知の技術に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献2.特開2008-142351号公報
引用文献3.特開2010-29559号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献2の記載事項
(1)引用文献2(平成20年6月26日公開)には,図面とともに,次の記載がある。

「【0012】
本発明は,ガイドワイヤルーメンを有する先細の先端部,及びこれに連続するシャフトを備えた挿入補助具,並びにこれを有するカテーテル組立体及びカテーテルセットであるため,カテーテルの挿入を補助しながら,カテーテル内での進退を滑らかにすることができ,更にガイドワイヤの交換を容易にすることができ,カテーテルとガイドワイヤとの段差を小さくすることもできてカテーテルの先端を安全かつ容易に目的部位に導入することができる,という効果を奏する。
【0013】
以下,本発明の一実施形態に係る挿入補助具につき,適宜図面に基づいて説明する。図1(a)は当該挿入補助具1の説明図であって,挿入補助具1は,先端側に先端部2を有すると共に,これより基端側に,長さとしては大部分を占めるシャフト4を有する。挿入補助具1は,後述するカテーテル31の先端側開口から先細部12の一部が突出し,かつシャフト4の基端がカテーテル31の基端側開口から突出する状態で,カテーテル31に挿入することができる長さであれば良く,具体的には,先端部2の長さは200ミリメートル(mm)程であり,シャフト4(先端部2との重複部分を除く)の長さは1300mm程度である。
【0014】
図2(a)は先端部2の中央断面図であって,先端部2は,管状体とされており,先後に開口するガイドワイヤGのためのルーメン10を有する。又,先端部2は,先端側にテーパ状の先細部12を有する。先細部12のすぐ後には,放射線(X線)を透過しない筒状のマーカ14が設けられている。マーカ14の外面は,マーカ14より基端側の先端部2外面と連続する。マーカ14の外面やこれより後側の先端部2外面における外径は,後述するカテーテル31の先端側開口の径とほぼ同一の径であれば良く,具体的には,5Fr(フレンチ)のカテーテルの内径と同等であり,即ちマーカ14の外面やこれより後側(基端側)の先端部2外面における外径は,1.40?1.50mmである。」

「【0018】
一方,先端部2の後端にも,ルーメン10の開口が位置する。当該開口のすぐ外側は,先端部2の壁の端面(が作るO字状の部分)である後面24となっている。後面24は,先端部2の中心軸に対し傾いている。そして,後面24の最後端部分に連設されるシャフト4が,基端まで延びている。」

「【0023】
次に,本発明の一実施形態としての,挿入補助具1と組み合わせて用いられるカテーテル31について説明する。図1(b)及び図5(a)はカテーテル31の説明図,図2(b)は挿入補助具1と組み合わせたカテーテル31の中央断面図であって,カテーテル31は,管状体であり,5Frのサイズを有し,先後に開口するルーメン32を有する。ルーメン32は,ガイドワイヤG,あるいはバルーンカテーテル等の他の治療用デバイスを挿通可能である。」

「【0026】
更に,カテーテル31は,ソフトチップ34以外の部分について,柔軟性を保ちつつも,先端側より段階的にショア硬度が増す構造を持つ。具体的には,先端側より段階的にショア硬度が増す3種の構造を持つようになっている。まず,ソフトチップ34のすぐ基端側は,ショア硬度40DであるPebax製のチューブ40となっている。次に,チューブ40のすぐ基端側は,図5(b)に示すように,ステンレス製のらせん体42を,フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン,PTFE)製の内筒44とPebax製の外筒46とで挟んだチューブ構造体48となっている。続いて,その基端側は,ナイロン製の管に網状体を入れ込んだ,ショア硬度74Dのチューブ構造体50となっている。なお,チューブ40及びチューブ構造体48,並びにチューブ構造体48,50は,溶着により接合されている。又,チューブ構造体50の基端側は,各種器具との接続部52となっている。接続部52を除くカテーテル31の長さは,およそ1260mmである。」

「【0028】
そして,図2(b)や図6に示すように,挿入補助具1及びカテーテル31を,カテーテル31の先端開口部(先端縁)が挿入補助具1の先端部2の基端縁を包む状態で組み合わせれば,挿入補助具1の先細部12がカテーテル31に先行し,シャフト4がカテーテル31のルーメンを通り,シャフト4の基端縁がカテーテル31の接続部52より出る,カテーテル組立体61の標準状態(挿入時の状態)となる。」

「【0035】
そして,使用者は,挿入補助具1のルーメン10,22にガイドワイヤGの基端縁を入れ,挿入補助具1を,ガイドワイヤGに沿わせ,カテーテル31のルーメン内において挿入していく。使用者は,挿入補助具1を,シャフト4の操作により,ガイドワイヤG上で,かつカテーテル31のルーメン32内で挿入していく。」

「【0039】
こうして,挿入補助具1の先細部12がカテーテル31に先行して先端開口部から露出し,挿入補助具1及びカテーテル31がカテーテル組立体61の上記標準状態となったら,使用者は,カテーテル組立体61を,ガイドワイヤGに沿わせて,先端が病変部Sの手前に達するまで挿入していく。
【0040】
このとき,挿入補助具1の先端部2は先細となっているので,カテーテル31とガイドワイヤGとの間の段差を小さくすることができ,カテーテル31の先端を安全かつ容易に導入することができる。又,挿入補助具1先端に,先端部2より柔軟なソフトチップ20が接合されるので,カテーテル組立体61がガイディングカテーテル71より先行する場合でも,血管を傷つけにくくなっている。又,カテーテル31の先端開口部に,基端側より柔軟なソフトチップ34が存在するので,同様に血管を傷つけにくい。
【0041】
加えて,挿入補助具1のソフトチップ20にマーカが設けられるので,操作者は挿入補助具1の最先端を把握することができ,挿入補助具1やカテーテル組立体61の操作を行い易い。又,先端部2における先細部12のすぐ後にマーカ14が設けられるため,マーカ14にカテーテル31の先端縁が乗るようにして,カテーテル組立体61が上記標準状態となることを把握し易く,又カテーテル31の先端がマーカ14に先行して先細部12より突出することで段差を生じ,血管を傷つける事態を防止することができる。更に,先端部2の後面24におけるシャフト4接続部にマーカを付するので,ガイドワイヤGの交換時に,カテーテル31の内面から挿入補助具1の先端部2の肉厚分だけ僅かに立ち上がる段差に注意することができるし,先端部2とシャフト4とに僅かな段差がある場合にはこの段差にも注意することができ,ガイドワイヤGの交換が容易になる。」

「【0059】
又,上記実施形態と同様の挿入補助具,カテーテル組立体,あるいはカテーテルセットを,「5 in 6 Technique」以外の施術において用い,あるいは頸動脈を始めとする冠動脈以外の生体管路に対して用いる。上記実施形態と同様の挿入補助具を,超音波診断用カテーテルを始めとする診断用デバイスが挿通されるデリバリ用カテーテルに先行するものとしたり,血栓等を吸引する吸引用カテーテルに先行するものとしたりする。」

(2)上記記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献2は,カテーテル組立体に関するものである(【0012】)。
イ カテーテル組立体61は,挿入補助具1とカテーテル31とを有する(【0028】)。
ウ カテーテル31は管状体であり,ソフトチップ34,チューブ40,チューブ構造体48,チューブ構造体50,及び接続部52を備える(【0023】,【0026】)。接続部52は,チューブ構造体50の基端に設けられている(【図5】)。
エ 挿入補助具1は,先端部2及びシャフト4を備える(【0013】)。挿入補助具1は,カテーテル31のルーメン内において挿入される(【0035】)。
オ 頸動脈も冠動脈も血管であるし,生体管路として血管は代表的なものであるから,カテーテル組立体は,血管の治療に用いられるといえる(【0059】)。
カ 挿入補助具1は,先端方向に延在するシャフト4と,シャフト4の先端に設けられ,先後に開口するガイドワイヤGのためのルーメン10を有する管状体である先端部2とを有する(【0013】,【0014】,【図1】)。
キ 標準状態において,先端部2の先細部12がカテーテル31に先行する(【0028】,【0039】)。また,カテーテルとガイドワイヤGとの間の段差を小さくすることができる(【0040】)のであるから,先端部2の基端は,カテーテル31の先端よりも基端側に配置されており,先端部2の基端は,カテーテル31のルーメン32に位置するといえる(【図2】,【0035】)。

(3)上記ア?キから,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「管状体であるソフトチップ34,チューブ40,チューブ構造体48及びチューブ構造体50並びにチューブ構造体50の基端に設けられた接続部52を備えるカテーテル31と,カテーテル31のルーメン内において挿入される先端部2及びシャフト4を備える挿入補助具1とを有する,血管の治療に用いられるカテーテル組立体61であって,
挿入補助具1は,先端方向へ延在するシャフト4と,前記シャフト4の先端に設けられ,先後に開口するガイドワイヤGのためのルーメン10を有する管状体である先端部2とを有し,
標準状態において,先端部2の先細部12がカテーテル31に先行し,かつ,先端部2の基端は,カテーテル31の先端よりも基端側に配置されており,先端部2の基端は,カテーテル31のルーメン32に位置する,カテーテル組立体。」

2 引用文献3の記載事項
引用文献3(平成22年2月12日公開)には,図面とともに,次の記載がある。

「【0009】
ところで,主に,心臓の血管に挿入して用いられる(心臓用の)ものではあるが,特許文献1?3には,それぞれ,外カテーテル本体および外カテーテルハブを有する外カテーテルと,その外カテーテル本体内に挿入し得る内カテーテル本体および内カテーテルハブを有する内カテーテルとを備えるカテーテル組立体が開示されている。これらのカテーテル組立体は,それぞれ,外カテーテルハブと内カテーテルハブとが連結(嵌合)した組立状態(以下,単に「組立状態」と言う)で,血管内に挿入される。」

「【0039】
これらの図に示すカテーテル組立体1は,頭部の血管に挿入して用いられる(頭部用の)カテーテル組立体であり,その外カテーテル2は,処置用カテーテルを治療を行う部位まで誘導するガイディングカテーテルとして用いられるものである。
【0040】
図1に示すように,カテーテル組立体1は,外カテーテル2と,内カテーテル6とを備えている。
【0041】
図2に示すように,外カテーテル2は,外カテーテル本体3と,外カテーテル本体3の先端部に設けられた柔軟性に富むソフトチップ4と,外カテーテル本体3の基端部に設けられたハブ(外カテーテルハブ)5とを有している。
【0042】
図3に示すように,内カテーテル6は,外カテーテル本体3内に挿入し得る内カテーテル本体7と,内カテーテル本体7の先端部に設けられた柔軟性に富むソフトチップ8と,内カテーテル本体7の基端部に設けられ,ハブ5に連結可能なハブ(外カテーテルハブ)9とを有している。
【0043】
ここで,図1に示すように,外カテーテル本体3内に内カテーテル本体7が挿入され,ハブ5とハブ9とが連結(嵌合)した状態が,外カテーテル2と内カテーテル6とが組立てられた状態(以下,単に「組立状態」と言う)である。この組立状態では,内カテーテル本体7の先端側が外カテーテル2のソフトチップ4の先端から突出する。」

「【0067】
外カテーテル本体3の基端には,ハブ5が装着(固定)されている。このハブ5には,ルーメン37と連通する内腔が形成されている。この内腔は,ルーメン37の内径とほぼ等しい内径を有し,ルーメン37の基端部内面に対し,段差等を生じることなく連続している。
【0068】
このようなハブ5からは,例えば,ガイドワイヤー,処置用カテーテル類(例えば,バルーンカテーテル,マイクロカテーテル,ステント,拡張用カテーテル,血栓除去カテーテル,塞栓物導入用カテーテル),内視鏡,超音波プローブ,温度センサー等の長尺物(線状体)を挿入または抜去したり,造影剤(X線造影剤),薬液,生理食塩水等の各種液体を注入することができる。また,ハブ5は,例えば,血圧測定等の際に他の器具と接続することもできる。」

「【0112】
内カテーテル本体7の基端には,ハブ9が装着(固定)されている。このハブ9には,ルーメン77と連通する内腔が形成されている。この内腔は,ルーメン77の内径とほぼ等しい内径を有し,ルーメン77の基端部内面に対し,段差等を生じることなく連続している。
【0113】
このようなハブ9からは,例えば,ガイドワイヤーを挿入または抜去したり,造影剤(X線造影剤),薬液,生理食塩水等の各種液体を注入することができる。また,ハブ9は,例えば,血圧測定等の際に他の器具と接続することもできる。」

「【0115】
また,ハブ9には,そのハブ9と外カテーテル2のハブ5とが連結した状態を保持するロック手段(固定部)として,ルアーロックコネクタ91が設けられている。すなわち,内カテーテル6は,その基端部(基端側)に,ルアーロックコネクタ91を有している。このルアーロックコネクタ91は,その内周面(内表面)に,外カテーテル2のハブ5のフランジに係合(螺合)する螺子溝を有しており,ルアーロックコネクタ91を所定方向に回転させることにより,締め込まれ,ハブ9とハブ5とが連結した状態が固定される。これにより,内カテーテル6と外カテーテル2とが相対的に回転および移動しないように,互いに固定され,術者(使用者)は,ハブ9とハブ5のうちのいずれか一方を把持して操作することで,組立状態のカテーテル組立体1を操作することができる。」


(2)上記記載事項から,引用文献3には,以下ア?ウの技術が記載されているものと認められる。
ア 内カテーテル6と外カテーテル2とを有し,血管の治療に用いられるカテーテル組立体1において,外カテーテルがハブ5を有し,内カテーテルが,内カテーテル本体7の基端に固定されてハブ5に連結可能であるとともに内部に内腔が形成されたハブ9を有し,内カテーテル本体7がハブ9から延在する(【0039】?【0043】,【0067】,【0068】,【0112】,【0113】)。
イ 外カテーテル3と内カテーテル7とが所定の位置関係にある組立状態(人体への挿入時の状態)において,ハブ9とハブ5とを連結する(【0009】,【0043】)。
ウ ハブ9とハブ5とが連結した状態が固定されることにより,内カテーテル6と外カテーテル2とが相対的に回転及び移動しないように互いに固定され,術者はハブ9とハブ5のうちのいずれか一方を把持して操作することで,組立状態のカテーテル組立体1を操作することができる(【0115】)。

(3)以上より,引用文献3には,内カテーテルが「内カテーテル本体の基端に設けられて外カテーテルハブに連結可能であるとともに内部に内カテーテルハブ内腔が形成された内カテーテルハブを備える」技術及び「外カテーテルハブと内カテーテルハブとを連結する」ことで,外カテーテル本体と内カテーテル本体とを所定の位置関係とする技術が記載されている。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
引用発明の「管状体であるソフトチップ34,チューブ40,チューブ構造体48及びチューブ構造体50」は,管状の構造体であるから,本願発明の「外カテーテル本体」に相当する。
以下同様に,「チューブ構造体50の基端に設けられた接続部52」は「前記外カテーテル本体の基端に設けられた外カテーテルハブ」に,「カテーテル31」は「外カテーテル」に,「カテーテル31のルーメン内において挿入される先端部2及びシャフト4」は「前記外カテーテル本体内に挿入可能な内カテーテル本体」に,「挿入補助具1」は「内カテーテル」に,「カテーテル組立体61」は「カテーテル組立体」に,「長手方向へ延在するシャフト4」は「先端方向へ延在するシャフト」に,「先後に開口するガイドワイヤGのためのルーメン10を有する管状体である先端部2」は「先端部および基端部にて外部に開口してガイドワイヤーを挿入可能な内カテーテル内腔が形成される管体」に,「先端部2の先細部12がカテーテル31に先行し」は「前記内カテーテル本体は,前記管体の先端が前記外カテーテル本体の先端よりも先端側に配置され」に,「先端部2の基端は,カテーテル31の先端よりも基端側に配置されており,」は「前記管体の基端が前記外カテーテル本体の先端よりも基端側に配置されており,」に,「先端部2の基端は,カテーテル31のルーメン32に位置する」は「前記管体の基端は,前記外カテーテル本体の外カテーテル内腔に位置する」にそれぞれ相当する。
また,引用発明の「血管の治療に用いられる」は,本願発明の「腕の血管から導入されて下肢の血管の治療に用いられる」と,「血管の治療に用いられる」限りにおいて共通する。
また,引用発明の「標準状態において」は,本願発明の「前記外カテーテルハブと内カテーテルハブとを連結した際に」と,「外カテーテル本体と内カテーテル本体とを所定の位置関係とする人体への挿入時の状態において」であるという限りにおいて共通する。

以上より,本願発明と引用発明とは,以下の【一致点】で一致し,【相違点1】?【相違点4】で相違する。
【一致点】
「管状の外カテーテル本体および前記外カテーテル本体の基端に設けられた外カテーテルハブを備える外カテーテルと,前記外カテーテル本体内に挿入可能な内カテーテル本体を備える内カテーテルと,を有する,血管の治療に用いられるカテーテル組立体であって,
前記内カテーテル本体は,先端方向へ延在するシャフトと,前記シャフトの先端に設けられ,先端部および基端部にて外部に開口してガイドワイヤーを挿入可能な内カテーテル内腔が形成される管体と,を有し,
外カテーテルと内カテーテルとを所定の位置関係とする人体への挿入時の状態において,前記内カテーテル本体は,前記管体の先端が前記外カテーテル本体の先端よりも先端側に配置され,かつ,前記管体の基端が前記外カテーテル本体の先端よりも基端側に配置されており,前記管体の基端は,前記外カテーテル本体の外カテーテル内腔に位置する,カテーテル組立体。」

【相違点1】
内カテーテルに関し,本願発明は,前記内カテーテル本体の基端に設けられて前記外カテーテルハブに連結可能であるとともに内部に内カテーテルハブ内腔が形成された内カテーテルハブを備えるのに対し,引用発明は,内カテーテルハブを備えない点。
【相違点2】
血管の治療に関し,本願発明は,腕の血管から導入されて下肢の血管の治療に用いられるのに対し,引用発明はそのようなものか明らかでない点。
【相違点3】
本願発明は,シャフトが内カテーテルハブから延在するのに対し,引用発明は,内カテーテルハブを備えないことから,そのような構成を有しない点。
【相違点4】
外カテーテル本体と内カテーテル本体とを所定の位置関係とする人体への挿入時の状態において,本願発明は前記外カテーテルハブと内カテーテルハブとを連結するのに対し,引用発明は,内カテーテルハブを備えないことから,これらを連結もしない点。

第6 判断
1 相違点1,3及び4について
上記相違点1,3及び4はいずれも内カテーテルハブの構成に関するものであるところ,これらをまとめて検討する。
引用文献3には,上記第4の2(3)の技術が記載されている。
ここで,引用発明と引用文献3に記載の技術とはいずれも,内カテーテルと外カテーテルとを有し血管の治療に用いられるカテーテル組立体に関するものであり,技術分野が共通する。また,引用発明と引用文献3に記載の技術とはいずれも,内カテーテル本体と外カテーテル本体とを所定の位置関係として人体へ挿入するものであり,機能の点においても共通する。
してみると,引用発明において,その使用性を向上させるため,内カテーテル本体と外カテーテル本体とを所定の位置関係に保つ手段として上記引用文献3に記載の技術を採用し,内カテーテルが「前記内カテーテル本体の基端に設けられて前記外カテーテルハブに連結可能であるとともに内部に内カテーテルハブ内腔が形成された内カテーテルハブを備え」るものとし,前記内カテーテル本体は,前記管体の先端が前記外カテーテル本体の先端よりも先端側に配置され,かつ,前記管体の基端が前記外カテーテル本体の先端よりも基端側に配置されており,前記管体の基端は,前記外カテーテル本体の外カテーテル内腔に位置することが,「前記外カテーテルハブと内カテーテルハブとを連結した際に」行われるようにする程度のこと,すなわち,上記相違点1及び4に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,引用発明において,内カテーテルに内カテーテルハブを備えるようにしたものが,内カテーテル本体のうち基端側に位置するシャフトが,「前記内カテーテルハブから」「延在する」ものとなること,すなわち上記相違点3に係る本願発明の構成を有するものとなることは自明である。
よって,引用発明について上記相違点1,3及び4に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

2 相違点2について
一般に血管の治療の技術分野において,腕の血管から導入されて下肢の血管の治療を行うことは,周知の技術である(必要であれば,拒絶査定で例示した,特開2005-110721号公報の【0005】及び Transradial Arterial Access for Coronary and Peripheral Procedures: Executive Summary by the Transradial Committee of the SCAI, Ronald P. Caputo et. al., Catheterization and Cardiovascular Interventions, 2011年,Vol.78,No.6 の830ページ右欄PERIPHERAL APPLICATIONS参照。)。
ここで,引用発明は,「頸動脈を始めとする冠動脈以外の生体管路に対して用いる」(【0059】)ものであって,カテーテル組立体の径や長さを必要に応じて設定することで,どのような血管に対しても用い得るものであることは当業者に明らかであるから,引用発明を上記周知の治療に用いるものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

3 効果について
そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明,引用文献3に記載の技術及び周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献3に記載の技術及び周知の技術に基いて,その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-02-14 
結審通知日 2020-02-17 
審決日 2020-02-28 
出願番号 特願2016-510137(P2016-510137)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 寺川 ゆりか
井上 哲男
発明の名称 カテーテル組立体および内カテーテル  
代理人 山田 牧人  

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