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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1361396
審判番号 不服2019-4265  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-02 
確定日 2020-04-16 
事件の表示 特願2014-253857「めまい改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月23日出願公開、特開2016-113410〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成26年12月16日を出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 5月11日付け :拒絶理由通知
平成30年 7月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年12月19日付け :拒絶査定
平成31年 4月 2日 :審判請求書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1?5に係る発明は、平成30年7月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1及び4は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
酵素分解ローヤルゼリーを有効成分として含有する、めまい改善剤。」
「【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のめまい改善剤を含む、めまい改善用食品、めまい改善用健康食品、めまい改善用機能性食品、めまい改善用栄養補助食品、めまい改善用サプリメント又はめまい改善用特定保健用食品。」

そして、請求項1を引用する請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「酵素分解ローヤルゼリーを有効成分として含有する、めまい改善剤を含む、めまい改善用食品、めまい改善用健康食品、めまい改善用機能性食品、めまい改善用栄養補助食品、めまい改善用サプリメント又はめまい改善用特定保健用食品。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1?5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1?3のいずれかに記載された発明及び引用文献1?4に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:ローヤルゼリー,わかさの秘密 成分情報[online],2014年7月9日,Retrieved from the Internet:
引用文献2:国際公開第2004/075660号
引用文献3:特開平3-123452号公報
引用文献4:特開2005-179235号公報

第4 引用文献の記載事項等

1 引用文献1

(1)引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(摘記1a)
「●基本情報
・・・。
このように、ローヤルゼリーは三大栄養素である炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質をはじめ、ビタミンやミネラル、さらには人間の体では合成することのできない必須アミノ酸など約40種類以上もの栄養をバランスよく含んでいます。

●・・・。

●ローヤルゼリーを摂取する際の注意点
・・・。
高い健康効果を持つローヤルゼリーはカプセル状や粉状などにされ多くの健康食品に配合されていますが、生ローヤルゼリーは、はちみつに溶かして摂取すると、はちみつの糖分がビタミンB1を消耗させてしまい、ローヤルゼリーの効果を薄めてしまうため、生ローヤルゼリーとはちみつを一緒に摂取する際には注意が必要です。
・・・。」(「ローヤルゼリーとは?」欄 ●基本情報 下2行?末行、●ローヤルゼリーを摂取する際の注意点 2-4行)

(摘記1b)
「●更年期障害の症状を改善する効果
ローヤルゼリーは、更年期障害の症状を改善する効果があります。
更年期障害とは、情勢ホルモンのバランスの乱れが原因で、のぼせやほてり、めまい、イライラなどを引き起こす病気です。
ローヤルゼリーに含まれる脳内で情報を伝達するアセチルコリンには、自律神経の乱れを調整し、イライラやめまいなどの症状を改善する効果があります。
また、ローヤルゼリーに特有の脂肪酸であるデセン酸も、更年期障害や自律神経失調症に有効であるといわれています。【3】【6】【8】」(「ローヤルゼリーの効果」欄 ●更年期障害の症状を改善する効果 1?6行)

(摘記1c)
「食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ
〇免疫力を高めたい方
〇老化を防ぎたい方
〇更年期障害でお悩みの方
〇血圧が気になる方
〇コレステロール値が気になる方
〇肝臓を健康に保ちたい方」(「食事やサプリメントで摂取できます」欄)

(2)引用文献1に記載された発明

上記(1)に摘記した事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「更年期障害の症状を改善する効果を有する、ローヤルゼリーを含む、健康食品であって、前記更年期障害とは、のぼせやほてり、めまい、イライラなどを引き起こす病気である、健康食品。」

2 引用文献2

(1)引用文献2に記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(摘記2a)
「技術分野
本発明は、ローヤルゼリーを含有する食品および薬剤に関する。

背景技術
蜜蜂の咽頭腺から分泌されるローヤルゼリーは、抗菌作用、糖尿病抑制作用、血流増加作用、成長促進作用および動脈硬化抑制作用等の、多岐にわたる薬理作用を奏することが知られており、栄養補助食品、化粧品、医薬部外品等に幅広く利用されている。特に医薬品、医薬部外品のローヤルゼリー配合剤では、滋養強壮、虚弱体質並びに肉体疲労等の栄養補給として認められている。
・・・。
効率よく薬理作用を得るために、これらの有効成分を単離、抽出、変成等の処理を施したものとして、例えば、特開平4-279597号公報には、ローヤルゼリーを酵素で分解してなるぺプチドが提案されている。」(1頁5-14行、19-22行)

(摘記2b)
「しかし、上記特開平4-279597号公報並びに特開平9-67252号公報によれば、血圧降下作用は、マウスやラットへ投与し、その作用を示す酵素阻害活性で確認したものである。また、毒性についてもマウスを用いて確認している。すなわち、ヒ卜に経口摂取させ、実際に血圧降下作用を確認しておらず、さらに、経口摂取による消化不良、肝機能低下等の副作用が生じない安全な摂取量の範囲は不明であった。
本発明は、上記問題点に鑑み、ローヤルゼリーを経口摂取して、高血圧症、および肩こりや頭痛等の自覚症状を改善し、かつ副作用が生じない安全な食品および薬剤を提供するものである。」(2頁3-12行)

(摘記2c)
「本発明におけるローヤルゼリーの処理状態は、生ローヤルゼリー、乾燥ローヤルゼリー、または両者の併用であるのが、本来含有されている全ての成分(水を除く。)を摂取できるため好ましく、これにより各種含有成分の相乗的な薬理作用を得ることができる。
さらに、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーに、不溶性蛋白質の可溶化処理、抗酸化作用を高めるための熱処理等を施してもよい。ただし、特定の有効成分を分離・抽出する等の処理を行わないのが、上記相乗的な薬理作用の理由で好ましく、また、各種処理により被処理品の価格が上昇するのを抑制できる。」(4頁11-20行)

(摘記2d)
「本発明の薬剤は、血圧降下剤としての他、肩こり、頭痛等の自覚症状に対する各種薬理作用を奏する。さらに、投与しても下痢、肝臓障害、糖尿病等の副作用が生じない。」(6頁11-13行)

(摘記2e)
「以下に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例に使用する乾燥ローヤルゼリーとして、ジェーアールジェー製薬株式会社製のローヤルゼリー凍結乾燥末(以下、FD末という。)を周意した。これは、生ローヤルゼリーを凍結乾燥した淡黄白色の粉末散である。
(実施例1)
1)対象
(1)ローヤルゼリーのFD末を摂取可能で、過敏反応、重篤な基礎疾患等を有さないこと、(2)収縮期血圧が140?159mmHgまたは拡張期血圧が90?99mmHgのいずれかに該当すること、(3)年齢30?50歳位で最大65歳であること、を満たし、臨床試験の主旨、方法等について充分な説明を行った 上で試験への参加を同意した成人30名(男性8、女性22名)。
年齢は、35歳?64歳で、平均50.3歳、標準偏差8.6歳であった。上記被験者30名を無作為に15名ずつA群およびB群の2群に分けた。
なお、上記30名には、摂取開始前に血圧以外の異常(肝臓、心臓、糖尿病等)はみられなかった。
2)摂取方法
実施は、事前観察期間2週間、摂取期間8週間、その後の観察期間(回復期間)を4週間とした。
上記FD末1.8g(生ローヤルゼリー5.4g相当)を、A群は1日1回、B群は1日2回、経口摂取させた。・・・。
・・・。
7)自覚症状及び安全性
被験者は、生活調査票に食事、アルコールおよびコーヒーの摂取、運動等の記録を記入した。担当医師は、上記のスケジュールによる各種検査の他、摂取第0週、第4週及び第8週の診察時に服用状況を確認し、診察及び上記生活調査票により自覚症状を判定した。判定は、疲労感、めまい、手足のむくみなど図9に示す19項目の自覚症状について、表6に示す5段階の判定方法で行った。ついで、摂取第0週と第8週の症状を比較し、表7に示す改善判定基準にしたがって症状の改善評価を判定した。
・・・。
上記改善評価1?4のものを有症状者とし、このうち著名改善(改善評価 1)および改善 (改善評価2) のものの割合を自覚症状改善率(%)として算出した結果を図9に示す。図9に見られるように、全19項目中、15項目で50%以上の自覚症状改善率を示した。」(6頁20行-7頁1行、7頁13-17行、15頁21行-16頁3行、17頁3-7行)

(摘記2f)


」(Fig.9)

(摘記2g)
「本発明によれば、下痢、肝臓障害、糖尿病等の副作用が現れずに高血圧症、および肩こりや頭痛等の自覚症状を改善できる。また、ローヤルゼリー中の特定の有効成分を分離・抽出したり、変成させたりする処理を行わないため、本来ローヤルゼリーに含有されている全ての含有成分による相乗的な薬理作用を得ることができる。」(18頁15-20行)

(摘記2h)
「 請求の範囲
1.ローヤルゼリーの1日当リの経口摂取量が生ローヤルゼリー換算で11gまでであるのに好適な形態を有するローヤルゼリーを含有する食品。
・・・。
4.ローヤルゼリーは、生ローヤルゼリーと、生ローヤルゼリーを凍結乾燥させた乾燥ローヤルゼリーとの少なくともいずれかである請求項1?3のいずれか記載のローヤルゼリーを含有する食品。」(19頁3-5行、11-14行)

(2)引用文献2に記載された発明

上記(1)に摘記した事項によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「疲労感、めまい、手足のむくみを含む、以下の図に示す19項目の高血圧症の患者における自覚症状について、以下の図に示される自覚症状改善率を示す、ローヤルゼリー凍結乾燥末を含有する食品。



3 引用文献3

(1)引用文献3に記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(摘記3a)
「「従来の技術」
ロイヤルゼリーは、蜜蜂のうちの、働き蜂が分泌するもので、これを食べた一匹の雌蜂だけが女王蜂になって、数千の雄蜂を相手に一日に二千個にもおよぶ産卵をすることができるため、古来から、強壮作用があるとされ、最近の数々の実験においても、老化阻止作用ないし若返り作用があることが確かめられている。また、更年期障害、特に不定愁訴(のぼせ、頭痛、心悸亢進、めまい、憂欝、腰痛、肩凝り、疲労窓、脱力感、精力減退感等として訴えられる。)に顕著な効果があることが知られている。
このロイヤルゼリーの食べ方としては、生のままが良いとされるが、そのままでは変質の恐れがあるので、それを防ぐため、従来は、冷蔵庫(5°C)で保存されていた。
さらに、生の液状のままでは食しがたいので、従来は、真空乾燥後に粉砕することにより粉末状になし、あるいは粉末にしたロイヤルゼリーをカプセルに入れたり、錠剤にしたりして服用していた。」(1頁左欄下5行-同頁右欄下5行)

(2)引用文献3に記載された発明

上記(1)に摘記した事項によれば、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「更年期障害における、のぼせ、頭痛、心悸亢進、めまい、憂欝、腰痛、肩凝り、疲労窓、脱力感、精力減退感を含む不定愁訴に効果がある、ロイヤルゼリーを含む食品。」

4 引用文献4

原査定の拒絶理由で引用された引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(摘記4a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリー又はその処理物の水溶性画分から得られる分子量10000以下の画分を有効成分として含有する気分の障害の予防、治療又は改善用組成物。
・・・。
【請求項4】ローヤルゼリーの処理物が、凍結乾燥ローヤルゼリー、ローヤルゼリー酵素分解物及びローヤルゼリーエタノール水溶液沈殿残渣からなる群から選ばれるいずれかである請求項1?3に記載の気分の障害の予防、治療又は改善用組成物。
【請求項5】気分の障害が、不眠、倦怠感、情動過多、抑うつ気分、うつ状態、いらいら感、脱力感、疲労感、頭重感、落ち込み感、不安感、焦燥感、不定愁訴、易怒性、筋緊張、集中力の喪失からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1?4に記載の気分の障害の予防、治療又は改善用組成物。」

(摘記4b)
「【0024】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。

ローヤルゼリー又はその処理物の水溶性画分から得られる特定の分子量画分
本発明の組成物及び食品は、ローヤルゼリー又はその処理物の水溶性画分から得られる特定の分子量画分を有効成分とする。
【0025】
本発明の有効成分の原料となるローヤルゼリー又はその処理物の種類は特に限定されず、所望に応じて適宜選定し得る。
・・・。
【0027】
ローヤルゼリーの処理物とは、天然のローヤルゼリーを処理又は加工したものであり、その処理の種類は特に限定されないが、具体的には、凍結乾燥ローヤルゼリー、ローヤルゼリー酵素分解物及びローヤルゼリーエタノール水溶液沈殿残渣などが挙げられる。
【0028】
凍結乾燥ローヤルゼリーとは、ローヤルゼリーを凍結した状態で真空乾燥処理したものである。
【0029】
ローヤルゼリー酵素分解物とは、ローヤルゼリーを酵素により分解して得られる分解組成物である。酵素の種類や由来は特に限定されないが、例えば、糖鎖分解酵素、蛋白質分解酵素などが挙げられる。」

(摘記4c)
「【0050】

気分の障害の予防、治療又は改善用食品
本発明の食品は、上記ローヤルゼリー又はその処理物の水溶性画分から得られる特定の分子量画分を含有してなり、気分の障害の予防、治療又は改善用食品として用いることができる。具体的には、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品などとして用いることができる。
【0051】
本発明の食品の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実種、ハチミツ酒のような酒);スプレッド類(カスタードクリームなど);ペースト類(フルーツペーストなど);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ハチミツ、プロポリス);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素)などの原料として用いることができる。
【0052】
従来のローヤルゼリー商品にローヤルゼリー又はその処理物の水溶性画分から得られる特定の分子量画分を少量または適量加えることによって、上記の目的に特化し強化した商品(特に、気分の障害の予防、治療又は改善に特に適した食品)を得ることができる。」

5 引用文献5

当審合議体が追加して引用する引用文献5(特開2008-17815号公報)には、以下の事項が記載されている。

(摘記5a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は抗更年期障害食品に関する。より詳細には、ローヤルゼリーとプラセンタエキスを有効成分とし、更年期における不定愁訴を緩和・改善し得る抗更年期障害食品に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の社会進出が当たり前となり、社会が高度化し、核家族化が進行した現在、女性は、過去に増して、種々の多くのストレスを受け、多くの悩みを抱えている。その中でも、閉経期を迎えた女性にとっての最大の悩みは更年期障害である。更年期障害は、更年期に現れる自律神経性や心因性を成因とする不定愁訴症候群であり、不快な症状をもたらし、日常生活にまで影響を及ぼす。この不定愁訴の症状としては、例えば全身倦怠、疲労感、微熱感、頭重、頭痛、のぼせ、耳鳴り、しびれ感、動悸、四肢冷感がある。・・・。」

(摘記5b)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
上記のように、本発明の抗更年期障害食品はローヤルゼリー及びプラセンタエキスを有効成分として含有することからなる。
本発明で使用されるローヤルゼリーは既に周知のように、ミツバチが王台に分泌する乳白色の物質であり、蛋白質、炭水化物、脂質などの他に種々の有用成分を含有し、女王蜂の餌となる物質である。係るローヤルゼリーは、上述のとおり王台から採取することができるが、既に多種多様の商品が市販されており係る市販品を使用することもできる。
【0007】
ローヤルゼリーは、蛋白質画分と蛋白質を含まない画分に分けることができ、通常は除蛋白処理を行った商品が販売されている。本発明者らは、ローヤルゼリーを除蛋白処理したものと除蛋白処理していないものを使用して、プラセンタエキスとの相乗効果を試験したところ、更年期における不定愁訴の改善には、除蛋白処理していないローヤルゼリーを使用する方がプラセンタエキスとの強い相乗効果を認めることができた。このことより、本発明ではローヤルゼリーとは、除蛋白処理を行っていない、ローヤルゼリー由来蛋白質成分を含有するローヤルゼリーである生ローヤルゼリーのことを示している。
【0008】
また、ローヤルゼリーの蛋白質画分の2?20%を、ローヤルゼリーの蛋白質画分の酵素分解物で置き換えることで、不定愁訴の改善の効果の発現の時期が、酵素分解物を使用しない場合の効果発現時期の20%から40%程度、置換量依存的に早まることが確認された。この効果は、上記のローヤルゼリー蛋白質画分由来の活性のあるペプチド群の吸収性が上昇することに起因すると考えられる。」

(摘記5c)
「【0029】
表3に示されるように、ローヤルゼリーの蛋白質画分の2?20%を、ローヤルゼリー蛋白質画分酵素分解物で置き換えることで、不定愁訴の改善の効果の強さ自体はローヤルゼリーと同じであったが、効果の発現時期が20?40%程度、置換量依存的に早まることが確認された。」

6 引用文献6

当審合議体が追加して引用する引用文献6(特開2005-6630号公報)には、以下の事項が記載されている。

(摘記6a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾燥ローヤルゼリー粉末又は乾燥酵素分解ローヤルゼリー粉末を含む食品に関する。」

(摘記6b)
「【0005】
【課題を解決するための手段】
第一の発明では、乾燥ローヤルゼリー粉末又は乾燥酵素分解ローヤルゼリー粉末とイソフラボンと還元麦芽糖水飴とカルシウムを配合することで、別途カルシウムを摂取する必要が無くなった。また、還元麦芽糖水飴の糖衣錠にしたことにより、低カロリーでしかも臭いのマスキングを実現できた。」

7 引用文献7

当審合議体が追加して引用する引用文献7(特開平8-59499号公報)には、以下の事項が記載されている。

(摘記7a)
「【0020】また、ローヤルゼリーをそのまま経口摂取した場合、ローヤルゼリーの蛋白質は生体内の消化酵素では分解されにくく、消化、吸収もされにくいのであるが、本発明の感染防御機能増強剤は、ローヤルゼリー中の蛋白質を予め酵素分解して得たペプチドを有効成分とするので、体内で消化、吸収されやすく、上記感染防御機能増強効果が高められると考えられる。」

8 引用文献8

当審合議体が追加して引用する引用文献8(特開2004-131407号公報)には、以下の事項が記載されている。

(摘記8a)
「【0021】
この結果から、ローヤルゼリー酵素分解物の水溶性画分も、ローヤルゼリー及びローヤルゼリー水溶性画分と同様に不動時間を短縮し、抑うつ気分又はうつ状態を緩和する作用を有することが認められた。」

9 引用文献9

当審合議体が追加して引用する引用文献9(特開2005-104890号公報)には、以下の事項が記載されている。

(摘記9a)
「【請求項1】
ローヤルゼリー及び/又はローヤルゼリー酵素分解物を有効成分として含有する更年期における交感神経性の血管異常収縮改善用組成物。」

(摘記9b)
「【0014】
本発明のローヤルゼリーとしては、女王蜂を育てるために蜜蜂が分泌するものを収集したものを用いることもでき、また一般に市販されているものを用いることもできる。本発明のローヤルゼリーとしては、ローヤルゼリーをそのまま用いても良く、或いは、ローヤルゼリーを適宜前処理して得た乾燥物を用いても良い。
【0015】
ローヤルゼリー酵素分解物
本発明におけるローヤルゼリー酵素分解物とは、上記ローヤルゼリーを酵素により分解して得られる分解組成物である。」

(摘記9c)
「【0023】
本発明の組成物には、上記ローヤルゼリー及び/又はローヤルゼリー酵素分解物をそのまま用いることもでき、或いは、適宜精製処理又は変性処理を行ったものを用いることもできる。例えば、ローヤルゼリー酵素分解物であれば、上記酵素処理で得られた溶液をそのまま用いることもでき、或いは、上記酵素処理溶液を蛋白変性処理(例えば、熱処理)して蛋白質分解酵素を失活し、必要に応じてこれを乾燥粉末化(例えば、凍結乾燥)したものとして使用することもできる。また、その際、当該分解物に含まれるペプチドを、必要に応じて、生理的に許容しうる各種無機酸または有機酸との塩、例えば、塩酸塩等としておくこともできる。」

10 引用文献10

当審合議体が追加して引用する引用文献10(ローヤルゼリーの商品一覧[online],2012年1月18日,Retrieved from the Internet: )には、以下の事項が記載されている。

(摘記10a)
「ローヤルゼリーの商品一覧
・・・。
山田養蜂場の
ローヤルゼリー

酵素分解ローヤルゼリー キング 送料無料

酵素分解ローヤルゼリーを1粒中に720mg(生換算)含有。人気NO.1商品です。」(1?9行)

第5 対比・判断

1 引用発明1に基づく進歩性の対比・判断

(1)対比

本願発明のうち「めまい改善用健康食品」と、引用発明1とを対比する。
引用発明1における、「ローヤルゼリー」と、本願発明における、「酵素分解ローヤルゼリー」とは、「ローヤルゼリー」である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「ローヤルゼリーを有効成分として含有する、健康食品。」

<相違点1-1>
本願発明は、上記有効成分を含有する「めまい改善剤を含む」、「めまい改善用」健康食品であるのに対し、引用発明1は、「更年期障害の症状を改善する効果を有する」上記有効成分を含有する「健康食品」であって、「前記更年期障害とは、のぼせやほてり、めまい、イライラなどを引き起こす病気である」点。

<相違点1-2>
本願発明では、ローヤルゼリーが、「酵素分解ローヤルゼリー」であるのに対し、引用発明1では、その点について特定されない点。

(2) 判断

ア 相違点1-1について

引用文献1には、ローヤルゼリーには、更年期障害の症状を改善する効果があると記載され、また、更年期障害には、「めまい」もその症状として含まれることが記載されている。
そうすると、引用文献1の記載に接した当業者は、ローヤルゼリーを摂取すると、更年期障害の症状の一つである「めまい」も改善されることを、容易に予測できたものといえる。
したがって、引用発明1に含まれるローヤルゼリーを、更年期障害の症状の一つである「めまい」を改善するための剤とし、引用発明1に係る健康食品を、めまい改善用健康食品として、相違点1-1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

イ 相違点1-2について

上記第4の4において摘記された、引用文献4に記載される技術事項に加えて、上記第4の5?10において摘記された、引用文献5?10に記載の技術事項によれば、本願出願当時、食品分野におけるローヤルゼリーとして、凍結乾燥粉末ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーなどが広く用いられており、特に、酵素分解ローヤルゼリーは、蛋白質が酵素分解されペプチドとなっているため、消化吸収されやすいことは周知であった。
そうすると、引用発明1において、ローヤルゼリーとして、かかる周知の酵素分解ローヤルゼリーを用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。

ウ 本願発明の効果について

本願発明が有する、めまいを改善するという効果は、上記アにおいて説示したように、引用文献1の記載(摘記1b)から予測可能なものである。
また、本願明細書には、酵素分解ローヤルゼリーと、酵素分解されていないローヤルゼリーとを比較した試験結果は記載されておらず、本願発明における、酵素分解ローヤルゼリーを用いたことによる効果は、酵素分解ローヤルゼリーは消化吸収が良いという周知の知見などから、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

エ 小括

以上によれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載の技術事項及び本願出願時の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明2に基づく進歩性の対比・判断

(1)対比

本願発明のうち「めまい改善用食品」と、引用発明2とを対比する。
引用発明2における、「ローヤルゼリー凍結乾燥末」と、本願発明における、「酵素分解ローヤルゼリー」とは、「ローヤルゼリー」である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「ローヤルゼリーを有効成分として含有する、食品。」

<相違点2-1>
本願発明は、上記有効成分を含有する「めまい改善剤を含む」、「めまい改善用」食品であるのに対し、引用発明2は、「疲労感、めまい、手足のむくみを含む、以下の図に示す19項目の高血圧症の患者における自覚症状について、以下の図に示される自覚症状改善率を示す」、上記有効成分を含有する「食品」である点。


<相違点2-2>
本願発明では、ローヤルゼリーが、「酵素分解ローヤルゼリー」であるのに対し、引用発明2では、「ローヤルゼリー凍結乾燥末」である点。

(2) 判断

ア 相違点2-1について

引用文献2には、ローヤルゼリーが、疲労感、めまい、手足のむくみを含む19項目の高血圧症の患者における自覚症状について、図9に示される自覚症状改善率を示したことが記載され、図9には、めまいの自覚症状について、50%以上の自覚症状改善率を示したことが記載されている。
そうすると、引用文献2には、ローヤルゼリーを摂取するとめまいの自覚症状が改善されることが、具体的な実施例の裏付けをもって記載されているといえる。
したがって、引用発明2に含まれるローヤルゼリーを、高血圧症の患者における自覚症状である「めまい」を改善するための剤とし、引用発明2に係る食品を、めまい改善用食品として、相違点2-1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

イ 相違点2-2について

引用文献2には、背景技術として、効率よく薬理作用を得るために、ローヤルゼリーを酵素で分解したペプチドを用いた例が記載されている(摘記2a)。
また、引用文献2には、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーに、不溶性蛋白質の可溶化処理、抗酸化作用を高めるための熱処理等を施してもよいが、特定の有効成分を分離・抽出する等の処理を行わないことが好ましい旨が記載されるものの(摘記2c)、引用文献2のその他の記載を参酌しても、ローヤルゼリーとして、酵素分解ローヤルゼリーが除外されていることをうかがわせる記載はない。
そして、上記1(2)イにおいて説示したように、本願出願当時、食品分野におけるローヤルゼリーとして、凍結乾燥粉末ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーなどが広く用いられており、特に、酵素分解ローヤルゼリーは、蛋白質が酵素分解されペプチドとなっているため、消化吸収されやすいことが周知であった。
そうすると、引用発明2において、ローヤルゼリー凍結乾燥末に代えて、かかる周知の酵素分解ローヤルゼリーを用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。

ウ 本願発明の効果について

本願発明が有する、めまいを改善するという効果は、上記アにおいて説示したように、引用文献2の記載(摘記2e,f)から予測可能なものである。
また、上記1(2)ウで説示した理由と同様の理由により、本願発明における、酵素分解ローヤルゼリーを用いたことによる効果は、酵素分解ローヤルゼリーは消化吸収が良いという周知の知見などから、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

エ 小括

以上によれば、本願発明は、引用文献2に記載された発明、引用文献4に記載の技術事項及び本願出願時の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 引用発明3に基づく進歩性の対比・判断

(1)対比

本願発明のうち「めまい改善用食品」と、引用発明3とを対比する。
引用発明3における、「ロイヤルゼリー」と、本願発明における、「酵素分解ローヤルゼリー」とは、「ローヤルゼリー」である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「ローヤルゼリーを有効成分として含有する、食品。」

<相違点3-1>
本願発明は、上記有効成分を含有する「めまい改善剤を含む」、「めまい改善用」食品であるのに対し、引用発明3は、「更年期障害における、のぼせ、頭痛、心悸亢進、めまい、憂欝、腰痛、肩凝り、疲労窓、脱力感、精力減退感を含む不定愁訴に効果がある」上記有効成分を含有する「食品」である点。

<相違点3-2>
本願発明では、ローヤルゼリーが、「酵素分解ローヤルゼリー」であるのに対し、引用発明3では、その点について特定されない点。

(2) 判断

ア 相違点3-1について

引用文献3には、「従来の技術」欄に、ロイヤルゼリーには、更年期障害、特に不定愁訴(のぼせ、頭痛、心悸亢進、めまい、憂欝、腰痛、肩凝り、疲労窓、脱力感、精力減退窓等として訴えられる。)に顕著な効果があることが知られている、と記載されている(摘記3a)。
そうすると、引用文献3の記載に接した当業者は、ロイヤルゼリーを摂取すると、更年期障害の不定愁訴の症状の一つである「めまい」も改善されることを、容易に予測できたものといえる。
したがって、引用発明3に含まれるロイヤルゼリーを、更年期障害の不定愁訴の症状の一つである「めまい」を改善するための剤とし、引用発明3に係る食品を、めまい改善用食品として、相違点3-1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

イ 相違点3-2について

上記1(2)イにおいて説示したように、本願出願当時、食品分野におけるローヤルゼリーとして、凍結乾燥粉末ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーなどが広く用いられており、特に、酵素分解ローヤルゼリーは、蛋白質が酵素分解されペプチドとなっているため、消化吸収されやすいことが周知であったことから、引用発明3において、ロイヤルゼリーとして、かかる周知の酵素分解ローヤルゼリーを用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。

ウ 本願発明の効果について

本願発明が有する、めまいを改善するという効果は、上記アにおいて説示したように、引用文献3の記載(摘記3a)から予測可能なものである。
また、上記1(2)ウで説示した理由と同様の理由により、本願発明における、酵素分解ローヤルゼリーを用いたことによる効果は、酵素分解ローヤルゼリーは消化吸収が良いという周知の知見などから、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

エ 小括

以上によれば、本願発明は、引用文献3に記載された発明、引用文献4に記載の技術事項及び本願出願時の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 請求人の主張について

請求人は、本願発明の進歩性について、平成31年4月2日提出の審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、「本願発明の本質を理解していない当業者は、「めまい改善剤の提供」という課題に対して、めまい改善という用途について記載も示唆もされていない引用文献4を参酌して、引用文献1-3に記載のローヤルゼリー等を引用文献4に記載のものに置き換える理由がありません。よって、当業者にとって、引用文献1-3を引用文献4と組み合わせる動機付けがないといえます。」(審判請求書6頁10-14行)と主張している。
しかしながら、食品分野におけるローヤルゼリーとして、消化吸収が良い酵素分解ローヤルゼリーは、凍結乾燥粉末ローヤルゼリー等と同様に広く用いられているものであるから、引用文献4にめまい改善という用途が記載されていなくても、引用発明1?3において、有効成分として、酵素分解ローヤルゼリーを用いることは当業者が容易に想到することができたものであることは、上記1(2)イ、2(2)イ及び3(2)イにおいて説示したとおりである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-14 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-05 
出願番号 特願2014-253857(P2014-253857)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 基章  
特許庁審判長 藤原 浩子
特許庁審判官 穴吹 智子
渡邊 吉喜
発明の名称 めまい改善剤  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 坂西 俊明  
代理人 吉住 和之  
代理人 阿部 寛  

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