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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1361398
審判番号 不服2019-4729  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-09 
確定日 2020-04-17 
事件の表示 特願2015- 39232「二重容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 5日出願公開、特開2016-159935〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月27日の出願であって、平成30年5月29日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成30年8月3日に手続補正書及び意見書が提出され、平成31年1月23日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成31年4月9日に拒絶査定不服審判が請求され、令和元年10月7日付けで拒絶理由が通知され、令和元年11月22日に意見書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、平成30年8月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「内容物が充填され、該内容物の注出に伴って減容可能な内層体と容器の外観形状を形作る外層体とからなる容器本体と、この容器本体の口頚部にねじ止め装着され、注出筒を通して内容物を注出する注出栓と、を備えた二重容器であって、
前記容器本体の口頚部の基端部に、外方へ向けて膨出する少なくとも1つの凸部を設け、
前記注出栓の側壁に、該注出栓の装着姿勢で前記凸部を適合させて該注出栓の装着姿勢態をそのまま維持する開口または凹部を設けたことを特徴とする二重容器。」

2 引用例
(1) 引用例1
令和元年10月7日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-31921号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を充填する内層体と、この内層体を収納する外層体からなる二重容器に装着される注出キャップ及び、当該注出キャップ付き二重容器に関するものである。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明である、注出キャップ付き二重容器を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の形態である、注出キャップ10付きデラミボトル1である。
【0020】
デラミボトル1は、お醤油等の液状の調味料に代表される内容物Cが充填される空間(以下、「充填空間」)S_(1)を形成し内容物Cの減少によって減容可能な合成樹脂製の内層体2と、この内層体2を収納する空間(以下、「収納空間」)S_(2)を形成し変形及び復元の可能な合成樹脂製の外層体3とを有し、内層体2及び外層体3の少なくとも一部が接着等により固定されている。なお、本形態では、内層体2の底部2bが外層体3の底部3bに形成されたピンチラインで挟持されることで固定されているが、例えば、内層体2の側面と外層体3の側面との一部を軸線方向に沿って線状に固定することも可能である。」

(ウ)「【0022】
符号11は、図2に示すように、外層体3の口部3aに装着される装着筒11aを有し、キャップ軸線(ボトル軸線)Oに直交する向きに突出するノズル11bが形成された本体である。なお、本形態において、装着筒11aは、同図に示すように、口部3aに設けたおねじ部に螺合するめねじ部を有し、口部3aに対してねじ嵌合するが、本発明に従えば、凹凸や段差等による引っ掛かりによって固定される、所謂、アンダーカット嵌合とすることもできる。
【0023】
本体11は、装着筒11aに取り囲まれた天面11fに下方に向かって垂下する筒状部11cを有し、その内側には、当該筒状部11cの下端をノズル11bの先端に連通させることで注出口A_(1)を形成する注出路R_(1)が形成されている。加えて、本体11の内側には、筒状部11cが垂下する天面11fの周囲の一部を注出口A_(1)と対向する外側面に連通させることで外気導入口A_(2)を形成する通気路R_(3)が形成されている。」

(エ)「【0032】
なお、図1(a)に示す符号14は、デラミボトル1の注出口(内層体2の開口部)に対して取り外し可能に嵌合保持されている中栓である。中栓14は出荷当初、同図に示すように、注出キャップ10とデラミボトル1とに介在することで、当該デラミボトル1を封止する。これにより、使用前の段階では、中栓14を取り付けたままの状態とすることで、流通時等での漏れを防止し、使用の際には、注出キャップ10をデラミボトル1から取り外した後、中栓14を外してから再度注出キャップ10を取り付けることで、内容物Cの注出が可能となる。」

(2)引用例1に記載された発明
上記(1)の摘記事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「内容物Cが充填される空間S_(1)を形成し、内容物Cの減少によって減容可能な合成樹脂製の内層体2と、この内層体2を収納する空間S_(2)を形成し変形及び復元の可能な合成樹脂製の外層体3とを有し、
外層体3の口部3aに装着される装着筒11aを有し、装着筒11aは、口部3aに設けたおねじ部に螺合するめねじ部を有し、口部3aに対してねじ嵌合され、その内側には、注出口A_(1)を形成する注出路R_(1)が形成されている本体11を備えた注出キャップ付き二重容器。」

(3)引用例2
令和元年10月7日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭63-22356号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「2.特許請求の範囲
(1)容器3のストックの間における容器3からの取外しを防止する手段と、容器3の内容物の使用後における再充填を防止する手段を備えたことを特徴とする容器用アダプタ。
(2)容器3の首部2と螺合するスカート部7と、容器3の内容物の使用前のストック状態において容器3の首部2の歯6aと協働する歯15を内周に備えてアダプタ1の容器3からの取外しを防止するため底部に設けられた除去可能な保護バンド11と、保護バンド11の上方において配置され、保護バンド11を取除いてアダプタを完全に締付けた際に前記首部2の歯6aと協働してアダプタ1の容器3からの取外しを防止するための歯12を備えたスリーブ10とを有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の容器用アダプタ。」(1頁左欄4?末行)

(イ)「内容物を取出す際には保護バンド11を破壊してアダプタ1を緩め、保護蓋14を取除いた後、第4図に示したようにアダプタ1をそのスリーブ10の歯12がガラス容器3の環状部6の歯6aと協働するまで締付ける。この際保護バンド11は消失しているので、アダプタ1は首部2に対しさらに締付けを行うことができる。同図に示した締付け状態では首部2はリップ13により押付けられ、これらの部分間に気密性が得られる。
第5図に示したように、アダプタ1を締付ける際、スリーブ10の歯12は保護バンド11の歯15と同様に横倒しとなって環状部6に対し相対回転可能であるが、緩めるにはスリーブ10の基部を破壊しなければならない。」(3頁左上欄18行?右上欄11行)

3 本願発明と引用発明の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「内容物C」、「内層体2」、「外層体3」、「口部3a」、「注出キャップ付き二重容器」は、その作用及び構造から、それぞれ本願発明1の「内容物」、「内層体」、「外層体」、「口頚部」、「二重容器」に相当する。

(イ)引用発明の「内容物Cが充填される空間S_(1)を形成し、内容物Cの減少によって減容可能な合成樹脂製の内層体2」は、本願発明の「内容物が充填され、該内容物の注出に伴って減容可能な内層体」に相当する。

(ウ)引用発明の「この内層体2を収納する空間S_(2)を形成し変形及び復元の可能な合成樹脂製の外層体3」は、容器の最外層を形成するものであって、外観形状を形作るといえるから、本願発明の「容器の外観形状を形作る外層体」に相当する。

(エ)引用発明の「内層体2」と「外層体3」は、合わせて本願発明の「容器本体」に相当する。

(オ)引用発明の「外層体3の口部3aに装着される装着筒11aを有し、装着筒11aは、口部3aに設けたおねじ部に螺合するめねじ部を有し、口部3aに対してねじ嵌合され、その内側には、注出口A_(1)を形成する注出路R_(1)が形成されている本体11」は、注出口A_(1)を形成する注出路R_(1)が形成されており、注出路R_(1)が形成されている箇所は筒状であると表現できるものであるから、注出筒を通して内容物を注出しているといえる。したがって、引用発明の当該事項は、本願発明の「この容器本体の口頚部にねじ止め装着され、注出筒を通して内容物を注出する注出栓」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「内容物が充填され、該内容物の注出に伴って減容可能な内層体と容器の外観形状を形作る外層体とからなる容器本体と、この容器本体の口頚部にねじ止め装着され、注出筒を通して内容物を注出する注出栓と、を備えた二重容器。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明は、「前記容器本体の口頚部の基端部に、外方へ向けて膨出する少なくとも1つの凸部を設け、前記注出栓の側壁に、該注出栓の装着姿勢で前記凸部を適合させて該注出栓の装着姿勢態をそのまま維持する開口または凹部を設け」ているのに対して、引用発明は、そのような凸部及び開口又は凹部を有していない点。

(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2(上記2(3)の摘記事項)には、内容物を取出す際には保護バンド11を破壊してアダプタ1を緩め、保護蓋14を取除いた後、アダプタ1のスリーブ10の歯12とガラス容器の環状部6の歯6aとを協同させることで、アダプタ1を緩めることができなくする再充填防止手段が記載されている。
そして、引用文献2の「アダプタ1」は、本願発明の「注出栓」に相当し、同様に「ガラス容器」は「容器本体」、「ガラス容器の環状部6の歯6a」は「容器本体の口頚部の基端部に、外方へ向けて膨出する少なくとも1つの凸部」に、「アダプタ1のスリーブ10の歯12」は「前記注出栓の側壁に、該注出栓の装着姿勢で前記凸部を適合させて該注出栓の装着姿勢態をそのまま維持する開口または凹部」に相当する。ゆえに、引用例2の上記記載事項を本願発明の文言に置き換えて整理すると、引用文献2には、「再充填防止手段として、容器本体の口頚部の基端部に、外方へ向けて膨出する少なくとも1つの凸部を設け、注出栓の側壁に、該注出栓の装着姿勢で前記凸部を適合させて該注出栓の装着姿勢態をそのまま維持する開口または凹部を設ける点」が記載されているといえる。
引用発明は、使用の際には、注出キャップ10をデラミボトル1から取り外した後、中栓14を外してから再度注出キャップ10を取り付けることにより内容物の注出を可能とするもの(【0032】)であり、引用例2は、アダプタ1を緩め、保護蓋14を取除いた後、アダプタ1を取り付けるものであるから、同様の使用形態のものであって、引用発明においても、必要に応じて再充填を防止することは当然の課題であるから、そのために、上記引用例2記載の事項を適用して上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである

<本願発明の奏する効果について>
そして、本願発明の効果は、引用発明及び引用例2記載の事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

<請求の主張について>
ア 請求人は、令和元年11月22日の意見書で、以下のとおり主張する。
(ア)引用文献2のように、締付け方向への回転が可能なものにあっては、アダプタの締付け度合いが使用者によって変わることになるので、例えば、リップ13がしっかりと押圧されていない状態でアダプタ1が首部2に装着されている場合には、これらの部分間では気密性を保つことができなくなることも懸念されます。
これに対して本願発明は、容器本体の口頚部の基端に設けた凸部を、注出栓の側壁に設けた開口又は凹部に適合させると、これらは回り止め機構として機能するため、注出栓は、緩める方向へはもちろん、締付ける方向へも回転させることができなくなるので、注出栓は、口頚部に対して常に一定の位置で固定されることになり、容器本体の口頚部は注出栓によって確実に密封することができるのであって、この点を比較すると、本願発明と引用文献2とでは、効果の面でも大差があるのは明らかです。
(イ)引用文献1は、その段落(0032)に記載されているように、使用の際には、注出キャップ10をデラミボトル1から取り外した後、中栓14を外してから再度注出キャップ10を取り付けることにより内容物の注出を可能とするものであり、引用文献2に記載の事項を引用文献1に適用した場合、中栓14を取り外すことができず、内容物Cの注出は不可能となるのは明らかです。
(ウ)引用文献1は、外層体の口部に形成した貫通孔を通して内層体との間に空気を効果的に導入することを目的としており、内容物の注出に当たっては、注出キャップ10をデラミボトル1から一旦取り外すことが前提になるので、引用文献1は、もともと内容物の再充填を防止することまでは想定していないのは明らかです。

イ しかし、当該主張は、下記のとおり、いずれも採用できない。
(アについて)本願発明の「該注出栓の装着姿勢態をそのまま維持する」とは、本願明細書の【0010】の「注出栓の容器本体の口頚部への装着姿勢にて注出栓に形成された開口または凹部が、比較的剛性の高い容器本体の口頚部に形成された凸部と嵌合して注出栓の口頚部に対する装着状態がそのまま維持されるため、注出栓の口頚部からの取り外しを阻止でき、ひいては不正開封、再充填を防止できる。」との記載も参酌すると、注出栓の口頚部からの取り外しを阻止するものといえるが、締付け方向への回転を阻止することをも特定しているとはいえない。
そうすると、当該請求人の主張は、本願発明の発明特定事項に基づかない主張であるから、採用できない。
仮に、本願発明が締付け方向への回転を阻止することを特定しているとしても、本体11は外層体3にねじ嵌合するものであるから、通常、締め付けの終端が存在し、それ以上締め付けできない状況で本体11を外装体3に固定するものであるから、引用発明も締付け方向への回転は阻止されているといえ、この点で上記引用文献2記載事項との相違はない。
(イについて)引用文献2の「アダプタ1」は、「保護蓋14」を取り除いた後に歯12とガラス容器の歯6aとを協同するまで締め付けるものである(3頁左上欄18行?右上欄11行)から、引用発明と同様の使用形態であり、請求人が主張するように引用文献1に適用した場合、中栓14を取り外すことができないということはない。
(ウについて)引用文献2に「アダプタ1」をガラス容器から取り外して「保護蓋14」を取り除くもの(3頁左上欄18行?右上欄11行)において、再充填を防止することが記載されていることからも、引用文献1が、注出キャップ10をデラミボトル1から一旦取り外すことを前提としていることをもって、もともと内容物の再充填を防止することを想定していないといえないことは明らかである。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-18 
結審通知日 2020-02-19 
審決日 2020-03-04 
出願番号 特願2015-39232(P2015-39232)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 佑果  
特許庁審判長 高山 芳之
特許庁審判官 中村 一雄
佐々木 正章
発明の名称 二重容器  
代理人 特許業務法人銀座マロニエ特許事務所  

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