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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1361444
異議申立番号 異議2019-700485  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-18 
確定日 2020-02-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6439240号発明「加飾シート及び加飾樹脂成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6439240号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。 特許第6439240号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6439240号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成25年9月27日を出願日とする出願であって、平成30年11月30日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年12月19日)がされた。
本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和元年6月18日 :特許異議申立人太田千惠子(以下「申立人」という。)による請求項1?10に係る特許に対する特許異議の申立て(以下本件特許異議申立書を、「申立書」という。)
令和元年9月27日付け :取消理由通知
令和元年10月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(なお、令和元年11月12日付けで「訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)」を、期間を指定しておこなったが、申立人からは当該指定した期間内において何らの応答もなかった。)

第2 訂正の適否についての判断
1. 訂正の内容
上記令和元年10月31日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
・訂正事項1
本件訂正前の請求項1の
「前記加飾シートは、少なくとも、基材層と、金属薄膜層とが積層された積層体からなり、
前記金属薄膜層の上に、マット剤を含む表面保護層を有し、
前記積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下であり、」
という記載を、
「前記加飾シートは、少なくとも、基材層と金属薄膜層と、マット剤を含む表面保護層とがこの順で積層された積層体からなり、
前記積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下であり、」と訂正する。(請求項1を引用する請求項2?10も同様に訂正する。)

2. 一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 一群の請求項
本件訂正前の請求項2?10は、直接あるいは間接に請求項1を引用するものであって、訂正事項1による請求項1の訂正によって、連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項〔1?10〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2) 訂正事項1について
訂正事項1は、マット剤を含む表面保護層が、加飾シートの積層体の一部として含まれる層であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件特許明細書には「本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と金属薄膜層2とを有する積層構造を有する。本発明の加飾シートにおいて、金属薄膜層2の上には、加飾シートの耐傷付き性、耐候性を向上させることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層を設けてもよい。」(【0018】)という記載があり、かつ、「(他の添加成分)
表面保護層4を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層4に備えさせる所望の物性に応じて、または本発明の上記(1)?(4)の要件を充足する目的で、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば・・・マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。」(【0040】)という記載があるから、訂正事項1は新規事項を追加するものではない。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかである。

3. 訂正についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合する。
よって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件発明
上記第2に示したとおり、本件訂正請求は認められたから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも、成形樹脂層と、加飾シートとが積層された加飾樹脂成形品であって、
前記加飾シートの基材層が前記成形樹脂層側に位置するようにして、前記加飾シートが積層されてなり、
前記加飾シートは、少なくとも、基材層と、金属薄膜層と、マット剤を含む表面保護層とがこの順で積層された積層体からなり、
前記積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体のヘイズ値が20%以上、80%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、加飾樹脂成形品。
【請求項2】
前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、請求項1に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項3】
前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、請求項1または2に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項4】
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、20%以上、80%以下である、請求項1?3のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項5】
前記金属薄膜層が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属により形成されている、請求項1?4のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項6】
前記金属薄膜層の光学濃度(OD)値が、0.3?1.8である、請求項1?5のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項7】
前記金属薄膜層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する、請求項1?6のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項8】
前記基材層と前記金属薄膜層との間に接着層を有する、請求項1?7のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項9】
前記金属薄膜層と前記表面保護層との間に透明フィルム層を有する、請求項1?8のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項10】
前記加飾樹脂成形品は、全光線透過率が1%以上、30%以下であり、ヘイズ値が20%以上、80%以下である、請求項1?9のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
本件発明1?10に対して、当審が令和元年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



・請求項1?10について
備考
本件特許の請求項1の
「前記加飾シートは、少なくとも、基材層と、金属薄膜層とが積層された積層体からなり、
前記金属薄膜層の上に、マット剤を含む表面保護層を有し、」
という記載は、「マット剤を含む表面保護層」が、上記「加飾シート」の「少なくとも、金属層と、金属薄膜層とが積層された積層体」の一部として含まれる「層」であるのか、あるいは、当該「積層体」に含まれない「層」であるのかが明確はない。
よって、請求項1と請求項1を引用する請求項2?10にそれぞれ係る発明は、明確であるとはいえない。

第5 当審の判断
上記第2に示したように、本件訂正が認められたことによって、本件発明1?10は、「マット剤を含む表面保護層」が、「加飾シート」の積層体の一部として含まれる層であることが明確となったから、上記第4に示した当審が通知した取消理由は、理由のないものとなった。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
(以下、本件特許異議申立書に申立人が添付して提出した甲第1号証等を、以下「甲1」等という。)

1. 採用しなかった特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)
申立人は、大要、本件特許の請求項1?10に係る発明は、甲1ないし甲7、あるいは、甲1ないし甲10に記載された発明あるいは事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたされたものであるから、それらの特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである、と主張している。

2. 当審の判断
(1) 本件発明1について
本件発明1は、「少なくとも、成形樹脂層と、加飾シートとが積層された加飾樹脂成形品であって、前記加飾シートの基材層が前記成形樹脂層側に位置するようにして、前記加飾シートが積層されてなり、前記加飾シートは、少なくとも、基材層と、金属薄膜層と、マット剤を含む表面保護層とがこの順で積層された積層体(当審注:以下「積層体A」という。)」からなるものにおいて、積層体Aの全光線透過率が1%以上、30%以下であり、積層体Aを30%加熱伸長した際の積層体Aの全光線透過率が、積層体Aを加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、積層体Aのヘイズ値が20%以上、80%以下であり、積層体Aを30%加熱伸長した際の積層体Aのヘイズ値が、積層体Aを加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値としたものである。
一方、申立人が提出した甲1?10には、上記積層体Aに相当するものにおいて、全光線透過率とヘイズ値を上記本件発明1に特定されるとおりのものとすることの記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、積層体Aの全光線透過率とヘイズ値を、上記のとおりのものとすることで、本件特許明細書の段落【0013】?【0017】に記載されたような格別な作用効果を奏するものである。
そうすると、本件発明1は、甲1ないし甲7、あるいは、甲1ないし甲10に記載された発明あるいは事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2) 本件発明2?10について
本件発明2?10は、本件発明1を直接あるいは間接に引用するものである。そうすると、本件発明2?10は、本件発明1の全ての発明特定事項を備え、さらに別の発明特定事項が付加されて限定された発明であるところ、本件発明1は、上記(1)に示したように、甲1ないし甲7、あるいは、甲1ないし甲10に記載された発明あるいは事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2?10も甲1ないし甲10に記載された発明あるいは事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1?10は、甲1ないし甲7、あるいは、甲1ないし甲10に記載された発明あるいは事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、本件発明1?10の各々に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことはできない。

第7 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?10に係る特許は、令和元年9月27日付け取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、成形樹脂層と、加飾シートとが積層された加飾樹脂成形品であって、
前記加飾シートの基材層が前記成形樹脂層側に位置するようにして、前記加飾シートが積層されてなり、
前記加飾シートは、少なくとも、基材層と、金属薄膜層と、マット剤を含む表面保護層とがこの順で積層された積層体からなり、
前記積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体のヘイズ値が20%以上、80%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、加飾樹脂成形品。
【請求項2】
前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、請求項1に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項3】
前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、請求項1または2に記載の加飾樹脂成形品。
【請求項4】
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、20%以上、80%以下である、請求項1?3のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項5】
前記金属薄膜層が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属により形成されている、請求項1?4のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項6】
前記金属薄膜層の光学濃度(OD)値が、0.3?1.8である、請求項1?5のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項7】
前記金属薄膜層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する、請求項1?6のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項8】
前記基材層と前記金属薄膜層との間に接着層を有する、請求項1?7のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項9】
前記金属薄膜層と前記表面保護層との間に透明フィルム層を有する、請求項1?8のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
【請求項10】
前記加飾樹脂成形品は、全光線透過率が1%以上、30%以下であり、ヘイズ値が20%以上、80%以下である、請求項1?9のいずれかに記載の加飾樹脂成形品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-13 
出願番号 特願2013-202679(P2013-202679)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 久保 克彦
石井 孝明
登録日 2018-11-30 
登録番号 特許第6439240号(P6439240)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 加飾シート及び加飾樹脂成形品  
代理人 立花 顕治  
代理人 立花 顕治  
代理人 田中 順也  
代理人 松井 宏記  
代理人 水谷 馨也  
代理人 松井 宏記  
代理人 田中 順也  
代理人 山田 威一郎  
代理人 山田 威一郎  
代理人 水谷 馨也  
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