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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1361453
異議申立番号 異議2019-700404  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-20 
確定日 2020-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6427540号発明「ゲル状の洗浄料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6427540号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6427540号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6427540号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成24年12月22日(優先権主張 平成23年12月28日)を出願日とする特願2012-280367号の一部を数次の分割を経てさらに新たな特許出願として平成28年8月8日に出願されたものであって、平成30年11月2日にその特許権の設定登録がされ、同年11月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和1年5月20日に特許異議申立人 嶋崎 孝明(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年8月21日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和1年11月18日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)をし、本件訂正請求に対して、申立人は、同年12月27日付けで意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、一群の請求項[1-6]についてするものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を表す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された
「前記アルコールの使用量が全体の2?50重量%の範囲であり」を、
「前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり」
に訂正する。(請求項1を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に記載された
「グリコイド6C」を
「グリロイド6C」
に訂正する。(請求項1及び5を引用する請求項2?4及び6も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に記載された
「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」
を削除する。
(請求項3を引用する請求項4?6も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0008】及び【0011】に記載された
「前記アルコールの使用量が全体の2?50重量%の範囲であり」を、
「前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり」
に訂正し、
段落【0026】に記載された
「2?50重量%の配合範囲であり」を、
「2?31重量%の配合範囲であり」
に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0008】及び【0011】に記載された
「グリコイド6C」を
「グリロイド6C」
に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0026】に記載された
「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」
を削除する。

2 訂正要件の検討
(1)訂正事項1及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、アルコールの使用量について、訂正前の請求項1において「全体の2?50重量%の範囲であり」と特定していたものを「全体の2?31重量%の範囲であり」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4による訂正は、上記訂正事項1による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
ゲル状の皮膚洗浄用洗浄料におけるアルコールの使用量について、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0008】及び【0011】には、「アルコールの使用量が全体の2?50重量%の範囲であり」と記載され、段落【0026】には「2?50重量%の配合範囲であり、好ましくは10?40重量%である」と記載されている。そして、これらの記載が本件特許のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料におけるアルコールの使用量として2?50重量%の範囲内の任意の量を選択し得ることを意味しているのは明らかである。そうすると、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)には、本件特許におけるアルコールの使用量が「2?50重量%」の範囲内の任意の量であることが記載されているといえる。
一方、訂正事項1及び4に係る「前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり」なる記載はアルコールの使用量が「2?31重量%」の範囲内の任意の量であることを意味するものである。
してみると、本件特許におけるアルコールの使用量は、「2?31重量%」なる範囲に限り、本件訂正の前後で何ら変更されていないこととなる。また、本件特許明細書等には、訂正事項1及び4によって規定されるアルコールの使用量の上限値である「31重量%」について明示的な記載はないものの、「31重量%」なる量が「2?50重量%」の範囲の任意の量の一つであることは自明であるから、これを明示的に記載すること自体は新規事項の追加となるものではない。
以上のとおり、訂正事項1及び4は、訂正前の本件特許においてアルコールの使用量として「2?50重量%」の範囲内で任意に選択し得るものとされていた量から「31(超)?50重量%」の範囲内の量を単に除外するものであって、かかる除外によって、新たな技術的事項が認められるものではない。
したがって、訂正事項1及び4による訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1及び4は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1及び4による訂正は、ゲル状の皮膚洗浄用洗浄料を、アルコールの使用量についてその範囲を限定するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2及び5について
ア 訂正の目的
訂正事項2及び5による訂正は、キシログルカンについての記載である「グリコイド6C」という誤記を、正しい記載である「グリロイド6C」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
キシログルカンについて、願書に最初に添付した明細書の段落【0031】、【0032】及び【0035】には、「キシログルカン(グリロイド6C)」と記載されていることから、訂正事項2及び5は願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項2及び5による訂正は、キシログルカンについての記載である「グリコイド6C」という誤記を、「グリロイド6C」へ正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3及び6について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項3の「前記アルコールが、グリセリンと、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1.2ヘキサンジオール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)、ポリプロピレングリコール(分子量400)、1.3ブチレングリコール及びイノシトールからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上のアルコールとからなるアルコールである、請求項1または2記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料」との記載からみて、訂正前の請求項3に記載の「前記アルコール」は、訂正前の請求項1に記載されるアルコール、すなわち、グリセリン又は請求項1に記載の下記(D-1)、(D-2)、(D-3)のアルコールのいずれかである必要があるところ、訂正前の請求項3には、訂正前の請求項1に記載の上記「アルコール」に該当しない「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」が記載されており、この点において、訂正前の請求項3の記載は明瞭でないものとなっていた。
そして、訂正事項3は、訂正前の請求項3から上記「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」の記載を削除し、同項の記載を明瞭なものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項6についても同様である。



イ 新規事項の有無
訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載のアルコールの一部分である「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」を削除するものであり、訂正事項6は、明細書の段落【0026】に記載されたアルコールの一部分である「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」を削除するものである。
よって、訂正事項3及び6は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載のアルコールの一部分である「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」を削除するものであり、訂正事項6は、明細書の段落【0026】に記載されたアルコールの一部分である「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」を削除するものである。
よって、訂正事項3及び6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
本件特許異議の申立ては、請求項1-6に対してされているので、訂正事項1?6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する特許独立要件は課されない。

3 申立人の主張について
申立人は、令和1年12月27日提出の意見書において、「アルコールの使用量」について、「2?50重量%の範囲」を「2?31重量%の範囲」とする訂正事項1及び4は、本件の発明の詳細な説明中にその数値限定は明示的に記載されていないし、その数値限定(新たな数値範囲)の境界値も記載されていないから、新たな技術的事項を導入するものである旨主張している。
この点、上記の2(1)イで述べたとおり、訂正事項1及び4は、訂正前の本件特許においてアルコールの使用量として「2?50重量%」の範囲内で任意に選択し得るものとされていた量から「31(超)?50重量%」の範囲内の量を単に除外するものであって、かかる除外によって、新たな技術的事項が認められるものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1?3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求による訂正後の請求項1-6に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」等といい、本件発明1-6をまとめて「本件発明」という。)は、令和1年11月18日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記(A-1)および(A-2-2)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤に、キシログルカン(グリロイド6C)、あるいはキシログルカン(グリロイド6C)とローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上である水溶性天然高分子と、グリセリンであるアルコールとを、あるいはグリセリンとグリセリン以外の下記(D-1)、(D-2)および(D-3)に示すD群から選択される1種もしくは2種以上とからなるアルコールとを、配合してなり、
1重量%水溶液としたときのpHが8以上11以下であり、前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり、前記水溶性天然高分子の使用量が、全体の0.1?10重量%の範囲であることを特徴とするゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
(A群)カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤
(A-1)
【化1】


(A-2-2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩
R-O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)CH_(2)COOM
R:炭素数12の飽和アルキル基
M:Na,K,アミン塩
n:4または5
(D群)ヒドロキシル基を有する1価アルコールまたは多価アルコール
(D-1)
【化2】


(D-2)
【化3】


(D-3)
【化4】


【請求項2】
ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインおよびヤシ油脂肪酸プロピルベタインから選ばれる1種または2種の両イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項3】
前記アルコールが、グリセリンと、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール及び1.3ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上のアルコールとからなるアルコールである、請求項1または2記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項4】
前記アルコールがグリセリンである、請求項1?3のいずれか1項記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項5】
前記水溶性天然高分子がキシログルカン(グリロイド6C)である、請求項1?4のいずれか1項記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項6】
前記(A-1)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤と、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインおよびヤシ油脂肪酸プロピルベタインから選ばれる1種または2種の両イオン性界面活性剤とを含む、請求項1?5のいずれか1項記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
請求項1-6に係る特許に対して、当審が令和1年8月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1.(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

理由2.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

理由3.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項1及び請求項1を引用する請求項4-5
・甲第1号証:特許第5020415号公報

(2)理由2(進歩性)について
・請求項2-3、6及び請求項2又は3を引用する請求項4-5
・甲第1号証:特許第5020415号公報

(3)理由3(明確性)について
(3-1)
・請求項1-6

(3-2)
・請求項3-6

引用文献等一覧
甲第1号証:特許第5020415号公報(以下、「甲1」という。)

2 当審の判断
(1)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)
取消理由1(甲1に基づく新規性違反)及び取消理由2(甲1に基づく進歩性違反)は、訂正前の本件特許のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料におけるアルコールの使用量が「全体の2?50重量%」であったところ、当該使用量のうち「31超?50重量%」なる量は、本件優先権主張の基礎となる特願2011-288222号(以下「優先基礎出願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)には記載されていない事項であるから、本件特許のうち、アルコールの使用量が「31超?50重量%」であるものについては、優先権主張の効果(特許法第41条第2項)は認められず、特許法第29条の規定(新規性進歩性)の適用の適否についての判断基準日は、特願2012-280367号の出願日である平成24年12月22日であり、甲1は本件特許の出願日前の公知文献となるとの判断に基づくものである。
しかしながら、本件訂正によって本件発明におけるアルコールの使用量が「2?31重量%」となり、前記優先権主張の効果が認められることとなったから、本件発明1?6に係る特許を取消理由1及び2によって取り消すことができないのは明らかである。

(2)理由3(明確性)
ア 理由3の具体的な内容
理由3の具体的な理由は、要するに、
(3-1)請求項1の「グリコイド6C」なる記載の意味が明確でないから、請求項1及び同項を引用する請求項2-6に係る発明は明確でない、
(3-2)請求項3の「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」との記載は、同項が引用する請求項1の記載と不整合であるから、請求項3及び同項を引用する請求項4-6に係る発明は明確でない、
というものである。

イ 判断
(3-1)
本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に記載された「グリコイド6C」が「グリロイド6C」に訂正された(訂正事項2)。
よって、本件発明1-6は明確である。

(3-2)
本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項3に記載された「ジプロピレングリコール」、「1.2ヘキサンジオール」、「ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)」、「ポリプロピレングリコール(分子量400)」及び「イノシトール」が削除された(訂正事項3)。
よって、本件発明3-6は明確である。

3 取消理由についてのまとめ
以上のとおり、令和1年8月21日付けで通知した取消理由は、その理由がなく、これらの理由により、本件発明1-6に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立理由ウ(拡大先願)
本件特許の請求項1-6に係る発明は、本件特許に係る出願の日前の特許出願であって、本件特許に係る出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第2号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、その発明についての特許は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

2 証拠方法
甲第2号証:特願2012-192314号(特開2014-47179号公報)

3 当審の判断
(1)本件発明の優先権主張の効果についての申立人の主張
申立理由ウにおいて、申立人は、本件発明の優先件主張の効果に関して概略以下のとおり主張する。
(ア)アルコールの使用量について
優先基礎出願の当初明細書にはアルコールの使用量が「0.1?31%」なる範囲しか記載されていないから、訂正前の本件発明におけるアルコールの使用量のように下限値を「2重量%」とし、上限値を「50重量%」とする「2?50重量%」なる使用量は記載されていない。
(イ)水溶性天然高分子の使用量について
優先基礎出願の当初明細書には水溶性天然高分子の使用量が「0.05?10%」なる範囲しか記載されていないから、本件発明における水溶性天然高分子の使用量のように下限値を「0.1重量%」とする「0.1?10重量%」なる使用量は記載されていない。
(ウ)以上(ア)、(イ)の点で、本件発明のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料は、優先基礎出願の当初明細書に記載されているといえないから、本件発明について優先権主張の効果が認められない。
よって、申立理由ウ(拡大先願)についての判断基準日は、特願2012-280367号の出願日である平成24年12月22日である。

(2)優先権主張の効果について
(ア)アルコールの使用量について
優先基礎出願の当初明細書には、ゲル状の洗浄料におけるアルコール及びその使用量に関し、以下の記載がある。
(摘記優先基礎1)
「【0029】
また、(D群)増粘効果に寄与する成分として、水溶性天然高分子は、ヒドロキシル基を有するエタノール、グリセリン、プロピレングコール等であり、増粘性を示し、アニオン性、両性イオン、界面活性剤、洗浄料組成を固形化する働き、作用があり、特に、化粧品の保湿剤として汎用されるアルコール、グリコール、糖アルコールが固形化に寄与するものである。」

(摘記優先基礎2)
「【0030】
(D-1)多価アルコール
(D-1)としては、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1.2ヘキサンジオール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)、ポリプロピレングリコール(分子量400)、及びジグリセリン、1.3ブチレングリコール、イノシトール等を0.1?31%の配合範囲であり、好ましくは0.5?25%である。」

(摘記優先基礎3)
「【0032】
〔実施例-1〕
〈1〉精製水 67.90%
〈2〉グリセリン 10.0%
〈3〉DPG 7.0%
〈4〉1.2ヘキサングリコール 2.5%
〈5〉キシログルカン(ダリロイド6C) 0.8%
〈6〉キサンタンガム 0.2%
〈7〉ラウリン酸 5.9%
〈8〉ミリスチン酸 2.2%
〈9〉パルミチン酸 1.0%
〈10〉ステアリン酸 0.4%
〈11〉オレイン酸 0.6%
〈12〉苛性ソーダ 1.50%
合 計 100.0%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉混合物に成分〈5〉、〈6〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈7〉-〈12〉を混合、 融解し、撹拌させ、均一なる高粘液を得る。
c)b)を65-80℃に保ちながら、鋳型に流し込み、室温に静置し、ゲル状洗浄料を得る。
【0033】
〔実施例-2〕
〈1〉精製水 58.4%
〈2〉ソルビトール 10.0%
〈3〉プロパンジオール 10.0%
〈4〉1.2ヘキサングリコール 2.5%
〈5〉キシログルカン(ダリロイド6C) 1.0%
〈6〉キサンタンガム 0.5%
〈7〉ラウリン酸 5.9%
〈8〉ミリスチン酸 2.2%
〈9〉パルミチン酸 1.0%
〈10〉ステアリン酸 0.3%
〈11〉オレイン酸 0.6%
〈12〉KOH 2.60%
〈13〉ソフタゾリンLSB 5.0%
合 計 100.0%
製法
a)成分〈2〉-〈4〉混合物に成分〈5〉、〈6〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)成分〈7〉-〈12〉を混合、融解し、a)に加え、75-85℃に加熱し、ジェル状とし、得る。
c)b)に成分〈13〉を加え、撹拌混合し、均一な高粘物を得る。
d)c)を75-80℃に保温しながら、鋳型に流しこむ。透明のゲル状洗浄を得る。
【0034】
〔実施例-3〕
〈1〉精製水 48.0%
〈2〉DPG 7.0%
〈3〉1.2ヘキサングリコール 2.5%
〈4〉 キサンタンガム 0.5%
〈5〉カタギーナン 2.0%
〈6〉コカミドプロピルベタイン 40.0%
(オバゾリンCAB30)
合 計 100.0%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉に成分〈4〉、〈5〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈6〉を加え、攪拌溶解させ、均一な高粘物を得る。
c)b)を68-80℃に保温しながら、鋳型に流しこむ。室温に静置し、ゲル状の洗浄料を得る。
【0035】
〔実施例-4〕
〈1〉精製水 58.5%
〈2〉DPG 7.0%
〈3〉1.2ヘキサングリコール 2.5%
〈4〉カラギーナン 2.0%
〈5〉ポリオキシエチレンラウリルエーテル
カルボン酸ナトリウム
(ネオハイテノールECL-30S) 30.0%
合 計 100.0%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉に成分〈4〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解させる。
b)a)に成分〈5〉を混合し、85℃に加熱し、これにa)を加える。均一なる高粘液を得る。
c)b)を60-75℃に保ちながら、鋳型に流し込み、室温に静置し、硬いゲル状洗浄料を得る。
【0036】
〔実施例-5〕
〈1〉精製水 58.5%
〈2〉1.2ヘキサングリコール 2.5%
〈3〉キシログルカン(ダリロイド6C) 0.7%
〈4〉キサタンガム 0.3%
〈5〉カリ石ケン素地(100%) 12.0%
〈6〉アルキルスルホベタイン
(ソフタゾリンLSB) 15.0%
〈7〉グリセリン 10.0%
〈8〉クエン酸 適量
〈9〉クエン酸Na 適量
合 計 100.0%
製法
a)成分〈2〉に成分〈3〉、〈4〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈5〉-〈6〉を順次加え、65-85℃に加熱しながら、攪拌溶解し、均一なる高粘液を得る。
c)b)に成分〈7〉-〈9〉を加え、PHを10.5に調整する。
d)c)を鋳型に流し、室温に靜置し、ゲル状の石鹸を得る。
【0037】
〔実施例-6〕
〈1〉精製水 36.5%
〈2〉DPG 10.0%
〈3〉1.2ヘキサングリコール 2.5%
〈4〉キサンタンガム 0.5%
〈5〉ローカストビーガム 0.5%
〈6〉コカミドプロピルベタイン
(オバゾリンCAB30) 50.0%
合 計 100.0%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉混合物に成分〈4〉、〈5〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈6〉を加え、 70-85℃に加熱しながら、撹拌溶解し、均一なる高粘液を得る。
c)b)を鋳型に流し込み、室温に静置し、ゲル状の石鹸を得る。」

以上のとおり、優先基礎出願の段落【0029】には、「(D群)増粘効果に寄与する成分」として、ヒドロキシル基を有するエタノールやグリセリン、プロピレングリコール等、化粧品の保湿剤として汎用されるアルコール、グリコールが列記され、それに続く段落【0030】には、「(D-1)多価アルコール」として、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1.2ヘキサンジオール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール、(分子量400?7000)、ポリプロピレングリコール(分子量400)、及びジグリセリン、1.3ブチレングリコール、イノシトール等が記載され、それらの配合範囲が0.1?31%であることが記載されている(なお、「%」は「重量%」の意味と認める。)。さらに、優先基礎出願の実施例1?6には、段落【0029】、段落【0030】に記載された「グリセリン」、「DPG」(当審注:段落【0030】の「ジプロピレングリコール」の略称。)、「1.2ヘキサングリコール」(当審注:段落【0030】の「1.2ヘキサンジオール」と同じもの。)、「プロパンジオール」を配合したゲル状洗浄料が記載されている。
ここで、優先基礎出願の段落【0029】の記載と段落【0030】の記載の関係は明示されていないが、段落【0029】の(D群)のアルコールやグリコールに関する記載に続けて「(D-1群)多価アルコール」との見出しで各種のグリコール等が記載されていることからみて、段落【0030】の記載は、段落【0029】に記載される「(D群)増粘効果に寄与する成分」の具体例を記載したものと理解できる。また、優先基礎出願の段落【0029】、段落【0030】には、そこに例示されるアルコールやグリコールの2種以上を併用することは明記されていないが、実施例1?6において、2種以上のアルコール(グリコール)が併用されていること、とりわけ、実施例1及び5では、グリセリンとDPGと1.2ヘキサングリコール又はグリセリンと1.2ヘキサングリコールの併用が記載されていることからみて、段落【0029】及び段落【0030】に記載のアルコールやグリコールの2種以上を併用することも示唆されているものといえる。
そうすると、優先基礎出願の当初明細書等には、ゲル状の洗浄料において、上記のアルコールやグリコールの1種又は2種以上を併用し、それらの使用量を「0.1?31重量%」とすることが記載されているといえる。
そして、本件発明の「2?31重量%」なる使用量は、上記の「0.1?31重量%」に包含されるものであるから、本件発明は、アルコールの使用量に関し、その全範囲において優先権主張の効果が認められるものである。

(イ)水溶性天然高分子の使用量について
優先基礎出願の当初明細書には、ゲル状の洗浄料における水溶性天然高分子及びその使用量に関し、以下の記載がある。
(摘記優先基礎4)
「【0008】
本発明のゲル状、固形状の洗浄料は、前述の課題に鑑み、鋭意研鑽の結果、請求項1に記載のゲル状、固形状の洗浄料では、下記に示す(A-1)(A-2)(A-2-1)(A-2-2)(A-3)のカルボン酸を有するアニオン性界面活性剤又はポリオキシエチレンアルキル(炭素数12-22の飽和及び不飽和):エーテルカルボキシレート:エーテルカルボン酸塩又はN-アシルアミノ酸のNa,K,アミン塩(A群)の1種もしくは2種以上の混合組成物に、下記に示す水溶性天然高分子(C群)の1種もしくは2種以上を配合してなるゲル状、固形状の洗浄料。
・・・
(C群)水溶性天然高分子
【化6】


【化7】


である。」

(摘記優先基礎5)
「【0023】
更には、本発明に用いられる(C群)の説明
水溶性天然高分子は、キシログルカン、キサンタンガム、カードラン、ガラギーナン、ローカストピーガム等で代表される。好ましくは、アルカリ耐性、耐塩性、耐熱性であることが望まれる。
・・・
【0027】
いづれもゲル状、固形状の形を構築するために用いる水溶性天然高分子は0.05?10%の範囲で好ましくは0.05?5%であり、10%以上の配合に近づくと気泡性が損なわれ過度の固い固形化は使用時に容易に泡が立たず洗浄力も発揮されないもので、又、ゲル状、固形状する為の目的で合成高分子が汎用されている。」

以上のとおり、優先基礎出願の段落【0008】には、「(C群)水溶性天然高分子」として、キシログルカン(グリロイド6C)、グアーガム、ローカストビーガム、アガロース(寒天)、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸Na、グルコマンナン、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、カードラン、ヒアルロン酸Naが記載され、これら(C群)水溶性天然高分子の1種もしくは2種以上を配合することが記載されており、段落【0027】には、これらの配合範囲が0.05?10%であることが記載されている(なお、「%」は「重量%」の意味と認める。)。さらに、優先基礎出願の実施例1?6には、段落【0008】に記載された「キシログルカン(ダリロイド6C)」(「ダリロイド6C」は段落【0008】に記載された「グリロイド6C」の誤記と認める。)、「キサンタンガム」、「カラギーナン」、「ローカストビーガム」を配合したゲル状洗浄料が記載されており、とりわけ、実施例1、2及び5では、キシログルカン(グリロイド6C)とキサンタンガムとの併用が記載されている。
そうすると、優先基礎出願の当初明細書等には、ゲル状の洗浄料において、上記の水溶性天然高分子の1種又は2種以上を併用し、それらの使用量を「0.05?10重量%」とすることが記載されているといえる。
そして、本件発明の「0.1?10重量%」なる使用量は、上記の「0.05?10重量%」に包含されるものであるから、本件発明は、水溶性天然高分子の使用量に関し、その全範囲において優先権主張の効果が認められるものである。

以上のとおりであるから、本件優先権主張の効果に関する申立人の主張には理由がない。

(3)甲第2号証(特願2012-192314号(出願日:平成24年8月31日、公開日:平成26年3月17日))(以下、「甲2」という。)について
上記のとおり、本件発明については、特許法第41条第2項の規定により、その出願日は優先基礎出願の出願日である平成23年12月28日とみなされるから、甲2は、同法第29条の2に規定する「当該特許出願の日前の他の出願」には該当しない。

(4)本件発明1と甲2に記載された発明の同一性について
(ア)甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
甲2には、次の事項が記載されている。
(摘記甲2-1)
「【0001】
本発明は、キシログルカン含有ゲル状組成物に関する。」

(摘記甲2-2)
「【0012】
このようなタマリンド種子由来のキシログルカン(タマリンド種子キシログルカン)は、市販品(例えば、DSP五協フード&ケミカル株式会社製:グリロイド、グリエイト)として入手したものを用いることもでき、かかる市販品を水に溶解し、この水溶液にエタノール等を混合してキシログルカンを分別沈殿させた後、さらに精製して用いることもできる。」

(摘記甲2-3)
「【0042】
以下、実施例25?61では、タマリンドガムとしてグリロイド(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いた。」

(摘記甲2-4)
「【0047】
実験例34?37:洗顔石鹸
下記表8に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例34?37のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状化粧料(洗顔石鹸)を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表8に示す。
表8に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例35?37では、アルコール類としてブチレングリコール、グリセリンを添加することで保型性が付与され、弾力のあるゲル状組成物が製造された。更に、水溶性高分子を添加することで、保型性が更に改善され離水性もさらに改善された。このように保型性が改善されたことで、より複雑な形体の型に流し込むことが可能となった。
一方、本発明の構成要件の一部を具備しない実験例34(比較例)では、保型性が悪かった。
【0048】
【表8】



(摘記甲2-5)
「【0049】
実験例38?43:洗顔料
下記表9に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例38?43のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状化粧料(洗顔料)を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性及び離水の有無を評価すると共に、透明性を評価した。結果を表9に示す。
なお、離水の有無及び透明性の評価は、ゲル組成物を調製(型から取り出した)後、密閉容器内において40℃で3日間放置したゲル組成物の状態確認を目視にて行い、下記の項目にて判定した。
〔離水の有無〕
有:ゲル組成物に明らかに離水が確認できる。
無:ゲル組成物にほとんど離水が確認できない。
〔透明性の判定〕
○:ゲル組成物に濁りがなく、完全に透明である。
△:ゲル組成物が若干白濁しているが、十分な透明感がある。
×:ゲル組成物が完全に白濁している。
表9に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例38?43のキシログルカン含有ゲル状組成物は、いずれも優れた保型性を有していた。また、水溶性高分子を有しない実験例38及び39に比べて、実験例40?43は、有意に離水を起こしていないことが明らかであった。また、実験例39?43のキシログルカン含有ゲル状組成物は、エデト酸4ナトリウムといったキレート剤を含有していることによって、透明性を有することが明らかであった。
【0050】
【表9】



(摘記甲2-6)
「【0053】
実験例49:ゲル状スクラブ含有透明洗顔料
下記表11に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例49のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状スクラブ含有透明洗顔料を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性及び透明性を評価した。結果を表11に示す。
表11に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例49のキシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性が十分であった。
従って、本ゲル状スラブ含有透明洗顔料は、このように保型性があることから、様々な型に流すことができた。また、適度な弾力を有することから、肌に直接こすり付けて洗浄することが可能である。本ゲル状スラブ含有透明洗顔料の原料混合液は適度な粘性を有することからスラブを均一に分散させることができた。また、キレート剤の添加により透明性が高くなり、スラブが分散している状態がはっきりわかることから見栄えのよいものであった。
【0054】
【表11】



(摘記甲2-7)
「【0069】
実験例59、60、61:洗顔料
下記表19に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、洗顔料を調製した。
そして、得られた美容ゲルの保型性を、上記と同様に評価した。また、離水性の評価は、上記実験例44?48と同様に、ゲル組成物の調製(型から取り出した)直後の重量(初期ゲル組成物重量)、及び、ゲル組成物を調製(型から取り出した)後、密閉容器内において40℃で3日間放置した後のゲル組成物の重量(経時ゲル組成物重量)を測定し、下記式により離水率を算出することによって行うと共に、ゲル組成物の調製(型から取り出した)直後の重量(初期ゲル組成物重量)、及び、ゲル組成物を調製(型から取り出した)後、密閉容器内において室温で3ヵ月間放置した後のゲル組成物の重量(経時ゲル組成物重量)を測定し、下記式により離水率を算出することによって行った。
離水率(%)=(初期ゲル組成物重量-経時ゲル組成物重量)/初期ゲル組成物重量×100
結果を表19に示す。
表19に示すように、実験例59のキシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性は十分であったが離水率は経時的に高くなる傾向にあった。一方、水溶性高分子を併用した実験例60及び実験例61については、離水率が顕著に抑制され、商品販売期間中に商品外観を損なうおそれの少ない商品を提供できることがわかった。
【0070】
【表19】



摘記甲2-4?2-7から、甲2には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「タマリンドガム0.8重量%、石けん用素地液(30?35%水溶液)25重量%、ブチレングリコール15重量%、グリセリン15重量%及び水残量を含む洗顔石鹸」(実施例35?37)、
「ブチレングリコール3重量%、タマリンドガム1.5重量%又はタマリンドガム1.5重量%及びキサンタンガム0.2重量%、石けん用素地液(30?35%水溶液)25重量%、グリセリン25重量%並びに水残量を含む洗顔料」(実施例38?43)、
「タマリンドガム2.0重量%、石けん用素地液(30?35%水溶液)20重量%、グリセリン20重量%及び水残量を含むゲル状スクラブ含有透明洗顔料」(実施例49)、
「タマリンドガム1.5重量%、石けん用素地液(30?35%水溶液)30重量%、グリセリン30重量%及び水残量を含む洗顔料」(実施例59?61)。
以下、これらをまとめて「甲2発明」という。

(イ)対比及び判断
本件発明1と甲2発明を対比する。甲2発明における「タマリンドガム」は、キシログルカンであることから(摘記甲2-2?2-3)、本件発明1における「キシログルカン(グリロイド6C)」と甲2発明における「タマリンドガム」はキシログルカンである点に限り一致する。また、甲2発明における「石けん用素地液(30?35%水溶液)」は、本件特許の請求項1に記載の(A-1)の脂肪酸塩を含有するものと認められる。また、甲2発明の「洗顔石鹸」、「洗顔料」、「ゲル状スクラブ含有透明洗顔料」は、摘記甲2-1の記載から、本件発明1の「ゲル状の皮膚洗浄用洗浄料」に相当するものと認められる。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「下記(A-1)および(A-2-2)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤に、キシログルカン、あるいはキシログルカンとローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上である水溶性天然高分子と、グリセリンであるアルコールとを、あるいはグリセリンとグリセリン以外の下記(D-1)、(D-2)および(D-3)に示すD群から選択される1種もしくは2種以上とからなるアルコールとを、配合してなり、
前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり、前記水溶性天然高分子の使用量が、全体の0.1?10重量%の範囲であるゲル状の皮膚洗浄用洗浄料
(A群)カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤
(A-1)
【化1】


(A-2-2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩
R-O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)CH_(2)COOM
R:炭素数12の飽和アルキル基
M:Na,K,アミン塩
n:4または5
(D群)ヒドロキシル基を有する1価アルコールまたは多価アルコール
(D-1)
【化2】


(D-2)
【化3】


(D-3)
【化4】

」である点。

(相違点1)
本件発明1では「キシログリカン」が「グリロイド6C」に特定されているのに対し、甲2発明では「タマリンドガム」が「グリロイド6C」であることが特定がされていない点。
(相違点2)
本件発明1では1重量%水溶液としたときのpHが8以上11以下と規定されるのに対し、甲2発明ではかかるpHが8以上11以下であることが特定されていない点。
したがって、本件発明1と甲2発明は、少なくとも相違点1において同一ではない。

(5)本件発明2?6と甲2発明の同一性について
本件発明2?6は、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明1について上述したところと同様に、甲2発明と同一ではない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから、甲2が特許法第29条の2にいう「当該特許出願の日前の他の出願」には該当しない点において申立理由ウには理由がなく、また、本件発明と甲2に記載の発明が同一でない点においても申立理由ウには理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1-6に係る特許について、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゲル状の洗浄料
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤に水溶性天然高分子を配合してなるゲル状の化粧料等として安全で有用性のある皮膚洗浄用ゲル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の身体を洗う洗浄料は脂肪酸ナトリウムからなる固形状の所謂石鹸であり、天然の動物油脂、植物油脂からの油脂を苛性ソーダで分解し、脂肪酸ナトリウムを塩析により分別し、高温の流動性のある時点に、大きな箱状容器に流し込み、室温に静置し、固化させ、洗浄し易い大きさの長方形状に切り洗浄料としている。
【0003】
しかし、室温静置の固形化石鹸は、脂肪酸ナトリウムの固い結晶構造の為、常温の水では直ぐ泡が立たず、洗浄力も発揮されにくいもので、この固い結晶構造を持たない固形石鹸を製造する為に、脂肪酸ナトリウムを高温に加熱し、真空中に霧状に噴霧して、水分を取り顆粒状にするもので、この顆粒状を練り上げ棒状にして、型打ちし楕円形状のデスク(disk)状にしている。
【0004】
その強力な練り上げにより無定形の固い脂肪酸ナトリウムの塊状であり、無定形の為、水に溶けやすく泡も立ち、洗浄力は発揮され、使いやすくなっているが、この無定形固形石鹸を製造する為に、水分を取る乾燥、棒状から形作りに莫大を電気と労力を消耗している。塩析で分別された流動石鹸を水で薄めた液状石鹸はそのまま、使い易い容器に充填した液状洗浄料も増えている。しかし、使い易い容器は液状石鹸を使いきると、捨てられて、資源の無駄な消耗になっている。 莫大な電気、労力、資源の無駄使いの洗浄料を製造することは、検討すべき課題であった。
【0005】
例えば、先に開示された(イ)アルカリ石鹸、(ロ)スピルリナプラテンシス又はスピルリナマキシマの噴霧乾燥物の水抽出物に含有される水不溶物を遠心分離機で分離し、次に、前記水不溶物を遠心分離機で分離した水抽出物に含有されるスピルリナ色素成分を限外濾過膜で分離して得た廃スピルリナ水抽出物、及び/又は、2-カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド、並びに、(ハ)水、を含有するアルカリ石鹸組成物とする。前記アルカリ石鹸は、例えば、脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩である。前記廃スピルリナ水抽出物は、前記スピルリナ色素成分を限外濾過膜で分離した水抽出物とトレハロースとを混合してこれらを噴霧乾燥することにより得たものであってもよいもの(特許文献1参照)や、石鹸系の界面活性剤(脂肪酸アルカリ金属塩など)を含む水系冷媒を用いて、加熱した鋼板などの金属品を冷却する。水系冷媒は、前記界面活性剤と、水と、有機溶媒(アルカノール、アルキレングリコール及びグルコシドから選択された少なくとも一種など)と、キレート成分とを含有してもよい。界面活性剤1重量部に対して、キレート成分の割合は、0.1?5重量部程度であってもよく、有機溶媒の割合は、0.0001?5重量部程度であってもよい。水系冷媒は、鋼板に対して、例えば、1流体ノズルなどで、噴霧してもよいもの(特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2011-1316号公報
【特許文献2】特開2010-7110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然し乍ら、特許文献1-2に記載のものも、脂肪酸ナトリウムの固い結晶構造をもつもので、常温の水では直ぐ泡が立たず、洗浄力も発揮されにくいものであり、本発明は、常温の水で直ちに水に溶解し、泡を立て使用時に刺激感なく皮脂汚れを除去し、使用後には肌のキメを整え、滑らかで明度の高い肌状態にすることができるゲル状の皮膚洗浄料を提供するものである。
【0007】
つまり、本発明は、塩折で分別された流動石鹸をゲル状にするべく、脂肪酸塩(ナトリウム、カリウム、アミン等)を筆頭に、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤の洗浄料をゲル化する水溶性高分子を探索した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、下記(A-1)および(A-2-2)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤に、キシログルカン(グリロイド6C)のゲル化成分、あるいはキシログルカン(グリロイド6C)とローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上のゲル化成分である水溶性天然高分子と、グリセリンである増粘効果に寄与する成分であるアルコールとを、あるいはグリセリンとグリセリン以外の下記(D-1)、(D-2)および(D-3)に示すD群から選択される1種もしくは2種以上とからなる増粘効果に寄与する成分であるアルコールとを、配合してなり、
1重量%水溶液としたときのpHが8以上11以下であり、前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり、前記水溶性天然高分子の使用量が、全体の0.1?10重量%の範囲であることを特徴とするゲル状の皮膚洗浄用洗浄料である。
(A群)カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤
(A-1)
【化1】

(A-2-2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩
R-O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)CH_(2)COOM
R:炭素数12の飽和アルキル基
M:Na,K,アミン塩
n:4または5
(D群)ヒドロキシル基を有する1価アルコールまたは多価アルコール
(D-1)
【化2】

(D-2)
【化3】

(D-3)
【化4】

【0009】
(2)上記(1)の発明において、ゲル状の皮膚洗浄用洗浄料では、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインおよびヤシ油脂肪酸プロピルベタインから選ばれる1種または2種の両イオン性界面活性剤をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、塩析で分別された流動石鹸をゲル状にするべく、脂肪酸塩(ナトリウム、カリウム、アミン等)を筆頭に、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤の洗浄料をゲル化する水溶性高分子を探索し、その結果、植物、海藻から得られる水溶性天然高分子及び微生物発酵産生の水溶性天然高分子から、カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤洗浄料をゲル化出来る水溶性天然高分子を配合したもので、画期的で実用性の高い有効な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料およびその製造方法を具体的に説明すると、カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤に水溶性天然高分子を配合してなるゲル状の化粧料等として安全で有用性のある皮膚洗浄用ゲル組成物およびその製造方法に関するものであり、請求項1に記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料は、下記(A-1)および(A-2-2)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤に、キシログルカン(グリロイド6C)のゲル化成分、あるいはキシログルカン(グリロイド6C)とローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上のゲル化成分である水溶性天然高分子と、グリセリンである増粘効果に寄与する成分であるアルコールとを、あるいはグリセリンとグリセリン以外の下記(D-1)、(D-2)および(D-3)に示すD群から選択される1種もしくは2種以上とからなる増粘効果に寄与する成分であるアルコールとを、配合してなり、
1重量%水溶液としたときのpHが8以上11以下であり、前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり、前記水溶性天然高分子の使用量が、全体の0.1?10重量%の範囲であることを特徴とするゲル状の皮膚洗浄用洗浄料である。
(A群)カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤
(A-1)
【化5】

(A-2-2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩
R-O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)CH_(2)COOM
R:炭素数12の飽和アルキル基
M:Na,K,アミン塩
n:4または5
(D群)ヒドロキシル基を有する1価アルコールまたは多価アルコール
(D-1)
【化6】

(D-2)
【化7】

(D-3)
【化8】

【0012】
更に、請求項2に記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料は、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインおよびヤシ油脂肪酸プロピルベタインから選ばれる1種または2種の両イオン性界面活性剤をさらに含むゲル状の皮膚洗浄用洗浄料である。
【実施例】
【0013】
(1)下記に示すカルボン酸を有するアニオン性界面活性剤A群の1種もしくは2種以上の混合組成物に下記に示す水溶性天燃高分子群の1種もしくは2種以上を配合することにより、ゲル状の洗浄料を作ることができる。
【0014】
(2)下記に示すカルボン酸を有するアニオン性界面活性剤A群の1種もしくは2種以上の混合組成物に下記に示す両イオン性界面活性剤B群の1種もしくは2種以上を配合する混合組成物に下記に示す水溶性天然高分子C群の1種もしくは2種以上を配合することにより、ゲル状の洗浄料を作ることができる。
【0015】
そして、A群はカルボン酸を有するアニオン性界面活性剤又はポリオキシエチレンアルキル(炭素数12の飽和)エーテルプロピオン酸塩であり、後述する化学式(A-1)(A-2-2)の1種もしくは2種以上の混合組成物を用いるものである。
【0016】
次には、C群は、水溶性天然高分子で後述する(C-1)(C-2)の1種もしくは2種以上を配合するものである。
【0017】
〔配合原料の説明〕
更に、本発明に用いられる(A群)の説明
カルボン酸塩を有するアニホン性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
(A-1)動物、植物由来の油脂からの脂肪酸
《イ》炭素数8?22の飽和、不飽和脂肪酸で直鎖および分岐しているものである。
脂肪酸名
・直鎖飽和
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、バルミチン酸、ステアリン酸、エイコ酸、ベヘン酸
・直鎖不飽和
オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸
・分岐飽和
イソパルミチン酸、インステアリ酸、ネオデカン酸
・分岐不飽和
《ロ》カルボン酸塩の塩としては汎用されている
・無機塩基
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
・有機アミン基
塩基性アミノ酸のL-アルギニン
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪・アルキルアミン、多価アルコールアミンのエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパンジオール、アミノメチルプロパンジオール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン等を用いる。
好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ酸L-アルギニンである。
配合量はPH11以下(1重量%水溶液)に調整する範囲で決める。
(A-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボキシレートはラウリルアルコールにエチレンオキサイドを4?5モル付加重合させて、モノクロル酢酸を反応させたものが代表される。
(化学式A-2-2)に示すn=4、R=C12、M=Ndはネオハイテノール ECL-30S(第一工業)、ビューライトLCA(三洋)、エナジコールEC-30(ライオン)である。
耐硬水性があり、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウムとの混合使用で好ましい洗浄性を具備する。
【0018】
更には、本発明に用いられる(B群)の説明
両性イオン性界面活性剤は、アルキルアミドプロピルベタインが代表される。
肌への低刺激性、耐硬質性、起泡力が優れる。
さらに、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル、イミダゾリニウムベタインは低い眼膜刺激性でベビーシャンプー、洗顔に汎用される。
特にヒドロキシル基を有するものは水溶性天然高分子との相互作用があり、ゲル化には大きく寄与する。
【0019】
更には、本発明に用いられる(C群)の水溶性天然高分子の説明
水溶性天然高分子は、キシログルカン(グリロイド6C)、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストピーガム、グルコマンナン等で代表される。好ましくは、アルカリ耐性、耐塩性、耐熱性であることが望まれる。
【0020】
従って、本発明ではゲル状の洗浄料を高アルカリ側にせず、極力PH8?11の範囲(1重量%水溶液)に調整して、かつ、肌への低刺激性も配慮している。
【0021】
タマリンド種子ガムからのキシログルカン(グリロイド6C)、ローカストビーカムは耐塩性、耐熱性のあるガム類の水溶性天然高分子で植物由来もあって環境保護の面から益々汎用されており、日常の衛生用洗浄料にはエコロジーな用途開発になる。
【0022】
キサンタンガムは微生物発酵産性ガムであり、これも地球環境保護の面から発明された水溶性天然高分子で繁用されている。
【0023】
いづれもゲル状の形を構築するために用いる水溶性天然高分子は0.1?10重量%の範囲で好ましくは1?5重量%であり、10重量%以上の配合に近づくと気泡性が損なわれ過度の固い固形化は使用時に容易に泡が立たず洗浄力も発揮されないものである。
【0024】
例えば、水溶性セルロース系のカルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム;アクリル酸系のポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体;デンプン系のカルボキシメチルデンプン、リン酸化デンプンなど、いづれも、適、不適は有るもののアニオン性、両イオン性、界面活性剤、洗浄料と併用し、高粘性液状の洗浄料にしているが、ゲル化には多量配合となり、洗浄力が損なわれる。
【0025】
また、(D群)増粘効果に寄与する成分として、水溶性天然高分子は、ヒドロキシル基を有する1価アルコールまたは多価アルコールのエタノール、グリセリン、プロピレングコール等であり、相互作用により増粘性を示し、アニオン性、両イオン性界面活性剤、洗浄料組成をゲル化する働き、作用があり、特に、化粧品の保湿剤として汎用されるアルコール類、グリコール類、糖アルコール類がゲル化に寄与するものである。
【0026】
1価アルコールまたは多価アルコール(D群)としては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、及びジグリセリン、1.3ブチレングリコール、グリセリン等を2?31重量%の配合範囲であり、好ましくは10?40重量%である。
【0027】
この他に、糖アルコール又は糖類としては、蔗糖、乳糖、キシリトール、マルチトール、マンニトール、マルトース、ソルビトール、フラクトース、グルコース、トレハロース、エリスリトール、ラフイノース、ラクチトール、スルトース、イソスルトース、水飴等を0.5?50重量%の配合範囲であり、好ましくは3?30重量%である。
【0028】
以下に実施例を記す。
〔実施例-1〕
〈1〉精製水 67.90重量%
〈2〉グリセリン 10.0重量%
〈3〉ジプロピレングリコール 7.0重量%
〈4〉1.2ヘキサングリコール 2.5重量%
〈5〉キシログルカン(グリロイド6C) 0.8重量%
〈6〉キサンタンガム 0.2重量%
〈7〉ラウリン酸 5.9重量%
〈8〉ミリスチン酸 2.2重量%
〈9〉パルミチン酸 1.0重量%
〈10〉ステアリン酸 0.4重量%
〈11〉オレイン酸 0.6重量%
〈12〉苛性ソーダ 1.50重量%
合 計 100.0重量%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉混合物に成分〈5〉、〈6〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈7〉-〈12〉を混合、 融解し、撹拌させ、均一なる高粘液を得る。
c)b)を65-80℃に保ちながら、鋳型に流し込み、室温に静置し、ゲル状洗浄料を得る。
【0029】
〔参考例-1〕
〈1〉精製水 48.4重量%
〈2〉ソルビトール 10.0重量%
〈3〉プロパンジオール 10.0重量%
〈4〉1.2ヘキサングリコール 2.5重量%
〈5〉キシログルカン(グリロイド6C) 1.0重量%
〈6〉キサンタンガム 0.5重量%
〈7〉ラウリン酸 5.9重量%
〈8〉ミリスチン酸 2.2重量%
〈9〉パルミチン酸 1.0重量%
〈10〉ステアリン酸 0.3重量%
〈11〉オレイン酸 0.6重量%
〈12〉KOH 2.60重量%
〈13〉ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシ
スルホベタイン液ソフタゾリンLSB) 15.0重量%
合 計 100.0重量%
製法
a)成分〈2〉-〈4〉混合物に成分〈5〉、〈6〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)成分〈7〉-〈12〉を混合、融解し、a)に加え、75-85℃に加熱し、ジェル状とし、得る。
c)b)に成分〈13〉を加え、撹拌混合し、均一な高粘物を得る。
d)c)を75-80℃に保温しながら、鋳型に流しこむ。透明のゲル状洗浄を得る。
【0030】
〔参考例-2〕
〈1〉精製水 48.0重量%
〈2〉ジプロピレングリコール 7.0重量%
〈3〉1.2ヘキサングリコール 2.5重量%
〈4〉キサンタンガム 0.5重量%
〈5〉カラギーナン 2.0重量%
〈6〉ヤシ油脂肪酸プロピルベタイン液
(オバゾリンCAB30) 40.0重量%
合 計 100.0重量%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉に成分〈4〉、〈5〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈6〉を加え、攪拌溶解させ、均一な高粘物を得る。
c)b)を68-80℃に保温しながら、鋳型に流しこむ。室温に静置し、ゲル状の洗浄料を得る。
【0031】
〔参考例-3〕
〈1〉精製水 58.5重量%
〈2〉ジプロピレングリコール 7.0重量%
〈3〉1.2ヘキサングリコール 2.5重量%
〈4〉カラギーナン 2.0重量%
〈5〉ポリオキシエチレンラウリルエーテル
酢酸ナトリウム(ネオハイテノール
ECL-30S) 30.0重量%
合 計 100.0重量%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉に成分〈4〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解させる。
b)a)に成分〈5〉を混合し、85℃に加熱し、これにa)を加える。均一なる高粘液を得る。
c)b)を60-75℃に保ちながら、鋳型に流し込み、室温に静置し、硬いゲル状洗浄料を得る。
【0032】
〔実施例-2〕
〈1〉精製水 58.5重量%
〈2〉1.2ヘキサングリコール 2.5重量%
〈3〉キシログルカン(グリロイド6C) 0.7重量%
〈4〉キサタンガム 0.3重量%
〈5〉カリ石ケン素地(100%) 12.0重量%
〈6〉ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシ
スルホベタイン液(ソフタゾリンLSB) 15.0重量%
〈7〉グリセリン 10.0重量%
〈8〉クエン酸 適量
〈9〉クエン酸Na 適量
合 計 100.0重量%
製法
a)成分〈2〉に成分〈3〉、〈4〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈5〉-〈6〉を順次加え、65-85℃に加熱しながら、攪拌溶解し、均一なる高粘液を得る。
c)b)に成分〈7〉-〈9〉を加え、PHを10.5に調整する。
d)c)を鋳型に流し、室温に靜置し、ゲル状の石鹸を得る。
【0033】
〔参考例-4〕
〈1〉精製水 36.5重量%
〈2〉ジプロピレングリコール 10.0重量%
〈3〉1.2ヘキサングリコール 2.5重量%
〈4〉キサンタンガム 0.5重量%
〈5〉ローカストビーンガム 0.5重量%
〈6〉ヤシ油脂肪酸プロピルベタイン液
(オバゾリンCAB30) 50.0重量%
合 計 100.0重量%
製法
a)成分〈2〉、〈3〉混合物に成分〈4〉、〈5〉を湿潤、分散させ、〈1〉精製水に加え、85℃に加熱し、攪拌し、溶解する。
b)a)に成分〈6〉を加え、70-85℃に加熱しながら、撹拌溶解し、均一なる高粘液を得る。
c)b)を鋳型に流し込み、室温に静置し、ゲル状の石鹸を得る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のゲル状の洗浄料は、エネルギー、労力の消失量を極力少なくした製造方法で製造できる洗浄料組成物であり、特に、天然由来のゲル化成分をカルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤、又は該アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の混合物に配合して作られるゲル状の洗浄料の提供である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A-1)および(A-2-2)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤に、キシログルカン(グリロイド6C)、あるいはキシログルカン(グリロイド6C)とローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上である水溶性天然高分子と、グリセリンであるアルコールとを、あるいはグリセリンとグリセリン以外の下記(D-1)、(D-2)および(D-3)に示すD群から選択される1種もしくは2種以上とからなるアルコールとを、配合してなり、
1重量%水溶液としたときのpHが8以上11以下であり、前記アルコールの使用量が全体の2?31重量%の範囲であり、前記水溶性天然高分子の使用量が、全体の0.1?10重量%の範囲であることを特徴とするゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
(A群)カルボン酸塩を有するアニオン性界面活性剤
(A-1)
【化1】

(A-2-2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩
R-O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)CH_(2)COOM
R:炭素数12の飽和アルキル基
M:Na,K,アミン塩
n:4または5
(D群)ヒドロキシル基を有する1価アルコールまたは多価アルコール
(D-1)
【化2】

(D-2)
【化3】

(D-3)
【化4】

【請求項2】
ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインおよびヤシ油脂肪酸プロピルベタインから選ばれる1種または2種の両イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項3】
前記アルコールが、グリセリンと、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール及び1.3ブチレングリコールからなる群から選ばれる1種もしくは2種以上のアルコールとからなるアルコールである、請求項1または2記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項4】
前記アルコールがグリセリンである、請求項1?3のいずれか1項記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項5】
前記水溶性天然高分子がキシログルカン(グリロイド6C)である、請求項1?4のいずれか1項記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
【請求項6】
前記(A-1)に示すA群から選択される1種もしくは2種以上のアニオン性界面活性剤と、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインおよびヤシ油脂肪酸プロピルベタインから選ばれる1種または2種の両イオン性界面活性剤とを含む、請求項1?5のいずれか1項記載のゲル状の皮膚洗浄用洗浄料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-14 
出願番号 特願2016-155241(P2016-155241)
審決分類 P 1 651・ 161- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松村 真里井上 典之  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 關 政立
吉田 知美
登録日 2018-11-02 
登録番号 特許第6427540号(P6427540)
権利者 シラユキ ホンポ ホールディング リミテッド
発明の名称 ゲル状の洗浄料  
代理人 特許業務法人津国  
代理人 特許業務法人 津国  

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