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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B05C
管理番号 1361484
異議申立番号 異議2019-700582  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-23 
確定日 2020-03-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6537033号発明「容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6537033号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第6537033号(設定登録時の請求項の数は7。以下「本件特許」という。)は、平成22年12月2日に出願された特願2013-26956号の一部を新たな特許出願として平成27年4月1日に出願された特願2015-75014号に係るものであって、令和1年6月14日にその特許権が設定登録された。
そして、本件特許に係る特許掲載公報は令和1年7月3日に発行されたところ、特許異議申立人 株式会社マルテー大塚(以下、単に「異議申立人」という。)は、同年7月23日、請求項1?7に係る特許に対して特許異議の申立てをした。

第2 本件発明

本件特許の請求項1?7に係る発明は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などという。)。

「【請求項1】
液体を入れることができる内容器であって、
前記内容器が、開口部と前記開口部の周りにある縁部とを有する上部と、前記内容器の底に位置する底部と、側部とを備え、
前記開口部の面積が前記底部の面積よりも広く、他の前記内容器を重ねることができ、
前記液体が塗料であり、
前記開口部の形状が略四角形であり、前記開口部が2つの長辺と2つの短辺とを有し、
前記側部が4つの面を有し、前記開口部の前記長辺側にある前記側部の少なくとも1つの面に少なくとも1つの突起部があり、
前記少なくとも1つの突起部が、内容器の内側に凸となるように配置され、
前記少なくとも1つの突起部は、前記突起部が線状に延びる方向に垂直となる面において、前記少なくとも1つの突起部の断面が曲線となる部分を有し、
前記曲線となる部分により、そこにかかる力が分散され、
前記少なくとも1つの突起部が、第1の突起部と第2の突起部を有し、
前記第1の突起部と前記第2の突起部とを、それらを有する側面の開口部から底部に延びている辺に投影させた場合、それらの投影部が少なくとも一部重なり、
前記第1の突起部と前記第2の突起部が、それらの上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され、
前記突起部は全てローラ全体に染みこんだ塗料の量を調整するために使用される、内容器。
【請求項2】
前記第1の突起部と前記第2の突起部が、上または下で屈曲したひと連なりの線状である、請求項1に記載の内容器。
【請求項3】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とを、それらを有する側面と底部とで作られる辺に投影した場合に、それらの投影部が少なくとも一部重なっている、請求項1に記載の内容器。
【請求項4】
前記第1の突起部と前記第2の突起部が、複数の屈曲したひと連なりの線状である、請求項1に記載の内容器。
【請求項5】
前記内容器が透明又は半透明である、請求項1?4のうちの1つに記載の内容器。
【請求項6】
取手部を有している、請求項1?5のうちの1つに記載の内容器。
【請求項7】
前記内容器が熱可塑性樹脂でできている、請求項1?6のうちの1つに記載の内容器。」

第3 特許異議の申立ての理由の概要

異議申立人は、下記1の証拠方法を提示すると共に、特許異議申立理由として、概略、下記2の主張をしている。

1 証拠方法
・甲1: 実願平5-71711号(実開平7-34958号)のCD-ROM
・甲2: 米国特許第3157902号明細書及びその抄訳文
・甲3: 大塚刷毛製造株式会社の総合カタログ第4集抜粋(第93ページ)、写し
・甲4: 特開平11-319688号公報
・甲5: 大塚刷毛製造株式会社の総合カタログ第4集抜粋の写し
・甲6: 大塚刷毛製造株式会社の総合カタログ第5集抜粋の写し
・甲7: 大塚刷毛製造株式会社の総合カタログ第6集抜粋の写し
・甲8: 大塚刷毛製造株式会社の総合カタログ第7集抜粋の写し
甲1については、特許異議申立書には、「実開平7-34958号公報」と記載されているが、特許異議申立書に添付されているのは、実願平5-71711号(実開平7-34958号)のCD-ROMであって、実開平7-34958号公報は、実願平5-71711号(実開平7-34958号)のCD-ROMの要部公開公報であることから、実際に添付されている証拠を甲1とした。
その他の甲号証の記載については、概ね、特許異議申立書の記載にしたがった。

2 申立理由(甲1に記載された発明を引用発明とする進歩性)
本件発明1?7は、甲1を主たる引用文献として、甲2ないし4に記載の技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

なお、特許異議申立書には、「甲第1?4の発明を総合化することによって容易に発明できたものである。」(6頁30行?31行)、あるいは、「甲1?甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。」(13頁21行?22行)と記載されているが、特許異議申立書の「(4)具体的理由」の記載内容から、上記のように判断した。

第4 当合議体の判断

当合議体は、以下述べるように、上記申立理由には理由はないと判断する。

1 甲号証の記載等
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、ローラ刷毛で塗装するための塗料を入れるローラ刷毛用容器に関するものである。」

イ 「【0008】
【実施例】
以下、この考案の実施例を図に基づいて説明する。
図1はこの考案の一実施例であるローラ刷毛用容器の構成を示す分解斜視図、図2は把手に設けた係合部の形状を示す説明図、図3は係合部の係合状態を示す説明図、図4は把手を外容器の上側に立たせた状態の斜視図、図5はローラのしごき状態を示す説明図、図6はローラ刷毛をストッパに係止させた状態を示す説明図である。
【0009】
これらの図において、1は外容器を示し、上面が略長方形状で開放し、上端に、外側へ水平に延びた後に垂下するフランジ1fが周回して設けられている。
そして、フランジ1fの3個所、すなわち開放した上面の形状である長方形の対向する長辺および1つの短辺に対応する3辺の上面中央部に、起立した後に外側へ水平に延びる係止片1dが設けられている。
さらに、係止片1dの設けられていないフランジ1fの短辺の外側に、外側へ延びて立ち上がった後、上昇しながら外側へ延びるストッパ1sが設けられている。
【0010】
2は外容器1の中に収容される使い捨て用の内容器を示し、上面が略長方形状で開放し、上端に少なくともフランジ1fの幅で外側へ水平に延びるフランジ2fが周回して設けられている。
そして、係止片1dに対応する部分に、係止片1dを挿通することのできる切り欠き孔2hが設けられている。
3は半円形状の把手を示し、両端部分がフランジ1fの垂下部分に、回動可能に取り付けられている。
そして、各把手3の把持部3hを外容器1の上側へ回動させて接触させた状態で、互いに係合することによって各把手3を外容器1に立たせる係脱可能なL字状の係合部3oが各把手3に設けられている。
【0011】
4はしごき板を示し、傾斜させて立て掛けることができるように、フランジ1fを抱える係止部4dが上端に2つ設けられ、内容器2の底に当接するピン4pが下端に3本設けられている。
そして、しごき板4には上端に向かって高くなる山形状の突起4rが千鳥状に設けられ、突起4rで囲まれた部分は貫通孔4hとされている。
上記した外容器1、内容器2、把手3およびしごき板4は、合成樹脂で構成されている。」

ウ 「【0013】
次に、組立について説明する。
図1に示す状態の外容器1の中へ上方から内容器2を挿入し、フランジ2fの切り欠き孔2hにフランジ1fの係止片1dを挿通させると、図4および図5に示すようにフランジ2fを外容器1の中に落ち込まないように係止させることができる。
そして、フランジ2fを持ち上げて係止部1dを切り欠き孔2hから外すことにより、内容器2を外容器1から取り外すことができる。
このように係止片1dを切り欠き孔2hに挿通してフランジ2fを係止させることにより、使い捨て容器である内容器2を薄手に形成しても内容器2が外容器1の中に入り込まなくなるので、内容器2のコストダウンを図ることができる。」

エ 「【0016】
次に、ローラ11rの塗料を適量にするしごきについて説明する。
図4?図6に示すようにしごき板4を立て掛けた状態で、塗料を染み込ませたローラ11rを図5に示すようにしごき板4の下方に押し当てて上方へ移動させると、ローラ11rが突起4rで押されるので、ローラ11rから絞られた塗料は貫通孔4hから内容器2内に落下する。
したがって、ローラ11rをしごき板4に押し当てる力を調整することにより、所望とする適量の塗料をローラ11rに染み込ませることができる。」

オ 「



カ 「



(2) 甲1に記載された発明
上記(1)ア?カの記載から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「液体を入れる内容器2であって、
前記内容器2が、上面が略長方形状で開放し、外側に水平に延びるフランジ2fを有する上端と、前記内容器2の底とを有し、
前記液体が塗料である、
内容器2。」

(3)甲2の記載
甲2には以下の記載がある。なお、摘記に際し、英文は省略し、訳文を示す。
ア 「これらのトレーは、均等に塗装されるローラーを可能にするために回転する前の塗料の供給が十分な大きさの表面積になっているが、それぞれの使用に応じて汚れのない表面を提供するための使用と、望まれない色の混合を避けるための使用の間で注意深くきれいにしなければならない。そのようなクリーニングの必要性をあらかじめ避けるために、使い捨てのトレーが、使い捨てされないトレーの内面としてあらかじめ提供されている。以前は、高価で、硬さと水分への耐性が不十分で、基本構造の改良が要求され、一般的に受け入れられなかった。
これらの問題を打開するために、そして容易に使い捨て出来るように、トレーライナーを改善し、この発明はトレーのいかなる改良もなく、安価なプラスチックなどで形成された従来の金属製の塗料用トレーとともに使用するための、形成されたライナーを提供する。
発明の重要な目的は、トレー内はいつ使用されても適切に安全に保たれるが、容易に外し処分することができる特色を備えた塗料用トレーライナーを提供することである。
もう一つの目的は、構造及び使用で複雑でなく、その意図される使用での十分な耐久性のある安価な材料の大量生産品を取り入れたトレーライナーを提供することである。」(第1欄、第13行?第37行)

イ 「図1に最もよく表れているように、本発明のトレーライナーは、符号28によってあらわされており、トレー10の内部形状に沿って外側形状トレー様装置が成形されることを含む。ライナー底壁30は、第1端部32と第2端部34とを有し、振分けリブ18と係合してライナーをトレー内に正しく位置決めして保持するのを助ける複数の上向きに突出するライナーリブ36を有する。ライナー端部壁38は、その第2の端部34で底部壁30に合流し、直立ライナー側壁40がそれらの側面に沿って配置されている。
ライナー28には、第1端部32、ライナー側壁部40の上縁部、及びライナー端部壁38を含む、その全範囲にわたって延びる周縁スナップブリム42が設けられている。図3及び図4から分るように、スナップブリム42は、凹型又は連続的な溝44を配置するために外向きかつ下向きのアーチ状になっている。スナップブリム42は、フランジ26に対して弾力性があり、トレーフランジへのスナップブリム42の取り付けにより、スロット44内でスナップブリム42をしっかりと把持するように寸法決めされている。
使用時には、ライナー28は、ライナー底壁30とともにトレー10内に手動で配置され、後方の全長及び全幅にわたって、トレー底壁12を覆っており、トレーの側壁及び端壁のそれぞれが面一であり、スナップブリム42はトレーフランジ26の上にはめ込まれる。使用の完了又は別の色への変更を望むとき、ライナー28はフランジからスナップブリムの手動での取り外しにより、トレー10から持ち上げて取り除かれる。汚れたライナーは、その後廃棄され、他のライナーと交換されてもよい。」(第2欄、第3行?第36行)

ウ 「



(4)甲2に記載された技術事項
上記(3)ア?ウの記載から、甲2には、以下の技術事項が記載されていると認める。

「トレーライナー28のライナー底壁30にトレーに位置決めするための複数のライナーリブ36があり、
このライナーリブ36が複数の上向きに突出するように配置され、
トレー内に位置決め保持される使い捨ての塗料用トレ-ライナー。」

(5)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
ア 「



(6)甲3に記載された技術事項
上記(5)アの○T(決定注:丸囲みTを意味する。以下同じ)ローラー皿の写真○4の記載から、甲3には、以下の技術事項が記載されていると認める。

「ローラー皿の短辺側の壁面に第1の突起部と第2の突起部とを備え、
それら第1の突起部と第2の突起部とが、ローラー皿の面に沿って投影された場合に、それらの投影部の少なくとも一部が重なり合う形状である、
ローラー皿。」

(7)甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ローラブラシを用いて塗装を行うのに適した塗料缶であって、底板と、この底板の外周に立ち上げられる側板と、この側板の上端部に設けられる蓋板とを有し、前記側板の内側面に、前記ローラブラシのローラ回転を補助するとともに、前記ローラの表面に塗料を均一に馴染ませる線状突起を設けたことを特徴とする塗料缶。
【請求項2】 前記線状突起は、前記側板の上下方向に交互に配置されるへ字形突起およびハ字形突起からなり、前記へ字形突起と前記ハ字形突起との上下方向の隙間に、前記ローラブラシの転がり段差を有することを特徴とする請求項1記載の塗料缶。」

イ 「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明の第1実施例による塗料缶を図1?7に示す。塗料缶1は、底板2、側板3a?3dおよび蓋板4を有している。底板2の外周に側板3a?3dが立ち上げられ、これらの上端部に蓋板4が固定されている。塗料缶1の内部には、所定量の塗料が充填される。蓋板4の注ぎ口には、キャップ5が取り付けられる。また、蓋板4の中央部には、取っ手6が取り付けられている。
【0009】側板3a?3dのうち、側板3aの内側には、線状突起10が形成される。線状突起10は、へ字形突起7およびハ字形突起8が上下方向に一定間隔で交互に配置される。
【0010】図3に示すように、へ字形突起7およびハ字形突起8は、側面3aの中心線を挟んで左右対称に延びている。突起部の傾斜角θ1、θ2は、垂直方向に対してともに60?80゜程度に形成される。これにより、ローラ表面との接触面積を比較的大きく確保するとともに、余分な塗料の液切れが良好となり、ローラ表面から浸み出る塗料がこの傾斜に沿って下方へ垂れることになる。」

ウ 「



(8)甲4に記載された技術事項
上記(7)ア?ウの記載から、甲4には、以下の技術事項が記載されていると認める。

「ローラブラシを用いて塗装を行うのに適した塗料缶であって、底板と、この底板の外周に立ち上げられる側板と、この側板の上端部に設けられる蓋板とを有し、前記側板の内側面に、前記ローラブラシのローラ回転を補助するとともに、前記ローラの表面に塗料を均一に馴染ませる、ヘ字状突起7が複数設けられ、当該へ字状突起は上で屈曲した一連なりの線状であり、複数のへ字状突起7,7の形成面に沿って投影された場合に、それらの投影部の少なくとも一部が重なり合うものである線状突起を設けた塗料缶。」

(9)甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
ア 「



(10)甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。
ア 「



(11)甲7の記載
甲7には、以下の記載がある。
ア 「



(12)甲8の記載
甲8には、以下の記載がある。
ア 「



2 申立理由(甲1に記載された発明を引用発明とする進歩性)について
本件発明1と甲1発明との対比
(1)甲1発明と本件発明1とを対比すると、甲1発明の「フランジ2f」、「上端」、「底」は、それぞれ、本件発明1における「縁部」、「上部」、「底部」に相当する。
甲1発明の「内容器2」における「上面が略長方形状で開放し、外側に水平に延びるフランジ2fを有する上端と、前記内容器2の底とを有」する形状は、甲1の図1、図4及び図5からみて、本件発明1における「開口部と前記開口部の周りにある縁部とを有する上部と、前記内容器の底に位置する底部と、側部とを備え」、「前記開口部の形状が略四角形であり、前記開口部が2つの長辺と2つの短辺とを有し、前記側部が4つの面を有する」形状といえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「液体を入れることができる内容器であって、
前記内容器が、開口部と前記開口部の周りにある縁部とを有する上部と、前記内容器の底に位置する底部と、側部とを備え、
前記液体が塗料であり、
前記開口部の形状が略四角形であり、前記開口部が2つの長辺と2つの短辺とを有し、
前記側部が4つの面を有する、
内容器。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明1においては、「前記開口部の面積が前記底部の面積よりも広く、他の前記内容器を重ねることができ」る容器の「前記開口部の前記長辺側にある前記側部の少なくとも1つの面に少なくとも1つの突起部があり、前記少なくとも1つの突起部が、内容器の内側に凸となるように配置され、前記少なくとも1つの突起部は、前記突起部が線状に延びる方向に垂直となる面において、前記少なくとも1つの突起部の断面が曲線となる部分を有し、
前記曲線となる部分により、そこにかかる力が分散され、前記少なくとも1つの突起部が、第1の突起部と第2の突起部を有し、前記第1の突起部と前記第2の突起部とを、それらを有する側面の開口部から底部に延びている辺に投影させた場合、それらの投影部が少なくとも一部重なり、前記第1の突起部と前記第2の突起部が、それらの上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され、前記突起部は全てローラ全体に染みこんだ塗料の量を調整するために使用される」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
甲1には、ローラに染みこんだ塗料を適量にするためのしごき板4を内容器に傾斜して立て掛けるものが記載されていて(甲1の段落【0011】、【0016】及び図1参照)、当該しごき板4は、本件発明1の「突起部」と同様にローラに付いた塗料の量を調整するために用いられるものである。
そうすると、甲1発明において、ローラに付いた塗料の量を調整する部材を設けようとすれば、当該しごき板4を設けるものといえるから、甲1発明において、内容器の内側に上記相違点の構成を採用する動機がない。
さらに、開口部の面積が前記底部の面積よりも広く、他の前記内容器を重ねることができる内容器の開口部の長辺側にある側壁の一部に突起部を設けた構造のものは、異議申立人の提示するいずれの証拠にも開示されていないし、当該構成により、本件発明1は内容器の保管スペースを小さくできるとの効果を奏するものである(本件明細書の段落【0015】)。
なお、甲2に記載されているのは、トレー(容器)に設置されるトレーライナー(内容器)における短辺側の傾斜面(底面)に突起部が設けられているものであるから、突起部を設ける位置が側部でなく、長辺側とも異なるものであり、当該突起部は、トレー(容器)とトレーライナー(内容器)の位置決め用に設けられているものである。
仮に、甲1発明の内容器の側壁に甲2に記載の突起部を設けようとすると、甲1発明の内容器が容器にはまらなくなってしまうから、そうすることには、阻害要因がある。
また、甲3及び甲4には、上記1(6)及び(8)に記載の技術事項が記載されているが、これらは、内容器に突起部を設けるものではない。
してみれば、甲1発明において、相違点に係る構成を採用することは、当業者においても想到容易ではない。

よって、本件発明1は、甲1発明、甲2?4に記載の技術事項等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本件発明2ないし7について
本件発明2ないし7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらにそれぞれの請求項2?7で特定する事項を発明特定事項として有するものである。
そして、本件発明2ないし7と、上記甲1発明とを対比すると、少なくとも上記(1)での相違点で相違し、その判断は、上記(1)のとおりである。
よって、本件発明2ないし7は、甲1発明、甲2?4に記載の技術事項等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)まとめ
以上のことから、異議申立人の申立理由には、理由がない。

第5 むすび

したがって、異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては、特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また、他に特許異議の申立てに係る特許が特許法第113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。

よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2020-03-13 
出願番号 特願2015-75014(P2015-75014)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B05C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤澤 高之加藤 昌人  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
大畑 通隆
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6537033号(P6537033)
権利者 株式会社タイホウ
発明の名称 容器  
代理人 田中 聡  
代理人 嶋 宣之  

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