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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1361843
審判番号 不服2019-4887  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-12 
確定日 2020-04-23 
事件の表示 特願2017-203095「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月18日出願公開、特開2018- 9788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月19日に出願された特願2016-83303号(以下、「原出願」という。)の一部を平成29年10月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年7月4日 特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知
平成30年9月7日 意見書、手続補正書の提出
平成31年2月1日 補正の却下の決定
平成31年2月1日 拒絶査定
平成31年4月12日 審判請求書、手続補正書の提出

なお、平成30年9月7日提出の手続補正書による補正は、平成31年2月1日付けで決定をもって却下された。

第2 平成31年4月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。

「【請求項1】
冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷蔵室または冷凍室は、貯蔵容器が配置され、
前記貯蔵容器内であって、前記貯蔵容器の底面に金属トレイが配置され、
前記金属トレイ表面上に面状の凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられ、
左右方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、奥行方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する、及び/又は、
奥行方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、左右方向に隣接する前記凹部と連続的に位置することを特徴とする冷蔵庫。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲(出願当初のもの)の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷蔵室または冷凍室は、貯蔵容器が配置され、
前記貯蔵容器内であって、前記貯蔵容器の底面に金属トレイが配置され、
前記金属トレイ表面上に凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられたことを特徴とする冷蔵庫。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1を特定するために必要な事項である「凸部」が「面状」であることの限定、さらに、「凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられ」ることについて「左右方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、奥行方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する、及び/又は、奥行方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、左右方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する」ように設けられることの限定を付加する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原査定の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である特開2015-145747号公報には、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。

(ア)引用例1の記載
1a)「【請求項1】
少なくとも冷蔵室、冷凍室、及び野菜室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風機によって前記冷蔵室、冷凍室、及び野菜室に供する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷凍室に少なくとも2つの冷凍貯蔵容器を設け、前記2つの冷凍貯蔵容器の夫々が異なった冷凍温度帯に維持されるように前記冷気供給路から冷気を供給することを特徴とする冷蔵庫。」

1b)「



1c)「【0025】
図2に示すように、上部冷凍室4、下部冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉4a、5a、6aが取り付けられている。また、上部冷凍室4には上部冷凍貯蔵容器41が収納、配置され、下部冷凍室5には上段冷凍貯蔵容器61、下段冷凍貯蔵容器62が収納、配置されている。更に、野菜室6には上段野菜貯蔵容器71、下段野菜貯蔵容器72が収納、配置されている。
【0026】
そして、製氷室扉3a、上部冷凍室扉4a、下部冷凍室扉5a及び野菜室扉6aは、それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、製氷貯蔵容器3b(図示せず)、上部冷凍貯蔵容器41、下段冷凍貯蔵容器62、下段野菜貯蔵容器72が引き出せるようになっている。
【0027】
詳しくは、下段冷凍貯蔵容器62は冷凍室扉内箱に取り付けられた支持アーム5dに下段冷凍貯蔵容器62の側面上部のフランジ部が懸架されており、冷凍室扉5aを引き出すと同時に下段冷凍貯蔵容器62のみが引き出される。上段冷凍貯蔵容器61は冷凍室5の側面壁に形成された凹凸部(図示しない)に載置されており前後方向にスライド可能になっている。
【0028】
下段野菜貯蔵容器72も同様にフランジ部が野菜室扉6aの内箱に取り付けられた支持アーム6dに懸架され、上段野菜貯蔵容器71は野菜室側面壁の凹凸部に載置されている。また、この野菜室6には断熱箱体15に固定された電熱ヒーター6Cが設けられており、この電熱ヒーター6Cによって野菜室6の温度が冷やし過ぎにならないように、野菜の貯蔵に適した温度になるようにしている。尚、この電熱ヒーター6Cは必要に応じて設けられれば良いものであるが、本実施例では野菜の貯蔵がより上手く行えるように電熱ヒーター6Cを設けるようにしている。
【0029】
次に本実施形態の冷蔵庫の冷却方法について説明する。冷蔵庫本体1には冷却器収納室13が形成され、この中に冷却手段として冷却器19を備えている。冷却器19(一例として、フィンチューブ熱交換器)は、下部冷凍室5の背部に備えられた冷却器収納室13内に設けられている。また、冷却器収納室13内であって冷却器19の上方には送風手段として送風機20(一例として、プロペラファン)が設けられている。
【0030】
冷却器19で熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器19で熱交換した低温の空気を「冷気」と称する)は、送風機20によって冷蔵室送風ダクト21、冷凍室送風ダクト22、及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室2、製氷室3、上部冷凍室4、下部冷凍室5、野菜室6の各貯蔵室へそれぞれ送られる。
【0031】
各貯蔵室への送風は、冷蔵温度帯の冷蔵室2への送風量を制御する第一の送風制御手段(以下、冷蔵室ダンパ23という)と、冷凍温度帯の冷凍室4、5への送風量を制御する第二の送風量制御手段(以下、冷凍室ダンパ24という)とにより制御される。ちなみに、冷蔵室2、製氷室3、上部冷凍室4、下部冷凍室5、及び野菜室6への各送風ダクトは、図3に破線で示すように冷蔵庫本体1の各貯蔵室の背面側に設けられている。具体的には、冷蔵室ダンパ23が開状態、冷凍室ダンパ24が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト21を経て多段に設けられた吹き出し口25から冷蔵室2に送られる。」

1d)「



1e)「【0037】
図4は本発明の第1の実施形態を示している。本実施例では上部冷凍室4を2つ以上の異なった冷凍温度帯の領域を形成するようにしたものである。また、図5は図4に示す実施例の変形例を示している。本実施例で、上部冷凍室4を2つ以上の異なった冷凍温度帯の領域を形成するのは、調理した少量の食品や、その日のうちに食べたい少量の食品が急速冷凍や緩慢冷凍の対象となる傾向が強いことによっている。したがって、このような理由から、容積の少ない上部冷凍室4を2つ以上の異なった冷凍温度帯の領域を形成するのが望ましいものである。
【0038】
図4において、上部冷凍室4には透明な合成樹脂から形成された上部冷凍貯蔵容器44Aと下部貯蔵容器44Bとが収納されており、これらは上下二段になるように重ねられて収納されている。上部冷凍貯蔵容器44Aは上面が開口された上面開口を有する有底の箱状の容器であり、同様に下部貯蔵容器44Bも上面が開口された上面開口を有する有底の箱状の容器である。これらの冷凍貯蔵容器44A、44Bを重ねることによって、上部冷凍貯蔵容器44Aの底面が下部冷凍貯蔵容器44Bの蓋となって上部冷凍貯蔵容器44A自体が上部冷凍室44の冷凍温度帯を分ける仕切の役割を果たすようになっている。
【0039】
そして、上部冷凍室扉4aの取手部(図示せず)に手を掛けて手前側に引き出すことにより、上部冷凍貯蔵容器44Aと下部冷凍貯蔵容器44Bが引き出せるようになっている。引き出された上部冷凍貯蔵容器44Aと下部冷凍貯蔵容器44Bは一部が互いに重なり、下部冷凍貯蔵容器44Bが外部に露出する状態となる。尚、上部冷凍貯蔵容器44Aは前後方向にスライド可能になっている。
【0040】
上部冷凍室4専用のダンパ、或いはシャッター等により流量が調整された冷気は、冷気供給路45を通って上部冷気吹き出し口46及び下部冷気吹き出し口47から吹き出すように、上部冷凍貯蔵容器44Aと下部冷凍貯蔵容器44Bとに分流して供給されるようになっている。
【0041】
上部冷気吹き出し口46は上部冷凍貯蔵容器44Aの上面開口に向けて開口されており、このため、上部冷気吹き出し口46から供給された冷気は、上部冷凍貯蔵容器44Aの上面開口を通って直接的に上部冷凍貯蔵容器44A内に流入する。これによって、上部冷凍貯蔵容器44A内の食品は急速に冷凍されることになる。」

1f)「【0045】
更に、急速冷凍を行う上部冷凍貯蔵容器44Aの底面には熱伝導率が高い熱良導性部材、例えばアルミニウムからなる金属トレー48が設置されており、供給された冷気によって食品を急速に冷却できるようにしても良い。また、緩慢冷凍を行う下部冷凍貯蔵容器44Bの内周側の底壁面や側壁面には熱伝導率が低い熱断熱性部材、例えばポリエチレンからなる合成樹脂貯蔵容器49が設置されており、外壁面から進入してくる冷気の冷熱を抑制して食品を緩慢に冷却できるようにしても良い。」

(イ)引用発明
上記(ア)の記載を総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「冷蔵室2、上部冷凍室4及び下部冷凍室5を形成する断熱箱体15と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風機20によって前記冷蔵室2に供給する冷蔵室送風ダクト21と、並びに前記上部冷凍室4及び前記下部冷凍室5に供給する冷凍室送風ダクト22とを備えた冷蔵庫において、
前記上部冷凍室4には、上部冷凍貯蔵容器44Aが配置され、
前記上部冷凍貯蔵容器44Aの底面には金属トレー48が設置されている、冷蔵庫。」

イ 引用例2
原査定の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である実願平1-148561号(実開平3-87681号)のマイクロフィルムには、図面とともに以下の記載がある

(ア)引用例2の記載
2a)「熱伝導率の小さい材料から成り、食品を載置する底部の表面に、複数の突部を設けていることを特徴とする食品急速冷凍用トレイ。」(明細書第1ページ第5ないし7行)

2b)「



2c)「冷凍食品製造の場合、とくに鮮魚、肉類については、凍結時の細胞膜破壊を防止するために急速冷凍が要求される。また、急速冷凍するには、冷凍室内を-40℃以下の極低温に保ち、しかも食品の伝熱境膜を薄くするためには、冷凍室内の環流風速を上げることが効果的である。
しかしながら、従来のトレイは、急速冷凍食品を収容するためのトレイとしては不適当である。すなわち、従来のトレイによると、第14図に示すように、たとえば、冷凍される魚Fの下面が広範囲にわたってトレイ11の底部12と面接触するため、この部分の通風が遮断される。そのうえ、トレイ11がプラスティックのような断熱性材料から成形されていると、魚Fの、前記面接触部分が冷却されるのに時間がかかり、この部分が冷却開始当初に未凍結となる。」(明細書第2ページ第4ないし19行)

2d)「急速冷凍が開始されると、冷気は冷凍室内に生起される風にのって食品の周囲を通過するにあたり、トレイと食品との隙間に対しても他の面と同じように連続的に通過する。このため、食品は全周面から均一に冷やされ、全体が平均的に急速冷凍され、短時間で完全冷凍状態に達する。」(明細書第4ページ第2ないし7行)

2e)「






2f)「第1図は、本考案の一実施例を示す断面図であり、第2図は第1図の切断面線II-II断面図である。
本考案のトレイ1は、たとえば魚Fが、その鮮度を長期にわたり維持するため急速冷凍されるにあたり、魚Fに冷凍室内の汚損物質が接触して不衛生となるのを防止するとともに、冷凍効率を高めるために、魚を個々に切離した状態で冷凍することができる簡便な収容容器として用いられる。
トレイ1の材料としては、熱伝導率が小さく断熱性に富み、軽く、触感が良好でかつ、扱い易いものが好適であり、とくに、発泡スチロールが多く用いられる。
金属製のトレイは氷点下になると扱う人の手などにくっつくため扱い難く、凍傷を起こす危険もあるので冷凍用としては不向きである。
実施例のトレイ1は、2?3mm厚の発泡スチロールを用いて成形される。トレイ1には、底部2の表面に複数の突部3が形成される。この突部3は円錐状の突起4である。この突起4は、トレイ1に収容される魚Fを、この魚Fとトレイ1の底部2との間に空間が形成されるように点接触状態で支持する(第1図参照)。
この空間は冷気が自由に通過可能な隙間であり、1?2mmが好ましい。
この空間を確保するために突起4は、第3図の平面図および第4図の断面図に示すように、高さhとして2?3mmが必要である。基部径dは4?5mmが適当である。隣接する突起間のピッチm,nは1?2cmが望ましい。
また突起4の配列は、第3図示のような千鳥状は勿論、魚Fを点接触状態で支持可能であればいかなる配列でもよい。
このトレイ1に魚Fを収容し、突起4によって魚Fを点接触状態に支持した状態で冷凍室に投入する。冷凍室内では、風速2?5m/秒程度の冷気を循環させている。
このようにして急速冷凍が行われると、冷凍室内を循環する冷気は、魚Fの外周面全面に接触しながら通過するので、魚Fは全周面から均一に冷凍が始まり、短時間で完全冷凍に達する。」(明細書第4ページ第9行ないし第6ページ第9行)

(イ)引用例2記載の技術
上記(ア)の記載を総合すると、引用例2には以下の技術(以下、「引用例2技術」という。)が記載されている。

「冷凍室内における食品を載置するトレイの底部の表面に複数の突部を設けて食品とトレイの底部との間に冷凍室内の冷気が通過するための空間を形成することにより、冷凍室内で食品を全周面から均一に冷凍する技術。」

ウ 引用例3
原査定の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である特開昭59-26473号公報には、図面とともに以下の記載がある

(ア)引用例3の記載
3a)「箱形に成形した発泡スチロール等の断熱材製のケースの四隅又は側壁部に適数個の保冷材収納室を形成し、該ケースの底部には冷気循環用の溝が縦横に配設され、該溝と前記保冷材収納室を連通させたことを特徴とする生鮮食料品運搬用ケース。」(第1ページ左欄第5ないし10行)

3b)「



3c)「第1図は生鮮食料品の運搬用のケース1を示している。ケース1は発泡スチロールにより四角の箱形に一体成形され、肉厚に形成されたケース1の四隅には円柱状の空間をもつ有底の保冷材収納室2が縦設されている。これらの保冷材収納室2の内側壁には縦にスリット3がそれぞれ設けられ、このスリット3はケース1の底部まで達している。4はケース1の底部全体に縦横に形成された溝であり、溝4は四隅でスリット3に連通し、よって、保冷材収納室2は全てケース底部の溝4に連通している。尚8は側壁部に適数個設けられた保冷材収納室である。」(第1ページ右欄第20行ないし第2ページ左上欄第11行)

3d)「以上説明したように、この発明の生鮮食料品運搬用ケースによれば、箱形発泡スチロール製ケースの四隅又は側壁部に保冷材収納室を設け、ケースの底部には縦横に溝を形成すると共に、溝と各保冷材収納室を連通させて構成したから、保冷材収納室に保冷材を入れて生鮮食料品を輸送する間、溝を通して冷気をケース内に流し、ケース内の温度上昇をおさえて鮮度を保つことができる。」(第2ページ左下欄第5ないし12行)

3e)第1図、第2図の図示内容からみて、生鮮食料品運搬用ケース1の底部に複数設けられた溝4は、縦横に連続したものであることが分かる。

(イ)引用例3に記載された事項
上記(ア)の記載を総合すると、引用例3には以下の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されている。

「生鮮食料品運搬用ケース1の底部全体に冷気を流すため、該底部に複数設けられた縦横に連続した溝4を形成すること。」

エ 引用例4
原査定の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例である特開平6-171674号公報には、図面とともに以下の記載がある。

(ア)引用例4の記載
4a)「【請求項1】 側壁と底とが一体的に発泡樹脂にて形成された容器本体と、該容器本体の開口部に被せられて密閉し得る発泡樹脂にて形成された蓋とから構成される容器において、前記容器本体の少なくとも側壁の内面側に熱媒体を配設したことを特徴とする均一温度保持容器。」

4b)「【請求項4】 前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する均一温度保持容器において、前記熱媒体が配設される容器本体の側壁若しくは底又は蓋の内面と該熱媒体との間に通気溝を設けたことを特徴とする均一温度保持容器。」

4c)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は均一温度保持容器に関し、容器内温度が均一に保たれる発泡樹脂製容器を提供するものであり、例えば活魚を氷温に保持して高度の鮮度を保持した状態で、又は仮死状態で活かしたまま搬送することができる均一温度保持容器に関する。」

4d)「【0020】上記、本発明に係る均一温度保持容器において、熱媒体が配設される容器本体の側壁若しくは底又は蓋の内面と、熱媒体との間に通気溝を設けることにより、通気溝を冷却あるいは加熱された空気が流通して通気溝の端部、すなわち容器内部の隅部から内部が冷却又は加熱される。このため、均一温度保持容器は容器内部に温度分布が生ずることはなく、均一に冷却保持される。また、この均一温度保持容器は容器内を熱媒体の温度と全重量や容器の構造によって所定の温度に設定保持することが可能となる。」

4e)「



4f)「【0037】次に、蓄冷材は円柱形のものに限定されず、四角形、六角形その他の多角形であっても良い。また図8に示すように、容器本体52の側壁54の内面全体を覆うように平板状に形成された蓄冷材56を用いても良い。蓄冷材56は容器本体52の角部に形成された支持部材58によって側壁54の内面に密着し立設するように構成されている。また、側壁54の内面には1又は複数の通気溝60と、その通気溝60に続いて底62にも溝64が形成されていて、通気溝60を流れる冷却された空気が溝64を通じて底62に流れ込むように構成されている。」

4g)図8の図示内容からみて、均一温度保持容器の底62に複数設けられた溝64は、縦横に連続したものであることが分かる。

(イ)引用例4に記載された事項
上記(ア)の記載を総合すると、引用例4には以下の事項(以下、「引用例4記載事項」という。)が記載されている。

「活魚を氷温に保持して高度の鮮度を保持した状態で、又は仮死状態で活かしたまま搬送することができる均一温度保持容器66の底62に、冷却された空気が流れ込むことにより均一に冷却保持するための縦横に連続した溝64を設けること。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「冷蔵室2」は、本願補正発明における「冷蔵室」に相当し、以下同様に、「上部冷凍室4」、「下部冷凍室5」は「冷凍室」に、「断熱箱体15」は「断熱箱体15」に、「送風機20」は「送風ファン」に、「冷蔵室送風ダクト21」、「冷凍室送風ダクト22」は「冷気供給路」に、「上部冷凍貯蔵容器44A」は「貯蔵容器」に、「金属トレー48」は「金属トレイ」にそれぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷蔵室または冷凍室は、貯蔵容器が配置され、
前記貯蔵容器内であって、前記貯蔵容器の底面に金属トレイが配置された、冷蔵庫。」

[相違点]
本願補正発明においては「前記金属トレイ表面上に面状の凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられ、左右方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、奥行方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する、及び/又は、奥行方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、左右方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する」のに対して、引用発明においては、金属トレー48の表面の形状について不明である点。

以下、相違点について検討する。

[相違点について]
引用例2技術は、「冷凍室内における食品を載置するトレイの底部の表面に複数の突部を設けて食品とトレイの底部との間に冷凍室内の冷気が通過するための空間を形成することにより、冷凍室内で食品を全周面から均一に冷凍する技術」であって、食品を全周面から均一に冷凍するために、冷凍室内のトレイの底部に設けた複数の突起により、食品のトレイの底部に対向する部分に冷気が通過するための空間を設けることについて示唆している。
さらに、食品を均一に冷却するために、食品を保持する容器の底部に、冷却された空気が流れ込む縦横に連続した複数の溝を設けることも、引用例3記載事項及び引用例4記載事項をみれば、周知の技術的事項(以下、「周知技術」という。)であって、容器の底部、すなわち平面部分に縦横に設けた連続した複数の溝を凹部とすれば、凹部以外の容器の底部は相対的に面状の凸部となり、凸部の間の奥行方向あるいは左右方向に隣接した凹部が連続的に位置したものとなるのは引用例3(第1図、第2図)や引用例4(図8)の図面をみても明らかである。
そうすると、引用発明において、食品を全周面から均一に冷凍するために引用例2技術を適用して、金属トレー48の表面に複数の突起を設けることにより、食品と金属トレー48の底部に対向する部分に冷気が通過するための空間を設けることに困難性はなく、その際に、金属トレー48の表面、すなわち底部に冷気が通過するための空間を設ける形態として上記周知技術を参酌して、食品を保持する容器の底部に縦横に連続した複数の溝が形成されるものを採用することにより、上記相違点に係る本願補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、引用例2技術、及び周知技術から予測される範囲内であって格別顕著なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2技術、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)審判請求書における主張について
ア 請求人は、「急速冷却性等のために金属トレーを前提とする引用文献1が、低熱伝導率の発泡スチロールを前提とする引用文献2-4の凹凸形状(しかも引用文献2は、金属製にすることを不適としています。)を採用するには動機付けが必要と思料しますが、それを与える記載は引用文献1-4にありません。」(審判請求書第6ページ下から5行ないし1行)と主張するのでこの点について検討する。
引用例2においては、「金属製のトレイは氷点下になると扱う人の手などにくっつくため扱い難く、凍傷を起こす危険もあるので冷凍用としては不向きである。」(上記(2)2d))と記載されるものの、金属製のトレイに突部を設けることを否定するものではなく、また、引用例2技術における「トレイの底部の表面に複数の突部」を設けることは、「冷気」を「冷凍室内に生起される風にのって食品の周囲を通過するにあたり、トレイと食品との隙間に対しても他の面と同じように連続的に通過」(上記(2)2d))させるためであって、トレイの材質によるものではない。
したがって、「食品を全周面から均一に冷凍するため」という引用発明において引用例2技術を適用するための動機付けは、トレイの材質にかかわらず存在する。

イ さらに、請求人は、「引用文献3,4は、冷蔵庫と異なり冷凍サイクルから冷気が供給されるものではありませんから、急速冷却性を考慮する引用文献1とは技術分野が異なるところ、異なる技術分野の文献を組合せる動機付けは引用文献1-4にはありません。」(審判請求書第6ページ末行ないし第7ページ第3行)と主張する。
しかし、引用例3及び引用例4には、それぞれ保冷材等から供給される冷気を容器底部に設けられた溝に流して容器の底部全体に冷気を流すことについて記載されており、容器に冷気を供給して食品を冷却するという機能において引用例1の冷蔵庫と共通するから、引用例3記載事項及び引用例4記載事項を引用発明に適用する動機付けは存在する。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由:
この出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願日前に頒布された下記引用例1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例一覧>
1.特開2015-145747号公報
2.実願平1-148561号(実開平3-87681号)のマイクロフィルム
3.特開昭59-26473号公報
4.特開平6-171674号公報

3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし4の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。

4 判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明から「凸部」が「面状」であることの限定、及び「凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられ」ることについて「左右方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、奥行方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する、及び/又は、奥行方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、左右方向に隣接する前記凹部と連続的に位置する」ように設けられることの限定を省いたものであるから、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2 2(3)に記載したとおり、引用発明、引用例2技術、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用例2技術、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-02-19 
結審通知日 2020-02-25 
審決日 2020-03-09 
出願番号 特願2017-203095(P2017-203095)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 松下 聡
塚本 英隆
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 戸田 裕二  

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