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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1361995
審判番号 不服2018-11596  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-28 
確定日 2020-04-30 
事件の表示 特願2017- 54721「再生装置、記録媒体、表示装置、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日出願公開、特開2017-143546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月28日に出願した特願2014-70331号の一部を平成29年3月21日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 4月14日 :手続補正書、上申書の提出
同年 6月21日 :手続補正書、上申書の提出
平成30年 3月 5日付け:拒絶理由通知書
同年 5月 7日 :手続補正書、意見書の提出
同年 5月22日付け:拒絶査定
同年 8月28日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年8月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成30年8月28付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であり、平成30年5月7日付け手続補正により補正された請求項7(以下、「補正前の請求項7」という。)を、以下の請求項7(以下、「補正後の請求項7」という。)とする補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所である。)
符号A?E2は説明のため当審で付与したものであり、以下、発明特定事項A?発明特定事項E2と称する。各請求項において同じ記載内容の発明特定事項には同じ符号を付し、本件補正により補正された発明特定事項の符号には「’」を付した。下線は補正箇所である。

(補正前の請求項7)
【請求項7】
(A)HDRの映像を含むコンテンツのビデオストリームのファイルと、
(B)前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度を表すモニタ情報を含む再生管理情報のファイルと
(C)が記録された記録媒体であって、
(D)前記ビデオストリームのファイルと前記再生管理情報のファイルとを前記記録媒体から取得した再生装置においては、
(E1)前記コンテンツの出力先となる表示装置が前記モニタ情報を理解することができる装置である場合には、
(E2)前記モニタ情報を前記表示装置に出力する処理が行われる
(C)記録媒体。

(補正後の請求項7)
【請求項7】
(A)HDRの映像を含むコンテンツのビデオストリームのファイルと、
(B)前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度を表すモニタ情報を含む再生管理情報のファイルと
(C’)を含むデータ構造のデータを記録した記録媒体であって、
(D’)前記ビデオストリームのファイルと前記再生管理情報のファイルとを前記記録媒体から取得する取得部と、出力部とを備える再生装置が、
(E1)前記コンテンツの出力先となる表示装置が前記モニタ情報を理解することができる装置である場合には、
(E2’)前記出力部から、前記モニタ情報を前記表示装置に出力する処理に用いられる
(C)記録媒体。

2 本件補正の適否

(1)本件補正の補正事項
本件補正における請求項7に係る補正事項は、以下のとおりである(以下、「補正事項ア」?「補正事項ウ」という。)。

(補正事項ア)
発明特定事項Cの「記録媒体」を、発明特定事項C’の「を含むデータ構造のデータを記録した記録媒体」とする補正

(補正事項イ)
発明特定事項Dの「前記記録媒体から取得した再生装置においては」を、発明特定事項D’の「前記記録媒体から取得する取得部と、出力部とを備える再生装置が」とする補正

(補正事項ウ)
発明特定事項E2の「前記モニタ情報を前記表示装置に出力する処理が行われる」を、発明特定事項E2’の「前記出力部から、前記モニタ情報を前記表示装置に出力する処理に用いられる」とする補正

(2)補正の目的
補正事項アは、発明特定事項Cの「記録媒体」について、「を含むデータ構造のデータを記録した」との限定を加えるものであり、
補正事項イは、発明特定事項Dの「再生装置」について、「取得部と、出力部とを備える」との限定を加えるものであり、
補正事項ウは、発明特定事項Dの「再生装置」において行われる処理(発明特定事項E2)について、「前記出力部から、前記モニタ情報を前記表示装置に出力する処理に用いられる」との限定を加えるものであるから、
補正事項ア?ウは、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえ、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当する。

(3)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更
補正事項ア?ウは、願書に最初に添付した明細書の段落【0202】及び【0210】に記載されているから、補正事項ア?ウは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでないといえるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件
上記(2)のとおり本件補正のうち請求項7に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項7に係る発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(4-1)補正発明
本件補正後の請求項7に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記1(補正後の請求項7)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(4-2)補正発明の発明特定事項について

ア 補正発明の「記録媒体」の構成

(ア)補正発明の「記録媒体」は、発明特定事項Cにより特定されるものであって、発明特定事項Aの「ビデオストリームのファイル」と発明特定事項Bの「再生管理情報のファイル」を含む「データ構造のデータ」を記録した記録媒体である。

(イ)補正発明の「データ構造のデータ」が含む「ビデオストリームのファイル」は、発明特定事項Aにより特定されるものであって、「HDRの映像を含むコンテンツのビデオストリーム」のファイルである。

(ウ)補正発明の「データ構造のデータ」が含む「再生管理情報のファイル」は、発明特定事項Bにより特定されるものであって、「前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度を表すモニタ情報を含む再生管理情報」のファイルである。

イ 補正発明の「記録媒体」の「データ構造のデータ」に基づき実行される情報処理

(ア)補正発明の「記録媒体」が用いられる情報処理は、発明特定事項D’?発明特定事項E2’に特定されるものであって、「取得部と、出力部とを備える再生装置」が実施する情報処理である。
そして、補正発明の「記録媒体」が記録する「データ構造のデータ」が「取得部と、出力部とを備える再生装置」が実施する情報処理に供される情報である。

(イ)発明特定事項D’の再生装置の「取得部」が実施する情報処理に供される情報である「データ構造のデータ」は、上記ア(ア)のとおり「ビデオストリームのファイル」と「再生管理情報のファイル」を含むものであって、
発明特定事項D’の情報処理は、当該「ビデオストリームのファイル」と「再生管理情報のファイル」を、「記録媒体から取得する」情報処理である。

(ウ)発明特定事項D’の再生装置の「出力部」が実施する情報処理に供される情報である「モニタ情報」は、上記ア(ウ)のとおり「再生管理情報のファイル」に含まれる「前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度を表すモニタ情報」であって、
発明特定事項E2’の情報処理は、当該「モニタ情報」を「前記表示装置に出力する処理」を実施するものである。

(エ)ここで、再生装置の「出力部」における発明特定事項E1については、情報処理に供される情報、即ち、「前記コンテンツの出力先となる表示装置が前記モニタ情報を理解することができる装置である場合」という判断処理を実施するために用いる情報は、請求項7には特定されていない。

(4-3)補正発明の発明該当性についての判断

ア データ構造について

(ア)補正発明において、「データ構造のデータ」は、上記(4-2)アのとおりであって、「ビデオストリームのファイル」及び「再生管理情報のファイル」を有し、
当該「ビデオストリームのファイル」は、「HDRの映像を含むコンテンツのビデオストリーム」のファイルであり、当該「再生管理情報のファイル」は「前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度を表すモニタ情報を含む再生管理情報」のファイルである。
ここで、補正発明において、発明特定事項C’は、「データ構造のデータ」のデータ要素の構成について、「ビデオストリームのファイル」と「再生管理情報のファイル」を含むことのみ記載があり、データ要素のその他の構成を特定する記載は発明特定事項A?E2’には存在しない。

(イ)補正発明において、「ビデオストリームのファイル」は、発明特定事項Aにおいて「HDRの映像を含むコンテンツのビデオストリーム」と記載があるから、当該「ビデオストリーム」は、「HDRの映像を含むコンテンツ」を内容とすることは特定されている。
しかしながら、当該「ビデオストリーム」のデータ要素の構成については、「HDRの映像」を含むとする他に、これを特定する記載は発明特定事項A?E2’には存在しない。

(ウ)補正発明において、「再生管理情報のファイル」は、発明特定事項Bにおいて「前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度を表すモニタ情報を含む」と記載があるから、当該「再生管理情報」は、「モニタ情報」を含むこと、また、当該「モニタ情報」は、「前記ビデオストリームの再生に用いられる、映像の制作に用いられたマスターモニタの最大輝度」を表す内容であることは特定されている。
しかしながら、当該「再生管理情報」のデータ要素の構成については、「モニタ情報」を含むとする他に、これを特定する記載は発明特定事項A?E2’には存在しない。

(エ)上記(ア)?(ウ)によれば、補正発明において、「データ構造のデータ」は、2つのファイル(「ビデオストリームのファイル」及び「再生管理情報のファイル」)を含むこと、各ファイルの内容(「ビデオストリームのファイル」は「HDRの映像を含むコンテンツ」、「再生管理情報のファイル」はビデオストリームの再生に用いられる「モニタ情報」)を特定しているのみであり、各ファイルのデータ要素について、データ要素の具体的構成が表されているとはいえない。
そして、補正発明において、「データ構造のデータ」は、データ要素の具体的構成を表してないから、当然に、データ要素間の関係が表されているとはいえない。

以上のとおり、補正発明において、「データ構造のデータ」は、「ビデオストリーム」と「再生管理情報」のデータ要素の具体的構成が表されているとはいえず、また、データ要素間の関係が表されているとはいえない。

イ 「プログラムに準ずるデータ構造」について

(ア)補正発明において、「データ構造のデータ」に基づき実行される情報処理は、上記(4-2)イのとおりであって、「データ構造のデータ」が有する「ビデオストリームのファイル」と「再生管理情報のファイル」を「記録媒体から取得する」情報処理と、「再生管理情報のファイル」に含まれる「モニタ情報」を「前記表示装置に出力する処理」とを実施するものである。

(イ)上記アで検討したとおり、補正発明において、「データ構造のデータ」は、「ビデオストリーム」と「再生管理情報」のデータ要素の具体的構成、データ要素間の関係は表されていないのであるから、上記(ア)の情報処理においてデータ要素の具体的構成、データ要素間の関係により定める情報処理が特定されているとはいえない。

(ウ)よって、補正発明において、「データ構造のデータ」は、データ要素の具体的構成、データ要素間の関係により定める情報処理が特定されているとはいえないから、補正発明のデータ構造は、コンピュータに対する指令が一の結果を得ることができるように組み合わされたプログラムに類似する性質を有しているとはいえない。
したがって、補正発明のデータ構造は、プログラムに類似する性質を有するデータ構造を有していない点で、「プログラムに準ずるデータ構造」を有するデータとはいえない。

ウ 記録媒体について

補正発明の「データ構造のデータを記録した記録媒体」は、上記(4-2)ア(ア)のとおりであって、「データ構造のデータ」の記録媒体への記録を単に特定しているに過ぎないから、「データ構造のデータ」を記録した記録媒体におけるデータ構造に基づく情報処理を具体的に行うものとはいえない。
よって、補正発明の「データ構造のデータを記録した記録媒体」は、「プログラムに準ずるデータ構造」を有しているとはいえない。
そして、補正発明の「データ構造のデータを記録した記録媒体」に基づく情報処理については、上記(4-2)イのとおりであって、「取得部と、出力部とを備える再生装置」が実施する情報処理(「ビデオストリームのファイル」と「再生管理情報のファイル」を「記録媒体から取得する」情報処理と、「再生管理情報のファイル」に含まれる「モニタ情報」を「前記表示装置に出力する処理」)に用いられるという用途を記載したに過ぎない。

エ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、補正発明は、「記録媒体」に記録されたデータのデータ構造が、コンピュータによる情報処理を規定するものであるので、請求項7,8に記載されたものは、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、「発明」に該当するとの主張を行っている。
しかしながら、上記イのとおりであるから、当該主張を採用することはできない。

オ 小括

以上のとおり、補正発明は、「プログラムに準ずるデータ構造」を有しているとはいえず、「取得部と、出力部とを備える再生装置」が実施する情報処理に用いられるという用途を記載したものに過ぎず、「人為的な取決め」を記載したにとどまるものといえる。
したがって、補正発明は、全体としてみて、人為的な取決めを記載したにとどまるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。

(4-4)まとめ
上記(4-1)?(4-3)のとおりであるから、補正発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、同条第1項に規定する「発明」に該当しない。
したがって、補正発明は、特許を受けることができる発明の要件を満たしておらず、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月28付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成30年5月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項7に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(補正前の請求項7)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項7,8に記載された発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない、というものである。

3 本願発明の発明該当性についての判断

ア 本願発明は、上記第2[理由]2(1)のとおり、補正発明の発明特定事項C’の補正事項ア、発明特定事項D’の補正事項イ及び発明特定事項E2’の補正事項ウを除いた発明特定事項からなる発明である。

イ そうすると、上記第2[理由]2(4)(4-3)ア?エの判断と同じく、本願発明は、「プログラムに準ずるデータ構造」を有しているとはいえず、「再生装置」が実施する情報処理に用いられるという用途を記載したに過ぎず、「人為的な取決め」を記載したにとどまるものといえる。

ウ したがって、本願発明は、全体としてみて、人為的な取決めを記載したにとどまるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-28 
結審通知日 2020-03-03 
審決日 2020-03-17 
出願番号 特願2017-54721(P2017-54721)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川中 龍太  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 菊池 智紀
渡辺 努
発明の名称 再生装置、記録媒体、表示装置、および情報処理方法  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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