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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1361999 |
審判番号 | 不服2018-15742 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-28 |
確定日 | 2020-04-30 |
事件の表示 | 特願2018- 19002「アプリケーション処理システム、アプリケーション処理方法、及びアプリケーション処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月22日出願公開,特開2019-136066〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成30年2月6日に出願された特許出願であって,同年4月11日付けで拒絶理由が通知され,同年7月3日に意見書及び手続補正書が提出され,同年8月29日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。 本件拒絶査定不服審判事件は,原査定を取り消す,本件出願は特許すべきものとする,との審決を求めて,同年11月28日に請求されたものである。 2 請求項1に係る発明 本件出願の請求項1ないし10に係る発明は,平成30年7月3日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち請求項1の記載は次のとおりである。 「一又は複数のコンピュータプロセッサを備え,ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに仮想キャラクタを含む仮想空間の画像を出力することにより前記ユーザに前記仮想キャラクタとのインタラクションを提供するアプリケーション処理システムであって, 前記一又は複数のコンピュータプロセッサは,コンピュータ読み取り可能な命令を実行することにより, 前記ヘッドマウントディスプレイによって検出される一又は複数の検出情報に基づいて,前記仮想キャラクタに対して行われるアクションであって前記仮想空間における前記ユーザの頭部の動きと関連づけられている第1アクションを特定し, 前記仮想空間に含まれている特定オブジェクトが選択されたことに応じ,前記一又は複数の検出情報に基づいて,前記仮想キャラクタに対して行われるアクションであって前記仮想空間における前記ユーザの頭部の動きと関連づけられていない第2アクションを特定し, 前記特定オブジェクトは,第1メニューアイテム及び第2メニューアイテムに関連づけられており, 前記第2アクションは,前記第1メニューアイテムに関連づけられた第1メニューアイテムアクション,及び,前記第2メニューアイテムに関連づけられた第2メニューアイテムアクションを含み, 前記第2メニューアイテムアクションは,前記第1メニューアイテムアクションとは異なる動作に対応するアクションであり, 前記第1メニューアイテムの注視後に前記一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,前記第1メニューアイテムアクションが前記第2アクションとして特定され,前記第2メニューアイテムの注視後に前記一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,前記第2メニューアイテムアクションが前記第2アクションとして特定される, アプリケーション処理システム。」(以下,「本件発明」という。) 3 原査定の拒絶の理由の概要 本件発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略,本件発明は,その出願前日本国内または外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 原査定の拒絶の理由において引用された引用例は,次のとおりである。 引用文献1:ホッと一息できるVRアプリ「カフェかの」のメイドが可愛すぎる!,ペンギンVR[online],2017年10月17日,[2018年4月10日検索],インターネット<URL:http://penguin-vr.com/cafekano> 引用文献2:.「パンチライン VRミュージアム」大型アップデート!女の子にイタズラ「シナモンモード」実装,PANORA[online],2017年2月3日,[2018年4月10日検索],インターネット<URL:http://panora.tokyo/19917/> 4 引用例 (1)引用文献1 ア 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は,本件出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線部は,後述する「引用発明」の認定に特に関係する箇所を示す。) 「2017.10.17 SmartPhoneVR ホッと一息できるVRアプリ『カフェかの』のメイドが可愛すぎる! ・・・(中略)・・・ 『VRカフェかの』は,可愛らしいウェイトレスが接客するカフェを訪ねられるVRアプリだ。 能登谷れあちゃんがウェイトレスを務めるカフェは,オープンしたばかりのお店。 そこに通って常連客となり,れあちゃんといろいろな会話を通していくことでコミュニケーションを図っていくことになる。 ただれあちゃんの話を聞いているだけではなく,れあちゃんからは時折質問も投げかけられるので,逐一回答をしてあげると,回答に応じた反応をみせてくれるのだ。 ・・・(中略)・・・ |リアルにコミュニケーションを取る空気感も感じられる! れあちゃんとの会話ではメニューを選んだり,Yes/Noクエスチョンがあったりと,こちらから意思表示をする機会があることも「VRカフェかの」がリアルな空気感を漂わせているポイントだ。 Yes/Noクエスチョンでは,VRアプリによくある注視による回答の選択,ではなくうなずきや首振りによって回答を選ぶことができる。 更には質問に制限時間があったりと,れあちゃんとのコミュニケーションを身をもって感じることができるようになっている。 ・・・(中略)・・・ |カフェに入ってから タイトル画面をタップすると『一眼モード』,『二眼モード』にかかわらず,画像のような画面が表示される。 VRゴーグルを使っていない場合でも,5秒間端末を立てておく必要があるので注意しよう。 ゲームが始まると,れあちゃんといろいろなお話ができる。 中には選択肢が出て来るものもあるので,選びたい選択肢を注視して選択しよう。 Yes/Noクエスチョンでは,先ほども触れたが,頷くことでYes,首を横に振ることでNoの意思表示ができる。(筆者は最初これを分からずにれあちゃんが困る選択肢ばかり強制的に選ばされてしまった......。同じ轍を踏んではならない!) このようにして質問に答えたり,レアちゃんの話を聞いているうちに時間が来て退店,と言った流れになっている。 ・・・(中略)・・・ アプリ VRカフェかの ジャンル シミュレーション メーカー ファンタジスタ 価格 無料 対応機種 iOS/Android 配信日 配信中」 イ 引用文献1の記載から把握される発明 引用文献1の「アプリ VRカフェかの」及び「対応機種 iOS/Android」という記載から,「VRカフェかの」がスマホにインストールするアプリであることが把握され,「|カフェに入ってから」欄の冒頭の画像から,「VRカフェかの」を実行することにより提供されるゲームが,VRゴーグルにスマホをセットしてプレイされるものであることが把握され,同欄の2番目の画像及びその直下の文章から,メニューを選ぶ際には,メニューに表示された「ホットコーヒー」や「アイスコーヒー」等の選択肢の中から,選びたい選択肢を注視することによって選択できることが把握されるから,前記アで摘記した引用文献1の記載から,VRゴーグルと,アプリである「VRカフェかの」をインストールしたスマホとを備え,スマホに「VRカフェかの」を実行させることによって,「れあちゃん」という仮想キャラクタとのコミュニケーションを図っていくシミュレーションゲームをプレイすることができるゲームシステムに係る発明を把握することができるところ,当該発明の構成は次のとおりである。 「VRゴーグルと,『VRカフェかの』というアプリをインストールしたスマホとを備え,前記VRゴーグルに前記スマホをセットし,前記スマホに前記『VRカフェかの』というアプリを実行させることによって,『れあちゃん』がウェイトレスを務めるカフェに通って常連客となり,『れあちゃん』といろいろな会話を通していくことでコミュニケーションを図っていくシミュレーションゲームをプレイすることができるゲームシステムであって, 『れあちゃん』との会話ではメニューを選んだり,Yes/Noクエスチョンがあったりと,こちらから意思表示をする機会があり, メニューを選ぶ際には,メニューに表示されたホットコーヒー等の選択肢の中から,選びたい選択肢を注視することにより選択することができ, Yes/Noクエスチョンでは,頷くことでYes,首を横に振ることでNoの意思表示ができる, ゲームシステム。」(以下,「引用発明」という。) (2)引用文献2 ア 引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2は,本件出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該引用文献2には次の記載がある。(下線部は,後述する「引用文献2技術」の認定に特に関係する箇所を示す。) 「シーエスレポーターズの「Gugenka」ブランドは,iOS/Android用VRアプリ「パンチラインVRミュージアム」の大型アップデートを実施した。キャラクターにイラズラ(審決注:「イタズラ」の誤記と解される。)できるコミュニケーション要素「シナモンモード」が追加されている。 ・・・(中略)・・・ 有料のスマートフォンVRアプリで2万ダウンロードを突破した,ちょっとエッチでフル3DCG&フルボイスの豪華仕様の「パンチラインVRミュージアム」。ひょんなことから幽体離脱してしまったあなたは個性豊かな美少女たちが暮らすアパート「古来館」に迷い込んでしまう。幽体なので,「古来館」の中を縦横無尽に回遊し放題。そこに自分がいるかのような体験が味わえる。・・・(中略)・・・ 完全買い切りの追加課金なしで最後まで楽しめる本作が待望の大型アップデートを実施。新モード「シナモンモード」が追加された。 「シナモンモード」は,部屋に置かれたシナモンの瓶に触れることで突入。女の子に視点注視することでさまざまなイタズラができる。イタズラできるのは「頭」「顔」「腕」「足」「腰」「胸」の6か所。どんなリアクションが見られるかはプレイしてのお楽しみ。」 イ 引用文献2の記載から把握される技術事項 iOS/Android用VRアプリ「パンチラインVRミュージアム」を実行することによりゲームが提供されることは明らかであるから,前記アで摘記した引用文献2の記載から,引用文献2に次の技術事項が記載されていると認められる。 「ゲームにおいて,キャラクタの「頭」「顔」「腕」「足」「腰」「胸」の6か所のうちのいずれかを対象としてイタズラという行動を行う技術。」(以下,「引用文献2技術」という。) 5 判断 (1)対比 ア 技術的にみて,引用発明の「『スマホ』がセットされた『VRゴーグル』」,「れあちゃん」及び「ゲームシステム」は,本件発明の「ヘッドマウントディスプレイ」,「仮想キャラクタ」及び「アプリケーション処理システム」にそれぞれ対応する。 イ 引用発明の「『スマホ』がセットされた『VRゴーグル』」(本件発明の「ヘッドマウントディスプレイ」に対応する。以下,「5 判断」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付された()内の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明の発明特定事項を表す。)が,ユーザの頭部に装着されることは,「VRゴーグル」という名称から自明である。また,引用発明の「スマホ」が,一又は複数のコンピュータプロセッサを備えることは,明らかである。 したがって,引用発明の「『スマホ』がセットされた『VRゴーグル』」と,本件発明の「ヘッドマウントディスプレイ」は,「一又は複数のコンピュータプロセッサを備え,ユーザの頭部に装着される」点で一致する。 ウ 引用発明の「ゲームシステム」は,「れあちゃん」(仮想キャラクタ)がウェイトレスを務めるカフェに通って常連客となり,「れあちゃん」といろいろな会話を通していくことでコミュニケーションを図っていくシミュレーションゲームをプレイすることができるものであるから,「れあちゃん」とのインタラクションを提供するものといえる。 また,引用発明の「ゲームシステム」において,シミュレーションゲームを実行する際には,「『スマホ』がセットされた『VRゴーグル』」(ヘッドマウントディスプレイ)中の「スマホ」のディスプレイに,「れあちゃん」(仮想キャラクタ)を含む仮想空間の画像を出力することは明らかである。 したがって,引用発明の「ゲームシステム」と,本件発明の「アプリケーション処理システム」は,「ヘッドマウントディスプレイに仮想キャラクタを含む仮想空間の画像を出力することによりユーザに仮想キャラクタとのインタラクションを提供する」点で一致する。 エ 引用発明の「VRカフェかの」はアプリであるから,「コンピュータ読み取り可能な命令」である。 そして,引用発明の「スマホがアプリを実行する」とは,スマホに内蔵されたコンピュータプロセッサがコンピュータ読み取り可能な命令を実行することにほかならないから,引用発明の「スマホがアプリを実行する」ことは,本件発明の「一又は複数のコンピュータプロセッサは,コンピュータ読み取り可能な命令を実行する」に相当する。 オ 引用発明においては,メニューを選ぶ際には,メニューに表示された「ホットコーヒー」等の選択肢の中から,選びたい選択肢を注視することにより選択することができ,Yes/Noクエスチョンでは,頷くことでYes,首を横に振ることでNoの意思表示ができるから,技術的にみて,ユーザがどこを注視しているのかや,頷いたのか首を横に振ったのかを検出するための一又は複数の検出器を,スマホ又はVRゴーグルが有しており,当該一又は複数の検出器の検出情報に基づいて,どこを注視しているのかを特定したり,頷いたのか首を横に振ったのかを特定したりしていることは,明らかである。 そして,「Yes/Noクエスチョン」に対する回答である「頷くこと」及び「首を横に振ること」は,「れあちゃん」(仮想キャラクタ)に対して行うアクションであり,かつ,当該「頷くこと」及び「首を横に振ること」は,仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連付けられているアクションといえるから,引用発明のゲームシステムが行う,前述した検出器の検出情報に基づいて「頷くこと」及び「首を横に振ること」のいずれがなされたのかを特定する動作は,本件発明の「ヘッドマウントディスプレイによって検出される一又は複数の検出情報に基づいて,仮想キャラクタに対して行われるアクションであって仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられている第1アクションを特定」することに相当する。 また,「メニューを選ぶ」ことは,「れあちゃん」(仮想キャラクタ)に対していずれかの選択肢を注文することであるから,「れあちゃん」に対して行うアクションであり,かつ,仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられていないアクションといえるから,引用発明のゲームシステムが行う,前述した検出器の検出情報に基づいていずれの選択肢が注視されているのかを特定する動作は,本件発明の「一又は複数の検出情報に基づいて,仮想キャラクタに対して行われるアクションであって仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられていない第2アクションを特定」することに対応する。 さらに,引用発明では,メニューを選ぶ際に,メニューに表示されたホットコーヒー等の選択肢の中から,選びたい選択肢を注視することにより選択することができるよう構成されているところ,当該「メニューに表示されたホットコーヒー等の選択肢」と,本件発明の「一又は複数のキャラクタ注視位置」は,「一又は複数の注視位置」である点で共通するから,引用発明の「メニューに表示されたホットコーヒー等の選択肢の中から,選びたい選択肢を注視」しているのを検出して,ユーザが選んだメニューを特定するという動作は,本件発明の「第1メニューアイテムの注視後に一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第1メニューアイテムアクションが第2アクションとして特定され,第2メニューアイテムの注視後に一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第2メニューアイテムアクションが第2アクションとして特定される」ことと,「一又は複数の注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第2アクションが特定される」点で共通するといえる。 以上によれば,引用発明と本件発明は,「ヘッドマウントディスプレイによって検出される一又は複数の検出情報に基づいて,仮想キャラクタに対して行われるアクションであって仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられている第1アクションを特定」する点で一致するとともに,「一又は複数の検出情報に基づいて,仮想キャラクタに対して行われるアクションであって仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられていない第2アクションを特定」する点及び「一又は複数の注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第2アクションが特定される」点で共通する。 カ 前記アないしオに照らせば,本件発明と引用発明は, 「一又は複数のコンピュータプロセッサを備え,ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに仮想キャラクタを含む仮想空間の画像を出力することにより前記ユーザに前記仮想キャラクタとのインタラクションを提供するアプリケーション処理システムであって, 前記一又は複数のコンピュータプロセッサは,コンピュータ読み取り可能な命令を実行することにより, 前記ヘッドマウントディスプレイによって検出される一又は複数の検出情報に基づいて,前記仮想キャラクタに対して行われるアクションであって前記仮想空間における前記ユーザの頭部の動きと関連づけられている第1アクションを特定し, 前記一又は複数の検出情報に基づいて,前記仮想キャラクタに対して行われるアクションであって前記仮想空間における前記ユーザの頭部の動きと関連づけられていない第2アクションを特定し, 一又は複数の注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第2アクションが特定される, アプリケーション処理システム。」 である点で一致し,次の点で相違する。 相違点1: 本件発明では,第2アクションの特定が,仮想空間に含まれている特定オブジェクトが選択されたことに応じて実行され,前記特定オブジェクトは,第1メニューアイテム及び第2メニューアイテムに関連づけられており,前記第2アクションは,前記第1メニューアイテムに関連づけられた第1メニューアイテムアクション,及び,前記第2メニューアイテムに関連づけられた第2メニューアイテムアクションを含み,前記第2メニューアイテムアクションは,前記第1メニューアイテムアクションとは異なる動作に対応するアクションであり,前記第1メニューアイテムアクション及び前記第2メニューアイテムアクションは,それぞれ,前記第1メニューアイテム及び前記第2メニューアイテムの注視後に,一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第2アクションとして特定されるものであるのに対して, 引用発明では,メニューを選ぶ際の,検出器の検出情報に基づいていずれの選択肢が注視されているのかを特定する動作が,何を契機として実行されるのかは定かでなく,また,メニューを選ぶという行為以外に,「仮想キャラクタに対して行われるアクションであって仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられていない第2アクション」といえる行為が存在しないため,選びたい選択肢が注視される前に,第1メニューアイテム及び第2メニューアイテムのいずれかが注視されることはなく,注視されるのが,メニューに表示されるホットコーヒー等の選択肢であって,キャラクタ注視位置ではない点。 (2)相違点1について 引用発明が提供するシミュレーションゲームは,「れあちゃん」という仮想キャラクタとのコミュニケーションを図っていくゲームであるところ,このようなシミュレーションゲームにおいて,メニューの選択及びYes/Noクエスチョンに対する回答という2種類の行動以外にも,現実の人間とのコミュニケーションにおいて実行されるような行動については,できるだけ,プレイヤが実行できるほうが,興趣性が向上することは当業者にとって自明である。 そして,現実の人間とのコミュニケーションにおいて実行されるような行動として,例えば,髪型を褒めるとか,両手で握手するなど,コミュニケーション相手の身体の一部を対象として行う行動であって,頭部の動きと関連しない行動は,直ちに思いつくものであることに加えて,前記4(2)イで認定したように,キャラクタの「頭」「顔」「腕」「足」「腰」「胸」の6か所のうちのいずれかを対象としてイタズラという行動を行う引用文献2技術が,本件出願の出願より前に,引用文献2によって開示されていることを考慮すると,前記2種類の行動以外にプレイヤが実行できる行動として,仮想キャラクタの身体の一部を対象として行う行動であって頭部の動きと関連しない行動は,当業者にとって特段の工夫を要せずに想定できるものというほかない。 そうすると,引用発明において,ゲーム中にプレイヤが実行できる行動として,前記2種類の行動以外に,仮想キャラクタの身体の一部を対象として行う行動であって頭部の動きと関連しない行動を複数用意することは,当業者にとって通常の創作能力の発揮でしかないというべきである。 ここで,何かを対象として何らかの機能を実行することをコンピュータに指示する手法として,複数のコマンドの中から,実行する機能に対応するコマンドを選択した後,その対象を指定するという手順で入力する手法は,コンピュータソフトウェアの技術分野における常套手段であり,かつ,引用発明では,メニューを選ぶ際には,表示された複数の選択肢の中から選びたい選択肢を注視することによって選択しているのであるから,引用発明において,前述した複数の行動を用意するにあたって,複数の行動の選択肢を表示し,表示された複数の行動の選択肢の中のいずれが注視されているのかを検出し,その後,仮想キャラクタの身体の一部のいずれが注視されているのかを検出して,注視された仮想キャラクタの身体の一部を対象として,注視された選択肢に対応する行動が入力されたと特定するような構成を採用することは,当業者にとって自然なことである。 しかるに,このような構成の変更を行った引用発明における「表示された複数の行動の選択肢」のそれぞれが,本件発明の「仮想空間に含まれている特定オブジェクト」に相当し,「仮想キャラクタの身体の一部を対象として行う行動であって頭部の動きと関連しない行動」は,本件発明の「仮想キャラクタに対して行われるアクションであって仮想空間におけるユーザの頭部の動きと関連づけられていない第2アクション」に相当するとともに,本件発明の「仮想空間に含まれている特定オブジェクトが選択されたことに応じ,一又は複数の検出情報に基づいて」,特定される旨の発明特定事項に相当する構成を具備しており,「表示された複数の行動の選択肢」の中の「一つ」及び「その他の一つ」が,それぞれ本件発明の「第1メニューアイテム」及び「第2メニューアイテム」に相当するとともに,前記「一つ」及び「その他の一つ」に対応する行動が,それぞれ本件発明の「第1メニューアイテムに関連付けられた第1メニューアイテムアクション」及び「第1メニューアイテムに関連付けられた第1メニューアイテムアクション」に相当し,前記「一つ」に対応する行動と前記「その他の一つ」に対応する行動とは,本件発明の「異なる動作に対応するアクションであ」るとの発明特定事項に相当する構成を具備しており,「表示された複数の行動の選択肢の中のいずれが注視されているのかを検出し,その後,仮想キャラクタの身体の一部のいずれが注視されているのかを検出して,注視された仮想キャラクタの身体の一部を対象として,注視された選択肢に対応する行動が入力されたと特定する」ことが,本件発明の「第1メニューアイテムの注視後に一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第1メニューアイテムアクションが第2アクションとして特定され,第2メニューアイテムの注視後に一又は複数のキャラクタ注視位置のうちの少なくとも一つが注視されることにより,第2メニューアイテムアクションが第2アクションとして特定される」ことに相当するから,前述した構成の変更を行った引用発明は,相違点1に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備することとなる。 したがって,引用発明を,相違点1に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 (3)効果について 本件発明が有する効果は,本件出願の請求項1に記載された各発明特定事項から,当業者が予測できた程度のものである。 (4)小括 以上のとおりであるから,本件発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 本件発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-02-25 |
結審通知日 | 2020-03-03 |
審決日 | 2020-03-16 |
出願番号 | 特願2018-19002(P2018-19002) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前地 純一郎 |
特許庁審判長 |
藤本 義仁 |
特許庁審判官 |
尾崎 淳史 清水 康司 |
発明の名称 | アプリケーション処理システム、アプリケーション処理方法、及びアプリケーション処理プログラム |
代理人 | 村越 智史 |