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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1362000
審判番号 不服2018-15801  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-28 
確定日 2020-04-30 
事件の表示 特願2017- 85448「印刷装置、印刷装置の制御方法、読取装置および読取装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日出願公開、特開2017-140851〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年11月7日に出願された,特願2013-231587号の一部を平成29年4月24日に特願2017-85448号として出願したものであって,平成30年2月26日付けで拒絶の理由が通知され,同年5月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年8月7日付けで,同年2月26日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は同年8月28日に請求人に送達された。
これに対し,平成30年11月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,それと同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年11月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月28日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
プリンタ部と,
表示部と,
前記表示部に対するユーザ操作を検知するタッチパネルと,
人感センサと,
前記人感センサの検知結果に基づいて前記プリンタ部の所定の駆動部が駆動することなく前記表示部に所定の画面が表示されるよう制御する表示制御手段と,
前記タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて前記所定の駆動部が駆動するよう制御する駆動制御手段と,を備えることを特徴とする印刷装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
定着器および前記定着器を駆動するモータを有するプリンタ部と,
表示部と,
前記表示部に対するユーザ操作を検知するタッチパネルと,
人感センサと,
前記人感センサの検知結果に基づいて前記モータが駆動することなく前記表示部に所定の画面が表示されるよう制御する表示制御手段と,
前記タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて前記モータが駆動するよう制御する駆動制御手段と,を備えることを特徴とする印刷装置。」(下線は,当審で付加したものである。下線については,以下同じである。)

(2)本件補正の目的について
本件補正事項は,本件補正前の請求項1における発明特定事項における「プリンタ部」に対して「定着器および前記定着器を駆動するモータを有する」こと,人感センサの検知結果に基づいて駆動することのない「所定の駆動部」が「モータ」であること,タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて駆動する「所定の駆動部」が「モータ」であることを限定するものであるから,本件補正事項の目的は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。

2 独立特許要件についての検討
上記のとおり,本件補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものであるから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1(1)イ」において摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-109196号公報(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている。
(ア)「【0029】
画像処理装置10は,記録用紙に画像を形成する画像形成部240と,原稿画像を読み取る画像読取部238と,ファクシミリ通信制御回路236を備えている。画像処理装置10は,メインコントローラ200を備えており,画像形成部240,画像読取部238,ファクシミリ通信制御回路236を制御して,画像読取部238で読み取った原稿画像の画像データを一次的に記憶したり,読み取った画像データを画像形成部240又はファクシミリ通信制御回路236へ送出したりする。」
(イ)「【0032】
画像形成部240は,感光体を備え,感光体の周囲には,感光体を一様に帯電する帯電装置と,画像データに基づいて光ビームを走査する走査露光部と,前記走査露光部によって走査露光されることで形成された静電潜像を現像する画像現像部と,現像化された感光体上の画像を記録用紙へ転写する転写部と,転写後の感光体の表面をクリーニングするクリーニング部と,が設けられている。また,記録用紙の搬送経路上には,転写後の記録用紙上の画像を定着する定着部を備えている。」

(ウ)「【0035】
ネットワーク回線網20は,メインコントローラ200に接続されている。メインコントローラ200には,それぞれ,データバスやコントロールバス等のバス33A?33Dを介して,ファクシミリ通信制御回路236,画像読取部238,画像形成部240,UIタッチパネル216が接続されている。すなわち,このメインコントローラ200が主体となって,画像処理装置10の各処理部が制御されるようになっている。なお,UIタッチパネル216には,UIタッチパネル用バックライト部216BL(図4参照)が取り付けられている場合がある。」

(エ)「【0038】
電源装置202では,メインコントローラ200,ファクシミリ通信制御回路236,画像読取部238,画像形成部240,UIタッチパネル216のそれぞれに対して独立して電力を供給する電力供給線35A?35Dが設けられている。このため,メインコントローラ200では,各処理部(デバイス)に対して個別に電力供給(電力供給モード),或いは電力供給遮断(スリープモード)し,所謂部分節電制御を可能としている。
【0039】
また,メインコントローラ200には,2個の第1の人感センサ28,第2の人感センサ30が接続されており,画像処理装置10の周囲の人の有無を監視している。この第1の人感センサ28,第2の人感センサ30については後述する。」

(オ)「【0111】
(画像処理装置10(デバイス)の電力供給制御のモード遷移)
まず,図5に基づき,画像処理装置10における,各モード状態と,当該モード状態の移行の契機となる事象を示したタイミングチャートを示す。
【0112】
画像処理装置10は,処理がなされていないと動作状態は,スリープモードとなり,第1の実施の形態では,節電中監視制御部24にのみ電力が供給されている。
【0113】
ここで,立ち上げ契機(立ち上げトリガの検出,或いは節電制御ボタン26等の操作)があると,動作状態はウォームアップモードへ遷移する。
【0114】
なお,この立ち上げトリガ契機後は,依然としてスリープモードと定義し,メインコントローラ200への電力供給を前提としてUIタッチパネル216のみを起動するようにしてもよいし,或いは,メインコントローラ200及びUIタッチパネル216の起動によって,節電中監視制御部24のみの電力供給よりも電力供給量が増加するので,仮称として,アウェイクモード「awk」(目覚めモード)として定義してもよい(図5の遷移図における,スリープモード範囲の括弧[ ]内参照)。このアウェイクモードでUIタッチパネル216等の操作入力(キー入力)があると,動作状態はウォームアップモードへ遷移する。
【0115】
前記立ち上げトリガとは,主として,第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号や情報等がある。なお,操作者による節電解除操作も立ち上げトリガとしてもよい。」

(カ)「【0116】
ウォームアップモードは画像処理装置10を迅速に処理可能状態にもっていくため,各モードの内最大の電力消費量となるが,例えば,定着部におけるヒータとしてIHヒータを利用することによって,ハロゲンランプを用いたヒータよりもウォームアップモード時間は,比較的短い時間とされている。
【0117】
ウォームアップモードによる暖機運転が終了すると,画像処理装置10はスタンバイモードに遷移するようになっている。
【0118】
スタンバイモードは,文字通り「事に備えて準備が完了している」モードであり,画像処理装置10においては,画像処理の動作が即実行できる状態となっている。
【0119】
このため,キー入力としてジョブ実行操作があると,画像処理装置10の動作状態は,ランニングモードに遷移し,指示されたジョブに基づく画像処理が実行されるようになっている。」

(キ)【図3】から,画像形成部240は,「MCU」を含んで構成されているものであって,技術常識を踏まえると,この「MCU」は,「Micro Controller Unit」であって,画像形成部240において制御を司る制御部として機能していることは明らかである。

引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「帯電装置と,走査露光部と,画像現像部と,現像化された感光体上の画像を記録用紙へ転写する転写部と,転写後の感光体の表面をクリーニングするクリーニング部と,MCUと,が設けられた記録用紙に画像を形成する画像形成部240と,
記録用紙の搬送経路上に備えられた,転写後の記録用紙上の画像を定着する定着部と,
UIタッチパネル216と,
ファクシミリ通信制御回路236,画像読取部238,画像形成部240,UIタッチパネル216画像,処理装置10の周囲の人の有無を監視している第1の人感センサ28,第2の人感センサ30と,が接続され,画像処理装置10の各処理部を主体となって制御するメインコントローラ200を備えた画像処理装置10であって,
メインコントローラ200は,ファクシミリ通信制御回路236,画像読取部238,画像形成部240,UIタッチパネル216の各処理部(デバイス)に対して,それぞれに対して独立して個別に電力供給(電力供給モード),或いは電力供給遮断(スリープモード)し,所謂部分節電制御を可能としており,
画像処理装置10は処理がなされていないと,動作状態は節電中監視制御部24にのみ電力が供給されるスリープモードとなり,スリープモード中に第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号や情報等の立ち上げトリガの検出による立ち上げ契機があると,メインコントローラ200及びUIタッチパネル216の起動によって,節電中監視制御部24のみの電力供給よりも電力供給量が増加するアウェイクモード「awk」(目覚めモード)となり,
該アウェイクモードでUIタッチパネル216等の操作入力(キー入力)があると,動作状態はウォームアップモードへ遷移するものであって,
ウォームアップモードによる暖機運転が終了すると,画像処理装置10はスタンバイモードに遷移し,キー入力としてジョブ実行操作があると,動作状態は,ランニングモードに遷移し,指示されたジョブに基づく画像処理が実行される画像処理装置10。」

イ 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-152400号公報(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている。
(ア)「【0011】
[実施形態]
<画像形成装置の全体構成>
以下,図面を参照して,本発明の実施形態について説明する。図1は,本発明の実施形態に係る画像形成装置10の構成を示すブロック図である。画像形成装置10は,画像データに応じた画像を形成する装置である。画像形成装置10は,制御部110と,表示部120と,操作部130と,通信部140と,記憶部150と,画像形成部160とを備える。制御部110は,CPU(CentralProcessing Unit)を含む演算装置やメモリを備えたコンピュータである。制御部110の演算装置は,メモリに記憶されたプログラムを実行して,画像形成装置10の各部を制御したり,データを処理したりする。また,制御部110は,時刻を測定する機能を有し,これらの制御や処理を行ったときの時刻を取得したり,決められた時刻にこれらの制御や処理を行ったりする。制御部110は,本発明の制御手段の一例である。」

(イ)「【0013】
<画像形成部の構成>
図2は,画像形成部160の構成を示す図である。図2に示す画像形成部160の各符号のうち,その末尾に付されたアルファベットは画像形成装置が扱うトナーの色に対応する。符号の末尾のアルファベットが異なる構成は,扱うトナーの色が異なるが,その構成は互いに共通している。以下の説明において,これら各構成を特に区別する必要がない場合には,符号の末尾のアルファベットを省いて説明する。画像形成部160は,画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと,露光装置2と,中間転写ベルト3と,給紙部4と,複数の搬送ロール5と,二次転写ロール6と,定着部7と,排出部8と,用紙検知部21とを有する。」

(ウ)「【0059】
複数の用紙への画像の定着動作を行う際,まず,定着ベルト61のウォームアップを行う。即ち,上述したように,制御部110は,駆動モータ81Mを駆動して定着ベルト61及び加圧ロール62を駆動回転させ,励磁回路73を制御して励磁コイル69に高周波の電流を流し,定着ベルト61の導電層61bを誘導加熱する(誘導加熱オン)。このとき,図8の目標温度のグラフに示すように,目標温度設定部115は,定着ベルト61の目標温度を予め定められた温度Tb1(例えば,160℃)に設定する。これに応じて,加熱制御部116は,温度センサ75により検知される定着ベルト61の温度と設定された目標温度Tb1との差分に基づき,励磁回路73を制御して励磁コイル69に供給される高周波電流を制御する。定着ベルト61の温度が予め定められた温度に達し,定着ベルト61のウォームアップが終了したと判断すると,上述したように,制御部110は回転駆動伝達機構81に含まれるクラッチ入りギア85のクラッチが切り,定着ベルト61は,加圧ロール62が接触しているとき加圧ロール62に従動して回転するようになる。」

引用文献2の上記記載事項を含め,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「画像データに応じた画像を形成する装置であって,画像形成部160を備え,画像形成部160は,定着部7を有し,複数の用紙への画像の定着動作を行う際に,駆動モータ81Mを駆動して定着ベルト61及び加圧ロール62を駆動回転させ,励磁回路73を制御して励磁コイル69に高周波の電流を流し,定着ベルト61の導電層61bを誘導加熱するウォームアップを行う,画像形成装置10」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「定着部」は,本件補正発明の「定着器」に相当する。
以下同様に,「第2の人感センサ30」は,「人感センサ」に,
「キー入力としてジョブ実行操作」は,「タッチパネルにより検知されたユーザ操作」に,
「画像処理装置10」は,「印刷装置」に,それぞれ相当する。
引用発明1の「画像形成部240」は,帯電装置と,走査露光部と,画像現像部と,現像化された感光体上の画像を記録用紙へ転写する転写部と,転写後の感光体の表面をクリーニングするクリーニング部と,MCUと,が設けられた記録用紙に画像を形成するものであって,「定着部」は,「画像形成部240」において感光体上の画像を転写された記録用紙を定着させるものである。
とすれば,本願の発明の詳細な説明の段落【0035】の「プリンタ部14は,プリンタ制御部341とプリンタ駆動部342とを有している。プリンタ駆動部342は,感光ドラム1323を回転させるモータ,定着器1327を回転させるモータ,および紙搬送モータなどを含み,物理的に駆動するデバイスである。プリンタ制御部341は,プリンタ駆動部342の動作を制御する。」の記載に鑑みれば,引用発明1の「画像形成部240」及び「定着部」は,本件補正発明の「プリント部」に相当する。
引用発明1の「UIタッチパネル216」が,「表示部」と「表示部に対するユーザ操作を検知するタッチパネル」を備えるものであることは自明であるから,引用発明1の「UIタッチパネル216」は,本願補正発明の「表示部」と,「表示部に対するユーザ操作を検知するタッチパネル」に相当する。
引用発明1の「アウェイクモード「awk」(目覚めモード)」は,節電中監視制御部24にのみ電力が供給されるスリープモード中に第2の人感センサ30による検出結果に基づく信号による立ち上げ契機があると,「メインコントローラ200及びUIタッチパネル216の起動によって,節電中監視制御部24のみの電力供給よりも電力供給量が増加する」モードであって,技術常識に鑑みて,UIタッチパネル216が起動することで,UIタッチパネル216に所定の画面が表示されるよう制御されていることは自明であり,また,第2の人感センサ30及びUIタッチパネル216を制御するメインコントローラ200は,表示制御手段としての機能を有しているといえる。
とすれば,引用発明1の「メインコントローラ200」は,「人感センサの検知結果に基づいて表示部に所定の画面が表示されるよう制御する制御手段」である点で,本件補正発明の「表示制御手段」に共通する。
引用発明1の「画像処理装置10」は,「キー入力としてジョブ実行操作があると,動作状態は,ランニングモードに遷移し,指示されたジョブに基づく画像処理が実行される」ものであるから,技術常識に鑑みて,その際に「画像形成部240」及び「定着部」を駆動することは明らかであり,また,「定着部」は「画像形成部240」と同様にメインコントローラ200によって駆動を制御されていることも自明であるから,メインコントローラ200は,定着部を駆動する駆動制御手段としての機能を有しているといえる。
そして,本件補正発明において「(タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて)前記モータが駆動する」とは,「定着器を駆動するモータ」が駆動することを意味しており,定着器を駆動するモータが駆動することで,定着器が駆動することになるから,「タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて前記モータが駆動するよう制御する」ことは,「タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて,定着器を駆動するモータが駆動して,定着器が駆動するよう制御する」ことに他ならない。
とすれば,引用発明1の「メインコントローラ200」は,「タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて定着器が駆動するよう制御する駆動制御手段」である点で,本件補正発明の「駆動制御手段」に共通する。

イ 一致点及び相違点
上記アの対比を踏まえると,本件補正発明と引用発明1とは,次の一致点において一致し,次の相違点1ないし3で相違する。
<一致点>
「定着器を有するプリンタ部と,
表示部と,
前記表示部に対するユーザ操作を検知するタッチパネルと,
人感センサと,
前記人感センサの検知結果に基づいて前記表示部に所定の画面が表示されるよう制御する表示制御手段と,
前記タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて定着器が駆動するよう制御する駆動制御手段と,を備えることを特徴とする印刷装置。」

<相違点1>
本件補正発明は,「定着器を駆動するモータ」を有しているのに対して,引用発明1が「定着部を駆動するモータを有する」ものであるかについて不明である点。
<相違点2>
本件補正発明の表示制御手段は「人感センサの検知結果に基づいて(定着器を駆動する)モータが駆動することなく表示部に所定の画面が表示されるよう制御」しているのに対して,引用発明1の「メインコントローラ200」は「人感センサの検知結果に基づいて表示部に所定の画面が表示されるよう制御」しているものの,「(定着部を駆動する)モータ」の駆動については不明である点。
<相違点3>
本件補正発明の駆動制御手段は「タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて(定着器を駆動する)モータが駆動するよう制御」しているのに対して,引用発明1の「メインコントローラ200」は「タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて定着部を駆動するよう制御」しているものの,「(定着部を駆動する)モータ」の駆動については不明である点。

ウ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
「定着器」を有する印刷装置が「定着器を駆動するモータを有する」ことは,この技術分野における技術常識に過ぎず,引用発明1の「画像処理装置10」が「定着部」を有する以上,「定着部を駆動するモータを有する」ことは,当該技術常識に照らせば,当業者にとって自明のことといえる。(必要であれば,引用発明2を参照されたい。)
したがって,引用発明1が,定着部を駆動するモータを有していることは明らかであり,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に相当する構成を,引用発明1は有しているといえるから,相違点1は実質的に相違点ではない。

(イ)相違点2について
引用発明1の「アウェイクモード「awk」(目覚めモード)」において,電力が供給されているのは,節電中監視制御部24,メインコントローラ200及びUIタッチパネル216のみであって,定着部に電力が供給されていないことは明らかである。
ここで,「(ア)相違点1について」で検討したように,引用発明1は「定着部を駆動するモータを有する」ものであるところ,定着部には電力が供給されていないのであるから,当然に「定着部を駆動するモータ」にも電力は供給されず,駆動もされない。
してみると,本件補正発明の「表示制御手段」と共通する機能を有する引用発明1の「メインコントローラ200」が,各処理部のそれぞれに対して独立して個別に電力供給,或いは電力供給遮断可能であるから,引用発明1は,相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を含む「前記人感センサの検知結果に基づいて前記モータが駆動することなく前記表示部に所定の画面が表示されるよう制御する表示制御手段」有しているといえるから,相違点2も実質的に相違点ではない。

(ウ)相違点3について
引用発明1において「キー入力としてジョブ実行操作があると,動作状態は,ランニングモードに遷移し,指示されたジョブに基づく画像処理が実行される」のであるから,「定着部」が駆動されることになるのは上述したとおりである。
そして,「(ア)相違点1について」で検討したように,引用発明1は「定着部を駆動するモータを有する」ものである。
とすれば,引用発明1において「定着部」が駆動することは,「定着部を駆動するモータ」が駆動することをも意味していることになることは明らかである。
そして,本件補正発明の「駆動制御手段」と共通する機能を有する引用発明1の「メインコントローラ200」が,画像処理装置10の各処理部を主体となって制御するものであるから,引用発明1は,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を含む「前記タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて前記モータが駆動するよう制御する駆動制御手段」有しているといえるから,相違点3も実質的に相違点ではない。

以上のことより,相違点1ないし3に係る本願補正発明の発明特定事項を,引用発明1が実質的に備えていることになるから,本願補正発明と引用発明1の間に差異はない。

(4)独立特許要件の検討に関する小括
以上検討したように,本願補正発明1は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない

したがって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり,本件補正発明は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし20に係る発明は,平成30年5月11日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項1に係る発明は,上記「第2 1 (1) ア」において説示したとおりのものである。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用例及びその記載事項
原査定で引用された引用文献1に記載の事項並びに引用発明1は,それぞれ,上記「第2 2 (2) ア」において説示し,認定したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比・判断
上記「第2 2 (1) イ」で検討した本件補正発明は,本願発明の「プリンタ部」に対して「定着器および前記定着器を駆動するモータを有する」こと,人感センサの検知結果に基づいて駆動することのない「所定の駆動部」が「モータ」であること,タッチパネルにより検知されたユーザ操作に基づいて駆動する「所定の駆動部」が「モータ」であることを追加して特定するものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2 2 (3) ウ」に記載したとおり,引用発明1との間に差異はないから,本願発明と,引用発明1との間に差異はない。

4 むすび
上記で検討したとおり,本願発明は,本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明(引用発明1)であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,上記結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-02-28 
結審通知日 2020-03-03 
審決日 2020-03-18 
出願番号 特願2017-85448(P2017-85448)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 畑井 順一
吉村 尚
発明の名称 印刷装置、印刷装置の制御方法、読取装置および読取装置の制御方法  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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