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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02C
管理番号 1362131
審判番号 不服2018-15354  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2016-235254「トーリックレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月23日出願公開,特開2017-40950〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-235254号(以下「本件出願」という。)は,平成26年9月5日(パリ条約による優先権主張 平成26年6月13日 米国)に出願された特願2014-181252号の一部を平成28年12月2日に新たな特許出願としたものであって,その後の手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成28年12月27日付け:上申書
平成28年12月27日付け:手続補正書
平成29年 9月11日付け:拒絶理由通知書
平成30年 2月14日付け:意見書
平成30年 7月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年11月20日付け:審判請求書
平成30年11月20日付け:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前(平成28年12月27日にされた手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「 対向に設置された第1の表面と第2の表面であって,第1の表面がトーリックレンズの水平子午線と垂直子午線の交差する点に関して回転対称である,前記表面と,
それぞれ前記第1の表面に前記トーリックレンズの径方向に沿った第1の曲率を有し,且つ前記第1の曲率が前記トーリックレンズの円弧方向に沿って固定値となる2つの第1の扇形領域と,
前記第1の扇形領域と交互に配列され,それぞれ前記第1の表面に前記径方向に沿った第2の曲率を有し,且つ前記第2の曲率が前記円弧方向に沿って固定値となり,前記第1の曲率の勾配が前記第2の曲率よりも大きい2つの第2の扇形領域と,
を含むトーリックレンズ。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものであり,補正箇所を示す。
「 対向に設置された第1の表面と第2の表面であって,第1の表面がトーリックレンズの水平子午線と垂直子午線の交差する点に関して回転対称である,前記表面と,
それぞれ前記第1の表面に前記トーリックレンズの径方向に沿った第1の曲率を有し,且つ前記第1の曲率が前記トーリックレンズの円弧方向に沿って固定値となっており,第1の半径を有している2つの第1の扇形領域と,
前記第1の扇形領域と交互に配列され,それぞれ前記第1の表面に前記径方向に沿った第2の曲率を有し,且つ前記第2の曲率が前記円弧方向に沿って固定値となり,前記第1の曲率の勾配が前記第2の曲率よりも大きく,前記第1の半径よりも大きい第2の半径を有している2つの第2の扇形領域と,
を含むトーリックレンズ。」

(3) 本件補正の内容
本件補正は,本件補正前の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)の,発明を特定するために必要な事項である「第1の扇形領域」及び「第2の扇形領域」を,本件出願の出願当初の明細書の【0028】の記載に基づいて,それぞれ「第1の半径を有している」及び「前記第1の半径よりも大きい第2の半径を有している」ものに限定して,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)とするものである。
また,本願発明と本件補正後発明の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は同一である(【0001】及び【0004】)。
したがって,請求項1についてした本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに,同条5項2号に掲げる事項を目的とするものである。

そこで,本件補正後発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由において引用された,米国特許第7296890号明細書(以下「引用文献3」という。)は,本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,参考訳に対して当合議体が付した下線は,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。また,行番号は,各頁中央に付された番号を参考にして付した。
ア 1欄6?26行
「 1. Technical Field
The present invention is directed generally toward a contact lens and a method for making a contact lens. More specifically, the present invention is directed to a contact lens having a base curve that conforms closely to the shape of a cornea of an eye.
2. Description of Related Art
Contact lenses are becoming increasingly sophisticated in their optical characteristics.
…(省略)…
However, a problem associated with known contact lenses is maintaining the position of a contact lens on the human eye.」
(参考訳: 1.技術分野
本発明は,一般に,コンタクトレンズおよびコンタクトレンズの製造方法を対象としている。より具体的には,本発明は,眼の角膜の形状に適合するベースカーブを有するコンタクトレンズを対象としている。
2.関連技術の説明
コンタクトレンズの光学特性はますます洗練されてきている。
…(省略)…
しかしながら,既知のコンタクトレンズに伴う問題は,コンタクトレンズの位置をヒトの眼球上に維持することである。)

イ 3欄19?51行
「 DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENT
With reference now to the figures and in particular with reference to FIG.1, FIG.1 shows a prior art method of a human 100 placing contact lens 102 on cornea 104 of eye 106, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention.
…(省略)…
FIG.2 shows a reference system 200 for describing the shape of contact lens 202, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Contact lens 202 may correspond to contact lens 102. Reference system 200 includes X-axis 204, Y-axis 206, and Z-axis 208.…(省略)…Z-axis 208 is considered to lie along the visual axis of the contact lens, such as visual axis 110 shown in FIGS.1.…(省略)…The coordinate system described by X-axis 204, Y-axis 206, and Z-axis 208 is known as a Cartesian coordinate system.」
(参考訳: 好ましい実施形態の詳細な説明
ここで,図を参照して,そして特に図1を参照して,図1は,本発明の例示的な実施形態に従って,ヒト100が眼106の角膜104上にコンタクトレンズ102を装着する先行技術による方法を示している。
…(省略)…
図2は,本発明の例示的な実施形態に従って,コンタクトレンズ202の形状を説明するための基準座標系200を示している。コンタクトレンズ202は,コンタクトレンズ102に対応している。基準座標系200は,X軸204,Y軸206,Z軸208を含む。…(省略)…図1で示される視軸110のように,Z軸208はコンタクトレンズの視軸に沿って配置されているとみなされる。…(省略)…X軸204,Y軸206,およびZ軸208で記述される座標系は,カルテシアン座標系として知られている。)

ウ 4欄17行?6欄15行
「 FIG.3 shows a contact lens 300, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Contact lens 300 may correspond to contact lens 202 in FIG.2. Contact lens 300 may be any type of contact lens, such as a hard contact lens, soft contact lens, or any other type of contact lens.
…(省略)…
Contact lens 300 has a base curve that is modified in sections to provide rotational stability.
…(省略)…
FIG.4 shows a cross section of the contact lens shown in FIG.3, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Contact lens 400 corresponds to contact lens 300 in FIG.3. FIG.4 shows the cross section of contact lens 300 defined along the line 4-4 shown in FIG.3. Line 4-4 may also be referred to as a first meridian and may be considered to lie along the Y-axis.
…(省略)…
The shape of the cross section of contact lens 400 is aspherical. Base curve 406 of contact lens 400 is the curve defined by the shape of the back surface of the contact lens. The back surface of the contact lens is the surface that rests against and is disposed on the cornea of the eye when contact lens 400 is placed on the eye during normal use.
…(省略)…
FIG.5 shows a cross section of the contact lens 500 shown in FIG.3, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Contact lens 500 corresponds to contact lens 300 in FIG.3. FIG.5 shows the cross section of contact lens 300 defined along the line 5-5 shown in FIG.3. Line 5-5 may also be referred to as a second meridian and may be considered to lie along the X-axis. First meridian 4-4 intersects second meridian 5-5 in the visual center, or apex, of contact lens 300 in FIG.3. First meridian 4-4 and second meridian 5-5 are orthogonal, or perpendicular, to each other.
…(省略)…
The shape of the cross section of contact lens 500 is spherical in this example. Thus, base curve 506 of contact lens 500 cross section 5-5 is defined as part of a sphere. Base curve 506 of contact lens 500 is the curve defined by the back surface of the contact lens. The back surface of the contact lens is the surface that rests against and is disposed on the cornea of the eye when contact lens 500 is placed on the eye.
…(省略)…
Contact lens 300 described in FIG.3 through FIG.5 has a spherical base curve associated with the X-axis and an aspherical base curve associated with the Y-axis. Thus, contact lens 300 may be described as a spherical-aspherical contact lens. A spherical-aspherical contact lens may be used by patients having astigmatism or other deformity of the eye.…(省略)…The base curve of spherical-aspherical contact lens 300 will more closely conform to the shape of the patient's eye relative to the base curve of known contact lenses. Thus, not only will the patient be more comfortable with the contact lens on the patient's eye, but the orientation of the contact lens while on the eye will be less likely to shift.」
(参考訳: 図3は,本発明の例示的な実施形態に従って,コンタクトレンズ300を示している。コンタクトレンズ300は,図2のコンタクトレンズ202に対応していることができる。コンタクトレンズ300は,ハードコンタクトレンズ,ソフトコンタクトレンズ,またはその他の種類のコンタクトレンズなど,あらゆるタイプのコンタクトレンズであることができる。
…(省略)…
コンタクトレンズ300のベースカーブは,回転安定性を与えるために分割して変更されている。
…(省略)…
図4は,本発明の例示的な実施形態に従って,図3に示したコンタクトレンズの断面を示している。コンタクトレンズ400は,図3のコンタクトレンズ300に対応している。図4は,図3に示す線4-4に沿って決まるコンタクトレンズ300の断面を示している。線4-4はまた,第1経線として言及され,Y軸に沿って設定されているものとみなされる。…(省略)…
コンタクトレンズ400の断面形状は非球面である。コンタクトレンズ400のベースカーブ406は,コンタクトレンズの背面の形状で決まるカーブである。コンタクトレンズの背面は,通常の使用時にコンタクトレンズ400が眼球上に置かれた際に,眼の角膜上に静かに配置される表面である。
…(省略)…
図5は,本発明の例示的な実施形態に従って,図3で示したコンタクトレンズ500の断面を示している。コンタクトレンズ500は,図3で示したコンタクトレンズ300に対応している。図5は,図3で示した線5-5に沿って決まるコンタクトレンズ300の断面を示している。線5-5は,第2経線として言及され,X軸に沿って置かれているとみなされる。第1経線4-4は,図3に示すコンタクトレンズ300の視界の中心または頂点で第2経線5-5と交わる。第1経線4-4と第2経線5-5は,互いに直交しているか垂直である。
…(省略)…
本例におけるコンタクトレンズ500の断面形状は球面である。したがって,コンタクトレンズ500のベースカーブ506の断面5-5は,球面の一部として決められる。コンタクトレンズ500のベースカーブ506は,コンタクトレンズの背面によって決まるカーブである。コンタクトレンズの背面は,コンタクトレンズ500が眼球上に装着された際に,眼の角膜上で静止して配置されるような表面である。
…(省略)…
図3から図5で説明しているコンタクトレンズ300は,X軸と関連する球面カーブ及びY軸と関連する非球面カーブを有する。このように,コンタクトレンズ300は,球面-非球面コンタクトレンズとして表すことができる。球面-非球面コンタクトレンズは乱視またはその他の眼の変形を持つ患者が使用することができる。…(省略)…球面-非球面コンタクトレンズ300のベースカーブは,既知のコンタクトレンズのベースカーブに比べて,患者の眼の形状によりよく適合する。このように,患者は,コンタクトレンズを眼球上に載せたときにより快適であるだけではなく,眼球上にコンタクトレンズが載っている間のコンタクトレンズの方向はよりずれにくくなる。)

エ 7欄13行?8欄62行
「 FIG.8 shows a contact lens 800, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. The contact lens shown in FIG.8 shows that the meridians shown in FIG.3 may be further subdivided into sub-meridians or sub-axes. Axis 802 is perpendicular or orthogonal to axis 804. Axis 802 may be subdivided into sub-axis 806 and sub-axis 808. Likewise, axis 804 may be subdivided into sub-axis 810, and sub-axis 812.
…(省略)…
Contact lens 800 may also be considered to be subdivided into four sections, section A 810, section B 812, section C 814, and section D 816.(当合議体注:「section A 810, section B 812, section C 814, and section D 816」は「section A 814, section B 816, section C 818, and section D 820」の誤記である。) The base curve of contact lens 800 may be individually controlled in each section by controlling mathematical equations that describe the shape of contact lens 800 associated with any given sub-axis. Thus, as a whole, the base curve of contact lens 800 conforms very closely to the cornea of an eye of a patient. The very close fit of the contact lens increases the usefulness of the optical properties of the contact lens, because the position of the contact lens on the eye is more likely to cause the visual axis of the contact lens to remain in a constant position relative to the visual axis of the patient.
In addition, each sub-axis may be further sub-divided into smaller sub-axes. Further sub-dividing each axis increases the level of control a manufacturer has when defining or manufacturing the base curve of the contact lens. Each individual sub-axis will have a curvature associated with it, such that the base curve can be controlled exactly at any point on contact lens 800. Similarly, further sub-dividing each axis creates a larger number of sectors, other than the four sectors 814, 816, 818, and 820 shown.
…(省略)…
Contact lens 800 shown in FIG.8 may be reduced to contact lens 300 shown in FIG.3. In this case, the first base curve, associated with sub-axis 806, is the same as the second base curve, associated with sub-axis 808, such that contact lens 800 has a base curve defined associated with axis 802 according to a single mathematical formula. Similarly, the third base curve, associated with axis 810(当合議体注:「axis 810」は「sub-axis 810」の誤記である。), is the same as the fourth base curve, associated with axis 810(当合議体注:「axis 810」は「sub-axis 812」の誤記である。), such that contact lens 800 has a base curve defined associated with axis 804 according to a single, though different, mathematical formula. For the contact lens shown in FIG.3, the base curve associated with axis 802 is spherical. The base curve associated with axis 804 is aspherical. Accordingly, contact lens 800 may be reduced to the spherical-aspherical contact lens 300 shown in FIG.3.
However, contact lens 800 shows a general method of defining and controlling the base curve of a contact lens in these illustrative examples.…(省略)…Thus, for example, the base curve of contact lens 800 may be different in sector A 814, sector B 816, sector C 818, and sector D 820. In a more specific example, the base curve in sector A 814 is steepened, the base curve in sector C 818 is flatter, and the base curve in sector B 816 and sector D 820(当合議体注「sector D 820」は「sector C 818」の誤記である。) are the same, though different than the base curves in sector A 814 and sector D 820.」
(参考訳: 図8は,本発明の例示的な実施形態に従って,コンタクトレンズ800を示している。図8に示すコンタクトレンズは,図3に示す経線をさらに副経線または副軸に分割することができることを示している。軸802は,軸804に対して垂直または直交する。軸802は,副軸806および副軸808にさらに分割することができる。同様に,軸804は,副軸810および副軸812にさらに分割することができる。
…(省略)…
コンタクトレンズ800はまた,領域A814,領域B816,領域C818,及び領域D820の4つの領域に分割されるとみなすことができる。コンタクトレンズ800のベースカーブは,所定の副軸と関連するコンタクトレンズ800の形状を表す数式を制御することで,各々の領域で,個別に制御される。このように,全体として,コンタクトレンズ800のベースカーブは,患者の眼の角膜に非常によく適合している。コンタクトレンズが非常によく適合すると,コンタクトレンズの光学特性の有用性が高まる。これは,眼球上のコンタクトレンズの位置が,患者の視軸に対してコンタクトレンズの視軸を一定に維持しやすい位置にくるからである。
さらに,各副軸はさらにより小さい副軸に分割される。コンタクトレンズのベースカーブを決める際,または製造する際に,各軸をさらに分割することで,製造業者の制御レベルを増大させる。各副軸は,それに関連する曲率を有し,その結果,コンタクトレンズ800のどの点においてもベースカーブを正確に制御することができる。同様に,各軸をさらに分割すると,既に示した4つの領域814,816,818および820の4つ以外の多数の領域が生成される。
…(省略)…
図8に示すコンタクトレンズ800は,図3に示すコンタクトレンズ300に減少させて表すことができる。この場合,副軸806と関連する第1のベースカーブは,副軸808と関連する第2のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,一つの数式に従って,軸802と関連して決まるベースカーブを有する。同様に,副軸810と関連する第3のベースカーブは,副軸812と関連する第4のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,別の一つの数式に従って,軸804と関連して決まるベースカーブを有する。図3に示すコンタクトレンズの場合,軸802と関連するベースカーブは球面である。軸804と関連するベースカーブは非球面である。したがって,コンタクトレンズ800は,図3に示す球面-非球面コンタクトレンズ300に減少させて表すことができる。
しかしながら,コンタクトレンズ800はこれらの例示的な実施例において,コンタクトレンズのベースカーブを確定し,制御する一般的な方法を示している。…(省略)…このように例えば,コンタクトレンズ800のベースカーブは,領域A814,領域B816,領域C818,および領域D820において異なっていることができる。より具体的な実施例において,領域A814のベースカーブは勾配が急であり,領域C818のベースカーブは平坦であり,領域B816およびC818のベースカーブは同じであるが,領域A814および領域D820におけるベースカーブとは異なる。)

オ 8欄63行?9欄41行
「 Contact lens 800 of FIG.8 and contact lens 300 of FIG.3 also may be described in terms of spherical coordinates.
…(省略)…
In another example, the first formula and/or the second formula may include sub-formulae that change at the instant that the polar angle and/or the azimuth angle reach specified values. For example, the first formula may include a first sub-formula and a second sub-formula. The first sub-formula applies when the azimuth angle varies between 0 degrees and 90 degrees and the second sub-formula applies when the azimuth angle varies between 90 degrees and 180 degrees.…(省略)… By controlling which equations apply to each different sector on the contact lens, the base curve may be precisely controlled. Thus, for example, the base curve of contact lens 800 may be different in sector A 914(当合議体注:「914」は「814」の誤記である。), sector B 816, Sector C 818, and Sector D 820, as described above.」
(参考訳: 図8のコンタクトレンズ800および図3のコンタクトレンズ300は球座標によっても表すことができる。
…(省略)…
もう一つの実施例において,第1式および/または第2式は,極座標および/またはアジマス角が特定の値になると直ちに変化する下位の数式を含むことができる。例えば,第1式は第1の下位の数式および第2の下位の数式を含むことができる。第1の下位の数式は,アジマス角が0度から90度の間で変化する場合に適用し,第2の下位の数式は,アジマス角が90度から180度の間で変化する場合に適用する。…(省略)…コンタクトレンズの異なる領域にどの方程式を適用するかを制御することで,ベースカーブを正確に制御することができる。これにより,例えば,コンタクトレンズ800のベースカーブは,上記のように,領域A814,領域B816,領域C818,領域D820で異なるものであることができる。)

カ 10欄5?43行
「 FIG.9 shows a cross section of the contact lens shown in FIG.8, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Exemplary contact lens 900 corresponds to contact lens 800 in FIG.8 and the cross section of contact lens 900 is shown along line 9-9 shown in FIG.8. Thus, sector A 902 corresponds to sector A 814 in FIG.8 and sector B 904 corresponds to sector D 820 in FIG.8. Axis 906 corresponds to the visual axis of contact lens 900.
Exemplary contact lens 900 has a front surface 906(当合議体注:「906」は「908」の誤記である。) that has a relatively constant curvature. However, the back surface 908(当合議体注:「908」は「910」の誤記である。) has a base curve that varies. Specifically, the base curve in sector D 904 is greater than the base curve in sector A 902. Thus, the portion of the contact lens in sector D 904 is thicker than the portion of the contact lens in sector A 902.
…(省略)…
FIG.10 shows a cross section of the contact lens shown in FIG.8, in accordance with an illustrative embodiment of the present invention. Exemplary contact lens 1000 corresponds to contact lens 800 in FIG.8 and the cross section of contact lens 1000 is shown along line 10-10 shown in FIG.8. Thus, sector B 1002 corresponds to sector B 816 in FIG.8 and sector C 1004 corresponds to sector C 818 in FIG.8. Axis 1006 corresponds to the visual axis of contact lens 1000.
Exemplary contact lens 1000 has a front surface 1006(当合議体注:「1006」は「1008」の誤記である。) that has a relatively constant curvature, though the front side may have a different curvature or may be provided with different components to modify the optical properties of contact lens 1000. Similarly, back surface 1008(当合議体注:「1008」は「1010」の誤記である。) has a relatively constant base curve. Thus, the portion of the contact lens in sector B 1002 has the same thickness as the portion of the contact lens in sector C 1004.」
(参考訳: 図9は,本発明の例示的な実施態様に従って,図8で示したコンタクトレンズの断面を示している。例示的なコンタクトレンズ900は,図8におけるコンタクトレンズ800に対応しており,コンタクトレンズ900の断面は,図8において線9-9に沿って示されている。このように,領域A902は図8の領域A814に対応し,領域B904は図8の領域D820に対応している。軸906は,コンタクトレンズ900の視軸に対応している。
例示的なコンタクトレンズ900は,相対的に一定の曲率を有する前面908を有している。しかしながら,背面910は,変化するベースカーブを有する。特に,領域D904のベースカーブは,領域A902のベースカーブよりも大きい。このように,領域D904のコンタクトレンズの部分は,領域A902のコンタクトレンズの部分よりも厚い。
…(省略)…
図10は,本発明の例示的な実施態様に従って,図8で示したコンタクトレンズの断面を示している。例示的なコンタクトレンズ1000は,図8のコンタクトレンズ800に対応し,コンタクトレンズ1000の断面は,図8に示す線10-10に沿って示されている。これにより,領域B1002は図8の領域B816に対応し,領域C1004は図8の領域C818に対応する。軸1006は,コンタクトレンズ1000の視軸に対応している。
例示的なコンタクトレンズ1000は,相対的に一定な曲率を有する前面1008を持つが,前面は異なる曲率を持つか,または,コンタクトレンズ1000の光学特性を変えるために異なる成分を備えてもよい。同様に,背面1010は相対的に一定のベースカーブを有する。領域B1002のコンタクトレンズの部分は,領域C1004のコンタクトレンズの部分と同じ厚みを有する。)

キ 図1?図5及び図8?図10
図1:


図2:


図3:


図4:


図5:


図8:


図9:


図10:


(2) 引用発明
引用文献3の図8及びその説明(前記(1)エ)には,「領域A814,領域B816,領域C818,及び領域D820の4つの領域に分割されたコンタクトレンズ800」が記載されている。ここで,引用文献3の図8からは,「4つの領域は,コンタクトレンズの中心で直交する軸802及び軸804によって分割された扇形の領域であり,かつ,反時計回りに領域A814,領域B816,領域D820及び領域C818が位置し」ている様子を看取できる(当合議体注:便宜上,図8から看取される位置関係を採用する。)。また,引用文献3の図10からも確認できるとおり,「コンタクトレンズ800は,対向して設けられた前面1008及び背面1010を有し」ている。加えて,引用文献3の図8の説明(前記(1)エ)からは,「軸802は,コンタクトレンズの中心を境に副軸806及び副軸808に分割することができ,軸804は,コンタクトレンズの中心を境に副軸810及び副軸812に分割することができ」,「コンタクトレンズ800のベースカーブは,所定の副軸と関連するコンタクトレンズ800の形状を表す数式を制御することで,各々の領域で,個別に制御され」,「全体として,コンタクトレンズ800のベースカーブは,患者の眼の角膜に非常によく適合し」ている構成を理解することができる。
さらに,引用文献3には,図8及び図3に関連して,「コンタクトレンズ800は減少させて表すことができ,この場合,副軸806と関連する第1のベースカーブは,副軸808と関連する第2のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,一つの数式に従って,軸802と関連して決まるベースカーブを有し,副軸810と関連する第3のベースカーブは,副軸812と関連する第4のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,別の一つの数式に従って,軸804と関連して決まるベースカーブを有し」,「乱視又はその他の眼の変形を持つ患者が使用することができる」という構成を把握できる(前記(1)ウ及びエ)。

以上勘案すると,引用文献3には,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 領域A814,領域B816,領域C818,及び領域D820の4つの領域に分割されたコンタクトレンズ800であって,
4つの領域は,コンタクトレンズの中心で直交する軸802及び軸804によって分割された扇形の領域であり,かつ,反時計回りに領域A814,領域B816,領域D820及び領域C818が位置し,
コンタクトレンズ800は,対向して設けられた前面1008及び背面1010を有し,
軸802は,コンタクトレンズの中心を境に副軸806及び副軸808に分割することができ,軸804は,コンタクトレンズの中心を境に副軸810及び副軸812に分割することができ,コンタクトレンズ800のベースカーブは,所定の副軸と関連するコンタクトレンズ800の形状を表す数式を制御することで,各々の領域で,個別に制御され,全体として,コンタクトレンズ800のベースカーブは,患者の眼の角膜に非常によく適合し,
コンタクトレンズ800は減少させて表すことができ,この場合,副軸806と関連する第1のベースカーブは,副軸808と関連する第2のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,一つの数式に従って,軸802と関連して決まるベースカーブを有し,副軸810と関連する第3のベースカーブは,副軸812と関連する第4のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,別の一つの数式に従って,軸804と関連して決まるベースカーブを有し,
乱視又はその他の眼の変形を持つ患者が使用することができる,
コンタクトレンズ800。」

(3) 対比
ア トーリックレンズ
引用発明の「コンタクトレンズ800」は,「乱視…を持つ患者が使用することができる」ものである。
そうしてみると,引用発明の「コンタクトレンズ800」は,本件補正後発明の「トーリックレンズ」に相当する。

イ 第1の表面と第2の表面
まず,引用発明の「コンタクトレンズ800は,対向して設けられた前面1008及び背面1010を有し」ている。
この構成からみて,引用発明の「コンタクトレンズ800」は,対向に設置された第1の表面と第2の表面を含むものである。

次に,引用発明の「領域A814,領域B816,領域C818,及び領域D820の4つの領域」は,「コンタクトレンズの中心で直交する軸802及び軸804によって分割された扇形の領域であり,かつ,反時計回りに領域A814,領域B816,領域D820及び領域C818が位置し」,「コンタクトレンズ800のベースカーブは,所定の副軸と関連するコンタクトレンズ800の形状を表す数式を制御することで,各々の領域で,個別に制御され」,「副軸806と関連する第1のベースカーブは,副軸808と関連する第2のベースカーブと同じであり」,「副軸810と関連する第3のベースカーブは,副軸812と関連する第4のベースカーブと同じであ」り,「コンタクトレンズ800のベースカーブは,患者の眼の角膜に非常によく適合し」ている。
これら構成からみて,引用発明の「第1のベースカーブ」?「第4のベースカーブ」は,引用発明の「背面1010」に,角膜に適合するように設けられたものである。そして,引用発明の「背面1010」は,コンタクトレンズの中心,すなわち,トーリックレンズの水平子午線と垂直子午線の交差する点に関して2回対称といえる。

以上のとおりであるから,引用発明の「背面1010」及び「前面1008」は,それぞれ,本件補正後発明の「第1の表面」及び「第2の表面」に相当する。また,引用発明の「背面1010」は,本件補正後発明の「第1の表面」における,「トーリックレンズの水平子午線と垂直子午線の交差する点に関して回転対称である」という要件を満たす。

ウ 第1の扇形領域,第2の扇形領域
引用発明は,前記イで述べた構成を具備する。
そうしてみると,引用発明の「領域A814」及び「領域D820」と,「領域B816」及び「領域C818」のうち,そのベースカーブの曲率の勾配が大きい方の一対の領域(以下「大勾配領域」という。)は,それぞれ「背面1010」に「コンタクトレンズ800」の径方向に沿った第1の曲率を有する,第1の扇形領域ということができる。また,引用発明の「領域A814」及び「領域D820」と,「領域B816」及び「領域C818」のうち,そのベースカーブの曲率の勾配が小さい方の一対の領域(以下「小勾配領域」という。)は,第1の扇形領域と交互に配列され,それぞれ「背面1010」に「コンタクトレンズ800」の径方向に沿った第2の曲率を有する第2の扇形領域ということができる。
そうしてみると,引用発明の「大勾配領域」及び「小勾配領域」は,それぞれ,本件補正後発明の「第1の扇形領域」及び「第2の扇形領域」に相当する。また,引用発明の「大勾配領域」と本件補正後発明の「第1の扇形領域」は,「それぞれ前記第1の表面に前記トーリックレンズの径方向に沿った第1の曲率を有し」ている「2つの第1の扇形領域」の点で共通するとともに,引用発明の「小勾配領域」と本件補正後発明の「第2の扇形領域」は,「前記第1の扇形領域と交互に配列され,それぞれ前記第1の表面に前記径方向に沿った第2の曲率を有し」,「前記第1の曲率の勾配が前記第2の曲率よりも大き」い「2つの第2の扇形領域」の点で共通する。

エ トーリックレンズ
以上ア?ウの対比結果のとおりであるから,引用発明の「コンタクトレンズ800」は,本件補正後発明の「トーリックレンズ」における,「表面と」,「第1の扇形領域と」,「第2の扇形領域と」,「を含む」という要件を満たす。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 対向に設置された第1の表面と第2の表面であって,第1の表面がトーリックレンズの水平子午線と垂直子午線の交差する点に関して回転対称である,前記表面と,
それぞれ前記第1の表面に前記トーリックレンズの径方向に沿った第1の曲率を有している2つの第1の扇形領域と,
前記第1の扇形領域と交互に配列され,それぞれ前記第1の表面に前記径方向に沿った第2の曲率を有し,前記第1の曲率の勾配が前記第2の曲率よりも大きい2つの第2の扇形領域と,
を含むトーリックレンズ。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「第1の扇形領域」が,本件補正後発明は,「前記第1の曲率が前記トーリックレンズの円弧方向に沿って固定値となっており」という構成を具備するのに対して,引用発明は,一応,これが明らかではない点。
また,「第2の扇形領域」が,本件補正後発明は,「前記第2の曲率が前記円弧方向に沿って固定値となり」という構成を具備するのに対して,引用発明は,一応,これが明らかではない点。

(相違点2)
「第1の扇形領域」が,本件補正後発明は,「第1の半径を有し」という構成を具備するのに対して,引用発明は,一応,これが明らかではない点。
また,「第2の扇形領域」が,本件補正後発明は,「前記第1の半径よりも大きい第2の半径を有している」のに対して,引用発明は,一応,これが明らかではない点。

(5) 判断
ア 相違点1について
引用発明の「コンタクトレンズ800」は,「全体として,コンタクトレンズ800のベースカーブは,患者の眼の角膜に非常によく適合し」ているものではあるとしても,その「ベースカーブは,所定の副軸と関連するコンタクトレンズ800の形状を表す数式を制御することで,各々の領域で,個別に制御」する場合についても想定されている。
(当合議体注:この点は,引用文献3に「コンタクトレンズ800のベースカーブは,領域A814,領域B816,領域C818,および領域D820において異なっていることができる。より具体的な実施例において,領域A814のベースカーブは勾配が急であり,領域C818のベースカーブは平坦であり,領域B816およびC818のベースカーブは同じであるが,領域A814および領域D820におけるベースカーブとは異なる。」(前記(1)エ)及び「第1式および/または第2式は,極座標および/またはアジマス角が特定の値になると直ちに変化する下位の数式を含むことができる。例えば,第1式は第1の下位の数式および第2の下位の数式を含むことができる。第1の下位の数式は,アジマス角が0度から90度の間で変化する場合に適用し,第2の下位の数式は,アジマス角が90度から180度の間で変化する場合に適用する。」(前記(1)オ)と記載されていることからも確認される事項である。)
そして,引用発明においては,「第1のベースカーブ」と「第2のベースカーブ」が「同じであり」,「第3のベースカーブ」と「第4のベースカーブ」も「同じであ」る。
そうしてみると,引用発明の「コンタクトレンズ800」もまた,相違点1に係る本件補正後発明の構成を具備するといえるから,相違点1は,相違点ではない。
仮に相違点であるとしても,上述の,前記(1)エ及びオの記載に基づいて,相違点1に係る本件補正後発明の構成を採用することは,当業者が容易に発明をすることができた事項である。

イ 相違点2について
引用文献3には,「コンタクトレンズ300は,ハードコンタクトレンズ,ソフトコンタクトレンズ,またはその他の種類のコンタクトレンズなど,あらゆるタイプのコンタクトレンズであることができる。」(前記(1)ウ)と記載されている。
そこで,当業者が,引用発明の「コンタクトレンズ800」を,ソフトコンタクトレンズとして具体化する場合について検討すると,ソフトコンタクトレンズでは,通常,視力矯正のための光学領域の周囲に,「周辺領域」(当合議体注:「ベベル」などとも呼ばれる。)が設けられる。そして,乱視を矯正する場合の光学領域は,角膜の形状に合わせて,例えば,直乱視の場合には上下方向(曲率の勾配が大きい方)よりも横方向(曲率の勾配が小さい方)が長く,倒乱視の場合には上下方向(曲率の勾配が小さい方)よりも横方向(曲率の勾配が大きい方)が短く設計され,その周囲に,「周辺領域」が設けられることとなる。
(当合議体注:この点は,例えば,特表2010-536070号公報(以下「参考文献1」という。)の図1,【0002】及び【0003】,特開2011-133567号公報(以下「参考文献2」という。)の図1及び【0020】?【0022】,特開2014-85678号公報(以下「参考文献3」という。)の図2,【0031】及び【0034】からも確認できる事項である。)
そうしてみると,引用発明において,「小勾配領域」の半径が「大勾配領域」の半径よりも大きくなるように「光学領域」を設け,その周囲に「周辺領域」を設ける構成を採用することは,引用発明の「コンタクトレンズ800」の構成を前提にして,これを「ソフトコンタクトレンズ」として具体化する当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。

(6) 本願発明の効果及び審判請求人の主張について
本件出願の明細書には,「発明の効果」に関する明示的な記載がない。
ただし,発明が解決しようとする課題に関して,明細書の【0003】には,「1980年代から,市販のものとして,乱視矯正用のコンタクトレンズが現れた。これらのコンタクトレンズは,それなりの効果を有するが,レンズ設計が複雑だと考えられる。更に悪いことには,患者の視力矯正要求を満足するために,3000よりも大きい在庫保管単位(sku)が必要とされる。これにより,レンズメーカの生産と倉庫保管の負荷が増大するだけでなく,同時に,セールスマンとアイケアの専門家全体にも大きくて複雑な庫存保留の負荷がかけられてしまう。」と記載されている。そして,審判請求人は,この課題を解決することが,本件補正後発明の格別の効果であると主張している(審判請求書の「3-2.本願の発明について」)。
そこで,本件補正後発明の効果を,この課題を解決することと理解して検討すると,引用文献3には,上記の効果に関する明示的な記載はない。しかしながら,引用発明は,「領域A814,領域B816,領域C818,及び領域D820の4つの領域に分割されたコンタクトレンズ800であって」,「コンタクトレンズ800のベースカーブは,所定の副軸と関連するコンタクトレンズ800の形状を表す数式を制御することで,各々の領域で,個別に制御され,全体として,コンタクトレンズ800のベースカーブは,患者の眼の角膜に非常によく適合し」ているものであるとしても,「副軸806と関連する第1のベースカーブは,副軸808と関連する第2のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,一つの数式に従って,軸802と関連して決まるベースカーブを有し,副軸810と関連する第3のベースカーブは,副軸812と関連する第4のベースカーブと同じであり,コンタクトレンズ800は,別の一つの数式に従って,軸804と関連して決まるベースカーブを有し」というように設計されたもの,すなわち,本件補正後発明の「第1の扇形領域」及び「第2の扇形領域」と同様に設計されたものである。
そうしてみると,本件補正後発明の効果は,引用発明も具備する効果である。

なお,本願発明の効果を,明細書の【0032】に記載のものと理解しても,同様である。

(7) 小括
本件補正後発明は,引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である米国特許第7296890号明細書(引用文献3)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,また,本願発明は,引用文献3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用文献及び引用発明
引用文献3の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から,(第1の扇形領域について)「第1の半径を有している」及び(第2の扇形領域について)「前記第1の半径よりも大きい第2の半径を有している」という発明特定事項を削除したものである。
ここで,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項を付加したものである本件補正後発明は,前記「第2」[理由]2(4)?(7)に記載したとおり,引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。そして,本願発明は,相違点2に係る本件補正後発明の構成を具備しないものであるから,周知技術については考慮する必要がない。
そうしてみると,本願発明は,引用文献3に記載された発明であり,あるいは,引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条1項3号に該当する発明である,あるいは,同条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-29 
結審通知日 2019-12-02 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2016-235254(P2016-235254)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02C)
P 1 8・ 575- Z (G02C)
P 1 8・ 121- Z (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 河原 正
樋口 信宏
発明の名称 トーリックレンズ  
代理人 葛和 清司  

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