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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1362287
審判番号 不服2018-16753  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-17 
確定日 2020-05-13 
事件の表示 特願2016-573554「透過型のLCDアセンブリ及びディスプレイ・ケース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/195681、平成29年10月19日国内公表、特表2017-531198〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月16日(パリ条約による優先権主張 2014年6月16日、アメリカ合衆国(3件)、2014年6月17日、アメリカ合衆国、2014年6月18日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成29年 3月 1日 :手続補正書の提出
平成30年 1月30日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 8月10日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年12月17日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年12月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「 【請求項1】
シールされた透過型のLCD(液晶ディスプレイ: liquid crystal display)アセンブリであって、
前部ガラス・パネルと、
背部ガラス・パネルと、
前記前部ガラス・パネル及び前記背部ガラス・パネルの周辺部の周りに取り付けられ、且つ、前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間で挟まれるスペーサ要素であって、前記前部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間及び前記背部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間でガス・シールを提供する前記スペーサ要素と、
前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間に置かれ、且つ前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとから離れている透過型のLCDパネルと、
前記LCDパネルと前記背部ガラス・パネルとの間に位置する2方向の光ガイドであって、垂直的及び水平的に移動可能であるが、前記LCDパネルに向かう又は前記LCDパネルから離れる移動は制限されている、前記光ガイドと、
前部の表面及び背部の表面を有する前部ブラケットであって、前記LCDパネルに向かう前記光ガイドの移動を制限する前記前部ブラケットと、
前記LCDパネルから離れる前記光ガイドの移動を制限する背部ブラケットと、
を備え、
前記光ガイドは、熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能であるシールされた透過型のLCDアセンブリ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、平成30年5月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
シールされた透過型のLCD(液晶ディスプレイ: liquid crystal display)アセンブリであって、
前部ガラス・パネルと、
背部ガラス・パネルと、
前記前部ガラス・パネル及び前記背部ガラス・パネルの周辺部の周りに取り付けられ、且つ、前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間で挟まれるスペーサ要素であって、前記前部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間及び前記背部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間でガス・シールを提供する前記スペーサ要素と、
前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間に置かれ、且つ前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとから離れているLCDパネルと、
前記LCDパネルと前記背部ガラス・パネルとの間に位置する光ガイドであって、垂直的及び水平的に移動可能であるが、前記LCDパネルに向かう又は前記LCDパネルから離れる移動は制限されている、前記光ガイドと、
前部の表面及び背部の表面を有する前部ブラケットであって、前記LCDパネルに向かう前記光ガイドの移動を制限する前記前部ブラケットと、
前記LCDパネルから離れる前記光ガイドの移動を制限する背部ブラケットと、
を備えるシールされた透過型のLCDアセンブリ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「LCDパネル」について、「透過型の」と限定し、「光ガイド」について、「2方向の」及び「熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能であ」ると限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の最先の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2014/0144083号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「[0002] The present disclosure relates generally to temperature-controlled storage devices such as refrigerated display cases as may be found in a supermarket or other similar facility. The present disclosure relates more particularly to a refrigerated display case door with a transparent LCD panel.」
(審決仮訳:[0002] 本開示は、スーパーマーケットやその他の類似の施設で見られるような冷蔵陳列ケース等の温度制御貯蔵装置に概ね関する。本開示は、具体的には、透明LCDパネルを有する冷蔵陳列ケースドアに関する。)

「[0051] Front panel 18 and rear panel 20 may be made from glass (e.g., insulated glass, tempered glass, etc.), plastics, or other transparent or substantially transparent materials. In some embodiments, front panel 18 and rear panel 20 include a transparent portion 34 and an opaque portion 32 . Opaque portion 32 may be formed, for example, by screen printing, by applying another type of coating (e.g., dot matrix decorating, roller printing, ink jet printing, painting, etc.), and/or by applying a decal to a surface of front panel 18 and/or rear panel 20 . Opaque portion 32 may hide or obscure the margin of LCD panel 22 (e.g., frame 36 , edges of the LCD screen, etc.) as well as any other components which may be positioned between front panel 18 and rear panel 20 (e.g., spacers 24 - 28 , insulation 30 , etc.).」
(審決仮訳:[0051] フロントパネル18とリアパネル20はガラス(例えば、断熱ガラスや強化ガラスなど)、プラスチックまたは他の透明または実質的に透明な材料から形成してもよい。いくつかの実施形態では、フロントパネル18とリアパネル20は透明部分34と不透明部分32を含む。不透明部分32は、例えばスクリーン印刷、別のタイプの被膜(例えばドットマトリックス修飾、ローラ印刷、インクジェット印刷、塗装など)の貼付、および/またはフロントパネル18および/またはリアパネル20へのステッカーの貼付により形成してもよい。不透明部分32はLCDパネル22の余白(例えばフレーム36、LCDスクリーンの縁部など)並びにフロントパネル18とリアパネル20の間に配置される可能性のある他の構成要素(例えばスペーサ24?28、絶縁体30など)を隠すかぼやけさせてもよい。)

「[0059] Still referring to FIGS. 2-4 , transparent unit 16 is shown to include a plurality of spacers 24 - 28 . In some embodiments, spacers 24 - 28 include at least three different spacers (i.e., first spacer 24 , second spacer 26 , and third spacer 28 ). First spacer 24 may span the distance between front panel 18 and rear panel 20 , second spacer 26 may span the distance between front panel 18 and LCD panel 22 , and third spacer 28 may span the distance between LCD panel 22 and rear panel 20 . Spacers 24 - 28 may be used to ensure an appropriate spacing between panels 18 - 22 and to prevent undesirable flexure thereof. For example, first spacer 24 may be adhered to surfaces 42 and 44 (i.e., the interior surfaces of front panel 18 and rear panel 20 ) and may be used to maintain a desired distance between front panel 18 and rear panel 20 .」
(審決仮訳:[0059] さらに図2?図4を参照すると、透明ユニット16は複数のスペーサ24?28を含んで示されている。いくつかの実施形態では、スペーサ24?28は、少なくとも3つのスペーサ(第一のスペーサ24、第二のスペーサ26、第三のスペーサ28)を含む。第一のスペーサ24は、フロントパネル18とリアパネル20間の距離にわたり、第二のスペーサ26はフロントパネル18とLCDパネル22の距離にわたり、第三のスペーサ28はLCDパネル22とリアパネル20の距離にわたることができる。スペーサ24?28を用いて、パネル18?22間の適切な間隔の確保およびそれらの不要な屈曲の防止ができる。例えば、第一のスペーサ24は表面42および44(フロントパネル18とリアパネル20の内側表面)に接着可能であり、フロントパネル18とリアパネル20間の望ましい距離の維持のために使用できる。)

「[0063] Insulation 30 may be formed from molded polyurethane foam, polystyrene bead, extruded polystyrene, or other similar material. In some embodiments, other types of insulation, such as superinsulation (e.g., silica aerogel) can be used in areas where bulky and/or conductive components require greater insulation in a limited space (e.g., to prevent external condensation in a refrigerator or freezer). In some embodiments, an insulating gas (e.g., argon, xenon, krypton, sulfur hexafluoride, etc.) may be used to fill the spaces between front panel 18 and rear panel 20 . An insulating gas may be ideally suited for low temperature applications and may be used in addition to or in place of insulation 30 for insulating spaces around LCD panel 22 .
[0064] As shown in FIG. 4 , the insulating gas may be used to fill cavities 58 between front panel 18 and LCD panel 22 and between rear panel 20 and LCD panel 22 . In operation, light from within display case door 12 may pass through cavities 58 before reaching a user. Advantageously, the insulating gas within cavities 58 may be transparent to visible light such that light from within display case door 12 is able to pass through cavities 58 . The insulating gas may improve the thermal insulation of display case door 12 without impairing the functionality of LCD panel 22 and without preventing light from passing through cavities 58 and reaching a user.
[0065] In some embodiments, transparent unit 16 includes a seal 60 . Seal 60 may hermetically seal cavities 58 to prevent external contamination (e.g., with dust, residue, pollution, chemicals, moisture, etc.) and to prevent the insulating gas within cavities 58 from escaping.」
(審決仮訳:[0063] 絶縁体30は、成型ポリウレタンフォーム、ポリスチレンビーズ、押出しポリスチレン、またはその他の類似の材料から形成できる。いくつかの実施形態では、超断熱体(例えば、シリカエアロゲル)などの他のタイプの絶縁体を、嵩張るおよび/または導電性の構成要素が限られた空間でより一層の絶縁を必要とする領域で使用できる(例えば、冷蔵庫や冷凍庫の外側の結露の防止用)。いくつかの実施形態では、絶縁ガス(例えば、アルゴン、キセノン、クリプトン、六フッ化硫黄など)を使用してフロントパネル18とリアパネル20の間の空間を充填してもよい。絶縁ガスは、低温用に理想的に適合している場合があり、LCDパネル22の周りの空間の絶縁用の絶縁体30に加えてあるいはその代わりに使用してもよい。
[0064] 図4に示すように、絶縁ガスを用いてフロントパネル18とLCDパネル22の間およびリアパネル20とLCDパネル22の間の空洞58を充填してもよい。作動中は、陳列ケースドア12内からの光がユーザに到達する前に空洞58を通過することがある。有利な点として、空洞58内の絶縁ガスは、可視光に対して透明であり、陳列ケースドア12内からの光は空洞58を通過できる。絶縁ガスは、LCDパネル22の機能性を損なわずにかつ光が空洞58を通過してユーザに到達するのを妨げずに陳列ケースドア12の断熱性を改良し得る。
[0065] いくつかの実施形態では、透明ユニット16はシール60を含む。シール60は空洞58を気密に封止して外部の汚染(例えば、埃、残留物、汚染、化学物質、水分などによる)を防止しかつ空洞58内の絶縁ガスの漏出を防止できる。)

「[0075] Still referring to FIG. 6 , in some embodiments, display case door 12 includes a light guide 66 . Light guide 66 may be configured to guide the light emitted by lighting element 64 toward the items within storage device 10 and/or toward LCD panel 22 . In some embodiments, light guide 66 is a light guide plate (e.g., made of glass, plexiglass or the like) that helps illuminate the images on LCD panel 22 by directing light from lighting element 64 through transparent LCD panel 22 . In various embodiments, light guide 66 may be disposed along a front surface of rear panel 20 (i.e., surface 44 ), along a rear surface of rear panel 20 (i.e., surface 46 ), behind rear panel 20 (e.g., on another panel, within storage device 10 , etc.), or otherwise positioned to receive light from lighting element 64 .」
(審決仮訳:[0075] さらに図6を参照すると、いくつかの実施形態では、陳列ケースドア12は光ガイド66を含む。光ガイド66は、照明素子64が発した光を貯蔵装置10内の物品に向けて、および/またはLCDパネル22に向けて導くように構成してもよい。いくつかの実施形態では、光ガイド66は、照明素子64からの光を透明LCDパネル22を通すことでLCDパネル22上の画像の照明に役立つ光ガイド板(例えば、ガラス、プレキシガラス等からなる)である。さまざまな実施形態で、光ガイド66は、リアパネル20の前面(表面44)に沿って配設、リアパネル20の後面(表面46)に沿って配設、リアパネル20の背後に配設(例えば、別のパネルの上、貯蔵装置10内、など)、さもなければ照明素子64からの光を受光するように配置してもよい。)

「[0118] Referring now to FIG. 13 , a cross-sectional drawing of a transparent unit 16` is shown, according to another exemplary embodiment. Transparent unit 16` includes many of the same features of transparent unit 16 as described with reference to FIGS. 2-6 . For example, transparent unit 16` is shown to include a front panel 18 , a rear panel 20 , and a transparent LCD 22 panel positioned between front panel 18 and rear panel 20 . Transparent unit 16` is shown to further include insulation 30 , a spacer 24 spanning the distance between front panel 18 and rear panel 20 , and a seal 60 around a perimeter of transparent unit 16` . In some embodiments, transparent LCD panel 22 may be positioned adjacent to front panel 18 , as shown in FIG. 13 . Transparent LCD panel 22 may be secured to front panel 18 by an adhesive or fastener 69 (e.g., bolts, screws, double-sided tape, glue, epoxy, etc.) or held in place by a geometric fitting.
[0119] Still referring to FIG. 13 , transparent unit 16` is shown to include a lighting element 64 and a light guide 66 . Lighting element 64 may include one or more light-emitting devices (e.g., light emitting diode (LED) strips, fluorescent light tubes, incandescent lights, halogen lights, etc.) configured to provide backlighting for transparent LCD panel 22 and/or to improve the presentation and display of the items within storage device 10 . Light guide 66 may be a phosphorescent embedded material configured to direct the light emitted from lighting element 64 toward transparent LCD panel 22 and/or toward products within storage device 10 .
[0120] In some embodiments, lighting element 64 and light guide 66 are located within transparent unit 16` (e.g., between front panel 18 and rear panel 20 ). For example, lighting element 64 and light guide 66 may be positioned between transparent LCD panel 22 and rear panel 20 . As shown in FIG. 13 , lighting element 64 may be positioned adjacent to light guide 66 (e.g., on one side, on both sides, above, below, etc.). Light emitted from lighting element 64 may pass through a side surface of light guide 66 and may be directed (e.g., scattered, deflected, redirected, etc.) by light guide 66 toward transparent LCD panel 22 and/or rear panel 20 . Spacers 26 and 28 may be located on either side of light guide 66 . For example, spacer 26 may be located between transparent LCD panel 22 and light guide 66 . Spacer 28 may be located between light guide 66 and rear panel 20 .
[0121] In some embodiments, lighting element 64 and/or light guide 66 may be attached to a housing 67 . Housing 67 may be used to secure lighting element 64 and/or light guide 66 in a stable position relative to transparent unit 16` . Housing 67 may be positioned between transparent LCD panel 22 and rear panel 20 , as shown in FIG. 13 . In some embodiments, housing 67 includes a feature (e.g., a slot, a channel, a mounting surface, a corner, a rib, etc.) configured to receive and/or secure light guide 66 . Housing 67 may also include a feature configured to receive and/or secure lighting element 64 . In various embodiments, housing 67 may be attached to a rear surface of LCD panel 22 , a front surface of rear panel 20 , a side surface of spacers 26 or 28 , to insulation 30 , and/or to spacer 24 . Housing 67 may be attached to various elements by an adhesive or fastener 69 (e.g., bolts, screws, double-sided tape, glue, epoxy, etc.) or held in place by a geometric fitting.」
(審決仮訳:[0118] 図13をさらに参照すると、透明ユニット16' の断面図が別の例示的な実施形態に従い示されている。透明ユニット16' は、図2?図6との関連で説明したものと同じ透明ユニット16の特徴の多くを含んでいる。例えば、透明ユニット16' はフロントパネル18、リアパネル20、およびフロントパネル18とリアパネル20の間に配置される透明LCDパネル22を含んで示されている。透明ユニット16' は、絶縁体30、フロントパネル18とリアパネル20の間の距離にわたるスペーサ24、および透明ユニット16' の外周の周りのシール60をさらに含んで示されている。いくつかの実施形態では、透明LCDパネル22は、図13に示すように、フロントパネル18に隣接して配置できる。透明LCDパネル22は、接着剤あるいは固定具69(例えばボルト、ねじ、両面テープ、糊、エポキシなど)でフロントパネル18に固定して、幾何学的金具により定位置に保持できる。
[0119] 図13をさらに参照すると、透明ユニット16' は、照明素子64と光ガイド66を含んで示されている。照明素子64は、透明LCDパネル22のバックライトを提供し、および/または貯蔵装置10内の物品の提示と表示を向上させるように構成された1つまたは複数の発光装置(例えば、発光ダイオード(LED)ストリップ、蛍光灯、白熱灯、ハロゲンランプなど)を含んでもよい。光ガイド66は、照明素子64から発した光を透明LCDパネル22および/または貯蔵装置10内の製品に向けるように構成されるリン光性埋め込み材料であってもよい。
[0120] いくつかの実施形態では、照明素子64と光ガイド66は、透明ユニット16' 内に位置する(例えば、フロントパネル18とリアパネル20の間)。例えば、照明素子64と光ガイド66は、透明LCDパネル22とリアパネル20の間に配置してもよい。図13に示すように、照明素子64は、光ガイド66に隣接して配置してもよい(例えば、片側、両側、上部、下部など)。照明素子64から出た光は、光ガイド66の側面を通って、光ガイド66により透明LCDパネル22および/またはリアパネル20に向けられる(例えば、散乱、偏光、方向変更など)。スペーサ26および28は光ガイド66の各側に位置できる。例えば、スペーサ26は透明LCDパネル22と光ガイド66の間に位置できる。スペーサ28は、光ガイド66とリアパネル20の間に位置してもよい。
[0121] いくつかの実施形態では、照明素子64および/または光ガイド66は、筐体67に取り付けてもよい。筐体67を用いて、照明素子64および/または光ガイド66を透明ユニット16' に対して安定した位置に固定できる。筐体67は、図13に示すように、透明LCDパネル22とリアパネル20の間に配置してもよい。いくつかの実施形態では、筐体67は、光ガイド66を受け止め、および/または固定するように構成された機構(例えば穴、溝、取り付け表面、角部、リブなど)を含む。筐体67はまた、照明素子64を受け止め、および/または固定するように構成された機構を含んでもよい。さまざまな実施形態では、筐体67は、LCDパネル22の後面、リアパネル20の前面、スペーサ26または28の側面、絶縁体30、および/またはスペーサ24に取り付けてもよい。筐体67は、接着剤あるいは固定具69(例えばボルト、ねじ、両面テープ、糊、エポキシなど)でさまざまな要素に固定して、幾何学的金具により定位置に保持できる。)

FIG. 13の記載から、筐体67は、フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22に近づく方向へ移動することを制限する部分と、フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22から離れる方向へ移動することを制限する部分とからなることが、見て取れる。

また、FIG. 13の記載から、シール60は、フロントパネル18及びリアパネル20の周辺部に取り付けられ、フロントパネル18とリアパネル20との間で挟まれること、透明LCDパネル22は、フロントパネル18に隣接して配置されているとともにリアパネル20から離れて配置されていること、及び、光ガイド66は、透明LCDパネル22とリアパネル20の間に位置することが、見て取れる。

イ 上記アから、引用文献1には、次の発明及び技術的事項が記載されていると認められる。

「透明ユニット16' はフロントパネル18、リアパネル20、およびフロントパネル18とリアパネル20の間に配置される透明LCDパネル22を含んで示され、フロントパネル18とリアパネル20はガラスから形成され、透明LCDパネル22は、フロントパネル18に隣接して配置されているとともにリアパネル20から離れて配置されており、
透明ユニット16' の外周の周りの気密に封止するシール60をさらに含んで示され、シール60は、フロントパネル18及びリアパネル20の周辺部に取り付けられ、フロントパネル18とリアパネル20との間で挟まれ、
透明ユニット16' は、光ガイド66を含んで示され、
光ガイド66は、照明素子64から発した光を透明LCDパネル22および貯蔵装置10内の製品に向けるように構成されるリン光性埋め込み材料であり、光ガイド66は、透明LCDパネル22とリアパネル20の間に位置し、
照明素子64は、光ガイド66に隣接して配置されており(例えば、片側、両側、上部、下部など)、
筐体67は、透明LCDパネル22とリアパネル20の間に配置し、筐体67は、光ガイド66を受け止めるように構成され、
筐体67は、フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22に近づく方向へ移動することを制限する部分と、フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22から離れる方向へ移動することを制限する部分とからなる、
透明ユニット16'。」(以下「引用発明」という。)

「絶縁ガスを用いてフロントパネル18とLCDパネル22の間およびリアパネル20とLCDパネル22の間の空洞58を充填してもよく、
絶縁ガスは、LCDパネル22の機能性を損なわずにかつ光が空洞58を通過してユーザに到達するのを妨げずに陳列ケースドア12の断熱性を改良し得る。」(以下「技術的事項」という。)

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「『ガラスから形成され』た『フロントパネル18』」は、本件補正発明の「前部ガラス・パネル」に、
引用発明の「『ガラスから形成され』た『リアパネル20』」は、本件補正発明の「背部ガラス・パネル」に、
引用発明の「『透明ユニット16' の外周の周りの気密に封止』し、『ガラスから形成され』た『フロントパネル18及び』『ガラスから形成され』た『リアパネル20の周辺部に取り付けられ、』『ガラスから形成され』た『フロントパネル18と』『ガラスから形成され』た『リアパネル20との間で挟まれ』る『シール60』」は、本件補正発明の「前記前部ガラス・パネル及び前記背部ガラス・パネルの周辺部の周りに取り付けられ、且つ、前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間で挟まれるスペーサ要素であって、前記前部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間及び前記背部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間でガス・シールを提供する前記スペーサ要素」に、
引用発明の「『ガラスから形成され』た『フロントパネル18と』『ガラスから形成され』た『リアパネル20の間に配置される透明LCDパネル22』」は、本件補正発明の「『前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間に置かれ』『る透過型のLCDパネル』」に、
引用発明の「『照明素子64から発した光を透明LCDパネル22および貯蔵装置10内の製品に向けるように構成されるリン光性埋め込み材料であり、』『透明LCDパネル22と』『ガラスから形成され』た『リアパネル20の間に位置』する『光ガイド66』」は、本件補正発明の「前記LCDパネルと前記背部ガラス・パネルとの間に位置する2方向の光ガイド」に、
引用発明の「『筐体67』の『フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22に近づく方向へ移動することを制限する部分』」は、本件補正発明の「前部の表面及び背部の表面を有する前部ブラケットであって、前記LCDパネルに向かう前記光ガイドの移動を制限する前記前部ブラケット」に、
引用発明の「『筐体67』の『光ガイド66が透明LCDパネル22から離れる方向へ移動することを制限する部分』」は、本件補正発明の「前記LCDパネルから離れる前記光ガイドの移動を制限する背部ブラケット」に、
引用発明の「『透明LCDパネル22を含』み『シール60をさらに含』む『透明ユニット16'』」は、本件補正発明の「シールされた透過型のLCD(液晶ディスプレイ: liquid crystal display)アセンブリ」に、
それぞれ相当する。

(イ)引用発明は「筐体67は、フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22に近づく方向へ移動することを制限する部分と、フロントパネル18側の表面及びリアパネル20側の表面を有し光ガイド66が透明LCDパネル22から離れる方向へ移動することを制限する部分」と特定されているので、光ガイド66は、透明LCDパネル22に近づく方向又は透明LCDパネル22から離れる方向への移動を制限されている。
そうすると、引用発明の「『光ガイド66が透明LCDパネル22に近づく方向へ移動することを制限する部分と、』『光ガイド66が透明LCDパネル22から離れる方向へ移動することを制限する部分とからなる』『筐体67』が『移動することを制限する』『光ガイド66』」は、本件補正発明の「前記LCDパネルに向かう又は前記LCDパネルから離れる移動は制限されている、前記光ガイド」に相当する。

(ウ)引用発明の「『フロントパネル18に隣接して配置されているとともにリアパネル20から離れて配置され』『る透明LCDパネル22』」と、本件補正発明の「前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとから離れているLCDパネル」とは、「前記背部ガラス・パネルとから離れているLCDパネル」の点で一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「シールされた透過型のLCD(液晶ディスプレイ: liquid crystal display)アセンブリであって、
前部ガラス・パネルと、
背部ガラス・パネルと、
前記前部ガラス・パネル及び前記背部ガラス・パネルの周辺部の周りに取り付けられ、且つ、前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間で挟まれるスペーサ要素であって、前記前部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間及び前記背部ガラス・パネルと前記スペーサ要素との間でガス・シールを提供する前記スペーサ要素と、
前記前部ガラス・パネルと前記背部ガラス・パネルとの間に置かれ、且つ前記背部ガラス・パネルとから離れている透過型のLCDパネルと、
前記LCDパネルと前記背部ガラス・パネルとの間に位置する2方向の光ガイドであって、前記LCDパネルに向かう又は前記LCDパネルから離れる移動は制限されている、前記光ガイドと、
前部の表面及び背部の表面を有する前部ブラケットであって、前記LCDパネルに向かう前記光ガイドの移動を制限する前記前部ブラケットと、
前記LCDパネルから離れる前記光ガイドの移動を制限する背部ブラケットと、
を備えた、
シールされた透過型のLCDアセンブリ。 」

【相違点1】
透過型のLCDパネルが、本件補正発明では「前部ガラス・パネルとから離れている」のに対し、引用発明ではフロントパネル18に隣接して配置されている点。

【相違点2】
光ガイドについて、本件補正発明では「熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能である」のに対し、引用発明ではそのように移動可能であるのか明らかでない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)引用文献1には、本開示は、冷蔵陳列ケースドアに関する開示である旨記載されており、冷蔵陳列ケースドアが断熱性を有するようにすることは、技術常識である。

(イ)そうすると、引用発明においても、上記(ア)に記載したように冷蔵陳列ケースドアとして断熱性を有するように考慮して上記技術的事項を採用し、透明LCDパネル22とフロントパネル18の間に空洞を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)引用発明では「筐体67は、光ガイド66を受け止めるように構成された機構」と特定されている。
ここで、筐体67が、光ガイド66を受け止めるについて、検討する。
引用文献1の[0121]には「In some embodiments, housing 67 includes a feature (e.g., a slot, a channel, a mounting surface, a corner, a rib, etc.) configured to receive and/or secure light guide 66 . 」(審決仮訳:いくつかの実施形態では、筐体67は、光ガイド66を受け止め、および/または固定するように構成された機構(例えば穴、溝、取り付け表面、角部、リブなど)を含む。)と記載されていることから、筐体67が、光ガイド66を受け止めることと、筐体67が、光ガイド66を固定することとは、引用文献1では、異なる意味で用いている。
そうすると、筐体67が、光ガイド66を受け止めることは、筐体67が、光ガイド66を固定することではないというべきである。
そして、筐体は、光ガイド66が透明LCDパネル22に近づく方向へ移動することを制限する部分と、光ガイド66が透明LCDパネル22から離れる方向へ移動することを制限する部分とからなり、光ガイドは、これら筐体の二つの部分で受け止められていることから、光ガイド66は、透明LCDパネル22に近づく方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。

(イ)また、上記ア(ア)で認定したとおり、引用文献1は、冷蔵陳列ケースドアに関するものなので、引用発明の光ガイド66も所定の熱による変化が生じると考えるのが自然である。

(ウ)このように、光ガイド66は、透明LCDパネル22に近づく方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であり、光ガイド66にも所定の熱による変化が生じている。よって、光ガイド66は、所定の熱による変化が生じると、透明LCDパネル22に近づく方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。

(エ)ところで、本件補正発明の「光ガイドは、熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能である」との特定は、「熱膨張によって」と記載されていることから、文言上、熱収縮し、その後の熱膨張されるものを含みうるものであり、よって、光ガイドは、熱収縮し、その後の熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能であることを排除していない。

このことは、本願明細書の記載からも裏付けられる。すなわち、本願明細書を参酌すると、本願明細書の【0019】には「言い換えれば、光ガイド220は、固定されているが、X-Y方向(LCDを見る時に水平方向及び垂直方向)に熱膨張/収縮することができる一方、Z方向(LCDを見る時にアセンブリの内部方向/外部方向)には固定されている。」と、光ガイド220は、水平方向及び垂直方向に熱膨張/収縮することができる旨記載されている。このように、本願明細書では「熱膨張」のみならず、「収縮」も想定されているのであるから、熱収縮し、その後の熱膨張されるものも想定されているといえる。そうすると、本願明細書からも、光ガイドが、熱収縮し、その後の熱膨張する態様を排除していない。

a 上記(エ)の解釈を踏まえて、引用発明の「照明素子64は、光ガイド66に隣接して配置されており(例えば、片側、両側、上部、下部など)」の特定の照明素子64が、光ガイド66の両側に隣接して配置されている態様について、まず、検討する。
照明素子64が、光ガイド66の両側に隣接して配置されているとしても、光ガイド66は、所定の熱による変化が生じると、熱収縮し、その後の熱膨張して、透明LCDパネル22に向かう方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。

そうすると、相違点2は実質的な相違点ではない。

b 次に、上記特定の照明素子64が、光ガイド66の片側、上部、下部に隣接して配置されている態様について検討する。
照明素子64が光ガイド66の上部、下部に隣接して配置された場合には、照明素子64は光ガイド66が透明LCDパネル22に向かう方向又は透明LCDパネル22から離れる方向に隣接して配置された場合であり、また、照明素子64が光ガイド66の片側に隣接して配置された場合には、片側だけの配置である。
そうすると、照明素子64が、光ガイド66の片側、上部、下部に隣接して配置されている態様においても、光ガイド66は、所定の熱による変化が生じると、熱収縮し、その後の熱膨張して、透明LCDパネル22に向かう方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。

この態様においても、相違点2は実質的な相違点ではない。

(オ)上記(エ)のように解釈することが妥当であるが、仮に、本件補正発明の「光ガイドは、熱膨張によって」は、光ガイドは、熱収縮せずに、熱膨張のみしかしないことを特定していると考えて検討する。

a 光ガイド66の両側に隣接して配置されている態様について、まず、検討する。
引用発明の照明素子64が、光ガイド66の両側に隣接して配置されているところ、隣接して(adjacent)は、用語の意味として、「近隣で」をも含むと解される。
そうすると、照明素子64が、光ガイド66の両側に隣接して配置されているとしても、隣接している(近隣の)範囲において、光ガイド66は、所定の熱による変化が生じると熱膨張して、透明LCDパネル22に向かう方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。

なお、参考までに、本願明細書の【0019】には「LED276は、光ガイド220の端に隣接して配置され、光ガイド220は、背部ブラケット211と前部ブラケット236との間で挟み込まれている。光ガイド220は、一般に、アセンブリの前部又は背部に向かう移動が制限されるだけであり、アセンブリの頂部又は側部に向かう移動は制限されない。」と記載され、【0023】には「LED275は、光ガイド220の端に隣接して配置され、光ガイド220は、背部ブラケット211と前部ブラケット236との間で挟み込まれている。上述した通り、光ガイド220は、アセンブリの前部又は背部に向かう移動が制限されるだけであり、アセンブリの頂部又は側部に向かう移動は制限されない。」と記載されており、本願明細書は、LED275、276が、光ガイド220の端に隣接して配置された状態であっても、頂部又は側部に向かう移動は制限されない旨記載されている(参考までに、本願の国際公開である国際公開第2015/195681号においても、[0037]には「The LEDs 276 are placed adjacent to the edge of a light guide 220 which is sandwiched between a rear bracket 21 1 and a front bracket 236. 」、[0041]には「The LEDs 275 are placed adjacent to the edge of a light guide 220 which is sandwiched between a rear bracket 21 1 and a front bracket 236.」と記載されている。)。

よって、仮に、本件補正発明の「光ガイドは、熱膨張によって」との特定事項は、光ガイドは、熱収縮せずに、熱膨張のみしかしないことを特定していると考えても、相違点2は実質的な相違点ではない。

b 更に、上記特定の照明素子64が、光ガイド66の片側、上部、下部に隣接して配置されている態様について検討する。
照明素子64が光ガイド66の上部、下部に隣接して配置された場合には、照明素子64は光ガイド66が透明LCDパネル22に向かう方向又は透明LCDパネル22から離れる方向に隣接して配置された場合であり、また、照明素子64が光ガイド66の片側に隣接して配置された場合には、片側だけの配置である。
そうすると、照明素子64が、光ガイド66の片側、上部、下部に隣接して配置されている態様においても、光ガイド66は、所定の熱による変化が生じると熱膨張して、透明LCDパネル22に向かう方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。

よって、仮に、本件補正発明の「光ガイドは、熱膨張によって」との特定事項は、光ガイドは、熱収縮せずに、熱膨張のみしかしないことを特定していると考え、照明素子64が、光ガイド66の片側、上部、下部に隣接して配置されている態様においても、相違点2は実質的な相違点ではない。

ウ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
ア 本件審判請求人は、平成30年12月17日付けで提出された審判請求書において、
(ア)「相違点1に関し、以下に反論する。本願発明1では、前部ブラケット及び背部ブラケットの分離した部材であるのに対し、引用発明1(図13)では、housing 67は、単一のユニットである。この点、意見書第2頁でも図示したとおり、引用文献1の図13と本願図面の図7とを比較すれば、明らかである。」、
(イ)「この記載からすれば、接着(adhesive)又は留め具(fastener 69)等でそれ自身が固定された単一のハウジング(housing 67)は、光ガイド(light guide 66)を動かないように固定しているのであって、その目的は、引用文献1の発光素子(lighting element 64)及び光ガイド(light guide 66)を接しさせることにあるものと思料する(引用発明1の図13には、光ガイド(light guide 66)の下端に発光素子(lighting element 64)が接した状態で、ハウジング(housing 67)によって、両者が固定された実施例が開示又は図示されている。また、光ガイド(light guide 66)と発光素子(lighting element 64)とが接しているので、発光素子(lighting element 64)からの光は、光ガイド(light guide 66)に直接に放出される。)。
言い換えれば、光の発光効率から考えれば、発光素子(lighting element 64)及び光ガイド(light guide 66)を離す(引用文献1の図13の上下方向に移動させる)ことは、当業者の技術常識に反するものである。更に、光の拡散経路からすれば、発光素子(lighting element 64)及び光ガイド(light guide 66)が互いに接した(引用文献1の図13の上下方向の移動を制限した)状態であっても(引用文献1の図13の左右方向に)移動することは、画像品質の観点からも、当業者の技術常識に反するものである。」、
(ウ)「具体的には、本願発明1では、『前記光ガイドは、熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能である』の構成を備えるのに対して、引用発明1(図13)では、この構成を備えておらず(相違点2)、引用文献1は、その構成を示唆するものではない。
本願発明1では、『前記LCDパネルと前記背部ガラス・パネルとの間に位置する2方向の光ガイドであって、垂直的及び水平的に移動可能であるが、前記LCDパネルに向かう又は前記LCDパネルから離れる移動は制限されている、前記光ガイド』の構成を備えるのに対して、引用発明1(図13)では、この構成を備えておらず(相違点3)、引用文献1は、その構成を示唆するものではない。」、
(エ)「相違点4に関し、拒絶査定第1頁には、『引用文献1に記載の発明(特に[0118]、図13参照)では、LCD panel 22がfront panel 18に接着又は固定されている。そして、引用文献1には、LCD panel 22とfront panel 18とを離して配置する技術が開示されている(特に[0059]、図5参照)。引用文献1に記載の発明に引用文献1に記載の上記技術を採用することは当業者が適宜行う設計変更に過ぎない。』と認定されている。しかしながら、引用発明1(図13)と引用文献1の図5とは、異なる実施例であり、引用文献1の図5は、引用発明1(図13)のLCDパネル(LCD panel 22)の配置の変更を示唆するものではない。
具体的には、引用文献1の図5は、引用文献1の図6の構成を見れば明らかであるように、LCDパネル(LCD panel 22)の配置の変更だけでなく、他の構成の変更も必須のものとして、開示するものである。言い換えれば、引用文献1(図13)の発光素子(lighting element 64)及び光ガイド(light guide 66)とLCDパネル(LCD panel 22)との配置は、引用文献1の図6の発光素子(lighting element 64)及び光ガイド(light guide 66)とLCDパネル(LCD panel 22)との配置と本質的に技術思想が異なるものである。
すなわち、引用文献1の図5及び図6のLCDパネル(LCD panel 22)を前提とする場合には、光ガイド(light guide 66)は、発光素子(lighting element 64)と離れて、背部パネル(rear panel 20)の表面(surface 46)に固定されている(引用文献1の[0075]を参照されたい)。」、
旨主張している。

イ 上記主張について以下検討する。
(ア)上記ア(ア)については、本件補正発明において、前部ブラケット及び背部ブラケットの分離した部材であることについて特定されておらず、ブラケットの前部が前部ブラケットであり、ブラケットの背部が背部ブラケットであるものも除外していない。仮に、本件補正発明において、前部ブラケット及び背部ブラケットは、分離した部材であることのみであるとしても、上記引用発明において、透明LCDパネル22に向かう光ガイド66を受け止めるように構成された機構の部分と、透明LCDパネル22から離れる光ガイド66を受け止めるように構成された機構の部分は、異なる方向で受け止める構成なので、分離した別部材とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

(イ)上記ア(イ)については、上記(4)イで判断したとおり、引用文献1の筐体67(housing 67)は、光ガイド66(light guide 66)を固定する(secure)以外に受け止める(receive)ように構成された機構を含んでおり、光ガイド66は、所定の熱による変化が生じると、透明LCDパネル22に近づく方向又は透明LCDパネル22から離れる方向以外の方向に移動可能であると解される。
また、上記ア(イ)のその他の点についても、上記(4)イで判断したとおりである。

(ウ)上記ア(ウ)については、上記(4)イで判断したとおり、実質的な相違点ではない。

(エ)上記ア(エ)については、引用文献1の[0075]には「さまざまな実施形態で、光ガイド66は、リアパネル20の前面(表面44)に沿って配設、リアパネル20の後面(表面46)に沿って配設、リアパネル20の背後に配設、さもなければ照明素子64からの光を受光するように配置してもよい。」旨記載され、引用文献1の図5及び図6のLCDパネル(LCD panel 22)を前提とする場合において、光ガイド(light guide 66)は、照明素子(lighting element 64)と離れて、リアパネル(rear panel 20)の表面(surface 46)に固定されている以外の実施形態についても、引用文献1の[0075]には記載されている。

以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年12月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年5月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)


●理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項1、2、4-10、16
・引用文献等1

・請求項3
・引用文献等1、2

・請求項11-15
・引用文献等1、3

・請求項17
・引用文献等1、4

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2014/0144083号明細書
2.特開2008-180502号公報
3.米国特許出願公開第2014/0078407号明細書
4.国際公開第2013/056109号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「LCDパネル」について、「透過型の」の限定事項、「光ガイド」について、「2方向の」及び「熱膨張によって、前記前部ブラケット及び前記背部ブラケットを介して垂直及び水平の方向に移動可能であ」るとの限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-04 
結審通知日 2019-12-10 
審決日 2019-12-23 
出願番号 特願2016-573554(P2016-573554)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣田 かおり橿本 英吾  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
山村 浩
発明の名称 透過型のLCDアセンブリ及びディスプレイ・ケース  
代理人 住吉 勝彦  
代理人 下田 容一郎  
代理人 下田 憲雅  
代理人 瀧澤 匡則  
代理人 奈良 如紘  

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