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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B |
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管理番号 | 1362288 |
審判番号 | 不服2019-361 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-11 |
確定日 | 2020-05-13 |
事件の表示 | 特願2017-516097「電磁気感知システム及びその作動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日国際公開、WO2016/048624、平成29年11月30日国内公表、特表2017-535309〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)9月4日(パリ条約による優先権主張外国受理2014年9月27日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成30年 1月22日付け:拒絶理由通知書 平成30年 4月25日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 9月 6日付け:拒絶査定 平成31年 1月11日 :審判請求書の提出 令和 元年 8月 6日付け:拒絶理由通知書 令和 元年11月12日 :意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成30年4月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 電磁気感知システムであって: 光学モジュール内に一体化されて、テラヘルツ領域のアウトバウンド電磁波信号をリモートターゲットへ送信する、第1光混合器と; 前記光学モジュール内に一体化されて、前記リモートターゲットから反射する前記アウトバウンド電磁波信号によって生成される前記テラヘルツ領域のインバウンド電磁波信号を検出する、第2光混合器と; 前記光学モジュールに結合されて、前記インバウンド電磁波信号を処理する、電気モジュールと; を具備し、前記光学モジュールは、前記第1光混合器を励起する第1レーザ及び第2レーザと、該第1レーザ及び第2レーザを整列させる2x2 3dB導波管結合器を含む、 電磁気感知システム。」 第3 拒絶の理由 令和元年8月6日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち本願発明に対する理由の概要は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2006-24803号公報 第4 引用文献1の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。 (引1ア) 「【背景技術】 【0002】 テラヘルツ光とは,一般に0.1-100テラ(10の12乗)ヘルツ程度の周波数をもつ電磁波のことを指す。波長にすると30-30000μm程度のいわゆる遠赤外からミリ波程度の領域にあたる。従来,このような波長帯は電磁波の発生と検出が難しく産業上はほとんど利用されてこなかった。近年,極超短パルスのパルスレーザ,いわゆるフェムト秒レーザと光導電スイッチ型のアンテナをテラヘルツ波の発生・検出に用いる方法が考案され,また,時間領域分光法の進展により従来に比べて著しく高感度でテラヘルツ領域の光の分光ができるようになった。これらにより一気にテラヘルツ光の産業への利用に道が拓け,例えば薬物の検査,各種透視装置などへの応用が検討されている。 【0003】 このようなテラヘルツ光を用いた分光装置に,例えば,米国特許5,789,750がある。これは,図2に示すように,極超短パルスのパルスレーザ,いわゆるフェムト秒レーザ21から出射したパルスレーザ光20を,光導電スイッチ型のアンテナ22に照射することによって発生するテラヘルツ光23を測定試料24に照射すると,その透過または反射あるいは散乱光には試料24の物性情報が反映される。この信号光を,同じく光導電スイッチ型のアンテナ検出器25で電気信号に変換し電流増幅器28などで検出する。この検出の際,ビームスプリッタ29等で発生するテラヘルツ光23に同期させた,可変時間遅延部26により遅延されたトリガ光によって,任意の時間に検出部25に到達した信号光の強度が検出できる。したがって,可変時間遅延部26によって検出時間を連続的に変化させて信号光強度の時間変化を測定し,コンピュータ27で周波数に変換すれば試料24のテラヘルツ領域の光学スペクトルが得られることになる。」 (引1イ) 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 このような,従来のテラヘルツ光発生,検出装置では,フェムト秒パルス光を,テラヘルツ光の発・受信デバイスに集光して照射することが必要であり,その際には,10μm程度の精度が必要である。従来は,自由空間に配置したミラーやレンズを用いて,フェムト秒のパルスレーザ光を発・受信デバイスに集光していた。このため,部品点数が多くなり,光学系の調整が容易でない上に小型化に限界があり,ニーズが多いと思われる可搬式の簡便な装置を実現するのが困難であった。 本発明の目的は,このような光学系をテラヘルツ光の発・受信デバイスに集積化することにより,小型で簡便なテラヘルツ分光装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明のテラヘルツ光発生,検出装置は,光導電スイッチ型のアンテナに光導波路が集積化された構造をもつ。この際に,フェムト秒パルス光のパルス波形を修正するための補償素子やフェムト秒パルス光の光源となる半導体レーザが同時に集積化されていても良い。また,発生と検出用の光導電スイッチ型のアンテナが一つの基板上に集積化されていても良く,この場合は,同時に,フェムト秒パルス光を遅延する素子が集積化されていても良い。 【発明の効果】 【0006】 本発明の実施例によれば,従来のテラヘルツ光分光装置に比べ飛躍的な小型化が可能となる。そのため,従来困難であったワンド型をはじめとする可搬式分光装置やプローブ型の装置が実現でき,危険物・薬物検査装置や医療用診断装置へ応用できるようになる。また,小型化により,他の装置,例えばX線透視装置やX線CT装置への組み込みも容易になり,より高度で正確な危険物検査や医療診断を可能にする。以上により,本発明は工業上重要である。」 (引1ウ) 「【実施例1】 【0007】 図1は本発明のテラヘルツ光発生,検出装置の一構造例である。11は光導電スイッチ型のアンテナであり,半絶縁性のGaAs基板上に低温で形成した高抵抗GaAs上にAuを用いてダイポールアンテナが形成してある。12は,この光導電スイッチ型のアンテナに短パルスレーザ光を照射するための光導波路である。この光導波路はSiO2で形成されているが,ポリイミドなどの高分子樹脂等で形成しても良い。13は,光導波路に短パルスレーザ光を導入するための光ファイバであり,この光ファイバと12の光導波路を伝搬した短パルスレーザ光はミラー14で反射されて11の光導電スイッチ型のアンテナに照射され,テラヘルツ光が発生または検出される。15はこれらの部品を集積するためのSi基板であり,13の光ファイバを固定するためのV溝が形成されている。16は,11から発生したテラヘルツ光を効率よく取り出すためのレンズであり,Siで形成されている。なお,このレンズは検出器の場合は11に効率よくテラヘルツ光を導くための集光レンズとなる。また,このレンズはSi以外の半導体やテフロン(テフロンは登録商標)等の樹脂で形成されていても良い。 【実施例2】 ・・・ 【実施例3】 【0009】 図4は,本発明の別の実施例である。この場合は,テラヘルツ光の発生部と検出部が一つの基板上に集積化されている。この場合同一基板上に集積化されている41は可変光遅延素子であり,時間領域分光に必須の素子である。41の光遅延素子は,半導体光導波路を集積化したものであり,半導体に印可する電界を変化させて遅延時間を変化させる。この可変光遅延素子は,この他に,例えば光MEMS(マイクロ-エレクトロ-メカニカル-システム)でも実現できる。また,42はテラヘルツ光の発生部と検出部の干渉を防止するための金属製の遮光板であり,テラヘルツ光の発生部で発生した電磁波が直接検出部に漏れこむのを防止し,感度を向上させる役割をもつ。 【実施例4】 【0010】 図5は,本発明の別の実施例である。この場合は図4の実施例の構成に加えて,さらに半導体レーザを元にした51のフェムト秒短パルスレーザと52の制御用集積電子回路および53の検出用集積電子回路も一つの基板上に集積化されており,この装置の入力部57に電源と制御信号を供給することにより,この装置のみでテラヘルツ光の発生・検出をともなう分光が可能である。ここで,52の制御用集積電子回路は51の半導体フェムト秒短パルスレーザの駆動,41の光遅延素子の制御,および,31の分散補償素子の制御を行い,53の検出用集積電子回路は検出された信号の増幅および適当なインターフェースにあわせた出力56への変換を行う。なお,54は11と同じ光導電スイッチ型のアンテナであるが,テラヘルツ光の発生部であり,55は同じく11と同じ光導電スイッチ型のアンテナであるが,テラヘルツ光の検出部にあたる。また,51のフェムト秒短パルスレーザは,半導体レーザから直接フェムト秒短パルス光が発生するものでも良いし,発信波長がわずかに異なる半導体レーザ同士のビート(うなり)によってフェムト秒短パルス光を発生させる方式のものでも良い。 【0011】 図6は,本装置を用いた分光測定の結果である。本装置を被測定物に接触させ,54から発生したテラヘルツ光が被測定物から反射または散乱されてきたものを55の検出部で受光し分光する。本装置は小型であるため被測定物に接触させての測定が可能であり,このため,大気中の水分等の吸収の影響を受けることなく,高感度な測定が可能である。」 (引1エ) 「【実施例7】 【0014】 図9は,本発明の別の実施例である。この場合は,本発明の小型テラヘルツ光発生検出を他の測定装置であるX線透過装置と組み合わせた例となっている。図9において,91はX線発生源であり,92はX線受像器であり,93はこれらを遮蔽する筐体である。従来の,テラヘルツ分光装置は大型であるため,このような装置に組み込むことは困難であるが,本発明の小型テラヘルツ光発生検出であれば容易に組み込むことが可能である。94は図3の装置を用いたテラヘルツ光発生部であり,95の移動機構によりX線透過装置内を移動できる構造となっている。96は同様に図3の装置を用いたテラヘルツ光検出部であり,これも95と連動する97の移動機構によりX線透過装置内を移動できる構造となっている。これらにより,X線透過装置でベルトコンベアなどで筐体内へ移動してきた被測定物98を観察し,測定部位を検討した後,95,97の移動機構によってテラヘルツ光発生,検出部をその位置に移動させ,被測定物の特定の部位の分光が可能となる。この場合,必要に応じて,94と96に両者の間の距離に応じて適当な焦点距離をもつテラヘルツ光用のレンズを装備しておけば,より位置精度の高い分光も可能となる。」 (引1オ)図2 (引1カ)図5 (引1キ)図9 2 引用発明 上記1の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、同じ意味合いの語彙が複数ある場合は、語彙を一つの語彙に統一して用いた。 「光導電スイッチ型のアンテナに光導波路12が集積化された構造をもつテラヘルツ光発生,検出装置であって、 光導電スイッチ型のアンテナが、テラヘルツ光の発生部54及びテラヘルツ光の検出部55であり、 光導波路12は、光導電スイッチ型のアンテナにフェムト秒短パルス光を照射するためのものであり、光導波路12を伝搬したフェムト秒短パルスレーザ光は、光導電スイッチ型のアンテナに照射され、テラヘルツ光が発生または検出され、 テラヘルツ光の発生部54及びテラヘルツ光の検出部55が一つの基板15上に集積化され、さらに半導体レーザを元にしたフェムト秒短パルスレーザ51と検出用集積電子回路53も前記基板15上に集積化されており、 検出用集積電子回路53は、検出された信号の増幅および適当なインターフェースにあわせた出力56への変換を行い、 フェムト秒短パルスレーザ51は、発信波長がわずかに異なる半導体レーザ同士のビート(うなり)によってフェムト秒短パルス光を発生させる方式のものであり、 当該テラヘルツ光発生,検出装置を被測定物に接触させ、テラヘルツ光の発生部54から発生したテラヘルツ光が被測定物から反射されてきたものをテラヘルツ光の検出部55で受光する、 テラヘルツ光発生,検出装置。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 1 引用発明の「テラヘルツ光発生,検出装置」、「基板15」、「被測定物」、「テラヘルツ光の発生部54」、「テラヘルツ光の検出部55」及び「検出用集積電子回路53」は、それぞれ、本願発明の「電磁気感知システム」、「光学モジュール」、「ターゲット」、「第1光混合器」、「第2光混合器」及び「電気モジュール」に相当する。 2 引用発明の「基板15上に集積化され」ている、「テラヘルツ光」を「被測定物」に対して「発生」させる「テラヘルツ光の発生部54」は、本願発明の「光学モジュール内に一体化されて、テラヘルツ領域のアウトバウンド電磁波信号を」「ターゲットへ送信する、第1光混合器」に相当する。 3 引用発明の「基板15上に集積化され」ている、「テラヘルツ光の発生部54から発生したテラヘルツ光が被測定物から反射されてきた」「テラヘルツ光」を「受光」する「テラヘルツ光の検出部55」は、本願発明の「前記光学モジュール内に一体化されて、前記」「ターゲットから反射する前記アウトバウンド電磁波信号によって生成される前記テラヘルツ領域のインバウンド電磁波信号を検出する、第2光混合器」に相当する。 4 引用発明の「基板15上に集積化され」ている、「検出された信号の増幅および適当なインターフェースにあわせた出力56への変換を行」う「検出用集積電子回路53」は、本願発明の「前記光学モジュールに結合されて、前記インバウンド電磁波信号を処理する、電気モジュール」に相当する。 5 引用発明は、「半導体レーザを元にしたフェムト秒短パルスレーザ51」「も前記基板15上に集積化されており、」「フェムト秒短パルスレーザ51は、発信波長がわずかに異なる半導体レーザ同士のビート(うなり)によってフェムト秒短パルス光を発生させる方式のものであ」るから、引用発明の「発信波長がわずかに異なる」2つの「半導体レーザ」が、「基板15上に集積化されて」いることは明らかである。 そして、引用発明の「発信波長がわずかに異なる」2つの「半導体レーザ同士のビート(うなり)によって」「発生させ」た「フェムト秒短パルスレーザ光は、光導電スイッチ型のアンテナに照射され、テラヘルツ光」を「発生」させるから、引用発明の「発信波長がわずかに異なる」2つの「半導体レーザ」は、「光導電スイッチ型のアンテナ」である「テラヘルツ光の発生部54」を励起しているといえる。 よって、引用発明の「基板15」は、「半導体レーザを元にしたフェムト秒短パルスレーザ51」を「集積」すること、すなわち、「フェムト秒短パルスレーザ光」を「光導電スイッチ型のアンテナに照射」し「テラヘルツ光」を「発生」させるための、「発信波長がわずかに異なる」2つの「半導体レーザ」を「集積」することは、本願発明の「前記光学モジュールは、前記第1光混合器を励起する第1レーザ及び第2レーザ」「を含む」ことに相当する。 6 上記5を踏まえると、引用発明の「光導波路12」は、「発信波長がわずかに異なる」2つの「半導体レーザ同士」を重ね合わせて干渉させて、すなわち整列させて、そ「のビート(うなり)によってフェムト秒短パルスレーザ光を発生させ」、「発生させ」た「フェムト秒短パルスレーザ光を」「テラヘルツ光の発生部54」と「テラヘルツ光の検出部55」に「照射するためのものである」から、2つの入力ポートと2つの出力ポートを有する2x2分岐光カプラを備えることは明らかである。 よって、引用発明の「基板15」は、「テラヘルツ光の発生部54」、「テラヘルツ光の検出部55」、「フェムト秒短パルスレーザ51(2つの「半導体レーザ」)及び「光導波路12」を「集積」することは、本願発明の「前記光学モジュールは、」「該第1レーザ及び第2レーザを整列させる2x2」「導波管結合器を含む」ことに相当する構成を備えているといえる。 第6 一致点・相違点 よって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。 (一致点) 「電磁気感知システムであって: 光学モジュール内に一体化されて、テラヘルツ領域のアウトバウンド電磁波信号をターゲットへ送信する、第1光混合器と; 前記光学モジュール内に一体化されて、前記ターゲットから反射する前記アウトバウンド電磁波信号によって生成される前記テラヘルツ領域のインバウンド電磁波信号を検出する、第2光混合器と; 前記光学モジュールに結合されて、前記インバウンド電磁波信号を処理する、電気モジュールと; を具備し、前記光学モジュールは、前記第1光混合器を励起する第1レーザ及び第2レーザと、該第1レーザ及び第2レーザを整列させる2x2導波管結合器を含む、 電磁気感知システム。」 (相違点1) ターゲットが、本願発明では、「リモート」ターゲット、すなわち電磁気感知システムから離れたターゲットであるのに対し、引用発明では、テラヘルツ光発生,検出装置に「接触させ」た被測定物である点。 (相違点2) 2x2導波管結合器が、本願発明では、「3dB」導波管結合器であるのに対し、引用発明では、この点につき不明である点。 第7 判断 上記各相違点について検討する。 1 相違点1について 引用文献1の背景技術にある図2の装置((引1ア)及び(引1オ)参照。)や実施例7にある図9の装置((引1エ)及び(引1キ)参照。)のように、テラヘルツ光を用いた測定装置において、当該測定装置から離れた測定試料を測定することは、本願の優先権主張日前の技術常識にすぎないから、引用発明において、ターゲットをテラヘルツ光発生,検出装置から離れた「リモート」ターゲットとし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 2 相違点2について 上記「第5 6」に記載したとおり、引用発明が、2x2分岐光カプラを備えることは明らかであり、当該2x2分岐光カプラの分岐比をどのような値とするかは、他の機器の構成等に応じ適宜設定されるものであって、引用発明の構成を考慮すると、「フェムト秒短パルスレーザ光を」、「テラヘルツ光の発生部54」と「テラヘルツ光の検出部55」に等しく分配するのが一般的であるといえる。すると、引用発明の2x2分岐光カプラを、1つの入力ポートからの光入力に対して、2つの出力ポートそれぞれの光出力が50%ずつになる分岐比1:1の「3dB」光カプラとし、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 3 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用文献1の記載から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 4 以上のとおり、本願発明は、本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第8 請求人の主張 請求人は、令和元年11月12日付け意見書において、「しかしながら、引用文献1の図5は、1つのフェムト秒短パルスレーザ51を備えた構成を開示しているのであって、「第1レーザ」及び「第2レーザ」という2つのレーザを備える構成を示すものではありません。 より具体的には、引用文献1の[0010]は、「半導体レーザを元にした51のフェムト秒短パルスレーザ」について、「51のフェムト秒短パルスレーザは,半導体レーザから直接フェムト秒短パルス光が発生するものでも良いし,発信波長がわずかに異なる半導体レーザ同士のビート(うなり)によってフェムト秒短パルス光を発生させる方式のものでも良い。」と記載しているにすぎず、2つの「フェムト秒短パルスレーザ51」を備えることは記載も示唆もされていません。 したがって、引用文献1の実施例5は、基板15上に半導体レーザ51を2つ集積する態様を含むものではなく、本願発明1のように、「前記第1光混合器を励起する第1レーザ及び第2レーザ」を含む構成を何ら示唆するものでもありません。そして、2つのレーザを備える構成が考慮されていない以上、「第1レーザ及び第2レーザを整列させる」「導波管結合器」を含む構成も何ら考慮されておらず、ましてや、「第1レーザ及び第2レーザを整列させる2x2 3dB導波管結合器」を設ける構成は全く想定されていません。」(下線は、請求人によるもの。)と主張している。 確かに、請求人が主張するとおり、引用文献1には、「2つの「フェムト秒短パルスレーザ51」を備えることは記載も示唆もされてい」ないが、「フェムト秒短パルスレーザ51」を光源として2つ備える必要がないことは、【0010】の記載から当然である。そして、引用発明が、本願発明の「前記第1光混合器を励起する第1レーザ及び第2レーザと、該第1レーザ及び第2レーザを整列させる2x2導波管結合器」に相当する構成を備えることは、上記「第5 5」及び「第5 6」に記載したとおりである。 なお、引用文献1の【0010】の「51のフェムト秒短パルスレーザは,半導体レーザから直接フェムト秒短パルス光が発生するものでも良いし,発信波長がわずかに異なる半導体レーザ同士のビート(うなり)によってフェムト秒短パルス光を発生させる方式のものでも良い。」との記載ぶりからも窺い知ることができるように、2つの半導体レーザを用いてフェムト秒短パルス光を発生させることは、例えば、特開2011-117957号公報の【請求項1】や特表2010-510703号公報の【0057】などに記載されているように周知技術にすぎない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 第9 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-12-05 |
結審通知日 | 2019-12-10 |
審決日 | 2019-12-24 |
出願番号 | 特願2017-516097(P2017-516097) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 牧尾 尚能、九鬼 一慶 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
森 竜介 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 電磁気感知システム及びその作動方法 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |