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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1362293
審判番号 不服2018-16289  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-06 
確定日 2020-06-08 
事件の表示 特願2013-248987「ホバリング入力効果を提供する電子装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月12日出願公開、特開2014-110055、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理 由


第1 手続きの経緯
本願は、平成25年 12月 2日(パリ条約による優先権主張 2012年 11月30日 (KR)大韓民国)の出願であって、平成29年7月26日付けで拒絶理由が通知され、同年10月31日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成30年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年5月7日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年7月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年7月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-13に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1. 米国特許出願公開第2009/0303199号明細書
2. 特開2008-065730号公報
3. 特開2007-287118号公報(周知技術を示す文献)
4. 特開2011-186550号公報(周知技術を示す文献)
5. 特開2009-157448号公報
6. 米国特許出願公開第2011/0234491号明細書


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1-8は、
「【請求項1】
ホバリング入力効果を提供する電子装置を制御する方法であって、
入力領域を電子装置のディスプレイ部に表示するステップと、
ホバリング入力イベントが感知されると、前記ディスプレイ部上の入力手段のホバリング位置及び前記ディスプレイ部から前記入力手段までの高さを感知するステップと、
前記ディスプレイ部上での前記入力手段の移動による前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化を感知するステップと、
前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて、前記ホバリング入力イベントに対応するホバリング入力効果を前記入力領域に表示するステップと、
を有し、
前記表示されるホバリング入力効果のサイズは、前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わり、
前記入力手段は、共振回路を含むペンを含み、
前記ディスプレイ部は、前記ディスプレイ部から送信された送信信号を利用して、前記ペンの前記共振回路で発生する磁界信号に基づいて、前記ペンのホバリング位置及び前記ペンまでの高さを感知するタッチスクリーンを含み、
前記ペンのホバリング位置の変化は、前記ペンの前記共振回路で発生する前記磁界信号の受信位置の変化に基づいて感知され、前記ペンまでの高さの変化は、前記ペンの前記共振回路で発生する前記磁界信号の受信強度の変化に基づいて感知されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ホバリング入力イベントを感知する機能が活性化されているか否かを判定するステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タッチスクリーンは静電容量方式タッチパネルをさらに含み、
制御部によって前記静電容量方式タッチパネルを通じるタッチを前記磁界信号に基づいて前記ペンのホバリング位置及び前記ペンまでの高さを感知するEMR方式タッチパネルを通じるホバリング又はタッチと区別することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ホバリング入力イベントは、前記ペンに形成されたボタン押し、前記ペンに対するタップ、前記ペンが臨界速度より速い移動、及びアイコンに対するタッチのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ホバリング入力効果は、太さが変更される筆書き効果、刻む程度が変更される彫刻刀効果、スプレーされる面積が変更されるスプレー効果、広がる面積が変更される水滴落下表示効果、広がる面積が変更されるインク染み効果、スプレーされる程度が変更されるまき散らし効果、リアルタイム高さに対応して表示されるスタンプ効果のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ホバリング入力効果に対する選択を検出するステップと、
前記選択されたホバリング入力効果が前記ホバリング入力イベントを感知する入力機能をサポートするか否かを判定するステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ホバリングポインタを前記ディスプレイ部上に表示するステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ホバリング入力効果を提供する電子装置であって、
入力領域を表示するディスプレイ部と、
ホバリング入力イベントが感知されると、前記ディスプレイ部上の入力手段のホバリング位置及び前記ディスプレイ部から前記入力手段までの高さを感知し、
前記ディスプレイ部上での前記入力手段の移動による前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化を感知し、
前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて、
前記ホバリング入力イベントに対応するホバリング入力効果を前記入力領域に表示する制御部と、
を含み、
前記表示されるホバリング入力効果のサイズは、前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わり、
前記入力手段は、共振回路を含むペンを含み、
前記ディスプレイ部は、前記ディスプレイ部から送信された送信信号を利用して、前記ペンの前記共振回路で発生する磁界信号に基づいて、前記ペンのホバリング位置及び前記ペンまでの高さを感知するタッチスクリーンを含み、
前記ペンのホバリング位置の変化は、前記ペンの前記共振回路で発生する前記磁界信号の受信位置の変化に基づいて感知され、前記ペンまでの高さの変化は、前記ペンの前記共振回路で発生する前記磁界信号の受信強度の変化に基づいて感知されることを特徴とする電子装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ホバリング入力イベントを感知する機能が活性化されているか否かを判定することを特徴とする請求項8に記載の電子装置。」
と補正されたが、以下のとおり、上記補正の適否について検討を行う。

1 新規事項の有無の検討

上記請求項における下線部は、当初明細書の【0097】、【0105】、【0108】、【0111】、【0114】-【0117】、【0120】-【0121】及び図8?図9Bに記載されたものであるから、新規事項を追加するものではない。

2 補正の目的の検討

請求項1における下線部は、発明が解決しようとする課題を解決するために、つまり、「指やペンによるタッチとタッチ用ペンによるホバリング又はタッチを区別して感知されるホバリング入力効果を提供する」制御方法等を提供するために、上記請求項1において、「入力手段」、「ディスプレイ部」、「ホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化」が減縮されたものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められる。請求項8についても請求項1と同様。
また、請求項3における下線部は、発明が解決しようとする課題を解決するために、「EMR方式タッチパネル」が減縮されたものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められる。
また、請求項1の「ホバリング入力イベントが感知されると」や、請求項3の「前記ペン」の下線部は、誤記を訂正するための補正であると認められる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-9に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願請求項1ないし9にかかる発明(以下、「本願第1発明」ないし「本願第9発明」という。)は、平成30年12月6日の手続補正で補正された上記「第3 1(2)」のとおりの発明である。


第5 引用文献、引用発明等

1. 引用文献1について

原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。)。

「[0034] FIG.1 illustrates a block diagram of a mobile terminal 100 according to an embodiment of the present invention. Referring to FIG. 1, the mobile terminal 100 may include a wireless communication unit 110, an audio/video (AN) input unit 120, a user input unit 130, a sensing unit 140, an output unit 150, a memory 160, an interface unit 170, a controller 180, and a power supply unit 190.」
(当審仮訳:
【0034】図1は、本発明の実施形態による携帯端末100のブロック図を示す。図1に示すように、携帯端末100は、無線通信ユニット110、オーディオ/ビデオ(AN)入力ユニット120、ユーザ入力ユニット130、感知ユニット140、出力ユニット150、メモリ160、インターフェースユニット170、コントローラ180、および電源ユニット190を備え得る。)

「 [0048] The sensing unit 140 may include a proximity sensor 141. The proximity sensor 141 may determine whether there is an object nearby and approaching the mobile tem1inal 100 without any mechanical contact with the entity. More specifically, the proximity sensor 141 may detect an object that is nearby and approaching by detecting a change in an alternating magnetic field or the rate of change of static capacitance. The sensing unit 140 may include two or more proximity sensors 141.」
(当審仮訳:
【0048】感知ユニット140は、近接センサー141を含むことができる。近接センサー141は、物との機械的接触なしに、物体が携帯端末100の近くにあり、接近しているかどうかを判定することができる。より具体的には、近接センサー141は、交番磁場の変化または静電容量の変化率を検出することにより、近くに接近している物体を検出することができる。感知ユニット140は、2つ以上の近接センサー141を含み得る。)

「[0051] If the display module 151 and the user input unit 130 form a layer structure together and are thus implemented as a touch screen, the display module 151 may be used as both an output device and an input device. If the display module 151 is implemented as a touch screen, the display module 151 may also include a touch screen panel and a touch screen panel controller. The touch screen panel is a transparent panel attached onto the exterior of the mobile terminal 100 and may be connected to an internal bus of the mobile terminal 100.」
(当審仮訳:
【0051】ディスプレイモジュール151とユーザ入力ユニット130が共に層構造を形成し、したがってタッチスクリーンとして実装される場合、ディスプレイモジュール151は、出力デバイスおよび入力デバイスの両方として使用され得る。ディスプレイモジュール151がタッチスクリーンとして実装される場合、ディスプレイモジュール151はまた、タッチスクリーンパネルおよびタッチスクリーンパネルコントローラを含み得る。タッチスクリーンパネルは、携帯端末100の外部に取り付けられた透明パネルであり、携帯端末100の内部バスに接続されてもよい。)

「[0086] If an image-editing function is chosen from the image-editing menu in response to a touch input (S220), the controller 180 may determine whether the proximity sensor141 has output a proximity signal (S205). The image-editing menu may include various editing functions such as drawing, painting, erasing, additional image-editing (e.g., lens correction, text insertion and font setting) and selecting.」
(当審仮訳:
【0086】タッチ入力に応答して画像編集メニューから画像編集機能が選択されると(S220)、制御部180は、近接センサーが141は近接信号を出力しているか確認する(S205)。画像編集メニューには、描画、ペイント、消去、追加の画像編集(レンズ補正、テキスト挿入、フォント設定など)や選択などのさまざまな編集機能が含まれる。)

「 [0087] If an object (such as the user's finger) is detected to be nearby and approaching the display module 151 when one of the image-editing functions of the image-editing menu is chosen, the controller 180 may control a 'detailed settings' mode regarding the chosen image-editing function to be selected according to the degree to which the detected object is close to the display module 151 (S230). Thereafter, the controller 180 may control the chosen image-editing function to be executed according to the movement of the detected object (S235).」
(当審仮訳:
【0087】画像編集メニューの画像編集機能の1つが選択されたときに、オブジェクト(ユーザの指など)が近くにあり、表示モジュール151に近づいていることが検出された場合、コントローラ180は、選択された画像編集機能に関する「詳細設定」モードを、検出されたオブジェクトが表示モジュール151にどれだけ近いかに応じて選択するよう制御する。その後、制御部180は、検出されたオブジェクトの動きに応じて、選択された画像編集機能が実行されるように制御することができる(S235)。)

「[0088] For example, if the chosen image-editing function is a ‘draw lines' function, the chosen image-editing function may provide various settings regarding the style of lines. Accordingly, the style of lines may be determined according to the degree to which the detected object is close to the display module 151, and then lines may be drawn according to the results of the determination mid the movement of the detected object.」
(当審仮訳:
【0088】例えば、選択された画像編集機能が「線を引く」機能である場合、選択された画像編集機能は、線のスタイルに関する様々な設定を提供することができる。したがって、検出されたオブジェクトが表示モジュール151にどれだけ近いかに従って線のスタイルが決定され、次に、検出されたオブジェクトの移動中に決定の結果に従って線が引かれる。)

「[0089] If the chosen image-editing function is a 'paintbrush' function, the size of a paintbrush may be chosen according to the degree to which the detected object is close to the display module 151, and the chosen image may be painted over by the paintbrush according to the movement of the detected object.」
(当審仮訳:
【0089】選択された画像編集機能が「絵筆」機能である場合、絵筆のサイズは、検出されたオブジェクトがディスプレイモジュール151に近い度合いに従って選択され、検出されたオブジェクトの動きに応じて選択された画像に絵筆でペイントされる。)

「[0150] Referring to FIG. 14, if a 'paintbrush' function is chosen from the image-editing function 610, a menu for selecting a paintbrush size may be displayed, and the user may select a desired paintbrush size from the menu by adjusting the degree to which his or her fu1ger is close to the display module 151. Once a desired paintbrush is chosen, the user may draw any figure on the image 600 with the chosen paintbrush by placing his or her finger over any desired point on the image 600 and then moving the finger.」
(当審仮訳:
【0150】図14に示すように、画像編集機能610から「絵筆」機能が選択されると、絵筆サイズを選択するためのメニューが表示され、ユーザはメニューから所望の絵筆サイズを選択することができる。いったん所望の絵筆が選択されると、ユーザは、画像上で指を動かすことによって、選択された絵筆で画像600上に任意の図形を描くことができる。)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」)が記載されていると認められる。
「携帯端末100において、タッチスクリーンと近接センサーが141とを備え、タッチ入力に応答して画像編集メニューから画像編集機能が選択されると、近接センサーが近接信号を出力しているか否か確認し、選択された画像編集機能が「絵筆」機能である場合、画像編集機能610から「絵筆」機能が選択されると、絵筆サイズを選択するためのメニューが表示され、いったん所望の絵筆が選択されると、ユーザは、画像上で指を動かすことによって、選択された絵筆で画像600上に任意の図形を描く方法。」

2. 引用文献2について

原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。)。

「【0004】 静電容量方式によるタッチセンサは、実装容積が小さいこと等から、携帯端末装置における座標入力装置として採用されている。一般に、静電容量方式によるタッチセンサは、被検出体の位置を、x,y座標、すなわち2次元座標として検出する。しかし、ゲーム等のアプリケーションでは、奥行きや操作の強弱として、タッチセンサ面からの距離(z座標)も検出されることが望ましい。例えば、手書きメモ機能等において、文字の太さとして、指が限りなくタッチセンサに近い場合には太い線(強い操作)と認識し、指がセンサから離れていく場合には細い線(弱い操作) として認識されることが望ましい。」

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」)が記載されていると認められる。

「携帯端末装置における手書きメモ機能等において、指が限りなくタッチセンサに近い場合には太いと認識し、指がセンサから離れていく場合には細い線として認識される。」

3.その他の文献において
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献3(【0041】)には、「位置検出部3は、ユーザの手指による操作を検出するための第1センス部31と、位置指示器2による操作を検出するための第2センス部32とを重ねた構成となっているので、コンピュータ装置1の下部筐体12に位置検出部3を設けるだけで、手指と位置指示器2との各々を用いた入力操作が可能となるので、筐体サイズが限られた小型の機器においても容易に適用可能である。静電容量式位置検出部50での検出による入力操作と電磁式位置検出部60での検出による入力操作とは、同時には行われないようにしてあり、操作状態に基づいて、いずれか一方だけの入力操作だけを受付けるようにしてある。」と記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献4(【0031】?【0032】)には、「ペン検出部22は、電磁誘導方式の検出デバイスであり、電磁誘導方式のペン30によって指示された座標位置を検出するためのものである。手指検出部21は、静電容量方式の検出デバイスである。手指検出部21は、透明なライン状の導電体がX方向およびY方向に配列されており、タッチ面上で、操作入力のために指・手によって押下された座標位置、ペン30によって押下された座標位置、ペン30を持つ手によって押下された座標位置、すなわち、タッチ面に接触した指示体の座標位置をすべて検出して、第2検出信号として検出信号処理部23に出力する。」と記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、「モード選択スイッチは、前記タッチペンの側面に配された押しボタンスイッチであり、前記押しボタンスイッチは、押されていない間は一方の前記モードを選択・維持し、押されている間のみ他方の前記モードを選択する」手書き情報入力表示システムが記載されている。
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、ホバリング領域におけるオブジェクトの移動の速度等に基づいて、機能を制御するように構成され、例えば、タッチスクリーンに対するオブジェクトの速度に基づいて2つ以上の機能が選択されることが可能であってもよく、例えば速いタッチ入力と遅いタッチ入力は区別されてもよいことが記載されている。
さらに、前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献7(特開平4-47319号公報第3頁左下欄第11行-第5頁左上欄第2行)には、ペンの共振回路で発生する磁界信号に基づいて、ペンのホバリング位置及びペンまでの高さを感知し、ペンのホバリング位置の変化を、ペンの共振回路で発生する磁界信号の受信位置の変化に基づいて感知し、ペンまでの高さの変化をペンの共振回路で発生する磁界信号の受信強度の変化に基づいて感知することが記載されている。


第6 対比・判断

1.本願第1発明について

(1)対比

本願第1発明と引用発明1とを対比すると、次のことが認められる。

引用発明における「物体」、「絵筆によって任意に描かれた図形」、「画像」、「携帯端末」、「ディスプレイユモジュール」、「ホバリング入力効果」、「オブジェクトの位置」、「指などの物体がディスプレイモジュールに近づいた度合い」は、本願第1発明における「入力手段」、「ホバリング入力効果」、「入力領域」、「電子装置」、「ディスプレイ部」、「画像編集機能の選択」、「ホバリング位置」、「入力手段までの高さ」に相当する。
したがって、本願第1発明と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
ホバリング入力効果を提供する電子装置を制御する方法であって、
入力領域を電子装置のディスプレイ部に表示するステップと、
ホバリング入力イベントが感知されると、前記ディスプレイ部上の入力手段のホバリング位置及び前記ディスプレイ部から前記入力手段までの高さを感知するステップと、
前記ディスプレイ部上の入力手段のホバリング位置及び前記ディスプレイ部から前記入力手段までの高さを感知するステップと、前記ディスプレイ部上での前記入力手段の移動による前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さを感知するステップと、前記入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さに基づいて、ホバリング入力効果を前記入力領域に表示するステップと、
を有し、
前記表示されるホバリング入力効果のサイズは、前記入力手段までの高さの変化に基づいて変わる電子装置を制御する方法。

(相違点)
(相違点1)本願第1発明では、ホバリング入力効果のサイズが、入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わるのに対して、引用発明1では、入力手段までの高さの変化に基づいて変わる点。

(相違点2)本願第1発明では、入力手段が共振回路を含むペンを含み、ディスプレイ部は、前記ディスプレイ部から送信された送信信号を利用して、前記ペンの前記共振回路で発生する磁界信号に基づいて、前記ペンのホバリング位置及び前記ペンまでの高さを感知するタッチスクリーンを含み、 前記ペンのホバリング位置の変化は、前記ペンの前記共振回路で発生する前記磁界信号の受信位置の変化に基づいて感知され、前記ペンまでの高さの変化は、前記ペンの前記共振回路で発生する前記磁界信号の受信強度の変化に基づいて感知されるのに対して、引用発明1にはそのような開示がされていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1にかかる本願第1発明の「表示されるホバリング入力効果のサイズは、入力手段のホバリング位置の変化及び入力手段までの高さの変化に基づいて変わる」という構成に関連し,引用発明2において同様の構成であることが示唆されているものの、「入力手段のホバリング位置の変化」と「入力手段までの高さの変化」をどのように具体的に感知しているのかが記載されておらず、両者を随時同時に感知しているのか順序に応じて別々に感知しているのかも不明であるから、両者に基づいて「漸進的に」入力効果が変わることが記載されているとは認められない。
なお、仮に「表示されるホバリング入力効果のサイズは、入力手段のホバリング位置の変化及び入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わる」ことが公知の技術であったとしても、引用発明には、いったん入力効果のサイズを選択するメニューを表示させてサイズを選択することが記載されており、入力手段までの高さの変化に基づいて入力効果のサイズを固定した後に、入力手段のホバリング位置の変化に基づいて入力効果を表示すると認められるから、引用発明に当該公知技術を適用することには阻害要因がある。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願第1発明は、も引用発明1,2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

また,本願第1発明は、上記相違点1に係る構成を採用することにより、上記引用文献を組み合わせても想定しえかった効果、すなわち「多彩なバリエーションのホバリング入力効果」を表示可能としている。

2.本願第2発明ないし本願第7発明について
本願第2発明も、本願第1発明の「ホバリング入力効果のサイズが入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わる」と同一の構成を備えるものであるから、本願第1発明と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1,2および引用文献3-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願第8発明および本願第9発明について
また、請求項8は、請求項1に対応する「電子装置」の発明であり、本願第1発明の「ホバリング入力効果のサイズが入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わる」に対応する構成を備えるものであるから、本願第8発明は,本願第1発明と同様の理由により、引用発明1,2および引用文献3-6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
請求項8を引用する請求項9も上記と同様。

第7 原査定について
理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願第1-9発明は「ホバリング入力効果のサイズが入力手段のホバリング位置の変化及び前記入力手段までの高さの変化に基づいて漸進的に変わる」という事項を有する物となっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。





 
審決日 2020-05-22 
出願番号 特願2013-248987(P2013-248987)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木内 康裕松田 岳士星野 昌幸  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 永野 志保
野崎 大進
発明の名称 ホバリング入力効果を提供する電子装置及びその制御方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  
代理人 阿部 達彦  
代理人 崔 允辰  

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