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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C11D
管理番号 1362311
異議申立番号 異議2019-700610  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-31 
確定日 2020-03-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6490292号発明「自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6490292号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1,3〕、2、4、〔5-9〕について訂正することを認める。 特許第6490292号の請求項1、3、5ないし9に係る特許を維持する。 特許第6490292号の請求項2、4に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6490292号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成27年4月6日に出願された特願2015-77565号の一部を、平成30年11月27日に特願2018-221234号として新たに特許出願したものであって、平成31年3月8日にその特許権の設定登録がされ、同年3月27日にその特許掲載公報が発行された。
その後、当該発行日から6月以内にあたる、令和元年7月31日に本件特許発明1?8に対して松山徳子(以下、「異議申立人」という)により特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続きの経緯は次のとおりである。
令和元年11月12日付け 取消理由通知
2年 1月14日 意見書・訂正請求書(特許権者)
2年 1月20日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、令和2年1月20日付け訂正請求があった旨の通知に対し、異議申立人は、指定期間内に何らの応答もしていない。

第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨及び内容
令和2年1月14日の訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という)の「請求の趣旨」は、「特許第6490292号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1?9について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?8のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付した)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」と記載されているのを、
「(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「ポリカルボン酸型ポリマーが、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、アクリル酸-スルホン酸共重合体又はその塩より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」と記載されているのを、
「ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」と記載されているのを、
「(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7?9も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1?4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」と記載されているのを、
「(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7?9も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9として
「ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いる請求項5?8のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」を追加する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0011】に
「即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(2)金属イオン封鎖剤が、pH9?11の何れかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上のものである上記(1)記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(3)ポリカルボン酸型ポリマーが、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、アクリル酸-スルホン酸共重合体又はその塩より選ばれた少なくとも1種である上記(1)又は(2)記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(4)(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350である上記(1)?(3)のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(5)上記(1)?(4)のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(6)上記(1)?(4)のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(7)濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する上記(5)又は(6)記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(8)前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm2 当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ上記(5)?(7)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
を要旨とするものである。」と記載されているのを、
「即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(2)ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である前記(1)記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(3)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(4)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(5)濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する前記(3)又は(4)記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(6)前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2) 当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ前記(3)?(5)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(7)ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いる前記(3)?(6)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
を要旨とするものである。」に訂正する。
(9)別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項5?9について、それらの請求項についての訂正が認められる場合には、他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項2?8は、いずれも請求項1を引用するものであったから、訂正前の請求項1?8は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、明細書の段落【0021】における「本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350であることが好ましい」との記載、及び段落【0044】の表1における実施例2、5、6(いずれも(B)/(C)=20)に基づいて、訂正前の請求項1に記載されていた濃縮液体洗浄剤組成物を「(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である」のものに限定するものである。また、(B)成分の化合物について、訂正前の請求項1において「酸及びアルカリ金属塩」の形態から選択可能であったものを「アルカリ金属塩」の形態に限定するものである。さらに、(C)成分について、訂正前の請求項1において「ポリカルボン酸型ポリマー又はその塩」とされていたのを、段落【0032】にポリマーのナトリウム塩が記載されていることに基づいて、「ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」の形態に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであるとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項1は、上記のとおり、訂正前の請求項1に記載されていた(B)成分、(C)成分やそれらを含む濃縮液体洗浄剤組成物を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2、4について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、これらの訂正事項が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を変更し又は拡張するものではないことは明らかであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3において(C)成分である「ポリカルボン酸型ポリマー」として択一的に記載されていた「ポリアクリル酸」、「ポリメタクリル酸又はその塩」、「ポリマレイン酸」、「アクリル酸-マレイン酸共重合体」、「オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩」、及び「アクリル酸-スルホン酸共重合体又はその塩」を削除すると共に、残る「ポリカルボン酸型ポリマー」「の塩」について、上記訂正事項1と同様にその「アルカリ金属塩」の形態に限定するものである。また、請求項3の引用対象から、上記訂正事項2により削除された請求項2を除いて明瞭化したものである。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであるとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
また、当該訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5、6について
訂正事項5は、訂正前の請求項5のうち訂正前の請求項1を引用するものを独立形式にした上で、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、前記訂正事項1と同様に限定するものである。訂正事項6は、訂正前の請求項6のうち訂正前の請求項1を引用するものを独立形式にした上で、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、前記訂正事項1と同様に限定するものである。
したがって、訂正事項5、6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであるとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項5、6は、上記のとおり、訂正前の請求項5、6に記載されていた自動食器洗浄機用濃縮液体洗剤組成物を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項5、6のうち、訂正前の請求項3を介して訂正前の請求項1を引用するものを、上記訂正事項5、6によって独立形式とした請求項5、6を引用する請求項9とした上で、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、前記訂正事項1と同様に限定するものである。また、訂正前の請求項7、8のうち、訂正前の請求項5又は6、及び請求項3を介して訂正前の請求項1を引用するものを、請求項7、8(上記訂正事項5、6によって独立形式とした請求項5、6を引用している)を引用する請求項9とした上で、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、前記訂正事項1と同様に限定するものである。
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであるとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項7は、上記のとおり、訂正前の請求項5?8に記載されていた自動食器洗浄機用濃縮液体洗剤組成物を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(7)訂正事項8について
訂正事項8は、明細書の記載を、訂正事項1?7により削除または訂正された請求項にあわせて明瞭化したものということができるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、これらの訂正事項が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を変更し又は拡張するものではないことは明らかであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。さらに、訂正事項8による明細書の訂正は、一群の請求項である請求項1?9のすべてに対応するものであるから、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。

3 小括
上記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?9について訂正を求めるものであり、その訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1,3〕、2、4、〔5-9〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」ともいう)。
「【請求項1】
(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項6】
(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項7】
濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する請求項5又は6記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2) 当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ請求項5?7のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項9】
ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いる請求項5?8のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」

第4 令和元年11月12日付けで通知した取消理由についての判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?8に係る発明の特許に対して当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由1.(新規性)本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2.(進歩性)本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用例1又は引用例1?4に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用例1:特開平11-21586号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特開2000-63894号公報
引用例3:特開2006-124646号公報
引用例4:特開2010-47731号公報(異議申立人が提出した甲第2号証)

理由3.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 取消理由1、2に対する当審の判断
(1)証拠およびその記載事項
引用例1:特開平11-21586号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特開2000-63894号公報
引用例3:特開2006-124646号公報
引用例4:特開2010-47731号公報(異議申立人が提出した甲第2号証)
当該引用例1?4には、それぞれ、次の記載がある。

ア 引用例1
摘記1a:請求項1、段落0001
「【請求項1】 (A)成分として、下記の一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)?R^(4)は水素原子、水酸基、炭化水素基、酸素原子を含む炭化水素基、-COOM1又は-R^(5)-COOM^(1)を表わし、R^(5)はアルキレン基を表わし、M^(1)は水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わし、mは1以上の数を表わす。)で表わされる構造単位、及び、下記の一般式(2)
【化2】

(式中、R^(6)は水素原子又はメチル基を表わし、Xは水素原子又は水酸基を表わし、Yは水酸基、-SO_(3)M^(2)又は-PO_(3)M^(3)M^(4)を表わし、M^(2)?M^(4)は水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わし、nは1以上の数を表わす。)で表わされる構造単位を有する化合物を含有する洗浄剤組成物。
・・・(中略)・・・
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動食器洗浄機用洗浄剤として使用するのに好適な洗浄剤組成物に関する。」

摘記1b:段落0024?0029
「【0024】本発明の洗浄剤組成物は、(A)及び(B)成分のみでも優れた洗浄力及び汚れ再付着防止性能を発揮するが、更に(C)成分であるポリカルボン酸又はその塩を加えると、(A)成分との相乗効果によってより優れた汚れ再付着防止性能を発揮する。ポリカルボン酸又はその塩としては、上記(A)成分の一般式(1)で表わされる構造単位を与える化合物として例示した不飽和カルボン酸類若しくは不飽和カルボン酸エステル類の重合体、又は不飽和カルボン酸類若しくは不飽和カルボン酸エステル類と他の重合性化合物との共重合体、或いはこれら塩が挙げられる。ポリカルボン酸又はその塩としては、具体的には例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/イタコン酸共重合体、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/メチルビニルエーテル共重合体、アクリル酸/オレフィン類共重合体、マレイン酸/スチレンスルホン酸共重合体等又はこれらの塩が挙げられる。
【0025】塩としては例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等のアンモニウム塩が挙げられる。
【0026】上記ポリカルボン酸又はその塩の平均分子量は特に限定されないが、500?50,000が好ましく、1,000?20,000がより好ましい。
【0027】本発明の(C)成分の配合量は特に限定されないが、優れた汚れ再付着防止効果を発揮させるためには、組成物全量に対して0.1?20重量%が好ましく、0.5?15重量%がより好ましく、1?10重量%が更に好ましい。
【0028】本発明の洗浄剤組成物は、(A)、(B)及び(C)成分のみでも優れた洗浄力及び汚れ再付着防止性能を発揮するが、更に(D)成分である金属イオン封鎖剤を加えると、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等を封鎖する働きによって、より優れた洗浄力及び汚れ再付着防止性能を発揮する。金属イオン封鎖剤としては、例えば、トリポリリン酸等の縮合リン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、N-ヒドロキシエチルイミノジ酢酸又はこれらの塩等のアミノカルボン酸類、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸又はこれらの塩等のオキシカルボン酸類等が挙げられる。
【0029】本発明の(D)成分の配合量は特に限定されないが、特に優れた金属イオン封鎖性能を発揮させるためには、組成物全量に対して0.5?40重量%が好ましく、1?35重量%がより好ましく、5?40重量%が更に好ましい。」

摘記1c:段落0034?0036、0038、0040
「【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、部及び%は特に記載が無い限り重量基準である。
(実施例1:洗浄性能)洗浄機として1ドア式の業務用自動食器洗浄機(IHI製、D-6型)を用いて、2gのラードが付着した半径10cmの皿5枚を以下の条件で洗浄し、乾燥後、以下の基準で目視判定した。
<洗浄条件>
洗浄温度:60℃
洗浄剤濃度:0.1%(対タンク内水量)
洗浄時間:40秒
濯ぎ濃度:80℃
濯ぎ時間:12秒
洗浄タンク内汚れ:有り(タンク内水量に対して0.1%のラードを混入。)及び無し
<判定基準>
◎:汚れが完全に除去された
○:汚れがほとんど除去された
△:汚れの除去が不十分であった
×:汚れがほとんど除去されなかった
【0035】(実施例2:再付着防止性能)洗浄機として1ドア式の業務用自動食器洗浄機(IHI製、D-6型)を用いて、タンク内水量に対して0.1%のラードを洗浄タンク内に混入して、以下の条件で洗浄し、乾燥後、清浄皿への汚れの再付着の程度を以下の基準で目視判定した。
<洗浄条件>
洗浄温度:60℃
洗浄剤濃度:0.1%(対タンク内水量)
洗浄時間:40秒
濯ぎ濃度:80℃
濯ぎ時間:12秒
<判定基準>
◎:清浄皿に汚れが全くに付着していなかった
○:清浄皿に汚れがほとんど付着していなかった
△:清浄皿に汚れが付着していた
×:清浄皿に汚れがかなり付着していた
【0036】(実施例3:スケール付着抑止性能)水道水(硬度:カルシウムイオン換算で50ppm)を用いて通常の自動食器洗浄機の濯ぎ工程と同程度の洗浄剤濃度(0.01?0.001%)に調整した洗浄液に、SUS304製のテストパネル(大きさ:2.5cm×7.5cm)を浸漬させ、振盪機にて1週間振蘯した後、イオン交換水で洗浄し、スケール量を以下の基準で目視判定した。
<判定基準>
◎:スケール付着が無かった
○:スケール付着がほとんど無かった
△:スケール付着があった
×:スケール付着が著しかった
上記の試験結果を以下の表に示した。尚、表中の各成分の数値の単位は%である。
・・・(中略)・・・
【0038】
【表2】

・・・(中略)・・・
【0040】上表で(C)成分として使用した化合物は以下のとおり。
【表4】



イ 引用例2
摘記2a:請求項1、3、4、8?10
「【請求項1】 アルカリ塩と、一般式
【化1】

(式中、MはH、Na、K、またはアルカノールアミンである)で示されるグルタミン酸ジ酢酸またはその塩とを必須成分として含有し、1重量パーセント水溶液のpH値が9以上を呈することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項3】 請求項1において、アルカリ塩の含有量が全組成物中10?25重量パーセントであり、グルタミン酸ジ酢酸またはその塩の含有量が全組成物中、1?35重量パーセントであり、かつ、1重量パーセント水溶液のpH値が12以上を呈し、さらに該組成物が液状を呈し、主に業務用自動食器洗浄機に適した請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】 請求項1ないし3において、アルカリ塩が水酸化アルカリ金属塩、炭酸アルカリ塩、ケイ酸アルカリ塩およびエタノールアミン類の群から選択された一種またはそれ以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項8】 請求項1ないし7において、さらに、ポリカルボン酸アルカリ塩および/またはホスホン酸アルカリ塩を含有してなる請求項1ないし7のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項9】 請求項8において、ポリカルボン酸アルカリ塩および/またはホスホン酸アルカリ塩の含有量が全組成物中、0.02重量パーセント以上である請求項8に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項10】 請求項8において、ポリカルボン酸アルカリ塩がアクリル酸とマレイン酸の共重合体のアルカリ金属塩である請求項8に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」

摘記2b:段落0001、0026?0030、0033?0034、0044
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動食器洗浄機に用いられる洗浄剤組成物に係り、詳しくは家庭用ないし業務用の洗浄機に適したものであり、特に洗浄力が高く、しかも、洗浄の後、食器表面にウオータースポットや、フイルム等の汚れが残らず、洗浄仕上がり効果に優れ、かつ微生物分解性にも優れた自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
・・・(中略)・・・
【0026】(II)業務用の自動食器洗浄機に適した洗浄剤組成物。
この組成物は上述のとおり、アルカリ塩と、グルタミン酸ジ酢酸またはその塩とを必須成分として含有し、1重量%水溶液のpH値が12以上を呈する液体である。
【0027】アルカリ塩は上述と同様、汚れの分解や可溶化を行なう成分であって、具体的には上述の列挙成分と同じであるが、特に、水溶性が高く、しかもアルカリ度の高い水酸化アルカリ金属塩や珪酸アルカリ塩の使用が好ましく、この中でも特に、水酸化ナトリウムの使用が好ましい。なお、珪酸アルカリ塩は含有量が多い場合には、ガラス、陶器等の食器表面に珪酸が付着して曇りが発生したり、陶器の光沢が低下したり等が起こるので、多量の使用は好ましくない。
【0028】上述アルカリ塩の含有量(配合量)は全組成物中、好ましくは10?25重量%、より好ましくは12?20重量%である。これが10重量%以下では、得られる組成物の1重量%水溶液のpHを12以上に維持することが難しく、また、25重量%以上では液体組成物の安定性がやや劣るが、実用上問題となるほどではない。
【0029】さらに、上述のグルタミン酸ジ酢酸またはその塩(GLDA)は前述と同様、カルシウム、マグネシウム等の洗浄効果を低下せしめる因子を除去して洗浄性を高める成分(ビルダー)であって、上述の化2で示される一般式を有し、具体的には上述と同様、L-グルタミン酸ジ酢酸塩(L-GLDA)、特に、L-GLDAナトリウム塩が挙げられる。なお、この合成方法は上述と同様である。
【0030】GLDAの含有量(配合量)は全組成物中、1?35重量%、好ましくは2?30重量%である。これが1重量%以下では、充分な洗浄力が得られず、また、35重量%以上では安定な液体組成物の調製が難しい。
・・・(中略)・・・
【0033】上述洗浄剤組成物(I)および(II)はさらに、ポリカルボン酸アルカリ塩およびホスホン酸アルカリ塩のいずれか一方または両方を含有せしめ、これにより除去された汚れによる食器表面への再汚染を防止して食器洗浄後の仕上がりを良好にすることができ、さらに、食器洗浄槽内へのスケール析出をも防止することができる。この含有量は全組成物中、0.02重量%以上である。これが0.02重量%以下では、上述効果が得られない。
【0034】ポリカルボン酸アルカリ塩としては、特に限定されないが、アルカリ水溶液中への溶解性ならびに洗浄効果を考慮してアクリル酸とマレイン酸の共重合体のアルカリ金属塩が好ましく、特に分子量2,000?5,000のものが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0044】このような本発明にかかる洗浄剤組成物(II)は水で希釈して0.5?1重量%の洗浄剤水溶液とし、これを液温50?80℃に調整してホテル、レストラン等の業務用自動食器洗浄機の洗浄液噴出ノズルから食器にスプレーし、食器洗浄を行なう。」

摘記2c:段落0051、0061?0064
「【0051】・・・(中略)・・・ポリカルボン酸ナトリウムはBASF社製の商品名「ソカランCP12S」(マレイン酸とアクリル酸のコポリマー、分子量3,000)をホスホン酸ナトリウムは日本モンサント(株)製の商品名「ディクエスト2006」をそれぞれ用いた。
・・・(中略)・・・
【0061】実施例2
表2に示す各試料組成の1重量%水溶液を試験試料とし、これら各試料についてpH値測定および各試料組成物の原液の外観観察を行なうとともに、洗浄性試験を行い、結果を表2に示した。稀釈に用いた水は炭酸カルシウム硬度として80ppm の人工硬水である。
【0062】pH値の測定は常温における各試料のpH値をpH計で測定することにより行なった。また、組成物の原液の外観観察は試料を室温、-5℃の低温、50℃の高温で1週間放置の後、試料の外観を目視で観察し、試料の「溶液安定性」を評価した。
【0063】洗浄性試験は各試料につき、自動食器洗浄機としてナショナル食器洗い乾燥機〔松下電器産業(株)製。品番NP-5800M〕を用い、洗浄温度80℃、洗浄時間60秒、すすぎ時間60秒の条件で、被洗物として実施例1と同様の被洗物1、および被洗物2を洗浄することにより行なった。なお、表2の各成分はいずれも表1と同様であり、かつ表1と同様に純分換算量である。また、評価の判定基準についても表1と同様である。
【0064】
【表2】



ウ 引用例3
摘記3a:請求項2、3
「【請求項2】
(A)NaOH、KOH、およびM_(2)O/SiO_(2)(式中、Mは、NaまたはKを示す。)>1(モル比)で示される珪酸塩より選ばれる少なくとも1種を3?30質量%、
(B)下記一般式(1)で表される化合物を5?35質量%、
【化2】

(式中、M^(1)?M^(4)は、互いに同一でも異なっていてもよい、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルキルアンモニウムを示す。)
(C)カルボキシル基含有水溶性ポリマーを0.5?10質量%、並びに
(D)水を残部含むことを特徴とする業務用自動洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/マレイン酸共重合体(塩)、マレイン酸(塩)とα-オレフィンとの共重合体(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/(メタ)アクリルアミドプロパンスルフォン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)と(メタ)アリルスルホン酸(塩)との共重合体(塩)、スチレンと無水マレイン酸(塩)との共重合体(塩)、およびスチレンとマレイン酸(塩)との共重合体(塩)から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とする請求項1または2記載の業務用自動洗浄機用洗浄剤組成物。」

摘記3b:段落0016?0019
「【0016】
・・・(中略)・・・
第2の洗浄剤組成物中における(B)成分の含有量は、5?35%であり、5%未満では、スケール付着抑制効果が不充分となる可能性が高く、一方、35%を超えると、液体組成の経日安定性が低下し、沈殿、液分離等の問題が生じる可能性が高い。これらの点を考慮すると、(B)成分の含有量は、10?25%が好ましく、10?15%がより好ましい。
【0017】
(C)成分は、カルボキシル基含有水溶性ポリマーであり、カルボキシル基を含み、水溶性を示すポリマーであれば、特に限定されるものではないが、(B)成分との相乗効果により、スケールの発生および付着抑制効果をより一層高めることを考慮すると、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/マレイン酸共重合体(塩)、マレイン酸(塩)とα-オレフィンとの共重合体(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)と(メタ)アリルスルホン酸(塩)との共重合体(塩)、スチレンと無水マレイン酸(塩)との共重合体(塩)、スチレンとマレイン酸(塩)との共重合体(塩)が好ましく、特に、マレイン酸(塩)とα-オレフィンとの共重合体(塩)が好適である。これらのカルボキシル基含有水溶性ポリマーは1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。なお、(メタ)アクリルは、メタアクリルまたはアクリルを、(メタ)アリルは、メタアリルまたはアリルを表す。
【0018】
カルボキシル基含有水溶性ポリマーの重量平均分子量としては、通常、1,000?90,000程度であり、好ましくは3,000?50,000程度である。
カルボキシル基含有水溶性ポリマーとして塩を用いる場合、水溶性が良好であり、アルカリ性を示すことから、ナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩が好適である。なお、塩の場合、カルボキシル基の全部が中和されていてもよく、一部のみが中和されていてもよい。
【0019】
第1および第2の洗浄剤組成物中における(C)成分の含有量は、0.5?10%であり、0.5%未満では、スケール発生および付着抑制効果が不充分となる可能性が高く、一方、10%を超えても性能のさらなる向上は望めないだけでなく、コスト増を招来してしまう。これらのことを考慮すると、(C)成分の含有量は、0.5?5%であることが好ましく、1?5%がより好ましい。
本発明の洗浄剤組成物においては、(B)成分と(C)成分との併用による相乗効果により、スケール付着抑制効果がより一層高まるものである。」

エ 引用例4
摘記4a:段落0023?0028
「【0023】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、使用にあっては水等で適当な濃度に希釈した洗浄液として用いられることが好ましい。
【0024】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いた業務用食器洗浄機による洗浄の際には、該組成物は、供給装置によって業務用食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、業務用食器洗浄機専用のチューブを食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて、業務用食器洗浄機内部へ供給される。
【0025】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄液中の濃度が0.05?0.5重量%で使用されるが、経済性、洗浄性の観点から、0.05?0.3重量%が好ましく、さらに0.05?0.2重量%が好ましい。食器の洗浄時間は、洗浄性の観点から、10秒?3分が好ましく、さらに好ましくは、20秒?2分である。洗浄液の洗浄温度は、短時間での洗浄性を高めるためには、非常に重要で40℃以上が好ましく、特に40?70℃が好ましい。食器は洗浄された後、通常、同じ業務用食器洗浄機にて速やかに60?90℃の温水で濯ぎが行われる。濯ぎは60?90℃の温水のみで行うことができる。
【0026】
業務用食器洗浄機では、食器を連続洗浄する場合、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用し、洗浄している。
【0027】
業務用食器洗浄機により食器を連続洗浄する場合、食器による洗浄液の持ち出しや、洗浄槽への濯ぎ水のキャリーオーバーなどによって、洗浄回数とともに洗浄液の濃度が減少する。適切な洗浄液の濃度を維持するため、自動供給装置によって適正濃度となるように食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が供給される。
【0028】
食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の自動供給装置としては、特に限定されるものではないが、洗浄液の濃度をセンシングし、シグナルを受信して、チューブポンプを駆動させて、必要量の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を供給する。」

摘記4b:段落0030、0036
「【0030】
表1に示した配合組成の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(何れもpH11.8/25℃)を調製し、以下の方法で洗浄性と抑泡性を評価した。結果を表1に示す。
・・・(中略)・・・
【0036】
【表1】



(2)引用例に記載された発明
ア 引用例1に記載された発明
引用例1には、比較品3(段落0038、摘記1c参照)として、「水酸化カリウム20重量%、C-5(アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム、平均分子量70,000)5重量%、NTA(ニトリロトリ酢酸)20重量%、硫酸ナトリウム10重量%、水45重量%からなる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」が記載されている。また、当該洗浄剤組成物は、水の含有量からみて「液体」と認められるし、「洗浄剤濃度:0.1%(対タンク内水量)」として洗浄している(段落0034、0035、摘記1c参照)、すなわち希釈して洗浄しているから、「濃縮液体洗浄剤組成物」といえる。そうすると、引用例1には、「水酸化カリウム20重量%、平均分子量70,000のアクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム5重量%、ニトリロトリ酢酸20重量%、硫酸ナトリウム10重量%、水45重量%からなる自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物」(以下、この発明を「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。

イ 引用例2に記載された発明
引用例2には、「実施例2」(段落0061、摘記2c参照)の項に存在する「実施例6」(段落0064、摘記2c参照)として、「水酸化ナトリウム10重量%、GLDA-4Na(グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩)20重量%、メタ珪酸ナトリウム3重量%、グルコン酸ナトリウム0.1重量%、ポリカルボン酸ナトリウム0.05重量%、上水道水66.85重量%からなる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」が記載されている。また、「ポリカルボン酸ナトリウム」は段落0051(摘記2c参照)に「ソカランCP12S」(マレイン酸とアクリル酸のコポリマー、分子量3,000)と記載されているから、「分子量3,000のマレイン酸とアクリル酸のコポリマーのナトリウム塩」であると認められる。さらに、当該洗浄剤組成物は、段落0044(摘記2b参照)に希釈して洗浄剤水溶液にすることが記載されているから、「濃縮液体洗浄剤組成物」といえる。そうすると、引用例2には、「水酸化ナトリウム10重量%、グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩20重量%、メタ珪酸ナトリウム3重量%、グルコン酸ナトリウム0.1重量%、分子量3,000のマレイン酸とアクリル酸のコポリマーのナトリウム塩0.05重量%、上水道水66.85重量%からなる自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物」(以下、この発明を「引用例2発明」という)が記載されていると認められる。

(3)本件特許発明1について
ア 引用例1発明との対比・判断
(ア)対比
引用例1発明の「水酸化カリウム」は、本件特許発明1の「(A)成分としてアルカリ剤」に相当し、その含有量20重量%は、本件特許発明1の「3?25重量%」の規定を満たしている。
引用例1発明の「ニトリロトリ酢酸」は、引用例1の段落0028(摘記1b参照)に記載されているように「金属イオン封鎖剤」であるから、本件特許発明1の「(B)成分として…ニトリロ三酢酸…より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」に相当し、その含有量20重量%は、本件特許発明1の「10?35重量%」の規定を満たしている。
引用例1発明の「平均分子量70,000のアクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム」は、本件特許発明1の「(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」に相当し、その含有量5重量%は、本件特許発明1の「0.1?10重量%」の規定を満たしている。
引用例1発明の「水」は、本件特許発明1の「(D)成分として水」に相当する。
引用例1発明の「水酸化カリウム」と「ニトリロトリ酢酸」の合計の割合40重量%(20重量%+20重量%)は、本件特許発明1の「(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり」の規定を満たしている。
引用例1発明の「水酸化カリウム」と「ニトリロトリ酢酸」の質量比1(20重量%/20重量%)は、本件特許発明1の「(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25である」の規定を満たしている。
してみると、本件特許発明1と引用例1発明とは、
「(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、(B)成分として金属イオン封鎖剤10?35質量%、(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、(D)成分として水、を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」
である点において一致し、以下の点において相違が認められる。
(相違点A)
本件特許発明1の(B)成分における「ニトリロ三酢酸…金属イオン封鎖剤」は「アルカリ金属塩」の形態であるのに対し、引用例1発明の「金属イオン封鎖剤」である「ニトリロトリ酢酸」はアルカリ金属塩の形態でない点。
(相違点B)
本件特許発明1は「(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350」であるのに対し、引用例1発明の「ニトリロトリ酢酸」と「平均分子量70,000のアクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム」の質量比は4(20重量%/5重量%)である点。

(イ)引用例1に対する理由1(新規性)の判断
上記相違点A、Bは実質的な相違点であり、それら相違点が存在する以上、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)引用例1に対する理由2(進歩性)の判断
引用例1発明である比較例3は、引用例1の請求項1(摘記1a参照)記載の(A)成分を含まないために所定の効果を示さず、「比較例」とされているものである。そうすると、当業者にとって、引用例1発明の構成成分やその量を変更しようとする動機付けが存在するとは認められない。
よって、本件特許発明1の上記相違点A及びBに関する構成が、引用例1に基づいて容易想到の事項ということはできない。
また、本件特許発明1の効果についてみると、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落0017に記載されているように、(B)成分を10?35質量%含有することにより、茶渋洗浄性、及びバイオフィルム抑制性に優れたものであり、また、段落0020に記載されているように、(A)成分と(B)成分の合計の割合(A)+(B)が33?60質量%含有することによりバイオフィルム抑制性に優れたものであって、このことは、同段落0044の表1に記載された実施例2、5、6からも見て取れる。
そして、本件特許発明1の当該効果は、上記引用例1には記載のない格別の作用効果というべきものと認められる。
よって、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 引用例2発明との対比・判断
(ア)対比
引用例2発明の「水酸化ナトリウム」及び「メタ珪酸ナトリウム」は、本件特許発明1の「(A)成分としてアルカリ剤」に相当し、その合計量13重量%(10重量%+3重量%)は、本件特許発明1の「3?25重量%」の規定を満たしている。
引用例2発明の「グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩」は、引用例2の段落0029(摘記2b)に記載されているように「カルシウム、マグネシウム等の洗浄効果を低下せしめる因子を除去して洗浄性を高める成分(ビルダー)」であるから、本件特許発明1の「(B)成分として…グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」に相当し、その含有量20重量%は、本件特許発明1の「10?35重量%」の規定を満たしている。
引用例2発明の「分子量3,000のマレイン酸とアクリル酸のコポリマーのナトリウム塩」は、本件特許発明1の「(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」に相当する。
引用例2発明の「上水道水」は、本件特許発明1の「(D)成分として水」に相当する。
引用例2発明の「水酸化カリウム及びメタ珪酸ナトリウム」と「グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩」の合計の割合33重量%(13重量%+20重量%)は、本件特許発明1の「(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり」の規定を満たしている。
してみると、本件特許発明1と引用例2発明とは、
「(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩、(D)成分として水、を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違が認められる。
(相違点1)
本件特許発明1の「(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」の量は「0.1?10質量%」であるのに対し、引用例2発明の「分子量3,000のマレイン酸とアクリル酸のコポリマーのナトリウム塩」の含有量は0.05重量%である点。
(相違点2)
本件特許発明1の「(A)成分と(B)成分の質量比」は、「(A)/(B)=1?1.25」であるのに対し、引用例2発明の「水酸化カリウム及びメタ珪酸ナトリウム」と「グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩」の質量比は0.65(13重量%/20重量%)である点。
(相違点3)
本件特許発明1の「(B)成分と(C)成分の質量比」は、「(B)/(C)=20?350」であるのに対し、引用例2発明の「グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩」と「分子量3,000のマレイン酸とアクリル酸のコポリマーのナトリウム塩」の質量比は400(20重量%/0.05重量%)である点。

(イ)判断
上記相違点1?3は、いずれも構成成分の量に関するものであり、相互に関連する事項なので、まとめて検討することとする。
まず、相違点1、3に関連した記載として、引用例2の段落0033(摘記2b参照)には、「ポリカルボン酸アルカリ塩およびホスホン酸アルカリ塩のいずれか一方または両方を含有せしめ、・・・この含有量は全組成物中、0.02重量%以上である。これが0.02重量%以下では、上述効果が得られない。」との記載がある。また、引用例1の段落0024?0027(摘記1b参照)、引用例3の段落0017?0019(摘記3b参照)、引用例4の段落0036(摘記4b参照)に記載されているように、アルカリ剤と金属イオン封鎖剤とを含有する自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物において、再付着防止、スケールの付着抑制などのために、ポリカルボン酸型ポリマーの塩を1?10重量%、1?5重量%または1重量%含有させることは周知の技術といえる。
次に、相違点2に関連した記載として、引用例2の段落0027?0028(摘記2b参照)には、「アルカリ塩は…、汚れの分解や可溶化を行う成分」であること、及び「アルカリ塩の含有量(配合量)は全組成物中、好ましくは10?25重量%、より好ましくは12?20重量%である。」と記載されている。
このように、引用例2には各構成成分の量について個別の記載が存在し、また引用文献1、3、4に記載されているように自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物においてポリカルボン酸型ポリマーの塩を所定の量とすることは周知の事項と認められる。
しかしながら、引用例2や引用例1、3、4の記載を参酌しても、引用例2発明において、各成分の量を変更することで上記相違点1?3のすべてを同時に解消することについてまで記載ないし示唆があるとはいえず、またそのようにする積極的な動機付けが存在するとは認められない。
そうすると、本件特許発明1の上記相違点1?3に関する構成が、引用例1?4に基づいて容易想到の事項ということはできない。
また、本件特許発明1は、上記ア(ウ)に記載したように、茶渋洗浄性及びバイオフィルム抑制性に優れたものである。これに対して、引用例2には、記載された洗浄剤組成物の洗浄力が高くかつ洗浄仕上がり効果に優れることが記載され(段落0001、摘記2b)、また引用例1、3、4には、上記のようにポリカルボン酸型ポリマーの塩により再付着防止、スケールの付着抑制などの効果が得られることは記載されているものの、茶渋洗浄性及びバイオフィルム抑制性については、いずれの文献にも記載されていない。また、本件特許出願時の技術常識を併せて参酌しても、本件特許発明1が茶渋洗浄性及びバイオフィルム抑制性に優れるという効果は、上記引用例1?4から予測し得るものではない。よって、本件特許発明1が奏する当該効果は、引用例1?4には記載のない格別の作用効果というべきものと認められる。
よって、本件特許発明1は、引用例1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(4)本件特許発明3、5?9について
本件特許発明3は、本件特許発明1を引用し、さらに限定した「自動食器洗浄機用濃縮液体洗剤組成物」の発明であり、本件特許発明5?9は、本件特許発明1と同じ「自動食器洗浄機用濃縮液体洗剤組成物」を用いる「食器類の洗浄方法」の発明である。
また、上記(3)のとおり、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明であるとはいえず、引用例1又は引用例1?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
そうすると、本件特許発明3、5?9も、本件特許発明1と同様の理由により、引用例1に記載された発明であるとはいえず、引用例1又は引用例1?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

3 取消理由3に対する当審の判断
本件特許発明の課題は、本件特許の明細書段落0009に記載されているように「低濃度で優れた洗浄性を有し、節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器類への汚れの再付着や茶渋、スケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため食器類に洗浄剤の残留がないコンパクトで作業性の高い自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を提供すること」と認められる。また、本件特許の明細書段落0013には、「本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、アルカリ剤を3?25質量%含有するが、5?24.5質量%含有することが好ましく、7?24質量%含有することがより好ましい。アルカリ剤が3質量%未満では洗浄力不足となり、25質量%を超えるとすすぎ性不良、貯蔵安定性不良、スケール付着抑制性不良となる。」と記載されている。
ここで、本件特許発明1は(A)成分であるアルカリ剤を3?25質量%含有することを規定している。また、(B)成分は「エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」と規定され、(C)成分は、「ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」と規定されている。
そうすると、本件特許発明1において、3?25質量%含有される(A)成分の「アルカリ剤」は、(B)成分、(C)成分で中和されることがなく、その全量が段落0013に記載された洗浄力発揮に寄与すると認められる。そしてその結果、本件特許発明1は、上記本件特許発明の課題を解決できるといえる。
そうすると、本件特許発明1は、当業者が本件特許発明の課題を解決できることを認識できる範囲のものといえる。本件特許発明3、5?9についても同様。

4 まとめ
以上のとおり、本件特許発明1、3、5?9は、引用例1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。また、本件特許発明1、3、5?9は、引用例1又は引用例1?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。よって、本件特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。
さらに、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許は、同法第113条第4号に該当するものではない。
したがって、令和元年11月12日付けで通知した取消理由は、理由がない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
異議申立人が提出した甲1号証に基づく、本件訂正前の請求項1?6に対する新規性、及び本件訂正前の請求項1?8に対する進歩性についての特許異議申立理由は、上記第4 2において検討した、引用例1を主引用例とする新規性進歩性についての取消理由と、おおむね同旨である。
したがって、当該特許異議申立理由によっては、本件特許発明1、3、5?9に係る特許を取り消すことはできない。

その他に、異議申立人は、特許異議申立書において、概略以下の点を主張する。
1 本件訂正前の請求項1は(A)成分として「アルカリ剤」を規定するが、その外延や、水和水の質量をアルカリ剤の質量として算入するか否かが明らかでないから、不明確である。また、「アルカリ剤」として重曹を含むとすると、重曹を用いた場合にも本件特許発明の効果が発揮されるのか明らかでなく、サポート要件違反である。
2 本件訂正前の請求項3に列記された「ポリカルボン酸型ポリマー」のうち、実施例において用いられていないもの、例えば、「ポリメタクリル酸又はその塩」や、「オレフィン-マレイン酸共重合体であってオレフィン由来の構成単位が99%を占めるもの」を用いた場合に、本件特許発明の効果が発揮されるのか明らかでなく、サポート要件違反である。
3 本件訂正前の請求項1において、(B)成分の含有量が10?35質量%とされているが、(A)成分の含有量、および(A)/(B)の規定を考慮すると(B)成分が35質量%にはならないので不明確である。
4 本件訂正前の請求項2は、請求項1よりも金属イオン封鎖剤を広く規定するものとなっているから不明確であり、本件訂正前の請求項4は、請求項1に対して更に限定するものとなっていないため不明確である。
しかし、上記1について、本件特許発明の技術分野において、「アルカリ剤」の定義は当業者に周知であり、「重曹」等は含まないことや、「アルカリ剤」の質量算出方法は、当業者に自明の事項といえる。
また、上記2について、本件特許発明の技術分野において、「ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」が発揮する機能は当業者に周知であり、例えば「ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩」が、実施例で用いられている「ポリアクリル酸ナトリウム」と同様の機能を発揮することは、当業者に自明の事項といえる。なお、「オレフィン-マレイン酸共重合体であってオレフィン由来の構成単位が99%を占めるもの」が「ポリカルボン酸型ポリマー」に該当しないことも、当業者に自明の事項といえる。
さらに、上記3について、本件特許発明1の組成物は記載された規定をすべて満たすものであって、(B)成分の含有量が10?35質量%と記載されていても、(B)成分が35質量%であるものは本件特許発明1の範囲外であることが明らかなのであるから、本件特許発明1は明確である。
そして、上記4について、本件訂正前の請求項2、4は削除された。
したがって、異議申立人のかかる主張は、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件特許発明1、3、5?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、この他に本件特許発明1、3、5?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、4は、上記のとおり訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、4に対して、異議申立人がした特許異議申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、特に業務用の自動食器洗浄機用として好適な自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物に関する。また本発明はこの自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いた食器類の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食器類の洗浄に自動食器洗浄機が広く利用されるようになっており、ホテル、レストラン、給食会社、病院、会社の食堂等においても、使用後の食器を効率よく洗浄するために、また近年の衛生意識の向上から業務用の自動食器洗浄機が広く用いられている。
【0003】
自動食器洗浄機、特に業務用の自動食器洗浄機により食器類を洗浄する場合、所定濃度に調製した洗浄液を洗浄液タンク内で加熱保持し、次いで洗浄液タンク内の洗浄液をノズルから洗浄機庫内に一定量を噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄した後、すすぎ液を洗浄機のノズルから一定量噴射してすすぎを行い、乾燥するという工程を経て洗浄が行われる。自動食器洗浄機用の洗浄剤としては、従来、液状、粒状、粉末状、固体状のものが用いられており、液状のものはポンプ等による供給が容易であり、粉末状、粒状、固形状のものは高濃度で少容積化が可能であるという利点を有する。
【0004】
自動食器洗浄機用の洗浄剤として、アルカリ金属水酸化物、腐食防止剤、界面活性剤を含む洗浄剤組成物と、水及びキレート化酸を含むすすぎ溶液とからなるもの(特許文献1)、アルカリ金属水酸化物、オルソケイ酸塩、メタケイ酸ナトリウムを必須成分とするもの(特許文献2)、アルカリ剤20?60重量%含むアルカリ液体洗浄剤組成物中にホスホノブタントリカルボン酸あるいはその塩を配合した高濃度アルカリ液体洗浄剤組成物(特許文献3)、グルタミン酸系、アスパラギン酸系、ポリアスパラギン酸系、イミノジコハク酸系、イミノジ酢酸系の生分解性金属イオン封鎖剤を含み、固形分濃度を60?76重量%とした液体洗浄剤組成物(特許文献4)、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを合計で30?40重量%、ケイ酸ナトリウムを2?8重量%、水溶性高分子キレート形成剤2?7重量%含み、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムと、ケイ酸ナトリウムの合計の割合、ケイ酸ナトリウムと水溶性高分子キレート形成剤とが特定の割合となるようにした液体洗剤(特許文献5)、アルカリ剤0.5?30重量%、金属イオン捕捉能を有するポリアクリル酸又はマレイン酸系高分子物質0.5?30重量%、漂白剤0.1?10重量%を含有する洗浄剤(特許文献6)、ポリオキシアルキレンエーテル型非イオン界面活性剤0.1?3重量%、その他の非イオン界面活性剤を、ポリオキシアルキレンエーテル型非イオン界面活性剤との合計量の20重量%以下含む液体洗浄剤(特許文献7)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸塩の少なくとも1種を10?50質量%、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸あるいはその塩を10?50質量%、カルボキシル基含有水溶性ポリマーを0.5?10質量%含む洗浄剤(特許文献8)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物を1?20質量%、アルカリ化合物2?60質量%含有し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物に対するアルカリ化合物の割合を、2?6となるようにした洗浄剤(特許文献9)が知られている。また特許文献10には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物用いて節水型食器洗浄機で洗浄する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-528679号公報
【特許文献2】特許第3609532号公報
【特許文献3】特開平6-346099号公報
【特許文献4】特許第4015778号公報
【特許文献5】特開2002-38193号公報
【特許文献6】特開平8-199194号公報
【特許文献7】特開2012-193228号公報
【特許文献8】特開2006-124646号公報
【特許文献9】特開2014-101427号公報
【特許文献10】特開2014-100239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されている洗浄剤は、固体状又は粉末状であるため水又は湯を噴射して溶解させて調製した洗浄液を洗浄液タンクに供給し、洗浄液タンク内の洗浄液濃度が低下すると固体状又は粉末状洗浄剤を水又は湯で溶解して洗浄液タンクに供給するということを繰り返す。しかしながら複数の成分を含む固体状又は粉末状の洗浄剤は、配合された各成分が必ずしも均一分布しているとは言えないため、洗浄液中の成分濃度にバラつきが生じやすいという問題があった。特許文献3、4に記載されている洗浄剤は液状であるためポンプ供給が容易であり、また各成分濃度は常に均一に保たれるが、洗浄力を高めるためにアルカリ剤を高濃度で配合しており、洗浄液タンク内で加熱保持されている間に空気中の二酸化炭素を吸収して不溶性塩が生成され、これが洗浄機庫内にスケールとして付着残存する虞があり、特に洗浄液を加熱保持している洗浄液タンク内の電熱線(ヒーター部分)でのスケールが生じやすく、アルカリ金属水酸化物やケイ酸ナトリウム等のアルカリ剤を多量に含有する特許文献5記載の洗浄剤もスケールが生じやすいという問題があった。
【0007】
更に特許文献6に記載の洗浄剤は、洗浄機タンク内の汚れによって塩素が失活し茶渋等の汚れ除去に十分な作用を発揮できない虞があり、スケール付着の抑制効果も十分ではなかった。また特許文献7記載の洗浄剤は繰り返し洗浄した際に食器に茶渋汚れが蓄積していくのを防止することを目的としているが、食器に茶渋汚れが付着してしまうと除去が困難であり、またスケール付着抑制効果も不十分であった。特許文献8記載の洗浄剤は、スケールの付着を抑制することを目的としているが、金属イオン封鎖性能が不十分であり、洗浄機庫内にスケールを生じやすいという問題があった。また特許文献9、10に記載の洗浄剤は、すすぎ水の量の少ない節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でもウォータースポットが生じにくいことを目的としているが、洗浄剤成分を残留させるため汚れの多い条件下では食器類に曇を生じ易いという問題があった。
【0008】
自動食器洗浄機では、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内の食器類に噴射して洗浄した後、洗浄後の洗浄液と、洗浄工程後のすすぎ工程で用いたすすぎ水とが洗浄液タンクで混合され、汚れを含んだ所定量以上の混合液を洗浄液タンクからオーバーフローして排水し、残りの混合液(排水とともに排出された残りの汚れを含む)の洗浄成分濃度を調整して再度洗浄に使用している。自動食器洗浄機として、近年、食器類洗浄後のすすぎ工程におけるすすぎ水量を減少させた節水型自動食器洗浄機が普及しているが、すすぎ水量の少ない節水型自動食器洗浄機では、洗浄後のオーバーフロー量も少ないため、洗浄液タンク内の汚れ負荷が著しく増加する。このため食器類の再汚染や洗浄機庫内にスケールやバイオフィルムが生じやすいという問題があった。また、すすぎ水が少ないため食器類に洗浄剤が残留しやすいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、低濃度で優れた洗浄性を有し、節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器類への汚れの再付着や茶渋、スケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため食器類に洗浄剤の残留がないコンパクトで作業性の高い自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。また本発明はこの濃縮液体洗浄剤組成物を用いた自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、(A)成分としてアルカリ剤、(B)成分として金属イオン封鎖剤、(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩を特定の割合で含有し、(A)成分と(B)成分とが特定の比率となるようにした濃縮液体洗浄剤組成物が、上記従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(2)ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である前記(1)記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(3)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法,
(4)(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法,
(5)濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する前記(3)又は(4)記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(6)前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ前記(3)?(5)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(7)ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩よ
り選ばれた少なくとも1種である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いる前記(3)?(6)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動食器用濃縮液体洗浄剤組成物は、低濃度で使用した場合でも汚れに優れた洗浄性を有し、茶渋等の付着抑制性や洗浄性を有し、スケール付着抑制性、バイオフィルム抑制性に優れる。また、すすぎ水量を少なくし、汚れの負荷が大きくなるような節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、すすぎ性に優れるため、食器類への汚れの再付着やスケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため、食器類への洗浄剤成分の付着残留が少ない等の効果を有する。本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は安定性に優れ、冬季の低温下及び夏季の高温下においても保存中に析出物の発生や分離等が生じる虞がない。また本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は高濃度に濃縮することによりコンパクトな容器に保存でき、洗浄剤組成物の補充・交換頻度も少なくて済むため、効率よくかつ良好に食器類の洗浄を行うことができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は、従来品の2倍以上に濃縮された濃縮液体洗浄剤組成物であり、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物における(A)成分であるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等のアルカリ金属珪酸塩等が挙げられる。アルカリ剤は単独または混合して用いることができるが、これらのうち水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、日本化学工業社製の商品名:A珪酸カリウム(純分40%)(モル比SiO2:K2O=3:1)が洗浄性とコストの理由で好ましい。本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、アルカリ剤を3?25質量%含有するが、5?24.5質量%含有することが好ましく、7?24質量%含有することがより好ましい。アルカリ剤が3質量%未満では洗浄力不足となり、25質量%を超えるとすすぎ性不良、貯蔵安定性不良、スケール付着抑制性不良となる。
【0014】
(B)成分の金属イオン封鎖剤としては、グルタミン酸二酢酸、トリポリリン酸、アスパラギン酸二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、メチルグリシン二酢酸、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、クエン酸、エチレンジアミンジマロン酸、イミノジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸、酒石酸、グルコン酸やオルトリン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、β-アラニン二酢酸、セリン二酢酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸や、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。これらのうちpH9?11の範囲のいずれかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上のものが好ましく、pH=10?11の範囲のいずれかのpHにおいてCa(II)に対する安定度定数が5.5以上のものがより好ましい。Ca(II)に対する安定度定数とは、錯体の安定度を示す尺度であり、Ca(II)水和イオン:M、その濃度を[M]、金属イオン封鎖剤:L、その濃度を[L]、金属イオン封鎖剤のモル数:n、Ca(II)水和イオン:Mと、金属イオン封鎖剤:Lとから形成される錯体:MLn、その濃度を[MLn]とした時、下記式(1)より錯体が生成するときの平衡定数:Knを求め、この平衡定数より下記式(2)より安定度定数:βを求めることができる。
【0015】
(数1)
Kn=[MLn]/[M][L]n (1)
【0016】
(数2)
β=logKn (2)
【0017】
pH9?11の範囲のいずれかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上の金属イオン封鎖剤としては、例えばグルタミン酸二酢酸及びその塩(pH=9.0でのCa(II)に対する安定度定数=5.6、pH=10.0でのCa(II)に対する安定度定数=6.2、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=6.4)、トリポリリン酸及びその塩(pH=10.5でのCa(II)に対する安定度定数=5.7)、アスパラギン酸二酢酸及びその塩(pH=10.5でのCa(II)に対する安定度定数=5.8)、エチレンジアミン四酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=9.6、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=10.4、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=10.8)、ニトリロ三酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=5.8、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=6.4、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=6.5)、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=9.0、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=10.0、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=10.6)、メチルグリシン二酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=5.6、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=6.4、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=6.9)等が挙げられる。これらのなかでもグルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩、トリポリリン酸及びそのアルカリ金属塩、エチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩が好ましく、特にエチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩が好ましい。これらの金属イオン封鎖剤は、単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。(B)成分の金属イオン封鎖剤は、濃縮液体洗浄剤組成物中に10?35質量%含有されるが、12?33質量%が好ましく、15?30質量%がより好ましい。金属イオン封鎖剤が10質量%未満ではスケール付着抑制性不良、茶渋洗浄性不良、バイオフィルム抑制性不良となり、35質量%を超えると貯蔵安定性不良となる。
【0018】
(C)成分のポリカルボン酸型ポリマー又はその塩としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体等や、これらの塩が挙げられるが、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体が好ましい。これらのポリカルボン酸型ポリマー又はその塩は、単独で用いても2種類以上組み合わせて用いても良い。アクリル酸型共重合体、マレイン酸型共重合体、メタクリル酸型共重合体等の共重合体としては、アミド結合を含まないものが好ましい。ポリアクリル酸の重量平均分子量は500?20,000が好ましく、特に好ましくは1500?15,000である。重量平均分子量が500未満であると、スケール付着抑制性の点で好ましくなく、20,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。(C)成分のポリカルボン酸型ポリマー又はその塩は、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物中に0.1?10質量%含有されるが、0.3?8質量%が好ましく、0.5?5質量%がより好ましい。(C)成分が0.1質量%未満ではすすぎ水で薄められた洗浄機庫内のスケール付着抑制性不良となり、10質量%を超えると高温の貯蔵安定性不良となる。
【0019】
(D)成分の水としては、特に限定はなく、イオン交換水、軟水、純水、水道水などが挙げられ、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の安定性の観点から、イオン交換水又は純水が好ましい。
【0020】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物中における上記(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=13.0?60質量%であるが、(A)+(B)=15?55質量%が好ましく、20?50質量%がより好ましい。また(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)/(B)=0.1?1.25であるが、0.13?1.15が好ましく、0.15?0.95がより好ましい。(A)+(B)が13.0質量%未満であると、洗浄性不良、スケール付着抑制性不良、バイオフィルム抑制性不良となり、60質量%を超えると貯蔵安定性不良となる。また(A)/(B)が0.1未満であると、洗浄性不良となり、1.25を超えるとスケール付着抑制性不良となる。
【0021】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350であることが好ましいが、1.5?110が好ましく、3?60がより好ましい。(B)/(C)=1?350となるように(B)成分と(C)成分を含有していると、ガラス製食器に対する腐食防止性が向上する。
【0022】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物には、必要に応じて非イオン界面活性剤、次亜塩素酸塩、除菌剤、消泡剤、増粘剤、ハイドロトロープ剤、酵素、色素、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコールプロピレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸-N-メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N-長鎖アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0023】
上記除菌剤としては、例えば、チアゾリン類、ヒダントイン類や、ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト、イソプロピルメチルフェノール、ヘキサクロロフェン、イルガサン、トリクロサン等が挙げられる。チアゾリン類としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。ヒダントイン類としては、1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、1又は3-モノメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロエチルメチルヒダントイン等が挙げられる。
【0024】
また消泡剤としてはシリコーンオイル、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合体、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。増粘剤としては、平均分子量200?6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル酸系ポリマー等が挙げられる。ハイドロトロープ剤としては、2-エチルヘキサン酸及び/又はその塩、カプリル酸及び/又はその塩、アルケニルスルホコハク酸及び/又はその塩、メタキシレンスルホン酸及び/又はその塩、アルキル(C6?10)グルコシド、オクチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。酵素としては、リパーゼ、アルカリアミラーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ等が挙げられる。色素としては例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。香料としては例えば、天然香料、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
【0025】
自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物により食器類の洗浄を行う場合、本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度を0.003?0.1質量%に希釈して調製した洗浄液を用いる。好ましくは(B)成分の濃度を0.005?0.08質量%、より好ましくは(B)成分の濃度を0.008?0.05質量%に希釈して調製した洗浄液を用いる。濃縮液体洗浄剤組成物はポンプ等により洗浄液タンクに供給され、洗浄液タンク内に供給される水(通常は温水)と混合されて(B)成分の濃度を0.003?0.1質量%の濃度に希釈された洗浄液が、洗浄液タンク内で加熱保持される。次いで洗浄液は、洗浄液タンク内からポンプ等によりノズルから洗浄機庫内の食器類に噴射して食器類を洗浄する。食器類に噴射された洗浄液は、洗浄液タンクに回収される。次いですすぎ液を、ノズルより洗浄機庫内の食器類に噴射してすすぎを行う。すすぎ後のすすぎ液は洗浄液タンクに流入し、洗浄液タンク内の洗浄液濃度は低下するが、濃縮液体洗浄剤組成物を洗浄液タンクに供給して洗浄液濃度を調整する。
【0026】
自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物により食器類の洗浄を行う場合、本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を0.03?0.15質量%に希釈することで、(B)成分の濃度が0.003?0.1質量%の洗浄液として調製することができる。好ましくは0.04?0.12質量%、より好ましくは0.05?0.09質量%に希釈して調製した洗浄液を用いる。濃縮液体洗浄剤組成物はポンプ等により洗浄液タンクに供給され、洗浄液タンク内に供給される水(通常は温水)と混合されて(B)成分の濃度を0.003?0.1質量%の濃度に希釈された洗浄液が、洗浄液タンク内で加熱保持される。次いで洗浄液は、洗浄液タンク内からポンプ等によりノズルから洗浄機庫内の食器類に噴射して食器類を洗浄する。食器類に噴射された洗浄液は、洗浄液タンクに回収される。次いですすぎ液を、ノズルより洗浄機庫内の食器類に噴射してすすぎを行う。すすぎ後のすすぎ液は洗浄液タンクに流入し、洗浄液タンク内の洗浄液濃度は低下するが、濃縮液体洗浄剤組成物を洗浄液タンクに供給して洗浄液濃度を調整する。
【0027】
濃縮液体洗浄剤組成物を所定濃度に希釈調製した洗浄液は、洗浄液タンク内で通常、40?70℃で保持される。洗浄液は洗浄機庫内の食器類に対し、30?120秒噴射される。すすぎ液としては通常、水道水が用いられるがリンス剤を用いても用いなくても良い。すすぎ液は、洗浄機の食器設置平面積2500cm^(2)当たり1L?3Lが好ましい。またすすぎ液の温度は40℃以上、95℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上、90℃以下である。すすぎ液の水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)が挙げられる。濃縮液体洗浄剤組成物を洗浄液タンクに供給するためのポンプとしては、ペリスタルティックポンプが好ましい。本発明の濃縮洗浄剤組成物は高濃度に濃縮されており、洗浄液タンクへの1回の供給量は少量であるため、供給量の僅かな誤差によって洗浄液濃度のバラツキが大きくなる虞があるが、ペリスタルティックポンプは少量の洗浄剤組成物を正確に供給することができる。ペリスタティックポンプから洗浄剤組成物を供給する際のチューブ径は1.0?5.0mm(内径)が標準的であるが、好ましくは2.0?4.5mm(内径)であり、より好ましくは2.5?4.0mm(内径)とすると少量の洗浄剤組成物を安定的に供給でき、洗浄液濃度の調整がより容易となる。従来の濃縮液体洗浄剤組成物は、低温環境下で濃縮液体洗浄剤組成物を保管する容器内や供給ポンプ内等で析出物が生じ易く、ペリスタルティックポンプで供給した場合、その析出物が供給チューブ内等で目詰まりを起こし易いが、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、濃縮液体洗浄剤保管容器内やチューブ内で析出が生じたり目詰りを生じる虞がない。
【0028】
本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は、油脂、蛋白質、でんぷん等、あらゆる汚れに対して優れた洗浄性能を示し、アルミ製、ステンレス製、銀製等の金属製、メラミン製、プラスチック製、ガラス製、磁器、漆器、陶磁器などあらゆる素材の食器等の洗浄用途に適し、家庭用自動食器洗浄機、業務用自動食器洗浄機の洗浄剤として用いることができるが、ホテル、レストラン、学校、病院、飲食店、給食会社、会社の食堂等において使用される業務用の自動食器洗浄機に好適に用いることができる。特に、すすぎ液の使用量の少ない節水型の業務用自動食器洗浄機用として好適である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた(A)?(C)成分を下記に示す。
【0030】
(A)成分
A-1:水酸化カリウム 商品名:フレーク苛性カリ、東亞合成社製
A-2:水酸化ナトリウム 商品名:粒状苛性ソーダ、旭硝子社製
A-3:炭酸カリウム 商品名:炭酸カリウム、旭硝子社製
A-4:珪酸ナトリウム(モル比SiO_(2):Na_(2)O=1:1) 商品名:無水メタ珪酸ナトリウム(純分95%)、日本化学工業社製
A-5:珪酸カリウム(モル比SiO_(2):K_(2)O=3:1) 商品名:A珪酸カリ(純分40%)、日本化学工業社製
【0031】
(B)成分
B-1:ニトリロ三酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon A92R、BASF社製
B-2:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンNA、アクゾノーベル社製
B-3:グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンGL-47-S、アクゾノーベル社製
B-4:メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon M Powder、BASF社製
B-5:3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム塩 商品名:HIDS、純分50%、日本触媒社製
【0032】
(C)成分
C-1:ポリアクリル酸ナトリウム:重量平均分子量が4000 商品名:Sokalan PA25CL(純分45%)、BASF社製
C-2:ポリマレイン酸ナトリウム:ポリマレイン酸(重量平均分子量が500、 商品名:Belclene 200LA(純分50%)、BWA社製)を水酸化ナトリウムで中和して使用
C-3:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が10000 商品名:アクアリックTL213(純分36%)、日本触媒社製
C-4:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が1900 商品名:ACUSOL 425N(純分50%)、ロームアンドハース社製
C-5:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が70000 商品名:Sokalan CP5(純分40%)、BASF社製
【0033】
D-1:イオン交換水
【0034】
その他成分
1:次亜塩素酸ナトリウム 商品名:次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度として12%)、昭和電工社製
2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:R-O-(EO)a-(PO)b-H (3)(式中、Rは炭素数12?14の2級アルキル基、a=7.0、b=8.5を示す) 商品名:ソフタノールEP7085、日本触媒社製
【0035】
実施例1?20、比較例1?14
表1?4に示す配合に基づき自動食器洗浄機用の濃縮液体洗浄剤組成物を調製した。各濃縮液体洗浄剤組成物を用い、自動食器洗浄機(ホシザキ電気製自動食器洗浄機:JWE-680AJ)により下記試験を行った。結果を表1?4に示す。尚、表中における実施例および比較例の各成分の配合割合は純分の質量%を表す。
【0036】
(1)洗浄性
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿にマヨネーズ2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して66℃で保持し、洗浄ラックに汚染皿5枚を設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。濃縮液体洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯光を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
△:スポットのみが認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0037】
(2)すすぎ性
濃度が高い洗浄液を用いた場合のすすぎ性を試験した。
<被洗浄物>
清浄な茶碗を被洗浄物とした。
<試験方法>
濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.15質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄タンクに貯留して66℃で保持し、洗浄ラックに茶碗を糸尻が上になるように5個設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。濃縮液体洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水用いた。
<洗浄条件>
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
<すすぎ性評価>
洗浄、すすぎ後の茶碗の糸尻に残留している水にフェノールフタレイン液を滴下しアルカリ剤の残留による変色反応を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:全く変色反応が認められない。
○:ほとんど変色反応が認められない。
△:僅かな変色反応が認められる。
×:顕著な変色反応が認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0038】
(3)茶渋洗浄性試験
<被洗浄物>
清浄なプラスチックカップを被洗浄物とした。
<試験方法>
濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して66℃で保持し、食器洗浄機の洗浄ラックにプラスチックカップ5個を設置し、以下の条件で、茶渋汚れ付着/インターバル/洗浄/すすぎ/インターバルの工程を100サイクル繰り返し行った。濃縮液体洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度6°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
茶渋汚れ付着:5秒
インターバル:30秒
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
インターバル:5秒
<茶渋汚れ付着>
煮出した紅茶(紅茶葉2.5g、水100ml)をプラスチックカップに180ml注ぎ、直ちに廃棄して、所定位置に設置した。煮出した紅茶の水は、塩化カルシウムを用いて硬度10°DHに調製した人工硬水用いた。
<茶渋洗浄性評価>
洗浄工程100サイクル後の、プラスチックカップへの茶渋付着状態を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:茶渋の付着が認められない。
○:茶渋の付着がほとんど認められない。
△:茶渋の付着が認められる。
×:茶渋の付着が著しい。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0039】
(4)スケール付着抑制性試験
スケール付着抑制性試験-1
食器洗浄機の洗浄液タンク内の電熱線(ヒーター部分)および壁面へのスケール付着抑制性を、洗浄液タンク内と同様の擬似的条件下で試験した。
<試験方法>
塩化カルシウムで硬度6°DHに調製した人工硬水より濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液を作成し、この洗浄液中にSUS304製のテスト板(2.5cm×7.5cm)を浸漬させ、80℃で24時間保持した。その後テスト板を取り出してイオン交換水ですすぎ、乾燥後、テスト板のスケール付着量を目視判定し、以下の基準により評価した。
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0040】
スケール付着抑制性試験-2
食器洗浄機庫内の壁面(洗浄液タンク内は除く)の洗浄液がすすぎ水で薄まった条件でのスケール付着抑制性を、以下の方法で試験した。
<試験方法>
洗浄ラックに250mlのグラス36個を設置し、塩化カルシウムで硬度10°DHに調製した人工硬水より濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液により下記条件で洗浄/すすぎ/インターバルを200サイクル繰り返した後、洗浄機庫内のスケール付着量を目視判定し、以下の基準で評価した。
<洗浄条件>
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
インターバル:5秒
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0041】
<スケール付着抑制性総合評価>
スケール付着抑制性試験-1、スケール付着抑制性試験-2の両試験の結果より、以下の基準で評価した。
◎:1および2の両試験でスケールの付着が全く認められなかった。
○:1および2のどちらかの試験でスケールの付着がほとんど認められなかった。
△:1および2のどちらかの試験でスケールの付着が認められた。
×:1および2のどちらかの試験で著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0042】
(5)バイオフィルム防止性試験
<試験方法>
各濃縮液体洗浄剤組成物5gを滅菌済みのミューラーヒントン培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕に添加して全量を100gにして、各濃縮液体洗浄剤組成物の5質量%コンク溶液を調製した。本コンク溶液を更に滅菌済みミューラーヒントン培地を用いて濃縮液体洗浄剤組成物の濃度として0.1質量%となるように希釈調製し、それぞれ24穴マイクロプレート〔旭テクノグラス株式会社製〕に2mL量りとった。また、汚れ成分として、3質量%ウシアルブミンをコンク溶液として調製し、24穴マイクロプレートに0.3質量%となるように添加した。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)、クレブシェラ菌(Klebsiella pneumoniae ATCC13883)をそれぞれLB培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕を用いて、37℃で18時間前培養して増殖した菌液を、ピペットマンを用いて当該マイクロプレート内の試験溶液に10μl接種した。これを37℃で48時間培養後に培養液を廃棄し、滅菌精製水2mLで各ウェル内を5回洗浄した。マイクロプレート壁に付着したバイオフィルムを0.1質量%クリスタルバイオレット液で染色し、滅菌水ですすいだ後、バイオフィルムの形成状態を目視判断し、バイオフィルム抑制性を以下の基準で評価した。
<評価基準>
1点:バイオフィルムがプレート壁面の0?20%未満を覆う状態。
2点:バイオフィルムがプレート壁面の20%以上40%未満を覆う状態。
3点:バイオフィルムがプレート壁面の40%以上60%未満を覆う状態。
4点:バイオフィルムがプレート壁面の60%以上を覆う状態。
として上記各菌種についてプレート壁面の状態を点数で評価し、2菌種のプレート壁面の状態を点数の平均値を求め、以下の基準でバイオフィルム防止性を評価した。
◎:平均値が1点以上1.5点未満
○:平均値が1.5点以上2.5点未満
△:平均値が2.5点以上3.5点未満
×:平均値が3.5点以上
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0043】
(6)濃縮液体洗浄剤組成物の貯蔵安定性
低温安定性
<試験方法>
250ml透明ポリプロピレン製容器に濃縮液体洗浄剤組成物を250mlとり、蓋をして-5℃恒温槽に保管。1週間に1回揺り動かすことを繰り返し1ヶ月間行い、濃縮液体洗浄剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:析出物や凍結が見られず安定である。
×:析出物もしくは凍結が見られる。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
高温安定性
<試験方法>
250ml透明ポリプロピレン製容器に濃縮液体洗浄剤組成物を250mlとり、蓋をして40℃恒温槽に保管し静置。6ヶ月後、濃縮液体洗浄剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:析出物や濁りが見られず安定である。
△:析出物や濁りが、若干見られる。
×:析出物もしくは濁りが見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項6】
(A)成分としてアルカリ剤3?25質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤10?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩0.1?10質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33?60質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=1?1.25であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=20?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項7】
濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する請求項5又は6記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ請求項5?7のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項9】
ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いる請求項5?8のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-11 
出願番号 特願2018-221234(P2018-221234)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C11D)
P 1 651・ 113- YAA (C11D)
P 1 651・ 121- YAA (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安川 聡山本 悦司  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 牟田 博一
門前 浩一
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6490292号(P6490292)
権利者 株式会社ADEKA ADEKAクリーンエイド株式会社
発明の名称 自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法  
代理人 細井 勇  
代理人 栗田 由貴子  
代理人 細井 勇  
代理人 栗田 由貴子  
代理人 栗田 由貴子  
代理人 細井 勇  

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