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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41N
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  B41N
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B41N
審判 一部申し立て 2項進歩性  B41N
管理番号 1362322
異議申立番号 異議2018-701007  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-12 
確定日 2020-03-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6340708号発明「タングステン線及びタングステン繊維」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6340708号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[3?7,9?11]について訂正することを認める。 特許第6340708号の請求項1、2、4及び6に係る特許を取り消す。 特許第6340708号の請求項3及び5に係る特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6340708号の特許は,平成28年6月27日を出願日(以下,「原出願日」という。)とする特願2016-126984号の一部を平成29年8月25日に特願2017-162823号として新たに特許出願されたものであり,平成30年5月25日にその特許権の設定登録がされ,同年6月13日に特許掲載公報が発行された。
その後,その請求項1ないし6に係る特許について,平成30年12月12日に特許異議申立人 廣瀬 妙子(以下,「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,当審により,平成31年3月25日付けで特許権者に対して取消理由を通知し,その指定期間内である令和1年5月27日付けで特許権者から意見書(以下,「第1特許権者意見書」という。)の提出,及び訂正の請求(以下,「本件訂正請求」という,)がなされ,これに対して同年7月11日付けで異議申立人から意見書(以下,「申立人意見書」という。)が提出された。
さらに,当審から令和1年8月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され,その指定期間内である同年10月25日付けで特許権者から意見書(以下,「第2特許権者意見書」という。)が提出され,同年11月13日付けで当審により、異議申立人に対して、第2特許権者意見書について意見があれば回答する旨の審尋がなされ、異議申立人から同年12月2日付け回答書(以下,「申立人回答書」という。)の提出がされたものである。

第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断
1 本件訂正請求の内容
本件訂正請求は,その請求の趣旨を「特許第6340708号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項3?7及び9?11について訂正することを求める。」とするものであり,その内容はつぎのとおりのものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に,「請求項1?3のいずれか1項に記載のタングステン線。」とあるのを,「請求項1又は2に記載のタングステン線。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に,「請求項1?5のいずれか1項に記載のタングステン線。」とあるのを,「請求項1,2及び4のいずれか1項に記載のタングステン線。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に,「請求項1?6のいずれか1項に記載のタングステン線と,」とあるのを,「請求項1,2,4及び6のいずれか1項に記載のタングステン線と,」に訂正する。
それに伴い,請求項7を引用する請求項9ないし11についても同様に訂正する。

2 本件訂正請求による訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は,特許請求の範囲の請求項3を削除するというものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって,その訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,さらに本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でする訂正であることは明らかであって,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は,訂正前の請求項4が「請求項1?3のいずれか1項」を引用するものであったものを,請求項3を引用しない請求項へ改めるための訂正であって,当該訂正は,訂正事項1において,請求項3を削除したことに伴ない,記載を整合させるものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,又は,同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するものであって,その訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,さらに本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でする訂正であることは明らかであって,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は,特許請求の範囲の請求項5を削除するというものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって,その訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,さらに本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「本件特許明細書等」という。)に記載した事項事項の範囲内でする訂正であることは明らかであって,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は,訂正前の請求項6が「請求項1?5のいずれか1項」を引用するものであったものを,請求項3及び5を引用しない請求項へ改めるための訂正であって,当該訂正は,訂正事項1において請求項3を削除したこと,及び訂正事項3において請求項5を削除したことに伴ない,記載を整合させるものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,又は,同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するものであって,その訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,さらに本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でする訂正であることは明らかであって,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は,訂正前の請求項7が「請求項1?6のいずれか1項」を引用するものであったものを,請求項3及び5を引用しない請求項へ改めるための訂正と,請求項7を引用する請求項9ないし11についても同様に訂正するものであって,当該訂正は,訂正事項1において請求項3を削除したこと,及び訂正事項3において請求項5を削除したことに伴ない,記載を整合させるものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,又は,同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するものであって,その訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,さらに本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でする訂正であることは明らかであって,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
そして,訂正前の請求項7及び請求項9ないし11は,いずれも特許異議申立の対象とされていないことから,本件訂正後の請求項7及び請求項9ないし11に係る発明は,独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで,検討するに,特許異議申立人の提出した甲第1号証ないし甲第15号証には,請求項7及び請求項9ないし11において特定されている発明特定事項である「タングステン線と,タンスグテン線に保持された放射性物質を吸着する吸着剤を有するタングステン繊維」については記載も示唆もない。
してみると,本件訂正後の請求項7及び請求項9ないし11に係る発明について,独立して特許を受けることができないとする理由はない。
よって,訂正事項5は,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に適合する。

(6)一群の請求項について
本件訂正請求による訂正前の特許請求の範囲の請求項3ないし7及び9ないし11は,一群の請求項を構成するものであるから,それに対応する訂正後の請求項3ないし7及び9ないし11は,一群の請求項を構成するものである。

3 小括
上記1及び2のとおりであるから,特許第6340708号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[3?7,9?11]について訂正することを認める。

第3 本件特許発明について
本件特許異議申立の対象である特許第6340708号の願書に添付した特許請求の範囲(以下,「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1ないし6に係る特許発明は,上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正が認められるから,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたつぎのとおりのものである。(なお,本件訂正による訂正後の請求項1及び2に係る発明を「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」といい,請求項4ないし6に係る発明を,「本件訂正発明4」ないし「本件訂正発明6」という。)
「【請求項1】
断面が円形であり、線径が5μm以上であり、表面粗さRaが0.10μm以下であり、かつ、引張強度が4200MPaより大きいタングステン線。
【請求項2】
前記タングステン線の長さが1000mmである場合における垂下長さは、900mm以上である
請求項1に記載のタングステン線。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記タングステン線の線径は、22μm以下である
請求項1又は2のいずれか1項に記載のタングステン線。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記タングステン線の純度は、95%以上である
請求項1,2,及び4のいずれか1項に記載のタングステン線。」

第4 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)について
令和1年8月22日付けで当審が特許権者に通知した「取消理由通知(決定の予告)」(以下,単に「本件決定の予告」という。)の取消理由の概要は次のとおりのものである。
(1)取消理由1(特許法第29条第2項違反について)
本件訂正発明1,2,4,及び6は,原出願日前に出願公開がされた特開2001-312952号公報(異議申立人の提出した甲第1号証,以下「甲1号証」という。)に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,本件特許の請求項1,2,4及び6に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(特許法第36条第6項第1号違反について)
本件訂正発明1,2,4及び6は,本件特許に係る願書に添付した明細書(以下,当該明細書を「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから,本件特許の請求項1,2,4及び6に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。

2 取消理由1(特許法第29条第2項違反)についての当審の判断
(1)本件訂正発明1について
ア 甲1号証の記載事項及び甲1号証に記載された発明について
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 タングステン線表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔(Ry)が上記直径Dの0.5?3.0%の範囲であり、かつ粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)が上記直径Dの2?3%であることを特徴とするタングステン線。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタングステン線およびその製造方法に係り、特に表面部に接合したエミッタ材などの剥離がなく、良好な電子放出能力を長期間に亘って維持できるカソード用フィラメント等を形成することが可能なタングステン線およびその製造方法に関する。」
(ウ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のタングステン線の表面にエミッタ材を一体に電着したカソード用フィラメントにおいては、電着不良が起き易く、またタングステン線自体の異常等によりエミッタ材が均一に電着されない場合が多く、フィラメントにおける電子放出能が低下する問題点があった。また使用時にエミッタ材が剥れ落ちることもあり、蛍光表示管の表示画像にむらを生じたり、フィラメント自体の短寿命が生じ易い欠点もあり、いずれにしても表示画像の精度が低下する問題点もあった。
【0005】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、電着したエミッタ材の剥離を効果的に防止でき、良好な電子放出能を長期間に亘って維持し得るカソード用フィラメントを形成できるタングステン線を提供することを目的とする。」
(エ)「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本願発明者らは、従来のタングステン線表面にエミッタ材を接合してカソード用フィラメントを形成した場合にエミッタ材が剥離したり、異常放電が発生して表示画像のむらが発生したり、寿命が短くなる原因を鋭意究明した。その結果、タングステン線の表面性状の良否が上記不良や欠陥の発生に大きな影響を及ぼしていることが判明した。
【0007】すなわち、従来、エミッタ材を接合するタングステン線の表面性状は何ら考慮されておらず、一般には研磨加工等により可及的に表面粗さを小さくしたタングステン線が使用されていた。しかしながら、この場合にはエミッタ材との接合強度が低くなり、経時的にエミッタ材が部分的に剥離し易くなり、蛍光表示管の特性が低下し易い問題があった。
【0008】そこで、タングステン線表面をむしろ積極的に目荒しして、その表面粗さを電解研磨等によって所定の範囲にしたときに、エミッタ材との接合面積が大きくなるため、接合強度が高く、エミッタ材の剥離が少ない長寿命のカソード用フィラメントが得られることが判明した。しかし、タングステン線の表面粗さを過度に大きくすると却って電着むらや異常放電が生じ易くなるため、上記タングステン線の表面粗さは適正な範囲に制御する必要があることが判明した。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0009】すなわち、本発明に係るタングステン線は、タングステン線表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔(Ry)が上記直径Dの0.5?3.0%の範囲であり、かつ粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)が上記直径Dの2?3%であることを特徴とする。」
(オ)「【0012】本発明に係るタングステン線は、タングステン(W)を主成分とするものであるが、再結晶温度を高め、特にWフィラメント製品のノンサグ性を高めるために、Al,Si,Kなどのドープ剤を微量に含有させたドープタングステンで構成してもよい。さらに、高温強度を高め、均熱域を広げるために、2?27重量%のレニウム(Re)を含有するRe-W合金で構成してもよい。」
(カ)「【0013】本発明に係るタングステン線の表面性状は、日本工業規格(JIS B 0601-1994)の規定を援用して表示されている。すなわち、凹凸の平均間隔(Sm)は、図1に示すように直径がDであるタングステン線1の周方向の表面性状を示す粗さ曲線から、その平均線mの方向に、W線の直径Dの1/3に相当する基準長さLだけを抜き取り、この抜き取り部分において一つの山およびそれに隣合う一つの谷に対応する平均線mの長さの和(凹凸の間隔)を求め、この多数の凹凸の間隔(Sm1,Sm2,…,Smi,…Smn)の算術平均値を下記(1)式で算出し、ミリメートル(mm)単位で表したものである。
【0014】
【数1】

【0015】なお、基準長さLを直径Dの1/3に相当する長さとしたのは、W線の表面粗さは、後述するように、表面粗さを測定装置によって計測されるものではなく、金属顕微鏡により測定するものであることと、RyおよびSmの数値範囲が相違するものの、その基準長さを1つとするための規定である。
【0016】また、山頂線は粗さ曲線から抜き取った基準長さLの中の最も高い山頂を通る平均線に平行な線であり、谷底線は粗さ曲線から抜き取った基準長さLの中の最も低い谷底を通る平均線に平行な線であり、上記抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔をマイクロメートル(μm)で表わしたものがRy(最大高さ)である。」
(キ)「【0024】実施例1?7および比較例1?4
ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末を調製し、このタングステン原料粉末を常法により圧粉成形し、得られた成形体を水素炉にて1200?1350℃で30分間仮焼結後、2700?3000℃で30?60分間通電焼結を行いタングステン焼結体とした。
【0025】さらに得られたタングステン焼結体を転打処理,再結晶処理,伸線処理等の一次加工を実施した。具体的には転打機を使用してタングステン焼結体を温度1300?1500℃で線径が2?4mm程度になるまで鍛延した。さらに鍛延したW線材を温度900℃で超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスにより線径が10?20μmになるまで伸線し、各実施例および比較例用のタングステン線素材とした。
【0026】次に、上記のように伸線処理した各タングステン線素材を、表1に示す条件で電解研磨処理を行った。すなわち、電解液として表1に示す濃度を有する水酸化ナトリウム水溶液を用い、この電解液中に各タングステン線素材を陽極として配置した上で直流電圧を印加して、各電解率(タングステン線素材の溶解率)が表1に示す値になるまで電解研磨処理を実施することにより、最終的に表1に示す仕上り線径(直径)Dを有する各実施例および比較例に係るタングステン線をそれぞれ調製した。
【0027】上記のように調製された各実施例および比較例のタングステン線の長さ方向に垂直に切断し、その周方向の表面粗さを、金属顕微鏡で100?800倍に拡大して撮影し、それぞれ図1に示すように、表面に数ミクロンの不規則な凹凸が形成されていることを示す粗さ曲線を得た。そして各粗さ曲線から凹凸の間隔(Sm)を測定し、前記(1)式に基づいて粗さ曲線の凹凸の平均間隔(Sm)を算出するとともに、粗さ曲線における山頂線と谷底線との間隔である最大高さ(Ry)を測定した。さらに上記Sm値およびRy値の、W線直径Dに対する比を算出して表1に示す結果を得た。」
(ク)表1

(ケ)図1


(コ)上記(ク)の表1から,比較例1が「仕上がり線径Dが10μm」で「Ry/D比(線表面凹凸)が0.3%」であることが読み取れる。してみると,Ry/D=Ry/10μm=0.3%の関係にあることが理解できるから,比較例1のRyが0.030μmであると認められる。
同様に,実施例1は,「仕上がり線径Dが10.5μm」で「Ry/D比(線表面凹凸)が0.5%」であることが読み取れるから,実施例のRyが0.053μmであり,比較例3は,「仕上がり線径Dが15.0μm」で「Ry/D比(線表面凹凸)が0.4%」であることが読み取れるから,比較例3のRyが0.060μmであると認められる。
(サ)上記(ケ)の図1の平均線aが直径であることが示されていること,及び上記(カ)などにおいて,Dにつき「直径D」と記載されていることに照らせば,甲1の表1に記載の各実施例,比較例の断面が円形であることは明らかである。
(シ)上記の記載によれば,甲1号証には,つぎの各発明が記載されているものと認められる。
a 「ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末を調製し、このタングステン原料粉末を常法により圧粉成形し、得られた成形体を水素炉にて1200?1350℃で30分間仮焼結後、2700?3000℃で30?60分間通電焼結を行いタングステン焼結体とし,得られたタングステン焼結体を転打機を使用して温度1300?1500℃で線径が2?4mm程度になるまで鍛延した線材を温度900℃で超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスにより線径が10?20μmになるまで伸線して得たタングステン線素材を電解研磨処理を実施することにより調整されたタングステン線であって,断面が円形であり,線径が10μmであり,表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔Ryが0.030μmであるタングステン線」(以下,「甲1-1発明」という。)
b 「ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末を調製し、このタングステン原料粉末を常法により圧粉成形し、得られた成形体を水素炉にて1200?1350℃で30分間仮焼結後、2700?3000℃で30?60分間通電焼結を行いタングステン焼結体とし,得られたタングステン焼結体を転打機を使用して温度1300?1500℃で線径が2?4mm程度になるまで鍛延した線材を温度900℃で超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスにより線径が10?20μmになるまで伸線して得たタングステン線素材を電解研磨処理を実施することにより調整されたタングステン線であって,断面が円形であり,線径が10.5μmであり,表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔Ryが0.053μmであるタングステン線」(以下,「甲1-2発明」という。
c 「ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末を調製し、このタングステン原料粉末を常法により圧粉成形し、得られた成形体を水素炉にて1200?1350℃で30分間仮焼結後、2700?3000℃で30?60分間通電焼結を行いタングステン焼結体とし,得られたタングステン焼結体を転打機を使用して温度1300?1500℃で線径が2?4mm程度になるまで鍛延した線材を温度900℃で超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスにより線径が10?20μmになるまで伸線して得たタングステン線素材を電解研磨処理を実施することにより調整されたタングステン線であって,断面が円形であり,線径が15.0μmであり,表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔Ryが0.060μmであるタングステン線」(以下,「甲1-3発明」という。)
イ 対比
(ア)本件訂正発明1と甲1-1発明との対比
甲1-1発明は,「断面が円形であり,線径が10μmである」から,本件訂正発明1と甲1-1発明とは,次の一致点で一致し,各相違点で相違するものである。
<一致点>
「断面が円形であり,線径が5μm以上であるタングステン線」

<相違点1-1>
本件訂正発明1の「表面粗さRaが0.10μm以下である」のに対して,甲1-1発明が「表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔Ryが0.030μmである」である点
<相違点2-1>
本件訂正発明1の「引張強度」が「4200MPaより大きい」のに対して,甲1-1発明の引張強度が不明である点
(イ)本件訂正発明1と甲1-2発明との対比
甲1-2発明は,「断面が円形であり,線径が10.5μm」であるから,本件訂正発明1と甲1-2発明とは,次の一致点で一致し,各相違点で相違するものである。
<一致点>
「断面が円形であり,線径が5μm以上であるタングステン線」
<相違点1-2>
本件訂正発明1の「表面粗さRaが0.10μm以下である」のに対して,甲1-2発明が「表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔Ryが0.053μmである」である点
<相違点2-2>
本件訂正発明1の「引張強度」が「4200MPaより大きい」のに対して,甲1-2発明の引張強度が不明である点
(ウ)本件訂正発明1と甲1-3発明との対比
甲1-3発明は,「断面が円形であり,線径が15.0μm」であるから,本件訂正発明1と甲1-2発明とは,次の一致点で一致し,各相違点で相違するものである。
<一致点>
「断面が円形であり,線径が5μm以上であるタングステン線」
<相違点1-3>
本件訂正発明1の「表面粗さRaが0.10μm以下である」のに対して,甲1-3発明が「表面の周方向に凹凸を有し、タングステン線の直径Dの1/3を基準長さとしたときの周方向の粗さ曲線の山頂線と谷底線との間隔Ryが0.060μmである」である点
<相違点2-3>
本件訂正発明1の「引張強度」が「4200MPaより大きい」のに対して,甲1-3発明の引張強度が不明である点

ウ 当審の判断
(ア)甲1-1発明に関する判断
a 相違点1-1について
(a)本件訂正発明1の表面粗さRaについて
本件訂正発明1の表面粗さRaについては,その測定方法を含めて本件特許明細書の発明の詳細な説明には記載がないが,異議申立人の提出した甲5-1号証の「JIS規格B0601」の11頁の4.2.1でRaは算術平均粗さとして定義されていること,同じく異議申立人の提出した甲5-2号証の「表面粗さの定義とパラメータ説明」の「基本パラメータの定義」においてRaは粗さ曲線の算術平均高さとして定義されていること,及び甲5-3号証の「表面粗さ JISB0031(1994)より抜粋」の「表1 代表的な表面粗さの求め方」においてRaは算術平均粗さと定義されていることに照らせば,ここでの表面粗さRaは,算術平均粗さを意味するものと解される。
(b)甲1-1発明のRyについて
甲1-1発明のRyは,「直径Dの1/3に相当する長さである基準長さL」(段落【0015】)として,「山頂線は粗さ曲線から抜き取った基準長さLの中の最も高い山頂を通る平均線に平行な線であり、谷底線は粗さ曲線から抜き取った基準長さLの中の最も低い谷底を通る平均線に平行な線であり、上記抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔をマイクロメートル(μm)で表わしたもの」(段落【0016】)であり,「表1」について,「タングステン線の長さ方向に垂直に切断し、その周方向の表面粗さを、金属顕微鏡で100?800倍に拡大して撮影し、それぞれ図1に示すように、表面に数ミクロンの不規則な凹凸が形成されていることを示す粗さ曲線を得」て,「粗さ曲線における山頂線と谷底線との間隔である最大高さ(Ry)を測定し」,「Ry値のW線直径Dに対する比を算出し,表1に示す結果を得た」(段落【0027】)と同様の記載が存在していることから,甲1-1発明のRyは,甲5-1ないし甲5-3で定義されている最大高さRyと同義であることが理解できる。
(c)甲1-1発明の算術平均粗さRaについて
算術平均粗さRaが,基準長さにおける輪郭曲線の高さZ(x)の絶対値の平均値のこと(甲5-1の6頁3.2.8及び11頁の4.2.1)であるのであるから,甲1-1発明のRaは,Ryよりも小さな値となることは,上記甲5-1ないし甲5-3に記載の技術常識に照らせば,当業者は当然理解できる事項である。
(d)相違点1-1についてのまとめ
上記(a)において検討したように,本件訂正発明1の表面粗さRaが算術平均粗さを意味するものであり,甲1-1発明の算術平均粗さRaは,0.030μmよりも小さい値であるということができるのであるから,甲1-1発明の「算術平均粗さRaが0.030μmよりも小さい」ことは,本件訂正発明1の「表面粗さRaが0.10μm以下である」ことに相当するものということができる。
してみると,上記相違点1-1は実質的な相違点ではない。

b 相違点2-1について
(a)引張強度に関する技術常識について
甲1号証に開示されたフィラメント線として用いられるタングステン線(上記ア(イ))の用途である照明及び電子機器のフィラメントに用いるタングステン線に関する規格である甲3号証(日本工業規格 照明及び電子機器用のタングステン線(JIS H 4461(2002)),平成14年3月20日 第1刷発行)の「5.4 引張強さ」の表3には,線引きのまま(VWW1,2のD),電解研磨がされた(VWW1,2のE)の径0.025mm未満,すなわち,径25μm未満のタングステン線の引張強さが,3.00?4.50×10^(3)N/mm^(2) ,すなわち,3000?4500MPaの範囲とすることが記載されている。
また,甲6号証(TUNGSTEN A TREATISE ON ITS METALLURGY,PROPERTIES AND APPLICATIONS,昭和19年6月30日発行)の149及び150頁の「4.抗張力」には,「第126図 タングステン線の抗張力」の図が記載されており,そこには,普通の線引き法で線引きされたものについて線径が20μm以下の範囲で3924MPa以上で4415MPaを優に超える引っ張り強度を示すものも記載されている。
してみると,原出願日前において,タングステン線の引っ張り強度を3000?4500MPa程度のものが存在したものと認められる。
(b)甲1-1発明の製造方法について
甲1-1発明は,「ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末を調製し、このタングステン原料粉末を常法により圧粉成形し、得られた成形体を水素炉にて1200?1350℃で30分間仮焼結後、2700?3000℃で30?60分間通電焼結を行いタングステン焼結体とし,得られたタングステン焼結体を転打機を使用して温度1300?1500℃で線径が2?4mm程度になるまで鍛延した線材を温度900℃で超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスにより線径が10?20μmになるまで伸線して得たタングステン線素材を電解研磨処理を実施することにより調整されたタングステン線」である。
そして,甲6号証に記載されているように,ダイス等による伸線により線径を小さくすれば,タングステン線の引張強度が向上すること,通常の線引きにより20μm以下の範囲で3924MPa以上で4415MPaを優に超える引っ張り強度を示すことが原出願日前に技術常識として知られているものといえる。
してみると,甲1-1発明が,通常の線引きにより線径を10.5μmになるまで伸線して製造されるタングステン線であるところ,少なくとも電解研磨処理を実施する前には,甲6号証のグラフによれば,4500MPa以上の引張強度が得られることになるものと当業者であれば理解できることであるし,甲1-1発明を製造するにあたって,電解研磨処理前に4500MPa以上のタングステン線とすることは,必要に応じて適宜なし得る程度のことというべきである。
そして,甲1-1発明においては,伸線後に,電解研磨を実施することにより,その表面粗さを所定の範囲に調整したものであるから,特許権者が第1特許権者意見書で主張するように,タングステン線を作成するにあたって,高い引張強度を実現した場合に,その表面粗さが荒れることが想定されるとしても,そのようにして得られたタングステン線を電解研磨することで,所定の表面粗さとすることができることは明らかである(後述のオ(ウ)も参照のこと)。
さらに,特許権者は,第2特許権者意見書において,「タングステン線」を「電解研磨」することで,その引張強度が低下すると主張しているが,特許権者の主張に根拠はないし,電解研磨をして表面を平滑にすると引張り強さが高くなるとの技術常識も存在することに照らせば,電解研磨がそれほど引張強度を低下させるものということもできない(後述のオ(エ)も参照のこと)。
したがって,甲1-1発明のものを本件訂正発明1と同程度の引っ張り強度を有するものに調整することは,本願出願前の技術常識に基づいて,当業者が適宜なし得ることであるというべきである。
(c)本件訂正発明1において,その引っ張り強度を4200MPa以上とすることの技術的意義について検討するに,本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0050】において「例えば,タングステン線100の引張強度は,3700MPa以上4200MPa以下である。」と記載され,また,同段落【0051】において,「これにより,タングステン線100の引張強度が3700MPa以上であって高いので,スクリーンメッシュ10の耐久性を高めることができる。具体的には,スクリーン印刷の際にスキージ31が押し込まれた場合でも,タングステン線100の断線などを抑制することができる。また,タングステン線100の引張強度は4200MPa以下であって高すぎないので,タングステン線100が硬すぎて割れてしまうことを抑制することができる。」,同段落【0098】において「例えば,タングステン線100の引張強度は,4200MPaより大きくてもよく,3700MPaより小さくてもよい」と記載されていることからすれば,本件訂正発明1において,引っ張り強度を4200MPa以上とすることは,通常取り得るタンステン線の引っ張り強度の数値範囲を選択したものにすぎないというべきであるから,本件訂正発明1において,引っ張り強度を4200MPa以上としたことにより,格別の効果を奏するものとはいえない。
(d)以上のことを総合すると,甲1-1発明において,その引っ張り強度を4200MPa以上に調整することは,技術常識に鑑みれば,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎないから,甲1-1発明の引っ張り強度を4200MPa以上とすることにより,上記相違点2-1に係る本件訂正発明1の構成のようにすることは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。
c 甲1-1発明に関する小括
上記のとおり,相違点1-1は,実質的な相違点ではなく,相違点2-1は,当業者が容易に想到し得ることであるから,本件訂正発明1は,甲1-1発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)甲1-2発明に関する判断
a 相違点1-2について
上記(ア)a(a)において検討したように,本件訂正発明1の表面粗さRaが算術平均粗さを意味するものであり,上記(ア)a(b)及び(c)で検討したことから,甲1-1発明と同様,甲1-2発明の算術平均粗さRaは,0.053μmよりも小さい値であるということができるのであるから,甲1-2発明の「算術平均粗さRaが0.053μmよりも小さい」ことは,本件訂正発明1の「表面粗さRaが0.10μm以下である」ことに相当するものということができる。
してみると,上記相違点1-2は実質的な相違点ではない。
b 相違点2-2について
上記(ア)bにおいて検討した理由と同様の理由から,甲1-2発明において,その引っ張り強度を4200MPa以上とすることは,技術常識に鑑みれば,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎないから,甲1-2発明の引っ張り強度を4200MPa以上とすることにより,上記相違点2-2に係る本件訂正発明1の構成のようにすることは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。
c 甲1-2発明に関する小括
上記のとおり,相違点1-2は,実質的な相違点ではなく,相違点2-2は,当業者が容易に想到し得ることであるから,本件訂正発明1は,甲1-2発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)甲1-3発明に関する判断
a 相違点1-3について
上記(ア)a(a)において検討したように,本件訂正発明1の表面粗さRaが算術平均粗さを意味するものであり,上記(ア)a(b)及び(c)で検討したことから,甲1-1発明と同様,甲1-3発明の算術平均粗さRaは,0.060μmよりも小さい値であるということができるのであるから,甲1-3発明の「算術平均粗さRaが0.060μmよりも小さい」ことは,本件訂正発明1の「表面粗さRaが0.10μm以下である」ことに相当するものということができる。
してみると,上記相違点1-3は実質的な相違点ではない。
b 相違点2-3について
上記(ア)bにおいて検討した理由と同様の理由から,甲1-3発明において,その引っ張り強度を4200MPa以上とすることは,技術常識に鑑みれば,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎないから,甲1-3発明の引っ張り強度を4200MPa以上とすることにより,上記相違点2-3に係る本件訂正発明1の構成のようにすることは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。
c 甲1-3発明に関する小括
上記のとおり,相違点1-3は,実質的な相違点ではなく,相違点2-3は,当業者が容易に想到し得ることであるから,本件訂正発明1は,甲1-3発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件訂正発明1についての小括
上記のとおり,本件訂正発明1は,甲1-1,甲1-2又は甲1-3発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

オ 特許権者の意見について
(ア)特許権者は,第1特許権者意見書において,甲1号証に記載の発明(上記甲1-1発明,甲1-2発明及び甲1-3発明)は,「引張強度が不明であり,本件出願時の技術常識に鑑みると,表面粗さRaが0.10μm以下を維持しながら引張強度が4000MPaを超えることはなく,「表面粗さRaが0.10μm以下であり,かつ,引張強度が4200MPaより大きい」ことを実現できていないことが明らか」である(意見書5頁)とし,その理由として,甲1号証に記載の発明の製造方法である「超硬合金・焼結ダイヤモンドダイス」を用いた伸線では,高い引張強度を実現することが困難であるとして,(a)超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスを構成するダイヤモンドが多結晶化しているため,ダイヤモンドの結晶粒子によってタングステン線の表面に微小な溝が形成されやすくなり,微小な溝はタングステン線の線切れ(断線)の起点となるので,4000MPaを超える引張強度のタングステン線が得られる前に断線してしまうこと,(b)断線しにくく,かつ,表面性を高めるためには,伸線時のタングステン線の酸化物量を適切な範囲に調整することが必要であるところ,甲1号証には,酸化物量の調整に関する開示はないから,酸化物量の調整が行われずに伸線を行って製造したものであることを,その理由として説明している。
また,合わせて甲3号証については,線径が細くなり,引張強度が高まる程,表面が荒れていくことが技術常識であり,当該技術常識に鑑みると,甲3号証において高い引張強度が実現されているのであれば,表面が荒れていることが容易に認識することができる旨主張している。
(イ)これに対して,異議申立人が令和1年7月11日付け意見書において,(a)甲1号証の段落[0025]の内容は、最終的な夕ングステン線材を得るための中間段階のものであり、表1に示された結果に対応する線材は、[0025]の終了段階のものではなく、電解研磨処理後のタングステン線材であることに鑑みれば,電解研磨処理後のタングステン線材についての表面粗さを前提に議論することなく、製造過程の中途の段階での線材についてその表面粗さを議論することは前提として失当であること,(b)甲1-1発明は、表1に記載されているように、比較例1の仕上がり線径Dは10.0μmであり、この種の細い線径のタングステン線については、例えば甲第7号証7頁上図及び甲第7号証の2に示されているように、「4000MPaを超える引張強度のタングステン線」は、断線することなく製品として、普通に得られるものであること,(c)特許権者が「超硬合金・焼結ダイヤモンドダイス」を用いた伸線では断線が生じ、本件主張のタングステン線が得られないとの主張しているが、そもそも、断線の原因は、「伸線加工時の抵抗や断線については、リダクションやベアリングの形状が影響する」ものであって、「超硬合金・焼結ダイヤモンドダイス」を用いた伸線であるが故に断線し、4000MPaを超える引張強度のタングステン線が得られないなどという技術常識は存在しないこと,(d)甲第16号証の段落[0002]などに記載されているように,「単結晶ダイヤモンドダイス」を使用すると線肌が悪化するものであることから,特許権者が主張するように伸線用ダイスの種類にのみにより、断線の有無が決定されるがごとき断定は、技術常識に基づいて妥当ではないと主張するとともに,合わせて,線径が15μmφのタングステン線を断線を生じることなく伸線加工することができることは、甲第15号証記載の発明などから明らかであると主張している。
(ウ)そこで検討するに,異議申立人が主張するように,甲3号証の記載や甲6号証及び甲7号証の記載から,10.0μm程度の線径で引っ張り強度が4000MPaを超えるタングステン線が存在していることは明らかであることからすれば,その程度の引っ張り強度のタングステン線を得ることは,本件特許出願前に当業者にとって容易になし得ることにすぎないというべきである。
その際に,特許権者が主張するように,そのようにして得られたタングステン線の表面が荒いものであるとしても,甲1号証には,電解研磨処理を施すことが記載されているのであるから,引っ張り強度が4200MPa程度のものを製造し,その後に,電解研磨処理をすることで所定の表面粗さを実現することが困難であるということはできない。
特許権者が主張するように「断線しにくく,かつ,表面性を高めるためには,伸線時のタングステン線の酸化物量を適切な範囲に調整することが必要である」としても,それは,タングステン線を伸線処理のみにより製造した場合においてのことにすぎないから,上記のとおり,電解研磨処理を施すことを前提とした上記の判断を左右するものではない。
(エ)特許権者は,第2特許権者意見書において,電解研磨を行うことにより,引張強度の向上に寄与している外表面に近い部分が削られるため,タングステン線の引張強度が低下することから,電解研磨が行われる前のタングステン線における引張強度が,4200MPa以上を実現するためには,電解研磨における引張強度が,4200MPaを電解研磨による低下量以上に超えていることが必要であると主張している。
しかしながら,その主張の根拠とする第2特許権者意見書の5頁に電解率と引張強度の関係を示すものとして記載された[参考図]は,具体的数値が示されておらず,電解率がどの程度引張強度低下に影響するかについては把握することができないから,特許権者の主張は根拠がない。
かえって,特許異議申立人が回答書とともに提出した甲17号証(粉体粉末冶金用語事典(2001年5月30日初版1刷発行))に「電解研磨によりタングステンの表面を平滑にすると引張強さは高くなる。」旨記載されているように,原出願日前において,電解研磨によって引張強さが高くなることが技術常識として知られていることに照らせば,特許権者のいうように,電解研磨によってタングステン線の引張強度が大きく低下するものと認めることは相当でない。
(オ)以上のとおりであるから,特許権者の意見は採用することができない。

(2)本件訂正発明2について
ア 本件訂正発明2と甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明との対比
本件訂正発明2と甲1-1発明,甲1-2発明、又は甲1-3発明とは,それぞれ,上記(1)イ(ア)ないし(ウ)の各一致点で一致し,上記各相違点1-1及び2-1,相違点1-2及び2-2,又は相違点1-3及び2-3において相違することに加えて,さらにつぎの相違点3で相違する。
<相違点3>
本件訂正発明2が「タングステンの長さが1000mmである場合における垂下長さ」が「900mm以上」であるのに対して,甲1-1発明,甲1-2発明,又は,甲1-3発明の垂下長さが不明である点

イ 相違点についての検討
(ア)上記(1)イ(ア)ないし(ウ)の各相違点1-1及び2-1,相違点1-2及び2-2,又は相違点1-3及び2-3について
これらの相違点については,上記(1)ウ(ア)ないし(ウ)で説示したとおりである。

(イ)相違点3について
a 甲1号証に開示されたフィラメント線として用いられるタングステン線(上記ア(イ))の用途である照明及び電子機器のフィラメントに用いるタングステン線に関する規格である甲3号証の「5.7 真直性」には,「真直性を必要とする線」について,「径0.100mm未満の線」は,「長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上でなければならない」ことが記載されていることからすれば,甲1-1発明,甲1-2発明,又は甲1-3発明において「長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上」とすることは,当該発明が,真直性が必要とされる場合に,それぞれ通常必要とされる範囲の自然垂下長とすることといえる。
b そして,甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明は,上記(1)のウの(ア)b(b)に説示したように,いずれも本件訂正発明2と同様に,タングステン粉末をプレス成形し,焼結した後,周囲から鍛造圧縮して伸延してワイヤ状にし,その後ダイスにより伸線して調整されたものであるところ,本件特許明細書の発明の詳細な説明においては,タングステン線の真直性を所定の範囲とする工程については何らの工程も示されていないから,甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明を本件訂正発明2と同程度の真直性を有するものに調整することは,本願出願前の技術常識に基づいて,当業者が適宜なし得ることであるというべきである。
なお,長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上であるということは,少なくとも長さ1000mmの線の垂下長さは,900mm以上となるものと理解できる。
c 本件訂正発明2において,その垂下長さを長さ1000mmである場合に900mm以上とすることの技術的意義について検討しても,本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】において「例えば,タングステン線100の長さが1000mmである場合における垂下長さは900mm以上である。」と記載され,また,同段落【0053】において,「これにより,タングステン線100の真直性が十分高いので,製網時の断線の発生を抑制することができる。したがって,タングステン線100を用いて製網したスクリーンメッシュ10の歩留まりの低下を抑制することができる。」と記載されていることから,本件訂正発明2において,垂下長さを900mm以上とすることは,真直性を高くすることにあるものと理解される。
これに対して,甲3号証には,上記のとおり,真直性が必要とされる場合に,長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上であること,すなわち少なくとも長さ1000mmの線の垂下長さは900mm以上であることが求められることが記載されているのであるから,本件訂正発明2において,長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上とすることにより,真直性を高くすることができることは,当業者が予測し得る程度のことであるといえることからすれば,本件訂正発明2が格別の効果を奏するものともいえない。
d 以上のとおりであるから,甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明において,長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上,すなわち少なくとも長さ1000mmの線の垂下長さは900mm以上とすることは,甲3号証に記載されているように甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明が真直性を必要とされる場合に,それぞれ通常必要とされる範囲の自然垂下長とすることにすぎず,かつ,そのように調整することは,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎないから,甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明において,長さ500mmの線の自然垂下長が450mm以上,すなわち少なくとも長さ1000mmの線の垂下長さは900mm以上とすることにより,上記相違点3に係る本件訂正発明2の構成のようにすることは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。

ウ 本件訂正発明2についての小括
上記のとおり,本件訂正発明2は,甲1-1,甲1-2又は甲1-3発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は,本件訂正発明1及び2について,さらに,タングステン線の線径を22μm以下であることを特定したものである。
これに対して,上記(1)アの(シ)のaにおいて認定したとおり甲1-1発明の線径は「10μm」であり,同bにおいて認定したとおり甲1-2発明の線径は「10.5μm」であり,同cで認定したとおり,甲1-3発明の線径は「15.0μm」であるから,いずれも,その線径は22μm以下である。
してみると,本件訂正発明4は,上記(1)及び(2)と同様の理由により,甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(4)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は,本件訂正発明1及び2,並びに本件訂正発明4について,タングステン線の純度が95%以上であることを特定するものである。
これに対して,上記(1)アの(シ)のaないしcにおいて認定したとおり甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明は,いずれも「ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末を調製し、このタングステン原料粉末を常法により圧粉成形し、得られた成形体を水素炉にて1200?1350℃で30分間仮焼結後、2700?3000℃で30?60分間通電焼結を行いタングステン焼結体とし,得られたタングステン焼結体を転打機を使用して温度1300?1500℃で線径が2?4mm程度になるまで鍛延した線材を温度900℃で超硬合金・焼結ダイヤモンドダイスにより線径が10?20μmになるまで伸線して得たタングステン線素材を電解研磨処理を実施することにより調整されたタングステン線」であるところ,「ドープ剤としてAlを30ppm,Siを300ppm,Kを90ppm含有するタングステン原料粉末」は,タングステンにドープ剤が合計0.042%含有されているものであって,タングステンの純度が99.958%程度と計算できるから,甲1-1,甲1-2又は甲1-3発明のタングステン線の純度は95%以上であるといえる。
してみると,本件訂正発明6と甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明とは,「タングステン線の純度が95%以上」である点でも一致するものであるから,本件訂正発明6は,上記(1),(2)及び(4)で示したとおり,甲1-1発明,甲1-2発明又は甲1-3発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 取消理由2(特許法第36条第6項第1号違反について)の判断
(1)本件特許発明について
本件訂正発明1,2及び本件訂正発明4及び6は,上記第3のとおりであるところ,本件訂正発明1,2及び本件訂正発明4及び6は,いずれも用途が特定されないタングステン線に係る発明である。

(2)本件特許明細書から把握される発明について
ア 本件特許明細書には,つぎの記載がある。(下線は強調のため,当審が付加したもの。)
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】 しかしながら、上記従来のスクリーンメッシュは、ステンレス製の金属線を用いて構成されている。ステンレス製の金属線は、強度が十分ではないため、使用時の伸び、短寿命などが発生する。このため、ステンレスよりも強度が強い材料を用いた金属線が求められる。
【0005】 そこで、本発明は、高性能なタングステン線及びタングステン繊維などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るタングステン線は、表面粗さRaが0.10μm以下であり、かつ、引張強度が3700MPa以上であるタングステン線である。
【0007】また、本発明の一態様に係るタングステン繊維は、前記タングステン線と、前記タングステン線に保持された、放射性物質を吸着する吸着剤とを有する。
【発明の効果】
【0008】本発明によれば、高性能なタングステン線及びタングステン繊維などを提供することができる。」
(イ)「 【0040】 [効果など]以下では、スクリーンメッシュ10及びタングステン線100の効果について、本発明に至った経緯も含めて説明する。
【0041】 従来、スクリーン印刷用のスクリーンメッシュは、ステンレス線(SUS線)を用いて製造されていた。しかしながら、ステンレス線は強度が十分ではないために、ステンレス線を用いて製網されたスクリーンメッシュでは、スキージに押し込まれた時に伸びてしまい、網目(開口)の形状が変形するという問題がある。
【0042】 そこで、本発明者らは、強度がより強い材料を用いてスクリーンメッシュを製造することを検討した。具体的には、本発明者らは、強度が強い材料としてタングステンに着目し、スクリーンメッシュを製造することを検討した。タングステン線は、硬度はステンレス線の4倍程度であり、引張強度はステンレス線の1.3倍程度である。このように、タングステン線はステンレス線よりも強くて伸びにくいので、タングステン線を用いて製網されたスクリーンメッシュは、スキージに押し込まれた時の網目の変形が抑制される。したがって、スクリーン印刷を精度良く行うことができる。
【0043】 しかしながら、タングステン線には、表面が粗いという問題がある。表面が粗いタングステン線を用いて製網を行った場合、製網装置(織機)などの設備の摩耗が激しい。具体的には、製網装置が備える部品(具体的には、タングステン線を押さえる筬)が摩耗により消耗し、交換頻度が増加する。また、製網時の設備の摩耗だけでなく、製網後に圧延したときにタングステン線に割れが発生する。このため、一般的なタングステン線を製網しただけでは、スクリーン印刷に利用可能なスクリーンメッシュを製造することが難しいことが判明した。
【0044】そこで、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、タングステン線の表面性を十分に高めることで、上記の問題を解決することができた。
【0045】以下では、表面粗さRaが異なる複数のタングステン線に対して、製網中の断線の発生、及び、製網装置の筬などの設備の摩耗について評価した結果について説明する。ここでは、表面粗さRaが0.04μm、0.07μm、0.10μm、0.12μm、0.15μmの5種類のタングステン線について評価した。図7は、本実施の形態に係るタングステン線100の評価結果を示す図である。
【0046】図7に示すように、表面粗さRaが0.10μm以下のタングステン線を用いて製網した場合、断線及び設備の摩耗はほとんど発生しなかった。一方で、表面粗さRaが0.12μm及び0.15μmのタングステン線を用いて製網した場合、断線及び設備の摩耗の発生が確認された。具体的には、表面粗さRaが0.15μmのタングステン線を用いて製網した場合には、タテ糸の約20%に断線が発生した。また、表面粗さRaが0.15μmのタングステン線を用いて製網した場合には、タテ糸を押さえる筬が激しく摩耗した。
【0047】以上のことから、本実施の形態に係るタングステン線100は、スクリーン印刷用のスクリーンメッシュ10に用いられる、表面粗さRaが0.10μm以下であるタングステン線である。また、本実施の形態に係るスクリーンメッシュ10は、タングステン線100を用いて製網された、スクリーン印刷用のスクリーンメッシュである。
【0048】これにより、表面粗さRaが0.10μm以下になるまでタングステン線100の表面性を高めることで、製網装置の摩耗を抑制することができる。また、タングステン線100の滑りが良くなるので、製網の加工性も向上する。具体的には、タテ糸11及びヨコ糸12の歪み及び位置ずれなどが抑制されて、面内で均一な形状の複数の開口13を有するスクリーンメッシュ10を製網することができる。
【0049】さらに、タングステン線100の表面の凹凸(亀裂)が少なくなるので、製網後の圧延時に、タングステン線100に割れが発生するのを抑制することができる。このため、タングステン線100の断線の発生が少なくなるので、スクリーンメッシュ10の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0050】また、例えば、タングステン線100の引張強度は、3700MPa以上4200MP
a以下である。
【0051】これにより、タングステン線100の引張強度が3700MPa以上であって高いので、スクリーンメッシュ10の耐久性を高めることができる。具体的には、スクリーン印刷の際にスキージ31に押し込まれた場合でも、タングステン線100の断線などを抑制することができる。また、タングステン線100の引張強度は4200MPa以下であって高すぎないので、タングステン線100が硬すぎて割れてしまうことを抑制することができる。
【0052】また、例えば、タングステン線100の長さが1000mmである場合における垂下長さは、900mm以上である。
【0053】これにより、タングステン線100の真直性が十分に高いので、製網時の断線の発生を抑制することができる。したがって、タングステン線100を用いて製網したスクリーンメッシュ10の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0054】また、例えば、タングステン線100の線径は、22μm以下である。
【0055】これにより、タングステン線100の線径が22μm以下であるので、タングステン線100の柔軟性が高く、曲げやすくなる。したがって、製網の加工性を高めることができる。また、タングステン線100の線径が22μm以下であるので、タングステン線100を用いて製網されたスクリーンメッシュ10の耐久性を高めることができる。したがって、スクリーン印刷に繰り返し使用した場合であっても網目(開口13)の崩れなどの発生が抑制されて、高精度のスクリーン印刷を行うことができる。」

イ 本件特許発明が解決し得る課題として認識できるものついての検討
(ア)上記のア(ア)の記載によれば,本件特許明細書からは,本件発明が解決しようとする課題が「高性能なタングステン線及びタングステン繊維などを提供する」ことであり(段落【0005】),その課題を解決するために,「表面粗さRaが0.10μm以下であり,かつ,引張強度が3700MPa以上であるタングステン線」であればよいこと,また,当該タングステン線と、当該タングステン線に保持された、放射性物質を吸着する吸着剤とを有するものであれば良いことが一応把握できる。
しかしながら,本件発明が解決しようとする課題が「高性能なタングステン線及びタングステン繊維などを提供する」ことであり,その課題を解決するために,「表面粗さRaが0.10μm以下であり,かつ,引張強度が3700MPa以上であるタングステン線」であればよいことが一応把握できるとしても,本件特許発明において特定されている「引張強度が4200MPa以上」について言及されていないし,ここでの「高性能なタングステン線」が,どのような技術的意義を意味するものであるのかも当該記載からは明らかではない。
そこで,この点についてさらに,本件特許明細書の記載をみるに,上記ア(イ)の記載によれば,ここでいう「高性能なタングステン線」とは,「スクリーン印刷用のスクリーンメッシュ」などの用途で用いられるものであって,「製網」の際に「タングステン線には、表面が粗いという問題」から生じる課題を解決するために「タングステン線の表面性を十分に高める」という技術的意義にあるものと理解できるのみである。
そして,表面粗さRaに関してはつぎの記載が存在する。
(イ)「表面粗さRa」について
発明の詳細な説明においては,「表面粗さRa」についての技術的意義は,段落【0043】ないし【0049】においては,製網時において「断線及び設備の摩耗を抑えることができる」こと(段落【0046】,【0048】参照),「製網後の圧延時に,タングステン線の割れの発生を抑制できること」(段落【0049】)にあるものと認めるのが相当であるから,いずれも「製網」時に生じる課題を解決し得るものが認識されるのみである。
さらに,進んで,その他の特定されたパラメータの技術的意義についても検討する。
(ウ)「引張強度」について
本件特許明細書の発明の詳細な説明から把握される「引張強度」の技術的意義については,段落【0050】において「例えば,タングステン線の引張強度は3700MPa以上4200MPa以下である。」と記載し,それに続けて,「引張強度が3700MPa以上であればスクリーン印刷の際にスキージに押し込まれた場合でもタングステン線の断線などを抑制することができる」こと,「4200MPa以下であって高すぎないので,タングステン線100が硬すぎて割れてしまうことを抑制できる」(段落【0051】)がそれぞれ記載されていることからすれば,当該記載に接した当業者であれば,発明の詳細な説明に開示された「引張強度」により解決しようとする課題は,「3700MPa?4200MPa」の範囲で解決し得るものと認識すると解することが相当である。
この点に関して,段落【0098】には,「タングステン線の引張強度は,4200MPaよりも大きくてもよい」旨記載されているが,その範囲において,どのような技術的意義をもつといえるのかや,どのような課題を解決し得るのかについては具体的に記載されていない。
してみると,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は,「タングステン線」の「引張強度」に関して,「3700MPa?4200MPa」の範囲であれば,「断線の発生」を抑制し得るという課題が解決し得るものと一応理解することができるものの,本件特許発明で特定されている「4200MPa以上」であることにより,どのような課題が解決し得るのかについては,発明の詳細な説明に接した当業者は理解することはできないというほかない。
(エ)「長さが1000mmである場合における垂下長さが900mm以上」について
本件特許明細書の発明の詳細な説明から把握される「長さが1000mmである場合における垂下長さが900mm以上」については,「真直性が十分に高いので,製網時の断線の発生を抑制することができる」こと,その結果「タングステン線を用いて製網したスクリーンメッシュの歩留まりの低下を抑制することができる」こと(段落【0052】)と記載されており,当該記載に接した当業者は,「長さが1000mmである場合における垂下長さが900mm以上」とすることが「製網時の断線の発生を抑制」できるという目的のためのものであると理解することができるが,真直性について検討した実施例が存在しないことから,真直性をこの範囲することにより,具体的に「課題を解決し得るもの」と認識し得るものとまではいえないし,それを差し措いたとしても真直性が高いとなぜ製網時の断線の発生が抑制されるのかについて,その作用機序について何らの説明がないことからすれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からは,本件特許発明において特定される「長さが1000mmである場合における垂下長さが900mm以上」において「製網」に用いられる場合において「断線が発生しない」ことが,その技術的意義であることは理解できるものの,それ以外の用途において,タングステン線が「高性能」なものとして機能することを当業者は理解することができないから,本件特許明細書の上記記載からは,当業者は,用途の特定のない本件特許発明2において記載されている「タングステン線」が,「製網」に用いられる以外において,課題を解決し得るものと認識することはできない。
(オ)その他の特定について
「線径」については,「タングステン線100の線径が22μm以下」であれば、「タングステン線の柔軟性が高く、曲げやすくなる」ことから,「製網の加工性を高める」ことができる(段落【0055】)という製網時の課題が解決し得ることが記載されているのみであり,「タングステン純度」や「断面円形」と解決しようとする課題との関係については具体的な記載はないから,これらの点を考慮したとしても,本件特許発明1及び2記載されている「タングステン線」が,「製網」に用いられる以外において,課題を解決し得るものと認識することはできない。
(カ)小括
以上のとおりであるから,発明の詳細な説明の記載からは,本件特許発明1,2,4及び6において特定されている各パラメータの範囲において,本件特許発明1,2,4及び6が解決し得ると認識する範囲は,「製網時」におけるものにとどまるというべきである。

ウ 本件特許明細書には,さらに下記の記載がある。
(ア)「【0074】[効果など]従来、原子力発電所において、ウラン、プルトニウムなどの核燃料を使用した場合に、核分裂生成物として、セシウム、コバルトなどの放射性物質が生成される。放射性物質は、人体及び環境などに悪影響を与えるため、外部に漏れ出ないように、かつ、漏れ出た場合には速やかに効率良く回収することが望まれている。
【0075】上述したように、プルシャンブルーは、放射性物質であるセシウムなどを吸着するので、セシウムの回収を容易に行うことができる。しかしながら、セシウムを吸着したプルシャンブルーが放射線の放出源となるので、このプルシャンブルーの回収が困難となる。
【0076】そこで、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、タングステン繊維とプルシャンブルーとを利用して、効率良く放射性物質を回収することを見出した。具体的には、本実施の形態に係るタングステン繊維120は、タングステン線100と、タングステン線100に保持された、放射性物質を吸着する吸着剤とを有する。ここで、吸着剤は、例えば、プルシャンブルーである。
【0077】一般的に、タングステンは、比重が重いので、放射線の遮蔽効果を有する。具体的には、タングステンをガンマ線が通過する際に、ガンマ線が減衰する。したがって、放射性物質の周囲をタングステンで囲むことで、放射性物質からの放射線が外部に放出されるのを抑制することができる。
【0078】本実施の形態では、プルシャンブルーがタングステン線100に保持されているので、プルシャンブルーが吸収したセシウムなどの放射性物質から放出される放射線は、プルシャンブルーに近接しているタングステン線100によって遮蔽される。すなわち、金属メッシュ110は、プルシャンブルーによって放射性物質を吸着することができ、かつ、吸着した放射性物質からの放射線が外部に放出されるのを抑制することができる。したがって、放射性物質を金属メッシュ110ごと回収することができる。
【0079】また、例えば、タングステン繊維120は、さらに、タングステン線100に織り込まれた繊維(具体的には、仮撚糸121)を有し、吸着剤は、繊維に付着されている。
【0080】これにより、タングステン線100に仮撚糸121が織り込まれているので、タングステン繊維120の表面積を大きくすることができる。プルシャンブルーの付着面積が大きくなるので、放射性物質の吸着力を高めることができる。
【0081】また、例えば、タングステン繊維120は、吸着剤は、タングステン線100の表面に付着されている。
【0082】これにより、タングステン線100の表面にプルシャンブルーが付着されているので、プルシャンブルーが吸着した放射性物質から放出される放射線をタングステン線100が効率良く減衰させることができる。したがって、タングステン繊維120による放射線の遮蔽効果を高めることができる。また、タングステン線100の表面を荒らした場合には、タングステン線100の表面積を大きくすることができるので、プルシャンブルーの付着面積を大きくすることができる。
【0083】また、本実施の形態に係る金属メッシュ110の製造方法は、さらに、放射性物質を吸着する吸着剤(具体的には、プルシャンブルー)を複数のタングステン線100に保持させる工程(S8)を含む。また、例えば、保持させる工程(S8)は、製網する工程(S10)の前に行う。
【0084】これにより、プルシャンブルーによってセシウムなどを吸着することができ、吸着されたセシウムなどから放出される放射線をタングステン線100によって遮蔽する。よって、金属メッシュ110を用いて放射性物質の回収を簡単に行うことができる。
【0085】また、例えば、保持させる工程(S8)では、複数のタングステン線100の各々に繊維(具体的には、仮撚糸121)を織り込み、織り込んだ繊維に吸着剤を付着させる。
【0086】これにより、タングステン線100に仮撚糸121を織り込むので、金属メッシュ110の表面積を大きくすることができる。プルシャンブルーの付着面積が大きくなるので、放射性物質の吸着力を高めることができる。」
(イ)「【0087】[変形例] 以下では、本実施の形態に係る金属メッシュ110及びタングステン繊維120の変形例について説明する。
【0088】例えば、本実施の形態では、タングステン線100に仮撚糸121を織り込み、織り込んだ仮撚糸121にプルシャンブルーを付着させたが、これに限らない。タングステン線100の表面に直接、プルシャンブルーなどの吸着剤を塗布してもよい。
【0089】例えば、製網工程(S10)の後に、保持工程(S8)を行ってもよい。具体的には、製網工程(S10)では、仮撚糸121が織り込まれていないタングステン線100を用いて金属メッシュ(図1及び図2に示すスクリーンメッシュ10)を製網する。なお、製網工程(S10)では、各々に繊維(仮撚糸121)が織り込まれた複数のタングステン線100を用いて、金属メッシュを製網してもよい。
【0090】次に、プルシャンブルーを複数のタングステン線100に保持させる(S8)。具体的には、複数のタングステン線100の表面にプルシャンブルーを塗布する。例えば、プルシャンブルーを含む塗料に、製網された金属メッシュを浸漬することで、金属メッシュの全面にプルシャンブルーを塗布する。あるいは、噴霧器などを用いてプルシャンブルーを含む塗料を金属メッシュに吹き付けてもよい。
【0091】以上のように、例えば、本変形例に係る金属メッシュの製造方法は、保持させる工程(S8)は、製網する工程(S10)の後に行う。
【0092】これにより、放射性物質の回収用途に用いる場合に、必要に応じて金属メッシュに放射性物質の吸着力を持たすことができる。また、金属メッシュの製網後にプルシャンブルーを保持させるので、プルシャンブルーを保持させる前の金属メッシュを、放射性物質の回収以外の用途(例えば、スクリーン印刷)に用いることができる。すなわち、金属メッシュの汎用性を高めることができる。また、異なる用途に利用可能な金属メッシュを大量生産しておくことで、コストの低下を実現することができる。
【0093】なお、本発明は、プルシャンブルーなどの吸着剤が保持されたタングステン線100を用いた繊維製品であれば、金属メッシュに限定されない。例えば、繊維製品は、タングステン繊維120を原糸とする織物、編物又は不織布などの繊維布帛でもよい。繊維布帛の形状は、例えば、布状又はシート状であるが、これに限らない。例えば、タングステン繊維120を綿状(ワタ状)にまとめてもよい。
【0094】また、例えば、タングステン繊維120は、図9に示すような構成に限らず、タングステン線100と化学繊維からなる糸とを撚り又は引き揃えたものでもよい。
【0095】また、例えば、タングステン繊維120は、タングステン線100と仮撚糸121との複合線に限らず、プルシャンブルーなどの吸着剤が保持されたタングステン線100の単線でもよい。
【0096】また、例えば、本実施の形態では、タングステン線100を製網する例について示したが、これに限らない。例えば、表面にプルシャンブルーを塗布した複数のタングステン線100を撚り又は引き揃えただけでもよい。」

エ 上記ウの記載によれば,プルシャンブルーを保持したタングステン線を用いたタングステン繊維を用いることで,放射性物質の回収用途に用いる放射性物質の吸着力を有するものを実現することができることは読み取れるものの,当該記載から,ブルシャンブル-などの吸着剤が保持されないタングステン線がどのような課題を解決し得るのかについてまでは読み取れるものではないから,これらの記載を考慮しても,本件訂正発明1ないし6において特定される用途の特定されない「タングステン線」の発明がスクリーン印刷用の用途以外において,課題を解決し得るものと認識することはできない。

(3)特許権者の意見について
ア 特許権者は,第1特許権者意見書において,本件出願時の技術常識に照らせば,請求項1ないし6に係る特許発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できることは明らかであるとして,つぎのように主張している。
本件特許の目的である「高性能な」タングステン線とは,スクリーン印刷用の場合に限定されるものではなく,具体的には,「断線の発生が少ない」タングステン線を意味する。
本件特許明細書において,スクリーンメッシュは,タングステン線を用いた物品のうち,断線の発生が起こりやすい物品の一例にすぎず,スクリーンメッシュにおける断線の原因は,タングステン線に対して,例えば摩擦力,曲げ力,引張り力などの力が加わった場合であるから,本件特許明細書の記載から,「タングステン線に力が加わった場合に断線の発生の恐れがあることは,当業者であれば容易に認識し得ることである。
そして,乙2号証には,「断線に対しての十分な強度を有するタングステン線材」が開示され,用途として「フィラメント,電熱線,構造材」に用いられることが記載されており,乙3号証には,「断線が起こりにくい金属繊維による線材からなるワイヤーソー」が開示されており,乙4号証には「複数のタングステン線を含む釣り糸であって,断線を起こしにくい釣り糸」が開示され,乙5号証には「タングステン線を用いた半導体用プローブピン及び電子デバイス検査溶ワイヤープローブ」が開示されているように,本件特許明細書の記載と本件特許出願時の技術常識に鑑みれば,「断線の発生の少ないタングステン線」が様々な用途に利用可能であることは当業者であれば容易に認識することができる旨主張している。
イ しかしながら,上記(2)イで検討したとおり,本件特許明細書の「高性能なタングステン線」とは,「スクリーン印刷用のスクリーンメッシュに用いられる」場合など,「製網時」に,「タングステン線には、表面が粗いという問題」があり,それを解決するために「タングステン線の表面性を十分に高める」ことにしたものであると理解できるのであって,本件特許明細書の「高性能なタングステン線」が,「断線の発生の少ないタングステン線」であることを意味することを前提とする特許権者の主張は,前提において失当といわざるを得ない。
ウ 特許権者は,第2特許権者意見書において「本件特許発明は,タングステン線の引張強度を高く,かつ,表面状態を良好にすることで,「断線の発生が少ないタングステン線」を実現している」と主張し,段落【0046】に「表面粗さRaが0.10μm以下のタングステン線を用いて製網した場合,断線及び設備の摩耗はほとんど発生しなかった」と記載され,段落【0049】には,「タングステン線100の表面の凹凸(亀裂)が少なくなるので,製網後の圧延時に,タングステン線100の割れが発生するのを抑制することができる。このため,タングステン線の断線の発生が少なくなる」と記載されていることをその根拠とする。
しかしながら,上記(2)のイ(ア)で検討したとおり,これらの記載は,「製網」の際のタングステン線の断線の発生の抑制についてのものであると認識できるにとどまり,それを超えて,一般的なタングステン線の断線の発生を抑制し得ることが認識し得るものではない。
また,特許権者は,第2特許権者意見書において「表面粗さだけでなく引張強度も断線の発生に影響を与えていることが段落【0051】の記載から明らかであり,これらの記載を踏まえれば,「断線の発生を少なくする」という大きな目的を達成するために,表面粗さ及び引張強度の観点で創意工夫を行ったものが本件特許発明である」旨主張している。
しかしながら,上記(2)のイ(イ)で検討したとおり,当該記載に接した当業者であれば,発明の詳細な説明に開示された「引張強度」により解決しようとする課題は,「3700MPa?4200MPa」の範囲で解決し得るものと認識すると解することが相当であるところ,本件特許発明において特定される「引張強度」は,「4200MPa以上」であるから,段落【0051】の記載は,本件特許発明のサポート要件の判断に影響するものとはいえない。
そして,段落【0051】の記載によれば,「4200MPa」より高い「引張強度」とすると,「タングステン線が硬すぎて割れてしまうこと」が抑制できないものと当業者は理解するから,当該記載によれば,特許権者のいう「高性能なタングステン線」を達成できないと認識するものと解するのが相当である。
したがって,特許権者の主張を採用することはできない。
エ 仮に,「高性能なタングステン線」が,特許権者が主張するように「断線の発生の少ないタングステン線」を意味するものであるとしたとしても,そのような一般的な「断線の発生」と本件特許発明において規定される各パラメータの範囲との関係について本件特許明細書には何ら記載されていないから,当該一般的な「断線の発生」をどのように解決するものであるかを理解することもできないというべきである。

(4)小括
以上のとおりであるから,本件訂正発明1及び2並びに本件訂正発明4及び6は,当業者が課題を解決し得ると認識する範囲を超えるものであるから,いわゆるサポート要件をみたすものということはできない。
したがって,本件特許の請求項1,2,4及び6に係る発明は,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから,本件特許の請求項1,2,4及び6に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。

第5 まとめ
上記第2のとおり,本件訂正請求は認められるから,特許第6340708号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[3?7,9?11]について訂正することを認める。
そして,本件訂正請求により,本件特許請求の範囲の請求項3及び5に係る発明は,削除されたから,本件特許異議申立のうち,本件特許請求の範囲の請求項3及び5に係る特許についての申立ては,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
そして,上記第4の2のとおり,本件特許請求の範囲の請求項1,2及び4及び6に係る特許は,いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって,同法第113条第2号に該当し,また,上記第4の3のとおり,本件特許の請求項1,2,4及び6に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当するものであるから,同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
よって,上記のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形であり、線径が5μm以上であり、表面粗さRaが0.10μm以下であり、かつ、引張強度が4200MPaより大きいタングステン線。
【請求項2】
前記タングステン線の長さが1000mmである場合における垂下長さは、900mm以上である
請求項1に記載のタングステン線。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記タングステン線の線径は、22μm以下である
請求項1又は2に記載のタングステン線。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記タングステン線の純度は、95%以上である
請求項1、2及び4のいずれか1項に記載のタングステン線。
【請求項7】
請求項1、2、4及び6のいずれか1項に記載のタングステン線と、
前記タングステン線に保持された、放射性物質を吸着する吸着剤とを有する
タングステン繊維。
【請求項8】
断面が円形であり、線径が5μm以上であり、表面粗さRaが0.10μm以下であり、かつ、引張強度が3700MPa以上であるタングステン線と、
前記タングステン線に保持された、放射性物質を吸着する吸着剤とを有する
タングステン繊維。
【請求項9】
さらに、
前記タングステン線に織り込まれた繊維を有し、
前記吸着剤は、前記繊維に付着されている
請求項7又は8に記載のタングステン繊維。
【請求項10】
前記吸着剤は、前記タングステン線の表面に付着されている
請求項7又は8に記載のタングステン繊維。
【請求項11】
前記吸着剤は、プルシャンブルーである
請求項7?10のいずれか1項に記載のタングステン繊維。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-28 
出願番号 特願2017-162823(P2017-162823)
審決分類 P 1 652・ 537- ZDA (B41N)
P 1 652・ 856- ZDA (B41N)
P 1 652・ 121- ZDA (B41N)
P 1 652・ 851- ZDA (B41N)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 村田 顕一郎  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 塚本 丈二
尾崎 淳史
登録日 2018-05-25 
登録番号 特許第6340708号(P6340708)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 タングステン線及びタングステン繊維  
代理人 寺谷 英作  
代理人 寺谷 英作  
代理人 新居 広守  
代理人 道坂 伸一  
代理人 道坂 伸一  
代理人 新居 広守  

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